(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】最小侵襲手術用器具のための絶縁グリップ
(51)【国際特許分類】
A61B 18/14 20060101AFI20241024BHJP
A61B 18/18 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
A61B18/14
A61B18/18
(21)【出願番号】P 2022542907
(86)(22)【出願日】2020-11-23
(86)【国際出願番号】 US2020061837
(87)【国際公開番号】W WO2021145958
(87)【国際公開日】2021-07-22
【審査請求日】2023-11-21
(32)【優先日】2020-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509195489
【氏名又は名称】マイクロライン・サージカル・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MICROLINE SURGICAL,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】アレジ クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ペレティエ デニス
【審査官】槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-038495(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0312240(US,A1)
【文献】特開平09-056723(JP,A)
【文献】特開2002-330973(JP,A)
【文献】特表2018-525066(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0342583(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0287320(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 13/00-18/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧または電流を受けて、該電圧または電流を手術用チップに伝えるための電気ポートを有する、ハンドル;
第一の内部金属フレームと、該第一の内部金属フレーム上の第一の絶縁オーバーモールドとを有する、該ハンドルに機械的に結合された第一のグリップであって、該第一の内部金属フレームが、第一の内部金属部分と、該第一の内部金属部分から電気的に分離されかつ該第一の絶縁オーバーモールドによって該第一の内部金属部分に機械的に結合された第二の内部金属部分とを含む、第一のグリップ;および
第二の内部金属フレームと、該第二の内部金属フレーム上の第二の絶縁オーバーモールドとを有する、該ハンドルに機械的に結合された第二のグリップ
を含み、
該ハンドルが、該第一のグリップおよび該第二のグリップの少なくとも一方からの動きを伝達して該手術用チップを動かすために該手術用チップに結合可能であり、該第一の内部金属部分または該第二の内部金属フレームの1つまたは複数が該電気ポートに電気的に結合されている、
デバイス。
【請求項2】
前記第一のグリップが
前記ハンドルに固定的に結合され、
前記第二のグリップが該ハンドルに可動的に結合されている、請求項1記載のデバイス。
【請求項3】
前記第一のグリップと
前記ハンドルとが一体構造を構成する、請求項2記載のデバイス。
【請求項4】
前記ハンドルが、
前記電気ポートから電気的に絶縁された外面を提供するために配設された絶縁ハンドルオーバーモールドを含む、請求項1記載のデバイス。
【請求項5】
前記第一のグリップと
前記第二のグリップとを結合して、該第一のグリップと該第二のグリップとの間で、ある方向に沿う相対運動を制限する、ラチェット
をさらに含む、請求項1記載のデバイス。
【請求項6】
前記ラチェットが、
前記第一の内部金属部分または
前記第二の内部金属フレームから電気的に分離されている、請求項5記載のデバイス。
【請求項7】
前記ラチェットが、
前記第一のグリップに結合された第一のラチェット部分と、
前記第二のグリップに結合された第二のラチェット部分とを含み、該第一のラチェット部分および該第二のラチェット部分が互いと滑動可能に係合して、該第一のグリップと該第二のグリップとの間で前記方向に沿う相対運動を制限する、請求項5記載のデバイス。
【請求項8】
前記第二のラチェット部分がファスナによって
前記第二のグリップに結合され、該ファスナが、
前記第二の絶縁オーバーモールドに結合され、かつ
前記第二の内部金属フレームから電気的に分離されている、請求項7記載のデバイス。
【請求項9】
前記第二の内部金属フレームがノッチを含み、
ファスナが該第二の内部金属フレームに接触することなく該ノッチを通過するように、
前記第二のラチェット部分が、
該ファスナにより、
前記第二の絶縁オーバーモールドに結合されている、
請求項7記載のデバイス。
【請求項10】
前記ラチェットがさらに、
前記第一のラチェット部分と
前記第二のラチェット部分を係合解除するためのレリーズを含む、請求項7記載のデバイス。
【請求項11】
前記ラチェットが、金属、熱可塑性ポリマー、またはそれらの組み合わせを含む、請求項5記載のデバイス。
【請求項12】
前記第一の内部金属フレーム、
前記第一の内部金属部分、
前記第二の内部金属部分、または
前記第二の内部金属フレームの1つまたは複数が
、鋼、ステンレス鋼、外科用ステンレス鋼、チタン、またはアルミニウムを含む、請求項1記載のデバイス。
【請求項13】
前記第一の絶縁オーバーモールドまたは
前記第二の絶縁オーバーモールドの1つまたは複数が
、熱可塑性ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、またはポリフェニルスルホンを含む、請求項1記載のデバイス。
【請求項14】
前記第一の絶縁オーバーモールドまたは
前記第二の絶縁オーバーモールドの1つまたは複数が
、130kV/cm~250kV/cmの絶縁耐力を示す、請求項1記載のデバイス。
【請求項15】
前記第一の絶縁オーバーモールドまたは
前記第二の絶縁オーバーモールドの1つまたは複数が、オートクレーブ処理可能または滅菌可能な材料でできて
おり、該オートクレーブ処理可能または滅菌可能な材料が121℃~300℃のガラス転移点を有する、請求項1記載のデバイス。
【請求項16】
前記ハンドルに結合されたコントロールシャフトをさらに含む、請求項1記載のデバイス。
【請求項17】
前記コントロールシャフトが、
前記ハンドルに取り外し可能に結合されている、請求項16記載のデバイス。
【請求項18】
前記手術用チップが、
前記コントロールシャフトに取り外し可能に結合されている、請求項16記載のデバイス。
【請求項19】
手術用チップおよびハンドピースを提供する工程;
