(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】目標軌道計画方法
(51)【国際特許分類】
B60W 30/10 20060101AFI20241024BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20241024BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
B60W30/10
B60W60/00
G08G1/09 V
(21)【出願番号】P 2022560107
(86)(22)【出願日】2021-03-01
(86)【国際出願番号】 EP2021054976
(87)【国際公開番号】W WO2021197729
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-09-30
(31)【優先権主張番号】102020108857.4
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】メルセデス・ベンツ グループ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Mercedes-Benz Group AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100176946
【氏名又は名称】加藤 智恵
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【氏名又は名称】真田 有
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コルベ ウリ
(72)【発明者】
【氏名】ヘックマン アレキサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ラウデンブッシュ ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】スピエカー アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】フィオレッティ フェデリカ
(72)【発明者】
【氏名】アブデラウィ アミラ
(72)【発明者】
【氏名】シックスト ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】シェーファー サイモン
【審査官】鶴江 陽介
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-026189(JP,A)
【文献】特開2010-250442(JP,A)
【文献】特開2020-015489(JP,A)
【文献】特開2018-154200(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0162412(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0121363(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00- 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転モードのためのアシストシステムを有する車両(1)によって自動化された手法で走行される目標軌道(T
Soll)を計画するための方法であって、
-複数の別個の軌道(T)が目標軌道(T
Soll)の候補として決定され、
-前記軌道(T)の各々は配列された複数の軌道区間(TR, TR
(0,0)(1,1))から構成され、
-前記計画は目標軌道(T
Soll)としての前記複数の別個の軌道(T)のうちの一つの選択に基づいていて、
-前記選択は予め定義されたコスト関数(K)による軌道(T)の評価と、最もコスト対効果が高いと評価された軌道(T)の識別とに基づいていて、
-各々の軌道区間(TR, TR
(0,0)(1,1))には、各々が同じ位置仕様および異なるダイナミクス仕様を持つ複数のサブ軌道が関連付けられ、
前記複数のサブ軌道の各々には、コスト関数(K)がサブ軌道ごとに予め定義されており、各々のサブ軌道には、
サブ軌道ごとのコスト関数(K)に従ったコストが関連付けられ、
-遵守すべき境界条件または実行されるべき運転タスクに変更が検知された場合、変更された境界条件に遵守するためにまたは変更された運転タスクを実行するために、他のサブ軌道よりも適したサブ軌道に、より低いコス
トを割り当てるように、個々のサブ軌道のコスト関数(K)を変更された境界条件または運転タスクに適合させることによって、前記選択に対するプレ制御が実行される、
