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特許7576629電気活性デバイスにおける固定化された緩衝剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】電気活性デバイスにおける固定化された緩衝剤
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/153 20060101AFI20241024BHJP
   G02F 1/15 20190101ALI20241024BHJP
   G02F 1/1516 20190101ALI20241024BHJP
【FI】
G02F1/153
G02F1/15 508
G02F1/1516
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022549135
(86)(22)【出願日】2021-02-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-03
(86)【国際出願番号】 US2021017740
(87)【国際公開番号】W WO2021163392
(87)【国際公開日】2021-08-19
【審査請求日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】62/976,681
(32)【優先日】2020-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500115826
【氏名又は名称】ジェンテックス コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100107537
【弁理士】
【氏名又は名称】磯貝 克臣
(72)【発明者】
【氏名】ルーマン スティーヴン ディー
(72)【発明者】
【氏名】バウマン ケルヴィン エル
(72)【発明者】
【氏名】フランツ スー エフ
【審査官】植田 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-514799(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0033838(US,A1)
【文献】特表2000-506629(JP,A)
【文献】特開2009-300494(JP,A)
【文献】特開2007-298713(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0210807(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0147680(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/15-1/163
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1表面及び第2表面を有する第1基材と、
第3表面及び第4表面を有する第2基材であって、前記第2基材が前記第1基材と離間して配置されている、第2基材と、
前記第2表面と関連付けられた第1電極と、
前記第3表面と関連付けられた第2電極と、
前記第1電極に関連付けられた陰極膜であって、前記陰極膜がその上に第1ポリマーマトリックス中に取り込まれることを介して固定化された陰極成分を含み、前記陰極成分が第1還元電位を有する、陰極膜と、
前記第2電極に関連付けられた陽極膜であって、前記陽極膜がその上に第2ポリマーマトリックス中に取り込まれることを介して固定化された陽極成分を含み、前記陽極成分が第1酸化電位を有する、陽極膜と、
前記第1ポリマーマトリックス中に取り込まれることを介して前記陰極膜に含まれる陰極緩衝剤成分であって、前記陰極緩衝剤成分が第1還元電位を有し、前記緩衝剤成分の前記第1還元電位が前記陰極成分の前記第1還元電位よりも負ではない、陰極緩衝剤成分、及び、前記第2ポリマーマトリックス中に取り込まれることを介して前記陽極膜に含まれる陽極緩衝剤成分であって、前記陽極緩衝剤成分が第1酸化電位を有し、前記緩衝剤成分の前記第1酸化電位が前記陽極成分の前記第1酸化電位よりも正ではない、陽極緩衝剤成分、のうちの少なくとも一つと、
を備え、
前記陰極成分及び陽極成分のうちの少なくとも一つは、エレクトロクロミックであり、
前記陰極膜は、前記第1ポリマーマトリックスを含み、当該第1ポリマーマトリックスは、複数のモノマー単位を含む骨格を有し、
前記陰極緩衝剤成分は、前記骨格のモノマー単位間の1または複数の位置に配置されている
ことを特徴とするデバイス。
【請求項2】
第1表面及び第2表面を有する第1基材と、
第3表面及び第4表面を有する第2基材であって、前記第2基材が前記第1基材と離間して配置されている、第2基材と、
前記第2表面と関連付けられた第1電極と、
前記第3表面と関連付けられた第2電極と、
前記第1電極に関連付けられた陰極膜であって、前記陰極膜がその上に第1ポリマーマトリックス中に取り込まれることを介して固定化された陰極成分を含み、前記陰極成分が第1還元電位を有する、陰極膜と、
前記第2電極に関連付けられた陽極膜であって、前記陽極膜がその上に第2ポリマーマトリックス中に取り込まれることを介して固定化された陽極成分を含み、前記陽極成分が第1酸化電位を有する、陽極膜と、
前記第1ポリマーマトリックス中に取り込まれることを介して前記陰極膜に含まれる陰極緩衝剤成分であって、前記陰極緩衝剤成分が第1還元電位を有し、前記緩衝剤成分の前記第1還元電位が前記陰極成分の前記第1還元電位よりも負ではない、陰極緩衝剤成分、及び、前記第2ポリマーマトリックス中に取り込まれることを介して前記陽極膜に含まれる陽極緩衝剤成分であって、前記陽極緩衝剤成分が第1酸化電位を有し、前記緩衝剤成分の前記第1酸化電位が前記陽極成分の前記第1酸化電位よりも正ではない、陽極緩衝剤成分、のうちの少なくとも一つと、
を備え、
前記陰極成分及び陽極成分のうちの少なくとも一つは、エレクトロクロミックであり、
前記陰極膜は、前記第1ポリマーマトリックスを含み、当該第1ポリマーマトリックスは、骨格を有し、
前記陰極緩衝剤成分は、官能基として、1または複数の位置で前記骨格に共有結合されている
ことを特徴とするデバイス。
【請求項3】
第1表面及び第2表面を有する第1基材と、
第3表面及び第4表面を有する第2基材であって、前記第2基材が前記第1基材と離間して配置されている、第2基材と、
前記第2表面と関連付けられた第1電極と、
前記第3表面と関連付けられた第2電極と、
前記第1電極に関連付けられた陰極膜であって、前記陰極膜がその上に第1ポリマーマトリックス中に取り込まれることを介して固定化された陰極成分を含み、前記陰極成分が第1還元電位を有する、陰極膜と、
前記第2電極に関連付けられた陽極膜であって、前記陽極膜がその上に第2ポリマーマトリックス中に取り込まれることを介して固定化された陽極成分を含み、前記陽極成分が第1酸化電位を有する、陽極膜と、
前記第1ポリマーマトリックス中に取り込まれることを介して前記陰極膜に含まれる陰極緩衝剤成分であって、前記陰極緩衝剤成分が第1還元電位を有し、前記緩衝剤成分の前記第1還元電位が前記陰極成分の前記第1還元電位よりも負ではない、陰極緩衝剤成分、及び、前記第2ポリマーマトリックス中に取り込まれることを介して前記陽極膜に含まれる陽極緩衝剤成分であって、前記陽極緩衝剤成分が第1酸化電位を有し、前記緩衝剤成分の前記第1酸化電位が前記陽極成分の前記第1酸化電位よりも正ではない、陽極緩衝剤成分、のうちの少なくとも一つと、
を備え、
前記陰極成分及び陽極成分のうちの少なくとも一つは、エレクトロクロミックであり、
前記陽極膜は、前記第2ポリマーマトリックスを含み、当該第2ポリマーマトリックスは、複数のモノマー単位を含む骨格を有し、
前記陽極緩衝剤成分は、前記骨格のモノマー単位間の1または複数の位置に配置されている
ことを特徴とするデバイス。
【請求項4】
第1表面及び第2表面を有する第1基材と、
第3表面及び第4表面を有する第2基材であって、前記第2基材が前記第1基材と離間して配置されている、第2基材と、
前記第2表面と関連付けられた第1電極と、
前記第3表面と関連付けられた第2電極と、
前記第1電極に関連付けられた陰極膜であって、前記陰極膜がその上に第1ポリマーマトリックス中に取り込まれることを介して固定化された陰極成分を含み、前記陰極成分が第1還元電位を有する、陰極膜と、
前記第2電極に関連付けられた陽極膜であって、前記陽極膜がその上に第2ポリマーマトリックス中に取り込まれることを介して固定化された陽極成分を含み、前記陽極成分が第1酸化電位を有する、陽極膜と、
前記第1ポリマーマトリックス中に取り込まれることを介して前記陰極膜に含まれる陰極緩衝剤成分であって、前記陰極緩衝剤成分が第1還元電位を有し、前記緩衝剤成分の前記第1還元電位が前記陰極成分の前記第1還元電位よりも負ではない、陰極緩衝剤成分、及び、前記第2ポリマーマトリックス中に取り込まれることを介して前記陽極膜に含まれる陽極緩衝剤成分であって、前記陽極緩衝剤成分が第1酸化電位を有し、前記緩衝剤成分の前記第1酸化電位が前記陽極成分の前記第1酸化電位よりも正ではない、陽極緩衝剤成分、のうちの少なくとも一つと、
を備え、
前記陰極成分及び陽極成分のうちの少なくとも一つは、エレクトロクロミックであり、
前記陽極膜は、前記第2ポリマーマトリックスを含み、当該第2ポリマーマトリックスは、骨格を有し、
前記陽極緩衝剤成分は、官能基として、1または複数の位置で前記骨格に共有結合されている
ことを特徴とするデバイス。
【請求項5】
第1表面及び第2表面を有する第1基材と、
第3表面及び第4表面を有する第2基材であって、前記第2基材が前記第1基材と離間して配置されている、第2基材と、
前記第2表面と関連付けられた第1電極と、
前記第3表面と関連付けられた第2電極と、
前記第1電極に関連付けられた陰極膜であって、前記陰極膜がその上に第1ポリマーマトリックス中に取り込まれることを介して固定化された陰極成分を含み、前記陰極成分が第1還元電位を有する、陰極膜と、
前記第2電極に関連付けられた陽極膜であって、前記陽極膜がその上に第2ポリマーマトリックス中に取り込まれることを介して固定化された陽極成分を含み、前記陽極成分が第1酸化電位を有する、陽極膜と、
