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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】試料を清浄化する方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/10 20060101AFI20241024BHJP
   G01N 1/34 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
G01N1/10 C
G01N1/34
G01N1/10 V
【請求項の数】 19
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023075621
(22)【出願日】2023-05-01
(62)【分割の表示】P 2020522036の分割
【原出願日】2018-10-17
(65)【公開番号】P2023100810
(43)【公開日】2023-07-19
【審査請求日】2023-05-15
(31)【優先権主張番号】17197060.1
(32)【優先日】2017-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】502307209
【氏名又は名称】バイオタージ・アクチボラゲット
【氏名又は名称原語表記】BIOTAGE AB
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デイビス,ジェフ
(72)【発明者】
【氏名】シニア,アダム
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ,リー
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ,リース
【審査官】佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06541273(US,B1)
【文献】特表2009-507620(JP,A)
【文献】特開2001-330598(JP,A)
【文献】特表2013-533978(JP,A)
【文献】特開2017-129476(JP,A)
【文献】特開2003-107062(JP,A)
【文献】特開2008-221100(JP,A)
【文献】米国特許第05585070(US,A)
【文献】特表2010-529416(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00- 1/44
G01N 30/00-30/96
G01N 33/48-33/98
B01J 20/00-20/292
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナおよび/またはシリカの粒子を備える第1の充填要素と、1種以上の吸湿性の塩の粉末を備える第2の充填要素とが提供される少なくとも1つの分離カラムを備え、
前記第2の充填要素は硫酸マグネシウムおよび塩化ナトリウムの混合物である、フロースルーデバイス。
【請求項2】
前記第1の充填要素はアルミナおよび/または官能化シリカを備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記シリカは、炭素原子4~18個を有する直鎖状炭素鎖、カルボキシ基、金属キレート基、およびイオン交換基からなる群より選択される1つ以上の官能性を備える、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
填要素は、シリカの前記第1の充填要素と、硫酸マグネシウムおよび塩化ナトリウムの前記第2の充填要素とに限定される、請求項1~のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項5】
填要素は、アルミナの前記第1の充填要素と、硫酸マグネシウムおよび塩化ナトリウムの前記第2の充填要素とに限定される、請求項1~のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記分離カラムは、前記第1の充填要素および前記第2の充填要素の両側に配置される底部フリットおよび頂部フリットを備える、請求項1~のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記第1の充填要素および前記第2の充填要素は、前記カラム内において別個の層として配置される、請求項1~のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項8】
前記第1の充填要素および前記第2の充填要素は中間フリットによって分けられている、請求項に記載のデバイス。
【請求項9】
前記第1の充填要素および前記第2の充填要素は、前記カラム内において混合物として提供される、請求項1~のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記少なくとも1つの分離カラムはチューブである、請求項1~のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項11】
プレート上に配置された複数の前記分離カラムを備える、請求項1~10のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項12】
