(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】トップカバー板のプレス一体成形方法およびトップカバー構造の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/15 20210101AFI20241024BHJP
H01M 50/176 20210101ALI20241024BHJP
H01M 50/342 20210101ALI20241024BHJP
H01M 50/55 20210101ALI20241024BHJP
H01M 50/586 20210101ALI20241024BHJP
H01M 50/593 20210101ALI20241024BHJP
H01M 50/188 20210101ALI20241024BHJP
【FI】
H01M50/15
H01M50/176
H01M50/342 101
H01M50/55 101
H01M50/586
H01M50/593
H01M50/188
(21)【出願番号】P 2023073555
(22)【出願日】2023-04-27
【審査請求日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】202211264323.2
(32)【優先日】2022-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521262150
【氏名又は名称】寧波震裕科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NINGBO ZHENYU TECHNOLOGY CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Xidian, Ninghai County, Ningbo City, Zhejiang 315000 China
(74)【代理人】
【識別番号】100142804
【氏名又は名称】大上 寛
(72)【発明者】
【氏名】何世亜
(72)【発明者】
【氏名】劉航
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第214625197(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第112820988(CN,A)
【文献】中国実用新案第211529987(CN,U)
【文献】中国実用新案第217589177(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/00 - 50/198
H01M 50/30 - 50/392
H01M 50/50 - 50/598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トップカバー板(10)にプレス加工することにより、貫通して設けられた第1の貫通穴(104)、および第1の貫通穴(104)を囲んで貫通せずに設けられた皿穴(103)を成形するステップS11と、
トップカバー板(10)を下から上に向かってプレス加工することにより、円筒形状の凸状隆起(105)を成形し、かつ第1の貫通穴(104)を凸状隆起(105)の上面に位置させ、皿穴(103)を凸状隆起(105)の側壁に位置させるステップS12と、
凸状隆起(105)を上から下に向かってプレス加工することにより、凸状隆起(105)を凸状隆起底部(107)と、凸状隆起底部(107)を囲んで凸設された凸状隆起壁(106)とにプレス成形し、皿穴(103)は凸状隆起壁(106)の外側壁に反転溝(123)として形成されるステップS13と、
凸状隆起壁(106)に対して1回目の成形加工を行うことにより、凸状隆起壁(106)を凸状隆起接続部(121)と、凸状隆起接続部(121)に接続され、かつ内側に折り曲げられて設けられた凸状隆起リング(122)とに成形し、凸状隆起底部(107)と第1の貫通穴(104)をそれぞれ極柱位置決め台(125)と極柱穴(126)に成形するステップS14と、を含むことを特徴とする、トップカバー板のプレス一体成形方法。
【請求項2】
ステップS11では、さらにトップカバー板(10)にプレス加工することにより、貫通して設けられた第2の貫通穴(109)を成形し、ステップS12では、さらに第2の貫通穴(109)に対して下から上に向かってプレス加工することにより、第2の貫通穴(109)を上方に突出させて弁穴凸台を形成し、ステップS13では、さらにトップカバー板(10)に上から下に向かってプレス加工して液体注入口(34)を成形し、ステップS13の後、さらにステップS131を有し、ステップS131では、さらに弁穴凸台に対して上から下に向かってプレス処理し、その中央領域を陥没させ、または、