前記第1ポリマーマトリックス中に取り込まれることを介して前記陰極膜に含まれる陰極緩衝剤成分であって、前記陰極緩衝剤成分が第1還元電位を有し、前記緩衝剤成分の前記第1還元電位が前記陰極成分の前記第1還元電位よりも負ではない、陰極緩衝剤成分、及び、前記第2ポリマーマトリックス中に取り込まれることを介して前記陽極膜に含まれる陽極緩衝剤成分であって、前記陽極緩衝剤成分が第1酸化電位を有し、前記緩衝剤成分の前記第1酸化電位が前記陽極成分の前記第1酸化電位よりも正ではない、陽極緩衝剤成分、のうちの少なくとも一つと、
を備え、
前記陰極成分及び陽極成分のうちの少なくとも一つは、エレクトロクロミックであり、
前記陰極膜は、前記第1ポリマーマトリックス及び第3ポリマーマトリックスを含み、
前記第3ポリマーマトリックスは、前記第1ポリマーマトリックスと1または複数の位置で架橋されており、
前記陰極緩衝剤成分は、前記第3ポリマーマトリックスに共有結合されている
ことを特徴とするデバイス。
【請求項6】
第1表面及び第2表面を有する第1基材と、
第3表面及び第4表面を有する第2基材であって、前記第2基材が前記第1基材と離間して配置されている、第2基材と、
前記第2表面と関連付けられた第1電極と、
前記第3表面と関連付けられた第2電極と、
前記第1電極に関連付けられた陰極膜であって、前記陰極膜がその上に第1ポリマーマトリックス中に取り込まれることを介して固定化された陰極成分を含み、前記陰極成分が第1還元電位を有する、陰極膜と、
前記第2電極に関連付けられた陽極膜であって、前記陽極膜がその上に第2ポリマーマトリックス中に取り込まれることを介して固定化された陽極成分を含み、前記陽極成分が第1酸化電位を有する、陽極膜と、
前記第1ポリマーマトリックス中に取り込まれることを介して前記陰極膜に含まれる陰極緩衝剤成分であって、前記陰極緩衝剤成分が第1還元電位を有し、前記緩衝剤成分の前記第1還元電位が前記陰極成分の前記第1還元電位よりも負ではない、陰極緩衝剤成分、及び、前記第2ポリマーマトリックス中に取り込まれることを介して前記陽極膜に含まれる陽極緩衝剤成分であって、前記陽極緩衝剤成分が第1酸化電位を有し、前記緩衝剤成分の前記第1酸化電位が前記陽極成分の前記第1酸化電位よりも正ではない、陽極緩衝剤成分、のうちの少なくとも一つと、
を備え、
前記陰極成分及び陽極成分のうちの少なくとも一つは、エレクトロクロミックであり、
前記陰極膜は、前記第1ポリマーマトリックス及び第3ポリマーマトリックスを含み、
前記第3ポリマーマトリックスは、前記第1ポリマーマトリックスと1または複数の位置で架橋されており、複数のモノマー単位を含む第2骨格を有しており、
前記陰極緩衝剤成分は、前記第2骨格のモノマー単位間の1または複数の位置に配置されている
ことを特徴とするデバイス。
【請求項7】
第1表面及び第2表面を有する第1基材と、
第3表面及び第4表面を有する第2基材であって、前記第2基材が前記第1基材と離間して配置されている、第2基材と、
前記第2表面と関連付けられた第1電極と、
前記第3表面と関連付けられた第2電極と、
前記第1電極に関連付けられた陰極膜であって、前記陰極膜がその上に第1ポリマーマトリックス中に取り込まれることを介して固定化された陰極成分を含み、前記陰極成分が第1還元電位を有する、陰極膜と、
前記第2電極に関連付けられた陽極膜であって、前記陽極膜がその上に第2ポリマーマトリックス中に取り込まれることを介して固定化された陽極成分を含み、前記陽極成分が第1酸化電位を有する、陽極膜と、
前記第1ポリマーマトリックス中に取り込まれることを介して前記陰極膜に含まれる陰極緩衝剤成分であって、前記陰極緩衝剤成分が第1還元電位を有し、前記緩衝剤成分の前記第1還元電位が前記陰極成分の前記第1還元電位よりも負ではない、陰極緩衝剤成分、及び、前記第2ポリマーマトリックス中に取り込まれることを介して前記陽極膜に含まれる陽極緩衝剤成分であって、前記陽極緩衝剤成分が第1酸化電位を有し、前記緩衝剤成分の前記第1酸化電位が前記陽極成分の前記第1酸化電位よりも正ではない、陽極緩衝剤成分、のうちの少なくとも一つと、
を備え、
前記陰極成分及び陽極成分のうちの少なくとも一つは、エレクトロクロミックであり、
前記陽極膜は、前記第2ポリマーマトリックス及び第4ポリマーマトリックスを含み、
前記第4ポリマーマトリックスは、前記第2ポリマーマトリックスと1または複数の位置で架橋されており、
前記陽極緩衝剤成分は、前記第4ポリマーマトリックスに共有結合されている
ことを特徴とするデバイス。
【請求項8】
第1表面及び第2表面を有する第1基材と、
第3表面及び第4表面を有する第2基材であって、前記第2基材が前記第1基材と離間して配置されている、第2基材と、
前記第2表面と関連付けられた第1電極と、
前記第3表面と関連付けられた第2電極と、
前記第1電極に関連付けられた陰極膜であって、前記陰極膜がその上に第1ポリマーマトリックス中に取り込まれることを介して固定化された陰極成分を含み、前記陰極成分が第1還元電位を有する、陰極膜と、
前記第2電極に関連付けられた陽極膜であって、前記陽極膜がその上に第2ポリマーマトリックス中に取り込まれることを介して固定化された陽極成分を含み、前記陽極成分が第1酸化電位を有する、陽極膜と、
前記第1ポリマーマトリックス中に取り込まれることを介して前記陰極膜に含まれる陰極緩衝剤成分であって、前記陰極緩衝剤成分が第1還元電位を有し、前記緩衝剤成分の前記第1還元電位が前記陰極成分の前記第1還元電位よりも負ではない、陰極緩衝剤成分、及び、前記第2ポリマーマトリックス中に取り込まれることを介して前記陽極膜に含まれる陽極緩衝剤成分であって、前記陽極緩衝剤成分が第1酸化電位を有し、前記緩衝剤成分の前記第1酸化電位が前記陽極成分の前記第1酸化電位よりも正ではない、陽極緩衝剤成分、のうちの少なくとも一つと、
を備え、
前記陰極成分及び陽極成分のうちの少なくとも一つは、エレクトロクロミックであり、
前記陽極膜は、前記第2ポリマーマトリックス及び第4ポリマーマトリックスを含み、
前記第4ポリマーマトリックスは、前記前記第2ポリマーマトリックスと1または複数の位置で架橋されており、複数のモノマー単位を含む第2骨格を有しており、
前記陽極緩衝剤成分は、前記第2骨格のモノマー単位間の1または複数の位置に配置されている
ことを特徴とするデバイス。
【請求項9】
前記陰極緩衝剤成分及び前記陽極緩衝剤成分の両方を含む
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のデバイス。
【請求項10】
前記陰極緩衝剤成分は、前記陽極膜にも含まれる
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載のデバイス。
【請求項11】
前記陽極緩衝剤成分は、前記陰極膜にも含まれる
ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載のデバイス。
【請求項12】
第1表面及び第2表面を有する第1基材と、
第3表面及び第4表面を有する第2基材であって、前記第2基材が前記第1基材と離間して配置されている、第2基材と、
前記第2表面と関連付けられた第1電極と、
前記第3表面と関連付けられた第2電極と、
前記第1電極に関連付けられた陰極膜であって、前記陰極膜がその上に第1ポリマーマトリックス中に取り込まれることを介して固定化された陰極成分を含み、前記陰極成分が第1還元電位を有する、陰極膜と、
前記第2電極に関連付けられた陽極膜であって、前記陽極膜がその上に第2ポリマーマトリックス中に取り込まれることを介して固定化された陽極成分を含み、前記陽極成分が第1酸化電位を有する、陽極膜と、
前記第1ポリマーマトリックス中に取り込まれることを介して前記陰極膜に含まれる陰極緩衝剤成分であって、前記陰極緩衝剤成分が第1還元電位を有し、前記緩衝剤成分の前記第1還元電位が前記陰極成分の前記第1還元電位よりも負ではない、陰極緩衝剤成分、及び、前記第2ポリマーマトリックス中に取り込まれることを介して前記陽極膜に含まれる陽極緩衝剤成分であって、前記陽極緩衝剤成分が第1酸化電位を有し、前記緩衝剤成分の前記第1酸化電位が前記陽極成分の前記第1酸化電位よりも正ではない、陽極緩衝剤成分、のうちの少なくとも一つと、
を備え、
前記陰極成分及び陽極成分のうちの少なくとも一つは、エレクトロクロミックであり、
前記陽極緩衝剤成分が第1構造:
【化1】
であるという特徴と、
前記陰極緩衝剤成分が第2構造:
【化2】
であるという特徴と、
の少なくとも1つを満たし、
1 ~R 8 の各々は、独立して、水素またはアルキルであり、
9 及びR 10 の各々は、独立して、1~20個の炭素及び官能基Y 1 またはY 2 を有するアルキル基であって、
前記陽極緩衝剤成分については、Y 1 及びY 2 のうちの少なくとも一つが、前記陰極膜の第1ポリマーマトリックスに共有結合されており、
前記陰極緩衝剤成分については、Y 1 及びY 2 のうちの少なくとも一つが、前記陽極膜の第2ポリマーマトリックスに共有結合されている
ことを特徴とするデバイス。
【請求項13】
第1表面及び第2表面を有する第1基材と、
第3表面及び第4表面を有する第2基材であって、前記第2基材が前記第1基材と離間して配置されている、第2基材と、
前記第2表面と関連付けられた第1電極と、
前記第3表面と関連付けられた第2電極と、
前記第1電極と関連付けられた陰極膜と、
前記第2電極と関連付けられた陽極膜と、
還元電位を有する陰極成分であって、前記陰極成分が前記陰極膜上に第1ポリマーマトリックス中に取り込まれることを介して固定化されている、陰極成分と、
酸化電位を有する陽極成分であって、前記陽極成分が前記陽極膜上に第2ポリマーマトリックス中に取り込まれることを介して固定化されている、陽極成分と、
還元電位を有する陰極緩衝剤であって、前記陰極緩衝剤の前記還元電位が前記陰極成分の前記還元電位よりも負ではなく、前記陰極緩衝剤が前記陰極膜上に前記第1ポリマーマトリックス中に取り込まれることを介して固定化されている、陰極緩衝剤、及び、酸化電位を有する陽極緩衝剤であって、前記陽極緩衝剤の前記酸化電位が前記陽極成分の前記酸化電位よりも正ではなく、前記陽極緩衝剤が前記陽極膜上に前記第2ポリマーマトリックス中に取り込まれることを介して固定化されている、陽極緩衝剤、のうちの少なくとも一つと、
を備え、
前記陰極成分及び陽極成分のうちの少なくとも一つは、エレクトロクロミックであり、
前記陰極膜は、前記第1ポリマーマトリックスを含み、
前記陰極緩衝剤は、バックボーンアプローチを介して前記第1ポリマーマトリックスと関連付けられている
ことを特徴とするデバイス。
【請求項14】
第1表面及び第2表面を有する第1基材と、
第3表面及び第4表面を有する第2基材であって、前記第2基材が前記第1基材と離間して配置されている、第2基材と、