処理を前記アシストシステムが実行することを特徴とする、目標軌道計画方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
各軌道(T)は、データセットとして、それぞれの軌道(T)に沿って走行するときに車両(1)が辿るべき位置経路についての情報を含み、それぞれの軌道(T
Soll)に沿って走行するときに車両(1)が従うべきダイナミクスについての更なる情報も含む
ことを特徴とする、目標軌道計画方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法であって、
前記目標軌道 (T
Soll)が選択される前記複数の別個の軌道(T)は、予め定義された軌道サポート地点(Pi,j)を前方領域(V)における可能性のある前記車両(1)の位置として決定することによって、軌道サポート地点(Pi,j)のセットから、進行方向に走行する複数の配列の点を選択することによって、および前記選択された配列の点のうちの一つを各々が通過するように前記サブ軌道(T)を決定することによって、離散化される
ことを特徴とする、目標軌道計画方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の方法であって、
各軌道(T)に対して、予め定義されたコスト関数(K)を用いてコストが決定される
ことを特徴とする、目標軌道計画方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の方法であって、
前記複数の軌道区間(TR, TR
(0,0)(1,1))のうちの個別の軌道区間(TR, TR
(0,0)(1,1))と当該軌道区間のそれぞれに関連付けられたサブ軌道とのコスト関数(K)が、遵守すべき境界条件あるいは実行すべき運転タスクの関数として予め定義される
ことを特徴とする、目標軌道計画方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法であって、
軌道区間(TR, TR
(0,0)(1,1))のサブ軌道に関連するコストはそれぞれの軌道区間(TR, TR
(0,0)(1,1))の総コストを確定するために重みづけされて合計される
ことを特徴とする、目標軌道計画方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、
軌道(T)のコストは、軌道区間(TR, TR
(0,0)(1,1))の前記総コストを合計することによって確定される
ことを特徴とする、目標軌道計画方法。
【請求項8】
請求項4~7のいずれか一項に記載の方法であって、
前記複数の別個の軌道(T)のうち最も低いコストを有する軌道(T)が目標軌道(T
Soll)として選択される
ことを特徴とする、目標軌道計画方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の方法であって、
コスト関数(K)は前記プレ制御によって変更され、前記プレ制御によって、前記計画は現行の運転タスクに適合され、運転タスクが複数存在する場合、実行される運転タスクが優先順位付けされる
ことを特徴とする、目標軌道計画方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルに記載の目標軌道を計画するための方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
DE 10 2015 208 790 A1から車両のための軌道を自動的に決定するための方法とシステムが知られている。軌道は、車両の現在位置に対応する出発地点を目標地点に接続する。この方法では、複数の中間地点が決定され、更に、出発地点を中間地点のうちの一つに接続する少なくとも一つの第一サブ軌道が決定される。更に、複数の第二サブ軌道が決定され、各場合において、目標地点を中間地点の一つに接続する。更に、軌道は、少なくとも一つの第一サブ軌道および第二サブ軌道うちの一つを選択することによって決定され、車両の少なくとも一つのコンポーネントは、決定された軌道に基づいて制御され、少なくとも2つのサブ軌道がそれぞれの中間地点で終了する。
【0003】
