(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】多環芳香族誘導体化合物及びこれを用いた有機発光素子
(51)【国際特許分類】
C07F 5/02 20060101AFI20241024BHJP
C07F 7/10 20060101ALI20241024BHJP
C09K 11/06 20060101ALI20241024BHJP
H10K 71/12 20230101ALI20241024BHJP
H10K 71/16 20230101ALI20241024BHJP
H10K 50/12 20230101ALI20241024BHJP
H10K 50/15 20230101ALI20241024BHJP
H10K 50/16 20230101ALI20241024BHJP
H10K 85/60 20230101ALI20241024BHJP
【FI】
C07F5/02 A CSP
C07F7/10 V
C09K11/06 660
C09K11/06 690
H10K71/12
H10K71/16
H10K50/12
H10K50/15
H10K50/16
H10K85/60
(21)【出願番号】P 2022544838
(86)(22)【出願日】2021-01-25
(86)【国際出願番号】 KR2021000952
(87)【国際公開番号】W WO2021150080
(87)【国際公開日】2021-07-29
【審査請求日】2022-07-22
(31)【優先権主張番号】10-2020-0009047
(32)【優先日】2020-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507074834
【氏名又は名称】エスエフシー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ビョン-ソン
(72)【発明者】
【氏名】ジュ,ソン-フン
(72)【発明者】
【氏名】シン,ボン-キ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジ-ファン
(72)【発明者】
【氏名】ジョ,ヒョン-ジュン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ソン-ウン
【審査官】早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-028320(JP,A)
【文献】国際公開第2020/242165(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/251049(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0115538(US,A1)
【文献】国際公開第2018/212169(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/164331(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
C09K 11/06
H10K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化合物から選択されるいずれか1つである、多環芳香族誘導体化合物。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【請求項2】
第1電極、前記第1電極に対向する第2電極、及び前記第1電極と第2電極との間に介在する有機層を含み、
前記有機層が、請求項1に記載の化合物を1種以上含む、有機発光素子。
【請求項3】
前記有機層は、電子注入層、電子輸送層、正孔注入層、正孔輸送層、電子阻止層、正孔阻止層及び発光層のうちの1層以上を含み、
前記層のうちの1層以上が、前記化合物を含むことを特徴とする、請求項2に記載の有機発光素子。
【請求項4】
前記発光層は、下記化学式Cで表されるアントラセン誘導体をホスト化合物として含むことを特徴とする、請求項3に記載の有機発光素子。
【化8】
(前記化学式Cにおいて、
R
21~R
28は、互いに同一又は異なっており、それぞれ独立して、水素、重水素、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6~50のアリール基、置換もしくは非置換の炭素数3~30のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数2~50のヘテロアリール基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルコキシ基、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリールオキシ基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキルチオキシ基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキルアミン基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキルシリル基、ニトロ基、シアノ基及びハロゲン基から選択されるいずれか1つであり、
Ar
9及びAr
10は、それぞれ、互いに同一又は異なっており、互いに独立して、水素、重水素、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6~50のアリール基、置換もしくは非置換の炭素数2~30のアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数2~20のアルキニル基、置換もしくは非置換の炭素数3~30のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数5~30のシクロアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数2~50のヘテロアリール基、置換もしくは非置換の炭素数2~30のヘテロシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルコキシ基、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリールオキシ基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキルチオキシ基、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリールチオキシ基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキルアミン基、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリールアミン基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキルシリル基、及び置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリールシリル基から選択されるいずれか1つであり、