前記第2表面と関連付けられた第1電極と、
前記第3表面と関連付けられた第2電極と、
前記第1電極と関連付けられた陰極膜と、
前記第2電極と関連付けられた陽極膜と、
還元電位を有する陰極成分であって、前記陰極成分が前記陰極膜上に第1ポリマーマトリックス中に取り込まれることを介して固定化されている、陰極成分と、
酸化電位を有する陽極成分であって、前記陽極成分が前記陽極膜上に第2ポリマーマトリックス中に取り込まれることを介して固定化されている、陽極成分と、
還元電位を有する陰極緩衝剤であって、前記陰極緩衝剤の前記還元電位が前記陰極成分の前記還元電位よりも負ではなく、前記陰極緩衝剤が前記陰極膜上に前記第1ポリマーマトリックス中に取り込まれることを介して固定化されている、陰極緩衝剤、及び、酸化電位を有する陽極緩衝剤であって、前記陽極緩衝剤の前記酸化電位が前記陽極成分の前記酸化電位よりも正ではなく、前記陽極緩衝剤が前記陽極膜上に前記第2ポリマーマトリックス中に取り込まれることを介して固定化されている、陽極緩衝剤、のうちの少なくとも一つと、
を備え、
前記陰極成分及び陽極成分のうちの少なくとも一つは、エレクトロクロミックであり、
前記陰極膜は、前記第1ポリマーマトリックスを含み、
前記陰極緩衝剤は、ペンダントアプローチを介して前記第1ポリマーマトリックスと関連付けられている
ことを特徴とするデバイス。
【請求項15】
第1表面及び第2表面を有する第1基材と、
第3表面及び第4表面を有する第2基材であって、前記第2基材が前記第1基材と離間して配置されている、第2基材と、
前記第2表面と関連付けられた第1電極と、
前記第3表面と関連付けられた第2電極と、
前記第1電極と関連付けられた陰極膜と、
前記第2電極と関連付けられた陽極膜と、
還元電位を有する陰極成分であって、前記陰極成分が前記陰極膜上に第1ポリマーマトリックス中に取り込まれることを介して固定化されている、陰極成分と、
酸化電位を有する陽極成分であって、前記陽極成分が前記陽極膜上に第2ポリマーマトリックス中に取り込まれることを介して固定化されている、陽極成分と、
還元電位を有する陰極緩衝剤であって、前記陰極緩衝剤の前記還元電位が前記陰極成分の前記還元電位よりも負ではなく、前記陰極緩衝剤が前記陰極膜上に前記第1ポリマーマトリックス中に取り込まれることを介して固定化されている、陰極緩衝剤、及び、酸化電位を有する陽極緩衝剤であって、前記陽極緩衝剤の前記酸化電位が前記陽極成分の前記酸化電位よりも正ではなく、前記陽極緩衝剤が前記陽極膜上に前記第2ポリマーマトリックス中に取り込まれることを介して固定化されている、陽極緩衝剤、のうちの少なくとも一つと、
を備え、
前記陰極成分及び陽極成分のうちの少なくとも一つは、エレクトロクロミックであり、
前記陽極膜は、前記第2ポリマーマトリックスを含み、
前記陽極緩衝剤は、バックボーンアプローチを介して前記第2ポリマーマトリックスと関連付けられている
ことを特徴とする記載のデバイス。
【請求項16】
第1表面及び第2表面を有する第1基材と、
第3表面及び第4表面を有する第2基材であって、前記第2基材が前記第1基材と離間して配置されている、第2基材と、
前記第2表面と関連付けられた第1電極と、
前記第3表面と関連付けられた第2電極と、
前記第1電極と関連付けられた陰極膜と、
前記第2電極と関連付けられた陽極膜と、
還元電位を有する陰極成分であって、前記陰極成分が前記陰極膜上に第1ポリマーマトリックス中に取り込まれることを介して固定化されている、陰極成分と、
酸化電位を有する陽極成分であって、前記陽極成分が前記陽極膜上に第2ポリマーマトリックス中に取り込まれることを介して固定化されている、陽極成分と、
還元電位を有する陰極緩衝剤であって、前記陰極緩衝剤の前記還元電位が前記陰極成分の前記還元電位よりも負ではなく、前記陰極緩衝剤が前記陰極膜上に前記第1ポリマーマトリックス中に取り込まれることを介して固定化されている、陰極緩衝剤、及び、酸化電位を有する陽極緩衝剤であって、前記陽極緩衝剤の前記酸化電位が前記陽極成分の前記酸化電位よりも正ではなく、前記陽極緩衝剤が前記陽極膜上に前記第2ポリマーマトリックス中に取り込まれることを介して固定化されている、陽極緩衝剤、のうちの少なくとも一つと、
を備え、
前記陰極成分及び陽極成分のうちの少なくとも一つは、エレクトロクロミックであり、
前記陽極膜は、前記第2ポリマーマトリックスを含み、
前記陽極緩衝剤は、ペンダントアプローチを介して前記第2ポリマーマトリックスと関連付けられている
ことを特徴とするデバイス。
【請求項17】
第1表面及び第2表面を有する第1基材と、
第3表面及び第4表面を有する第2基材であって、前記第2基材が前記第1基材と離間して配置されている、第2基材と、
前記第2表面と関連付けられた第1電極と、
前記第3表面と関連付けられた第2電極と、
前記第1電極と関連付けられた陰極膜と、
前記第2電極と関連付けられた陽極膜と、
還元電位を有する陰極成分であって、前記陰極成分が前記陰極膜上に第1ポリマーマトリックス中に取り込まれることを介して固定化されている、陰極成分と、
酸化電位を有する陽極成分であって、前記陽極成分が前記陽極膜上に第2ポリマーマトリックス中に取り込まれることを介して固定化されている、陽極成分と、
還元電位を有する陰極緩衝剤であって、前記陰極緩衝剤の前記還元電位が前記陰極成分の前記還元電位よりも負ではなく、前記陰極緩衝剤が前記陰極膜上に前記第1ポリマーマトリックス中に取り込まれることを介して固定化されている、陰極緩衝剤と、
酸化電位を有する陽極緩衝剤であって、前記陽極緩衝剤の前記酸化電位が前記陽極成分の前記酸化電位よりも正ではなく、前記陽極緩衝剤が前記陽極膜上に前記第2ポリマーマトリックス中に取り込まれることを介して固定化されている、陽極緩衝剤と、
を備え、
前記陰極成分及び陽極成分のうちの少なくとも一つは、エレクトロクロミックであり、
前記陰極緩衝剤及び前記陽極緩衝剤の各々が、バックボーンアプローチ及びペンダントアプローチのうちの少なくとも一つによって、固定化されている
ことを特徴とするデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づいて2020年2月14日に出願された「IMMOBILIZED BUFFERS IN ELECTROACTIVE DEVICES」と題する米国特許仮出願第62/976,681号の優先権を主張するものであり、当該出願の開示内容は、当該参照によって、その全体が本明細書に組み込まれる(incorporated by reference)。
【0002】
[技術分野]
本開示は、概ね電気活性デバイスに関する。より具体的には、電気活性デバイスへの緩衝剤の実装に関する。
【背景技術】
【0003】
電気活性デバイスは、長年にわたってよく知られている。十分な電位が一対の電極に印加される場合、当該電極間に配置された電気活性媒体が活性化され、一般的にその色及び/または光透過率が変化する。これを利用して、デバイス、例えば調光可能なミラー及び窓が、産業界、例えば自動車及び航空業界で、ますます人気が高まっている。
【0004】
ほとんどの自動車及び航空製品で、電気活性デバイスは、当該デバイスを活性化状態に維持するために継続的に印加される電位を必要とする。電位が取り除かれると、当該デバイスは元の非活性化状態に戻る。これらのデバイスは、一般的に自己消去型と呼ばれる。それらの電気活性媒体は、溶液相の拡散を介して所定の速度でレドックス除去によって非活性化され得るため、それらは自己消去型である。継続的に印加される電位は、非活性化速度と実質的に等しい速度で電気活性媒体を活性化するように作用する。これは、エネルギーが限られている自動車にとって、特に問題である。
【0005】
あるいは、幾つかの電気活性デバイスは、継続的に電位を印加しなくても、それらの活性化状態を維持する場合がある。これらのデバイスは、一般的に、メモリ物質を有するものと呼ばれ、当該デバイスの電気活性媒体の陽極種及び陰極種が互いに接触するのを防止することに依存する。当該互いの接触は、レドックスの自己除去及びそれによる非活性化を許容するであろう。
【0006】
更に、幾つかのデバイスでは、デバイスの耐久性を高めるために緩衝剤が実装される。当該緩衝剤は、電気活性デバイスが受ける可能性のある応力を吸収することによって、デバイスの耐久性を高め、これらの外部応力による残留活性化陽極及び陰極種の形成に対抗する。しかしながら、緩衝剤の実装は、電力の必要性を事実上高める可能性がある。自己消去型デバイスでは、緩衝剤は、非活性化の速度を促進及び増加させる可能性がある。したがって、全体的な活性化の程度を維持するために必要とされる電流は、非活性化の増加速度を補償するために増大される。更に、「メモリ物質」デバイスにおいては、緩衝剤の従来の実装は、陽極種と陰極種との間で電子をやりとりする役目を果たし得て、それにより非活性化の速度を可能にする。事実上、緩衝剤の実装により、メモリ物質デバイスの利点は、低減または排除されてしまう。したがって、定常状態で所望のレベルの活性化を維持するために、継続的に印加される電位が、低減したメモリ機能に対処する(相殺する)ために再び必要とされる可能性がある。したがって、緩衝剤によって提供されるデバイスの耐久性の利点を提供しながら、省エネルギーの「メモリ物質」デバイスの動作を許容する、改善された電気活性デバイスのニーズがある。
【発明の概要】
【0007】
本開示によれば、緩衝剤を電気活性素子内に実装することに伴う欠点及び問題は、大幅に低減または解消される。
【0008】
本開示の一態様によれば、デバイスが開示される。幾つかの実施形態では、デバイスは窓であり得る。デバイスは、第1基材、第2基材、第1電極、第2電極、陰極膜、及び、陽極膜を備え得る。第1基材は、第1及び第2表面を有し得る。同様に、第2基材は、第3及び第4表面を有し得る。更に、第2基材は、第1基材と離間して配置され得る。第1電極は、第2表面と関連付けられ得て、同様に、第2電極は、第3表面と関連付けられ得る。陰極膜は、第1電極と関連付けられ得る。更に、陰極膜は、その上に固定化された陰極成分を含み得る。陰極成分は、第1還元電位を有し得る。陽極膜は、同様に第2電極と関連付けられ得る。更に、陽極膜は、第1酸化電位を有する陽極成分を含み得る。更に、陰極緩衝剤成分は陰極膜に含まれて得て、及び/または、陽極緩衝剤成分は陽極膜に含まれ得る。陰極緩衝剤成分は、陰極成分の第1還元電位よりも負ではない第1還元電位を有し得る。陽極緩衝剤成分は、陽極成分の第1酸化電位よりも正ではない第1酸化電位を有し得る。更に、陰極成分または陽極成分のいずれかは、エレクトロクロミックであり得る。幾つかの実施形態では、陰極緩衝剤成分はまた、陽極膜に含まれ得る。同様に、別の実施形態では、陽極緩衝剤成分はまた、陰極膜に含まれ得る。
