(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】エアバッグ制御装置
(51)【国際特許分類】
B60R 21/0136 20060101AFI20241024BHJP
B60R 21/0134 20060101ALI20241024BHJP
B60R 21/16 20060101ALI20241024BHJP
B60R 21/00 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
B60R21/0136 310
B60R21/0134 310
B60R21/16
B60R21/00 310L
(21)【出願番号】P 2023103594
(22)【出願日】2023-06-23
【審査請求日】2023-06-23
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501089759
【氏名又は名称】デンソーテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】福手 淳一
【審査官】村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-138636(JP,A)
【文献】特開2009-090816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/00-21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるエアバッグ制御装置(10)であって、
車体に作用する衝撃のうち予め定められた方向における衝撃を検出する第1検出装置による検出値又は前記検出値に基づく値としての第1検出値に基づいて、前記第1検出値と予め定められた作動閾値とを比較し、比較結果に基づいてエアバッグを展開させる展開用信号を生成するように構成された作動判定部(S120)と、
予め定められた出力条件が満たされる場合に、前記展開用信号を出力するように構成された出力部(S160)と、
前記第1検出装置とは異なる検出装置であって前記車体に作用する衝撃のうち上下方向における衝撃を検出する第2検出装置による検出値又は前記検出値に基づく値としての第2検出値に基づいて、上下方向において前記車体に作用する衝撃の方向を判定するように構成された方向判定部(S60、S65、S80、S85)と、
前記方向判定部によって前記車体に作用する衝撃の方向が下方向であると判定されたときに、前記下方向であると判定されなかったときよりも、前記エアバッグが展開し易い方向に前記作動閾値を変更するように構成された変更部(S90)と、
を備え、
前記方向判定部は、前記第2検出値が予め定められた判定値を最初に超えたときの前記第2検出値に基づく方向を上下方向において前記車体に作用する衝撃の方向として特定するものであって、前記第2検出値が、前記判定値よりも絶対値が小さい予め定められた方向閾値を超えたか否かを判定し、前記第2検出値が前記方向閾値を超えてから予め定められた方向判定時間以内に前記第2検出値が前記判定値を超えたときに、前記第2検出値が前記判定値を最初に超えたとし、前記車体に作用する衝撃の方向を上方向についても下方向についても2段階で判定し、
前記変更部は、前記方向判定部による2段階の判定によって前記車体に作用する衝撃の方向が下方向であると判定されたときに、前記エアバッグが展開し易い方向に前記作動閾値を変更する、
エアバッグ制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエアバッグ制御装置であって、
前記方向判定部は、同じ符号の前記方向閾値及び前記判定値に基づいて、前記車体に作用する衝撃の方向を上方向についても下方向についても2段階で判定する、
エアバッグ制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載のエアバッグ制御装置であって、
前記方向閾値及び前記判定値は、前記車体に作用する衝撃の方向として上方向を特定する場合に適用される上方向閾値及び上判定値と、下方向を特定する場合に適用される下方向閾値及び下判定値とを含み、前記上方向閾値及び前記上判定値は同じ符号であり、前記下方向閾値及び前記下判定値は、前記上方向閾値及び前記上判定値とは異なる同じ符号である、
エアバッグ制御装置。
【請求項4】
車両に搭載されるエアバッグ制御装置(10)であって、
車体に作用する衝撃のうち予め定められた方向における衝撃を検出する第1検出装置による検出値又は前記検出値に基づく値としての第1検出値に基づいて、前記第1検出値と予め定められた作動閾値とを比較し、比較結果に基づいてエアバッグを展開させる展開用信号を生成するように構成された作動判定部(S120)と、
予め定められた出力条件が満たされる場合に、前記展開用信号を出力するように構成された出力部(S160)と、
前記第1検出装置とは異なる検出装置であって前記車体に作用する衝撃のうち上下方向における衝撃を検出する第2検出装置による検出値又は前記検出値に基づく値としての第2検出値に基づいて、上下方向において前記車体に作用する衝撃の方向を判定するように構成された方向判定部(S60、S65、S80、S85)と、
前記方向判定部によって前記車体に作用する衝撃の方向が下方向であると判定されたときに、前記下方向であると判定されなかったときよりも、前記エアバッグが展開し易い方向に前記作動閾値を変更するように構成された変更部(S90)と、
を備え、
前記第1検出装置は、上下方向に直交する方向であって、前後方向及び左右方向のうち少なくとも一方を第1検出方向として前記第1検出方向において前記車体に作用する衝撃を検出し、
前記第2検出装置は、上下方向であって前記第1検出方向に直交する第2検出方向において前記車体に作用する衝撃を検出し、
前記方向判定部は、前記第1検出値及び前記第2検出値に基づいて、前記車体に作用する衝撃の大きさ及び前記車体に作用する衝撃の前記第1検出方向成分の大きさのうちの一方と、前記第1検出方向及び前記第2検出方向を2軸とする平面上で前記車体に作用する衝撃の方向が前記第1検出方向に対してなす角度である衝撃角度とを検出し、前記衝撃角度と前記衝撃の大きさ及び前記衝撃の第1検出方向成分の大きさのうちの一方とを2軸とする2次元マップであって前記上下方向において車体に作用する衝撃の方向を判定する判定マップを取得し、検出された前記衝撃角度と前記衝撃の大きさ及び前記衝撃の第1方向成分の大きさのうちの一方とに基づいて、前記判定マップを用いて、少なくとも上下方向において前記車体に作用する衝撃の方向を判定する、
エアバッグ制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載のエアバッグ制御装置であって、
前記判定マップは、区分けされた複数の判定領域を有し、前記複数の判定領域は、少なくとも、衝撃の方向が上方向であると区分する上方向領域と、衝撃の方向が下方向であると区分する下方向領域とを含み、
前記方向判定部は、検出された前記衝撃角度と前記衝撃の大きさ及び衝撃の第1方向成分の大きさのうちの一方とに基づいて、前記判定マップ上の対応する判定領域を特定し、
特定された前記判定領域が前記下方向領域であると特定されたときに、前記車体に作用する衝撃の方向が下方向であると判定する、エアバッグ制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載のエアバッグ制御装置であって、
前記変更部は、それぞれの前記判定領域と予め定められた作動閾値とを対応付けた閾値対応情報を取得し、検出された前記衝撃の角度と前記衝撃の大きさ及び前記第1検出値のうちの一方とに基づいて、前記閾値対応情報を用いて前記作動閾値を設定し、
前記閾値対応情報において、下方向領域に対応付けられた作動閾値は、下方向領域以外の判定領域に対応付けられた作動閾値よりも、前記エアバッグが展開し易い値に設定されている、エアバッグ制御装置。
【請求項7】
車両に搭載されるエアバッグ制御装置(10)であって、
車体に作用する衝撃のうち予め定められた方向における衝撃を検出する第1検出装置による検出値又は前記検出値に基づく値としての第1検出値に基づいて、前記第1検出値と予め定められた作動閾値とを比較し、比較結果に基づいてエアバッグを展開させる展開用信号を生成するように構成された作動判定部(S120)と、
予め定められた出力条件が満たされる場合に、前記展開用信号を出力するように構成された出力部(S160)と、
前記第1検出装置とは異なる検出装置であって前記車体に作用する衝撃のうち上下方向における衝撃を検出する第2検出装置による検出値又は前記検出値に基づく値としての第2検出値に基づいて、上下方向において前記車体に作用する衝撃の方向を判定するように構成された方向判定部(S60、S65、S80、S85)と、
前記方向判定部によって前記車体に作用する衝撃の方向が下方向であると判定されたときに、前記下方向であると判定されなかったときよりも、前記エアバッグが展開し易い方向に前記作動閾値を変更するように構成された変更部(S90)と、
前記車両の周囲の物体を検出するための物体検出センサ(14)による検出結果に基づいて、前記車体に衝突する衝突物体を検出するように構成された衝突物体特定部(S210)と、
予め定められた対象物体によって予め定められた対象方向の衝撃が生じた場合に前記エアバッグの展開を禁止するための情報であって、少なくとも前記対象物体と前記対象方向とが対応づけられた情報である展開不要情報を取得するように構成された対応取得部(S220)と、
前記展開不要情報に基づいて、前記衝突物体が前記対象物体と一致し且つ前記衝突物体による前記衝撃の方向が前記対象方向と一致すること、が否定判定されることを前記出力条件として、前記出力条件が満たされるか否かを判定するように構成された出力条件部(S150)と、
を備え、
前記出力部は、前記出力条件部による判定に基づいて、前記出力条件が満たされる場合に前記展開用信号を出力し、前記出力条件が満たされない場合に前記展開用信号を出力しない、
エアバッグ制御装置。
【請求項8】
請求項7に記載のエアバッグ制御装置であって、