更に、WO 2019/223909は自動車の少なくとも一部自動化された制御のための方法を記載している。この方法は、自動車の周囲センサーによって検知された自動車の周囲環境を表す周囲信号を受信することを含む。受信した周囲信号に基づいて、自動車の進行方向に関して、自動車の前方に位置する物体が検知される。更に、この方法は、物体を追い越すための追い越し軌道内に道路の分岐点があるかどうか、および自動車に関連する任意の対面交通が追い越し中にブロックされるかどうかを決定することを提供する。物体を追い越すために追い越し軌道内に道路の分岐点がないことと、追い越し中に対面交通がブロックされないことが決定によって明らかになった場合、追い越し軌道に基づいて、自動車の横方向と縦方向のガイダンスの少なくとも部分的に自動化された制御のための制御信号が出力される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、自動化された手法で車両によって走行されるべき目標軌道を計画するための改良された方法を特定する目的に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本目的は本発明によれば、請求項1に特定されている特徴を持つ方法によって解決される。
【0006】
本発明の有利な構成は従属請求項の主題である。
【0007】
車両によって自動化された手法で走行される目標軌道を計画する方法であって、前記目標軌道の候補として複数の別個の軌道が決定されることを提供し、前記軌道の各々は、配列された複数の軌道区間から構成されている。本方法は更に、前記計画は目標軌道としての前記複数の別個の軌道のうちの一つの選択に基づいており、前記選択は、予め定義されたコスト関数による軌道の評価と、最もコスト対効果が高いと評価された軌道の識別とに基づいていることを提供する。本発明によれば、各々が同じ位置仕様および異なるダイナミクス仕様を有するサブ軌道の配列が各軌道区間に関連付けられる。この内容において、位置仕様はそれぞれの軌道区間に沿って走行するときに車両が辿るべき位置経路に関する仕様として理解されるべきであり、そしてダイナミクス仕様は、車両のダイナミクスに関する仕様、特に、それぞれの軌道区間に沿って走行するときに車両が移動すべき加速度および/または速度に関する仕様として理解されるべきである。遵守されるべき境界条件および/または実行されるべき運転タスクに変更が検知された場合、変更された境界条件に遵守するためにまたは変更された運転タスクを実行するために、他のサブ軌道よりも適したサブ軌道に、より低いコスト関数を割り当てるように、個々のサブ軌道のコスト関数を変更された境界条件および/または運転タスクに適合させることによって、選択に対するプレ(フィードフォワード)制御が実行される。
【0008】
本方法を適用することで、自動化された手法での車両運転は異なる運転タスクを実行することができ、安全上重要な基準に違反することがない場合にのみ、運転タスクが実行されることが可能な限り保証され得る。
【0009】
運転タスクには、特に、緊急車線の形成、予防措置として特定の運転状況における車両の運転速度の低下、例えば警察および/または緊急サービス等の特定車両のための車線変更、路肩への車両の駐車、および/または、車両のステアリングあるいはブレーキシステムの劣化の考慮が含まれる。
【0010】
本方法によって、リアルタイムにおける目標軌道計画の目標プレ制御によって異なる運転タスクを実行することが可能になる。運転タスクを実行することで、安全制限の違反を犯す虞がある場合、目標軌道計画は仕様を無効にし、より安全な目標軌道を提供することができる。
【0011】
本方法の一実施形態において、候補として決定されたそれぞれの軌道、したがってこれらの候補のセット(集合)から選択された目標軌道も、データセットとして、それぞれの軌道に沿って走行するときに車両が辿るべき位置経路についての情報と、ダイナミクスについての更なる情報、特にそれぞれの軌道に沿って走行するときに車両が移動すべき加速度および/または運転速度について更なる情報とを含む。複数の軌道から選択された目標軌道によって、車両が自動運転モードでどの位置座標に沿って走行すべきかが決定されるだけでなく、車両がどのように動的に移動すべきか、つまり、どの時点で車両がそれぞれの位置座標にいるべきかが指定される。本方法は従って自動車両ガイダンスのための最適な位置経路を見つけることを可能にし、それと同時に、最適な車両のダイナミクスを見つけることを可能にする。
【0012】
更に、別の実施形態において、目標軌道が選択される複数の別個の軌道は、予め定義された軌道サポート地点を前方領域における可能性のある車両の位置として決定することによって、軌道サポート地点のセットから、進行方向に走行する複数の配列の点を選択することによって、および選択された配列の点のうちの一つを各々が通過するようにサブ軌道を決定することによって、離散化される。言い換えると、軌道サポート地点は前方領域内の位置を表し、各場合において、軌道のうちの一つあるいは複数案内される。それぞれの軌道は従って予め定義された軌道サポート地点を通って導かれ、二つの軌道サポート地点の間の区間は上述の軌道区間を形成し、これらの区間のそれぞれにはサブ軌道の上述の配列が関連付けられる。個々の軌道は従ってサブ軌道から構成されており、個々の軌道のそれぞれはひとつの軌道サポート地点において互いに接続されている。サブ軌道の数が限られているため、それらから構成される軌道の数も限られている。以下、この複数の軌道を軌道配列と呼ぶ。目標軌道の計画が軌道配列からの軌道の選択に基づいているため、目標軌道はほとんど計算費用をかけずに計画できる。