該手術用チップを該ハンドピースに結合する工程であって、該ハンドピースが、
電圧または電流を受けて、該電圧または電流を該手術用チップに伝えるための電気ポートを有する、ハンドル;
第一の内部金属フレームと、該第一の内部金属フレーム上の第一の絶縁オーバーモールドとを有する、該ハンドルに機械的に結合された第一のグリップであって、該第一の内部金属フレームが、第一の内部金属部分と、該第一の内部金属部分から電気的に分離されかつ該第一の絶縁オーバーモールドによって該第一の内部金属部分に機械的に結合された第二の内部金属部分とを含む、第一のグリップ;および
第二の内部金属フレームと、該第二の内部金属フレーム上の第二の絶縁オーバーモールドとを有する、該ハンドルに機械的に結合された第二のグリップ
を含み、該ハンドルが、該第一のグリップおよび該第二のグリップの少なくとも一方からの動きを伝達して該手術用チップを動かすために該手術用チップに結合可能であり、該第一の内部金属部分または該第二の内部金属フレームの1つまたは複数が該電気ポートに電気的に結合されている、工程;
該手術用チップを該ハンドピースから切り離す工程;および
該ハンドピースをオートクレーブ処理する工程
を含む、方法。
【請求項20】
前記手術用チップが、電気焼灼ツール、剪刀、把持鉗子、パンチ、または剥離鉗子を含む、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記ハンドピースが、請求項1~18のいずれか一項記載のデバイスを含む、請求項19記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、いずれも全体として参照により本明細書に組み入れられる、2020年11月16日に出願された米国特許出願第17/099,415号および2020年1月14日に出願された米国特許仮出願第62/961,012号の恩典および優先権を主張する。
【0002】
技術分野
本開示は、概して手術用器具に関し、より具体的には、絶縁グリップを有する、腹腔鏡プローブなどの最小侵襲手術用器具に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
最小侵襲手術は、外科的介入を実施するために、既存の開口部または小さな切開部を通して器具を体腔に挿入することを含むことができる。このような技術において使用される手術用器具は、例えばロボット制御または人間による制御を介して遠隔操作され得る。例えば、内視鏡または腹腔鏡手術においては、個人が、患者の中へ入っているコントロールシャフトによって手術用器具に接続されたハンドルまたはグリップを使用して、患者内で手術用器具を操作し得る。したがって、外科的介入は、従来の外科手術に比べ、より少ない患者への損傷、より短い治癒時間、およびより低い感染リスクで実施することができる。
【0004】
多くの場合、最小侵襲手術は電気手術用器具の使用を含む。電気手術用器具は、電流の印加を使用して様々な外科的作業、例えば組織の切断、凝固、乾燥、または高周波治療を実施する。電流は、コントロールシャフトを通り、手術用器具のエンドエフェクタの周囲の組織に入ることができる。
【0005】
多くの最小侵襲手術用器具は、1回限り使用される器具として作られている。したがって、各器具は、使用後に再滅菌することを予定していないかまたは再滅菌することができずに廃棄される、無菌器具であるように製造されている。
【0006】
一部の最小侵襲手術用器具は、様々なシャフトを取り付けることができる再使用可能なハンドルを有するように設計されている。各シャフトは、剪刀または把持鉗子などの異なるタイプのエンドエフェクタを有することができる。エンドエフェクタはまた、電気焼灼ツールとして使用されてもよいが、これは、すべての態様で当てはまるわけではない。場合によっては、シャフト全体を取り外し、滅菌することもできる。場合によっては、ハンドルを滅菌することもできる。しかし、様々な最小侵襲手術に使用されるシャフトの長さのせいで、これらのツールは、カスタムまたは特大の滅菌パウチを要する、または1セットの器具を複数のバッチとしてオートクレーブ処理しなければならないほど多大な容積をオートクレーブ中で占有するなど、滅菌することが負担になることがある。その結果、現在の滅菌可能な最小侵襲手術用器具は、滅菌するために非常に長い時間を要することがあり、また、エネルギーおよびリソースに相当する複数のバッチの消費を要することがある。
【0007】
最小侵襲手術用器具のいくつかの部品は金属でできており、他の部品は絶縁材料でできている。部品に依存して、金属または絶縁材料の使用が好まれることがあり、場合によっては、一方の材料または他方の材料の使用が不適当であることもある。場合によっては、金属部品は、例えば電気ポートからの電流が電気焼灼ツールを通ることを可能にするために、最小侵襲手術用器具中で意図的に互いに接触する。場合によっては、電流を受けることを予定していない金属部品が他の金属部品と接触して帯電し、ユーザまたは患者との接触が起きたとき、意図せずにユーザまたは患者に電流を放出してしまうことがある。
【発明の概要】
【0008】
概要
語「態様」および類似の語は、本開示および以下の請求項の主題のすべてを広く指すことを意図したものである。これらの語を含む記述は、本明細書に記載される主題を限定する、または以下の請求項の意味もしくは範囲を限定するものと理解されるべきではない。本明細書に包含される開示の態様は、本概要によってではなく、以下の請求項によって画定される。本概要は、本開示の様々な局面の高レベルの概観であり、以下の「詳細な説明」部分においてさらに説明される概念のいくつかを紹介する。本概要は、請求項に係る主題の主要または不可欠な特徴を識別することを意図したものではなく、請求項に係る主題の範囲を決定するために別途に使用されることを意図したものでもない。主題は、本開示の明細書全体の適切な部分、任意またはすべての図面および各請求項の参照によって理解されるべきである。
【0009】
ある局面において、本開示は、最小侵襲手術用デバイスなどのデバイスを提供する。この局面の例示的なデバイスは、電圧または電流を受け、電圧または電流を手術用チップに伝えるための電気ポートを有するハンドル;第一の内部金属フレームと、第一の内部金属フレーム上の第一の絶縁オーバーモールドとを有する、ハンドルに機械的に結合された第一のグリップであって、第一の内部金属フレームが、第一の内部金属部分と、第一の内部金属部分から電気的に分離され、かつ第一の絶縁オーバーモールドによって第一の内部金属部分に機械的に結合された第二の内部金属部分とを含む、第一のグリップ;および第二の内部金属フレームと、第二の内部金属フレーム上の第二の絶縁オーバーモールドとを有する、ハンドルに機械的に結合された第二のグリップを含む。任意で、ハンドルは、第一のグリップおよび第二のグリップの少なくとも一方からの動きを伝達して手術用チップを動かすために手術用チップに結合可能である。任意で、第一の内部金属部分または第二の内部金属フレームの1つまたは複数は電気ポートに電気的に結合されている。
【0010】
