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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】流体封入式防振装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 13/10 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
F16F13/10 L
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023035171
(22)【出願日】2023-03-08
(65)【公開番号】P2024126642
(43)【公開日】2024-09-20
【審査請求日】2024-07-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】樫原 博之
(72)【発明者】
【氏名】梅村 聡
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-240891(JP,A)
【文献】特開2009-127713(JP,A)
【文献】特開2021-127820(JP,A)
【文献】実開昭64-21019(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 11/00-13/10
B60K 1/00-6/12
B60K 6/08-8/00
B60K 16/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力振動が及ぼされて弾性変形する本体ゴム弾性体を壁部に有する受圧室と、可撓性膜を壁部に有する平衡室とが、流体通路で相互に連通された流体封入式防振装置において、
前記可撓性膜を覆う有底筒状の取付金具が設けられていると共に、
該取付金具には底壁部側の外周角部において周方向で部分的に開口する切欠窓が、該取付金具の該底壁部及び周壁部の両壁部にわたって広がる領域において内側から外側に向けて斜め方向に打ち抜く打抜加工によって形成された外方打抜窓によって構成されている一方、
該取付金具にはブラケット脚部が固着されており、該ブラケット脚部に設けられた取付用板部が該取付金具の該外方打抜窓を通じて該取付金具の外側から内側へ入り込んでおり、
該取付金具を防振対象部材に固定するための外側固定ボルトが該取付用板部に取り付けられており、該外側固定ボルトが該外方打抜窓内に位置している流体封入式防振装置。
【請求項2】
前記取付用板部の下面が前記取付金具の前記底壁部の外面と同じ平面上に広がる取付面をもって形成されている請求項1に記載の流体封入式防振装置。
【請求項3】
前記取付金具の前記底壁部には、内面から補強プレートが重ね合わされて固着されていると共に、該取付金具を前記防振対象部材に固定するための内側固定ボルトが、該補強プレートと該底壁部とを貫通して設けられている請求項1又は2に記載の流体封入式防振装置。
【請求項4】
前記外方打抜窓が、打抜方向の投影において角のない滑らかに湾曲する開口形状とされている請求項1又は2に記載の流体封入式防振装置。
【請求項5】
入力振動が及ぼされて弾性変形する本体ゴム弾性体を壁部に有する受圧室と、可撓性膜を壁部に有する平衡室とが、流体通路で相互に連通されていると共に、該可撓性膜を覆う有底筒状の取付金具が設けられた流体封入式防振装置を製造するに際して、
前記取付金具において、底壁部及び周壁部の両壁部にわたって広がる該底壁部側の外周角部に対して、内側から外側に向けて斜め方向に打抜加工を施すことで、該取付金具の該外周角部において周方向で部分的に開口する切欠状の外方打抜窓を形成する工程と、
該取付金具の該外方打抜窓を通じて該取付金具の外側から内側へ入り込む取付用板部を備えたブラケット脚部を、該取付金具に対して固着する工程と
を、含む流体封入式防振装置の製造方法。
【請求項6】
打抜用のポンチを、前記取付金具における前記底壁部と前記周壁部との間の前記外周角部よりも、該取付金具の該底壁部側と該周壁部側とで離隔した両側縁部に対して、先に当てて打ち抜く請求項5に記載の流体封入式防振装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のエンジンマウント等に適用される流体封入式防振装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車のエンジンマウント等に適用される防振装置の一種として、内部に封入された流体の流動作用等による防振効果を利用する流体封入式防振装置が知られている。流体封入式防振装置は、特開2007-182930号公報(特許文献1)に示すように、本体ゴム弾性体を壁部に有する受圧室と、可撓性膜を壁部に有する平衡室とが、流体通路で相互に連通された構造を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-182930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の流体封入式防振装置では、可撓性膜の保護等を目的として、可撓性膜を覆う有底筒状の部材(底金具)が設けられている。この可撓性膜を覆う部材は、流体封入式防振装置の車両ボデー等の防振対象部材に対する取付構造を構成する取付金具として利用されており、底壁部に固定ボルトが設けられることで取付構造を構成している。
【0005】