【0013】
一つの可能な発展形態において、予め定義されたコスト関数を使って軌道配列のそれぞれの軌道についてコストが確定され、個々の軌道区間とそれらの各々に関連するサブ軌道のためのコスト関数は遵守されるべき境界条件、あるいは実行されるべき運転タスクの関数として定義される。コスト関数は従って、例えば選択されるべき目標軌道が自動化された手法で車両運転の車線から離れてはならず、目標軌道が自動化された手法で車両運転のために物理的に実現され得る等の境界条件を考慮に入れる。
【0014】
本方法の一つの可能な発展形態において、多種多様な境界条件または運転タスクに対して定義された別のコスト関数が個々の軌道区間の多種多様なサブ軌道のためにそれぞれ予め定義される。これらのコスト関数はそれぞれの境界線条件あるいは運転タスクが目標軌道に関してどれだけうまく満たされ得るかを示す。比較的良好な達成には低いコストという報奨が与えられ、そして比較的悪い達成には高いコストという罰が与えられる。
【0015】
有利なのは、総コストが、それぞれの軌道区間のサブ軌道に関連するコストを加重方式で合計することで、軌道区間のそれぞれについて確定されることである。
【0016】
有利的なのは、軌道のコストはその軌道区間の総コストを合計することで確定されることである。
【0017】
別の可能な実施形態において、比較的最良の目標軌道を決定するために、軌道区間の総コストが軌道区間の多種多様な境界条件のために決定されたコストの重み付けされた合計によって確定される。
【0018】
続いて、一つの可能な実施形態において、軌道のコストはその軌道区間の総コストを合計することで確定され、最も低いコストを有する軌道配列から、軌道が境界条件および/または運転タスクを考慮に入れて、自動化された手法で走行する車両が運転する目標軌道として選択される。
【0019】
更に、本方法では、コスト関数がプレ制御によって修正され、プレ制御により、軌道計画が現在の運転タスクに適合され、運転タスクが複数の場合に、優先順位付けが実行される。プレ制御の目的は、軌道の計画、特に目標軌道の選択を、必要な境界条件を含む現在の運転タスクに適合させること、および運転タスクが複数の場合に、優先順位付けを実行することである。従って、目標軌道は現在の運転タスクまたは適切な場合には考慮されるべき複数の互換性のある運転タスクを考慮することによって選択される。
【0020】
発明の例示的な実施形態が、より詳細に以下で図面を用いて説明される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、軌道配列を決定するための第一ステップを模式的に示す。
【
図2】
図2は、軌道配列を決定するための第二ステップを模式的に示す。
【
図3】
図3は、軌道配列を決定すめるための第三ステップを模式的に示す。
【
図5】
図5は、
プレ制御によるコスト関数の修正を模式的に示す。
【
図6】
図6は、
プレ制御による更なるコスト関数の修正を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
相互に対応する部分には、全ての図において同じ参照符号が付されている。
【0023】
図1は、特に
図2に示される軌道Tが目標軌道T
Sollとして選択される軌道配列を決定するための第一のステップを示し、これは、
図3により詳細に示されている。
【0024】
車両1は自動運転モードのためのアシストシステムを有し、対応するセンサーシステムによって自動運転モード中に信号が継続的に検知される。
【0025】
車両1の自動運転モード中、車両1は多種多様な運転状況に適切に挙動し、異なる運転タスクを実行することが必要である。通常の自動運転モードでは、これらの運転タスクには、例えば、車線の中央で距離を保つこと、設定速度を維持すること等が含まれ、特殊な運転タスクは、例えば、
図5に示されている緊急車線Rを形成すること、または、例えば車両1の車線Fにおいて突然障害物が検知されたため、衝突を回避することを意味すると理解される。
【0026】
