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特許7576631ウエハ治具、ロボットシステム、通信方法、及びロボット教示方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】ウエハ治具、ロボットシステム、通信方法、及びロボット教示方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20241024BHJP
   B25J 13/08 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
H01L21/68 A
B25J13/08 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022555293
(86)(22)【出願日】2021-08-23
(86)【国際出願番号】 JP2021030881
(87)【国際公開番号】W WO2022074949
(87)【国際公開日】2022-04-14
【審査請求日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】17/067,423
(32)【優先日】2020-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】517340611
【氏名又は名称】カワサキロボティクス(ユーエスエー),インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】吉田 雅也
(72)【発明者】
【氏名】中原 一
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-165078(JP,A)
【文献】特開2001-156153(JP,A)
【文献】特開2005-123261(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
B25J 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
投光部と、前記投光部から照射される検出光を検出する受光部と、を備えるハンドを有するロボットに用いられるウエハ治具であって、
前記受光部へ向けて通知光を照射する光源を備え、
前記光源が前記通知光を前記受光部へ照射することにより、前記ハンド側へ情報を出力し、
前記ウエハ治具は、遮断部を備え、
前記遮断部は、前記ハンドにより前記ウエハ治具が保持されたときに、前記投光部と前記受光部の間の光路を遮断することを特徴とするウエハ治具。
【請求項2】
請求項1に記載のウエハ治具であって、
対象物を検出する対象物検出センサを備え、
前記光源は、前記対象物検出センサが前記対象物を検出したか否かを、前記情報として出力することを特徴とするウエハ治具。
【請求項3】
請求項に記載のウエハ治具であって、
前記対象物検出センサは、当該ウエハ治具の中心に設けられていることを特徴とするウエハ治具。
【請求項4】
請求項に記載のウエハ治具であって、
前記ハンドにより前記ウエハ治具が保持された状態において、前記対象物検出センサは、前記ハンドの中心に位置することを特徴とするウエハ治具。
【請求項5】
投光部と、前記投光部から照射される検出光を検出する受光部と、を備えるハンドを有するロボットに用いられるウエハ治具であって、
前記受光部へ向けて通知光を照射する光源を備え、
前記光源が前記通知光を前記受光部へ照射することにより、前記ハンド側へ情報を出力し、
前記光源の点灯/消灯が繰り返される周期、又は、光強度の強弱が繰り返される周期によって、前記情報が表現されることを特徴とするウエハ治具。
【請求項6】
請求項に記載のウエハ治具であって、
複数のセンサを備え、
それぞれのセンサの検出結果の組合せに応じて、前記周期が変化することを特徴とするウエハ治具。
【請求項7】
請求項に記載のウエハ治具であって、
複数のセンサは、2つの光センサを含み、
前記ウエハ治具の厚み方向で見た場合、2つの前記光センサの光軸が交差しており、
前記ハンドにより前記ウエハ治具が保持された状態において、前記ウエハ治具の厚み方向で見た場合の前記光軸の交差箇所は、前記ハンドの中心に位置することを特徴とするウエハ治具。
【請求項8】
投光部と、前記投光部から照射される検出光を検出する受光部と、を備えるハンドを有するロボットに用いられるウエハ治具であって、
前記受光部へ向けて通知光を照射する光源を備え、
前記光源が前記通知光を前記受光部へ照射することにより、前記ハンド側へ情報を出力し、
前記ハンドの前記投光部から照射される光を検知可能な治具受光部を備え
前記治具受光部は、前記ハンドにより前記ウエハ治具が保持されたときに、前記投光部と前記受光部の間の光路を遮断する遮断部として機能することを特徴とするウエハ治具。