しかしながら、固定ボルトが底壁部に設けられた取付構造では、車両側における流体封入式防振装置の固定位置が取付金具の底壁部を外れた位置に設定される場合に、取付金具によって流体封入式防振装置の車両に対する取付構造を構成することが難しく、車両における流体封入式防振装置の固定位置の設定自由度が制限されていた。特に、取付金具の周壁部の延長上に位置するように固定ボルトを配置することが求められる場合に、対応することが難しかった。
【0006】
本発明の解決課題は、可撓性膜を覆う部材を防振対象部材への取付金具として利用しつつ、防振対象部材における取付金具の固定位置を大きな自由度で設定することができる、新規な構造の流体封入式防振装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、本発明を把握するための好ましい態様について記載するが、以下に記載の各態様は、例示的に記載したものであって、適宜に互いに組み合わせて採用され得るだけでなく、各態様に記載の複数の構成要素についても、可能な限り独立して認識及び採用することができ、適宜に別の態様に記載の何れかの構成要素と組み合わせて採用することもできる。それによって、本発明では、以下に記載の態様に限定されることなく、種々の別態様が実現され得る。
【0008】
第一の態様は、入力振動が及ぼされて弾性変形する本体ゴム弾性体を壁部に有する受圧室と、可撓性膜を壁部に有する平衡室とが、流体通路で相互に連通された流体封入式防振装置において、前記可撓性膜を覆う有底筒状の取付金具が設けられていると共に、該取付金具には底壁部側の外周角部において周方向で部分的に開口する切欠窓が、該取付金具の該底壁部及び周壁部の両壁部にわたって広がる領域において内側から外側に向けて斜め方向に打ち抜く打抜加工によって形成された外方打抜窓によって構成されている一方、該取付金具にはブラケット脚部が固着されており、該ブラケット脚部に設けられた取付用板部が該取付金具の該外方打抜窓を通じて該取付金具の外側から内側へ入り込んでおり、該取付金具を防振対象部材に固定するための外側固定ボルトが該取付用板部に取り付けられており、該外側固定ボルトが該外方打抜窓内に位置しているものである。
【0009】
本態様に従う構造とされた流体封入式防振装置によれば、取付金具の外周角部を貫通する切欠窓が形成されており、切欠窓を通じて外側から内側へ入り込んだブラケット脚部の取付用板部に外側固定ボルトが取り付けられている。これにより、外側固定ボルトと防振対象部材との締結点を外側固定ボルトと取付金具の周壁部(外周角部)とが干渉する位置に設定しても、外側固定ボルトが切欠窓内に配置されることで、外側固定ボルトと取付金具の干渉が回避される。それゆえ、外側固定ボルトの位置をより広い領域に亘って設定可能となって、流体封入式防振装置と防振対象部材との固定位置を大きな自由度で設定することができる。
【0010】
本発明者は、試作と検討を繰り返すことによって、切欠窓付きの取付金具を備える流体封入式防振装置に特有の新たな課題を見出した。即ち、取付金具の外側から内側に向けて打ち抜く一般的な打抜加工によって形成された内方打抜窓によって切欠窓を構成すると、打抜き時のバリが、内方打抜窓の開口縁部において内側へ突出するように形成される。このような内向きのバリが可撓性膜を覆う取付金具に形成されると、例えば振動入力時に可撓性膜が膨らむことによって、可撓性膜がバリに接触する場合があり、可撓性膜が損傷するおそれがあることを新たに発見した。
【0011】
そこで、取付金具の切欠窓は、内側から外側に向けて打ち抜く打抜加工によって形成された外方打抜窓によって構成されている。これにより、取付金具の内側に打抜加工によるバリが形成されるのを防いで、バリへの接触による可撓性膜の損傷が防止される。しかも、外方打抜窓の内側開口縁部は、打抜加工時に打抜用のポンチの押し当てによってエッジが潰れて面取り状となり易い。それゆえ、外方打抜窓の内側開口縁部には内側に突出するエッジの発生が回避されて、可撓性膜が外方打抜窓の内側開口縁部に接触しても、可撓性膜の損傷がより防止され易い。
【0012】
外方打抜窓は、取付金具の底壁部及び周壁部の両壁部にわたって広がる領域が斜め方向に打ち抜かれて形成されることから、外側固定ボルトを配置可能な外方打抜窓を一度の打抜加工で形成することができる。
【0013】
第二の態様は、第一の態様に記載された流体封入式防振装置において、前記取付用板部の下面が前記取付金具の前記底壁部の外面と同じ平面上に広がる取付面をもって形成されているものである。
【0014】
本態様に従う構造とされた流体封入式防振装置によれば、例えば、底壁部の外面(下面)と取付用板部の下面とを、防振対象部材の同じ平面に当接状態で重ね合わせて、取付金具及び取付用板部を防振対象部材に取り付けることができる。
【0015】
第三の態様は、第一又は第二の態様に記載された流体封入式防振装置において、前記取付金具の前記底壁部には、内面から補強プレートが重ね合わされて固着されていると共に、該取付金具を前記防振対象部材に固定するための内側固定ボルトが、該補強プレートと該底壁部とを貫通して設けられているものである。
【0016】
本態様に従う構造とされた流体封入式防振装置によれば、外側固定ボルトに加えて内側固定ボルトが設けられることにより、取付金具を防振対象部材に対してより大きな強度で固定することができる。しかも、取付金具の底壁部と補強プレートとを貫通して設けられる内側固定ボルトに大きな荷重が入力されたとしても、底壁部の変形が防止される。
【0017】