L
13は、単結合であるか、または置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリーレン基、及び置換もしくは非置換の炭素数2~20のヘテロアリーレン基から選択されるいずれか1つであり、
kは、1~3の整数であり、前記kが2以上である場合に、それぞれのL
13は互いに同一又は異なっている。)
【請求項5】
前記化学式CのAr
9は、下記化学式C-1で表される置換基であることを特徴とする、請求項4に記載の有機発光素子。
【化9】
(前記化学式C-1において、
R
31~R
35は、それぞれ、同一又は異なっており、前記請求項4に記載の化学式CのR
21~R
28で定義されたものと同一であり、互いに隣接する置換基と結合して飽和あるいは不飽和環を形成することができる。)
【請求項6】
前記化学式Cは、下記化学式C1~化学式C48から選択されるいずれか1つであることを特徴とする、請求項4に記載の有機発光素子。
【化10】
【化11】
【化12】
【請求項7】
前記それぞれの層から選択された1つ以上の層は、蒸着工程または溶液工程によって形成されることを特徴とする、請求項3に記載の有機発光素子。
【請求項8】
前記有機発光素子は、平板ディスプレイ装置、フレキシブルディスプレイ装置、単色又は白色の平板照明用装置、及び単色又は白色のフレキシブル照明用装置から選択されるいずれか1つに使用されることを特徴とする、請求項2に記載の有機発光素子。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、多環芳香族誘導体化合物、及びこれを用いて発光効率が著しく向上した高効率の有機発光素子に関する。
【0002】
〔背景技術〕
有機発光素子は、電子注入電極(カソード電極)から注入された電子(electron)と、正孔注入電極(アノード電極)から注入された正孔(hole)とが発光層で結合してエキシトン(exciton)を形成し、そのエキシトンがエネルギーを放出しながら発光する自発光型素子であり、このような有機発光素子は、低い駆動電圧、高い輝度、広い視野角及び速い応答速度を有し、フルカラー平板発光ディスプレイに適用可能であるという利点から、次世代光源として脚光を浴びている。
【0003】
このような有機発光素子が前記のような特徴を発揮するためには、素子内の有機層の構造を最適化し、各有機層をなす物質である正孔注入物質、正孔輸送物質、発光物質、電子輸送物質、電子注入物質、電子阻止物質などが安定かつ効率的な材料によって支えられることが先行しなければならないが、依然として、安定かつ効率的な有機発光素子用有機層の構造及び各材料の開発が継続して必要であるのが現状である。
【0004】
このように、有機発光素子の発光特性を改善できる素子の構造、及びこれを支える新たな材料に関する開発が継続して要求されているのが現状である。
【0005】
〔発明の概要〕
〔発明が解決しようとする課題〕
したがって、本発明は、素子の有機層に採用されて高効率の有機発光素子を実現できる有機発光化合物、及びこれを含む有機発光素子を提供しようとする。
【0006】
〔課題を解決するための手段〕
本発明は、上記課題を解決するために、下記化学式Aで表される化合物を提供する。
【0007】
【0008】
前記化学式Aのより具体的な構造、Q1~Q5、X及びYに関する定義、そして、化学式Aで実現される本発明に係る具体的な多環芳香族化合物については後述する。
【0009】
また、本発明は、第1電極、前記第1電極に対向する第2電極、及び前記第1電極と第2電極との間に介在する有機層を含み、前記有機層が前記化学式Aで実現される具体的な多環芳香族化合物を1種以上含む、有機発光素子を提供する。
【0010】
〔発明の効果〕
本発明に係る多環芳香族誘導体化合物は、素子内の有機層に採用されて高効率の有機発光素子を実現することができる。
【0011】
〔発明を実施するための最良の形態〕
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0012】
本発明は、有機発光素子に含まれ、下記化学式Aで表される多環芳香族誘導体化合物に関し、高効率及び長寿命の有機発光素子を実現できることを特徴とする。
【0013】
【0014】
前記化学式Aにおいて、
Q1~Q5は、互いに同一又は異なっており、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数6~50の芳香族炭化水素環であるか、または置換もしくは非置換の炭素数2~50の芳香族ヘテロ環である。
【0015】
Xは、B、P、P=O及びP=Sから選択されるいずれか1つであり、前記複数のXは、互いに同一又は異なっており、本発明の一実施例によれば、Xはボロン(B)であってもよく、構造的にボロン(B)を含む多環芳香族誘導体化合物を通じて高効率及び長寿命の有機発光素子を実現できることを特徴とする。
【0016】
Yは、N-R1、CR2R3、O、S、Se及びSiR4R5から選択されるいずれか1つであり、複数のYは、互いに同一又は異なっている。
【0017】
また、前記R1~R5は、互いに同一又は異なっており、それぞれ独立して、水素、重水素、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6~50のアリール基、置換もしくは非置換の炭素数3~30のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数2~50のヘテロアリール基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルコキシ基、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリールオキシ基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキルチオキシ基、置換もしくは非置換の炭素数5~30のアリールチオキシ基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキルアミン基、置換もしくは非置換の炭素数5~30のアリールアミン基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキルシリル基、置換もしくは非置換の炭素数5~30のアリールシリル基、ニトロ基、シアノ基及びハロゲン基から選択されるいずれか1つであってもよい。
【0018】
また、前記R1~R5は、それぞれ、前記Q1~Q5環のいずれか1つと結合して脂環族または芳香族の単環もしくは多環をさらに形成することができ、前記R2とR3及びR4とR5は、それぞれ、互いに連結されて脂環族または芳香族の単環もしくは多環をさらに形成することができる。
【0019】
一方、本発明に係る前記化学式Aは、構造的に下記のような特徴を有する。