【請求項9】
請求項1に記載のウエハ治具と、
前記ハンドによって前記ウエハ治具を保持可能なロボットと、
前記ロボットに指令を与えて制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記受光部を介して、前記ウエハ治具側から情報を受信することを特徴とするロボットシステム。
【請求項10】
投光部と、前記投光部から照射される検出光を検出する受光部と、を備えるハンドを有するロボットに用いられるウエハ治具であって、
前記ハンドの前記投光部から照射される光を検知可能な治具受光部を備え
前記ウエハ治具は、遮断部を備え、
前記遮断部は、前記ハンドにより前記ウエハ治具が保持されたときに、前記投光部と前記受光部の間の光路を遮断することを特徴とするウエハ治具。
【請求項11】
投光部と、前記投光部から照射される検出光を検出する受光部と、を備えるハンドを有するロボットに用いられるウエハ治具であって、
前記投光部からの前記検出光を前記受光部が受光する状態と、受光しない状態と、を切換可能な光切換部を備え、
前記光切換部の切換によって前記ハンド側へ情報を出力することを特徴とするウエハ治具。
【請求項12】
投光部と、前記投光部から照射される検出光を検出する受光部と、を備えるハンドを有するロボットと、
前記ハンドにより保持されることが可能なウエハ治具と、
の間で、前記ウエハ治具が前記ハンド側へ情報を送信する通信方法であって、
前記ウエハ治具が前記ハンドにより保持された状態とし、前記ウエハ治具が備える遮断部が前記投光部と前記受光部の間の光路を遮断する第1工程と、
前記ウエハ治具が備える光源が、前記情報に応じた通知光を前記受光部へ向けて照射する第2工程と、
を含むことを特徴とする通信方法。
【請求項13】
請求項12に記載の通信方法により、前記ウエハ治具から得られた前記情報に基づいて、前記ロボットへの指令位置を補正することを特徴とするロボット教示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ウエハを取り扱うロボットにおける治具の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体ウエハ(半導体基板)を製造するクリーンルーム内に配置され、半導体ウエハを搬送するロボットに、半導体ウエハの搬送位置を自動教示するロボットシステムが知られている。特許文献1は、この種の基板搬送用マニピュレータを開示する。
【0003】
特許文献1の基板搬送用マニピュレータは、教示治具を保持可能なハンドと、ハンドを支持するアーム部と、を備える。このマニピュレータでは、教示治具から導出された教示治具用信号伝達ケーブルが、ハンド基端部に設けたコネクタ接続部で接続され、アームの内部に導入してコントローラと接続されている。特許文献1の構成では、教示動作中に、教示治具用信号伝達ケーブルが一定の姿勢に保たれる。特許文献1は、これにより、ケーブルが周辺装置に引っ掛かって治具や装置を破損してしまったりする問題を回避できるとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-137300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の構成では、電気信号を伝達するために、治具とロボットコントローラとの間を接続する電気ケーブルが必要になる。従って、治具の小型化等が困難であった。また、電気ケーブルが必要な構成は、例えば、塵埃の発生を嫌う半導体を取り扱う用途に適していない場合があった。
【0006】
本開示は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、ロボットとの通信ケーブルを要しないウエハ治具、及び当該ウエハ治具を用いるロボットシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0007】
本開示の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0008】
本開示の第1の観点によれば、以下の構成のウエハ治具が提供される。即ち、このウエハ治具は、投光部と、前記投光部から照射される検出光を検出する受光部と、を備えるハンドを有するロボットに用いられる。前記ウエハ治具は、前記受光部へ向けて通知光を照射する光源を備える。前記ウエハ治具は、前記光源が前記通知光を前記受光部へ照射することにより、前記ハンド側へ情報を出力する。前記ウエハ治具は、遮断部を備える。前記遮断部は、前記ハンドにより前記ウエハ治具が保持されたときに、前記投光部と前記受光部の間の光路を遮断する。
【0009】