第四の態様は、第一~第三の何れか1つの態様に記載された流体封入式防振装置において、前記外方打抜窓が、打抜方向の投影において角のない滑らかに湾曲する開口形状とされているものである。
【0018】
本態様に従う構造とされた流体封入式防振装置によれば、打抜加工時の応力集中が防止されて、打抜加工時の取付金具の損傷等が防止される。
【0019】
第五の態様は、入力振動が及ぼされて弾性変形する本体ゴム弾性体を壁部に有する受圧室と、可撓性膜を壁部に有する平衡室とが、流体通路で相互に連通されていると共に、該可撓性膜を覆う有底筒状の取付金具が設けられた流体封入式防振装置を製造するに際して、(a)前記取付金具において、底壁部及び周壁部の両壁部にわたって広がる該底壁部側の外周角部に対して、内側から外側に向けて斜め方向に打抜加工を施すことで、該取付金具の該外周角部において周方向で部分的に開口する切欠状の外方打抜窓を形成する工程と、(b)該取付金具の該外方打抜窓を通じて該取付金具の外側から内側へ入り込む取付用板部を備えたブラケット脚部を、該取付金具に対して固着する工程とを、含むものである。
【0020】
本態様に従う流体封入式防振装置の製造方法によれば、取付金具の底壁部側の外周角部を内側から外側に向けて打ち抜く打抜加工によって、切欠状の外方打抜窓を形成することから、取付金具の内側に打抜加工によるバリが形成され難く、外方打抜窓の内側開口縁部に対するバリ取りや面取り等の後処理を簡易にすることもできる。
【0021】
打抜加工で形成された外方打抜窓に対して、取付用板部を備えたブラケット脚部を外側から内側へ差し入れて、取付金具に固着することにより、取付用板部を外方打抜窓内に配置することができる。
【0022】
また、外方打抜窓は、取付金具の底壁部及び周壁部の両壁部にわたって広がる領域が斜め方向に打ち抜かれて形成されることから、取付金具の底壁部及び周壁部の両壁部を貫通する外方打抜窓を、一度の打抜加工で形成することが可能であり、工程数を少なくすることができる。
【0023】
第六の態様は、第五の態様に記載された流体封入式防振装置の製造方法において、打抜用のポンチを、前記取付金具における前記底壁部と前記周壁部との間の前記外周角部よりも、該取付金具の該底壁部側と該周壁部側とで離隔した両側縁部に対して、先に当てて打ち抜くものである。
【0024】
取付金具の底壁部側の外周角部を底壁部及び周壁部の両壁部にわたって斜め方向に打ち抜くと、打抜用のポンチの押し当てによる取付金具の変形で外方打抜孔の形状が歪になり易いが、本態様に従う流体封入式防振装置の製造方法によれば、目的とする形状の外方打抜孔を精度よく形成することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、可撓性膜を覆う部材を防振対象部材への取付金具として利用しつつ、防振対象部材における取付金具の固定位置を大きな自由度で設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の第一の実施形態としてのエンジンマウントを示す斜視図
図2図1に示すエンジンマウントの正面図
図3図2に示すエンジンマウントの平面図
図4図3のIV-IV断面図
図5図1のエンジンマウントを構成するブラケット金具を示す正面図
図6図5に示すブラケット金具の平面図
図7図5に示すブラケット金具の底面図
図8図5に示すブラケット金具の右側面図
図9図5に示すブラケット金具を構成する取付金具の斜視図
図10図9の取付金具を別角度で示す斜視図
図11A図9の取付金具の製造工程を示す断面図であって、打抜加工前を示す図
図11B図9の取付金具の製造工程を示す断面図であって、打抜加工中を示す図
図11C図9の取付金具の製造工程を示す断面図であって、打抜加工後を示す図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0028】
図1図4には、本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置の第一の実施形態として、自動車用のエンジンマウント10が示されている。エンジンマウント10は、マウント本体12に取付用ブラケット14が取り付けられた構造を有している。更に、マウント本体12は、第一の取付部材16と第二の取付部材18が本体ゴム弾性体20で連結された構造を有している。以下の説明において、原則として、上下方向とは図2中の上下方向を、前後方向とは図3中の上下方向を、左右方向とは図3中の左右方向を、それぞれ言う。
【0029】
第一の取付部材16は、金属等で形成された硬質の部材であって、図4に示すように、全体として下部が上部よりも大径とされた段付きの円柱形状を有している。第一の取付部材16には、中心軸上を上下方向に延びて上面に開口するねじ穴22が形成されている。
【0030】
第二の取付部材18は、金属等で形成された硬質の部材であって、薄肉大径の略円筒形状とされている。第二の取付部材18は、上端部に外周へ突出する外フランジ24が設けられていると共に、下端部に内周へ突出する内フランジ26が設けられている。
【0031】
第一の取付部材16が第二の取付部材18に対して同一中心軸上で上方に配置されており、それら第一の取付部材16と第二の取付部材18が本体ゴム弾性体20によって弾性連結されている。本体ゴム弾性体20は、上方へ向けて小径となる外周面を備えた略円錐台形状とされており、上端部に第一の取付部材16が固着されていると共に、下端部の外周面に第二の取付部材18が固着されている。小径とされた第一の取付部材16の上部が本体ゴム弾性体20から上方へ突出していると共に、第二の取付部材18の内フランジ26が本体ゴム弾性体20よりも下方で露出している。本体ゴム弾性体20は、第一の取付部材16と第二の取付部材18を備えた一体加硫成形品として形成されており、第一の取付部材16と第二の取付部材18が本体ゴム弾性体20の成形時に加硫接着されている。本体ゴム弾性体20の加硫成形後に第二の取付部材18が縮径加工されて、本体ゴム弾性体20が予圧縮されていることが望ましく、それによって、本体ゴム弾性体20において成形後の熱収縮による引張応力が低減される。