前記展開不要情報では、人を前記対象物体とし、下方向を前記対象方向として、前記人と前記下方向とが対応づけられている、エアバッグ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に装備されるエアバッグの作動制御に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に装備されるエアバッグの制御装置は、車体に作用する衝撃を加速度センサ等で検出し、例えば、衝突の際に生じる前後方向の加速度を検出してエアバッグを作動させる。しかしながら、道路や縁石等への乗り上げや悪路走行等の際にも前後方向の加速度が検出されるため、衝突ではない状況において誤ってエアバッグを作動させてしまうという問題があった。
【0003】
下記特許文献1には、悪路走行等においてエアバッグを誤って作動させないために、上下方向に加わった加速度が閾値を超えたときにエアバッグを作動させる、という技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の特許文献1の技術では、上下どちらの方向の衝撃であるかに拘わらず、上下方向の衝撃の大きさのみに応じて閾値が高く変更される。このため、例えば、衝突によるトラック等大型車両の下への潜り込みによって下方向の衝撃が車両に加わるような場合、エアバッグが作動すべき状況であるにも拘わらず閾値が高く設定されていることにより、エアバッグを作動させ難いという問題があった。つまり、エアバッグの作動制御を精度よく行うことが困難であった。
【0006】
本開示の1つの局面は、エアバッグの作動制御を精度よく行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、車両に搭載されるエアバッグ制御装置であって、作動判定部と、出力部と、方向判定部と、変更部と、を備える。作動判定部は、第1検出装置による検出値又は検出値に基づく値としての第1検出値に基づいて、第1検出値と予め定められた作動閾値とを比較し、比較結果に基づいてエアバッグを展開させる展開用信号を生成するように構成される。第1検出装置は、車体に作用する衝撃のうち予め定められた方向における衝撃を検出する。出力部は、予め定められた出力条件が満たされる場合に、展開用信号を出力するように構成される。方向判定部は、第2検出装置による検出値又は検出値に基づく値としての第2検出値に基づいて、上下方向において車体に作用する衝撃の方向を判定するように構成される。第2検出装置は、第1検出装置とは異なる検出装置であって車体に作用する衝撃のうち上下方向における衝撃を検出する。変更部は、方向判定部によって車体に作用する衝撃の方向が下方向であると判定されたときに、下方向であると判定されなかったときよりも、エアバッグが展開し易い方向に作動閾値を変更するように構成される。
【0008】
このような構成によれば、例えば、トラック等といった大型車両下への潜り込み時のような、相対的に大きい下方向の衝撃が車体に生じた場合に、作動閾値がエアバッグを展開し易くするように変更される。これにより、潜り込み時のようなエアバッグを展開すべき状況において、エアバッグを展開し易くすることができる。結果として、エアバッグの作動制御を精度よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】エアバッグシステムの構成を示すブロック図である。
【
図3】CPUの機能を模式的に示すブロック図である。
【
図4】第1実施形態の処理を示すフローチャートである。
【
図6】乗り上げ時の作動を説明する説明図。
図6aは乗り上げを説明する説明図であり、
図6bは乗り上げ時の検出値Gzの例を示す説明図であり、
図6cは乗り上げ時の信号処理後の検出値Gzの例を示す説明図であり、
図6dは乗り上げ時の作動閾値の変更を説明する説明図である。
【
図7】潜り込み時の作動を説明する説明図。
図7aは潜り込みを説明する説明図であり、
図7bは潜り込み時の検出値Gzの例を示す説明図であり、
図7cは潜り込み時の信号処理後の検出値Gzの例を示す説明図であり、
図7dは潜り込み時の作動閾値の変更を説明する説明図である。
【
図8】方向閾値のみを用いる場合に、判定値を超える衝撃が最初に生じた方向が誤って判定される例を説明する説明図である。
【
図9】展開タイミングの変更を説明する説明図である。
【
図10】第1実施形態の変形例における処理を示すフローチャートである。
【
図11】第2実施形態における合成加速度、衝撃角度を説明する説明図である。
図11aは合成加速度及び衝撃角度を説明する説明図であり、
図11bは後方向衝撃範囲を説明する説明図であり、11cは上方向衝撃範囲を説明する説明図であり、11dは下方向衝撃範囲を説明する説明図である。
【
図12】第2実施形態の判定マップを説明する説明図である。
【
図13】第2実施形態の処理を示すフローチャートである。
【
図14】第2実施形態の変形例2-2の判定マップを説明する説明図である。
【
図15】第2実施形態の変形例2-3の判定マップを説明する説明図である。
【
図16】第2実施形態の変形例2-4の判定マップを説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態を説明する。
なお、以下でいう「後(うしろ)」とは、厳密な意味での後ろに限るものではなく、同様の効果を奏するのであれば厳密に後(つまり、真後(まうしろ))でなくてもよい。「前」「右」「左」等についても同様である。
【0011】
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1に示すエアバッグシステム1は、車両に搭載されるシステムである。なお、以下では、
図2a、
図2bに示すように、車両の進行方向(すなわち、前後方向)をx軸、車両の幅方向(すなわち、左右方向)をy軸、鉛直方向(すなわち、上下方向)をz軸、として記載することがある。前後方向、左右方向、上下方向は互いに直交している。各軸の正負の方向は
図2a、
図2bのとおりである。
【0012】
エアバッグシステム1はエアバッグECU10を備える。また、エアバッグシステム1は、第1加速度センサ11、第2加速度センサ12、セーフィングセンサ13、物体検出センサ14、及びエアバッグ作動装置15を備えていてもよい。エアバッグ作動装置15は、エアバッグ52を駆動するための駆動回路51と、エアバッグ52とを備えていてもよい。
【0013】
エアバッグECU10は、エアバッグ52の作動制御を行うための電子制御装置である。ECUは、Electronic Control Unitの略である。
エアバッグ作動装置15は、エアバッグ52、エアバッグ52を膨らませるための図示しないインフレータ、インフレータを作動させるための駆動回路51等を含む。本実施形態では、エアバッグ52は、車両の前突時に展開して乗員と車載部品との間に介在する前突用のエアバッグである。エアバッグ52は、図示しないステアリングホイールやインストルメントパネル等の内部に収容されている。エアバッグ52は、衝突時に、前後方向における後方(以下、後方向ともいう)に展開する。以下では、エアバッグ52が展開する方向を展開対象方向ともいう。
【0014】
第1加速度センサ11、第2加速度センサ12、セーフィングセンサ13は、車体に作用する衝撃を検出する加速度センサである。
第1加速度センサ11は、車体に作用する前後方向の衝撃を検出する。上述のように、本実施形態では展開対象方向は後方向である。第1加速度センサ11の検出方向(すなわち、前後方向)は展開対象方向を含む。第1加速度センサ11は、図示しないが、例えば、エアバッグECU10内部に配置され、車体に作用する前後方向の衝撃を検出する。第1加速度センサ11は、例えば本実施形態では、前方向の衝撃、すなわち後方から力が作用したときの衝撃を正の符号の検出値で示し、後方向の衝撃、すなわち前方から力が作用したときの衝撃を負の符号の検出値で示す。
【0015】
第2加速度センサ12は、車体に作用する上下方向の衝撃を検出する。第2加速度センサ12は、第1加速度センサ11と同様の位置に配置されてもよいし、異なる位置に配置されてもよい。例えば、第2加速度センサ12は、上方からの衝撃を検出し易くするために、ボンネットの裏に配置されてもよい。又は、第2加速度センサ12は、下方からの衝撃を検出し易くするために、前輪付近の車体底部に配置されてもよい。第2加速度センサ12は、例えば本実施形態では、上方向の衝撃、すなわち下方から力が作用したときの衝撃を正の符号の検出値で示し、下方向の衝撃、すなわち上方から力が作用したときの衝撃を負の符号の検出値で示す。
【0016】
セーフィングセンサ13は、第1加速度センサ11と同様に車体に作用する前後方向の衝撃を検出する、第1加速度センサ11とは異なる加速度センサである。セーフィングセンサ13は、例えば、図示しないエアバッグECU10内部に配置され、車体に作用する前後方向の衝撃を検出する。セーフィングセンサ13は、例えば本実施形態では、前方向の衝撃、すなわち後方から力が作用したときの衝撃を正の符号の検出値で示し、後方向の衝撃、すなわち前方から力が作用したときの衝撃を負の符号の検出値で示す。
【0017】
なお、第1加速度センサ11、第2加速度センサ12、セーフィングセンサ13は、上述の配置位置に限定されるものではない。例えば、車体の前方(エンジンルーム、バンパ等)に配置されるといったように、車体における任意の位置に設置され得る。
【0018】
物体検出センサ14は、車両の周囲の物体を検出し、車両に衝突する物体(以下、衝突物体ともいう)を特定するためのセンサであり、図示しないが、車両の前方、後方、及び左右側方における物体を検出可能に、車両に配置される。物体とは、例えば、車両や歩行者や固定物等であり得る。物体検出センサ14は、車両に衝突した衝突物体を検出し、検出結果を出力するものであってもよい。検出結果には、少なくとも物体の形状が含まれていてもよい。検出結果には、車両から物体までの距離、車両の進行方向を基準とする物体の方位、相対速度等が含まれてもよい。
【0019】