本開示の第2の観点によれば、以下の構成のウエハ治具が提供される。即ち、このウエハ治具は、投光部と、前記投光部から照射される検出光を検出する受光部と、を備えるハンドを有するロボットに用いられる。前記ウエハ治具は、前記ハンドの前記投光部から照射される光を検知可能な治具受光部を備える。前記ウエハ治具は、遮断部を備える。前記遮断部は、前記ハンドにより前記ウエハ治具が保持されたときに、前記投光部と前記受光部の間の光路を遮断する。
【0010】
本開示の第3の観点によれば、以下の構成のウエハ治具が提供される。即ち、このウエハ治具は、投光部と、前記投光部から照射される検出光を検出する受光部と、を備えるハンドを有するロボットに用いられる。前記ウエハ治具は、光切換部を備える。前記光切換部は、前記投光部からの前記検出光を前記受光部が受光する状態と、受光しない状態と、を切換可能である。前記光切換部の切換によって前記ハンド側へ情報を出力する。
【0011】
本開示の第4の観点によれば、以下の通信方法が提供される。即ち、この通信方法では、ロボットと、ウエハ治具と、の間で、前記ウエハ治具が前記ハンド側へ情報を送信する。前記ロボットは、投光部と、受光部と、を備えるハンドを有する。前記受光部は、前記投光部から照射される検出光を検出する。前記ウエハ治具は、前記ハンドにより保持されることが可能である。この通信方法は、第1工程と、第2工程と、を含む。前記第1工程では、前記ウエハ治具が前記ハンドにより保持された状態とし、前記ウエハ治具が備える遮断部が前記投光部と前記受光部の間の光路を遮断する。前記第2工程では、前記ウエハ治具が備える光源が、前記情報に応じた通知光を前記受光部へ向けて照射する。
【0012】
これにより、ウエハ治具が、ロボットが備える構成の一部(投光部と受光部)を利用して、ロボット(ひいては、ロボットを制御する制御部)と通信することが可能になる。通信ケーブルが不要になるため、ウエハ治具の小型化、簡素化、軽量化を実現できるとともに、ロボットの動きの自由度を好適に維持することができる。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、ロボットとの通信ケーブルを要しないウエハ治具、及び当該ウエハ治具を用いるロボットシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示のロボットシステムの構成を示す斜視図。
図2】ロボットシステムの一部の構成を示すブロック図。
図3】第1実施形態のウエハ治具の構成を示す平面図。
図4】第1実施形態のウエハ治具の構成を示す側面図。
図5】第1実施形態のウエハ治具を用いて対象物を検出する様子を示す部分斜視図。
図6】第2実施形態のウエハ治具の構成を示す平面図。
図7】第2実施形態のウエハ治具の構成を示す側面図。
図8】第2実施形態のウエハ治具を用いて対象物を検出する様子を示す部分斜視図。
図9】第3実施形態のウエハ治具を用いて対象物を検出する様子を示す部分斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、図面を参照して、開示される実施の形態を説明する。図1は、本開示のロボットシステム100の構成を示す斜視図である。図2は、ロボットシステム100の一部の構成を示すブロック図である。図3は、第1実施形態のウエハ治具2の構成を示す平面図である。図4は、第1実施形態のウエハ治具2の構成を示す側面図である。図5は、第1実施形態のウエハ治具2を用いて対象物9を検出する様子を示す部分斜視図である。
【0016】
図1に示すロボットシステム100は、クリーンルーム等の作業空間内でロボット1に作業を行わせるシステムである。このロボットシステム100は、例えば、ロボット1(具体的には、後述のハンド10)の位置を効率的かつ正確に教示する自動教示を行うことができる。
【0017】
ロボットシステム100は、ロボット1と、ウエハ治具(通信治具)2と、コントローラ(制御部)5と、を備える。
【0018】
ロボット1は、例えば、図略の保管装置に保管されるウエハを搬送するウエハ移載ロボットとして機能する。本実施形態では、ロボット1は、SCARA(スカラ)型の水平多関節ロボットによって実現される。SCARAは、Selective Compliance Assembly Robot Armの略称である。
【0019】
ロボット1は、図1に示すように、ハンド(エンドエフェクタ)10と、マニピュレータ11と、姿勢検出部12と、を備える。
【0020】
ハンド10は、エンドエフェクタの一種であって、概ね、平面視でV字状又はU字状に形成されている。ハンド10は、マニピュレータ11(具体的には、後述の第2リンク16)の先端に支持されている。ハンド10は、第2リンク16に対して、上下方向に延びる第3軸c3を中心として回転する。
【0021】