【0009】
幾つかの実施形態では、陰極膜は、複数のモノマー単位を含む骨格を有する第1ポリマーマトリックスを含み得る。このような実施形態では、陰極緩衝剤成分は、骨格のモノマー単位の間の1または複数の位置に配置され得る。別のこのような実施形態では、陰極緩衝剤成分は、官能基として1または複数の位置で骨格に共有結合され得る。更に別のこのような実施形態では、陰極膜は、第2ポリマーマトリックスを更に含み得る。第2ポリマーマトリックスは、1または複数の位置で第1ポリマーマトリックスと架橋され得る。更に、第2ポリマーマトリックスは、複数のモノマー単位を含む第2骨格を有し得る。このような実施形態では、陰極緩衝剤成分は、第2ポリマーマトリックスに共有結合され得る。追加的または代替的に、陰極緩衝剤成分は、第2骨格のモノマー単位間の1または複数の位置に配置され得る。
【0010】
別の実施形態では、陽極膜は、複数のモノマー単位を含む骨格を有する第1ポリマーマトリックスを含み得る。このような実施形態では、陽極緩衝剤成分は、骨格のモノマー単位の間の1または複数の位置に配置され得る。別のこのような実施形態では、陽極緩衝剤成分は、官能基として1または複数の位置で骨格に共有結合され得る。更に別のこのような実施形態では、陽極膜は、第2ポリマーマトリックスを更に含み得る。第2ポリマーマトリックスは、1または複数の位置で第1ポリマーマトリックスと架橋され得る。更に、第2ポリマーマトリックスは、複数のモノマー単位を含む第2骨格を有し得る。このような実施形態では、陽極緩衝剤成分は、第2ポリマーマトリックスに共有結合され得る。追加的または代替的に、陽極緩衝剤成分は、第2骨格のモノマー単位間の1または複数の位置に配置され得る。
【0011】
本開示の別の態様によれば、デバイスが同様に開示される。デバイスは、第1基材、第2基材、第1電極、第2電極、陰極膜、陽極膜、陰極成分、及び、陽極成分を備え得る。第1基材は、第1及び第2表面を有し得る。同様に、第2基材は、第3及び第4表面を有し得る。更に、第2基材は、第1基材と離間して配置され得る。第1電極は、第2表面と関連付けられ得て、同様に、第2電極は、第3表面と関連付けられ得る。陰極膜は、第1電極と関連付けられ得る。陽極膜は、同様に第2電極と関連付けられ得る。陰極成分は、還元電位を有し、陰極膜上に固定化され得る。陽極成分は、同様に酸化電位を有し、陽極膜上に固定化され得る。更に、デバイスは、陰極緩衝剤及び/または陽極緩衝剤を含み得る。陰極緩衝剤は、陰極膜上に固定化され、陰極成分の還元電位よりも負ではない還元電位を有し得る。同様に、陽極緩衝剤は、陽極膜上に固定化され、陽極成分の酸化電位よりも正ではない酸化電位を有し得る。幾つかの実施形態では、陰極及び陽極成分のうちの少なくとも一つが、エレクトロクロミックであり得る。
【0012】
幾つかの実施形態では、陰極膜は、複数のモノマー単位を含む骨格を有する第1ポリマーマトリックスを含み得る。このような実施形態では、陰極緩衝剤は、バックボーンアプローチを介して第1ポリマーマトリックスと関連付けられ得る。追加的または代替的に、陰極緩衝剤は、ペンダントアプローチを介して第1ポリマーマトリックスと関連付けられ得る。
【0013】
別の実施形態では、陽極膜は、複数のモノマー単位を含む骨格を有する第3ポリマーマトリックスを含み得る。このような実施形態では、陽極緩衝剤は、バックボーンアプローチを介して第3ポリマーマトリックスと関連付けられ得る。追加的または代替的に、陽極緩衝剤は、ペンダントアプローチを介して第3ポリマーマトリックスと関連付けられ得る。
【0014】
本開示の幾つかの態様の利点は、膜に固定化された陰極成分、陽極成分、陰極緩衝剤成分、及び/または、陽極緩衝剤成分を有する電気活性デバイスを可能化することを含み得る。したがって、固定化されていない緩衝剤実装時の非活性化の副作用を低減または排除しながら、緩衝剤実装の耐久性の利点を享受し得る、非自己消去型メモリデバイスが実現される。更に、幾つかの実施形態は、陽極膜または陰極膜の要素間で電子移動が向上するという利点を有し得る。
【0015】
本開示のこれら及び他の態様、目的、及び特徴は、当業者が以下の明細書、特許請求の範囲、及び添付図面を検討することによって理解及び認識される。本明細書に開示される各実施形態の特徴は、他の実施形態の特徴と共に、またはその代わりとして、使用され得ることも理解されるであろう。
【0016】
図面に以下が示される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、電気活性デバイスの概略図である。
【0018】
図2図2は、例示的な陽極及び陰極の緩衝剤成分である。
【0019】
図3A図3Aは、例示的な陽極緩衝剤成分である。
【0020】
図3B図3Bは、例示的な陰極緩衝剤成分である。
【0021】
図4A図4Aは、陰極膜を形成するための、重合性ヒドロキシル官能基を有する例示的陰極成分である。
【0022】
図4B図4Bは、陰極膜を形成するための、重合性ヒドロキシル官能基を有する例示的陰極成分である。
【0023】
図5A図5Aは、陽極膜を形成するための、重合性ヒドロキシル官能基を有する例示的陽極成分である。
【0024】
図5B図5Bは、陽極膜を形成するための、重合性ヒドロキシル官能基を有する例示的陽極成分である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書の説明の目的のために、添付の図面に例示され以下の明細書に記載される特定の装置及びプロセスは、添付の特許請求の範囲に規定される発明の概念の単なる例示的な実施形態であることを理解されたい。従って、特許請求の範囲においてそうでないことが明示的に述べられているのでない限り、本明細書に開示される実施形態に関連する具体的な寸法及び他の物理的特性は、限定的とみなされるべきではない。
【0026】
図1は、電気活性デバイス100の断面概略図である。電気活性デバイス100は、第1基材110、第2基材120、第1電極130、第2電極140、陰極膜150及び陽極膜160のうちの少なくとも一つ、シール170、チャンバ180、並びに、電解質媒体190、を備える。更に、電気活性デバイス100は、実質的に活性化された状態と実質的に非活性化された状態との間で動作可能である。幾つかの実施形態では、このような状態間の動作は、電気活性デバイス100の可変透過率に対応し得る。例えば、電気活性デバイス100は、サンルーフ等の窓、バッテリー、コンデンサ、ミラー等のバックミラーアセンブリ、または、電気光学フィルター、であり得る。
【0027】
第1基材110は、第1表面111及び第2表面112を有し得る。第1表面111と第2表面112は、互いに反対側に配置され、第2表面112は、第1表面110に対して第1方向に配置され得る。第1方向は、更に、第1及び第2表面111、112に実質的に直交するものとして定義され得る。例えば、窓、バックミラーアセンブリ、または、電気光学フィルターの幾つかの実施形態では、第1基材110は、電磁スペクトルの可視及び/または赤外線領域において実質的に透明であり得る。例えばバッテリーまたはコンデンサの別の実施形態では、実質的な透明度は不要であり得る。したがって、第1基材110は、実質的に半透明または不透明であり得る。第1基材110は、例えば、幾つかの材料、例えば、アルミノケイ酸塩ガラス、例えばAGCから市販されているFalcon、ボロアルミノケイ酸(「BAS」)ガラス、ポリカーボネート、例えばProfessional Plasticsから市販されておりハードコーティングされている場合があるProLens(登録商標)ポリカーボネート、ソーダライムガラス、例えば超透明ソーダライムガラス、フロートガラス、天然及び合成高分子の樹脂及びプラスチック、例えば、ポリエチレン(例えば、低及び/もしくは高密度)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリスルホン、アクリルポリマー(例えば、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA))、ポリメタクリレート、ポリイミド、ポリアミド(例えばシクロ脂肪族ジアミンドデカン二酸ポリマー(すなわち、Trogamid(登録商標) CX7323))、エポキシ、環状オレフィンポリマー(COP)(例えば、Zeonor 1420R)、環状オレフィンコポリマー(COC)(例えば、Topas 6013S-04またはMitsui Apel)、ポリメチルペンテン、セルロースエステル系プラスチック(例えば、セルローストリアセテート)、透明フルオロポリマー、ポリアクリロニトリル、並びに/または、それらの組み合わせ、のうちのいずれかから製造され得る。例示のみを目的として特定の基材材料が開示されているが、当該材料が少なくとも実質的に透明であり、かつ、適切な物理的特性、例えば、強度、並びに、デバイスの環境条件、例えば太陽からの紫外線暴露、湿度、及び、極端な温度(極高低温)、に対する耐性、を示す限り、他の多くの基材材料も同様に好適である。
【0028】
同様に、第2基材120は、第3表面123及び第4表面124を備え得る。第3表面123と第4表面124は、互いに反対側に配置され、第4表面124は、第3表面123に対して第1方向に配置される。更に、第2基材120は、第1基材110と離間して第1方向に配置され得る。したがって、第3表面123は、第2表面112に対向し得る。更に、第2基材120は、第1基材110と類似の材料、または、異なる材料、から製造され得る。したがって、幾つかの実施形態では、第2基材120は、電磁スペクトルの可視及び/または赤外線領域において実質的に透明であり得る。別の実施形態では、第2基材は、実質的に半透明または不透明であり得る。
【0029】
第1電極130は、導電性材料であり、第5表面135及び第6表面136を備える。更に、第5表面135は、第2表面112と関連付けられ得る。したがって、第5表面135は、第2表面112上に配置され得る。第1電極130の導電性材料は、電磁スペクトルの可視領域において実質的に透明であり得て、第1基材110にかなり良好に結合し、及び/または、電解質媒体190の材料からの腐食に対して一般的に耐性がある。例えば、当該導電性材料は、透明導電性酸化物(TCO)、例えば、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、インジウムドープ酸化スズ(ITO)、ドープ酸化亜鉛、酸化インジウム亜鉛、グラフェン、カーボンナノファイバー、銀ナノワイヤまたは粒子、導電性ポリマー、または、当技術分野で公知の他の材料、から作製され得る。もっとも、電気活性デバイス100がバッテリーまたはコンデンサであるような幾つかの実施形態では、第1電極130は、実質的に不透明または半透明であり得る。