前記分離カラムは、前記第1の充填要素および前記第2の充填要素の上流に配置された疎水性の頂部フリットを備える、請求項1~11のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項13】
生体試料からの1種以上のマトリックス成分の除去方法であって、前記マトリックス成分は、尿素、尿酸、リン脂質、アミノ酸、クレアチン、ウロビリン(urobillin)、および内因性の塩からなる群より選択される1種以上であり、前記方法は、アルミナおよび/またはシリカの粒子を備える第1の充填要素と、1種以上の吸湿性の塩の粉末を備える第2の充填要素とに、前記生体試料を通す工程を備え、前記第2の充填要素は硫酸マグネシウムおよび塩化ナトリウムの混合物である、方法。
【請求項14】
前記生体試料は尿である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記生体試料は、唾液である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記方法は、前記生体試料を、前記第1の充填要素および前記第2の充填要素に通す前に、疎水性の頂部フリットに通す工程を備える、請求項1315のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
生体試料から1種以上のマトリックス成分を除去するための、アルミナおよび/またはシリカの粒子を備える第1の充填要素と、1種以上の吸湿性の塩の粉末を備える第2の充填要素との混合物の使用であって、前記第2の充填要素は硫酸マグネシウムおよび塩化ナトリウムの混合物である、使用。
【請求項18】
除去される少なくとも1種のマトリックス成分は色素であり、前記生体試料は尿である、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
質量分析より前に尿試料を調製するための、請求項1~12のいずれか1項に記載のデバイスの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、試料調製の領域に関し、より具体的には、生体試料からのマトリックス成分の迅速かつ簡単な除去を提供するデバイスに関する。また、本発明は、尿などの生体試料からのマトリックス成分の除去方法をも包含する。
【背景技術】
【0002】
背景
複雑な生体試料を処理することによって、以降に行なう当該試料中の検体の測定に影響を及ぼし得る物質の存在を除去または少なくとも低減することは、試料調製として、または単純に「試料プレップ」として、広く周知されている。この用語は、固相抽出(SPE)、保持液抽出(SLE)、およびタンパク質沈降を含む様々な方法および機器に関連して使用される。薬物、プロドラッグ、その代謝産物などのように小さな有機分子の分析において、試料プレップの主な目的は、質量分析(MS)による分析に十分な純度の提供である。
【0003】
固相抽出(SPE)は、分析試料の予備濃縮、様々な化学物質の精製、および水溶液からの毒性または有用物質の除去に広く使用されるクロマトグラフィー技術である。この技術は複数の用途によく使用されているが、しかしながら、たとえば様々なスポーツイベントで、違法物質の検出を目的として非常に多数の尿試料をルーチン的に試験する際などのように、厳密な試料清浄化が必要とされない場合には、高価で時間がかかることが分かっている。
【0004】
保持液抽出(SLE)は、検体抽出に水混和性溶媒を使用する。より具体的には、一般的に珪藻土などの不活性相に水相を固定し、その上に非水混和性相を載せる。少し後に、溶離液を押し入れるかまたは吹き入れるかしてこのカラムに通すことにより、その結果、タンパク質沈降または「希釈直打ち法」(D&S)などの他の簡単な試料調製技術よりも本質的に清浄な抽出物が得られる。
【0005】
「希釈直打ち法」(D&S)は、比較的迅速な方法であり、臨床および法科学用途において広く使用されている。D&Sの原理は、単純に、試料を希釈した後、たとえば液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)システムなどに直接注入するというものである。
【0006】
定義によると、D&S法は、妨害成分を本質的に依然として含んではいるが、希釈という要因のために、その濃度が元の試料中での濃度よりも低い。したがって、清浄でないD&S抽出物は、カラムをメンテナンスする必要性を増大させ得る、および/または以降で使用される液体クロマトグラフィーシステムの寿命を縮め得るのに加え、試料の純度が低いと、LC-MSシステムにおける処理時間が増大し得る。さらに、たとえばブプレノルフィンおよびノルブプレノルフィンなどの特定のオピオイドのように、「困難」であるとして知られる特定の検体に対しては、D&Sは使用不可能でさえある。
【0007】
US6,541,273(Aventis)は、固相抽出において使用するためのカートリッジの領域に関する。より具体的には、土壌、水、血液、組織、尿、および他の種類の農学的、医学的、または製薬学的試料中の、フィプロニルを含むピラゾールなどの農薬の存在の検出に有用である方法および装置が開示される。この装置は、試料を入れる第1の開口部と溶出液を出す第2の開口部とを有するカラムを備え、このカラムは、アミノ官