【0032】
本体ゴム弾性体20は、下面に開口する凹所28を備えている。凹所28は、下方へ向けて拡開する逆すり鉢状とされている。本体ゴム弾性体20には、凹所28の外周側から下方へ延び出す第一シールゴム層30が一体形成されている。第一シールゴム層30は、薄肉大径の筒状とされており、第二の取付部材18の下部の内周面を全周に亘って覆っている。第一シールゴム層30は、下端面が内フランジ26の上面に固着されている。第一シールゴム層30の径方向の厚さ寸法は、少なくとも下端部において第二の取付部材18の内フランジ26の内周への突出寸法よりも小さくされている。従って、内フランジ26は、第一シールゴム層30の下端部よりも内周へ突出している。
【0033】
第二の取付部材18には、仕切部材32が取り付けられている。仕切部材32は、全体として略円板形状とされており、上部を構成する第一部材34と、下部を構成する第二部材36とを、備えている。
【0034】
第一部材34は、内周部分において上方へ向けて開口する第一凹所38を備えている。第一部材34の外周部分には、外周面に開口しながら周方向に延びる第一周溝40が形成されている。第一周溝40は、第一凹所38の周壁に開口する図示しない上連通口を通じて、第一凹所38に連通されている。
【0035】
第二部材36は、第一部材34よりも厚肉の略円板形状とされており、内周部分において下方へ向けて開口する第二凹所42を備えている。第二部材36の上部には、上面に開口して周方向に延びる第二上側周溝44が形成されている。また、第二部材36の下部には、外周面に開口して周方向に延びる第二下側周溝46が形成されている。第二上側周溝44と第二下側周溝46は、周方向の一部において連通孔48を通じて直列的に連通されている。第二下側周溝46は、第二凹所42の周壁に開口する図示しない下連通口を通じて、第二凹所42に連通されている。
【0036】
第二部材36の外周面には、上係止溝50と下係止溝52とが開口形成されている。上下の係止溝50,52は、第二下側周溝46よりも上側において第二部材36の外周面に開口しており、全周に亘って連続して形成されている。
【0037】
第一部材34と第二部材36は、上下で相互に重ね合わされており、例えば、第二部材36の上面に突出するピン状連結部54が第一部材34の第一凹所38の底壁に貫通形成された連結孔56に挿通されてかしめ固定される等して、相互に固定されている。
【0038】
第一部材34と第二部材36が相互に連結固定された状態において、第一部材34の第一周溝40と、第二部材36の第二上側周溝44とが、図示しない連通孔を通じて相互に連通されている。
【0039】
仕切部材32は、第二の取付部材18の内周へ下方から差し入れられている。そして、第二の取付部材18の縮径加工によって、第二の取付部材18が第一シールゴム層30を介して仕切部材32の外周面に押し当てられることにより、仕切部材32が第二の取付部材18に取り付けられている。これにより、第二の取付部材18の内周面と仕切部材32の外周面との間は、第一シールゴム層30によって液密に封止されている。
【0040】
また、第二の取付部材18の縮径加工によって、第二の取付部材18の内フランジ26が第二部材36の外周面に開口する上係止溝50に差し入れられており、仕切部材32が第二の取付部材18に対して上下方向で位置決めされている。仕切部材32における上係止溝50よりも下方は、第二の取付部材18よりも下側に突出している。なお、第二の取付部材18は、仕切部材32が挿入された軸方向の下部が縮径加工されることによって、仕切部材32の外周面に嵌着されており、軸方向の下部が上部よりも僅かに小径とされている。
【0041】
仕切部材32には、可撓性膜58が取り付けられている。可撓性膜58は、ゴムや樹脂エラストマで形成されており、薄肉大径の略円板形状とされて、厚さ方向の撓み変形が許容されている。可撓性膜58は、ある程度の伸縮も許容されている。可撓性膜58の外周端部には、固定部材60が固着されている。固定部材60は、筒状乃至は環状とされており、上端部には内周へ突出する係止突片62が設けられている。固定部材60の内周面は、可撓性膜58と一体形成された第二シールゴム層64で覆われている。第二シールゴム層64の厚さ寸法は、少なくとも上端部において係止突片62の突出寸法よりも小さくされており、係止突片62が第二シールゴム層64よりも内周側へ突出している。そして、固定部材60が仕切部材32の下部に外挿された状態で縮径加工されることにより、固定部材60の内周面が仕切部材32の外周面に第二シールゴム層64を介して液密に嵌着される。また、固定部材60の縮径加工によって、固定部材60の係止突片62が仕切部材32の下係止溝52に差し入れられており、固定部材60が仕切部材32に対して上下方向で位置決めされている。これらにより、固定部材60が仕切部材32に固定されており、可撓性膜58が仕切部材32を介して第二の取付部材18に取り付けられている。
【0042】