ステップS11では、さらにトップカバー板(10)に下から上に向かってプレス加工することにより、トップカバー板(10)に防爆弁凸台(312)を成形し、ステップS13では、さらに防爆弁凸台(312)に対して上から下に向かってプレス加工することにより、防爆弁凸台(312)を下向きにプレスして、弁溝部と、サイドリング部と、サイドリング部に凹設されたリング開口部とに成形し、かつトップカバー板(10)に上から下に向かってプレス加工することにより液体注入口(34)を成形し、ステップS131では、さらに弁溝部にC字状の薄肉部を成形することを特徴とする、請求項1に記載のトップカバー板のプレス一体成形方法。
【請求項3】
ステップS14では、さらにトップカバー板(10)の底面に複数の成形部材用凹穴を成形し、
ステップS14では、さらに凸状隆起接続部(121)の外側にプレスして凹状リング(124)を形成し、
前記皿穴(103)は、少なくとも3つであり、周方向に均一に分布し、ステップS12では、プレス加工後の第1の貫通穴(104)を凸状隆起(105)の上面中央に位置させることを特徴とする、請求項2に記載のトップカバー板のプレス一体成形方法。
【請求項4】
トップカバー構造を、トップカバー板(10)と、トップカバー板(10)に設けられた正極極柱アセンブリ(101)または負極極柱アセンブリ(102)とを含むように配置し、前記正極極柱アセンブリ(101)または負極極柱アセンブリ(102)は、シール部材(22)、極柱(21)および上側成形部材(23)を含み、シール部材(22)、極柱(21)および上側成形部材(23)は、トップカバー板(10)の上方に下から上に向かって順次設けられ、前記極柱(21)およびシール部材(22)は、予め製造されてトップカバー板(10)に組み立てられ、上側成形部材(23)はトップカバー板(10)に射出成形されるステップと、
プレス成形加工してトップカバー板(10)を成形し、トップカバー板(10)は、請求項1に記載のトップカバー板のプレス一体成形方法により製造されるステップS1と、
極柱(21)とシール部材(22)をトップカバー板(10)の極柱取付位置(11)に組み立てるステップS2と、
極柱取付位置(11)で射出成形処理を行い、冷却定形して上側成形部材(23)を得て、射出成形過程において、極柱(21)に圧力を加えることで、シール部材(22)を冷却定形するまで圧縮変形した状態に維持し、上側成形部材(23)の射出成形時に反転溝(123)に締結具を形成するステップS3と、を含むことを特徴とする、トップカバー構造の製造方法。
【請求項5】
前記ステップS2とステップS3との間は、射出成形接続部(12)に対して2回目の成形処理を行い、射出成形接続部(12)を内側に向かってプレス成形して、その口径を極柱(21)の直径よりも小さくし、または凸状隆起リング(122)を折り曲げてその口径を極柱(21)の直径よりも小さくするステップS21をさらに有することを特徴とする、請求項4に記載のトップカバー構造の製造方法。
【請求項6】
前記ステップS3の後、
防爆弁(30)を組み立て、防爆弁ピース(32)を下から上に向かってトップカバー板(10)に設けられた防爆弁穴(31)に組み立て、かつ溶接して固定し、その後、フィルム(33)を上から下に向かって防爆弁穴(31)に貼着するステップS31と、
下側成形部材(40)を組み立て、下側成形部材(40)を下から上に向かってトップカバー板(10)の下面に組み立てるステップS4と、をさらに含むことを特徴とする、請求項5に記載のトップカバー構造の製造方法。
【請求項7】
前記防爆弁穴(31)は、トップカバー板(10)の上面に対して凸設されて形成された防爆弁凸台(312)を含み、防爆弁凸台(312)内には第1の凹部(311)が凹設され、防爆弁凸台(312)は、防爆弁ピース(32)をそこに配置できるように、トップカバー板(10)の上面に対して凹設されるように設けられることを特徴とする、請求項6に記載のトップカバー構造の製造方法。
【請求項8】
前記防爆弁ピース(32)は、トップカバー板(10)に一体成形されるように形成され、トップカバー板(10)の周囲には、トップカバー板(10)の上面に対して凸設された防爆弁凸台(312)が設けられ、防爆弁凸台(312)には排気溝(314)が開設され、フィルム(33)は防爆弁凸台(312)に貼着されることを特徴とする、請求項6に記載のトップカバー構造の製造方法。
【請求項9】