能性シリカを含有する第1の分離区域、活性炭を含有する第2の分離区域、マグネシウム-シリカゲルまたはシリカゲルを含有する第3の分離区域、およびマグネシウム-シリカゲルまたはシリカゲルのうち第3の分離区域で使用されなかった方を含有する第4の分離区域を備える。
【0008】
WO2007/030847は、溶解した毒素、抗生物質、ビタミン、ホルモン、および農薬などの有機性または生物学的検体の乾燥および/または精製に用いるマイクロ吸着カラムのための、少なくとも1種の乾燥剤を含有する充填材料、これを充填したマイクロ吸着カラム、ならびにその使用に関する。より具体的には、この充填材料は、硫酸マグネシウム、および酸化アルミニウム、塩化カルシウム、水素化カルシウム、酸化カルシウム、硫酸カルシウム、水素化カリウム、シリカゲル、硫酸銅、酸化マグネシウム、過塩素酸マグネシウム、モレキュラーシーブ、水酸化ナトリウム、五酸化リン、シリケート上の硫酸、シリケート上の五酸化リンからなる群より選択される少なくとも1種のさらなる乾燥剤、ならびに、0.5~90重量%の、ゼオライト、珪藻土、ベントナイト、または二酸化ケイ素などの、内部表面積の大きな天然または合成の担体を含有する。
【0009】
WO2008/103828(William Brewer)は、胃内容物の清浄化および尿からの塩基性薬物の抽出などの、抽出、試料回収、および試料清浄化に用いるピペットチップを記載する。より具体的には、このピペットチップは、その細い下端に、固相吸着剤を含有するスクリーンまたはフィルターを含有し、その広い上端にバリアーを含有する。WO2008/103828によれば、溶液が吸着剤と混合されると、ゲル、すなわち均質な溶液が得られ、その結果、卓越した抽出効率および迅速な平衡状態と称されるものが提供される。吸着剤の粒子径は50~200umの範囲であってよく、これは高効率の抽出を提供できるほど十分に小さいが、高圧を要する。好ましくない試料マトリックスの除去にあたって、高圧吸着剤に加えて、免疫親和性吸着剤、イオン交換剤、および分子量分離用途には多孔質材料などの他の吸着剤が挙げられる。吸着剤の具体例は、官能化もしくは非官能化スチレンジビニルベンゼン、アルミナ(塩基性、酸性、または中性)、フロリジル、小粒子径シリカゲル、C8、Q18、および官能化C8もしくはC18材料、NaSO、MgSO、またはCaSO(乾燥用途)、珪藻土、セファデックス、およびポリエチレンである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
合法または違法薬物の使用などの化学物質の速やかな取り締まりの需要が増大しているため、この分野において、スピード、簡単、および/またはコストという観点で改善された試料清浄化方法には、一定の需要がある。
【0011】
本発明の概要
本発明のひとつの目的は、先行技術のうちの少なくともいくつかよりも高い効率で、所与の時間内に、生体試料のマトリックス成分の少なくともいくつかを除去することによって、当該生体試料の複雑性を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
より具体的には、本発明は、アルミナおよび/またはシリカの粒子を備える第1の充填要素と、1種以上の吸湿性の塩の粉末を備える第2の充填要素とが提供される少なくとも1つの分離カラムを備える、フロースルーデバイスに関する。
【0013】
さらに、本発明の別の目的は、処理が簡単であるために多数の試料のルーチン的な試験などにおいて好適である方法によって、生体試料の複雑性を低減することである。
【0014】
より具体的には、本発明は、生体試料からの1種以上のマトリックス成分の除去方法であって、マトリックス成分は、尿素、尿酸、リン脂質、アミノ酸、クレアチン、ウロビリン(urobillin)などのヘム分解生成物、および内因性の塩からなる群より選択される1種以上であり、この方法は、アルミナおよび/またはシリカの粒子を備える第1の充填要素と、1種以上の吸湿性の塩の粉末を備える第2の充填要素とに、試料を通す工程を備える、方法に関する。
【0015】
最後に、本発明の他の目的は、薬物および他の化学物質について、これらが先行技術において「問題がある」とみなされているものであるか否かにかかわらず、その迅速かつ簡単な分析を提供することである。
【0016】
より具体的には、本発明は、生体試料から1種以上のマトリックス成分を除去するための、アルミナおよび/またはシリカの粒子を備える第1の充填要素と、1種以上の吸湿性の塩の粉末を備える第2の充填要素との組み合わせの使用に関する。
【0017】
本発明のさらなる詳細、実施形態、および利点は、本発明の詳細な説明、請求項、および他の部分から明らかとなる。
【0018】
定義
用語「フロースルーデバイス」は、本明細書中において、試料などの液体を上端から入れることができるが、その下端から抽出できるようには構成されていない、デバイスについて使用される。
【0019】
用語「アルミナ」は、本明細書中において、酸化アルミニウム(aluminium oxide)または酸化アルミニウム(aluminum oxide)としても知られるAlについて使用される。
【0020】
用語「吸湿性の塩」は、本明細書中において、試料から水を吸収および/または吸着できる能力によって定義される塩について使用される。
【0021】