【0030】
同様に、第2電極140は、導電性材料であり、第7表面147及び第8表面148を有する。更に、第8表面148は、第3表面123と関連付けられ得る。したがって、第8表面148は、第3表面123上に配置され得る。当該導電性材料は、第1電極130と同一または類似の材料から作製され得る。したがって、幾つかの実施形態では、第2電極140は、可視及び/または赤外線領域において実質的に透明であることができる。別の実施形態では、実質的な透明性は不要であり、第2電極140は実質的に半透明または不透明であり得る。更に、電気活性デバイス100がミラーである幾つかの実施形態では、第2電極140は実質的に反射性であり得る。したがって、第2電極140は、反射性及び/または導電性のコーティングを備え得る。このタイプのリフレクタの典型的なコーティングは、クロム、ロジウム、ルテニウム、銀、及び、それらの組み合わせ、を含む。
【0031】
陰極膜150は、第6表面136に関連付けられた電気活性膜である。したがって、陰極膜150は、第6表面136上に配置され得る。その通常の意味にかかわらず、「電気活性」は、特定の電位差にさらされる時、その酸化状態を変化させる構成要素を意味し得る。陰極膜150は、その上に固定化された1または複数の陰極成分を含む第1ポリマーマトリックスを含み得る。1または複数の陰極成分が電気活性であり得る。本明細書で使用する場合、固定化は、チャンバ180を横切って自由に拡散することを制限されることを意味し得る。更に、陰極膜150は、1または複数の陰極緩衝剤成分を含み得る。陰極緩衝剤成分は、残留還元陰極成分の形成を低減し得る任意の好適な成分であることができる。例えば、陰極緩衝剤成分は、陰極成分の還元電位よりも負ではない還元電位を有する材料であり得る。これらの還元電位の各々は、それらが第1還元状態を達成するための電位であるという意味で、第1還元電位であり得る。したがって、陰極緩衝剤は、陰極成分の酸化還元電位に基づいて個々に選択され得る。
【0032】
更に、陰極成分及び陰極緩衝剤成分は、各々、第1ポリマーマトリックスと関連して固定化され得る。幾つかの実施形態では、陰極緩衝剤成分及び陰極成分は、各々、バックボーンアプローチまたはペンダントアプローチのいずれかを介して第1ポリマーマトリックス中に取り込まれることによって固定化され得る。
【0033】
バックボーンアプローチに従うと、陰極成分及び/または陰極緩衝剤成分は、当該陰極成分及び/または陰極緩衝剤成分が第1ポリマーマトリックス骨格中に共有結合されるように、第1ポリマーマトリックス中に取り込まれ得る。例えば、陰極成分及び/または陰極緩衝剤成分は、第1ポリマーマトリックスのポリマー鎖の骨格のモノマー単位の間の1または複数の位置に配置され得る。
【0034】
ペンダントアプローチに従うと、陰極成分及び/または陰極緩衝剤成分は、各々、第1ポリマーマトリックス骨格に直接共有結合され得るか、1または複数の位置で第2ポリマーマトリックス中に取り込まれ得る及び/または結合され得る。第2ポリマーマトリックスは、1または複数の位置で、第1ポリマーマトリックスに結合されている。幾つかの実施形態では、第2ポリマーマトリックスは、各鎖が第1ポリマーマトリックスに個々に結合している多数の別個のポリマー鎖であり得る。別の実施形態では、第2ポリマーマトリックスは、第1ポリマーマトリックスとの相互侵入マトリックスであり得る。本明細書で使用する場合、相互侵入マトリックスは、別のポリマーマトリックスに共有結合していないが、二つのマトリックスの完全なまたは部分的なインターレースによって他方のポリマーマトリックスに対して固定化されている、ポリマーマトリックスである。
【0035】
陰極成分は、当該陰極成分の官能基化によって、第1及び/または第2ポリマーマトリックスに共有結合され得る。更に、第1及び第2ポリマーマトリックスは、同一であっても異なっていてもよい。
【0036】
幾つかの実施形態では、陰極成分のうちの1または複数が、エレクトロクロミックであり得る。その通常の意味にかかわらず、用語「エレクトロクロミック」は、特定の電位にさらされる時、電磁スペクトルの1または複数の波長でその消光係数の変化を示す構成要素を意味し得る。したがって、特定の電圧または電位を印加すると、陰極成分が活性化され、電磁スペクトルの1または複数の波長で、好ましくは可視範囲内で、吸光度に変化を生じさせることができる。換言すると、陰極成分は、電位が印加される場合、色及び/または透過率を変化させ得る。
【0037】
幾つかの実施形態では、陰極緩衝剤成分は、可視領域において実質的に非エレクトロクロミックであり得る。更に、陰極緩衝剤成分は、電磁スペクトル全体にわたって実質的に非エレクトロクロミックであり得る。あるいは、別の実施形態では、陰極緩衝剤成分も同様にエレクトロクロミックであり得る。幾つかのこのような実施形態では、陰極緩衝剤成分は、可視領域においてエレクトロクロミックであり得る。
【0038】
陽極膜160は、第7表面147に関連付けられた電気活性膜である。したがって、陽極膜160は、第7表面147上に配置され得る。陽極膜160は、1または複数の陽極成分を含む第3ポリマーマトリックスを含み得る。1または複数の陽極成分が電気活性であり得る。更に、陽極膜160は、1または複数の陽極緩衝剤成分を含み得る。陽極緩衝剤成分は、残留酸化陽極成分の形成を低減し得る任意の好適な成分であることができる。例えば、陽極緩衝剤成分は、陽極成分の酸化電位よりも正ではない酸化電位を有する材料であり得る。これらの酸化電位の各々は、それらが第1酸化状態を達成するための電位であるという意味で、第1酸化電位であり得る。したがって、陽極緩衝剤は、陽極成分の還元酸化電位に基づいて個々に選択され得る。
【0039】
更に、陽極成分及び陽極緩衝剤成分は、各々、第3ポリマーマトリックスと関連して固定化され得る。幾つかの実施形態では、陽極緩衝剤成分及び陽極成分は、各々、バックボーンアプローチまたはペンダントアプローチのいずれかを介して第3ポリマーマトリックス中に取り込まれることによって固定化され得る。
【0040】
バックボーンアプローチに従うと、陽極成分及び/または陰極緩衝剤成分は、当該陽極成分及び/または陽極緩衝剤成分が第3ポリマーマトリックス骨格中に共有結合されるように、第3ポリマーマトリックス中に取り込まれ得る。例えば、陽極成分及び/または陽極緩衝剤成分は、第3ポリマーマトリックスのポリマー鎖の骨格のモノマー単位の間の1または複数の位置に配置され得る。
【0041】
ペンダントアプローチに従うと、陽極成分及び/または陽極緩衝剤成分は、各々、第3ポリマーマトリックス骨格に直接共有結合され得るか、1または複数の位置で第4ポリマーマトリックス中に取り込まれ得る及び/または結合され得る。第4ポリマーマトリックスは、第3ポリマーマトリックスに結合されている。幾つかの実施形態では、第4ポリマーマトリックスは、各鎖が第3ポリマーマトリックスに個々に結合している多数の別個のポリマー鎖であり得る。別の実施形態では、第4ポリマーマトリックスは、第3ポリマーマトリックスとの相互侵入マトリックスであり得る。
【0042】
陽極成分は、当該陽極成分の官能基化によって、第3及び/または第4ポリマーマトリックスに共有結合され得る。更に、第3及び第4ポリマーマトリックスは、同一であっても異なっていてもよい。
【0043】
幾つかの実施形態では、陽極成分のうちの1または複数が、エレクトロクロミックであり得る。したがって、特定の電圧または電位を印加すると、陽極成分が活性化され、電磁スペクトルの1または複数の波長で、好ましくは可視範囲内で、吸光度に変化を生じさせることができる。換言すると、陽極成分は、電位が印加される場合、色及び/または透過率を変化させ得る。
【0044】
幾つかの実施形態では、陽極緩衝剤成分は、可視領域において実質的に非エレクトロクロミックであり得る。更に、陽極緩衝剤成分は、電磁スペクトル全体にわたって実質的に非エレクトロクロミックであり得る。あるいは、別の実施形態では、陽極緩衝剤成分も同様にエレクトロクロミックであり得る。幾つかのこのような実施形態では、陽極緩衝剤成分は、可視領域においてエレクトロクロミックであり得る。
【0045】
幾つかの実施形態では、陰極膜150及び陽極膜160の位置を入れ替えることができる。したがって、陰極膜150は代替的に第7表面147と関連付けられてもよく、陽極膜160は代替的に第6表面136と関連付けられ得る。
【0046】
本開示の一態様によれば、陰極膜150及び/または陽極膜160は、堆積により、それぞれ、第6表面136及び第7表面147と関連付けられ得る。例えば、ポリマーマトリックスは、それぞれの陰極成分または陽極成分を取り込む溶媒中に溶解され得る。次に、この溶液を第6表面136または第7表面147上に被覆し、続いて当該溶媒を除去してもよい。結果として生じる膜は、硬い、または、触れると粘着性がある。幾つかの実施形態では、続いて、機械的安定性を高めるために、ポリマーマトリックスが架橋され得る。例えば、陰極成分及び/または陽極成分と共に使用できるポリマーマトリックス系としては、置換ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリシロキサン、ポリシラン、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリロニトリル、ポリアミド、ポリイミド、ポリハロゲン化ビニリデン、それらの任意の二つ以上のコポリマー及び/または組み合わせ、が挙げられる。あるいは、陰極150及び陽極160膜は、所望の厚さ及び均一性を有する膜を提供するための任意の好適な方法を利用して調製され得る。例えば、陰極150及び陽極160膜は、メイヤーまたは他のロッドコーティングプロセスやドクターブレードドローダウンプロセスを使用して調製され、蒸着を使用して塗布され、または、スプレーコーティングとして塗布され得る。
【0047】
本開示の別の態様によれば、陰極成分及び/または陽極成分は、それぞれ、陰極150及び陽極160膜の第1、第2、第3または第4ポリマーマトリックスを形成するポリマーまたはモノマーと反応し得る少なくとも一つの重合性官能基を含み得る。あるいは、陰極成分及び/または陽極成分は、第1、第2、第3または第4ポリマーマトリックスのポリマーまたはモノマーと反応してそれぞれ陰極150及び陽極160膜を形成し得る1または複数の重合性官能基を含む化合物に取り込まれ得る。このように、陽極及び/または陰極成分は、1または複数の結合によってそれぞれの第1、第2、第3または第4ポリマーマトリックスに共有結合し得る。