前記トップカバー板(10)は、一体型トップカバー板であり、その両側にはそれぞれ1つの極柱取付位置(11)が設けられ、2つの極柱取付位置(11)の間には防爆弁(30)および液体注入口(34)が設けられ、または、前記トップカバー板(10)は、分離型トップカバー板であり、正極トップカバー板および負極トップカバー板を含み、正極トップカバー板には正極極柱アセンブリ(101)と液体注入口(34)が設けられ、負極トップカバー板には負極極柱アセンブリ(102)と防爆弁(30)が設けられ、前記トップカバー板(10)の下方にはさらに下側成形部材(40)が設けられることを特徴とする、請求項5に記載のトップカバー構造の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新エネルギーリチウム電池の部材の分野に属し、具体的にはトップカバー板のプレス一体成形方法および電池トップカバー構造並びにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
動力電池は新エネルギー自動車の重要な構成部品であり、既存の新エネルギー電池のほとんどはその動力電池としてリチウムイオン電池を使用している。動力リチウム電池では、セルやBMSなどの主要な部品に加え、電池ケース構造も電池の安全性に関連する要因の1つである。ここで、極柱は、電池モジュールの構成要素であり、電気伝導を行うためにモジュール内のセルの正極と負極に接続されるだけでなく、自動車の応用要件を満たすために対応する構造強度と密閉性も必要とする。
【0003】
そのため、極柱を固定した電池トップカバーの構造は特に重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、プレスして一体的に成形されたトップカバー板のプレス一体成形方法、および電池トップカバー構造並びに電池トップカバー構造の製造方法を提供することである。
【0006】
トップカバー板のプレス一体成形方法であって、
トップカバー板にプレスすることにより、貫通して設けられた第1の貫通穴、および第1の貫通穴を囲んで貫通せずに設けられた皿穴を成形するステップS11と、
トップカバー板を下から上に向かってプレス加工することにより、円筒形状の凸状隆起を成形し、かつ第1の貫通穴を凸状隆起の上面に位置させるステップS12と、
凸状隆起を上から下に向かって逆方向プレス加工することにより、凸状隆起を凸状隆起底部と、凸状隆起底部を囲んで凸設された凸状隆起壁とにプレス成形し、皿穴は凸状隆起壁の外側壁に反転溝として形成されるステップS13と、
凸状隆起壁に対して1回目の成形加工を行うことにより、凸状隆起壁を凸状隆起接続部と、凸状隆起接続部に接続され、かつ内側に折り曲げられて設けられた凸状隆起リングとに成形し、凸状隆起底部と第1の貫通穴をそれぞれ極柱位置決め台と極柱穴に成形するステップS14と、を含む。
【0007】
上述したトップカバー板のプレス一体成形方法によれば、ステップS11では、さらにトップカバー板にプレス加工することにより、貫通して設けられた第2の貫通穴を成形し、ステップS12では、さらに第2の貫通穴に対して下から上に向かってプレス加工することにより、第2の貫通穴を上方に突出させて弁穴凸台を形成し、ステップS13では、さらにトップカバー板に上から下に向かってプレス加工して液体注入口を成形し、ステップS13の後、さらにステップS131を有し、ステップS131では、さらに弁穴凸台に対して上から下に向かってプレス処理し、その中央領域を陥没させる。
【0008】
上述したトップカバー板のプレス一体成形方法によれば、ステップS11では、さらにトップカバー板に下から上に向かってプレス加工することにより、トップカバー板に防爆弁凸台を成形し、ステップS13では、さらに防爆弁凸台に対して上から下に向かってプレス加工することにより、防爆弁凸台を下向きにプレスして、弁溝部と、サイドリング部と、サイドリング部に凹設されたリング開口部とに成形し、かつトップカバー板に上から下に向かってプレス加工することにより液体注入口を成形し、ステップS131では、さらに弁溝部にC字状の薄肉部を成形する。
【0009】
上述したトップカバー板のプレス一体成形方法によれば、ステップS14では、さらにトップカバー板の底面に複数の成形部材用凹穴を成形する。ステップS14では、さらに凸状隆起接続部の外側にプレスして凹状リングを形成する。
【0010】
上述したトップカバー板のプレス一体成形方法によれば、前記皿穴は、少なくとも3つであり、周方向に均一に分布する。
【0011】
上述したトップカバー板のプレス一体成形方法によれば、ステップS12では、プレス加工後の第1の貫通穴を凸状隆起の上面中央に位置させる。
【0012】
トップカバー構造の製造方法であって、以下のステップを含む。
【0013】