用語「充填」は、本明細書中において、分離に使用される任意の材料、すなわち、吸着および/または保持によって試料を複数の画分に分けるためにカラム中に含まれる材料について使用される。充填材料は、この分野において、媒体、具体的にはクロマトグラフィー媒体、吸着剤(sorbents)、吸着剤(adsorbents)、または単に充填剤などの、様々な用語で知られる。用語「充填」は、本明細書中において、カラムの内容物について使用され、それが本明細書中においてどのように提供されているかにかかわらず、すなわち、圧縮されているのかまたはカラム中に入れられているだけであるのかに関係なく、使用される。
【0022】
用語「充填要素」は、本明細書中において、本発明に係るデバイス中に含まれる異なる充填剤をより容易に区別するために使用される。よって、各充填要素は、シリカ、硫酸マグネシウムと硫酸ナトリウムとの混合物といった本明細書中に例示されるものなどの任意の従来のクロマトグラフィー吸着剤であってよい。
【0023】
用語「マトリックス成分」は、本明細書中において、試料調製の領域において一般的に使用される意味で使用される。よって、試料のマトリックスは、目的とする検体以外の組成要素または成分を含む。たとえば、尿試料は、図3中に例示されるように、尿素、リン脂質、アミノ酸、および多くの他の物質などのマトリックス成分を含んでよく、これらはすべて、検体測定の際に問題となる可能性があり、したがって試料調製中に除去されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1a】プレート様式で配置された混合様式の複数のチューブを備える本発明に係るデバイスを示す。
図1b】プレート様式で配置された層状様式の複数のチューブを備える本発明に係るデバイスを示す。
図2a】単一床、すなわち単一チューブ様式を備える混合様式の本発明に係るデバイスを示す。
図2b】単一床、すなわち単一チューブ様式を備える層状様式の本発明に係るデバイスを示す。
図3】正常尿の組成、すなわちマトリックス成分を示すチャートである。
図4図4aおよび図4bについて、左(a)は、さらなる処理を施していない未処理の加水分解尿を示し、右(b)は、フロースルーデバイスでの処理後に得られた溶出液を示す。
図5図5aおよび図5bは、色素および塩除去の観点における加水分解尿抽出物の清浄性を示す。左の培養チューブは沈殿させた尿を詳細に示し、この後、遠心分離ならびに溶出液の除去および蒸発が行なわれる。右の培養チューブは、同じ試料を本発明にしたがって処理したものを詳細に示す。
図6図6aおよび図6bは、所与の非加水分解尿試料について、要素1を変えた際の、尿素(a:上チャート)およびクレアチニン(b:下チャート)の含有量のバーチャート比較である。
図7】所与の非加水分解尿試料について、要素2と要素1の組み合わせを変えた際の、尿素(横線模様)およびクレアチニン(斜線模様)の含有量のバーチャート比較である。
図8】所与の加水分解尿試料について、96ウェルプレート中において個別カラム様式にて、アルミナ(酸性および中性)と吸湿性の塩とを様々な比率で混合した際の、尿素(横線模様)およびクレアチニン(斜線模様)の除去のバーチャート比較を示す。
図9図9aおよび図9bは、所与の非加水分解尿試料(上チャート)および加水分解尿試料(下チャート)について、アルミナと吸湿性の塩とを層状化して組み合わせたものを使用した際の、またはこれらを混合して組み合わせたものを使用した際の、尿素(横線模様)およびクレアチニン(斜線模様)の除去のバーチャート比較を示す。
図10図10aおよび図10bは、所与の加水分解尿試料についての、尿素(上のトレース)およびクレアチニン(下のトレース)の除去のLC-MS/MS TICを示す。左のトレースはACNでの簡単な沈殿を示し、右のトレースはフロースルーデバイスの使用である。
図11図11aおよび図11bは、フロースルーデバイスと共に様々なプロトコールを使用して得られた、様々な濫用薬物についての、非加水分解尿からの回収のバーチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
発明の詳細な説明
本発明の第1の態様は、アルミナおよび/またはシリカの粒子を備える第1の充填要素と、1種以上の吸湿性の塩の粉末を備える第2の充填要素とが提供される少なくとも1つの分離カラムを備える、フロースルーデバイスである。
【0026】
アルミナは、周知の分離媒体であり、酸性、中性、または塩基性の形態をとり、気体流からの水の除去のために、ならびにクロマトグラフィーカラムおよび他の実験機器で用いる吸着剤としても、広く使用される。当業者は、商業的供給元からアルミナを入手できる、または、アルミナを購入して、水スラリー中に塩基を添加することによってそのpHを制御できる。
【0027】
同様に、シリカ材料も、様々な分離および抽出の目的のための吸着剤として広く使用される。たとえば、固相抽出(SPE)において、たとえば炭素などで官能化されたシリカ材料が広く使用され、炭素原子2~18個からなる任意の炭素鎖長を有するこのような材料が、本発明に係るデバイス中において提供され得る。このような材料は、一般的に「SPE相」と称される。
【0028】
加えて、シリカの割合がこれよりも低い他の材料、たとえば珪藻土からなる材料なども、本発明に係るデバイス中における第1の充填要素として提供され得る。こうした材料は保持液抽出(SLE)において一般的に使用され、したがって「SLE相」と称される場合があり、本明細書中において用語「シリカを備える」に含まれる。