【0020】
(i)前記Q1~Q5のうち、Q1、Q5、またはQ1及びQ5の両方が、それぞれ、下記構造式B-1~構造式B-3から選択されるいずれか1つの構造式であることを特徴とする。
【0021】
【0022】
(ii)または、前記Q1~Q5のうち、Q3が下記構造式B-4~構造式B-6から選択されるいずれか1つの構造式であることを特徴とする。
【0023】
【0024】
(iii)または、前記Q1~Q5のうち、Q1が、またはQ5が、またはQ1及びQ5が、それぞれ、前記構造式B-1~構造式B-3から選択されるいずれか1つの構造式であると、Q3が、前記構造式B-4~構造式B-6から選択されるいずれか1つの構造式であることを特徴とする。
【0025】
前記構造式B-1~構造式B-6において、
Yは、N-R1、CR2R3、O、S、Se及びSiR4R5から選択されるいずれか1つであり、複数のYは、互いに同一又は異なっており、前記R1~R5は、化学式Aでの定義と同一である。
【0026】
Q6は、置換もしくは非置換の炭素数6~50の芳香族炭化水素環であるか、または置換もしくは非置換の炭素数2~50の芳香族ヘテロ環である。
【0027】
Rは、水素、重水素、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6~50のアリール基、置換もしくは非置換の炭素数3~30のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数2~50のヘテロアリール基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルコキシ基、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリールオキシ基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキルチオキシ基、置換もしくは非置換の炭素数5~30のアリールチオキシ基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキルアミン基、置換もしくは非置換の炭素数5~30のアリールアミン基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキルシリル基、置換もしくは非置換の炭素数5~30のアリールシリル基、ニトロ基、シアノ基及びハロゲン基から選択されるいずれか1つであり、複数のRは、互いに同一又は異なっている。
【0028】
また、前記Rは、互いに、または前記Q1~Q5環のいずれか1つと結合して脂環族または芳香族の単環もしくは多環をさらに形成することができる。
【0029】
‘*’は、Q1、Q3及びQ5がそれぞれ構造式B-1~構造式B-6のいずれか1つで置換され、それぞれ化学式Aの構造に結合する部分である。
【0030】
本発明に係る化学式Aが有する特徴的な構造によって、化学式Aにおいて、Q1またはQ5が前記構造式B-1~構造式B-3から選択されるいずれか1つの構造式を有する場合に、下記化学式A-1~化学式A-6などのような骨格構造を形成することができる。
【0031】
【0032】
また、本発明に係る化学式Aが有する特徴的な構造によって、化学式Aにおいて、Q1及びQ5の両方が前記構造式B-1~構造式B-3から選択されるいずれか1つの構造式を有する場合に、下記化学式A-7~化学式A-15などのような骨格構造を形成することができる。
【0033】
【0034】
また、本発明に係る化学式Aが有する特徴的な構造によって、化学式Aにおいて、Q3が前記構造式B-4~構造式B-6から選択されるいずれか1つの構造式を有する場合に、下記化学式A-16~化学式A-21などのような骨格構造を形成することができる。
【0035】
【0036】
また、本発明に係る化学式Aが有する特徴的な構造によって、化学式Aにおいて、Q3が前記構造式B-4~構造式B-6から選択されるいずれか1つの構造式を有し、かつ、Q1またはQ5が前記構造式B-1~構造式B-3から選択されるいずれか1つの構造式を有する場合に、下記化学式A-22~化学式A-37、化学式A-38~化学式A-53などのような骨格構造を形成することができる。
【0037】
【0038】
【0039】
また、本発明に係る化学式Aが有する特徴的な構造によって、化学式Aにおいて、Q3が前記構造式B-4~構造式B-6から選択されるいずれか1つの構造式を有し、かつ、Q1及びQ5の両方が前記構造式B-1~構造式B-3から選択されるいずれか1つの構造式を有する場合に、下記化学式A-54~化学式A-79などのような骨格構造を形成することができる。
【0040】
また、この場合に、Q1及びfQ5がそれぞれ、互いに前記構造式B-1~構造式B-3から互いに同一または異なって選択される場合を具体的に示していないが、これを当然に含む。
【0041】
【0042】
このように、本発明に係る化学式Aは、化学式A-1~化学式A-79などのような様々な多環芳香族骨格構造を用いることで、有機発光素子の様々な有機物層が所望の条件を満たし、高効率及び長寿命の有機発光素子を実現することができる。
【0043】
前記化学式A-1~化学式A-79において、X、Y、R、Q1~Q6は、前記化学式Aでの定義と同一である。
【0044】
また、本発明の一実施例によれば、前記Q1~Q6は、互いに同一又は異なっており、それぞれ独立して、下記構造式Q-1で表されてもよい。
【0045】
【0046】
前記構造式Q-1において、
Zは、CRまたはNであり、前記Rは、水素、重水素、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6~50のアリール基、置換もしくは非置換の炭素数3~30のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数2~50のヘテロアリール基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルコキシ基、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリールオキシ基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキルチオキシ基、置換もしくは非置換の炭素数5~30のアリールチオキシ基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキルアミン基、置換もしくは非置換の炭素数5~30のアリールアミン基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキルシリル基、置換もしくは非置換の炭素数5~30のアリールシリル基、ニトロ基、シアノ基及びハロゲン基から選択されるいずれか1つであり、複数のZ及びRは、互いに同一又は異なっている。
【0047】