本実施形態では、物体検出センサ14は画像センサを含む。画像センサは、車両の周辺を撮影し、撮影した画像を表す画像データに基づき、公知の画像認識技術によって、物体を検出する。なお、物体検出センサ14としては、ミリ波レーダ、LiDAR等が用いられてもよい。
【0020】
エアバッグECU10は、CPU31と、ROM33及びRAM34等といったメモリ32とを備えたマイクロコンピュータ(以下、マイコン30)を備える。エアバッグECU10は、入力インタフェース回路20、信号処理部21~23、出力インタフェース回路24を更に備えていてもよい。
【0021】
入力インタフェース回路20は、第1加速度センサ11、第2加速度センサ12、セーフィングセンサ13からの信号を入力するための回路である。出力インタフェース回路24は、エアバッグ作動装置15に作動信号を出力するための回路である。
【0022】
信号処理部21、22、23は、それぞれ、第1加速度センサ11、第2加速度センサ12、セーフィングセンサ13に接続され、LPF(すなわち、ローパスフィルタ)としての機能を有する。信号処理部21、22、23は、それぞれ、第1加速度センサ11、第2加速度センサ12、セーフィングセンサ13による検出値を示す信号を平滑化する。信号処理部21、22、23は、アナログ回路であってもよいし、DSP等を用いたデジタル回路であってもよい。以下では、信号処理部21による信号処理後の第1加速度センサ11による検出値を検出値Gxと記載する。また、信号処理部22による信号処理後の第2加速度センサ12による検出値を検出値Gzと記載する。信号処理部23による信号処理後のセーフィングセンサ13による検出値を検出値Sxと記載する。
【0023】
マイコン30の各種機能は、CPU31がROM33に格納されたプログラム41を実行することにより実現される。また、このプログラム41の実行により、プログラム41に対応する方法が実行される。なお、CPU31が実行する機能の一部又は全部を、一つあるいは複数のIC等によりハードウェア的に構成してもよい。また、一つあるいは複数のIC等によりハードウェア的に実行される機能の一部又は全部を、CPU31が実行する機能の一部又は全部として構成してもよい。また、エアバッグECU10を構成するマイコンの数は1つでも複数でもよい。
【0024】
エアバッグECU10においてCPU31は、
図3のブロック図に示すように、展開用信号部35としての機能と、出力生成部36としての機能を有する。後述するフローチャートにおいて、S10~S120が展開用信号部35としての処理に相当し、S130~S160が出力生成部36としての処理に相当する。
【0025】
展開用信号部35は、セーフィングセンサ13による前後方向の検出値Sxが予め定められたセーフィング閾値Thxcを超え、且つ、第1加速度センサ11による前後方向の検出値Gxが作動閾値Thxaを超えた場合に、展開用信号を生成する。展開用信号は、エアバッグ52の展開を許可する信号である。展開用信号は、エアバッグ52の要否を判定する信号であるともいえる。作動閾値Thxaは、エアバッグ52の要否を決定するための閾値である。
【0026】
セーフィングセンサ13による判定は、第1加速度センサ11による判定の精度を高めるためのものである。セーフィング閾値Thxcは、セーフィング閾値Thxcを超えることが作動閾値Thxaを超えることよりも容易となるように、セーフィング閾値Thxcの絶対値<作動閾値Thxaの絶対値のように値が設定されている。また、展開用信号部35は、生成された展開用信号をエアバッグ作動装置15へ出力するタイミング変更する。
【0027】
出力生成部36は、物体検出センサ14による検出結果に基づいて、予め定められた出力条件が満たされるか否かを判定し、出力条件が満たされると判定される場合に、展開用信号をエアバッグ作動装置15へ出力することを許可する。つまり、展開用信号が生成されても、出力条件が満たされないと判定された場合は、生成された展開用信号はエアバッグ作動装置15に出力されない。
【0028】
[1-2.処理]
次に、マイコン30が実行する処理について、
図4のフローチャートを用いて具体的に説明する。
図4に示す処理は、予め定められた実行周期毎に繰り返し実行される。エアバッグ52は、エアバッグ52の展開を必要とする相対的に大きい衝撃が生じてから時間を要することなく展開されることが望ましい。このため、
図4の処理の実行周期は、例えば、数百μSEC~数十msecといった期間に設定され得る。なお、実行周期は上述の期間に限定されるものではなく、任意の期間に設定されてよい。
【0029】
CPU31は、まずステップ(以下、S)10では、検出値Gx、Gz、Sxを取得する。
CPU31は、続くS20では、展開対象方向(すなわち、本実施形態では後方向)の衝撃が検出されたか否かを判定する。上述のように、検出値Gxは、前方向の衝撃が検出された場合に正の符号を有する。CPU31は、検出値Gxの符号が負である場合に、後方向の衝撃が検出されたと判定する。CPU31は、後方向の衝撃が検出されたと判定された場合に処理をS30に移行し、後方向の衝撃が検出されたと判定されなかった場合に、以上で本処理を終了する。
【0030】
CPU31は、S30~S100では、上下方向において予め定められた判定値Tを超える衝撃が最初に生じた方向を特定し、特定された方向及びその衝撃の大きさに基づいて、作動閾値Thxa及びセーフィング閾値Thxc等の各種パラメータを変更する。ここでいう特定された方向とは、上方向及び下方向の一方である。衝撃の大きさとは、検出値Gx、検出値Gz、検出値Gc等といった各種センサによる衝撃の検出値の、絶対値である。判定値Tは、エアバッグ52の展開を要する可能性がある程度に相対的に大きい衝撃と、エアバッグ52の展開が不要であることが明らかである相対的に小さい衝撃とを区別するための閾値である。
【0031】
CPU31は、まずS30では、検出値Gzに基づいて、車体に作用した後方向の衝撃が上方向であるか下方向であるかを、予備的に判定する。具体的には、CPU31は、検出値Gzが予め定められた方向閾値Tzを超えた場合に、検出値Gzの符号が正である場合は上方向であり、負である場合は下方向である、と予備的に判定する。
【0032】
上述のように、検出値Gzは衝撃の方向に応じて正負の符号を有するので、後述する
図6~8等に示すように、方向閾値Tzも、正の上側方向閾値Tzu(すなわち、上側方向閾値Tzu>0)と、負の下側方向閾値Tzd(すなわち、下側方向閾値Tzd<0)とで表される。上側方向閾値Tzuの絶対値=下側方向閾値Tzdの絶対値であってもよいし、上側方向閾値Tzuの絶対値≠下側方向閾値Tzdの絶対値であってもよい。以下では、例えば、xの絶対値を|x|のように符号を用いて示すことがある。
【0033】
CPU31は、検出値Gz<下側方向閾値Tzd<0、又は、0<上側方向閾値Tzu<検出値Gzである場合に、検出値Gzが方向閾値Tzを超えたと判定する。つまり、CPU31は、|Gz|>|Tzd|(但し、検出値Gz<0)、又は|Tzu|<|Gz|(但し、0<検出値Gz)である場合に、検出値Gzが方向閾値Tzを超えたと判定する。以下では、例えば、符号を有するパラメータyが閾値zを超えると記載された場合は、パラメータyの絶対値がパラメータyと同じ符号の閾値zの絶対値を超えること(すなわち、|y|>|z|)を意味するものとする。
【0034】
方向閾値Tzの絶対値(すなわち、上側方向閾値Tzuの絶対値、又は、下側方向閾値Tzdの絶対値)は、判定値Tの絶対値(すなわち、上判定値Tuの絶対値、又は、下判定値Tdの絶対値)よりも小さく設定されている。つまり、|Tzu|<|Tu|であり、|Tzd|<|Td|である。
【0035】
CPU31は、検出値Gzの絶対値が検出値Gzと同じ符号の方向閾値Tzの絶対値を超えた場合に処理をS40に移行し、検出値Gzの絶対値が検出値Gzと同じ符号の方向閾値Tzの絶対値を超えていない場合に処理をS100に移行する。つまり、CPU31は、エアバッグ25を必要とする程度の相対的に大きい衝撃が上方向に最初に生じておらず、且つ、エアバッグ25を必要とする程度の相対的に大きい衝撃が最初に下方向に生じてもいないと判定される場合に、処理をS100に移行させる。
【0036】
CPU31は、S40では、経過時間を取得する。経過時間は、S30で検出値Gzが方向閾値Tzを超えたと判定されてから経過した時間を示す。CPU31は、例えば本処理とは異なる別の処理(以下、カウント処理ともいう)において、CPU31が有するフリーランタイマ等を用いて、経過時間をカウントしてもよい。カウント処理では、CPU31は、S30で検出値Gzが方向閾値Tzを超えたと判定されたときに経過時間をリセットし、S30で検出値Gzが方向閾値Tzを超えたと判定されてからの経過時間のカウントを開始してもよい。
【0037】
CPU31は、続くS50では、S30にて検出値Gxが方向閾値Tzを超えたと判定されてからの経過時間が予め定められた方向判定時間以下であるか否か判定する。方向判定時間は、例えば、
図4に示す処理の実行周期よりも短い時間であり得る。CPU31は、経過時間が方向判定時間以下である場合に処理をS60に移行し、経過時間が方向判定時間を超えている場合に処理をS100に移行する。なお、本実施形態では、メモリ32には直近に取得された検出値Gx、Gz、Sxが記憶されている。検出値Gx、Gz、Sxは、取得される毎に値が上書きされてもよい。
【0038】
CPU31は、S60では、車体にエアバッグ52の展開を要する可能性があるような相対的に大きい衝撃が最初に作用した方向が、上方向であるか否かを判定する。具体的には、CPU31は、S30にて検出値Gzが方向閾値Tzを超えてから(すなわち、検出値Gzの符号が正で、Gzの絶対値>Tzuの絶対値となってから)予め定められた方向判定時間以内に検出された検出値Gzについて、上方向(すなわち、符号が正)であり、且つ、検出値Gzが予め定められた判定値Tを超えていると判定される場合に、車体にエアバッグ52の展開を要する可能性があるような相対的に大きい衝撃が最初に作用した方向が、上方向であると判定する。ここで、CPU31は、上方向であると判定(すなわち、肯定判定)される場合に処理をS70に移行し、上方向でないと判定(すなわち、否定判定)される場合に処理をS80に移行する。