【0029】
本発明に係るデバイス中において、第1の充填要素の粒子は多孔質粒子であってよい。より具体的には、アルミナが本発明に係るデバイス中に存在する場合、これは、少なくとも約10μmでありかつ上限を約200μmとする粒子径を有してよく、たとえば約120Åなどの、40~200Åの範囲の孔直径を有してよい。
【0030】
さらに、シリカ材料が第1の充填要素中において提供される場合、これらは、上述されるものと同等の範囲の粒子径を有してよい。
【0031】
第1の充填要素の粒子は、たとえば、球状または任意の不規則な形状であってよい。
さらに、第1の充填要素は、酸性または中性のアルミナを備えてよい。当業者は、たとえば予期される能力に応じて使用するために生じる特定の用途のために考慮してよい。異なるマトリックスおよび異なり得る検体パネルについて、中性のアルミナがより選択性であってよい。
【0032】
さらに、第1の充填要素は、シリカを備える場合、有利にも官能化されていてよい。好適な官能は、たとえば、SPE相において一般的に使用される任意のものであってよい。たとえば、官能化シリカは、直鎖状C4~C18鎖などの炭素鎖、カルボキシ基、金属キレート基、およびカチオン交換基またはアニオン交換基などのイオン交換基からなる群からの官能性のうち1つ以上を含んでよい。
【0033】
加えて、第1の充填要素は、エンドキャップされたシリカを備えてよく、これは、多くの場合、SPE相として提供される。簡潔には、このキャッピングは、遊離シラノール基のキャッピングを指す。
【0034】
付属の請求項によって定義される本発明を何ら限定することも意図しないが、第1の充填要素は、アセトニトリル(ACN)などの溶媒と合わされると、当該溶媒中における溶解度が低いために沈殿を生じ、これにより、尿中の塩などの特定のマトリックス成分が除去されるようである。また、試料と第1の充填要素とが接触することにより、先行技術の方法が使用された際には除去が困難であった何らかの色素が除去されるようである。
【0035】
よって、本発明に係るデバイス中において、第2の充填要素は実際には試料を「完全に乾燥させる」ために使用され、一方、先行技術においては、本明細書中において記載される種類の吸湿性の塩は、一般的に、検体をひとつの相から別の相へと「塩析する」ために使用される。この結果、吸湿性の塩の粉末とアルミナおよび/またはシリカ粒子とを組み合わせることによって、本発明に係るデバイスは、期せずして、生体試料からのマトリックス成分の高効率かつ迅速な除去を提供する。具体的には、以下の実験部分に示されるように、本発明は、尿および他の試料から、さらに一層困難なマトリックス成分を効率よく除去することが示された。
【0036】
より具体的には、吸湿性の塩の粉末は、たとえば、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムセスキ水和物、塩化ナトリウム、および酸化マグネシウムからなる群より選択される1種以上を備えてよい。上述される第2の充填要素の効果を達成するものであれば、他の塩も使用されてよい。第2の充填要素において有用な塩は、乾燥剤として知られるもの、または単に無水塩と称されるものであってよい。
【0037】
硫酸マグネシウム(MgSO)および酢酸ナトリウム(NaOAc、すなわちCHCOONa)などの無機塩は、商品名QuEChERS(http://www.restek.com/)で市販される。したがって、当業者は、第2の充填要素を商業的供給元から入手してよい、またはこれを別の化学物質から調製してよい。本発明に係るデバイスにおいて、第2の充填要素は、粉末状であってよい硫酸マグネシウムおよび酢酸ナトリウムの混合物であり、その比率はたとえば1乃至4~約4乃至1で変動してよい。
【0038】
有利な様式において、本発明に係るデバイスは、2つを超えない充填要素を含み、第1の充填要素はシリカを備え、第2の充填要素は硫酸マグネシウムおよび酢酸ナトリウムを備える。当該2つの充填要素は、別個の層としてまたは混合物として提供されてよく、このことは本明細書中の他の箇所に記載され得る。
【0039】
本発明に係るデバイスにおいて、カラムは、第1の充填要素および第2の充填要素の両側に底部フリットおよび頂部フリットを備えてよい。言い換えると、フロースルーモードにある本デバイスを見た際に、上のフリットは当該2つの充填要素の上流に配置され、下のフリットは当該2つの充填要素の下流に配置される。この文脈において、用語「フリット」は、当該2つの充填要素をカラム中に維持でき、同時に液体の通過は許容する、フィルターまたはメッシュなどの任意の好適な仕切りに使用される。このようなフリットは、液体を吸着できてよい、または、特に小型デバイスの場合には利用不可能な容積を低減するために、液体が全く吸着不可能なもしくはわずかに吸着可能なメッシュとして調製できてよい。当業者には理解されることであるが、本発明に係るデバイスにおいて考慮されるすべてのフリットは、試料処理中の液体の通過を許容できる。
【0040】
本発明に係るデバイスの一実施形態において、第1の充填要素および第2の充填要素は、カラム内において別個の層として提供される。次いで、図1bおよび図2b中に例示されるように、第1の充填要素が、頂部フリットに近い方に、すなわち第2の充填要素および底部フリットの上流に提供される。
【0041】