【0048】
本開示の一態様によれば、陰極成分及び/または陽極成分は、ヒドロキシル基を含み得て、その結果、化合物は、縮合反応によってそれぞれの第1、第2、第3または第4ポリマーマトリックスに共有結合し得るか、または、イソシアネート官能基と反応してポリウレタンベースのポリマーマトリックスを形成し得る。また、アミンも、イソシアネート官能価と反応して、尿素とビウレットの結合を形成し得る。更に、多官能性エポキシをアミン、アルコール、もしくは無水物のような硬化剤と組み合わせることで、または、塩基もしくは酸で触媒する単独重合もしくは共重合を介することで形成され得る陰極成分及び/または陽極成分を含む他のポリマーマトリックス系も使用し得る。陰極成分及び陽極成分とそれぞれ共有結合するための第1、第2、第3、及び/または第4ポリマーマトリックスとして使用できる材料の例としては、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリシロキサン、ポリシラン、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリロニトリル、ポリアミド、ポリイミド、ポリビニリデンハライド、並びに、それらのコポリマー及び組み合わせが挙げられる。同様に、同一または異なる架橋化学物質を使用して、当該緩衝剤成分を第1、第2、第3、及び/または第4ポリマーマトリックスに共有結合させることによって、陰極及び/または陽極緩衝剤成分を、それぞれの陰極150及び/または陽極160の膜上に固定化し得る。
【0049】
幾つかの実施形態では、緩衝剤成分は、陰極成分の少なくとも一つよりも負ではなく陽極成分の少なくとも一つよりも正ではない酸化還元電位を有することができ、同一の化学構造を有する緩衝剤成分が、陰極緩衝剤成分と陽極緩衝剤成分との両方に使用することができ、当該緩衝剤成分は、当該緩衝剤成分が陰極緩衝剤成分または陽極緩衝剤成分のいずれに作用するかに基づいて異なる酸化状態にある。緩衝剤成分の例としては、フェロセン、置換フェロセン、フェロセニウム塩、置換フェロセニウム塩、及び、それらの組み合わせ、が挙げられる。
【0050】
幾つかの実施形態では、陰極膜150はまた、1または複数の陽極緩衝剤成分を含み得る。当該1または複数の陽極緩衝剤成分は、陰極緩衝剤成分と同様に陰極膜150内に取り込まれ得る。同様に、幾つかの実施形態では、陽極膜160はまた、当該1または複数の陰極緩衝剤成分を含み得る。当該1または複数の陰極緩衝剤成分は、陽極緩衝剤成分と同様に陽極膜160内に取り込まれ得る。
【0051】
シール170が、少なくとも部分的にチャンバ180を画成するように周囲に配置され得る。チャンバ180は、第1基材110と第2基材120との間に配置される。したがって、チャンバ180は、第1基材110、第2基材120、第1電極130、第2電極140、陰極膜150、及び、陽極膜160、のうちの少なくとも二つと一体化するシール170によって画成され得る。幾つかの実施形態では、シール170は、第1及び第2基材110、120の外周部にまたがり、当該外周部回りに延在し得る。別の実施形態では、シール170は、第1基材110と第2基材120との間で周方向に配置され得る。幾つかのこのような実施形態では、シール170は、第2及び/または第3表面112、123まで延在し得る。このような実施形態では、第1電極130及び陰極膜150、並びに/または、第2電極140及び陽極膜160が、シール170が配置される場所で部分的に除去され得る。あるいは、シール170は、陰極膜150及び/もしくは陽極膜160で終端し、並びに/または、それらの間で延在してもよい。
【0052】
シール170は、第1基材110、第2基材120、第1電極130、第2電極140、陰極膜150、及び、陽極膜160のうちの少なくとも二つに結合し、そして酸素及び/または水分がチャンバ170に入るのを防止し、電解質媒体190が不注意に漏出するのを防止することが可能な、任意の材料を含み得る。シール170としては、例えば、エポキシ、ウレタン、シアノアクリレート、アクリル、ポリイミド、ポリアミド、ポリスルフィド、フェノキシ樹脂、ポリオレフィン、及び、シリコーン、が挙げられる。
【0053】
電解質媒体190は、電解質種を含む。当該電解質種は、溶媒及び塩の形態であることができる。塩は、金属塩またはアンモニウム塩であり得る。電解質に用いられる好適な溶媒の例としては、3-メチルスルホラン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、テトラグライム、及び他のポリエーテル類と、エトキシエタノールなどのアルコール類と、アセトニトリル、グルタロニトリル、3-ヒドロキシプロピオニトリル、及び2-メチルグルタロニトリルなどのニトリル類と、2-アセチルブチロラクトン、及びシクロペンタノンを含むケトン類と、β-プロピオラクタン、γ-ブチロラクトン、及びγ-バレロラクトンを含む環状エステル類と、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネートと、それらの均質混合物と、が挙げられるが、これらに限定されない。好適な塩の例としては、以下の陰イオンF-、Cl-、Br-、I-、BF4 -、PF6 -、SbF6 -、AsF6 -、ClO4 -、CF3SO3 -、N(CF3SO22 -、C(CF3SO23 -、N(C25SO22 -、Al(OC(CF334 -、またはBAr4 -(式中、Arは、アリールまたはフッ素化アリール基、例えば、C65、3,5-(CF3263、またはC65であるがこれらに限定されない)の金属またはアンモニウム塩、例えば、Li+、Na+、K+、NR4 +(式中、各Rは、それぞれ、H、アルキル、またはシクロアルキルである)が挙げられる。更に、電解質媒体190は、他の材料、例えば、光安定剤、熱安定剤、及び抗酸化剤、を含み得る。更に、電解質媒体190は、チャンバ180内に配置される。幾つかの実施形態では、電解質媒体190は、ポリマーまたはゲル電解質を含み得る。ポリマー電解質は、ポリ(スチレン-ran-エチレン)、ポリスチレン-ブロック-ポリ(エチレン-ran-ブチレン)、ポリスチレン-ブロック-ポリ(エチレン/ブチレン)-ブロック-ポリスチレン、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート-ran-メチルアクリレート)、ポリウレタンもしくは他のポリマー電解質、及び/または、それらの組み合わせ、であり得る。更に、電解質媒体190は、イオン伝導率を促進するのを助ける可塑剤を含み得る。更に、電解質媒体190は、陰極150及び/または陽極160膜に部分的に浸透し得る。
【0054】
動作中、第1電極130と第2電極140との間に、所定の電位が印加され得る。したがって、電気活性陰極150及び陽極160膜は、それらの酸化状態を変化させる(すなわち、活性化される)場合がある。したがって、陰極成分及び陽極成分は、それぞれ、還元及び酸化され得る。更に、陰極成分及び陽極成分の少なくとも一つがエレクトロクロミックである場合、それぞれの種は、色を変化させる場合がある。つまり、電気活性デバイス100は、透過率を第1状態から第2状態に変化させることができる。
【0055】
電気活性デバイス100の幾つかの実施形態は、膜内に固定化された陰極成分、陽極成分、陰極緩衝剤成分、及び/または、陽極緩衝剤成分の利点を有し得る。固定化されていないデバイスでは、陰極成分、陽極成分、陰極緩衝剤成分、及び/または、陽極緩衝剤成分は、溶液中で自由である。したがって、第1電極130と第2電極140との間に電位が印加される場合、陰極成分が電極で還元され、陽極成分が別の電極で酸化される。しかしながら、還元された陰極成分及び酸化された陽極成分は、溶液中で衝突して打ち消し合い、それぞれ非還元状態と非酸化状態に戻る可能性がある。この消滅(打ち消し合い)を補償するために、陰極及び陽極成分の活性化速度を消滅速度以上に維持するために、電位が連続的に印加される。更に、このようなシステムは、電位が除去されると陰極及び陽極成分が自動的に非活性化状態に戻るという自己消去型である。したがって、陰極成分及び/または陽極成分のうちの1または複数がエレクトロクロミックである場合、電位が除去されると消光係数の変化が逆転する。
【0056】
陰極成分及び陽極成分が固定化されているデバイスでは、当該デバイスは一般的に自己消去型ではない。第1及び第2電極130、140間に電位が印加される場合、陰極成分が一方の電極で還元され、陽極成分が他方の電極で酸化される。しかしながら、これらの陰極成分と陽極成分は固定化されているため、もはや溶液中で互いに自由に遭遇したり、打ち消し合ったりしない。更に、電解質種の陰イオン及び陽イオン成分は分離し、チャンバ180全体に拡散して、電荷蓄積のバランスをとることができる。したがって、システムは実質的にもはや自己消去せず、活性化状態のままであり、消光係数の任意の変化が実質的に残る。
【0057】
しかしながら、このようなシステムが非活性化される時、陰極及び陽極成分の何らかの残留活性化が残る場合がある。様々な不純物、酸素及び/または太陽光などによる外部応力が、陰極及び陽極成分の1または複数に加えられると、活性化状態または非活性化状態の各成分の数が変化する可能性がある。問題として、レドックス反応は、一般的に、陽極種の酸化によって除去されるすべての電子が、陰極種の還元によって受け入れられる一つの電子と釣り合う必要があるように、釣り合わなければならない。したがって、活性化された陰極成分と陽極成分との間の数の不均衡を引き起こす外部応力は、レドックス反応には一般的に1対1の関係が必要であるため、残留活性化成分が残ることを意味する。したがって、残留活性成分がエレクトロクロミックである場合、デバイスの非活性状態で望ましくない残留色が現れる場合がある。
【0058】
残色の形成を防ぐために、陰極及び/または陽極緩衝剤成分を溶液に添加することができ、これらの成分は、それらのそれぞれの陰極及び/または陽極の対応物の代わりに、それらの対応物よりも容易に還元または酸化される結果として、外部応力を吸収する。あるいは、外部応力が1または複数の陽極及び/または陰極成分を活性化する場合、緩衝剤が陽極及び/または陰極成分と反応してそれらを非活性化させることができる。この反応は、緩衝剤がより容易に酸化または還元されることによって可能になる。