いくつかの例において、第一のグリップはハンドルに固定的に結合されている。任意で、第二のグリップはハンドルに可動的に結合されている。いくつかの例において、第一のグリップとハンドルとは一体構造を構成する。任意で、ハンドルそのものが、電気ポートから電気的に絶縁された外面を提供するために配設された絶縁ハンドルオーバーモールドを含む。
【0011】
ラチェットまたはラチェット機構をこの局面のデバイスとともに使用することができる。例えば、この局面のデバイスはさらに、任意で、第一のグリップと第二のグリップとを結合して、第一のグリップと第二のグリップとの間で、ある方向に沿う相対運動を制限するラチェットを含んでもよい。任意で、ラチェットは、第一の内部金属部分または第二の内部金属フレームから電気的に分離されている。任意で、ラチェットは、第一のグリップに結合された第一のラチェット部分と、第二のグリップに結合された第二のラチェット部分とを含む。任意で、第一のラチェット部分および第二のラチェット部分は互いと滑動可能に係合して、第一のグリップと第二のグリップとの間で前記方向に沿う相対運動を制限する。任意で、ラチェットはさらに、第一のラチェット部分と第二のラチェット部分との係合解除するためのレリーズを含む。任意で、第二のラチェット部分は、ファスナ、例えば、第二の絶縁オーバーモールドに結合され、第二の内部金属フレームから電気的に分離されているファスナによって第二のグリップに結合されている。いくつかの例において、第二の内部金属フレームはノッチを含む。例えば、ファスナが第二の内部金属フレームに接触することなくノッチを通過するように、第二のラチェット部分は任意で、ファスナにより、第二の絶縁オーバーモールドに結合されている。
【0012】
本明細書中で使用される、カットアウトとも呼ばれる「ノッチ」とは、物体の主なボディによって部分的に取り囲まれているその物体の空隙、凹部または他の構造に相当し得る。本明細書中で使用されるノッチは、物体のボディによって完全には取り囲まれていないが、スルーホールは物体のボディによって完全に取り囲まれているという点で、スルーホールとは異なる。手術用デバイスのためのグリップにおいて、ノッチは、内部金属フレーム内に作製され、別の材料、例えば絶縁オーバーモールドでコーティングされて、その中に存在する内部金属フレームを有しないが、その位置におけるグリップの主なボディとしてコーティング材料を含むことができるグリップの領域を画定することができる。そのようなグリップは、任意で、例えばファスナを使用して他の部品に機械的に結合しながらも、内部金属フレーム、ファスナ、または他の部品の間の接触(それらの要素間で電気的結合を提供してしまう)を制限するための、絶縁オーバーモールド内の取り付け点、例えばスルーホールを含むことができる。
【0013】
この局面のデバイスの様々な要素のために、様々な材料を使用することができる。例えば、ラチェットは、任意で、金属、熱可塑性ポリマー、またはそれらの組み合わせを含むことができる。任意で、第一の内部金属フレーム、第一の内部金属部分、第二の内部金属部分、または第二の内部金属フレームの1つまたは複数は、独立して、鋼、ステンレス鋼、外科用ステンレス鋼、アルミニウム、またはチタンを含む。任意で、第一の絶縁オーバーモールドまたは第二の絶縁オーバーモールドの1つまたは複数は、独立して、熱可塑性ポリマー、例えばポリエーテルエーテルケトンまたはポリフェニルスルホンを含む。
【0014】
絶縁材料は、この局面のデバイスの金属部品が互いまたはユーザもしくは患者と電気的に接触することを防ぐことができる。換言すると、絶縁材料は、デバイスの特定の金属部品の間で電気的分離を提供することができ、かつ金属部品とユーザまたは患者との間で電気的分離を提供することができる。いくつかの例において、第一の絶縁オーバーモールドまたは第二の絶縁オーバーモールドの1つまたは複数は、独立して、130kV/cm~250kV/cmの絶縁耐力を示すことができる。任意で、第一の絶縁オーバーモールドまたは第二の絶縁オーバーモールドの1つまたは複数は、オートクレーブ処理可能および/または滅菌可能な材料でできている。
【0015】
別の局面において、方法が本明細書に記載される。この局面の例示的な方法は、手術用チップおよびハンドピースを提供する工程;手術用チップをハンドピースに結合する工程であって、ハンドピースが、電圧または電流を受け、電圧または電流を手術用チップに伝えるための電気ポートを有するハンドル;第一の内部金属フレームと、第一の内部金属フレーム上の第一の絶縁オーバーモールドとを有する、ハンドルに機械的に結合された第一のグリップであって、第一の内部金属フレームが、第一の内部金属部分と、第一の内部金属部分から電気的に分離され、第一の絶縁オーバーモールドによって第一の内部金属部分に機械的に結合された第二の内部金属部分とを含む、第一のグリップ;および第二の内部金属フレームと、第二の内部金属フレーム上の第二の絶縁オーバーモールドとを有する、ハンドルに機械的に結合された第二のグリップを含む、工程;手術用チップをハンドピースから切り離す工程;およびハンドピースまたは手術用チップまたは両方をオートクレーブ処理または滅菌する工程を含む。任意で、ハンドルは、第一のグリップおよび第二のグリップの少なくとも一方からの動きを伝達して手術用チップを動かすために、手術用チップに結合可能である。任意で、第一の内部金属部分または第二の内部金属フレームの1つまたは複数は、電気ポートに電気的に結合されている。任意で、手術用チップは、剪刀、把持鉗子、パンチ、または剥離鉗子を含む。これらまたは他の手術用チップは任意で、電気焼灼ツールとして使用されてもよい。任意で、ハンドピースは、デバイスのいずれか、例えば本明細書に記載される最小侵襲手術用デバイスを含む。
【0016】
本明細書は以下の添付図面を参照する。図中、異なる図面における類似の符番の使用は、類似または同種の構成部品を示すことを意図したものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本開示の特定の局面の、ハンドピースに設置された手術用チップを含む手術用器具を示す略側面図である。
【
図2】
図2Aは、本開示の特定の局面の、絶縁オーバーモールドを示す手術用器具のグリップの略側面図である。
図2Bは、本開示の特定の局面の、内部金属フレームを示す手術用器具のグリップの略側面図である。
図2Cは、本開示の特定の局面の、絶縁オーバーモールド内の内部金属フレームの位置を示す手術用器具のグリップの略側面図である。
【
図3】本開示の特定の局面の、手術用器具のグリップを示す略側面図および例示的なラチェットの拡大略図である。
【
図4】本開示の特定の局面の、手術用器具を使用するプロセスの概観を提供するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
詳細な説明
本開示の特定の局面は、最小侵襲手術のための手術用器具に関する。これらの手術用器具は、任意の適当なタイプの外科手術、例えばロボット実行手術もしくはロボット支援手術、内視鏡手術、腹腔鏡手術、または任意の他の適当な最小侵襲手術のために構成することができる。場合によっては、本開示の特定の局面は、腹腔鏡手術に使用される手術用器具のスタイルのために、腹腔鏡手術用器具にとって特に有益であり得る。開示される手術用器具の局面は、剛性、強度、および/または電気伝導性を提供し得る金属を含むことができ、開示される手術用器具の他の局面は、金属部品からのまたは金属部品への電流の流れを制限し得る絶縁材料を含むことができる。