かかる層を明確に分けるために、第1の充填要素および第2の充填要素は、図1bおよび図2b中にも例示されるように、中間フリットによって分けられていてよい。第1の充填要素および第2の充填要素についての上述されるすべての特徴が、この実施形態に適用されてよい。
【0042】
別の一実施形態において、図1aおよび図2a中に例示されるように、第1の充填要素および第2の充填要素は、カラム内において混合物として提供される。好適な混合比率は、たとえば、(アルミナおよび/またはシリカ粒子):(吸湿性の塩)の1:4~4:1での混合であってよい。第1の充填要素および第2の充填要素についての上述されるすべての特徴が、この実施形態に適用されてよい。
【0043】
本発明に係るデバイスは単一床様式であってよく、この場合、カラムは、チューブ、クロマトグラフィーカラム、または任意の他の好適なバレル形容器である。当該2つの充填要素について、およびこれらがどのように混合または層状化されるかについての、上述さ
れるすべての特徴が、この実施形態に適用されてよい。
【0044】
代替的には、本発明に係るデバイスは多床様式であってよく、この場合、2つ以上の、たとえば複数のカラムは、マルチウルプレートなどのプレートの固定ウェルなどとしてプレートにおいて、または、ラックに入ったチューブもしくはバイアルにおいて配置される。当該2つの充填要素について、およびこれらがどのように混合または層状化されるかについての、上述されるすべての特徴が、この実施形態に適用されてよい。
【0045】
本願の他の箇所から分かるように、本発明に係るデバイスは、有利にも、生体試料からのマトリックス成分の除去に使用される。
【0046】
したがって、一実施形態において、本発明に係るデバイスは、第1の充填要素および第2の充填要素の上流に配置された疎水性の頂部フリットを備えてよい。上述される、当該2つの充填要素の性質、カラム内におけるこれらの混合および/または層状化、ならびに様式などの、デバイスのすべての特徴を、本発明の範囲内において、当該頂部フリットと組み合わせてよい。
【0047】
本発明の第2の態様は、生体試料からの1種以上のマトリックス成分の除去方法であって、マトリックス成分は、尿素、尿酸、リン脂質、アミノ酸、クレアチン、ウロビリン(urobillin)などのヘム分解生成物、および内因性の塩からなる群より選択される1種以上である。本発明に係る方法は、アルミナおよび/またはシリカの粒子を備える第1の充填要素と、1種以上の吸湿性の塩の粉末を備える第2の充填要素とに、試料を通す工程を備える。
【0048】
上述される、当該2つの充填要素の性質、カラム内におけるこれらの混合および/または層状化、ならびに例示的な様式は、本発明に係る方法の範囲内において適用されてよい。
【0049】
生体試料は、以降に行なう検体分析を成功させるためにその複雑性を低減する必要のある、任意の試料であってよい。この文脈において、用語「生物学的」は、ヒトなどの哺乳動物、または動物、または任意の他の生物学的供給源に由来するものとして理解される。生体試料は、尿または唾液などの生物学的液体であってよい。
【0050】
試料から除去されるマトリックス成分は、たとえば、尿素、尿酸、リン脂質、アミノ酸、クレアチン、ウロビリン(urobillin)などのヘム分解生成物、および内因性の塩からなる群より選択される任意の1種以上であってよく、これらはすべて、MSなどの分析方法を妨害することが知られる尿成分である。
【0051】
代替的には、生体試料は、ヒトまたは動物に由来する生検または他の組織などの、液化されたまたは機械的に微細分割された組織を備えてよい。
【0052】
より具体的には、以下の実験部分においてより詳細に例示されるように、本発明に係る方法は、たとえば、加水分解されていてもされていなくてもよい未処理の尿をアセトニトリルなどの好適な溶媒で希釈するという簡単なワークフローを包含してよい。得られる液体を、本発明に係るデバイスなどのカラムに添加し、任意の周知の技術によって陽圧をかけ、抽出物を回収する。次いで、得られた抽出物を、蒸発させ、LC-MSに好適な溶媒中に再構成してよい、または、LC-MS上に直接注入してもよい。
【0053】
本発明に係る有利な方法において、生体試料を、当該2つの充填要素に通す前に、加水分解する。これは、たとえば疎水性のフリットに通すことによって達成されてよい。
【0054】
本発明の第3の態様は、生体試料から1種以上のマトリックス成分を除去するための、アルミナおよび/またはシリカの粒子を備える第1の充填要素と、1種以上の吸湿性の塩の粉末を備える第2の充填要素との組み合わせの使用である。
【0055】
本願中に提供される、当該2つの充填要素の性質、カラム内におけるこれらの混合および/または層状化、例示的な様式および方法についての、すべての詳細は、本発明に係る使用の範囲内において任意の組み合わせまたは実施形態で適用されてよい。
【0056】
本発明に係る使用は、薬物使用、バイオマーカー、代謝産物などを特定するまたは見つけるために、個体から採取された試料などの任意の生体試料からマトリックス成分を除去する目的にとって有利である。たとえば、本発明を、たとえば、身体能力を改善する薬物(ドーピング剤)などの違法薬物をスポーツイベント中に使用した人を特定するためのルーチン的な取り締まりにおいて使用してよい。また、濫用薬物、および/または化学物質の合法または違法摂取の結果形成される代謝産物を追跡するために使用してもよい。したがって、たとえば本発明の後に実施されるMSにおいて標的とされる検体は、たとえば、アンフェタミン、アヘン剤、コカイン、ベンゾジアゼピン、バルビツル酸塩、z薬として周知される非ベンゾジアゼピン薬物、テトラヒドロカンナビノール(THC)、ステロイド、および関連する代謝産物からなる群より選択されてよい。