前記複数のRは、互いに結合するか、または隣接する置換基と連結されて脂環族または芳香族の単環もしくは多環を形成することができ、前記形成された脂環族または芳香族の単環もしくは多環の炭素原子は、N、S及びOから選択されるいずれか1つ以上のヘテロ原子で置換されてもよい。
【0048】
また、複数のZのうち構造的に前記化学式Aに結合する部位はC-Hである場合であって、別に定義されなくてもよい。
【0049】
一方、本発明において「置換もしくは非置換の」という用語は、Q1~Q3、R、R1~R13及びR21~R24などが、それぞれ、重水素、シアノ基、ハロゲン基、ヒドロキシ基、ニトロ基、炭素数1~24のアルキル基、炭素数3~24のシクロアルキル基、炭素数1~24のハロゲン化されたアルキル基、炭素数1~24のアルケニル基、炭素数1~24のアルキニル基、炭素数1~24のヘテロアルキル基、炭素数1~24のヘテロシクロアルキル基、炭素数6~24のアリール基、炭素数6~24のアリールアルキル基、炭素数2~24のヘテロアリール基、炭素数2~24のヘテロアリールアルキル基、炭素数1~24のアルコキシ基、炭素数1~24のアルキルアミノ基、炭素数1~24のアリールアミノ基、炭素数1~24のヘテロアリールアミノ基、炭素数1~24のアルキルシリル基、炭素数1~24のアリールシリル基、及び炭素数1~24のアリールオキシ基からなる群から選択された1又は2以上の置換基で置換されるか、前記置換基のうちの2以上の置換基が連結された置換基で置換されるか、またはいかなる置換基も有しないことを意味する。
【0050】
また、前記「置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基」、「置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリール基」などでの前記アルキル基またはアリール基の炭素数の範囲は、前記置換基が置換された部分を考慮せずに非置換のものと見なしたときのアルキル部分またはアリール部分を構成する全炭素数を意味する。例えば、パラ位にブチル基が置換されたフェニル基は、炭素数4のブチル基で置換された炭素数6のアリール基に該当することを意味する。
【0051】
また、本発明において、隣接する基と互いに結合して環を形成するという意味は、隣接する基と互いに結合して置換もしくは非置換の脂環族または芳香族環を形成できることを意味し、「隣接する置換基」は、当該置換基が置換された原子と直接連結された原子に置換された置換基、当該置換基と立体構造的に最も近く位置した置換基、または当該置換基が置換された原子に置換された他の置換基を意味することができる。例えば、ベンゼン環においてオルト(ortho)位に置換された2個の置換基、及び脂肪族環において同一炭素に置換された2個の置換基は、互いに「隣接する置換基」として解釈され得る。
【0052】
本発明において、アルキル基は、直鎖または分岐鎖であってもよく、炭素数は、特に限定されないが、1~20であることが好ましい。具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n-プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、1-メチル-ブチル基、1-エチル-ブチル基、ペンチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、ヘキシル基、n-ヘキシル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、4-メチル-2-ペンチル基、3,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、ヘプチル基、n-ヘプチル基、1-メチルヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基、オクチル基、n-オクチル基、tert-オクチル基、1-メチルヘプチル基、2-エチルヘキシル基、2-プロピルペンチル基、n-ノニル基、2,2-ジメチルヘプチル基、1-エチル-プロピル基、1,1-ジメチル-プロピル基、イソヘキシル基、2-メチルペンチル基、4-メチルヘキシル基、5-メチルヘキシル基などがあるが、これらに限定されない。
【0053】
本発明において、アルケニル基は、直鎖または分岐鎖を含み、他の置換基によってさらに置換されてもよく、具体的には、ビニル基、1-プロペニル基、イソプロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、3-メチル-1-ブテニル基、1,3-ブタジエニル基、アリル基、1-フェニルビニル-1-イル基、2-フェニルビニル-1-イル基、2,2-ジフェニルビニル-1-イル基、2-フェニル-2-(ナフチル-1-イル)ビニル-1-イル基、2,2-ビス(ジフェニル-1-イル)ビニル-1-イル基、スチルベニル基、スチレニル基などがあるが、これらに限定されない。
【0054】
本発明において、アルキニル基もまた、直鎖または分岐鎖を含み、他の置換基によってさらに置換されてもよく、エチニル(ethynyl)、2-プロピニル(2-propynyl)などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0055】
本発明において、シクロアルキル基は、単環または多環を含み、他の置換基によってさらに置換されてもよく、多環とは、シクロアルキル基が他の環基と直接連結または縮合された基を意味するものであって、他の環基とは、シクロアルキル基であってもよいが、他の種類の環基、例えば、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基などであってもよい。具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、3-メチルシクロペンチル基、2,3-ジメチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、3-メチルシクロヘキシル基、4-メチルシクロヘキシル基、2,3-ジメチルシクロヘキシル基、3,4,5-トリメチルシクロヘキシル基、4-tert-ブチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などがあるが、これに限定されない。
【0056】
本発明において、ヘテロシクロアルキル基は、O、S、Se、NまたはSiなどの異種原子を含むものであって、これもまた単環または多環を含み、他の置換基によってさらに置換されてもよく、多環とは、ヘテロシクロアルキル基が他の環基と直接連結または縮合された基を意味するものであって、他の環基とは、ヘテロシクロアルキル基であってもよいが、他の種類の環基、例えば、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基などであってもよい。
【0057】