【0019】
最小侵襲手術用器具は、コントロールシャフトを介してハンドルに取り外し可能に取り付けることができる手術用チップを含むことができる。ハンドルは、任意で、コントロールシャフトに取り外し不可能に結合することもできるが、常にそうである必要はない。ハンドルとコントロールシャフトとの組み合わせは、コントロールシャフトが取り外し可能であるかどうかにかかわらず、ハンドピースとして公知であり得る。手術用チップはコントロールシャフトに取り外し可能に結合することができ、それにより、手術用チップは、それだけで清浄し、消毒することが可能となる。さらに、手術用器具の機能性を、臨機応変に、例えば手術中、1つの手術用チップを取り外し、異なる手術用チップを取り付けることにより、すばやく変更することができる。このようなやり方で、1つのハンドルおよびコントロールシャフトを外科的処置中に複数の手術用チップとともに使用することができ、その結果、複数の異なる手術用チップをその同じハンドルおよびコントロールシャフトセットと使用したにもかかわらず、1つのハンドルおよびコントロールシャフトセットのみを清浄し、滅菌するだけでよい。本明細書中で使用される「手術用器具」は、その近位端にハンドルを有し、その遠位端に手術用チップを有するものとみなすことができる。したがって、本明細書中で使用される語「遠位」および「近位」は、手術用器具のハンドル端から離れる方向およびハンドル端に向かう方向を指すことができる。
【0020】
手術用チップは、任意の適当なスタイルのエンドエフェクタを利用することができる。エンドエフェクタの適当なスタイルは、剪刀、把持鉗子、パンチ、および剥離鉗子を含む。一例として、適当な剪刀構造は、反型剪刀、直型剪刀、メッツェンバウム剪刀、フック付き剪刀などを含むことができる。一例として、適当な把持鉗子構造は、非外傷性把持鉗子、有窓把持鉗子、クリンチ把持鉗子、バブコック把持鉗子、ハンター(Hunter)把持鉗子、アリス把持鉗子などを含むことができる。一例として、適当なパンチは、カップ状パンチ、生検パンチなどを含むことができる。一例として、適当な剥離鉗子は、ドルフィンノーズ剥離鉗子、メリーランド剥離鉗子、バーケット(Birkett)グラスパ剥離鉗子などを含むことができる。
【0021】
エンドエフェクタは1つまたは複数の可動部分を含むことができる。場合によっては、エンドエフェクタは、例えば一般的な生検パンチにおいては、1つの可動部分を不動部分に対して動かすことにより、第一の位置と第二の位置との間で動くことができる。生検パンチの例においては、可動部分(例えば刃)を不動部分(例えば生検材料収集面)に押し当てて生検材料を収集することができる。1つの可動部分によるこのタイプの動作は、シングルアクションとして公知であり得、このタイプの動作を使用するエンドエフェクタは、シングルアクションエンドエフェクタとして公知であり得る。場合によっては、エンドエフェクタは、例えば一般的な対の剪刀においては2つの可動部分(多くの場合、互いに対向する)を有することができる。剪刀の例においては、2つの可動部分(例えば剪刀の刃)を互いに向けて動かして切断動作を開始することができる。2つの可動部分を用いるこのタイプの動作は、デュアルアクションとして公知であり得、このタイプの動作を使用するエンドエフェクタは、デュアルアクションエンドエフェクタとして公知であり得る。しかし、場合によっては、剪刀は1つの固定刃および1つの可動刃を有してもよい。本開示の局面は、シングルアクションエンドエフェクタと共に、またはデュアルアクションエンドエフェクタと共に、使用することもできる。場合によっては、本開示の局面は、可動部分を有しないノーアクションエンドエフェクタ(例えば電気手術用電極)と共に使用することもできる。
【0022】
ハンドルは、1つまたは複数のグリップの動きを通して手術用チップのエンドエフェクタを作動させるための1つまたは複数のグリップを含むことができる。場合によっては、1つのグリップは、定位置に固定され、または固定位置に配置され、またはハンドルと共に一体構造に形成され、一方で別のグリップは、エンドエフェクタを作動させるために可変位置を有してもよいが、常にそうである必要はない。ハンドルは、所望の機能性に依存して異なるやり方で構成することもできる。一部のグリップは、ラチェット式動作を有することができるが、他は有しない。場合によっては、ハンドルは、コントロールシャフトおよびエンドエフェクタに電圧および/または電流を運ぶための1つまたは複数の電気ポートまたはポスト(例えば焼灼ポスト)を含むことができる。一部のハンドルは短い電気ポストを有することができるが、他は長い電気ポストを有する。場合によっては、ハンドルは、ハンドルおよび/または取り付けられたコントロールシャフトの清浄を容易にするためのフラッシュポートを含むことができる。場合によっては、電気ポートがフラッシュポートを兼ねることもできる。場合によっては、回転ノブがコントロールシャフトの回転を制御することができ、そのコントロールシャフトが次いで手術用チップのエンドエフェクタの回転を制御することができる。
【0023】
場合によっては、様々な部品を互いに永久的に取り付けることもできるが、常にそうである必要はない。部品は、エンドエフェクタの部品の動きを作動させるために1つまたは複数のグリップと係合し、その並進運動を可能にするための、互いに対して動き得る複数の内部パーツを含むことができる。例えば、コントロールシャフトは、外側シャフトおよび内側シャフトを含むことができる。内側シャフトは、外側シャフト内で移動可能、例えば軸方向に移動可能であり、外側シャフトに対する内側シャフトの操作を介して、エンドエフェクタの作動を可能にすることができる。内側シャフトを、可変グリップに機械的に結合してもよく、例えば、可変グリップの動きが内側シャフトの動きへと変換されるようにする。
【0024】
手術用器具の様々な部品は、それらの位置、それらが手術中に患者と接触する可能性、それらの機械的要件、それらが電気伝導性でなければならないか、電気絶縁性でなければならないか、などに依存して、様々な材料で作製することができる。再使用可能性のためには、手術用器具の部品は、滅菌処置、例えばオートクレーブ内で発生する圧力、温度、および条件に耐えることができる材料から作製することが望ましい。滅菌処置に適合する例示的な材料は、金属および熱可塑性ポリマー、例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)またはポリエーテルイミド(PEI)またはポリフェニルスルホンを含むが、これらに限定されない。
【0025】