【0039】
検出値Gzは衝撃の方向に応じて正負の符号を有するので、判定値Tも、上判定値Tu(すなわち、上判定値Tu>0)と下判定値Td(すなわち、下判定値Td<0)とを含む。CPU31は、検出値Gz<下判定値Td<0、又は、0<上判定値Tu<検出値Gzである場合に、検出値Gzが判定値Tを超えたと判定する。つまり、CPU31は、検出値Gzの絶対値が判定値Tの絶対値を超えた場合(すなわち、|Gz|>|Td|、又は、|Tu|<|Gz|である場合)に、検出値Gzが判定値Tを超えたと判定する。CPU31は、本ステップでは、|Tu|<|Gz|である場合に、検出値Gzが判定値Tを超えたと判定する。
【0040】
続くS70では、CPU31は、作動閾値Thxaを、エアバッグ52が展開し難い方向に変更する。エアバッグ52が展開し難い方向に作動閾値Thxaを変更するとは、絶対値を大きくする方向に作動閾値Thxaを変更することである。具体的には、CPU31は、上側作動閾値Thxauを作動閾値Thxaとして設定する。少なくとも、上側作動閾値Thxauの絶対値>下側作動閾値Thxadの絶対値である。下側作動閾値Thxadについては後述する。
【0041】
また、CPU31は、セーフィング閾値Thxcを、エアバッグ52が展開し難い方向に変更する。具体的には、CPU31は、上側セーフィング閾値Thxcuをセーフィング閾値Thxcとして設定する。少なくとも、下側セーフィング閾値Thxcdの絶対値<上側セーフィング閾値Thxcuの絶対値である。
【0042】
また、CPU31は、上側タイミング期間DTuを展開タイミング期間DTとして設定する。展開タイミング期間DTは、生成された展開用信号をエアバッグ作動装置15へ出力するタイミングを変更するためのパラメータである。また、CPU31は、上方向フラグをセットし、下方向フラグをリセットする。上方向フラグは、セットされている場合に、車体にエアバッグ52の展開を要する可能性があるような相対的に大きい衝撃が、最初に作用した方向が上方向であることを示し、リセットされている場合に上方向でないことを示す。下方向フラグは、セットされている場合に、車体にエアバッグ52の展開を要する可能性があるような相対的に大きい衝撃が、最初に作用した方向が下方向であることを示し、リセットされている場合に下方向でないことを示す。そして、CPU31は、処理をS110へ移行する。
【0043】
CPU31は、S80では、車体にエアバッグ52の展開を要する可能性があるような相対的に大きい衝撃が、最初に作用した方向が下方向であるか否かを判定する。具体的には、CPU31は、S30にて検出値Gzが方向閾値Tzを超えてから(すなわち、検出値Gzの符号が負で、Gzの絶対値>Tzdの絶対値となってから)上述の方向判定時間以内に検出された検出値Gzついて、下方向(すなわち、符号が負)であり、且つ、検出値Gzの絶対値が予め定められた判定値Tの絶対値を超えていると判定される場合に、車体にエアバッグ52の展開を要する可能性があるような相対的に大きい衝撃が最初に作用した方向が、下方向であると判定する。ここで、CPU31は、下方向であると判定(すなわち、肯定判定)される場合に処理をS90に移行し、下方向でないと判定(すなわち、否定判定)される場合に処理をS100に移行する。
【0044】
上述のように、判定値Tは、上判定値Tu(すなわち、上判定値Tu>0)と下判定値Td(すなわち、下判定値Td<0)とを含む。CPU31は、検出値Gz<下判定値Td<0である場合に、換言すれば、|Gz|>|Td|である場合に、検出値Gzが判定値Tzを超えたと判定する。
【0045】
続くS90では、CPU31は、作動閾値Thxaを、エアバッグ52が展開し易い方向に変更する。エアバッグ52が展開し易い方向に作動閾値Thxaを変更するとは、絶対値を小さくする方向に作動閾値Thxaを変更することである。具体的には、CPU31は、下側作動閾値Thxadを作動閾値Thxaとして設定する。少なくとも、下側作動閾値Thxadの絶対値<上側作動閾値Thxauの絶対値である。更に、下側作動閾値Thxadの絶対値<標準作動閾値Thxanの絶対値であってもよい。標準作動閾値Thxanの絶対値については後述する。
【0046】
また、CPU31は、セーフィング閾値Thxcを、エアバッグ52が展開し易い方向に変更する。具体的には、CPU31は、下側セーフィング閾値Thxcdをセーフィング閾値Thxcとして設定する。少なくとも、下側セーフィング閾値Thxcdの絶対値<上側セーフィング閾値Thxcuの絶対値である。更に、下側セーフィング閾値Thxcdの絶対値<標準セーフィング閾値Thxcnの絶対値であってもよい。標準セーフィング閾値Thxcnについては後述する。
【0047】
また、CPU31は、下側タイミング期間DTdを展開タイミング期間DTとして設定する。また、CPU31は、下方向フラグをセットし、上方向フラグをリセットする。そして、CPU31は、処理をS110へ移行する。
【0048】
S100では、作動閾値Thxaを初期値に変更する。初期値とは、例えば、車両前方における正面衝突時に適切にエアバッグ52を展開させるための値をいう。具体的には、CPU31は、標準作動閾値Thxanを作動閾値Thxaとして設定する。また、CPU31は、セーフィング閾値Thxcを初期値に変更する。具体的には、CPU31は、標準セーフィング閾値Thxcnをセーフィング閾値Thxcとして設定する。
【0049】
また、CPU31は、展開タイミング期間DTを初期値に変更する。具体的には、CPU31は、標準タイミング期間DTnを展開タイミング期間DTとして設定する。このように、CPU31は、各種パラメータを初期値に設定し、下方向フラグ及び上方向フラグをリセットする。なお、CPU31は、タイマにて計測した経過時間をリセットしてもよい。そして、CPU31は、処理をS110へ移行する。
【0050】
CPU31は、S110では、車体に作用する衝撃の展開対象方向成分の大きさが、エアバッグ52を展開ささせるための展開用信号を生成する必要がある程度に、相対的に大きいか否かを判定する。CPU31は、取得された検出値Gxと作動閾値Thxaとの比較結果に基づいて、展開用信号を生成する。CPU31は、本実施形態では、取得された検出値Sxがセーフィング閾値Thxcを超え(つまり、Sxの絶対値>Thxcの絶対値であり)、且つ、取得された検出値Gxが作動閾値Thxaを超える(つまり、Gxの絶対値>Thxaの絶対値である)場合に、車体に作用する衝撃の展開対象方向成分の大きさが相対的に大きいと判定する。
【0051】
ここでいう取得された検出値Gxとは、直近に取得された検出値Gxをいう。また、ここでいう作動閾値Thxa、セーフィング閾値Thxcは、直近(例えば、S70、又はS90、又はS100)にて設定された作動閾値Thxa、セーフィング閾値Thxcをいう。
【0052】
CPU31は、検出値Sxの絶対値>セーフィング閾値Thxcの絶対値であり、且つ、検出値Gxの絶対値>作動閾値Thxaの絶対値である場合に、車体に作用する衝撃の展開対象方向成分の大きさが相対的に大きい状況であると判定する。ここで、CPU31は、肯定判定される場合に処理をS130に移行し、否定判定される場合には処理をS10に移行してS10以降の処理を繰り返す。
【0053】
CPU31は、S120では、展開用信号を生成する。なお、本ステップでは、展開用信号はエアバッグECU10の外部には出力されない。
CPU31は、S130では、状況判定処理を実行する。状況判定処理は、予め定められた出力条件が満たされるか否かを判定する。CPU31は、判定結果として出力条件フラグをセット又はリセットする。出力条件フラグは、状況判定処理にて生成される情報であって、現在の状況がエアバッグ52を展開させる状況である場合にセットされ、現在の状況がエアバッグ52を展開させない状況である場合にリセットされる。なお、CPU31は、本処理とは別の処理として状況判定処理を実行してもよい。
【0054】
CPU31は、S140では、出力条件フラグを取得する。
CPU31は、続くS150では、出力条件フラグに基づいて、現在の状況において出力条件が満たされるか否かを判定する。ここで、CPU31は、出力条件が満たされると判定される場合に、処理をS160に移行する。一方で、CPU31は、出力条件が満たされないと判定された場合に、以上で本処理を終了する。
【0055】
CPU31は、S160では、展開用信号を、直近(例えば、S70、又はS90、又はS100)にて設定された展開タイミング期間DTに応じたタイミングで、エアバッグ作動装置15(すなわち、具体的には駆動回路51)に出力する。例えば、CPU31は、展開用信号が生成されてから、展開タイミング期間DTの経過後に、展開用信号を出力してもよい。CPU31は、以上で本処理を終了する。
【0056】
続いて、CPU31がS130にて実行する状況判定処理を、
図5のフローチャートに基づいて説明する。
CPU31は、S200では、物体検出センサ14から検出結果を取得する。検出結果には、上述のように、物体との距離、方位、相対速度、物体の形状等を示す情報が含まれていてもよい。
【0057】
CPU31は、続くS210では、衝突物体を検出する。例えば、CPU31は、本状況判定処理とは別の処理によって、繰り返し画像を取得して車両の周辺の物体を監視し、相対速度として0が検出された物体を衝突物体として認識してもよい。本ステップでは、CPU31は、パタンマッチング等によって、認識された衝突物体の種類を特定してもよい。CPU31は、少なくとも、人であるか否かを特定するものとする。
【0058】
CPU31は、S220では、展開不要情報を取得する。展開不要情報とは、予め定められた物体(以下、対象物体)によって予め定められた方向(以下、対象方向)の衝撃が生じた場合にエアバッグ52の展開を禁止するための情報であって、対象物体と対象方向とが対応づけられた情報である。展開不要情報はメモリ32に記憶されていてもよい。例えば、展開不要情報では、対象物体としての人と、対象方向としての下方向とが対応付けられている。
【0059】