【0057】
本発明に係る有利な使用において、除去される少なくとも1種のマトリックス成分は色素であり、試料は尿である。
【0058】
図面の詳細な説明
図1は、プレート様式で配置された複数のチューブを備える本発明に係るデバイスの原理を例示する。図1aは、各チューブ内において単一床様式を提供するために2つの充填要素がどのように混合されているかを示し、図1bは、2つの充填要素が、下層として第2の充填要素、すなわち吸湿性の塩と、上層として第1の充填要素、すなわちアルミナおよび/またはシリカとを有する層状様式に分かれていて、これらの層がフリットによって分けられていることを示す。
【0059】
図2は、単一床清浄化様式を備える本発明に係るデバイスの原理を例示する。図2aは、単一床様式を提供するために2つの充填要素がどのように混合されているかを示し、図2bは、下層として第2の充填要素、すなわち吸湿性の塩と、上層として第1の充填要素、すなわちアルミナおよび/またはシリカとを有し、これらの層がフリットによって分けられている、層状様式を示す。
【0060】
図3は、正常尿の組成を示す。マトリックスの大部分(56.1%)は尿素で構成され、それより小さな割合を、様々な塩、小さな有機酸、クレアチニンが構成する。チャートは、左から右に、尿酸1.3%、リン脂質0.5%、アミノ酸6%、クレアチニン2%、その他0.2%、カリウム3%、ナトリウム8%、アンモニア1%、カルシウム0.3%、硫酸塩4%、塩化物14%、およびリン酸塩3.6%という割合を示す。
【0061】
図4は、左は、さらなる処理を施していない未処理の加水分解尿を示し、右は、フロースルーデバイスでの処理後に得られた溶出液を示す。フロースルーデバイスを使用すると、マトリックス色素が完全に除去されて透明な液体が得られることが分かる。
【0062】
図5は、色素および塩除去の観点における加水分解尿抽出物の清浄性を示す。図中、目視で確認される抽出物は、蒸発させた試料からのものである。左の培養チューブは沈殿させた尿を詳細に示し、この後、遠心分離ならびに溶出液の除去および蒸発が行なわれる。
右の培養チューブは、同じ試料をフロースルーデバイスを使用して処理した後で溶出液を蒸発させたものを詳細に示す。左の培養チューブには相当量の残渣および色素が示され、右は透明なチューブが示される。
【0063】
図6aおよび図6bは、所与の非加水分解尿試料について、充填要素1を変えた際の、尿素(a:上チャート)およびクレアチニン(b:下チャート)の含有量のバーチャート比較を示す。変化させた吸湿性の塩の組み合わせを使用する抽出物を、希釈直打ち法アプローチと比較した。項目は、左から右へ、AOAC QuEChERs塩、EN QuEChERs塩、MgSO単独、NaSO単独、1:9希釈直打ち法。ACNでの尿クラッシュ率1:4(斜線模様)および1:9(横線模様)が詳細に示される。単一塩様式と比較して、様々なQuEChERs塩の組み合わせは信頼度が高かった。
【0064】
図7は、所与の非加水分解尿試料について、充填要素2と充填要素1の組み合わせを変えた際の、尿素(横線模様)およびクレアチニン(斜線模様)の含有量のバーチャート比較を示す。項目は、左から右へ、AOAC塩単独;層状 C8 エンドキャップ 上述されるAOAC塩;層状 C4 上述されるAOAC塩;層状 Si 上述されるAOAC塩;アルミナ-N単独;1:9希釈直打ち法。充填要素1を単独で使用した場合と比較して、様々の変化させたシリカ吸着剤を使用した場合に、わずかではあるが改善が観察された。アルミナ単独を使用した場合に、40%を超える除去が得られ、さらに試料から色素が除去された。
【0065】
図8は、所与の加水分解尿試料について、96ウェルプレート中において個別カラム様式にて、アルミナ(酸性および中性)と吸湿性の塩とを様々な比率で混合した際の、尿素(横線模様)およびクレアチニン(斜線模様)の除去のバーチャート比較を示す。項目は、左から右へ、Al-N/塩 1:1 プレート;Al-N/塩 1:1 カラム;Al-N/塩 3:4 プレート;Al-N/塩 2:3 プレート;Al-N/塩 2:3
カラム;Al-A/塩 1:1 プレート;Al-A/塩 1:1 カラム;Al-A/塩 3:4 プレート;Al-A/塩 3:4 カラム;Al-A/塩 2:3 プレート;Al-A/塩 2:3 カラム。様々な比率にて良好なクレアチニンおよび尿素の除去が観察された。
【0066】
図9aおよび図9bは、所与の非加水分解尿試料(上チャート)および加水分解尿試料(下チャート)について、アルミナと吸湿性の塩とを層状化して組み合わせたものを使用した際の、またはこれらを混合して組み合わせたものを使用した際の、尿素(横線模様)およびクレアチニン(斜線模様)の除去のバーチャート比較を示す。2つのチャートに示される様々な項目は、左から右へ、層状 プレート 200/200 塩/Al-N;200/200 塩/Al-A;300/200 塩/Al-N;300/200 塩/Al-A;混合 プレート 400mg 塩/Al-N;450mg 塩/Al-N;400mg 塩/Al-A;450mg 塩/Al-A。層状様式と混合様式との比較から、層状様式においてクレアチニンおよび尿素の除去がより良好であり、中性のアルミナよりも酸性のアルミナの方がわずかに良好であることが示される。