手術用デバイスに使用される構造および材料は、様々な部品間の電気伝導性を制限または制御し、信頼性および安全性を高めるために使用され得る。例えば、ハンドルなどの部品は、PEEKまたはPEIなどの電気絶縁材料でコーティングされた金属を含むことができる。場合によっては、部品は、他の部品、例えば電気ポートまたはフラッシュポート、コントロールシャフト、グリップなどとのインターフェースを可能にするために埋め込まれた金属または他の構造を直接有する電気絶縁材料を含むことができる。別の例として、外側シャフトは、PEEKまたはPEIなどの電気絶縁材料でできているか、またはそれでコーティングされていることができる。内側シャフトは、金属などの電気伝導材料でできていることができる。場合によっては、内側シャフトは、手術用チップの要素または部品と同じ材料で作製することができる。
【0026】
場合によっては、手術用器具の部品は、金属によって提供される構造剛性、材料強度、および耐摩耗性から恩恵を受け得る。しかし、金属部品は電気伝導性であるため、電気伝導面の露出を制限することが有用である場合、それらを少なくとも部分的に電気絶縁材料でコーティングすることが有益である場合がある。しかし、場合によっては、絶縁材料を使用して特定の部品を製造することが非現実的または望ましくない場合もある。
【0027】
いくつかの例において、ラチェットは、1つまたは複数の歯を有するギヤまたはラックと、歯の間または後の凹部に係合するばね式のつめとを含み、1つの方向には容易な動きを可能にし、逆方向には動きを阻止し得る。ラチェットは、つめおよび歯を係合解除させて、順方向と逆方向の両方で位置をリセットまたは調節するためのレリーズを含むか、または他のやり方で移動可能であってもよい。任意で、ラチェットは、グリップの最大相対移動位置で自動的にレリーズと係合するか、またはつめおよび歯を係合解除することができる。歯、つめ、およびレリーズは、任意で、強度および信頼性を高めるために、鋼などの金属で作製することができるが、そうである必要はない。任意で、1つまたは複数の歯およびつめは、これらの部品が互いに対して動く、摩耗を受ける、または応力に付されるおそれがあるため(その場合、非金属部品、例えばPEEKなどの絶縁材料は適さない場合がある)、金属で作製することができる。
【0028】
場合によっては、手術用デバイスの部品は、外科的処置中にユーザまたは患者と接触して、ユーザまたは患者を望ましくない方法で電気伝導面にさらす可能性がある。したがって、部品が他の電気伝導構造と接触することがあるかどうか、また、どの程度に接触することができるかを制御することが有益である場合がある。一例として、手術用器具のグリップの構造が、様々な部品間の電気伝導性を制限し、安全性を高めるように配設することができる。例えば、グリップは、金属部分を含むことができる内部フレーム上に任意でコーティングされたPEEKなどの電気絶縁材料を含むことができる。場合によっては、金属が、強度および剛性のためにグリップのフレームとして、また、任意で金属で作製することができるハンドル、コントロールシャフト、および/またはラチェットに、係合または機械的に結合するために任意で含まれる。
【0029】
グリップの内部フレームは、金属部分間の電気経路を断つために互いから離間している複数の金属部分で作製することができる。絶縁材料を使用して、複数の部分をいっしょに機械的に結合すると同時に、部分間の電気的分離をなお提供することができる。例えば、グリップの内部フレームの2つの内部金属部分を絶縁材料でオーバーモールドして、それらの内部金属部分を機械的に結合し、それらの間に電気的分離を提供することができる。
【0030】
場合によっては、ピンまたは他のファスナが、別の部品、例えばラチェットをグリップに機械的に結合している、グリップの内部金属フレームの位置が、ノッチまたはカットアウトを含み得、これは絶縁材料でオーバーモールドされているため、ピンまたは他のファスナが絶縁材料のみに機械的に結合し、内部金属フレームとは接触することはできない。
【0031】
例示的な絶縁材料は、熱可塑性ポリマー、例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)またはポリフェニルスルホンを含む。そのようなポリマーは、グリップが、他のツールおよび表面との意図されない接触からの損傷に抵抗することを可能にし、これらのポリマーはまた、滅菌処置に耐えることができる。手術用デバイスが使い捨てデバイスである場合のみ、絶縁材料は、滅菌処置に耐える必要はなく、したがって、他の材料、例えばアセタール、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエステル、または他の医療グレードプラスチックを用い得る。
【0032】
絶縁材料は、十分に高い絶縁耐力を有することができる。場合によっては、絶縁材料の絶縁耐力は、約230kV/cm以上、例えば約130kV/cm、135kV/cm、140kV/cm、145kV/cm、150kV/cm、155kV/cm、160kV/cm、165kV/cm、170kV/cm、175kV/cm、180kV/cm、185kV/cm、190kV/cm、195kV/cm、200kV/cm、205kV/cm、210kV/cm、215kV/cm、220kV/cm、225kV/cm、230kV/cm、235kV/cm、240kV/cm、245kV/cm、および/または250kV/cm以上であり得る。
【0033】
有用な絶縁材料は、手術用ツールにおける使用に適し、滅菌可能および/またはオートクレーブ処理可能である熱可塑性ポリマーを含むものを含む。有用な絶縁材料は、121℃~300℃(例えば140℃、143℃、または288℃以上)であるガラス転移温度を有するものを含む。場合によっては、絶縁材料は、300℃~350℃(例えば340℃または343℃以上)である融解温度を有することができる。十分に高いガラス転移温度および/または融解温度は、絶縁材料が、121℃(例えば、重力ベースの滅菌装置の場合)または135℃(例えば、真空ベースの滅菌装置の場合)までの温度に達することができるオートクレーブ中の滅菌処置に付されたときでも、形状または完全性を失わないことを保証することができる。場合によっては、絶縁材料は、手術用チップを滅菌するための滅菌処置の最高温度よりも高いガラス転移温度を有することができる。そのような滅菌処置は、手術用チップとともに一般的に使用される他の器具、例えば手術用チップをそこへ誘導することができる切開部を形成するために使用される外科用メスと共用される滅菌処置であり得る。
【0034】
本開示の局面および特徴は、容易かつ効率的に保管することができ、安全であり、使いやすく、十分に絶縁された手術用チップ、ハンドル、および他の部分を有し、容易かつ効率的に滅菌することができ、高度にカスタマイズ可能である最小侵襲手術用器具を可能にする。
【0035】
これらの実施例は、本明細書に記載される一般的な主題に読者を導くために記されたものであり、開示される概念の範囲を限定することを意図したものではない。以下の部分は、図面を参照しながら様々な追加的特徴および例を記載する。図中、類似の符番は類似の要素を示し、方向の記述は、例示的態様を説明するために使用されるが、例示的態様と同様に、本開示を限定するために使用されるべきではない。本明細書の図面に含まれる要素は一定の縮尺で描かれていない場合がある。
【0036】