仕切部材32の上側には、壁部の一部が本体ゴム弾性体20で構成された受圧室66が形成されている。受圧室66は、非圧縮性流体が封入されており、本体ゴム弾性体20の変形によって内圧変動が惹起される。また、仕切部材32の下側には、壁部の一部が可撓性膜58で構成された平衡室68が形成されている。平衡室68は、非圧縮性流体が封入されており、可撓性膜58の変形によって容積変化が許容される。なお、受圧室66と平衡室68に封入される非圧縮性流体は、好適には低粘性の液体とされており、例えば、水、エチレングリコール、アルキレングリコール、シリコーン油、或いはそれらの混合液等が採用され得る。
【0043】
受圧室66と平衡室68は、第一周溝40と上下の第二周溝44,46とを含んで構成される流体通路としてのオリフィス通路70によって、相互に連通されている。即ち、第一周溝40の外周開口が第二の取付部材18によって液密に覆われると共に、第二下側周溝46の外周開口が可撓性膜58の固定部材60によって液密に覆われており、更に第二上側周溝44の上開口が第一部材34によって覆われていることによって、受圧室66と平衡室68を相互に連通するオリフィス通路70が形成されている。オリフィス通路70は、内部を流動する流体の共振周波数であるチューニング周波数が、通路断面積と通路長の比によって調節されて、防振対象振動の周波数に設定されており、例えばエンジンシェイクに相当する10Hz程度に設定されている。
【0044】
マウント本体12には、取付用ブラケット14が取り付けられている。取付用ブラケット14は、図5図8にも示すように、カップ状の取付金具72と、取付金具72に固定されたブラケット脚部74とを、備えている。
【0045】
取付金具72は、図9図10にも示すように、鉄、アルミニウム合金等の金属によって形成されており、略円板形状の底壁部76と略円筒形状の周壁部78とを一体で備えた略有底円筒形状とされている。底壁部76と周壁部78は、図4に示すように、縦断面において円弧状に湾曲する外周角部80によって滑らかに連続している。取付金具72の上端部には、外周へ突出するフランジ状部82が全周に亘って設けられている。本実施形態のフランジ状部82は、上部の外周面が略一定の外径寸法とされていると共に、下部が上方へ向けて大径となるテーパ形状の外周面を有している。
【0046】
取付金具72の底壁部76の上面には、補強プレート84が重ね合わされている。補強プレート84は、底壁部76よりも小さくされて、底壁部76を部分的に覆っている。本実施形態の補強プレート84は、略円板形状とされているが、形状は特に限定されない。補強プレート84は、後述する内側固定ボルト88の周囲に配されており、後述する位置決めピン92からは離れて位置している。補強プレート84は、例えば、底壁部76に対して周方向の複数箇所で溶接されることにより、底壁部76に固着されている。
【0047】
図10に示すように、取付金具72の底壁部76と補強プレート84には、上下方向に貫通する内側ボルト挿通孔86が形成されている。内側ボルト挿通孔86には、図5図8に示すように、内側固定ボルト88が上側から挿通されており、軸部の上端部分が内側ボルト挿通孔86に嵌合固定されている。
【0048】
図10に示すように、取付金具72の底壁部76には、上下方向に貫通するピン挿通孔90が形成されている。ピン挿通孔90は、内側ボルト挿通孔86を外れた部分に形成されている。ピン挿通孔90には、図4図8に示すように、位置決めピン92が上側から挿通されており、軸部の上端部分がピン挿通孔90に嵌合固定されている。
【0049】
取付金具72には、図9図10に示すように、周方向の一部において切欠窓としての外方打抜窓94が形成されている。外方打抜窓94は、取付金具72を外周角部80において貫通して形成されており、底壁部76と周壁部78との両壁部にわたって広がる外周角部80を含んだ領域に形成されている。外方打抜窓94は、図8に示す側方視において、全体として略角丸四角形とされて、前後中央に対する略対称形状とされていると共に、上辺部分が波打ち状に湾曲しており、前後中央部分の上下寸法が前後両端部分の上下寸法よりも小さくされている。また、外方打抜窓94は、図7に示す底面視において、全体として略角丸四角形とされて、前後中央に対する略対称形状とされていると共に、左辺部分が円弧状に湾曲しており、前後中央部分の左右寸法が前後両端部分の左右寸法よりも大きくされている。このように、本実施形態において、外方打抜窓94の開口形状は、全周にわたって角のない連続した湾曲形状とされている。
【0050】
このような取付金具72の外方打抜窓94は、図11に示すような打抜加工工程によって形成される。即ち、先ず、図11Aに示すように、有底円筒状のカップ金具96を準備して、カップ金具96の外周角部80の一部をダイ98の凹部100にセットして位置決めする。外周角部80が凹部100に挿入されることにより、底壁部76の下面及び周壁部78の外周面がダイ98の凹部100の内面に重ね合わされている。ダイ98の凹部100は、内周上方へ向けて斜めに開口している。
【0051】
次に、ポンチ102をカップ金具96の内側に差し入れて、ダイ98の凹部100に対してカップ金具96を介して対峙するように配する。ポンチ102は、先端がダイ98の凹部100と対応する位置で、カップ金具96の外周角部80に向けて、カップ金具96の内周へ斜めに差し入れられている。ポンチ102は、周壁部78と干渉することなくカップ金具96の上側開口へ挿入可能な形状、大きさ、挿入時の傾斜角度とされている。なお、ポンチ102による打抜き方向は、周壁部78の高さ等を考慮して設定可能であって限定されるものでないが、加工性の他に上方から可撓性膜58が膨らんで当接することも考慮すると、例えば底壁面に対して40度~60度の打抜き方向の傾斜角度とされることが望ましく、より好適には底壁部76と周壁部78の間の角部が最後に打ち抜かれるようにされる。