本実施形態のロボット1において、図1に示すように、ハンド10の先端側には、マッピングセンサ(光学式センサ)6が設けられている。マッピングセンサ6により、ウエハ等の物体の有無等の確認(マッピング)を非接触で行うことができる。本実施形態において、マッピングセンサ6は、例えば、投光部61と受光部62とを有する透過型センサから構成される。
【0022】
投光部61及び受光部62は、平面視でハンド10の中心から一側(ハンド10の先端側)に偏った位置に、適宜の間隔をあけて並べて配置されている。ここで、ハンド10の中心とは、ハンド10が円形のウエハを保持した場合の、平面視でウエハの中心に一致する位置をいう。
【0023】
投光部61は、例えば赤外光等の検出光を、受光部62へ向けて照射する。受光部62は、無線又は有線でコントローラ5と接続されている。受光部62は、検出光の受光の有無を示す電気信号をコントローラ5へ出力する。
【0024】
投光部61と受光部62の間に物体がない場合、投光部61からの検出光が受光部62に到達するため、受光部62は受光ありの電気信号を出力する。投光部61と受光部62の間に物体がある場合、投光部61からの検出光が物体によって遮られるため、受光部62は受光なしの電気信号を出力する。
【0025】
マニピュレータ11は、主として、基台13と、昇降軸14、複数のリンク(ここでは、第1リンク15及び第2リンク16)と、を備える。
【0026】
基台13は、地面(例えば、クリーンルームの床面)に固定される。基台13は、昇降軸14を支持するベース部材として機能する。
【0027】
昇降軸14は、基台13に対して上下方向に移動する。この昇降により、第1リンク15、第2リンク16、及びハンド10の高さを変更することができる。
【0028】
第1リンク15は、昇降軸14の上部に支持されている。第1リンク15は、昇降軸14に対して、上下方向に延びる第1軸c1を中心として回転する。これにより、第1リンク15の姿勢を水平面内で変更することができる。
【0029】
第2リンク16は、第1リンク15の先端に支持されている。第2リンク16は、第1リンク15に対して、上下方向に延びる第2軸c2を中心として回転する。これにより、第2リンク16の姿勢を水平面内で変更することができる。
【0030】
姿勢検出部12は、複数の回転センサ12aを備える。回転センサ12aは、例えば、エンコーダから構成される。それぞれの回転センサ12aは、ハンド10、第1リンク15、第2リンク16を駆動する図略の駆動モータのそれぞれの回転位置を検出する。各回転センサ12aは、コントローラ5と電気的に接続されており、検出された回転位置をコントローラ5に送信する。
【0031】
ウエハ治具2は、ウエハを模擬した治具であり、全体として略円板状に形成されている。ウエハ治具2は、図3に示すように、本体21と、対象物検出センサ22と、ブロッカー(遮断部)23と、エミッター(光源)24と、を備える。
【0032】
本体21は、円形の平板状に形成されている。本体21の径は、ロボット1が搬送対象とするウエハの径と等しい。本体21の形状がウエハを実質的に模擬していれば良く、本体21の材料がウエハと同一である必要はない。
【0033】
対象物検出センサ22は、対象物9を検出するために用いられる。対象物検出センサ22は、例えば、発光部と受光部を備える反射型センサとして構成される。対象物検出センサ22の発光部及び受光部は、本体21の下部であって、円形の本体21の中心部に設けられている。対象物検出センサ22が照射する光の光軸は、本体21の中心軸上に位置する。
【0034】
対象物9は、例えば、図5に示すように、細長い円錐台状に形成されている。対象物9は、ハンド10の移動可能範囲内における適宜の場所に、上下に向けて配置される。対象物9の上端の面は、光を反射可能に形成されている。対象物9の上面に、反射シート等が貼られても良い。
【0035】
ブロッカー23は、投光部61が照射する検出光を遮断するために用いられる。ブロッカー23は、本体21の下方に突出するように設けられている。
【0036】
エミッター24は、受光部62に検出光を照射するために用いられる。エミッター24は、例えば、投光部61と同じ構成を有し、赤外光等の通知光を、受光部62へ向けて照射する。エミッター24は、本体21の下方に突出するように設けられている。
【0037】
ブロッカー23及びエミッター24は、平面視で本体21の中心から一側に偏った位置に、適宜の間隔をあけて並べて配置されている。
【0038】
具体的には、図3に示すように、ウエハ治具2がハンド10により保持されている状態において、ブロッカー23及びエミッター24は、何れもマッピングセンサ6の検出光の光路(投光部61から受光部62への光路)に位置する。このとき、ブロッカー23は、光路において投光部61に近い側に位置し、エミッター24は、受光部62に近い側に位置する。
【0039】
ブロッカー23は、投光部61に対面した状態で、投光部61からの検出光を遮る。エミッター24は、受光部62に対面した状態で、通知光を受光部62へ向けて照射する。