図1は、本開示の特定の局面の、ハンドル120に結合されたコントロールシャフト104に設置された手術用チップ102を含む、最小侵襲手術用器具100を示す略側面図である。手術用チップ102は、コントロールシャフト104に取り外し可能に結合されている。場合によっては、コントロールシャフト104は、ハンドル120に取り外し可能に結合することができるが、そうである必要はない。場合によっては、コントロールシャフト104は、ハンドル120に永久的に結合される。
【0037】
手術用チップ102は、遠位ハブ112および近位ハブ114を含むマルチパーツハブを含むことができる。手術用チップ102は、近位ハブ114を介してコントロールシャフト104に取り外し可能に結合することができ、その近位ハブ114が次いで、エンドエフェクタ106に可動的に固定される遠位ハブ112に永久的に結合される。近位ハブ114は、任意で、近位ハブ114とコントロールシャフト104上の対応するねじとの間の強力かつ取り外し可能な機械的結合を可能にするための1つまたは複数のねじのセットを含むことができる。手術用チップ102の結合およびエンドエフェクタ106の動作のさらなる詳細は、例えば、全体として参照により本明細書に組み入れられる、2019年3月11に出願された米国特許出願第16/298,817号に見ることができる。
【0038】
ハンドル120は、手術用チップ102のエンドエフェクタ106を操作するための固定グリップ122および可変グリップ144に取り付けられる。可変グリップ124の動きが、コントロールシャフト104の内側シャフトを、外側シャフトに対して軸方向に動かし、ひいては、任意で1つまたは複数の介在要素への機械的結合を介して、エンドエフェクタを作動させる(例えば、第一の位置と第二の位置との間で動かす)。場合によっては、可変グリップ124の操作は、ラチェット機構130によってさらに制御することができるが、常にそうである必要はない。ラチェット機構130は、ハンドル120の外部にあってもよいが、常にそうである必要はなく、ラチェット機構130は、任意で、ハンドル120の内部にあってもよい。場合によっては、ハンドル120は、回転ノブ150を含むことができる。回転ノブ150は、コントロールシャフト104の回転を制御し、ひいては手術用チップ102の回転を制御するために操作することができる。
【0039】
場合によっては、ハンドル120はポート140を含むことができる。ポート140は、電気ポートおよびフラッシュポートの一方または両方として作用することができる。電気ポートとして使用される場合、ポート140は、電流をコントロールシャフト104の内側シャフトに伝えることができ、そのコントロールシャフト104が次いで、任意で1つまたは複数の介在要素への電気的結合を介して、電流を手術用チップ302のエンドエフェクタ106に伝えることができる。この電流は、焼灼を含む様々な電気外科手術に使用することができる。フラッシュポートとして使用される場合、ポート140は、例えばコントロールシャフト104の清浄および/または滅菌を容易にするために、流体がコントロールシャフト104を通してフラッシュされることを可能にし得る。場合によっては、例えばコントロールシャフト104がハンドル120に永久的に結合されている場合、フラッシュポートの使用は特に有用であり得る。場合によっては、ハンドル120は任意の数のポート140を含むことができ、各ポートが、電気ポートおよびフラッシュポートの1つまたは複数として作用することができる。
【0040】
図2A~2Cは、手術用器具のグリップを示す一連の略側面図である。
図2Aには、
図1に示す最小侵襲手術用器具100などの手術用器具の第一および第二のグリップを表すグリップ200および210が示されている。グリップ200および210は、任意で、
図1のそれぞれグリップ122および124に相当し得る。グリップ200は固定グリップに相当してもよく、これは、グリップ200がハンドルに対して動かないやり方で、グリップ200を手術用器具のハンドルに結合するか、または結合することができることを意味する。グリップ210は可変グリップに相当してもよく、これは、グリップ200がハンドルに対して動く(動くことができる)やり方で、グリップ210を手術用器具のハンドルに結合することができることを意味する。代替として、グリップ200が可変グリップであってもよく、グリップ210が固定グリップであってもよく、グリップ200および210の両方が可変グリップであってもよい。グリップ200および202は、それぞれ開口部204および206を含み得、使用中にユーザが指を挿入する、および/またはグリップ200および202を把持するための位置を提供する。任意で、グリップ200および202は、ユーザの指のための開口部を含まなくてもよい。
図2Aには、絶縁オーバーモールドが、グリップ200および210の表面にコーティングされた状態で概略的に示されている。
【0041】
図2Bは、それぞれグリップ200および210の内部金属構造に相当する内部金属フレーム220および230を概略的に示す。
図2Cは、グリップ200および210の絶縁オーバーモールド内の内部金属フレーム220および230の位置を概略的に示す。
【0042】
内部金属フレーム220および230は、グリップ200および210の形状と正確には一致しない形状を有することができるが、グリップ200および210の形状とは異なる追加的な特徴を含むことができる。例えば、内部金属フレーム220は、内部金属部分222と内部金属部分224との間の電気的分離を提供することができるギャップ226によって切り離された、内部金属部分222および内部金属部分224などの複数の内部金属部分から構築されている。これら別々の内部金属部分222および224は、ギャップ226を埋め、内部金属部分222および224を一体的なコーティングでコーティングする絶縁オーバーモールドを介して互いに機械的に結合され得る。加えて、内部金属フレーム220は歯228を含むことができ、この歯が、内部金属部分224の表面よりも上に延び、使用中にグリップ200または210の並進運動を制限するためのラチェット機構と係合するために、またはその一部として、使用され得る。歯228は、グリップ200の特定の構造に依存して、絶縁オーバーモールドによってコーティングされてもよいし、されなくてもよい。加えて、内部金属フレーム220は、任意で、例えば内部金属フレーム220を他の要素、例えば手術用デバイスのハンドルに機械的に結合するための、絶縁オーバーモールドの範囲を超えて延びる領域229を含むことができる。
【0043】
別の例として、内部金属フレーム230は、
図2Cに示すように内部金属フレーム230の領域に対応して、カットアウト、凹部、ノッチ、または他の特徴232を含むことができ、そこでは金属材料は存在しないが絶縁材料でオーバーモールドされている。開口部234が、特徴232の位置で絶縁オーバーモールド内に存在してもよく、これを使用して、ピンまたは他のファスナを取り付けて、別の部品、例えばラチェット機構またはその部分を、内部金属フレーム230との電気的接触を形成することなく、グリップ210に取り付けることが可能となる。加えて、内部金属フレーム230は、任意で、例えば内部金属フレーム230を他の要素、例えば手術デバイスのハンドルまたはコントロールシャフトもしくはその部品に機械的に結合するための、絶縁オーバーモールドの範囲を超えて延びる領域236を含むことができる。