多種多様な運転状況を検知するためには、センサーシステムは車両1の車内および/または車上に配置された多数のセンサーを備え、それらは例えば、検知した信号の妥当性をチェックするために、および/または、検知範囲を拡大あるいは最適化するために任意選択的に統合される。
【0027】
車両1の自動運転モード中において多数の可能な運転状況を制御できるようにするために、軌道計画モデルが通常使用され、それは多数の可能な軌道Tから最良の軌道Tを選択するか、または最適化手順を使って最適軌道Tを計算するかのいずれかを選択する。
【0028】
これらの2つの方法は特に
図4から
図6に示されている、コスト関数Kによる軌道Tの評価に基づいており、コストは、異なる重み付けを用いて異なる部分コストで構成される。
【0029】
個々のコスト関数Kの例は以下である。
-所望の経路からの逸脱、
-車両1の縦方向と横方向における車両の高いレベルのダイナミクス、
-安全な距離を下回ること、
-
図3により詳細に示されている障害物2との衝突、
-設定速度を遵守しないこと。
【0030】
車両1の比較的安全な自動運転操モードを保証するために、安全上重要なコストは、不快な乗り心地に起因して生じるコストよりも高い重み付けが与えられる。
【0031】
軌道Tを選択するとき、軌道Tが車線を離れることは許容されず、軌道Tを物理的に実現することが可能でなければならない、いわゆる厳しい境界条件を付加的に遵守することが必要である。
【0032】
複数の異なる特殊な運転タスクを制御するために、以下で説明する方法が提供され、ここでは、軌道計画が車両1の目標状態および操作される可変範囲を変更することによって制御される。
【0033】
次いで、軌道計画は例えば衝突が起こるまでの安全距離を下回ること、車線Fからの意図しない逸脱、車両の過剰なリアクション、または運転不能といった、プロセスにおいてより高い基本的な目的がない場合、プレ制御の仕様を計画する。
【0034】
もし、例えば、車両1の前方に障害物2が突然現れることにより、車両1と障害物2との衝突が今にも起こりそうな場合、衝突を避けることが運転タスクより優先される。このような危機的状況がもはや存在しない場合、再び所望の運転タスクが優先される。
【0035】
本方法は、最大許容運転速度vEGOによって、また、予め定義された距離および/または時間に関連して、車線Fの中心に対する車両1の所望のずれ、また、予め定義された距離および/または時間に関連して、調整可能な減速度、許容可能な加速度および調整可能なステアリングダイナミクスに関連して、軌道計画のための継続的な仕様を提供する。
【0036】
更に、本方法は相容れない可能性のある運転タスクに優先順位を付けることを含む。例えば、車両1の自動運転モードのためのシステムは車両1の安全な駐車を要求することができ、それと同時に、異なる減速を必要とする、いわゆるムーブ・オーバー・ロー状況(Move-Over-Law-Situation)が存在する場合が挙げられる。
【0037】
ムーブ・オーバー・ロー状況における挙動、つまり、回避行動ルールが適用されるとき、例えば、緊急車両、例えばパトカーが接近しているとき、緊急車線Rを形成するために必要とされるものとは異なるオフセットを車両1の車線F内に要求することもできる。
【0038】
いずれの場合も、車線F内の車両1の位置決めに関して、運転速度および/またはオフセット仕様の選択によって運転タスクが優先される。
【0039】
更に、本方法は以下のような軌道計画におけるコスト関数Kの仕様を変更するために必要な特定の運転タスク:
-
図4に例示されている路肩Sに車両1を安全に駐車すること、
-車線変更、
-不確実な運転状況、例えば、隣接車線の逆走ドライバ
ーあるいは道路上に歩行者がいる、場合における運転速度v
EGOの予防的低下、
-現在の運転速度v
EGOの低下と同時に、ムーブ・オーバー・ロー状況が存在する場合には車線Fの端まで運転すること
を提供する。
【0040】
路肩Sに車両1を安全に駐車することあるいは複数の車線変更等、より複雑な運転タスクは、運転速度およびオフセット仕様、いわゆる車線オフセット仕様のタイムシーケンスによって軌道計画システムに送信される。
【0041】
ブレーキあるいはステアリングシステムの劣化状態が報告された場合、調整可能なブレーキあるいはステアリングダイナミクスが軌道計画に適合される。
【0042】
更に、車両1の調整可能な減速、つまり、現行の運転速度vEGOの低下はその時の気象条件に適合される。
【0043】
特に、本方法は、
図3に例示されている目標軌道T
Sollが特に自動運転モードで、特にドライバー無しで、車両1によって走行されるべきことを提供する。
【0044】