【0052】
そして、ポンチ102を、カップ金具96を挟んで反対側に位置するダイ98に対して接近するように、右斜め下方向へ移動させる。ダイ98に接近したポンチ102は、図11Bに示すように、外周角部80よりも底壁部76側及び周壁部78側とに離隔した位置で、両側縁部がカップ金具96の内面に優先的に接触する。
【0053】
次に、ポンチ102をダイ98に更に接近するように移動させることにより、図11Cに示すように、カップ金具96の外周角部80を含む部分を内側から外側へ向けてポンチ102で斜め方向に打ち抜く。これにより、内側から外側へ向けて斜め方向の打抜加工をカップ金具96の外周角部80に対して施して、周方向で部分的に開口する切欠状の外方打抜窓94を形成し、外方打抜窓94を備えた取付金具72を形成する。このように、カップ金具96に対して斜め方向の打抜加工を一度だけ行うことにより、底壁部76と周壁部78に跨る外方打抜窓94を備えた取付金具72を簡単に得ることができる。
【0054】
外方打抜窓94がポンチ102によって内側から外側へ向けて打ち抜かれて形成されることから、外方打抜窓94の開口縁部のバリが、外側へ突出するように形成される。また、外方打抜窓94の内側開口縁部104は、ポンチ102の摺接によってエッジが押し潰される等して、簡易に面取り状とされ、少なくともカップ金具96の内表面から内側へ突出するバリ状の突起の発生が防止される。
【0055】
ポンチ102は、カップ金具96の内面に対して、外周角部80から底壁部76側と周壁部78側とに離隔した両側縁部に先に当てられて、外周角部80から離れた両側縁部を先に打ち抜く。これにより、外周角部80を優先的に打ち抜く場合よりも、ポンチ102の押し当てによるカップ金具96の変形が抑えられて、斜め方向の打抜加工で形状精度の高い外方打抜窓94を形成することができる。
【0056】
ポンチ102とダイ98による外方打抜窓94の形成(打抜加工)が完了した後、ポンチ102とダイ98を取付金具72から取り外す。ポンチ102及びダイ98を取り外した取付金具72は、外方打抜窓94の内側開口縁部104にコイニングや切削等の面取り加工を施してもよい。この場合にも、外方打抜窓94の内側開口縁部104におけるバリの形成が抑えられると共に、内側開口縁部104が打抜時に簡易に面取りされることによって、面取り等の後処理が簡単になる。
【0057】
なお、取付金具72に設けられる内側ボルト挿通孔86とピン挿通孔90は、外方打抜窓94の形成前に予め形成されていてもよいし、外方打抜窓94の形成後に形成してもよい。内側ボルト挿通孔86とピン挿通孔90は、例えば打抜加工によって形成されるが、その場合には、底壁部76の内側(上側)から外側(下側)に向けて打ち抜くように形成されることが望ましい。
【0058】
取付金具72には、ブラケット脚部74が取り付けられている。ブラケット脚部74は、全体として左右方向に延びる溝形とされており、溝底部を構成する取付用板部106と一対の固定板部108,108とを一体的に備えている。
【0059】
取付用板部106は、軸直角方向(上下直交方向)に広がっている。取付用板部106は、図7に示すように、前後中央部分が左方へ向けて突出する略半円板形状の差入部110を備えている。取付用板部106における差入部110の右方には、上下方向に貫通する外側ボルト挿通孔112が形成されている。外側ボルト挿通孔112には、上側から外側固定ボルト114が挿通されており、図4に示すように、外側固定ボルト114の軸部の上端部分が外側ボルト挿通孔112に嵌合固定されている。後述するブラケット脚部74の取付金具72への固定状態において、内側固定ボルト88と外側固定ボルト114は、前後方向で互いに異なる位置に配されていてもよいし、互いに同じ位置に配されていてもよい。
【0060】
一対の固定板部108,108は、取付用板部106の前後両端部から上方へ向けて突出しており、図5に示すように、前後方向の投影において、右方に向けて下傾する円弧状の湾曲形状とされている。そして、ブラケット脚部74の固定板部108,108は、右端部の下端が取付用板部106に連続している。ブラケット脚部74は、例えば、固定板部108,108が取付用板部106の前後両側において曲げ加工で形成されており、取付用板部106と固定板部108,108とを一体で備えたプレス金具とされている。
【0061】
ブラケット脚部74における取付用板部106の差入部110は、図4図6図7に示すように、外方打抜窓94を通じて、取付金具72の外側(右側)から内側(左側)へ差し入れられている。取付用板部106は、差入部110よりも右側部分が外方打抜窓94よりも右方に延び出している。取付用板部106は、外方打抜窓94の開口周縁部に対して接することなく離隔して配されている。取付用板部106の下面は、取付金具72の底壁部76の下面と同じ平面上に広がる取付面116とされている。
【0062】