【0040】
本実施形態においては、図3に示すように、ウエハ治具2がハンド10により保持されている状態において、ブロッカー23及びエミッター24は、ハンド10の延びる方向に平行な軸A1を対称軸として対称に設けられている。しかし、ブロッカー23及びエミッター24の配置は上記に限定されない。
【0041】
図3に示すように、本実施形態のウエハ治具2は、増幅器25と、バッテリー26と、を備える。
【0042】
増幅器25は、対象物検出センサ22の検出信号を増幅するために用いられる。増幅器25は、本体21の上に設けられている。増幅器25は、対象物検出センサ22及びバッテリー26に電気的に接続されている。増幅器25は、バッテリー26からの電力で動作し、対象物検出センサ22から受信した検出信号を増幅する。増幅された検出信号の電圧は、所定の電圧と、図略の比較器によって比較される。比較器は、比較結果を、動作信号としてバッテリー26に出力する。
【0043】
バッテリー26は、対象物検出センサ22、増幅器25及びエミッター24等に電力を供給する。
【0044】
バッテリー26は、比較器からの信号に応じて、エミッター24の点灯/消灯を切り替える。従って、比較器は、エミッター24を制御して本開示の通信方法を実現するための光源制御部として実質的に機能する。
【0045】
上記のように構成されたウエハ治具2は、ハンド10に設けられたマッピングセンサ6を介してコントローラ5と通信することができる。詳細は後述する。
【0046】
コントローラ5は、CPU、ROM、RAM、補助記憶装置等を備える公知のコンピュータとして構成されている。補助記憶装置は、例えばHDD、SSD等として構成される。補助記憶装置には、ロボット1を制御するためのロボット制御プログラム等が記憶されている。
【0047】
コントローラ5は、予め定められる動作プログラム又はユーザから入力される移動指令等に従って、上述のロボット1の各部を駆動するそれぞれの駆動モータに指令値を出力して制御し、予め定められる指令位置にハンド10を移動させる。
【0048】
次に、本実施形態のロボットシステム100において、本開示の通信方法により、ウエハ治具2の検出結果から得られたハンド10の検出位置に基づいて、ロボット1への指令位置を補正するロボット教示方法について、詳細に説明する。
【0049】
ウエハ治具2は、非使用時には、適宜の保管位置に保管されている。ロボット1は、コントローラ5からの制御指令に応じて、保管位置にあるウエハ治具2を保持する(第1工程)。ロボット1は、保持したウエハ治具2を所定の位置へ搬送する。搬送後、ウエハ治具2の対象物検出センサ22は、対象物9の近傍に位置している。
【0050】
その後、ロボット1は、ウエハ治具2とともにハンド10を、平面視で適当な範囲内で様々な方向に動かしながら、対象物9を対象物検出センサ22によって走査する。本実施形態において、対象物9の上面の形状は円形状となっている。従って、その円の少なくとも3点の位置を対象物検出センサ22で検知できれば、円の中心を特定できる。本実施形態では、平面視で、対象物9の上面の円の中心が、後述の位置補正のための基準位置となっている。
【0051】
この走査の過程で、ウエハ治具2において、対象物検出センサ22により対象物9が検出されるとエミッター24は点灯し、検出されなければ消灯する(第2工程)。エミッター24の通知光は、ハンド10側の受光部62で検知することができる。受光部62は、通知光の受光の有無を示す電気信号をコントローラ5へ出力する。以上により、コントローラ5は、対象物検出センサ22による対象物9の検知の有無を、受光部62を通じて認識することができる。
【0052】
対象物検出センサ22が対象物9を検出した場合、エミッター24を点灯させることに代えて、所定頻度で点滅させても良い。この場合、コントローラ5は、エミッター24からの通知光と、投光部61からの検出光と、を容易に区別することができる。
【0053】
ロボット1の公差等によって、ロボット1に指令したハンド10の位置と、ハンド10の実際の位置との間にズレが生じる場合がある。本実施形態によれば、ウエハ治具2によって対象物9を走査した結果に基づいて上記のズレを特定し、ロボット1への指令位置を補正することができる。
【0054】
以下、簡単に説明する。コントローラ5は、対象物9を対象物検出センサ22で検知した3点のそれぞれに相当する、ロボット1への指令位置を予め記憶している。コントローラ5は、3点の指令位置を通過する円の中心に相当する指令位置を、公知の方法で計算する。このように計算された指令位置と、ハンド10の中心を対象物9の中心と一致させるために従前に使われていた指令位置と、の間にズレがある場合、コントローラ5は、このズレ量を計算で取得する。このズレ量は、例えば平面ベクトルで表すことができる。コントローラ5は、元の指令位置からズレ量のベクトルを減算することで、指令位置のオフセットを補正する。補正後の指令位置をコントローラ5がロボット1に与えることにより、ロボット1の動作精度を高めることができる。