【0067】
図10aおよび図10bは、所与の加水分解尿試料についての、尿素(上のトレース)およびクレアチニン(下のトレース)の除去のLC-MS/MS TICを示す。左のトレースはACNでの簡単な沈殿を示し、右のトレースはフロースルーデバイスの使用である。従来の処理と比較して、フロースルーデバイスを使用した場合に、高レベルの、典型的には90%を超える尿素およびクレアチニンの除去が観察された。
【0068】
図11aおよび図11bは、フロースルーデバイスと共に様々なプロトコールを使用して得られた、様々な濫用薬物についての、非加水分解尿からの回収のバーチャートを示す
。バーは、左から、モルフィン、アンフェタミン、コデイン、MDMA、メフェドロン、ケタミン、コカイン、7-アミノフルニトラゼパム、PCP、オキサゼパム、ザレプロン、およびリタリン酸を表す。上チャート(11a)は、前面の横線模様により、実験部分に詳細が示される標準的な方法を詳細に示し、中間の斜線模様のさらなる小部分として、ACNの添加による変化を詳細に示し、背面の塗りつぶし模様のさらなる小部分として、MeOHの添加による変化を詳細に示す。下チャート(11b)は、実験部分に詳細が示されるように、抽出より前にギ酸で変化させた尿を使用した場合の、上述される傾向を示す。
【0069】
実験
本実施例は、例示目的のみにおいて提供され、付属の請求項によって定義される本発明を限定すると解釈されるべきではない。本出願において以下または他の箇所にて提供されるすべての先行技術文献を、引用により本明細書に含む。
【0070】
材料および方法
薬物標準および関連する内部標準は、LGC Standards(テディントン、英国)から購入した。酢酸アンモニウム、水酸化アンモニウム、HCl、ギ酸、酢酸、およびβ-グルクロニダーゼ(helix pomatia)は、Sigma-Aldrich社(ジリンガム、英国)から購入した。尿は、健康なヒト志願者から供与された。すべての溶媒は、Honeywell Research Chemicals(ブカレスト、ルーマニア)から入手したLC/MSグレードであった。水(18.2MΩ.cm)は、Direct-Q 5 浄水器(Merck Millipore、ウォトフォード、英国)から、新鮮なものを毎日取得した。
【0071】
加水分解尿についての手順
1mLの尿(ブランクまたは添加物あり)を、950μLの100mM 酢酸アンモニウム(pH5)および50μLのβ-グルクロニダーゼ酵素(約4500U/mLの尿と同等)で希釈した。尿を60℃において最長2時間かけて加水分解し、次いで、さらなる処理を施すまで冷却した。別の加水分解手順は、様々な組換えおよび非組換え酵素を使用するものであってよい。独自の処置を施した疎水性のフリットを使用する場合には、加水分解手順をプレート上にて実施できる。
【0072】
尿抽出手順
(上述される例のような)非加水分解尿または酵素加水分解尿の、典型的には100μLを、600μLのACNと入念に混合する。混合は、エッペンドルフチューブもしくは他の好適な容器中においてオフラインで、またはプレート上で、いずれの場合にも、ボルテックス作用(20秒間)を使用することによって、または吸引/吐出のピペッティング(3~4サイクル)を繰り返すことによって、実施できる。
【0073】
尿の体積はこれより多くてもよい。
チューブ中でオフラインにて処理する場合、チューブを13,300rpmにおいて10分間遠心分離して粒子状物質を除去してよい。プレート上で処理する場合、フリット要素が十分なろ過能力を有するため、遠心分離工程は不要である。
【0074】
オフライン処理を使用する場合、フロースルーデバイスに上清を加える。
陽圧または真空を適用することにより、流れを開始する。流れの推奨は、標準型の頂部フリットを使用するフロースルーデバイスの場合と、独自に処置した疎水性の頂部フリットを使用するフロースルーデバイスの場合とで、異なり得る。典型的な処理は、処理完了に近づくにつれて加圧または真空に傾斜が付与されていてよい繊細な条件を使用するべきである。例示的な処理は、1PSIで10秒間、3PSIで10秒間、5PSIで10秒
間、次いで10PSIで10秒間であってよい。
【0075】
次いで、LC/MS分析のために、適切な移動相中において溶出液を蒸発および再構成してよい。クロマトグラフィーの条件および方法の感受性が許せば、水希釈ありまたはなしで、LC/MSシステムに溶出液を直接注入してよい。
【0076】
方法最適化方策
ガバペンチンおよびプレガバリンなどのいくつかの両性検体を含む困難な検体については、ならびに、いくつかの他の薬物の回収を増大させるためには、以下のさらなる工程が含まれてよい。
【0077】
ACNとの混合前に、10μLのギ酸を尿試料に直接添加する。
試料/ACN混合物を流した後で、ACNまたはMeOHなどの有機溶媒のさらなるアリコートが、回収を増大させ得る。ここでは、100~200μLが有効であり得る。処理は、上述された真空または陽圧手順を使用して実施するべきである。
図1a
図1b
図2a
図2b
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11