そして、取付用板部106が外方打抜窓94を通じて取付金具72の内側へ入り込んでいることにより、取付用板部106に固定された外側固定ボルト114は、図4図6に示すように、頭部の少なくとも一部が外方打抜窓94内に配置されており、上下方向の投影において周壁部78と重なっている。外側固定ボルト114は、頭部が周壁部78に対して下方に離隔しており、周壁部78に対して干渉することなく設けられている。このように、取付金具72に外方打抜窓94が設けられて、外側固定ボルト114が取り付けられる取付用板部106が外方打抜窓94内へ差し入れられていることから、外側固定ボルト114を取付金具72の周壁部78の下方への延長上に配置することが可能とされている。これにより、外側固定ボルト114の配置の自由度がより大きくされている。なお、本実施形態では、取付用板部106に形成された内側ボルト挿通孔86の一部が、軸方向の投影において周壁部78と重なっており、内側固定ボルト88の軸部も周壁部78と軸方向で重なる位置に配置されている。
【0063】
ブラケット脚部74の一対の固定板部108,108は、左端部が取付金具72の周壁部78の外周面に対して溶接等の手段で固定されている。これにより、取付用板部106が取付金具72に対して固定板部108,108を介して固着されている。なお、一対の固定板部108,108の左端部は、図7に示すように、左方へ向けて前後方向で相互に離隔する外方へ傾斜するテーパ形状とされており、取付金具72の周壁部78の外周面に沿って重ね合わされている。
【0064】
ブラケット脚部74は、プレス加工によって取付用板部106と固定板部108,108とを備えた所定形状で準備されて、以下の如きブラケット脚部74の取付金具72への固着工程によって、上述した外方打抜窓94の打抜加工工程を経て形成された取付金具72に固着される。即ち、先ず、ブラケット脚部74を取付金具72における外方打抜窓94の形成部分に対して周方向で位置決めして、外方打抜窓94に対して接近させることにより、取付用板部106の差入部110を外方打抜窓94を通じて取付金具72の外側から内側へ入り込ませると共に、固定板部108,108の左端部を取付金具72の外周面に対して外方打抜窓94を周方向に外れた両側で重ね合わせる。そして、取付金具72と固定板部108,108を溶接することにより、取付用板部106が取付金具72の内側へ入り込んだ状態で、ブラケット脚部74を取付金具72に固定する。かかる取付金具72とブラケット脚部74の固着工程を完了することで、取付用ブラケット14が形成される。
【0065】
かくの如き構造とされた取付用ブラケット14は、マウント本体12の第二の取付部材18に固定されている。即ち、図4に示すように、第二の取付部材18の上部が取付用ブラケット14の取付金具72に圧入されることによって、取付用ブラケット14が第二の取付部材18に固定されて、エンジンマウント10が構成されている。取付用ブラケット14の取付金具72の上端に設けられたフランジ状部82が、第二の取付部材18の上端に設けられた外フランジ24に下側から突き当てられて重ね合わされていることにより、取付用ブラケット14の第二の取付部材18に対する軸方向での相対的な位置が規定されている。
【0066】
第二の取付部材18に固定された取付金具72は、周壁部78が可撓性膜58の外周側を囲んで配されていると共に、底壁部76が可撓性膜58の下方に離隔して配されており、可撓性膜58の下方を覆っている。
【0067】
エンジンマウント10は、第一の取付部材16が図示しないパワーユニットに取り付けられると共に、第二の取付部材18が取付用ブラケット14を介して防振対象部材としての車両ボデー118に取り付けられる。これにより、パワーユニットと車両ボデー118がエンジンマウント10を介して防振連結されて、エンジンマウント10が車両に装着されている。
【0068】
取付用ブラケット14の取付金具72は、底壁部76の下面が車両ボデー118に接した状態で重ね合わされている。また、取付用ブラケット14のブラケット脚部74は、下面である取付面116が取付金具72の底壁部76の下面と同じ平面上で広がっており、ブラケット脚部74の取付面116も車両ボデー118に接した状態で重ね合わされている。このように、取付金具72の底壁部76の下面とブラケット脚部74の下面(取付面116)とが、同じ平面上に位置しており、それぞれ車両ボデー118に重ね合わされることから、車両ボデー118に対する当接面積が大きく確保されて、車両ボデー118への取付け状態が安定する。
【0069】
取付用ブラケット14の取付金具72は、車両ボデー118に対して、位置決めピン92によって位置決めされた状態で、内側固定ボルト88と外側固定ボルト114とによって固定される。内側固定ボルト88は、取付金具72の底壁部76と補強プレート84とが重ね合わされた部分に設けられており、内側固定ボルト88の取付部分の変形剛性が大きくされていることから、内側固定ボルト88の取付部分に大きな外力が作用しても、取付用ブラケット14の変形が防止される。また、内側固定ボルト88だけでなく外側固定ボルト114によっても車両ボデー118に締結されることから、入力の分散化によって耐荷重性の向上が図られている。外側固定ボルト114が設けられる取付用板部106は、取付金具72の底壁部76よりも厚肉とされており、変形剛性が大きくされている。
【0070】
エンジンマウント10の車両への装着状態において、第一の取付部材16と第二の取付部材18の間に防振対象振動が入力されると、本体ゴム弾性体20の弾性変形によって受圧室66の内圧が変動し、受圧室66と平衡室68の間に相対的な圧力差が生じる。この圧力差によって、受圧室66と平衡室68を相互に連通するオリフィス通路70において流体流動が生じて、流体の流動作用による防振効果が発揮される。本実施形態では、エンジンシェイクに相当する振動入力時に、オリフィス通路70による高減衰作用に基づいた防振効果が発揮される。
【0071】