このような目標軌道TSollは、目標軌道TSollに沿って走行する際に車両1が従うべき位置経路、つまり、位置座標に関する情報を含み、目標軌道TSollに沿って走行する際に車両1が移動すべき加速度または運転速度vEGOに関する情報を含むデータセットを意味するものと理解される。目標軌道TSollは従って、車両1がどの位置座標において移動すべきかを指定するだけではなく、車両1がそれぞれの位置座標にいる時間も指定する。
【0045】
計画はこのケースでは目標軌道TSollのための複数の別個の候補の決定に基づいており、選択は、上述の、先行技術から知られているコスト関数Kに基づいている。
【0046】
図1は座標システムを詳細に示しており、x座標x
iからx
4を車両の縦方向、つまり、自動運転車両1の走行方向のx軸にプロットされ、y座標y-1からy1がy軸にプロットされ、車両の横方向を示している。Δx、つまり2つのx座標間の距離は車両1の現行の運転速度v
EGOの関数を表す。
【0047】
更に、複数の軌道サポート地点P0,0からP4,2が示され、軌道サポート地点P0,0は車両1の出発地点を表し、軌道サポート地点P4,0からP4,2は車両1の目的地座標を表す。特に、x座標x0からx4およびy座標y-1からy1は軌道サポート地点P = (xi,yj)のx-y座標である。
【0048】
軌道サポート地点P
0,0からP
4,2はx軸方向、つまり、車両1の進行方向に前方領域に分布されている。この前方領域Vは、予め定義された時間間隔、例えば30秒内で車両1が現在の運転速度v
EGOで通過する、つまり走行する経路を定義する。前方領域V内において、目標軌道T
Sollを選択することができる無数の軌道が論理的にはあり得る。車両1に最も適した目標軌道T
Sollおよび運転状況を選択するときに必要な計算力を最小限にするために、目標軌道T
Sollが選択されるべき
複数の軌道
は別個なものにされる。このために、所定の軌道サポート地点P
0,0からP
4,2のセットは、
図1で示されているように、前方領域Vにおいて決定され、
複数の軌道
Tが決定され、軌道Tのそれぞれは、更なる座標系における軌道配列を決定するために、
図2の第二ステップで示されているように、一連の軌道サポート地点P
0,0からP
4,2を通る進行方向にある。
【0049】
この複数の軌道Tは軌道配列を形成し、軌道Tは目標軌道TSollの選択のための座標を形成し、つまり、この限られた数の軌道Tのみが目標軌道TSollの選択のために考慮される。
【0050】
特に、
図2で示されているように、個々の軌道サポート地点P
0,0からP
4,2は、進行方向の順番に従って、x-方向、つまり、車両の縦軸の方向にペアで互いに接続されている。従って、軌道Tの個々の軌道区間TR、TR
(0,0)(1,1)が形成され、それらは
図3に示されている目標軌道T
Sollが選択されたセットに対応づけられている。
【0051】
それぞれの軌道区間TR、TR(0,0)(1,1)自体はそれぞれが同じx-y経路を持つが異なる加速および/または速度を有する、より詳しくは示されていないサブ軌道の配列を含む。コストはサブ軌道に関連付けられ、コストは異なる境界条件のために予め定義されたコスト関数Kを使用して関連付けられる。
【0052】
遵守されるべき境界条件あるいは実行されるべき運転タスクの変更が検知された場合、個々の軌道区間TR、TR(0,0)(1,1)の個々のサブ軌道のためのコスト関数Kを適合させることで選択のプレ制御が実行される。この適合は、変更された境界条件を満たすこと、および/または変更された運転タスクを実行すること、他よりも適しているサブ軌道および軌道区間TR、TR(0,0)(1,1)により低いコストを割り当てるために行われる。
【0053】
軌道配列からの軌道Tごとに、コストは予め決定義されたコスト関数Kによって決定され、コスト関数は軌道Tの個々の軌道区間TR(0,0)(1,1)の個々のサブ軌道のためと予め定義された境界条件のために定義され、それぞれのサブ軌道と一緒に、それぞれの軌道区間TR(0,0)(1,1)上でそれぞれの境界条件がどのくらい良好に満たされているかを示す。
【0054】
比較的良好な達成には低コストによって報酬が与えられるが、比較的不十分な達成には高コストによって罰が与えられる。軌道区間TR(0,0)(1,1)のサブ軌道の、様々な境界条件のために決定された、軌道区間TR(0,0)(1,1)のコストの合計、特に重みづけされたコストの合計をベースに、軌道区間TR(0,0)(1,1)の総コストが確定される。
【0055】
軌道配列の軌道Tのコストはそれぞれの軌道Tの軌道区間TR
(0,0)(1,1)の総コストの総和によって形成される。次いで、最も低いコストの軌道Tが、
図3で示されているように、目標軌道T
Sollとして軌道配列から選択される。
【0056】