CPU31は、S230では、展開不要情報に基づいて、予め定められた出力条件が満たされるか否かを判定する。ここでいう出力条件とは、S210にて検出された衝突物体が展開不要情報における対象物体と一致し、且つ、衝突物体による衝撃の方向が展開不要情報における対象方向と一致すること、が否定判定されることである。つまり、衝突物体が対象物体と一致し、且つ、衝突物体による衝撃の方向が対象方向と一致する場合は、出力条件が満たされない。つまり、本実施形態では、衝突物体が人であり、且つ、衝撃の方向が下方向である場合に、出力条件が満たされない。
【0060】
ここで、CPU31は、出力条件が満たされると判定された場合に処理をS240に移行する。そして、CPU31は、S240では、出力条件フラグをセットし、以上で本状況判定処理を終了する。出力条件フラグは、出力条件が満足される場合にセットされるフラグである。
【0061】
一方で、CPU31は、出力条件が満たされないと判定された場合に処理をS250に移行する。そして、CPU31は、S250では、出力条件フラグをリセットし、以上で本状況判定処理を終了する。
【0062】
[1-3.作動]
<段差への乗り上げや悪路走行等による衝撃>
例えば、
図6aに示すように、段差への乗り上げや悪路走行等による衝撃(すなわち、上方向の衝撃)が生じたとする。この場合、エアバッグECU10は、第2加速度センサ12による出力(例えば、
図6b)を信号処理部22によって
図6cに示すように平滑化する。
【0063】
そして、エアバッグECU10は、平滑後の検出値Gzに基づいて、検出値Gzが方向閾値Tzを超えてから(例えば、時刻t11から)方向判定時間以内に、新たに取得された検出値Gzが、検出値Gzが方向閾値Tzを超えたときの符号と同じ符号で判定値Tを超えた場合に、上下方向において相対的に大きい衝撃が、その符号が示す方向に最初に生じたと判定する。
【0064】
図6dに示す例では、検出値Gzが上方向閾値Tzuを超え、且つ、上方向閾値Tzuを超えてから方向判定時間以内に該上方向閾値Tzuを超えた符号と同じ正の符号の上判定値Tuを超えたとき(例えば、時刻t12)に、エアバッグ52が展開され難い方向に作動閾値Thxaが変更される。つまり、作動閾値Thxaが上側作動閾値Thxauに変更される。
【0065】
なお、本実施形態では、図示しないが、セーフィング閾値Thxcも上側セーフィング閾値Thxcuに変更される。これにより、段差への乗り上げや悪路走行等による衝撃が生じた場合に、誤ってエアバッグ52が展開することが抑制される。
【0066】
<潜り込みによる衝撃>
例えば、
図7aに示すように、潜り込みによる衝撃が生じたとする。この場合、エアバッグECU10は、第2加速度センサ12による出力(例えば、
図7b)を信号処理部22によって
図7cに示すように平滑化する。そして、エアバッグECU10は、平滑後の検出値Gzに基づいて、検出値Gzが方向閾値Tzを超えてから(例えば、時刻t21から)から方向判定時間以内に、新たに取得された検出値Gzが、検出値Gzが方向閾値Tzを超えたときの符号と同じ符号で判定値Tを超えた場合に、上下方向において相対的に大きい衝撃が、その符号が示す方向に最初に生じたと判定する。
【0067】
図7dに示す例では、検出値Gzが下方向閾値Tzdを超え(例えば、時刻t21)、且つ、下方向閾値Tzdを超えてから方向判定時間以内に該下方向閾値Tzdを超えた符号と同じ負の符号の下判定値Tudを超えたとき(例えば、時刻t23)に、エアバッグ52が展開され易い方向に作動閾値Thxaが変更される。つまり、作動閾値Thxaが下側作動閾値Thxadに変更される。
【0068】
なお、本実施形態では、図示しないが、セーフィング閾値Thxcも下側セーフィング閾値Thxcdに変更される。これにより、車両の潜り込み等において、誤ってエアバッグ52が展開されない、ということが抑制される。つまり、車両の潜り込み等において、適切にエアバッグ52が展開される。
【0069】
[1-4.効果]
以上詳述した第1実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1a)エアバッグECU10は、上下方向において相対的に大きい衝撃が最初に生じた方向が下方向であると判定されたときに、下方向であると判定されなかったときよりもエアバッグ52が展開し易いように、作動閾値Thxaを変更する。具体的には、エアバッグECU10は、絶対値を小さくするように作動閾値Thxaを変更する。これにより、例えば、トラック等といった大型車両下への潜り込みによって最初に下方向の相対的に大きい衝撃が車体に生じた場合に、エアバッグ52を展開し易くすることができる。結果として、エアバッグ52の作動制御を精度よく行うことができる。
【0070】
また、エアバッグECU10は、上下方向において相対的に大きい衝撃が最初に生じた方向が上方向であると判定されたときに、上方向であると判定されなかったときよりもエアバッグ52が展開し難いように、作動閾値Thxaを変更する。具体的には、絶対値を大きくするように作動閾値Thxaが変更される。これにより、例えば、乗り上げ、悪路走行等によって最初に上方向の相対的に大きい衝撃が生じた場合に、エアバッグ52が誤って展開することを抑制することができる。結果として、エアバッグ52の作動制御を精度よく行うことができる。
【0071】
(1b)エアバッグECU10は、検出値Gzが判定値Tを最初に超えたときに、検出値Gzに基づく方向を、上下方向において車体に作用する衝撃の方向として特定する。具体的には、エアバッグECU10は、検出値Gzが判定値Tよりも絶対値が小さい方向閾値Tzを超えたか否かを判定し、検出値Gzが方向閾値Tzを超えてから予め定められた方向判定時間以内に、検出値Gzが判定値Tを超えたときに、検出値Gzが判定値Tを最初に超えたと判定する。
【0072】
なお、エアバッグECU10は、上述のように、検出値Gzが方向閾値Tzを超え、且つ、方向閾値Tzを超えたときから方向判定時間以内に該方向閾値Tzを超えた側と同じ側(すなわち、同じ符号)の判定値Tを超えた場合に、衝撃の方向を特定している。例えば、
図8に示すように、仮に検出値Gzが判定値Tのみで判定されると、車体に作用する衝撃が上方向に加わったが、検出値Gzが上判定値Tuを超えずに下判定値Tdを超えた場合には、最初に車体に作用する衝撃の方向は上方向であるにも拘わらず、衝撃の方向が下方向であると誤判定されるおそれがある。
【0073】
本実施形態では、方向閾値Tzと判定値Tという2段階の閾値が設けられている。また方向閾値Tzを超えてから方向判定時間以内に判定値Tを超えること、という時間的制限が設けられている。これにより、判定値Tを超えるような相対的に大きい衝撃が最初に生じた方向が精度よく特定される。なお、方向判定時間は、実験等により適宜定められてもよい。
【0074】
(1c)第1加速度センサ11は、上下方向に直交する前後方向及び左右方向のうち少なくとも一方の衝撃を検出する。また、第1加速度センサ11による検出方向(すなわち、前後方向)の一方(例えば、後方向)は、展開対象方向に含まれる。第1加速度センサ11による検出方向に展開対象方向が含まれるので、第1加速度センサ11による検出値Gxに基づいて、エアバッグ52の展開の要否を精度よく判定することができる。
【0075】
(1d)エアバッグECU10は、S20において、第1検出値が展開対象方向の検出値であると判定される場合に、S60、S80にて上下方向において車体に作用する衝撃の方向を判定する。また、エアバッグECU10は、S20において、第1検出値が展開対象方向の検出値でないと判定される場合に、S60、S80にて衝撃の方向を判定しない。これにより、必要とされる場合にのみ判定が実行されるので、処理負荷を軽減することができる。
【0076】
また、エアバッグECU10は、S20において、第1検出値が展開対象方向の検出値でないと判定される場合に、S70、S90、S100にて、判定された衝撃の方向に基づく作動閾値Thxaの変更を実行しない。これにより、必要とされる場合にのみ作動閾値が変更されるので、処理負荷を軽減することができる。
【0077】
(1e)エアバッグECU10は、S210では、物体検出センサ14による検出結果に基づいて、衝突物体を検出し、S220では展開不要情報を取得する。展開不要情報は、予め定められた対象物体によって予め定められた対象方向の衝撃が生じた場合にエアバッグ52の展開を禁止するための情報であって、少なくとも対象物体と対象方向とが対応づけられた情報である。エアバッグECU10は、S150では、展開不要情報に基づいて、衝突物体が対象物体と一致し、且つ、衝突物体による衝撃の方向が対象方向と一致すること、が否定判定されることを出力条件として、出力条件が満たされるか否かを判定する。エアバッグECU10は、S160では、出力条件が満たされる場合に展開用信号を出力し、出力条件が満たされない場合に展開用信号を出力しない。これにより、展開用信号が生成されたとしても、衝突の状況に応じて、生成された展開用信号の出力を禁止することができる。
【0078】
また、展開不要情報では、人を対象物体とし、下方向を対象方向として、人と下方向とが対応づけられている。これにより、例えば、人が車両に衝突して車体に乗り上げて下方向の衝撃が加わるような場合に、エアバッグ52の展開を禁止することができる。なお、展開不要情報において対応付けられる対象物体と対象方向とは、任意に設定されてよい。これにより、例えばボンネット上に物体が落下してきた場合において、物体の種類に応じて、エアバッグ52を展開させたり、展開を禁止したりすることができる。
【0079】
(1f)エアバッグECU10は、S70、S90、S100では、S60、S80によって判定された車体に作用する衝撃の方向に基づいて、展開用信号をエアバッグ作動装置15(すなわち、駆動回路51)に出力するタイミングを変更するための展開タイミング期間DTを生成する。エアバッグECU10は、展開タイミング期間DTに基づいて展開用信号を出力する。エアバッグECU10は、タイマ制御等によって、例えば、展開用信号が生成されてから展開タイミング期間DTの経過後に、展開用信号を出力してもよい。
【0080】