受圧室66と平衡室68の間で流体が流動することにより、平衡室68の壁部を構成する可撓性膜58は、平衡室68内の圧力変動が抑えられるように変形する。従って、受圧室66内の流体が平衡室68へ流入する場合には、可撓性膜58が外側へ膨らむように変形して、取付金具72の底壁部76及び周壁部78に接近する。この場合に、可撓性膜58は、取付金具72に形成された外方打抜窓94の内側開口縁部104に接触することも考えられる。外方打抜窓94は、内側から外側へ向けた打抜加工によって形成されており、内側開口縁部104にはバリが形成され難い。従って、可撓性膜58が外方打抜窓94の内側開口縁部104に接触しても、可撓性膜58が損傷し難い。なお、可撓性膜58の接触による損傷をより有利に回避するために、外方打抜窓94の内側開口縁部104にコイニングや切削等による面取り等の後処理を施してもよいが、その場合にも、打抜加工時のバリの形成が抑えられていることによって、面取り等の後処理が簡単になる。
【0072】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、前記第一の実施形態の取付用ブラケット14は、マウント本体12の第二の取付部材18と圧入固定されていたが、取付用ブラケット14の第二の取付部材18への固定方法は、圧入に限定されない。具体的には、例えば、特開2007-182930号公報に示されているように、取付金具72の上端に設けられたフランジ状部82が第二の取付部材に対してかしめ固定されるようにしてもよい。
【0073】
内側固定ボルト88はなくてもよく、取付用ブラケット14が外側固定ボルト114だけによって車両ボデー118に固定されていてもよい。また、外側固定ボルト114を複数設けることもできる。この場合に、1つのブラケット脚部74に複数の外側固定ボルト114を設けてもよいし、複数の外方打抜窓94を取付金具72に形成して、複数のブラケット脚部74を取付金具72に取り付けることで、複数の外側固定ボルト114を設けることもできる。複数の外側固定ボルト114を設ける場合には、少なくとも1つの外側固定ボルト114が取付金具72の周壁部78に干渉する位置に配置される。なお、内側固定ボルト88を複数設けることもできる。
【0074】
取付金具72の底壁部76の下面と、ブラケット脚部74の取付用板部106の下面は、異なる平面上で広がっていてもよい。これによれば、例えば、車両ボデー118の上面に段差がある場合などにも対応することができる。
【0075】
補強プレート84は必須ではなく、例えば、内側固定ボルト88への入力荷重が比較的に小さく、取付金具72の底壁部76の変形剛性が不足しない場合などには、補強プレート84を省略してもよい。外側固定ボルト114への入力を受ける補強プレートを、取付用板部106に重ね合わされるように設けてもよい。更に、取付金具72の底壁部76と取付用板部106との両方に跨って広がる共通の補強プレートを採用することもできる。また、取付金具72の底壁部76と取付用板部106とを溶接等で一体化して強度の向上等を図ることも可能であり、その場合に、それら底壁部76と取付用板部106との両方に跨って広がる共通の補強プレートをそれぞれに溶接することで、底壁部76と取付用板部106とを補強プレートを介して一体化することもできる。
【0076】
仕切部材32は、必ずしも複数の部品を組み合わせて構成されていなくてもよく、例えば全体が1つの部品で構成されていてもよい。また、仕切部材32には、可動板や可動膜等の従来公知の液圧吸収機構が設けられていてもよい。また、流体通路は、必ずしも前記第一の実施形態に示したオリフィス通路70のような3つの周溝40,44,46で構成されたものに限定されず、例えば、1つ又は2つの周溝によって構成されていてもよいし、4つ以上の周溝で構成されていてもよい。なお、流体通路は、仕切部材の外周部分を周方向に延びるものに限定されず、例えば、仕切部材の内周部分を軸方向に貫通する孔状とすることもできる。
【0077】
前記第一の実施形態では、取付用ブラケット14が取り付けられる防振対象部材として、車両ボデー118を例示したが、防振対象部材は車両ボデー118に限定されず、例えば、パワーユニットやサブフレーム等であってもよい。
【符号の説明】
【0078】
10 エンジンマウント(流体封入式防振装置 第一の実施形態)
12 マウント本体
14 取付用ブラケット
16 第一の取付部材
18 第二の取付部材
20 本体ゴム弾性体
22 ねじ穴
24 外フランジ
26 内フランジ
28 凹所
30 第一シールゴム層
32 仕切部材
34 第一部材
36 第二部材
38 第一凹所
40 第一周溝
42 第二凹所
44 第二上側周溝
46 第二下側周溝
48 連通孔
50 上係止溝
52 下係止溝
54 ピン状連結部
56 連結孔
58 可撓性膜
60 固定部材
62 係止突片
64 第二シールゴム層
66 受圧室
68 平衡室
70 オリフィス通路(流体通路)
72 取付金具
74 ブラケット脚部
76 底壁部
78 周壁部
80 外周角部
82 フランジ状部
84 補強プレート
86 内側ボルト挿通孔
88 内側固定ボルト
90 ピン挿通孔
92 位置決めピン
94 外方打抜窓
96 カップ金具
98 ダイ
100 凹部
102 ポンチ
104 内側開口縁部
106 取付用板部
108 固定板部
110 差入部
112 外側ボルト挿通孔
114 外側固定ボルト
116 取付面
118 車両ボデー(防振対象部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C