前記トップカバー構造を、トップカバー板と、トップカバー板に設けられた正極極柱アセンブリまたは負極極柱アセンブリとを含むように配置し、前記正極極柱アセンブリまたは負極極柱アセンブリは、シール部材、極柱および上側成形部材を含み、シール部材、極柱および上側成形部材は、トップカバー板の上方に下から上に向かって順次設けられ、前記極柱およびシール部材は、予め製造されてトップカバー板に組み立てられ、上側成形部材はトップカバー板に射出成形される。
【0014】
ステップS1では、プレス成形加工してトップカバー板を成形し、ここで、トップカバー板は、上記いずれか一項に記載のトップカバー板のプレス一体成形方法により製造される。
【0015】
ステップS2では、極柱とシール部材をトップカバー板の極柱取付位置に組み立てる。
【0016】
ステップS3では、極柱取付位置で射出成形処理を行い、冷却定形して上側成形部材を得て、射出成形過程において、極柱に圧力を加えることで、シール部材を冷却定形するまで圧縮変形した状態に維持し、上側成形部材の射出成形時に反転溝に締結具を形成する。
【0017】
上述したトップカバー構造の製造方法によれば、前記ステップS2とステップS3との間はステップS21をさらに含む。ステップS21では、射出成形接続部に対して2回目の成形処理を行い、射出成形接続部を内側に向かってプレス成形して、その口径を極柱の直径よりも小さくし、または凸状隆起リングを折り曲げてその口径を極柱の直径よりも小さくする。
【0018】
上述したトップカバー構造の製造方法によれば、前記ステップS3の後に、さらにステップS31とステップS4が設けられる。
【0019】
ステップS31では、防爆弁を組み立て、防爆弁ピースを下から上に向かってトップカバー板に設けられた防爆弁穴に組み立て、かつ溶接して固定し、その後、フィルムを上から下に向かって防爆弁穴に貼着する。
【0020】
ステップS4では、下側成形部材を組み立て、下側成形部材を下から上に向かってトップカバー板の下面に組み立てる。
【0021】
上述したトップカバー構造の製造方法によれば、前記防爆弁穴は、トップカバー板の上面に対して凸設されて形成された防爆弁凸台を含み、防爆弁凸台内には第1の凹部が凹設され、防爆弁凸台は、防爆弁ピースをそこに配置できるように、トップカバー板の上面に対して凹設されるように設けられる。
【0022】
上述したトップカバー構造の製造方法によれば、前記防爆弁ピースは、トップカバー板に一体成形されるように形成され、トップカバー板の周囲には、トップカバー板の上面に対して凸設された防爆弁凸台が設けられ、防爆弁凸台には排気溝が開設され、フィルムは防爆弁凸台に貼着される。
【0023】
上述したトップカバー構造の製造方法によれば、前記トップカバー板は、一体型トップカバー板であり、その両側にはそれぞれ1つの極柱取付位置が設けられ、2つの極柱取付位置の間には防爆弁および液体注入口が設けられる。
【0024】
上述したトップカバー構造の製造方法によれば、前記トップカバー板は、分離型トップカバー板であり、正極トップカバー板および負極トップカバー板を含み、正極トップカバー板には正極極柱アセンブリと液体注入口が設けられ、負極トップカバー板には負極極柱アセンブリと防爆弁が設けられる。
【0025】
上述したトップカバー構造の製造方法によれば、前記トップカバー板の下方には、下側成形部材がさらに設けられる。
【0026】
電池トップカバー構造であって、前記電池トップカバー構造は、上述したトップカバー構造の製造方法によって製造される。
【0027】
本発明に係るトップカバー板のプレス一体成形方法および電池トップカバー構造並びにその製造方法は、以下の有益な効果を有する。
1. トップカバー板に対応する穴部を予め開けて、順方向プレス、逆方向プレスおよび成形加工を順に行うことにより、所定構造を有する電池トップカバー板が得られる。
【0028】
2. 極柱およびシール部材をトップカバー板に組み立てた後、射出成形接続部に対して2回目の成形処理を行い、射出成形により上側成形部材を形成することで、極柱をトップカバー板に確実に固定し、最後に防爆弁構造または下側成形部材を組み立て、よって、トップカバー構造が得られる。
【0029】
3. トップカバー板に一体的に形成され、またはトップカバー板に溶接された防爆弁構造は、トップカバー板に対して凸設された防爆弁凸台を有することで、電解液が注入時に防爆弁内に入り込むことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の実施例1に係る電池トップカバー構造を示す構造模式図であり、ここで、断面A-Aの位置を理解しやすいために、断面A-Aの線の途中部を破線で結んでいる。
【
図3】
図1におけるトップカバー板の構造の一部を示す模式図である。