軌道配列から選択された目標軌道TSollは車線Fにある障害物2による車両1の走行経路を示し、障害物は前方領域Vにおいて検知される。
【0057】
車両1と障害物2との衝突をもたらす軌道区間TRはそれらのコストを増やすことで制裁される。これによって、その他の軌道部分TRよりも目標軌道TSollの選択のためにこれらの軌道区間TRに低い優先度が与えられる。
【0058】
図4から
図6はそれぞれ、コスト関数の例を示している。
【0059】
図4は車両1の横方向位置のためのコスト関数K(y)を示し、車両1の車線F、左車線F1、右車線F2、車線区分線M、それぞれの路肩Sあるいは路側帯、ならびに軌道サポート地点P
i,j = (x
i,y
j)が示されている。
【0060】
車線Fの中央を運転する車両1は、車両1が中央を運転していない場合よりも低いコストに関連付けられる。言い換えると、車線Fの中央での運転はより低いコストが報酬として与えられる。
【0061】
車線区分線M上を運転する車両1は高いコストによって制裁され、左車線F1あるいは右車線F2の中央での運転は車線Fの中央での運転よりもより重く罰せられ、車線区分線M上を運転することよりもより少なく罰せられる。路肩Sあるいは路側帯を走行することは対応する高コストによって比較的厳しく重く罰せられる。
【0062】
図5は、まず
図4に示されているコスト関数K(y)の進行と、
プレ制御およびその進行によって修正されたコスト関数K1(y)とを示す。
【0063】
プレ制御の目的は目標軌道TSollの選択のための軌道計画を、必要な運転タスクと必要な境界条件に適合させることと、実行されるべきいくつかの運転タスクがある場合、優先順位付けを実行するためである。目標軌道TSollは従って、現在の運転タスク、または、適切な場合は、考慮すべき多数の現在の運転タスクを考慮することで選択される。
【0064】
図5に示されている例示的な実施形態によれば、緊急車線Rを形成するために、車線Fの中心に対してオフセットされた車両1を運転することは、その車線F内で、それぞれの車線F、F1、F2の中心での運転よりも大幅に低いコストによって報
酬が与えられる。
【0065】
右車線F2を走行することは低いコストによってより大きく報酬が与えられ、緊急車線Rを走行することはより高いコストによって罰せられる。
【0066】
プレ制御の更なる例示的な実施形態が
図6に示されており、コスト関数K(y)および修正された更なるコスト関数K2(y)が示されている。
【0067】
右車線F2を走行することは、例えば右車線F2における事故があるため、比較的高く罰せられ、車両1で車線Fを走行することは、事故現場での出動中の救助隊員を危険に晒さないために、同様に罰せられる。
【0068】
アナログ的な手法で、他の運転タスクおよび/または遵守されるべき他の境界条件のために予め定義されたコスト関数Kを修正することもできる。修正は、軌道選択のためのプレ制御を達成する。
【0069】
車両1のための運転タスクは、例えば対応する車線F、F1、F2の中央への付加的なオフセットが、例えば、緊急車線Rを形成するように、あるいは、ローリー、トンネルの壁、橋脚、ガイドウォール等の特定の等級の物体からの横方向距離を増加させるように、遵守されることを要求することができる。
【0070】
更に、運転タスクは、前記のように、特定の最大許容速度が遵守されていること、縦方向のダイナミクス、特に調整可能な減速度または許容加速度、あるいは、横方向ダイナミクス、特にヨーレート、ステアリング角速度、および/または横方向加速度の形でのステアリングダイナミクスが状況、例えば、気象条件、運転速度vEGO、道路の湾曲および/または車両1のステアリングもしくはブレーキシステムの劣化の関数として、予め定義されることができる特定の値に制限される。
【0071】
更に、車両1を路肩Sに駐車するための運転タスクとして、例えば、ステアリングあるいはブレーキシステムが劣化した場合、例えば、事故の状況において、警察、緊急サービス、道路上の歩行者、対応する隣接車線F、F1 F2における逆走車によって運転速度が予防的に減速されることが必要とされ得る。
【0072】
更に、運転タスクは特定の車線F、F1、F2、例えば、事件現場において駐車されている警察車両や緊急車両の隣の車線F、F1、F2が、つまり、いわゆるムーブ・オーバー・ロー状況の場合、および歩行者あるいは逆走車がある場合であっても、回避されることを指定することができる。
【0073】
更に、車両1に関して考慮される運転タスクは、車両1が車線変更を実行すること、例えば、車線F、F1、F2を避けること、障害物2を避けること、比較的低速な道路使用者を追い越すこと、車線を曲がるまたは車線から出る車両1を制御することであり得る。