【0055】
ウエハ治具2はウエハを模した形状となっているので、ハンド10はウエハ治具2を、通常のウエハと同様に取り扱うことができる。従って、上述した走査及び位置補正の一連の動作を自動的に行うことが容易である。
【0056】
ウエハ治具2は、マッピングセンサ6(具体的には受光部62)を介して、対象物検出センサ22により対象物9が検出されたことをコントローラ5に通知する。このように、光通信によって情報の伝達が行われるので、電気ケーブルを不要とすることができる。これにより、構成の簡素化、軽量化を実現することができる。また、電気ケーブルが不要になるので、塵埃の発生を抑制することができる。更に、ロボットが従来から備えることが多いマッピングセンサ6を使用する構成であるので、既存のロボットへの適用も容易である。
【0057】
以上に説明したように、本実施形態のウエハ治具2は、投光部61と、受光部62と、を備えるハンド10を有するロボット1に用いられる。ウエハ治具2は、受光部62へ向けて通知光を照射するエミッター24を備える。ウエハ治具2は、エミッター24が通知光を受光部62へ照射することにより、ハンド10側へ情報を出力する。
【0058】
これにより、ウエハ治具2が、ロボット1が備える構成の一部(投光部61及び受光部62)を利用して、ロボット1と通信することが可能になる。通信ケーブルが不要になるため、ウエハ治具2の小型化、簡素化、軽量化を実現できるとともに、ロボット1の動きの自由度を好適に維持することができる。
【0059】
また、本実施形態のウエハ治具2は、ブロッカー23を備える。ブロッカー23は、ハンド10によりウエハ治具2が保持されたときに、投光部61と受光部62の間の光路を遮断する。
【0060】
これにより、ウエハ治具2の使用時に、投光部61からの検出光を受光部62が受光するのを防止することができる。
【0061】
また、本実施形態のウエハ治具2は、対象物9を検出する対象物検出センサ22を備える。ウエハ治具2のエミッター24は、対象物検出センサ22が対象物9を検出したか否かを、情報として出力する。
【0062】
これにより、ウエハ治具2側で対象物9を検出したか否かを、ロボット1側で認識することができる。
【0063】
また、本実施形態では、対象物検出センサ22は、当該ウエハ治具2の中心に設けられている。
【0064】
これにより、ウエハ治具2の中心に対応する位置から対象物9を検出することになるので、対象物9を検出したウエハ治具2の位置を正確に把握することができる。
【0065】
また、本実施形態では、ハンド10によりウエハ治具2が保持された状態において、対象物検出センサ22はハンド10の中心に位置する。
【0066】
これにより、位置制御の基準として用いられることが多いハンド10の中心位置における検出結果を得ることができる。従って、例えば、検出結果を位置制御のために用いることで、ロボット1の動作精度を高めることができる。
【0067】
また、本実施形態のウエハ治具2においては、エミッター24の点灯/消灯によって、対象物検出センサ22が対象物9を検出したか否かの情報が表現される。
【0068】
これにより、簡素な構成でウエハ治具2側から情報を送信することができる。
【0069】
次に、第2実施形態を説明する。図6は、第2実施形態のウエハ治具2xの構成を示す平面図である。図7は、第2実施形態のウエハ治具2xの構成を示す側面図である。図8は、第2実施形態のウエハ治具2xを用いて対象物9xを検出する様子を示す部分斜視図である。なお、本実施形態の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0070】
本実施形態のウエハ治具2xにおいては、図6に示すように、本体21xにスリット部27が形成されている。スリット部27は、ハンド10によってウエハ治具2xを保持したときに、ハンド10の長手方向に沿って、本体21xの中心部から先端側に向けて開口するように形成されている。スリット部27は、本体21xの厚み方向において、本体21xを貫通している。
【0071】
本実施形態のウエハ治具2xは、2つの対象物検出センサ22を備えている。2つの対象物検出センサ22は、何れも光センサである。対象物検出センサ22は、ウエハ治具2xがハンド10により保持されている状態において、ハンド10と干渉しないように配置されている。
【0072】
それぞれの対象物検出センサ22は、投光部と受光部とを備える。以下では、それぞれの投光部に符号22x、22aを付し、それぞれの受光部に符号22y、22bを付して説明する。投光部22xと受光部22yとから1つの対象物検出センサ22が構成され、投光部22aと受光部22bとから他の1つの対象物検出センサ22が構成される。