図9に示すように、通常衝突時とトラック下潜り込み衝突時とでは、衝突と判定された時点(すなわち、展開用信号が生成された時点)からエアバッグ52を展開させる時点までの期間について、適切な長さが異なる。本実施形態では、例えば、車体に作用する相対的に大きい衝撃の方向が下方向あると判定された場合は、トラック下等への潜り込みによる衝突と判定し、正面方向での通常衝突時の展開タイミング期間DT(すなわち、標準タイミング期間DTn)とは異なる展開タイミング期間DT(すなわち、下側タイミング期間DTd)とする。これにより、適切なタイミングで展開用信号が出力され、適切なタイミングでエアバッグ52を展開させることができる。
【0081】
なお、上述の実施形態において、エアバッグECU10がエアバッグ制御装置に相当し、マイコン30が作動判定部、出力部、方向判定部、変更部、衝突物体特定部、出力条件部、タイミング部、に相当する。S110、S120が作動判定部としての処理に相当し、S160が出力部としての処理に相当し、S60、S65、S80、S85が方向判定部としての処理に相当する。S90が変更部としての処理に相当し、S210が衝突物体特定部としての処理に相当し、S220が対応取得部としての処理に相当し、S150が出力条件部としての処理に相当し、S70、S90、S100がタイミング部としての処理に相当する。第1加速度センサ11が第1検出装置に相当し、第2加速度センサ12が第2検出装置に相当し、検出値Gxが第1検出値に相当し、検出値Gzが第2検出値に相当する。検出値Gxと作動閾値Thxaとの比較結果が比較結果に相当する。展開タイミング期間DTがタイミング期間に相当する。作動閾値Thxaが作動閾値に相当する。
【0082】
[1-5.変形例]
(変形例1-1)
上述の実施形態では、エアバッグECU10(すなわち、CPU31)は、検出値Gzが方向閾値を超えてから予め定められた方向判定時間以内に、検出値Gzの微分値が0になり、且つ、微分値が0になったときの検出値Gzが判定値Tを超えている場合に、第2検出値が判定値を最初に超えたと判定してもよい。
【0083】
この場合、
図10に示すフローチャートのように、
図4に示すフローチャートにおいて以下に説明するS35を追加してもよい。すなわち、CPU31は、S30にて肯定判定されて移行するS35では、検出値Gzが取得される毎に検出値Gzの微分値を生成し、生成した微分値が0であるか否かを判定してもよい。そして、CPU31は、検出値Gzの微分値が0になるまで繰り返し微分値を計算し、微分値が0となった場合に処理をS40に移行してもよい。
【0084】
[2.第2実施形態]
[2-1.第1実施形態との相違点]
第2実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0085】
上述した第1実施形態では、検出値Gzに基づいて、上下方向において車体に相対的に大きい衝撃が最初に作用した方向を特定し、その方向に応じて作動閾値Thxaを予め設定された値に変更した。これに対し、第2実施形態では、上下方向において車体に相対的に大きい衝撃が最初に作用した方向を、2次元の判定マップ42に基づいて特定する点で、第1実施形態と相違する。
【0086】
なお、第1加速度センサ11は、上下方向に直交する方向であって、前後方向及び左右方向のうち少なくとも一方を第1検出方向として、第1検出方向において車体に作用する衝撃を第1検出値として検出する。本実施形態では、展開対象方向を含む前後方向を第1検出方向とする。検出値Gxが第1検出値に相当する。第2加速度センサ12は、第1検出方向に直交する第2検出方向である上下方向において、車体に作用する衝撃を第2検出値として検出する。本実施形態では、検出値Gzが第2検出値に相当する。
【0087】
上述の相違点に伴って、エアバッグECU10は、
図11aに示すように、第1検出値(すなわち、検出値Gx)及び第2検出値(すなわち、検出値Gz)に基づいて、車体に作用する衝撃の大きさ、及び車体に作用する衝撃の第1検出方向成分の大きさ(すなわち、第1検出値である検出値Gx)のうち、少なくとも一方を検出する。
【0088】
本実施形態では、エアバッグECU10は、車体に作用する衝撃の大きさを検出する。具体的には、検出値Gx及び検出値Gzの合成加速度Gcを車体に作用する衝撃の大きさとして検出する。また、エアバッグECU10は、
図11aに示すように、第1検出方向(すなわち、前後方向)及び第2検出方向(すなわち、上下方向)を2軸とする検出平面上で、車体に作用する衝撃の方向が第1検出方向(すなわち、前後方向)に対してなす角度である衝撃角度GΘを検出する。衝撃角度GΘは、上下方向における上向側を正、下向側を負として表される。
【0089】
なお、変形例2-2にて後述するように、エアバッグECU10は、
図11b、
図11c、
図11dに示すように、衝撃角度GΘのみに基づいて、衝撃角度GΘが下方向衝撃範囲に含まれる場合に、上下方向において車体に作用した衝撃の方向が下方向であると特定してもよい。これに対し、本実施形態では判定マップ42に基づいて、上下方向において車体に作用した衝撃の方向を判定する。
【0090】
<判定マップ>
判定マップ42は、衝撃角度GΘと、衝撃の大きさである合成加速度Gc及び衝撃の第1検出方向成分の大きさである検出値Gxのうちの一方と、を2軸とする2次元のマップであって、上下方向において車体に作用する衝撃の方向を判定するためのマップである。本実施形態では、
図12に示すように、衝撃角度GΘと合成加速度Gcとを2軸とする2次元マップを判定マップ42として用いる。判定マップ42は、予めメモリ32に記憶されていてもよいし、エアバッグシステム1が無線通知装置又は有線通信装置を備える場合は、無線又は有線通信によってエアバッグECU10の外部から取得されてもよい。
【0091】
判定マップ42には、複数の判定領域が設定されている。複数の判定領域は、少なくとも、衝撃の方向が上方向であると判定する上方向領域と、衝撃の方向が下方向であると判定する下方向領域と、を含む。また、複数の判定領域は、上方向でも下方向でもないと判定する、上方向領域及び下方向領域以外の領域を含む。上方向領域を他の領域と区分けするマップを上側マップMu、下方向領域を他の領域と区分けするマップを下側マップMdともいう。
【0092】
なお、上方向領域、下方向領域、上方向領域及び下方向領域以外の領域のそれぞれに、予め定められた作動閾値Thxaが予め対応づけられている。閾値対応情報は、それぞれの判定領域と、対応する作動閾値とを記憶する情報である。閾値対応情報は、判定マップ42と共に予めメモリ32に記憶されていてもよいし、無線又は有線通信によってエアバッグECU10の外部から取得されてもよい。
【0093】
[2-2.処理]
次に、第2実施形態のCPU31が実行する処理について、
図13のフローチャートを用いて説明する。なお、
図13におけるS10-S20、S110-S160の処理は、
図4における同じステップの処理と同様である。
【0094】
CPU31は、S20にて肯定判定されて移行するS35では、S10にて取得された、検出値Gx、検出値Gzに基づいて、合成加速度Gcと、衝撃角度GΘと、それぞれ(1)式、(2)式に基づいて算出する。本実施形態では、衝撃角度GΘは、
図2におけるx-z平面においてx軸を中心(すなわち、0°)とした角度で表される。合成加速度Gcは、検出値Gx及び検出値Gzを合成した大きさとで表される。
【0095】
Gc=(Gx2 + Gz2)1/2 (1)式
GΘ=tan-1(Gz/Gx) (2)式
CPU31は、続くS45では、S20にて、車体に作用した衝撃が展開対象方向(すなわち、後方向)側であると判定した後に、該車体に作用した衝撃が展開対象方向に沿う方向(すなわち、第1検出方向としての前後方向)に対して所定の角度範囲内に含まれるか否かを判定する。つまり、エアバッグ52によって衝撃が抑制される方向において、衝撃が検出されたか否かを判定する。以下では、展開対象方向に沿う方向に対して所定の角度範囲を展開対象範囲ともいう。CPU31は、車体に作用した衝撃の方向が、展開対象範囲内であると判定されると処理をS100に移行し、所定角度範囲外であると判定されると処理をS55に移行する。
【0096】
具体的には、CPU31は、衝撃角度GΘの絶対値が、予め定められた展開対象角度αを超えているか否かを判定する。CPU31は、衝撃角度GΘの絶対値が、展開対象角度α未満である場合に、車体に作用した衝撃が展開対象方向に沿う方向に対して所定の角度範囲内であり、エアバッグ52が機能する衝撃の方向であると判定する。-α°≦衝撃角度GΘ≦+α°である場合に、衝撃角度GΘの絶対値が、展開対象角度α未満であると判定される。展開対象角度αは、例えば30°等であってもよいが、これに限定されるものではなく、任意に設定され得る。
【0097】
CPU31は、S55では、判定マップ42を取得する。本実施形態では、判定マップ42は、衝撃角度GΘと合成加速度Gcとを軸とする2次元マップである。
CPU31は、続くS65では、判定マップ42において、座標(GΘ、Gc)が、上方向領域内に含まれるか否かを判定する。本実施形態では、
図12に示すように、判定マップ42において、衝撃角度GΘが正となる範囲であって斜線で示す範囲が上方向領域として予め定められている。
【0098】
ここで、CPU31は、判定マップ42において座標(GΘ、Gc)が上方向領域内に含まれると判定された場合に処理をS70に移行させ、続くS70にて、上述の実施形態において車体に作用した衝撃が上方向であると判定された場合と同様に、作動閾値Thxa、セーフィング閾値Thxc、展開タイミング期間DT、各種フラグを設定し、処理をS110に移行する。
【0099】
一方で、CPU31は、判定マップ42において、座標(GΘ、Gc)が上方向領域内に含まれないと判定された場合に処理をS85に移行させる。
CPU31は、S85では、判定マップ42において座標(GΘ、Gc)が下向領域内に含まれるか否かを判定する。本実施形態では、
図12に示すように、判定マップ42において、衝撃角度GΘが負となる範囲であって斜線で示す範囲が下方向領域として予め定められている。
【0100】