【0044】
図3は、グリップ300および310ならびに分解したラチェット330の略側面図を提供する。ラチェット330が、任意で、例えば、
図1に示すラチェット機構130に相当し得る。グリップ300および310は、任意で、例えば、
図2Aおよび2Cに示すグリップ200および210にそれぞれ相当し得、任意で、
図2Bに示す内部金属フレーム220および230をそれぞれ含み得る。ラチェット330は、複数の部品、例えば、つめ333を含むボトム332およびカバー334を含み得る。歯328がボトム332を通過し、つめ333と係合して、グリップ300および310の間の相対的並進運動の量および/または方向を制限し得る。
図2Bに示す内部金属フレーム220と同様に、互いから電気的に分離された複数の内部金属部分を含む内部金属フレームをグリップ300中に使用することにより、歯328を手術用デバイスハンドルの部品から電気的に分離し、ひいては、つめ333をも、歯328との接触にもかかわらず、手術用デバイスハンドルの部品から電気的に分離することができる。
【0045】
カバー334は、つめ333および歯328が互いから係合解除されることを可能にし、グリップ300および310の間の相対的並進運動が少なくとも部分的に制限されないようにする、レリーズ336を含み得る。ピン338または他のファスナを使用して、それを、例えば、カバー334に固定された状態でグリップ310中の開口部314およびボトム332中の開口部340に通すことにより、ラチェット330をグリップ310に取り付けることができる。開口部314は、内部金属フレームが存在しないグリップ310内のノッチ、凹部、カットアウト、または他の領域に配置されるならば、開口部314でのグリップ310へのラチェット330の取り付けは、ラチェット330がグリップ310に機械的に結合されながらも、グリップ310内の内部金属フレームから電気的に分離されたままであることを可能にすることができる。そのような構成はさらに、内部金属フレームが手術用デバイスハンドルの部品に電気的に接続されている場合でさえも、ラチェット330が手術用デバイスハンドルの部品から電気的に分離されることを可能にすることができる。
【0046】
上述し、
図3に示す、ラチェット330をグリップ300および310に取り付ける方法は、単に1つの例であり、他の構成が使用されてもよいことが理解されよう。場合によっては、ラチェット330は、ラチェット330が摩耗したときそれを交換することを可能にするために、グリップ310に取り外し可能に取り付けることもできる。
【0047】
図4は、本開示の特定の局面にしたがって手術用器具を使用するプロセス400を示すフローチャートである。ブロック402で、手術用チップおよびハンドピースを提供することができる。手術用チップは、
図1の手術用チップ102などの任意の適当な手術用チップであってよい。ハンドピースは、例えば
図1のハンドル120およびコントロールシャフト104を含む任意の適当なハンドピースであってよい。手術用チップおよびハンドピースは、外科的処置における使用に適した滅菌状態であってよい。場合によっては、手術用チップを、それぞれが異なるエンドエフェクタを有する複数の手術用チップのキットから提供することができる。場合によっては、手術用チップを提供する工程は、滅菌パウチ中の滅菌された手術用チップを提供することを含むことができる。
【0048】
ブロック404で、手術用チップをハンドピースに結合することができる。ハンドピースは、ハンドルに結合された(例えば永久的または取り外し可能に)コントロールシャフトを含むことができる。手術用チップを、ハンドピースに取り外し可能に結合することができる。場合によっては、手術用チップをハンドピースに結合する工程は、手術用チップのヨークをハンドピースの内側シャフトに螺着することを含むことができる。場合によっては、手術用チップをハンドピースに結合する工程は、手術用チップの近位ハブをハンドピースの外側シャフトに螺着することを含むことができる。場合によっては、手術用チップをハンドピースに結合する工程は、手術用チップのヨークをハンドピースの内側シャフトに螺着し、手術用チップの近位ハブをハンドピースの外側シャフトに螺着することを含むことができる。
【0049】
ブロック406で、手術用チップを使用して外科的処置を実施することができる。場合によっては、外科的処置を実施する工程は、手術用チップを使用して、手術用チップに隣接する組織に電流を通すことを含むことができる。場合によっては、手術用チップに隣接する組織に電流を通すことは、手術用チップのエンドエフェクタに隣接する標的組織に電流を通し、かつ、手術用チップの近位ハブに隣接する非標的組織に電流を印加しないことを含むことができる。場合によっては、外科的処置を実施する工程は、ハンドピースに接続された1つまたは複数のグリップを並進運動させることにより、患者内で手術用チップのエンドエフェクタを作動させることを含むことができる。場合によっては、外科的処置を実施する工程は、手術用チップのエンドエフェクタを作動させて、組織の周囲でエンドエフェクタの1つまたは複数の可動部分を閉じることを含むことができる。場合によっては、外科的処置を実施する工程は、ラチェットを作動させて、ハンドピースに接続された1つまたは複数のグリップの並進運動を制限することを含むことができる。場合によっては、外科的処置を実施する工程は、ラチェットを解放して、ハンドピースに接続された1つまたは複数のグリップの並進運動を可能にすることを含むことができる。
【0050】
ブロック408で、手術用チップをハンドピースから取り外すことができる。手術用チップをハンドピースから取り外す工程は、ブロック404で手術用チップをハンドピースに結合する工程の反対、例えば手術用チップをハンドピースからねじ戻すことであってよい。
【0051】
ブロック410で、手術用チップまたはハンドピースまたは両方を滅菌することができる。場合によっては、手術用チップまたはハンドピースを滅菌する工程は、手術用チップまたはハンドピースを清浄し、滅菌することを含むことができる。場合によっては、手術用チップまたはハンドピースを滅菌する工程は、手術用チップまたはハンドピースをオートクレーブ処理することを含むことができる。場合によっては、手術用チップまたはハンドピースを滅菌する工程は、手術用チップまたはハンドピースを121℃または135℃以上の温度に付すことを含むことができる。場合によっては、手術用チップまたはハンドピースを滅菌する工程は、手術用チップまたはハンドピースを滅菌パウチに入れることを含むことができる。
【0052】
滅菌されたのち、手術用チップまたはハンドピースを、例えば互いまたは別の手術用チップもしくはハンドピースに結合することにより、再使用することができる。手術用チップをハンドピースに結合する工程は、上記外科的処置と関連する外科手術とは別の追加的な外科手術の一部として、繰り返しのブロック404で実施することができる。例えば、第一の外科的処置を第一の患者に対して実施することができ、繰り返しの外科的処置は、第二の患者に対して実施されるべき外科的処置と関連することができる。