【0073】
投光部22x,22a、受光部22y,22bのそれぞれの構成は、上述のマッピングセンサ6が備える投光部61、受光部62のそれぞれと同様であるため、説明を省略する。
【0074】
受光部22yは、投光部22xに対して、軸A1を挟んで反対側に配置されている。受光部22bは、投光部22aに対して、軸A1を挟んで反対側に配置されている。2つの対象物検出センサ22は、平面視で、その光路がX字状に交差するように配置されている。この光路が互いに交差する点は、本体21xの中心と一致している。
【0075】
増幅器25は、2つのチャネルを有している。受光部22yは、増幅器25の第1チャネルCh1に電気的に接続されている。受光部22bは、増幅器25の第2チャネルCh2に電気的に接続されている。
【0076】
本実施形態においては、対象物9xは、例えば、図7及び図8に示すように、本体21xのスリット部27を貫通できる棒状部材から構成されている。対象物9xは、光を遮断する材料によって丸棒状に形成される。
【0077】
本実施形態のウエハ治具2xにおいて、第1チャネルCh1、第2チャネルCh2の何れにおいても対象物検出センサ22により対象物9xが検出されていない場合、エミッター24は消灯するように制御される。
【0078】
第1チャネルCh1の対象物検出センサ22により対象物9xが検出されているが、第2チャネルCh2の対象物検出センサ22では検出されない場合、エミッター24は、所定の第1頻度(例えば10Hz)で点滅するように制御される。
【0079】
第1チャネルCh1の対象物検出センサ22では対象物9xが検出されないが、第2チャネルCh2の対象物検出センサ22では検出されている場合、エミッター24は、所定の第2頻度(例えば20Hz)で点滅するように制御される。
【0080】
第1チャネルCh1、第2チャネルCh2の双方の対象物検出センサ22により対象物9xが検出されている場合、エミッター24は、所定の第3頻度(例えば30Hz)で点滅するように制御される。
【0081】
以上のように、2つの対象物検出センサ22の検出結果の組合せに応じて、エミッター24の点滅周期が変化する。
【0082】
エミッター24の点滅制御を行うために、ウエハ治具2xは、図示しない小型のコンピュータを備える。このコンピュータは、例えば、CPU、ROM、RAMを備える。コンピュータは光源制御部として機能し、エミッター24を介して情報をコントローラ5に送信する。
【0083】
本実施形態では、上述の第1実施形態と異なり、2つの対象物検出センサ22の検出結果を同時に監視することができる。従って、対象物9xの中心位置を、例えば、ウエハ治具2(ハンド10)を直線状に1回移動させるだけの単純な動作で特定することができる。従って、位置補正を短時間で完了させることができる。
【0084】
以上に説明したように、本実施形態のウエハ治具2xにおいては、エミッター24の点灯/消灯が繰り返される周期によって、情報が表現される。
【0085】
これにより、多様な情報をウエハ治具2xからコントローラ5へ伝達することができる。
【0086】
また、本実施形態のウエハ治具2は、複数の対象物検出センサ22を備える。それぞれの対象物検出センサ22の検出結果の組合せに応じて、エミッター24の点灯/消灯が繰り返される周期が変化する。
【0087】
これにより、複数の対象物検出センサ22の検出結果を、簡素な構成でコントローラ5に送信することができる。
【0088】
また、本実施形態のウエハ治具2xは、2つの対象物検出センサ22を備える。ウエハ治具2xの厚み方向で見た場合、2つの対象物検出センサ22の光軸が交差している。ハンド10によりウエハ治具2が保持された状態において、ウエハ治具2の厚み方向で見た場合の光軸の交差箇所は、ハンド10の中心に位置する。
【0089】
これにより、2つの対象物検出センサ22で対象物9xを検出することにより、ハンド10の中心位置と対象物9xの位置関係を容易に特定することができる。
【0090】
次に、第3実施形態を説明する。図9は、第3実施形態のウエハ治具2yを用いて対象物9を検出する様子を示す部分斜視図である。なお、本実施形態の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0091】
本実施形態のウエハ治具2yは、図9に示すように、第1実施形態のブロッカー23及びエミッター24の代わりに、光切換部28を備える。
【0092】
光切換部28は、ウエハ治具2yの本体21の下方に突出するように設けられている。光切換部28は、マッピングセンサ6の検出光の光路(投光部61から受光部62への光路)に位置する。
【0093】