本発明において、アリール基は、単環式または多環式であってもよく、単環式アリール基の例としては、フェニル基、ビフェニル基、テルフェニル基、スチルベン基などがあり、多環式アリール基の例としては、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、ピレニル基、ペリレニル基、テトラセニル基、クリセニル基、フルオレニル基、アセナフタセニル基、トリフェニレン基、フルオランテン基などがあるが、本発明の範囲がこれらの例のみに限定されるものではない。
【0058】
本発明において、ヘテロアリール基は、異種原子を含むヘテロ環基であって、その例としては、チオフェン基、フラン基、ピロール基、イミダゾール基、チアゾール基、オキサゾール基、オキサジアゾール基、トリアゾール基、ピリジル基、ビピリジル基、ピリミジル基、トリアジン基、トリアゾール基、アクリジル基、ピリダジン基、ピラジニル基、キノリニル基、キナゾリン基、キノキサリニル基、フタラジニル基、ピリドピリミジニル基、ピリドピラジニル基、ピラジノピラジニル基、イソキノリン基、インドール基、カルバゾール基、ベンゾオキサゾール基、ベンゾイミダゾール基、ベンゾチアゾール基、ベンゾカルバゾール基、ベンゾチオフェン基、ジベンゾチオフェン基、ベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基、フェナントロリン基、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、フェノチアジニル基などがあるが、これらのみに限定されるものではない。
【0059】
本発明において、アルコキシ基は、具体的には、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソブチルオキシ、sec-ブチルオキシ、ペンチルオキシ、iso-アミルオキシ、ヘキシルオキシなどであってもよいが、これらのみに限定されるものではない。
【0060】
本発明において、シリル基は、アルキルで置換されたシリル基、またはアリールで置換されたシリル基を意味するものであって、シリル基の具体的な例としては、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリフェニルシリル、トリメトキシシリル、ジメトキシフェニルシリル、ジフェニルメチルシリル、ジフェニルビニルシリル、メチルシクロブチルシリル、ジメチルフリルシリルなどが挙げられる。
【0061】
本発明において、アミン基は、-NH2、アルキルアミン基、アリールアミン基などであってもよく、アリールアミン基は、アリールで置換されたアミンを意味し、アルキルアミン基は、アルキルで置換されたアミンを意味するものであり、アリールアミン基の例としては、置換もしくは非置換のモノアリールアミン基、置換もしくは非置換のジアリールアミン基、または置換もしくは非置換のトリアリールアミン基があり、前記アリールアミン基中のアリール基は、単環式アリール基であってもよく、または多環式アリール基であってもよく、前記アリール基を2以上含むアリールアミン基は、単環式アリール基、多環式アリール基、または単環式アリール基と多環式アリール基を同時に含むことができる。また、前記アリールアミン基中のアリール基は、前述したアリール基の例示から選択されてもよい。
【0062】
本発明において、アリールオキシ基及びアリールチオキシ基におけるアリール基は、前述したアリール基の例示と同一であり、具体的には、アリールオキシ基としては、フェノキシ基、p-トリルオキシ基、m-トリルオキシ基、3,5-ジメチル-フェノキシ基、2,4,6-トリメチルフェノキシ基、p-tert-ブチルフェノキシ基、3-ビフェニルオキシ基、4-ビフェニルオキシ基、1-ナフチルオキシ基、2-ナフチルオキシ基、4-メチル-1-ナフチルオキシ基、5-メチル-2-ナフチルオキシ基、1-アントリルオキシ基、2-アントリルオキシ基、9-アントリルオキシ基、1-フェナントリルオキシ基、3-フェナントリルオキシ基、9-フェナントリルオキシ基などがあり、アリールチオキシ基としては、フェニルチオキシ基、2-メチルフェニルチオキシ基、4-tert-ブチルフェニルチオキシ基などがあるが、これに限定されるものではない。
【0063】
本発明において、ハロゲン基の例としては、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素がある。
【0064】
より具体的には、本発明に係る化学式Aで表される多環芳香族誘導体化合物は、下記化合物1~化合物267から選択されるいずれか1つであってもよく、これを通じて具体的な置換基を明確に確認することができ、但し、これによって本発明に係る化学式Aの範囲が限定されるものではない。
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
前記具体的な化合物から確認できるように、B、P、またはP=Oを含んで多環芳香族構造を形成し、これに置換基を導入して、その置換基の固有の特性を有する有機発光材料を合成することができ、例えば、有機発光素子の製造時に使用される正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、電子阻止層、正孔阻止層の物質などに使用される置換基を前記構造に導入することによって、各有機層で要求する条件を満たす物質を製造することができ、これを通じて、高効率の有機発光素子を実現することができる。
【0082】
また、本発明の他の一態様は、第1電極、第2電極、及び前記第1電極と第2電極との間に介在する1層以上の有機層からなる有機発光素子に関し、前記有機層に、前記化学式Aで表される本発明に係る有機発光化合物を少なくとも1個以上含むことができる。
【0083】
すなわち、本発明の一実施例に係る有機発光素子は、第1電極、第2電極、及びこれらの間に配置された有機物層を含む構造からなることができ、本発明に係る化学式Aの有機発光化合物を素子の有機物層に使用する以外は、当技術分野での通常の素子の製造方法及び材料を使用して製造することができる。
【0084】
本発明に係る有機発光素子の有機層は単層構造からなってもよいが、2層以上の有機層が積層された多層構造からなることができる。例えば、正孔注入層、正孔輸送層、正孔阻止層、発光層、電子阻止層、電子輸送層、電子注入層などを含む構造を有することができる。しかし、これに限定されず、さらに少ない数またはさらに多くの数の有機層を含むこともでき、本発明に係る好ましい有機発光素子の有機物層の構造などについては、後述する実施例でより詳しく説明する。
【0085】
以下では、本発明に係る有機発光素子の一実施例についてより詳細に説明する。
【0086】
本発明に係る有機発光素子は、アノード、正孔輸送層、発光層、電子輸送層及びカソードを含み、必要に応じて、アノードと正孔輸送層との間に正孔注入層をさらに含むことができ、また、電子輸送層とカソードとの間に電子注入層をさらに含むことができ、それ以外にも、1層又は2層の中間層をさらに形成することもでき、正孔阻止層又は電子阻止層をさらに形成させることもでき、素子の特性に応じて、様々な機能を有する有機層をさらに含むことができる。
【0087】
まず、本発明に係る有機発光素子は、発光層内に、下記化学式Cで表されるアントラセン誘導体をホスト化合物として含むことを特徴とする。