ここで、CPU31は、判定マップ42において座標(GΘ、Gc)が下向領域内に含まれると判定された場合に処理をS90に移行させ、続くS90にて、上述の実施形態において車体に作用した衝撃が下方向であると判定された場合と同様に、作動閾値Thxa、セーフィング閾値Thxc、展開タイミング期間DT、各種フラグを設定し、処理をS110に移行する。
【0101】
また、CPU31は、判定マップ42において、座標(GΘ、Gc)が上方向領域内及び下方向領域に含まれないと判定された場合に、処理をS100に移行させる。CPU31は、S100では、上述の実施形態において車体に作用した衝撃が上方向でも無く下方向でも無いと判定された場合と同様に、作動閾値Thxa、セーフィング閾値Thxc、展開タイミング期間DT、各種フラグを設定し、処理をS110に移行する。
【0102】
そして、CPU31は、上述の実施形態と同様に、S110以降の処理を実行する。
[2-3.作動]
判定マップ42に基づくエアバッグECU10の作動を以下に説明する。なお、以下の説明において、衝撃角度GΘの大きさというときは、衝撃角度GΘの絶対値の大きさをいうものとする。
【0103】
(1)範囲1
範囲1は、座標(GΘ、Gc)のうちのGΘが-α°≦衝撃角度GΘ≦+α°となる範囲である。範囲1では、合成加速度Gcの大きさに拘わらず、車体に作用する衝撃の方向は、後方向(すなわち、上方向でもなく且つ下方向でもない)と判定される。なお、上述の処理では、判定マップ42を用いることなく、衝撃角度GΘの大きさに基づいて衝撃角度GΘが範囲1内であると判定される。
【0104】
衝撃角度GΘが範囲1内であると判定された場合に、車体に作用する衝撃の方向は、上方向でも下方向でもないと判定される。つまり、作動閾値Thxaは標準的な値(すなわち、標準作動閾値Thxan)に変更される。これにより、例えば、前方の車両に衝突するような通常の衝突時には、標準的な作動閾値Thxaに基づいて、エアバッグ52の作動制御が適切に実行される。
【0105】
(2)範囲2
範囲2は、座標(GΘ、Gc)のGΘが正であり、+α°<衝撃角度GΘ<+90°となる範囲である。範囲2では、乗り上げや悪路走行等による衝撃が含まれると推定される。また、衝撃角度GΘが大きくなるほど、前方の車両に衝突するような通常の前後方向の衝突ではない衝突による衝撃であると想定される。これらの衝撃は、エアバッグ52が展開し難い方向に作動閾値Thxaを変更すべき衝撃であると想定される。
【0106】
判定マップ42では、上方向領域の下端421が、+α°<衝撃角度GΘ<+90°となる範囲において、衝撃角度GΘが増加するほど下がるように設定される。上方向領域の下端とは、上方向領域を他の領域と区分けする境界のうち、合成加速度Gcが小さい側の境界をいう。
【0107】
このような判定マップ42によれば、合成加速度Gcが所定の大きさ(例えば、Gc1)以下である場合、衝撃角度GΘが大きくなるほど、合成加速度Gcの大きさに拘わらず、上方向領域内であると判定され易くなる。
【0108】
つまり、エアバッグ52が展開し難い方向に作動閾値Thxaが変更される。例えば、作動閾値Thxaが下側作動閾値Thxadに変更されてもよい。これにより、仮に下端422のように上方向領域の下端が衝撃角度GΘの増加に伴って下がらず一定値であるような判定マップを用いる比較例よりも、検出された衝撃角度GΘの大きさが相対的に大きい場合において、エアバッグ52が誤って作動することが抑制される。
【0109】
(3)範囲3
範囲3は、座標(GΘ、Gc)のうちのGΘが負であり、-α°>衝撃角度GΘ>-β°(すなわち、|α|<|β|)となる範囲である。範囲3では、潜り込みや、相対的に大きい落下物(以下、巨大落下物)による衝撃が含まれると推定される。これらの衝撃は、エアバッグ52が展開し易い方向に作動閾値Thxaを変更すべき衝撃であると想定される。
【0110】
判定マップ42では、下方向領域の下端423が、-α°>衝撃角度GΘ>-β°となる範囲において、衝撃角度GΘの大きさの増加に応じて下がるように設定される。下方向領域の下端とは、下方向領域を他の領域と区分けする境界のうち、合成加速度Gcが小さい側の境界をいう。
【0111】
このような判定マップ42によれば、合成加速度Gcが所定の大きさ(例えば、Gc2)以下であるとき、衝撃角度GΘが負の値である場合は、衝撃角度GΘの絶対値が大きくなるほど、合成加速度Gcの大きさに拘わらず、下方向領域内であると判定され易くなる。
【0112】
つまり、エアバッグ52が展開し易い方向に作動閾値Thxaが変更される。これにより、仮に下端424のように、下方向領域の下端が、負の値である衝撃角度GΘの絶対値の増加に伴って下がらず一定値であるような判定マップを用いる比較例よりも、検出された衝撃角度GΘの絶対値が相対的に大きい場合において、エアバッグ52がより展開され易くなる。
【0113】
(4)範囲4は、座標(GΘ、Gc)のGΘが負であり、-β°>衝撃角度GΘ>-90°となる範囲である。範囲4では、鉛直方向上方からの落下物による衝撃が推定される。衝撃角度GΘの大きさが所定角度βの大きさよりも大きくなるということは、落下物による衝撃の後方向成分が相対的に小さくなるということである。つまり、後方向(すなわち、展開対象方向)の衝撃に対して乗員の安全性を高める効果を有する前突用のエアバッグ52を作動させても、効果が限定的である(すなわち、低減される)と想定される。
【0114】
本実施形態の判定マップ42では、下方向領域の下端425が、-β°>衝撃角度GΘ>-90°となる範囲において、衝撃角度GΘの絶対値の増加にともなって上がるように、設定される。
【0115】
このような判定マップ42によれば、衝撃角度GΘが負の値である場合は、衝撃角度GΘの絶対値が大きくなるほど、下方向領域内でないと判定され易くなり、エアバッグ52がより展開し易い方向に作動閾値Thxaが変更されない。これにより、例えば下端426のように、下方向領域の下端が負の値である衝撃角度GΘの絶対値の増加に伴って下がらず一定値であるような判定マップを用いる比較例よりも、検出された衝撃角度GΘの絶対値が相対的に大きい場合において、エアバッグ52が不必要に展開されることを抑制することができる。つまり、誤って展開されることを抑制することができる。
【0116】
[2-4.効果]
以上詳述した第2実施形態によれば、前述した第1実施形態の効果(1a)を奏し、さらに、以下の効果を奏する。
【0117】
(2a)エアバッグECU10は、検出された衝撃角度GΘと合成加速度Gcとに基づいて、判定マップ42を用いて、上下方向において車体に作用する衝撃の方向を判定する。これにより、エアバッグECU10は、2次元のパラメータに基づく判定マップ42を用いて上下方向において車体に作用する衝撃の方向を精度よく特定するため、種々の状況においてエアバッグ52の作動制御を精度よく実行することができる。
【0118】
(2b)エアバッグECU10は、検出された衝撃角度GΘと合成加速度Gcとに基づいて、判定マップ42上の判定領域を特定し、特定された判定領域が下方向領域であると特定されたときに、車体に作用する衝撃の方向が下方向であると判定する。エアバッグECU10は、車体に作用する衝撃の方向が下方向であると判定されたときは、下方向であると判定されなかったときよりもエアバッグが展開し易い方向に作動閾値Thxaを変更する。つまり、エアバッグECU10は、絶対値を小さくする方向に作動閾値Thxaを変更する。これにより、(2a)と同様の効果を得ることができる。
【0119】
なお、エアバッグECU10は、少なくとも、下方向領域であるか否かを特定して下方向であると判定されたときにエアバッグが展開し易い方向に作動閾値Thxaを変更するものであってもよい。更に、エアバッグECU10は、上方向領域であるか否かを特定して上方向であると判定されたときにエアバッグが展開し難い方向に作動閾値Thxaを変更するものであってもよい。更に、エアバッグECU10は、下方向領域及び上方向領域以外の領域であると判定されたときに、作動閾値Thxaを標準的な値又は初期値に変更するものであってもよい。
【0120】
(2c)エアバッグECU10は、S70、S90、S100では、検出された衝撃角度GΘと合成加速度Gcとに基づいて、閾値対応情報を用いて作動閾値Thxaを設定してもよい。閾値対応情報は、それぞれの判定領域と予め定められた作動閾値Thxaとを対応付けた情報である。本実施形態では、閾値対応情報において、下方向領域に対応付けられた作動閾値Thxa(例えば、下側作動閾値Thxad)は、下方向領域以外の判定領域に対応付けられた作動閾値Thxa(例えば、上側作動閾値Thxau、又は、標準作動閾値Thxan)よりも、エアバッグ52が展開し易い値に設定されている。エアバッグ52が展開し易い値とは、絶対値が相対的に小さい値であることをいう。これにより、エアバッグECU10は、閾値対応情報によって、判定マップ42の各領域に応じて任意に作動閾値Thxaを設定できるため、判定マップ42及び閾値対応情報を用いて、エアバッグ52の作動制御を精度よく緻密に行うことができる。
【0121】
[2-4.変形例]
(変形例2-1)
変形例2-1では、第2実施形態において、範囲1すなわち展開対象範囲は、第1検出方向としての前後方向に対して非対称であってもよい。例えば、判定マップ42において、α°に代えて、αd°、αu°を展開対象角度として、S20において-αd°≦衝撃角度GΘ≦+αu°(|αd|≠|αu|)である場合に、展開対象方向(すなわち、後方向)の衝撃が生じたと判定されてもよい。
【0122】
(変形例2-2)
変形例2-2では、第2実施形態において、判定マップ42に代えて、
図14に示す判定マップ42aが用いられてもよい。範囲1は、座標(GΘ、Gc)のうちのGΘが-α°≦衝撃角度GΘ≦+α°となる範囲(以下、後方向衝撃範囲)である。範囲2は、座標(GΘ、Gc)のGΘが、+α°<衝撃角度GΘ<+90°となる範囲(以下、上方向衝撃範囲)である。範囲5は、座標(GΘ、Gc)のGΘが-90°<衝撃角度GΘ<-α°となる範囲(以下、下方向衝撃範囲)である。エアバッグECU10は、例えば、座標(GΘ、Gc)が下方向衝撃範囲に含まれる場合に、車体に作用した衝撃が下方向であると判定してもよい。エアバッグECU10は、更に、座標(GΘ、Gc)が上方向衝撃範囲に含まれる場合に、車体に作用した衝撃が上方向であると判定してもよいし、座標(GΘ、Gc)が後方向衝撃範囲に含まれる場合に、車体に作用した衝撃が後方向(すなわち、展開対象方向)であると判定してもよい。