光切換部28は、例えば、液晶シャッター、機械式シャッター等から構成され、マッピングセンサ6の検出光の通過及び遮断を切換可能である。
【0094】
光切換部28は、例えば対象物検出センサ22の検出結果に応じて開閉し、受光部62が投光部61からの検出光を受光するか否かを適宜切り換える。これにより、ウエハ治具2yは、上述の実施形態と同様に、ハンド10側へ情報を出力することができる。
【0095】
以上に本開示の好適な実施の形態及び変形例を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0096】
ブロッカー23は、受光部62と同じ構成を有するレシーバー(治具受光部)から構成されても良い。この場合、コントローラ5は、投光部61を介して、ブロッカー23(即ちウエハ治具2,2x)に指令を与えることができる。即ち、ロボット1からウエハ治具2への通信についても、電気ケーブルを用いずに実現することができる。ウエハ治具2,2xに与える指令は任意であるが、例えば、対象物検出センサ22による検知の開始/停止等を挙げることができる。
【0097】
ブロッカー23を省略し、エミッター24がブロッカー23を兼ねるように構成することもできる。ウエハ治具2の使用時に投光部61を消灯するように制御できる構成では、ブロッカー23は不要である。
【0098】
平面視(ハンド10の厚み方向)で見た場合に、投光部22x及び投光部22aからの検出光が交差し、その交差点がハンド10(ウエハ治具2x)の中心に位置すれば、検出光の光軸同士が実際に交差しなくても良い。例えば、2つの対象物検出センサ22の光軸を、本体21xの厚み方向で異なる位置に設けることもできる。
【0099】
ウエハ治具2xが備える2つの対象物検出センサ22は、ハンド10と干渉しない限り、本体21xの下面に設けても良い。対象物検出センサ22の光軸を本体21xから下方へ離して配置できる場合、スリット部27を省略することも可能である。
【0100】
対象物検出センサ22は、非接触型のセンサであっても良いし、接触型であっても良い。
【0101】
対象物検出センサ22に代えて、又は加えて、様々なセンサをウエハ治具2に設けることができる。例えばウエハ治具2に非接触型の距離計を備え、検出された距離に応じた周期でエミッター24を点滅させることが考えられる。
【0102】
エミッター24の制御によって情報を表現する方法は様々に考えられる。エミッター24の点灯/消灯を、情報を2進数で表現したパターンに従って制御しても良い。エミッター24の点灯/消灯に代えて、光強度の強弱、及び光源の波長の違い等によって情報を表現することもできる。
【0103】
ウエハ治具2,2x,2yは、対象物9,9xの検出以外の目的(言い換えれば、ロボット1の位置補正以外の目的)で用いられても良い。
【0104】
バッテリー26は、1次電池として構成することも、2次電池として構成することもできる。バッテリー26を2次電池として構成した場合、ウエハ治具2の保管位置又は別の位置に、バッテリー26への充電を行うための充電装置が配置されることが好ましい。これにより、自動充電を実現することができる。
【0105】
ウエハ治具2,2x,2yは、マッピングセンサ6の代わりに、ハンド10に搭載された在荷センサ等の他の光学式センサを介して、コントローラ5へ情報を送信することもできる。
【0106】
本明細書で開示する要素の機能は、開示された機能を実行するように構成又はプログラムされた汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、従来の回路、及び/又は、それらの組合せ、を含む回路又は処理回路を使用して実行することができる。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含むため、処理回路又は回路と見なされる。本開示において、回路、ユニット、又は手段は、列挙された機能を実行するハードウェア、又は、列挙された機能を実行するようにプログラムされたハードウェアである。ハードウェアは、本明細書に開示されているハードウェアであっても良いし、あるいは、列挙された機能を実行するようにプログラム又は構成されているその他の既知のハードウェアであっても良い。ハードウェアが回路の一種と考えられるプロセッサである場合、回路、手段、又はユニットはハードウェアとソフトウェアの組合せであり、ソフトウェアはハードウェア及び/又はプロセッサの構成に使用される。
【符号の説明】
【0107】
1 ロボット
2,2x,2y ウエハ治具
5 コントローラ(制御部)
6 マッピングセンサ
9,9x 対象物
10 ハンド
22 対象物検出センサ(センサ)
23 ブロッカー(遮断部)
24 エミッター(光源)
61 投光部
62 受光部
100 ロボットシステム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9