【0088】
【0089】
前記化学式Cにおいて、
R21~R28は、それぞれ、同一又は異なっており、前記化学式AのR1~R5で定義されたものと同一である。
【0090】
Ar9及びAr10は、それぞれ、互いに同一又は異なっており、互いに独立して、水素、重水素、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6~50のアリール基、置換もしくは非置換の炭素数2~30のアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数2~20のアルキニル基、置換もしくは非置換の炭素数3~30のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数5~30のシクロアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数2~50のヘテロアリール基、置換もしくは非置換の炭素数2~30のヘテロシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルコキシ基、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリールオキシ基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキルチオキシ基、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリールチオキシ基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキルアミン基、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリールアミン基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキルシリル基、及び置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリールシリル基から選択されるいずれか1つであってもよい。
【0091】
L13は、単結合であるか、または置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリーレン基、及び置換もしくは非置換の炭素数2~20のヘテロアリーレン基から選択されるいずれか1つであり、好ましくは、単結合であるか、または置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリーレン基であってもよく、kは、1~3の整数であり、前記kが2以上である場合に、それぞれのL13は互いに同一又は異なっている。
【0092】
また、前記化学式CのAr9は、下記化学式C-1で表される置換基であることを特徴とする。
【0093】
【0094】
前記化学式C-1において、
R31~R35は、それぞれ、同一又は異なっており、前記化学式AのR1~R5で定義されたものと同一であり、互いに隣接する置換基と結合して飽和あるいは不飽和環を形成することができる。
【0095】
本発明に係る有機発光素子に採用される前記化学式Cは、具体的に下記化学式C1~化学式C48から選択されるいずれか1つであってもよい。
【0096】
【0097】
【0098】
一方、本発明の一実施例に係る有機発光素子の具体的な構造、その製造方法及び各有機層の材料について説明すると、次の通りである。
【0099】
まず、基板の上部にアノード電極用物質をコーティングしてアノードを形成する。ここで、基板としては、通常の有機発光素子で使用される基板を使用するが、透明性、表面平滑性、取り扱いの容易性及び防水性に優れた有機基板又は透明プラスチック基板が好ましい。そして、アノード電極用物質としては、透明でかつ伝導性に優れた酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)などを使用する。
【0100】
前記アノード電極の上部に正孔注入層物質を真空熱蒸着又はスピンコートして正孔注入層を形成し、その次に、前記正孔注入層の上部に正孔輸送層物質を真空熱蒸着又はスピンコートして正孔輸送層を形成する。
【0101】
前記正孔注入層の材料は、当技術分野で通常使用されるものであれば、特に制限されずに使用することができ、具体的な例示として、2-TNATA[4,4’,4”-tris(2-naphthylphenyl-phenylamino)-triphenylamine]、NPD[N,N’-di(1-naphthyl)-N,N’-diphenylbenzidine)]、TPD[N,N’-diphenyl-N,N’-bis(3-methylphenyl)-1,1’-biphenyl-4,4’-diamine]、DNTPD[N,N’-diphenyl-N,N’-bis-[4-(phenyl-m-tolyl-amino)-phenyl]-biphenyl-4,4’-diamine]などを使用することができる。
【0102】
また、前記正孔輸送層の材料も、当技術分野で通常使用されるものであれば、特に制限されず、例えば、N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ジフェニル-[1,1-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(TPD)、またはN,N’-ジ(ナフタレン-1-イル)-N,N’-ジフェニルベンジジン(α-NPD)などを使用することができる。
【0103】
次いで、前記正孔輸送層の上部に正孔補助層及び発光層を続いて積層し、前記発光層の上部に選択的に、正孔阻止層を真空蒸着方法又はスピンコーティング方法で薄膜として形成することができる。前記正孔阻止層は、正孔が有機発光層を通過してカソードに流入する場合には、素子の寿命及び効率が減少するため、HOMO(Highest Occupied Molecular Orbital)レベルが非常に低い物質を使用することによって、このような問題を防止する役割を果たす。このとき、使用される正孔阻止物質は、特に制限されないが、電子輸送能力を有し、かつ発光化合物よりも高いイオン化ポテンシャルを有しなければならず、代表的にBAlq、BCP、TPBIなどが使用され得る。
【0104】
前記正孔阻止層に使用される物質として、BAlq、BCP、Bphen、TPBI、NTAZ、BeBq2、OXD-7、Liqなどがあり、これに限定されるものではない。
【0105】
このような正孔阻止層上に電子輸送層を真空蒸着方法又はスピンコーティング方法を通じて蒸着した後に電子注入層を形成し、前記電子注入層の上部にカソード形成用金属を真空熱蒸着してカソード電極を形成することによって、本発明の一実施例に係る有機発光素子が完成する。
【0106】