【0059】
しかしながら、これらの緩衝剤を溶液内に導入することにより、それらが活性化レベルを維持するために必要な電流を増大させ得るという欠点を有する。例えば、緩衝剤は、第1に、陰極成分とのレドックス反応を受け、第2に、チャンバ全体に拡散し、第3に、陽極成分とのその後のレドックス反応を受ける、ことにより、電流を生成する場合がある。このプロセスにより、非活性化をもたらし得る。同様に、逆も生じ得る。その結果、非活性化の速度が上昇する可能性がある。したがって、このような相互作用を補償するために、第1及び第2電極130、140によって印加される電流は、緩衝剤によって引き起こされる陰極及び陽極成分の非活性化速度を補償するために、当該補償の必要がない場合に必要とされるものと比較して、増大され得る。
【0060】
問題なことに、当該緩衝剤の従前の実装では、陰極種と陽極種の間で電子をやりとりし、非活性化を引き起こしていた。したがって、緩衝剤の実装は、メモリ物質の利点を低減または排除していた。場合によっては、電流が、定常状態での望ましい活性化のレベルを維持するために必要とされた。しかしながら、電気活性デバイス100は、陰極膜150及び/または陽極膜160上に固定化された陰極及び/または陽極緩衝剤成分の利点を有する。したがって、電気活性デバイス100を活性化状態に維持するための電流の必要性は、実質的に低減または除かれ得る。
【0061】
更に、陰極成分、陽極成分、陰極緩衝剤成分、及び陽極緩衝剤成分のうちの1または複数がペンダントアプローチを介して陰極膜150及び/または陽極膜160上に固定化される実施形態では、電気活性デバイス100は、種の制御された移動によって可能とされる向上した電子移動の利点を有し得る。ペンダントアプローチは、それぞれ第2/第4ポリマーマトリックスを介して第1/第3ポリマーマトリックスにつながれた成分を生成し得る。したがって、当該成分は、そのそれぞれの膜から離れて拡散する能力に関して固定化されるが、その束縛の範囲内で移動して電子を1または複数のそれぞれの陰極または陽極成分にまたはそれらの間で移動させるためのある程度の柔軟性を有している。
【0062】
図2は、例示的な陽極緩衝剤成分(「構造(IA)」)及び例示的な陰極緩衝剤成分(「構造(IB)」)をそれぞれ示す。構造(IA)及び(IB)は、同一の化学構造を有するが、その酸化状態が異なる。構造(IB)は、構造(IA)の酸化されたカチオン種である。幾つかの実施例では、陽極緩衝剤成分として使用される構造(IA)の型は、電気活性デバイス100において陰極緩衝剤成分として使用される構造(IB)の型と同一であり得る。別の実施例では、異なる型の構造(IA)及び(IB)が、それぞれの陽極緩衝剤成分及び陰極緩衝剤成分として同一の電気活性素子100内で使用され得る。
【0063】
構造を参照すると、各R1~8は、それぞれ、水素またはアルキルである。本明細書で使用する場合、用語「アルキル」は、1~10個の炭素、1~5個の炭素、または、1~3個の炭素、を有する直鎖アルキル基、分枝アルキル基、及び、シクロアルキル基を含む。アルキル基は置換または非置換であることができる。置換アルキル基は、アミノ基、チオ基、ヒドロキシ基、シアノ基、アルコキシ基、及び/または、ハロゲン基、で1または複数回置換され得る。直鎖アルキル基の非限定的な例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-へキシル基、n-ヘプチル基、及び、n-オクチル基、が挙げられる。分枝アルキル基の非限定的な例としては、イソプロピル、sec-ブチル、t-ブチル、イソブチル、ネオペンチル、及び、イソペンチル、が挙げられる。更に、架橋アルキル基が、R1~R8のうちの二つ以上を介して、両方の環に結合され得る。
【0064】
9及びR10は、それぞれ、1~20個の炭素を有する官能化アルキル基である。当該アルキル基は、1~20個の炭素、1~15個の炭素、1~10個の炭素、1~5個の炭素、5~20個の炭素、5~15個の炭素、5~10個の炭素、10~20個の炭素、10~15個の炭素、または、15個~20個の炭素を有する、直鎖アルキル基、分枝アルキル基、または、シクロアルキル基であり得る。アルキル基は置換または非置換であることができる。置換アルキル基は、アミノ基、チオ基、ヒドロキシ基、シアノ基、アルコキシ基、及び/または、ハロゲン基、で1または複数回置換され得る。直鎖アルキル基の非限定的な例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-へキシル基、n-ヘプチル基、及び、n-オクチル基が挙げられる。分枝アルキル基の非限定的な例としては、イソプロピル、sec-ブチル、t-ブチル、イソブチル、ネオペンチル、及び、イソペンチルが挙げられる。R9基及びR10基のそれぞれは、同一であっても異なっていてもよい。
【0065】
9基及びR10基の各々は、前記成分をポリマーマトリックスに共有結合するように構成された、重合性官能基Y1及びY2をそれぞれ含み得る。したがって、固定化された状態では、前記緩衝成分は、官能基Y1及び/またはY2を介してポリマーマトリックスに共有結合し得る。したがって、Y1及びY2は、それぞれ、OH、NH3、またはSi(OH)3基、または、ポリマーマトリックスに共有結合し得る任意の重合性基、であり得る。好適な重合性官能基の例としては、ビニル基、アクリレート基、メタクリレート基、ビニルエーテル基、ヒドロキシル基、イソシアネート基、オキセタン基、アミン基、及び、エポキシ基、が挙げられる。重合性官能基Y1及びY2は、同一であっても異なっていてもよい。幾つかの実施例では、R9基及びR10基のうちの一つのみが、重合性官能基を含み得る。したがって、このような実施形態では、Y1またはY2は存在しない場合がある。
【0066】
1~R8基の各々は、鉄原子に対して、同一、異なる、または対称であってもよく、R9及びR10基は、同一でも互いに異なってもよい。幾つかの実施例では、R1はR8と同一であり、R2はR7と同一であり、R3はR6と同一であり、R4はR5と同一であり、二つの環はこれらの基に関して互いに鏡像である。幾つかの実施例では、R9基とR10基は同一であり、結合は同一である。
【0067】
構造(IB)について、アニオンX-は、当該構造(IB)に好適な任意の対イオンであってよく、その例としては、ハライド、ボレート、フルオロボレート、テトラアリールボレート、ヘキサフルオロ金属またはメタロイド、スルフェート、スルホネート、スルホンアミド、カルボキシレート、及び、パークロレート、が挙げられる。好適なアニオンX-の別の非限定的な例としては、F-、Cl-、Br-、I-、BF4 -、PF6 -、SbF6 -、AsF6 -、ClO4 -、CF3SO3 -、N(CN)2 -、N(CF3SO22 -、C(CF3SO23 -、N(C25SO22 -、Al(OC(CF334 -、または、BAr4 -(式中、Arは、アリールまたはフッ素化アリール基である)、が挙げられる。一態様では、X-はBAr4 -であり、Arはペンタフルオロフェニル基または3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニルである。
【0068】
図3A及び図3Bは、それぞれ、例示的な陽極及び陰極緩衝剤成分を例示する。これらの構造では、Z及びZ’は、それぞれ、OH、または、緩衝剤をポリマーマトリックスに共有結合できる任意の重合性もしくは架橋性基、であることができる。したがって、Z及びZ’はそれぞれ、共有結合を介して緩衝剤成分をポリマーマトリックスに架橋する任意の架橋基であることができる。更に、Z及びZ’は、同一でも互いに異なってもよい。陽極及び陰極緩衝剤は、オクタ-メチルジヘキサノールフェロセン緩衝剤成分に関して以下に概説されるように合成し得るが、合成プロセスを変更して他の種類の緩衝剤成分を提供し得る。更に、オクタ-メチルジヘキサノールフェロセン緩衝剤は、追加的または代替的な工程を使用して合成され得る。
【0069】
例示的なオクタ-メチルジヘキサノールフェロセン緩衝剤を以下のように調製した。オクタ-メチルフェロセンは、購入するか、または、テトラメチルシクロペンタジエンとFeCl2から作ることができる。塩化鉄(II)が、鉄(0)及び塩化鉄(III)からその場で作製される。テトラメチルシクロペンタジエンがn-ブチルリチウムで脱プロトン化され、塩化鉄(II)と化合されてオクタ-メチルフェロセンを得る。オクタ-メチルフェロセンは、触媒としての塩化亜鉛と溶媒としてのトルエンを使用して、メチルアジピン酸無水物によるフリーデル・クラフツアシル化された。オクタメチルフェロセン30gがトルエン300mlに溶解され、この溶液にメチルアジピン酸無水物120gが加えられた。1/2時間攪拌した後、54.4gの塩化亜鉛が溶液に加えられ、これが窒素雰囲気下で少なくとも4時間、穏やかに加熱還流された。4時間以上の還流の後、60gのメチルアジピン酸無水物が反応混合物に添加され、1/2時間後に更に27.2gの塩化亜鉛が加えられた。これが窒素雰囲気下で穏やかに加熱還流され、その温度で少なくとも更に4時間保持された。反応物は<50℃に冷却され、0.2N塩酸300mlが加えられて塩化亜鉛を洗い流した。これが撹拌され、50~60℃に加熱され、分液漏斗に移された。下部の酸洗浄層が取り除かれて捨てられ、上部の有機層が反応容器に戻された。当該有機反応溶液に、更に0.2N塩酸300mlが加えられた。これが撹拌され、50~60℃に加熱された。その後、それが分液漏斗に移され、底部の酸洗浄液が取り除かれて捨てられた。当該有機溶液が300mlの水と共に反応フラスコに加えられ、攪拌され、50~60℃に加熱された。これが分液漏斗に移され、水層が取り除かれて捨てられた。残りのトルエン層が真空下で乾燥するまで取り除かれ、トルエン300mlが加えられて残りの油を溶解した。当該トルエン溶液が反応フラスコに添加され、次にメチルアジピン酸無水物30gが加えられ、1/2時間後、塩化亜鉛13.6gが加えられた。これらが少なくとも4時間穏やかに加熱還流された。当該反応混合物は<50℃に冷却され、それに0.2N塩酸300mlが加えられた。当該混合物が攪拌され、50~60℃に加熱され、分液漏斗に移された。底部の酸洗浄液が取り除かれて捨てられた。
【0070】
残った有機層が反応容器に戻され、炭酸ナトリウム一水和物24.8gと水300mlとが加えられた。この混合物が攪拌され、窒素雰囲気下で穏やかに加熱還流され、残った無水物が除去された。当該混合物が分液漏斗に移され、基層が取り除かれて捨てられた。有機層が濃縮されて、大部分がオクタメチルジメチルアジポイルフェロセンである赤色油48.2gを得た。