【0053】
場合によっては、ブロック410ののち、手術用チップまたはハンドピースが、もはや使用に耐えないほど多く回数の使用・滅菌サイクル(例えばブロック404、406、408、410)を受けたと思われるならば、手術用チップまたはハンドピースの一方または両方を処分または一新することができる。
【0054】
以下に使用されるように、一連の例への任意の参照は、そのような例それぞれを分離的に参照するものと理解されなければならない(例えば、「例1~4」は「例1、2、3または4」と理解されなければならない)。
【0055】
例1は、
電圧または電流を受けて、該電圧または電流を手術用チップに伝えるための電気ポートを有する、ハンドル;
第一の内部金属フレームと、該第一の内部金属フレーム上の第一の絶縁オーバーモールドとを含むかまたはそれらからなる、該ハンドルに機械的に結合された第一のグリップであって、該第一の内部金属フレームが、第一の内部金属部分と、該第一の内部金属部分から電気的に分離されかつ該第一の絶縁オーバーモールドによって該第一の内部金属部分に機械的に結合された第二の内部金属部分とを含むかまたはそれらからなる、第一のグリップ;および
第二の内部金属フレームと、該第二の内部金属フレーム上の第二の絶縁オーバーモールドとを有する、該ハンドルに機械的に結合された第二のグリップ
を含み、
該ハンドルが、該第一のグリップおよび該第二のグリップの少なくとも一方からの動きを伝達して該手術用チップを動かすために該手術用チップに結合可能であり、該第一の内部金属部分または該第二の内部金属フレームの1つまたは複数が該電気ポートに電気的に結合されている、
デバイスである。
【0056】
例2は、第一のグリップがハンドルに固定的に結合され、第二のグリップが該ハンドルに可動的に結合されている、例1のデバイスである。
【0057】
例3は、第一のグリップとハンドルとが一体構造を構成する、例2のデバイスである。
【0058】
例4は、ハンドルが、電気ポートから電気的に絶縁された外面を提供するために配設された絶縁ハンドルオーバーモールドを含む、例1~3のデバイスである。
【0059】
例5は、
第一のグリップと第二のグリップとを結合して、該第一のグリップと該第二のグリップとの間で、ある方向に沿う相対運動を制限する、ラチェット
をさらに含む、例1~4のデバイスである。
【0060】
例6は、ラチェットが、第一の内部金属部分または第二の内部金属フレームから電気的に分離されている、例5のデバイスである。
【0061】
例7は、
ラチェットが、第一のグリップに結合された第一のラチェット部分と、第二のグリップに結合された第二のラチェット部分とを含み、該第一のラチェット部分および該第二のラチェット部分が互いと滑動可能に係合して、該第一のグリップと該第二のグリップとの間で前記方向に沿う相対運動を制限する、例5~6のデバイスである。
【0062】
例8は、
第二のラチェット部分がファスナによって第二のグリップに結合され、該ファスナが、第二の絶縁オーバーモールドに結合され、かつ第二の内部金属フレームから電気的に分離されている、例7のデバイスである。
【0063】
例9は、
第二の内部金属フレームがノッチを含み、
ファスナが該第二の内部金属フレームに接触することなく該ノッチを通過するように、第二のラチェット部分が、ファスナにより、第二の絶縁オーバーモールドに結合されている、
例7~8のデバイスである。
【0064】
例10は、ラチェットがさらに、第一のラチェット部分と第二のラチェット部分を係合解除するためのレリーズを含む、例7~9のデバイスである。
【0065】
例11は、ラチェットが、金属、熱可塑性ポリマー、またはそれらの組み合わせを含む、例5~10のデバイスである。
【0066】
例12は、第一の内部金属フレーム、第一の内部金属部分、第二の内部金属部分、または第二の内部金属フレームの1つまたは複数が独立して、鋼、ステンレス鋼、外科用ステンレス鋼、アルミニウム、またはチタンを含む、例1~11のデバイスである。
【0067】
例13は、第一の絶縁オーバーモールドまたは第二の絶縁オーバーモールドの1つまたは複数が、独立して、熱可塑性ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、またはポリフェニルスルホンを含む、例1~12のデバイスである。
【0068】
例14は、第一の絶縁オーバーモールドまたは第二の絶縁オーバーモールドの1つまたは複数が、独立して、130kV/cm~250kV/cmの絶縁耐力を示す、例1~13のデバイスである。
【0069】
例15は、第一の絶縁オーバーモールドまたは第二の絶縁オーバーモールドの1つまたは複数が、オートクレーブ処理可能および/または滅菌可能な材料でできている、例1~14のデバイスである。
【0070】
例16は、ハンドルに結合されたコントロールシャフトをさらに含む、例1~15のデバイスである。
【0071】
例17は、コントロールシャフトが、ハンドルに取り外し可能に結合されている、例16の手術用デバイスである。
【0072】
例18は、手術用チップが、コントロールシャフトに取り外し可能に結合されている、例16~17のデバイスである。
【0073】
例19は、
手術用チップおよびハンドピースを提供する工程;
該手術用チップを該ハンドピースに結合する工程であって、該ハンドピースが、
電圧または電流を受けて、該電圧または電流を該手術用チップに伝えるための電気ポートを有する、ハンドル;
第一の内部金属フレームと、該第一の内部金属フレーム上の第一の絶縁オーバーモールドとを有する、該ハンドルに機械的に結合された第一のグリップであって、該第一の内部金属フレームが、第一の内部金属部分と、該第一の内部金属部分から電気的に分離されかつ該第一の絶縁オーバーモールドによって該第一の内部金属部分に機械的に結合された第二の内部金属部分とを含む、第一のグリップ;および
第二の内部金属フレームと、該第二の内部金属フレーム上の第二の絶縁オーバーモールドとを有する、該ハンドルに機械的に結合された第二のグリップ
を含み、該ハンドルが、該第一のグリップおよび該第二のグリップの少なくとも一方からの動きを伝達して該手術用チップを動かすために該手術用チップに結合可能であり、該第一の内部金属部分または該第二の内部金属フレームの1つまたは複数が該電気ポートに電気的に結合されている、工程;
該手術用チップを該ハンドピースから切り離す工程;および
該ハンドピースをオートクレーブ処理する工程
を含む、方法である。
【0074】
例20は、手術用チップが、電気焼灼ツール、剪刀、把持鉗子、パンチ、および/または剥離鉗子を含む、例19の方法である。
【0075】
例21は、ハンドピースが、例1~18のデバイスを含む、例19~20の方法である。
【0076】
態様および例の前記説明は、例示された態様および例を含め、例示および説明のみを目的として提示されたものであり、網羅的である、または開示されたとおりの形態に限定することを意図したものではない。当業者には、その数多くの変形、適応および使用が明らかであろう。