【
図4】
図1の実施例において、上側成形部材を取り外した後の断面A-Aに沿った断面図である。
【
図5】
図1の実施例に係るトップカバー板の成形過程における各ステップを示す上面図である。
【
図6】
図5の構造を示す斜視図であり、ここで、B-B断面線の途中を同様に破線で結んである。
【
図7】工程S11のトップカバー板の1つの極柱取付位置におけるB-B断面に沿った断面図である。
【
図8】工程S12のトップカバー板の1つの極柱取付位置におけるB-B断面に沿った断面図である。
【
図9】工程S13のトップカバー板の1つの極柱取付位置におけるB-B断面に沿った断面図である。
【
図10】工程S131のトップカバー板の1つの極柱取付位置におけるB-B断面に沿った断面図である。
【
図11】工程S132のトップカバー板の1つの極柱取付位置におけるB-B断面に沿った断面図であり、この工程では、
図10に対して極柱取付位置の形状は変化していない。
【
図12】工程S14のトップカバー板の1つの極柱取付位置におけるB-B断面に沿った断面図である。
【
図13】
図1の実施例に係る工程S14を実施したトップカバー板の防爆弁穴の断面図であり、
図6のB-B断面線が中央に向かって防爆弁穴に平行移動した断面図である。
【
図14】本発明の実施例2に係るトップカバー板の成形過程における各ステップを示す斜視図であり、その全体構造は実施例1と同様であるが、本実施例では防爆弁穴に防爆弁ピースが一体的に成形されている点が異なる。
【
図15】
図14の実施例における工程S14を実施したトップカバー板の防爆弁の構造の一部を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
当業者に本発明をよりよく理解させるために、本発明が特許請求している保護範囲をより明確に限定するが、以下は本発明のいくつかの具体的な実施例について本発明を詳細に説明する。なお、以下は本発明の構想に基づくいくつかの具体的な実施形態であり、本発明の実施例の一部に過ぎず、その中の関連構造についての具体的かつ直接的な記述は、本発明を容易に理解させるためのものに過ぎず、各具体的な特徴は本発明の実施範囲を事実上かつ直接的に限定するものではない。当業者によって本発明の構想に基づいて行われた従来の選択と置換は、いずれも本発明が特許請求している保護範囲に含まれると考えられるべきである。
【実施例1】
【0032】
図1に示すように、電池のトップカバー構造は、トップカバー板10と、トップカバー板10に設けられた防爆弁30と、液体注入口34と、正極極柱アセンブリ101と、負極極柱アセンブリ102とを含む。本実施例では、同一のトップカバー板10には、それぞれ2つの極柱アセンブリ(すなわち正極極柱アセンブリ101、負極極柱アセンブリ102)、防爆弁30および液体注入口34が設けられることにより、一体型トップカバー構造、すなわち電池の正極、負極が同一のトップカバー板に配置されたトップカバー構造が形成される。もちろん、他の実施例では、上記4者も、それぞれ2つのトップカバー板10に設けられて、正極、負極が別々に設けられた分離型トップカバー構造を形成してもよい。例えば、液体注入口34と負極極柱アセンブリ102は一方のトップカバー板10に設けられ、防爆弁30と正極極柱アセンブリ101は他方のトップカバー板10に設けられる。
【0033】
本実施例では、前記トップカバー板10の下方には下側成形部材40がさらに設けられ、それは、トップカバー板10を電池ケースに絶縁して接続するように、絶縁成形材料で構成される。
図2に示すように、前記下側成形部材40には複数の下側成形接続部材41が設けられ、下側成形部材40を予め成形しておき、その上面に設けられた下側成形接続部材41を加熱してトップカバー板10の下方に嵌合することにより、下側成形接続部材41はトップカバー板10の下面の対応する凹穴に冷却定形されて両者の熱融着固定を実現する。ここで、トップカバー板10の下面に設けられた成形部材用凹穴は、T字型の内部空洞を有してもよく、それにより、下側成形接続部材41は冷却した後にそこに固定される。
【0034】
図2に示すように、トップカバー板10には、正極極柱と負極極柱をそれぞれ嵌合して正極極柱アセンブリ101と負極極柱アセンブリ102を形成するように、2つの極柱取付位置11が設けられ、防爆弁30および液体注入口34は、2つの極柱取付位置11の間に設けられる。
【0035】
図2に示すように、前記正極極柱アセンブリ101および負極極柱アセンブリ102は、シール部材22、極柱21および上側成形部材23を含み、それらはいずれもトップカバー板10の上方に下から上に向かって順次設けられる。ここで、前記極柱21とシール部材22は、予め製造されてトップカバー板10に組み立てられるものであり、上側成形部材23は、トップカバー板10に直接射出成形により形成される。