ここで、カソード形成用金属としては、リチウム(Li)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、アルミニウム-リチウム(Al-Li)、カルシウム(Ca)、マグネシウム-インジウム(Mg-In)、マグネシウム-銀(Mg-Ag)などを使用することができ、前面発光素子を得るためには、ITO、IZOを用いた透過型カソードを使用することができる。
【0107】
前記電子輸送層の材料としては、カソードから注入された電子を安定に輸送する機能を行う公知の電子輸送物質を用いることができる。公知の電子輸送物質の例としては、キノリン誘導体、特に、トリス(8-キノリノレート)アルミニウム(Alq3)、TAZ、Balq、ベリリウムビス(ベンゾキノリン-10-オラート)(beryllium bis(benzoquinolin-10-olate:Bebq2)、ADN、オキサジアゾール誘導体であるPBD、BMD、BNDなどのような材料を使用してもよい。
【0108】
また、前記有機層のそれぞれは、単分子蒸着方式又は溶液工程によって形成されてもよい。ここで、前記蒸着方式は、前記それぞれの層を形成するための材料として使用される物質を真空又は低圧状態で加熱などを通じて蒸発させて薄膜を形成する方法を意味し、前記溶液工程は、前記それぞれの層を形成するための材料として使用される物質を溶媒と混合し、これをインクジェット印刷、ロールツーロールコーティング、スクリーン印刷、スプレーコーティング、ディップコーティング、スピンコーティングなどのような方法を通じて薄膜を形成する方法を意味する。
【0109】
また、本発明に係る有機発光素子は、平板ディスプレイ装置、フレキシブルディスプレイ装置、単色又は白色の平板照明用装置、及び単色又は白色のフレキシブル照明用装置から選択される装置に使用することができる。
【0110】
〔発明を実施するための形態〕
以下、好ましい実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。しかし、これらの実施例は、本発明をより具体的に説明するためのもので、本発明の範囲がこれによって制限されないということは、当業界における通常の知識を有する者には自明であろう。
【0111】
合成例1:化合物25の合成
(1)合成例1-1.<1-a>の合成
下記[反応式1]によって<1-a>を合成した。
【0112】
【0113】
1000mLの反応器に1,3-ジブロモ-5-メトキシベンゼン50g(188mmol)、ジフェニルアミン31.8g(188mmol)、ナトリウムtert-ブトキシド36.1g(376mmol)、ビス(トリ-tert-ブチルホスフィン)Pd(0)1.9g(4mmol)、トルエン500mLを入れ、12時間還流撹拌した。反応終結後、反応物を層分離し、有機層を減圧濃縮した。カラムクロマトグラフィーで分離して<1-a>33.3gを得た。(収率50%)。
【0114】
(2)合成例1-2.<1-b>の合成
下記[反応式2]によって<1-b>を合成した。
【0115】
【0116】
1000mLの反応器に3-ブロモベンゾチオフェン50g(235mmol)、アニリン21.9g(235mmol)、酢酸パラジウム1.1g(5mmol)、ナトリウムtert-ブトキシド45.1g(469mmol)、ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル2g(5mmol)、トルエン500mLを入れ、12時間還流撹拌した。反応終了後、濾過して濾液を濃縮し、カラムクロマトグラフィーで分離して<1-b>50gを得た。(収率92%)。
【0117】
(3)合成例1-3.<1-c>の合成
下記[反応式3]によって<1-c>を合成した。
【0118】
【0119】
1000mLの反応器に<1-a>33.3g(94mmol)、<1-b>21.2g(94mmol)、ナトリウムtert-ブトキシド18.1g(188mmol)、ビス(トリ-tert-ブチルホスフィン)Pd(0)1g(2mmol)、トルエン400mLを入れ、12時間還流撹拌した。反応終結後、反応物を層分離し、有機層を減圧濃縮した。カラムクロマトグラフィーで分離して<1-c>39.5gを得た。(収率80%)。
【0120】
(4)合成例1-4.<1-d>の合成
下記[反応式4]によって<1-d>を合成した。
【0121】
【0122】
乾燥された500mLの反応器に<1-c>39.5g(1.1mmol)、酢酸200mL、臭化水素200mLを入れ、24時間還流撹拌した。反応終了後、過量の水を入れ、析出された固体を濾過し、カラムクロマトグラフィーで分離して<1-d>35gを得た。(収率81.5%)。
【0123】
(5)合成例1-5.<1-e>の合成
下記[反応式5]によって<1-e>を合成した。
【0124】
【0125】
250mLの反応器に<1-d>35g(95mmol)、炭酸カリウム25g(120mmol)、1-ブロモ-3-フルオロベンゼン25g(142.5mmol)、1-メチル-2-ピロリドン400mLを入れ、24時間還流撹拌した。反応終了後、過量の水を入れ、析出された固体を濾過し、カラムクロマトグラフィーで分離して<1-e>31g得た。(収率85.4%)。
【0126】
(6)合成例1-6.<1-f>の合成
下記[反応式6]によって<1-f>を合成した。
【0127】
【0128】
1000mLの反応器に1,3-ジブロモ-5-クロロベンゼン30g(111mmol)、ジフェニルアミン39.4g(233mmol)、ナトリウムtert-ブトキシド32g(333mmol)、ビス(トリ-tert-ブチルホスフィン)Pd(0)1.7g(3mmol)、トルエン400mLを入れ、12時間還流撹拌した。反応終結後、反応物を層分離し、有機層を減圧濃縮した後、カラムクロマトグラフィーで分離して<1-f>38.5gを得た。(収率82.3%)。
【0129】
(7)合成例1-7.<1-g>の合成
下記[反応式7]によって<1-g>を合成した。
【0130】
【0131】
1000mLの反応器に<1-f>38.5g(83mmol)、アニリン8g(83mmol)、ナトリウムtert-ブトキシド16.6g(172mmol)、ビス(トリ-tert-ブチルホスフィン)Pd(0)0.9g(2mmol)、トルエン400mLを入れ、12時間還流撹拌した。反応終結後、反応物を層分離し、有機層を減圧濃縮した後、カラムクロマトグラフィーで分離して<1-g>40.2gを得た。(収率92.3%)。
【0132】
(8)合成例1-8.<1-h>の合成
下記[反応式8]によって<1-h>を合成した。
【0133】
【0134】
1000mLの反応器に<1-e>31g(48mmol)、<1-g>24.4g(48mmol)、ナトリウムtert-ブトキシド16.6g(172mmol)、ビス(トリ-tert-ブチルホスフィン)Pd(0)0.9g(2mmol)、トルエン400mLを入れ、12時間還流撹拌した。反応終結後、反応物を層分離し、有機層を減圧濃縮した後、カラムクロマトグラフィーで分離して<1-h>43.4gを得た。(収率89.3%)。
【0135】
(9)合成例1-9.<化合物25>の合成
下記[反応式9]によって<化合物25>を合成した。
【0136】
【0137】