【0071】
当該赤色油に、乾燥テトラヒドロフラン300ml及び1.0モルBH3/THF320mlが加えられた。この溶液が室温で少なくとも24時間撹拌されて、カルボニル及びエステル基をアルキルアルコール基に還元した。脱ガスが止まるまで、メタノールがゆっくりと添加されて還元がクエンチされた。次にトルエン100mlと2N水酸化ナトリウム200mlとが加えられた。反応混合物が撹拌され、70~80℃に加熱され、分液漏斗に移された。基層が取り除かれて捨てられ、有機層に水100mlが加えられた。混合物が激しく振とうされ、水層が取り除かれて捨てられた。有機層が空蒸留されて溶媒が除去された。トルエン300mlが加えられ、真空留去され、残った褐色油35.3gが乾燥された。図3Aの所望のオクタメチルジヘキサノールフェロセン陽極緩衝剤は、HPLCにより80.5%存在し、7.2%のモノヘキサノール不純物及び6.4%のモノヘキサノールモノメチルヘキサノエート中間体を含んでいた。
【0072】
図3Bのオクタメチルジヘキサノールフェロセニウム陰極緩衝剤を形成する例示的な方法は、図3Aのオクタメチルジヘキサノールフェロセン陽極緩衝剤を変換する工程を含む。オクタメチルジヘキサノールフェロセン陽極緩衝剤の変換は、アセトニトリル溶液中の1.0当量の当該フェロセンに1.0当量のAgBF4を添加する工程を含み得る。当該混合物が75℃で4時間撹拌され、室温まで冷却された。得られた銀金属副生成物が、溶液から重力濾過された。次に、当該溶液が真空下で濃縮され、主にオクタメチルジヘキサノールフェロセニウムBF4 -陰極緩衝剤である暗緑色油が残った。
【0073】
図4Aは、任意の好適な陰極緩衝剤成分と関連付けられ得る陰極膜を形成するための重合性ヒドロキシル官能基を有する陰極成分の例を示す。陰極膜は、図4Aの陰極成分と、イソシアネートと、溶媒と、触媒と、を組み合わせることによって調製された。図4Aの陰極成分は、イソシアネートと反応して架橋膜を形成するアルコール重合性官能基を各々有する二つのC6アルキル基を含むビオロゲン系材料である。Mayerロッド法を使用して、膜がITO被覆ガラス基材上に堆積された。堆積された陰極膜が、架橋するまで窒素下で60℃で一晩硬化された。
【0074】
図4Bは、任意の好適な陰極緩衝剤成分内で使用され得る陰極膜を形成するための重合性ヒドロキシル官能基を有する陰極成分の例を示す。当該陰極成分が、当該陰極膜を形成するために使用され得る。当該陰極成分は、イソシアネートと反応して架橋膜を形成するアルコール重合性官能基を各々有する二つのC11アルキル基を有するビオロゲン系材料である。Mayerロッド法を使用して、膜がITO被覆ガラス基材上に堆積された。堆積された陰極膜が、架橋するまで窒素雰囲気下で60℃で一晩硬化された。
【0075】
図5Aは、任意の好適な陽極緩衝剤成分と共に使用され得る陽極膜を形成するための重合性ヒドロキシル官能基を有する陽極成分の例を示す。例示的な陽極膜が、当該陽極成分と、イソシアネートと、溶媒と、触媒と、を組み合わせることによって調製された。当該陽極成分は、イソシアネートと反応して架橋膜を形成する二つの重合性ヒドロキシル官能基を含むフェナジン系材料である。Mayerロッド法を使用して、膜がITO被覆ガラス基材上に堆積された。堆積された陽極膜が、架橋するまで窒素下で60℃で一晩硬化された。
【0076】
図5Bは、任意の好適な陽極緩衝剤成分と共に使用され得る陽極膜を形成するための重合性ヒドロキシル官能基を有する陽極成分の例を示す。陽極膜は、陽極成分と、イソシアネートと、溶媒と、触媒と、を組み合わせることによって調製された。当該陽極成分は、イソシアネートと反応して架橋膜を形成する二つのC6アルキルアルコール重合性官能基を含むフェナジン系材料である。Mayerロッド法を使用して、膜がITO被覆ガラス基材上に堆積された。堆積された陽極膜が、架橋するまで窒素下で60℃で一晩硬化された。
【0077】
(固定化された緩衝剤成分膜調製の例)
本開示の幾つかの態様は、以下の実施例でより詳細に例示される。具体的には、以下は、緩衝剤成分が上に固定化された陰極150及び陽極160膜の例示的な調製である。特に断りのない限り、全ての濃度は室温(20~27℃)においてである。更に、HDT(ヘキサメチレンジイソシアネート三量体、ビウレットバージョン、Sigma)、DBTDA(ジブチルスズジアセテート、Sigma)、界面活性剤、及び、溶媒を購入し、特に断りのない限り、さらなる精製することなく使用した。更に、陰極成分及び陽極成分は、本特許出願に記載の方法によって、または、当技術分野で公知の他の方法によって、作製され得る。
【0078】
例示的な陰極膜150が以下のように調製された。20mLバイアルに、スターラーバーと共に、1,1’-ジヘキサノール-4,4’-ジピリジニウム ビス(ビス(トリフルオロメタンスルホンイミド))(0.591g、1.29mmol OH)、1,1’-ジウンデカノール-4,4’-ジピリジニウム ビス(ヘキサフルオロホスフェート) (0.507g、1.29mmol OH)、1,1’-ジヘキサノール-2,2’,3,3’,4,4’,5,5’-オクタメチルフェロセニウム テトラフルオロボレート (0.050g、0.17mmol OH)、HDT(0.452g、2.50mmol NCO)、溶媒 (8.40g)、及び、界面活性剤(0.002g)を組み合わせた。水分暴露を最小限にするために当該バイアルをアルゴンで蓋をし、密封し、次いで溶解するまで室温で約20分間攪拌した。別のバイアルで、0.060gのDBTDAを9.940gの溶媒に溶解することによって触媒溶液を調製し、振とうして溶解した。洗浄及び乾燥したITO(酸化インジウムスズ)被覆ガラスシートを、#16メイヤーロッドを備えたドローダウンコーター上に配置した。次に、コーティングの直前に、69.4uL(50ppm Sn)のDBTDA溶液を、マイクロピペットを使用して反応バイアルに移した。次に、得られた溶液に蓋をし、振とうして、溶液を混合した。約2mLの反応溶液を使い捨てピペットにより取り出し、コーティングロッド近くでガラス基材の幅にわたって均一な線で分注した。コーターを始動し、ロッドを基材上で移動させて、均一なコーティングを形成した。その後、60℃に予熱され窒素でパージされたオーブンに、基材及びコーティングを移した。基材をオーブン内の平坦な位置に一晩置き、連続窒素流で硬化させた。
【0079】
例示的な陽極膜160が以下のように調製された。20mLバイアルに、スターラーバーと共に、4,4’-(フェナジン-5,10-ジイル)ビス(N-(3-ヒドロキシプロピル)-N,N-ジメチルブタン-1-アミニウム)ビス(ヘキサフルオロホスフェート)(1.512g、3.84mmol OH)、1,1’-ジヘキサノール-2,2’,3,3’,4,4’,5,5’-オクタメチルフェロセン(0.064g、0.26mmol OH)、HDT(0.674g、3.72mmol NCO)、溶媒(7.75g)、及び、界面活性剤(0.005g)を組み合わせた。水分暴露を最小限にするために当該バイアルをアルゴンで蓋をし、密封し、次いで溶解するまで室温で約20分間攪拌した。別のバイアルで、0.060gのDBTDAを9.940gの溶媒に溶解することによって触媒溶液を調製し、振とうして溶解した。洗浄及び乾燥したITO(酸化インジウムスズ)被覆ガラスシートを、#8メイヤーロッドを備えたドローダウンコーター上に配置した。次に、コーティングの直前に、69.4uL(50ppm Sn)のDBTDA溶液を、マイクロピペットを使用して反応バイアルに移した。次に、得られた溶液に蓋をし、振とうして、溶液を混合した。約2mLの反応溶液を使い捨てピペットにより取り出し、コーティングロッド近くでガラス基材の幅にわたって均一な線で分注した。コーターを始動し、ロッドを基材上で移動させて、均一なコーティングを形成した。その後、60℃に予熱され窒素でパージされたオーブンに、基材及びコーティングを移した。基材をオーブン内の平坦な位置に一晩置き、連続窒素流で硬化させた。
【0080】
この明細書では、関連する用語、例えば、「第1」、「第2」、「第3」等は、1つの構成要素または動作を他の構成要素または動作と区別する目的でのみ用いられており、そのような構成要素または動作の間の実際の相互関係または順序を必ずしも要求ないし暗示するものではない。
【0081】
本明細書で用いられる、2つ以上のアイテムの列挙で用いられる場合の「及び/または」という用語は、列挙されるアイテムのいずれか1つがそれだけで用いられ得る、あるいは、列挙されるアイテムのうち2つ以上のアイテムのあらゆる組合せが用いられ得ることを意味する。例えば、ある組成物が成分A、B及び/またはCを含有するとして記載される場合、当該組成物は、Aを単独で;Bを単独で;Cを単独で;A及びBを組合せて;A及びCを組合せて;B及びCを組合せて;または、A、B及びCを組合せて含有しうる。
【0082】
「実質的に」という用語及びその変形は、ある値またはある説明に対して等しいまたはおよそ等しい特徴を記述するものとして、当業者に理解される。例えば、「実質的に平坦な」表面は、平坦なまたはおよそ平坦な表面を示すことを意図する。さらに、「実質的に」は、二つの値が等しいまたはおよそ等しいと示すことを意図する。当業者にとって明瞭でない用語の使用がある場合、それが用いられている文脈に照らして、「実質的に」は、例えば互いの約5%以内、または互いの約2%以内など、互いの約10%以内の値を示し得る。
【0083】
用語「comprises(備える)」、「comprising(備える)」、または任意の他の変形は、要素のリスト(列挙)を備えるプロセス、方法、物品、または装置が、それらの要素のみを含むのではなく、このようなプロセス、方法、物品、または装置に明示的に列挙されもせず、固有でもない他の要素を含み得るように、非排他的包括にわたるように意図される。「comprises a...」によって始められる要素は、さらなる制約を受けずに、その要素を備えるプロセス、方法、物品、または装置において、追加の同一要素の存在を妨げない。
【0084】
幾つかの実施形態が本開示に記載されているが、多数の変形、変更、変換及び修正が、当業者によって理解され得る。本開示は、それらの言語が明示的に別段の定めをしない限り、添付の特許請求の範囲の範囲内にあるこれらの変形、変更、変換及び修正を包含することを意図していることを理解されたい。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B