【0036】
極柱21とシール部材22を極柱取付位置11に取り付けた後、凸状隆起リング122に2回目の成形プレスをかけて、
図4に示した嵌合状態を形成する。この時、極柱21と射出成形接続部12との間には隙間24が形成され、隙間24は、極柱21とトップカバー板10を絶縁させるために、射出成形中に充填されて上側成形部材23の一部を形成している。
【0037】
その後、極柱21への圧力を維持しながら射出成形を行って、上側成形部材23をその上に形成する。前記上側成形部材23は、隙間24を充填して形成された部分と、射出成形接続部12の外側に形成された部分とを含むことにより、射出成形接続部12がここに完全に内包され、また、射出成形接続部12の外側壁の反転溝123に締結具が形成されることにより、上側成形部材23はトップカバー板10に確実に成形される。
【0038】
したがって、当該電池トップカバー構造の製造方法は、以下のステップS1~S4を含む。
【0039】
S1では、トップカバー板10をプレス成形加工により成形する。
【0040】
S2では、極柱21とシール部材22をトップカバー板10の極柱取付位置11に組み立てる。ここで、シール部材22と極柱21を極柱取付位置11に順次組み立ててもよいし、シール部材22を極柱21に組み立ててから、両者全体を極柱取付位置11に組み立ててもよい。組立前に、射出成形接続部12の口部の内径寸法は極柱21の外径寸法以上であり、これにより、極柱21は射出成形接続部12の内部に嵌合することができる。
【0041】
もちろん、極柱21または射出成形接続部12を円形以外の他の形状にした場合、組立時に互いの相対的な位置関係によって組み立ての目的を実現してもよい。
【0042】
S21では、射出成形接続部12に2回目の成形処理を行う。つまり、射出成形接続部12を、さらに、その口径が極柱21の直径よりも小さくなるように、内向きにプレス成形してもよく、または、凸状隆起リング122をさらに折り曲げて、その口径を極柱21の直径よりも小さくしてもよい。
【0043】
S3では、極柱取付位置11で射出成形処理を行い、冷却定形して上側成形部材23を得る。射出成形の全過程において、極柱21に圧力を加えることで、射出成形時にシール部材22は圧力を受けて圧縮されて変形した状態にあり、かつ上側成形部材23が冷却されてもその状態が維持され、それにより、極柱21とトップカバー板10との間の良好なシール効果を確保することができる。
【0044】
S31では、防爆弁30を組み立てる。防爆弁ピース32を下から上に向かってトップカバー板10上の防爆弁穴31に組み立て、かつ溶接して固定し、その後、フィルム33を上から下に向かって防爆弁穴31に貼着して防爆弁穴31を覆う。
【0045】
S4では、下側成形部材40を組み立てる。このプロセスは、好ましくは、熱融着により実現される。
【0046】
ここで、ステップS1であるトップカバー板10をプレス成形するステップは、本発明にとって特に重要であり、
図5、6に示すように、以下の具体的なステップS11~ステップS14を含む。
【0047】
ステップS11では、
図7に示すように、プレスにより第1の貫通穴104および第2の貫通穴109を成形し、そのうち、第1の貫通穴104はその後、極柱穴126として成形するために使用され、第2の貫通穴109はその後、防爆弁穴31として成形するために使用される。また、前記第1の貫通穴104の周囲には、さらに、貫通せずに設けられた皿穴103が囲まれて成形され、皿穴103は周方向に均一に分布する。皿穴103が位置する領域は、極柱穴加工位置として形成される。
【0048】
ステップS12では、
図8に示すように、極柱穴加工位置を下から上に向かってプレス処理し、円筒形状の凸状隆起105を成形する。ここで、プレスした後の第1の貫通穴104は、凸状隆起105の円筒の上面に位置し、皿穴103は円筒の外側壁、好ましくは外側壁の底部に位置する。このステップでは、さらに第2の貫通穴の周辺領域に対して下から上に向かってプレスすることにより、第2の貫通穴を上方に突出させて弁穴凸台を形成する。
【0049】
ステップS13では、
図9に示すように、凸状隆起105を逆方向プレス、すなわち上から下に向かってプレスして、凸状隆起105の上面を凸状隆起底部107としてプレス成形し、凸状隆起105の側壁または側壁の一部はそのままで凸状隆起壁106として形成される。このステップでは、さらにトップカバー板10に上から下に向かってプレスして液体注入口34を成形する。
【0050】
ステップS131では、