1000mLの反応器に<1-h>43.4g(41mmol)、ジクロロベンゼン450mLを入れ、0℃で三臭化ホウ素20.5g(82mmol)を滴加した後、常温で2時間撹拌し、180℃で18時間撹拌した。反応終了後、常温で酢酸ナトリウム水溶液を入れて撹拌し、酢酸エチルで抽出した後、有機層を濃縮し、カラムクロマトグラフィーで分離して<化合物25>5.3gを得た。(収率15.7%)。
【0138】
合成例2:化合物42の合成
(1)合成例2-1.<2-a>の合成
下記[反応式10]によって<2-a>を合成した。
【0139】
【0140】
前記合成例1-3において、<1-a>の代わりに3-ブロモ-5-クロロ-N,N-ジフェニルアニリンを用いた以外は、同様の方法で合成して<2-a>18.5gを得た。(収率74.1%)。
【0141】
(2)合成例2-2.<2-b>の合成
下記[反応式11]によって<2-b>を合成した。
【0142】
【0143】
前記合成例1-7において、<1-f>の代わりに<2-a>を用いた以外は、同様の方法で合成して<2-b>24.1gを得た。(収率84%)。
【0144】
(3)合成例2-3.<2-c>の合成
下記[反応式12]によって<2-c>を合成した。
【0145】
【0146】
前記合成例1-8において、<1-g>の代わりに<2-b>を用いた以外は、同様の方法で合成して<2-c>30.5gを得た。(収率78.4%)。
【0147】
(4)合成例2-4.<化合物42>の合成
下記[反応式13]によって<化合物42>を合成した。
【0148】
【0149】
前記合成例1-9において、<1-h>の代わりに<2-c>を用いた以外は、同様の方法で合成して<化合物42>3.4gを得た。(収率12.5%)。
【0150】
合成例3:化合物55の合成
(1)合成例3-1.<3-a>の合成
下記[反応式14]によって<3-a>を合成した。
【0151】
【0152】
前記合成例1-5において、1-ブロモ-3-フルオロベンゼンの代わりに3,4-ジブロモチオフェンを用いた以外は、同様の方法で合成して<3-a>23.4gを得た。(収率69.5%)。
【0153】
(2)合成例3-2.<3-b>の合成
下記[反応式15]によって<3-b>を合成した。
【0154】
【0155】
前記合成例1-8において、<1-e>の代わりに<3-a>を用いた以外は、同様の方法で合成して<3-b>28.6gを得た。(収率77.4%)。
【0156】
(3)合成例3-3.<化合物55>の合成
下記[反応式16]によって<化合物55>を合成した。
【0157】
【0158】
前記合成例1-9において、<1-h>の代わりに<3-b>を用いた以外、同様の方法で合成して<化合物55>4.1gを得た。(収率14.5%)。
【0159】
合成例4:化合物86の合成
(1)合成例4-1.<4-a>の合成
下記[反応式17]によって<4-a>を合成した。
【0160】
【0161】
前記合成例1-3において、<1-a>及び<1-b>の代わりに、3-ブロモ-5-クロロ-N,N-ジフェニルアニリン、及びN-フェニルベンゾフラン-3-アミンを用いた以外は、同様の方法で合成して<4-a>35.6gを得た。(収率67.1%)。
【0162】
(2)合成例4-2.<4-b>の合成
下記[反応式18]によって<4-b>を合成した。
【0163】
【0164】
前記合成例1-7において、<1-f>の代わりに<4-a>を用いた以外は、同様の方法で合成して<4-b>28.6gを得た。(収率74.8%)。
【0165】
(3)合成例4-3.<4-c>の合成
下記[反応式19]によって<4-c>を合成した。
【0166】
【0167】
前記合成例1-8において、<1-g>の代わりに<4-b>を用いた以外、同様の方法で合成して<4-c>21.4gを得た。(収率72.7%)。
【0168】
(4)合成例4-4.<化合物86>の合成
下記[反応式20]によって<化合物86>を合成した。
【0169】
【0170】
前記合成例1-9において、<1-h>の代わりに<4-c>を用いた以外、同様の方法で合成して<化合物86>2.7gを得た。(収率12.5%)。
【0171】
合成例5:化合物92の合成
(1)合成例5-1.<5-a>の合成
下記[反応式21]によって<5-a>を合成した。
【0172】
【0173】
前記合成例1-3において、<1-a>及び<1-b>の代わりに、N-フェニルベンゾフラン-3-アミン、及び1-ブロモ-3-フルオロベンゼンを用いた以外は、同様の方法で合成して<5-a>35.7gを得た。(収率78.1%)。
【0174】
(2)合成例5-2.<5-b>の合成
下記[反応式22]によって<5-b>を合成した。
【0175】
【0176】
前記合成例1-5において、1-ブロモ-3-フルオロベンゼン及び<1-d>の代わりに、1,3-ジヒドロキシベンゼン及び<5-a>を用いた以外、同様の方法で合成して<5-b>29.4gを得た。(収率67.8%)。
【0177】
合成例5-3.<化合物92>の合成
下記[反応式23]によって<化合物92>を合成した。
【0178】
【0179】
前記合成例1-9において、<1-h>の代わりに<5-b>を用いた以外、同様の方法で合成して<化合物92>3.3gを得た。(収率22.5%)。
【0180】
実施例1~5:有機発光素子の製造
ITOガラスの発光面積が2mm×2mmのサイズとなるようにパターニングした後、洗浄した。前記ITOガラスを真空チャンバに装着した後、ベース圧力が1×10-7torrとなるようにした後、前記ITO上にDNTPD(700Å)、化学式H(250Å)の順に成膜した。発光層は、下記に記載されたホスト(BH1)と本発明の化合物(3wt%)とを混合して成膜(250Å)した後、以降に電子輸送層として化学式E-1と化学式E-2を1:1の比で300Å、電子注入層として化学式E-1を5Å、Al(1000Å)の順に成膜して、有機発光素子を製造した。前記有機発光素子の発光特性は0.4mAで測定した。
【0181】
【0182】
比較例1~2
前記実施例1~5で使用された化合物の代わりに[BD1]及び[BD2]を用いた以外は、同様にして有機発光素子を作製し、前記有機発光素子の発光特性は0.4mAで測定した。前記[BD1]及び[BD2]の構造は、次の通りである。
【0183】
【0184】
実施例1~5、比較例1~2によって製造された有機発光素子に対して、駆動電圧及び外部量子効率を測定し、その結果を下記表1に示した。
【0185】
【0186】
前記表1に示すように、本発明に係る化合物を採用した有機発光素子は、比較例のBD1及びBD2化合物を採用した素子に比べて高い発光効率を有することで、高効率の有機発光素子を実現することができる。
【0187】
〔産業上の利用可能性〕
本発明に係る多環芳香族誘導体化合物は、素子内の有機層に採用されて高効率の有機発光素子を実現できるので、平板ディスプレイ、フレキシブルディスプレイなどの様々なディスプレイ装置、及び単色又は白色の平板照明、単色又は白色のフレキシブル照明などの照明装置に産業的に有用に活用することができる。