図10に示すように、凸状隆起底部107および凸状隆起壁106をプレス成形して、凸状隆起底部107の中央の極柱穴を拡大する。このステップでは、さらに弁穴凸台を上から下に向かってプレス処理して、その中央領域を陥没させる。
【0051】
ステップS132では、
図11に示すように、弁穴凸台をさらに成形加工し、防爆弁穴31のサイズを調整し、トップカバー板10に対して成形加工、例えば面取り加工を行う。
【0052】
ステップS14では、
図12に示すように、凸状隆起壁106に対して1回目の成形処理とも呼ばれる成形加工を行って、凸状隆起壁106を凸状隆起接続部121と、凸状隆起接続部121に接続され、かつ内側に向かって設けられた凸状隆起リング122とに成形する。ここで、
図4に示すように、凸状隆起接続部121と凸状隆起リング122を射出成形接続部12として形成する。さらに、
図3に示すように、凸状隆起底部107および第1の貫通穴104を、それぞれ極柱位置決め台125および極柱穴126として成形する。このステップでは、さらに弁穴凸台の防爆弁穴31を成形処理することで、防爆弁穴31を拡大する。さらに、トップカバー板10の底面に複数の成形部材用凹穴を成形する。
【0053】
また、トップカバー板10の上面には、極柱取付位置11に対応する極柱の極性を示すための「+」と「-」がそれぞれ刻印され、さらに、凸状隆起接続部121の外側には、上側成形部材23を射出成形時に嵌合するように、凹状リング124がプレス加工により形成される。このステップでは、防爆弁穴をさらに成形して、最終的に防爆弁ピース32を設置するための防爆弁穴31を形成する。
【0054】
本実施例では、前記上側成形部材23は、射出成形時に反転溝123に締結具が形成されることにより、そのねじり性能は著しく向上する。
【0055】
また、
図13に示すように、前記防爆弁穴31の上面の周囲には、フィルム33を貼着する時にそこに嵌め込むための第1の凹部311が形成され、それにより、フィルム33はより正確に位置決めして取り立てられる。トップカバー板10の上面に対して凸設された防爆弁凸台312により、電解液が注入時に防爆弁30に入り込むことを防止することもできる。防爆弁穴31の下面に設けられた第2の凹部313は、防爆弁ピース32をトップカバー板10の下面に対して陥没させるように取り付けることができ、よって、防爆弁ピース32をセルとの衝突などによる損傷からより確実に保護することができる。
【実施例2】
【0056】
図14に示すように、電池のトップカバー構造であって、その主要な構造は実施例1と同様であり、本実施例では前記防爆弁ピース32がトップカバー板10に一体成形するように形成されている点が異なる。
【0057】
したがって、ステップS11~S14における防爆弁の成形プロセスは異なる。
【0058】
本実施例では、各ステップにおける極柱穴と液体注入口の処理工程は実施例1と完全に同様であり、再度の説明を省略するが、次に本実施例における防爆弁ピースの成形プロセスについて説明する。
【0059】
ステップS11では、下から上に向かってプレス加工することにより、トップカバー板10に防爆弁凸台を成形する。
【0060】
ステップS12では、S11で成形された防爆弁凸台の処理は変化せず、つまり、それを加工しない。
【0061】
ステップS13では、上から下に向かってプレスすることにより、防爆弁凸台の内側をプレスして弁溝部とサイドリング部として成形し、かつサイドリング部にリング開口部を設ける。
【0062】
ステップS131では、弁溝部にC字状の薄肉部、例えばスコッチを成形する。
【0063】
ステップS132とステップS14では、防爆弁に対して何の処理も行わない。
【0064】
図15に示すように、本実施例では、トップカバー板10に一体成形するように形成された防爆弁ピース32の外側には、トップカバー板10の上面に対して凸設された防爆弁凸台312が形成され、防爆弁凸台312には排気溝314が開設され、フィルム33は、防爆弁ピース32を覆うように防爆弁凸台312に貼着される。
【符号の説明】
【0065】
トップカバー板10、極柱取付位置11、射出成形接続部12、極柱21、シール部材22、上側成形部材23、隙間24、防爆弁30、防爆弁穴31、防爆弁ピース32、フィルム33、液体注入口34、下側成形部材40、下側成形接続部材41、正極極柱アセンブリ101、負極極柱アセンブリ102、皿穴103、第1の貫通穴104、凸状隆起105、凸状隆起壁106、凸状隆起底部107、第2の貫通穴109、凸状隆起接続部121、凸状隆起リング122、反転溝123、凹状リング124、極柱位置決め台125、極柱穴126、第1の凹部311、防爆弁凸台312、第2の凹部313、排気溝314。