【0123】
(変形例2-3)
変形例2-3では、
図12に示す判定マップ42に代えて、
図15に示す判定マップ42bを用いる。判定マップ42bは、衝撃角度GΘと、衝撃の大きさの第1検出方向成分の大きさである検出値Gxと、を2軸とする2次元マップである。本実施形態では、例えば、
図13のフローチャートのS65~S100において、合成加速度Gcが検出値Gxに置換されてもよい。また、S35において合成加速度Gcの算出が省略されてもよい。
【0124】
判定マップ42bに基づくエアバッグECU10の作動を以下に説明する。なお、以下では、検出値Gxを後方向加速度Gxとも記載する。
(1)範囲1
範囲1は、判定マップ42と同様に、座標(GΘ、Gx)のGΘが-α°≦衝撃角度GΘ≦+α°となる範囲である。範囲1では、後方向加速度Gxの大きさに拘わらず、車体に作用する衝撃の方向は、後方向(すなわち、上方向でもなく且つ下方向でもない)と判定される。なお、上述の処理では、判定マップ42を用いることなく、衝撃角度GΘの大きさに基づいて衝撃角度GΘが範囲1内であると判定される。
【0125】
衝撃角度GΘが範囲1内であると判定された場合に、車体に作用する衝撃の方向は、上方向でも下方向でもないと判定される。つまり、作動閾値Thxaは標準的な値(例えば、標準作動閾値Thxan)に変更される。
【0126】
(2)範囲2
範囲2は、座標(GΘ、Gx)のうちGΘが正であり、+α°<衝撃角度GΘ<+90°となる範囲である。範囲2では、乗り上げや悪路走行等による衝撃が含まれると推定される。衝撃角度GΘが大きくなるほど、前後方向の衝突ではないと想定される。つまり、乗り上げや悪路走行等といった、エアバッグ52が展開し難い方向に作動閾値Thxaを変更すべき衝突であると想定される。
【0127】
本実施形態の判定マップ42bでは、範囲2では、判定マップ42と同様に、上方向領域の下端431が、+α°<衝撃角度GΘ<+90°となる範囲において、衝撃角度GΘが増加するほど下がるように設定される
これにより、仮に下端432のように上方向領域の下端が衝撃角度GΘの増加に伴って下がらず一定値であるような判定マップを用いる比較例よりも、検出された衝撃角度GΘの大きさが相対的に大きい場合において、上方向領域内であると判定され易くなる。つまり、エアバッグ52が展開し難い方向に作動閾値Thxaが変更され易くなる。結果として、エアバッグ52が誤って作動することが抑制される。
【0128】
(3)範囲5
範囲5は、座標(GΘ、Gx)のうちGΘが負であり、-α°>衝撃角度GΘ>-90°となる範囲である。範囲5では、潜り込みや巨大落下物による衝撃が含まれると推定される。ただし、衝撃角度GΘの大きさが大きくなるほど、車体に作用する衝撃の前後方向成分(すなわち、具体的には後方向成分)の大きさは相対的に小さくなるので、第1加速度センサ11による衝突検知が困難となる。
【0129】
判定マップ42bでは、下方向領域の下端433が、-α°>衝撃角度GΘ>-90°となる範囲において、衝撃角度GΘの大きさの増加に応じて下がるように設定される。
このような判定マップ42bによれば、後方向加速度Gxが所定の大きさ(例えば、Gx2)以下であるとき、衝撃角度GΘが負の値である場合は、衝撃角度GΘの絶対値が大きくなるほど、後方向加速度Gxの大きさに拘わらず、下方向領域内であると判定され易くなる。つまり、エアバッグ52が展開し易い方向に作動閾値Thxaが変更され易くなる。
【0130】
これにより、仮に下端434のように、下方向領域の下端が、負の値である衝撃角度GΘの絶対値の増加に伴って下がらず一定値であるような判定マップを用いる比較例よりも、検出された衝撃角度GΘの絶対値が相対的に大きい場合において、エアバッグ52がより展開され易くなる。
【0131】
なお、判定マップ42bでは、下方向マップにおいて、後方向加速度Gxについての下限値Gxminが設定されている。これによって、エアバッグ52が作動すべきでない軽い落下物等の衝撃(例えば、検出値Gx<Gxminとなる衝撃)の場合に、過剰にエアバッグ52が作動することが抑制される。
【0132】
(変形例2-4)
変形例2-4では、
図16に示す判定マップ42bに代えて、
図16に示す判定マップ42cを用いる。判定マップ42cは、判定マップ42bと同様に、衝撃角度GΘと検出値Gxとを2軸とする2次元マップである。判定マップ42cにおいて、少なくとも1つの判定領域は、複数の分割領域を含んでいてもよい。本実施形態では、上方向領域は分割領域1~3を含み、下方向領域は分割領域4~6を含む。
【0133】
閾値対応情報は、それぞれの分割領域と予め定められた作動閾値Thxaとを対応づける。閾値対応情報において、例えば、下方向領域に含まれる分割領域4~6に対応付けられる作動閾値Thxaは、上方向領域に含まれる分割領域1~3に対応付けられる作動閾値Thxaよりも、エアバッグ52がより展開され易い値に設定されている。
【0134】
閾値対応情報において、上方向領域に含まれる分割領域1~3それぞれに対応付けられる作動閾値Thxaは、分割領域毎に異なっていてもよい。これにより、上方向の衝撃の状況に応じて、精緻に作動閾値Thxaを設定することができる。なお、分割領域1~3それぞれに対応付けられる作動閾値Thxaは、任意の値に設定されてよい。
【0135】
また、閾値対応情報において、下方向領域に含まれる分割領域4~6それぞれに対応付けられる作動閾値Thxaは、分割領域毎に異なっていてもよい。これにより、下方向の衝撃の状況に応じて、精緻に作動閾値Thxaを設定することができる。なお、分割領域4~6それぞれに対応付けられる作動閾値Thxaは、任意の値に設定されてよい。
【0136】
(変形例2-5)
上述の実施形態において、閾値対応情報は、判定領域又は分割領域と予め定められた作動閾値Thxaとを対応付ける情報であったが、閾値対応情報は座標ごとに作動閾値を対応づける情報であってもよい。つまり、閾値対応情報は、それぞれの座標(GΘ、Gc)と予め定められた作動閾値Thxaとを対応付ける情報であってもよい。又は、閾値対応情報は、それぞれの座標(GΘ、Gx)と予め定められた作動閾値Thxaとを対応付ける情報であってもよい。これにより、衝撃の状況に応じて、より精緻に作動閾値Thxaを設定することができる。
【0137】
(変形例2-6)
上述の実施形態において、閾値対応情報は、それぞれの座標(GΘ、Gc)と、予め定められた作動閾値Thxa(例えば、標準作動閾値Thxanといった任意の所定値)に対する補正値とを対応付ける情報であってもよい。補正値は、絶対値であってもよいし、割合を表す値であってもよい。
【0138】
[3.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0139】
(3a)上述の実施形態において、エアバッグECU10では、信号処理部21~23は、マイコン30外部の回路であったが、マイコン30内部の回路であってもよく、マイコン30にてCPU31が実行するプログラム41によって実行されるものであってもよい。
【0140】
(3b)上述の実施形態において、信号処理部21~23はLPFであったが、信号処理部21~23は、1階積分を実行するものであってもよいし、2階積分を実行するものであってもよい。そして、CPU31は、LPF処理後の上述の検出値Gx及び上述の検出値Gzに代えて、第1加速度センサ11の検出値、第2加速度センサ12の検出値の1階積分値(すなわち、速度)、又は、第1加速度センサ11の検出値、第2加速度センサ12の検出値の2階積分値(すなわち、移動距離)を用いて処理を実行してもよい。この場合、第1加速度センサ11の検出値の1階積分値又は2階積分値が第1検出値に基づく値に相当する。また、第2加速度センサ12の検出値の1階積分値又は2階積分値が第2検出値に基づく値に相当する。
【0141】
(3c)上述の実施形態において、エアバッグECU10は、展開タイミング期間DTを変更せず、予め定められた固定値を展開タイミング期間DTとして常に用いてもよい。例えば、エアバッグECU10は、出力条件が満たされる場合に直ちに展開用信号が出力されるように、展開タイミング期間DTを0に設定してもよい。
【0142】
(3d)上述の実施形態において、エアバッグECU10は、第1検出値としての検出値Gxと第2検出値としての検出値Gzとの比率に基づいて、車体に作用する衝撃の方向を特定してもよい。
【0143】
(3e)上述の実施形態において、エアバッグECU10は、例えば、物体検出センサ14によって、車両に接近する物体であって衝突物体となり得る接近物体を検出し、接近物体の検出結果に基づいて接近物体の種類を識別して作動閾値Thxaを変更してもよい。 検出結果には、少なくとも、物体との距離、方位、相対速度が含まれていてもよい。検出結果には、形状、大きさ、画像を示すデータが含まれても良い。
【0144】
エアバッグECU10は、例えば、車両と物体との距離に基づいて、時間の経過に応じて相対距離が短くなっている物体を接近物体として特定してもよい。エアバッグECU10は、接近物体の検出結果に基づいて、例えば、人であるか否か、動物であるか否か、予め定められた物体であるか否か、形状、及び大きさ等といった接近物体の特徴を特定し、これらの特徴うちの1つ又は複数の組み合わせに基づいて、作動閾値Thxaを設定してもよい。
【0145】
この場合、例えば、エアバッグECU10は、
図4に示すフローチャートにおいて、S20にて肯定判定された後に、物体検出センサ14による検出結果を取得し、車両から所定距離以内に接近物体が存在するか否かを判定し、接近物体が存在すると判定された場合に、標準作動閾値Thxan、上側作動閾値Thxau、下側作動閾値Thxadを接近物体の特徴に基づいて変更してもよい。エアバッグECU10は、標準作動閾値Thxan、上側作動閾値Thxau、下側作動閾値Thxadを上書きしてメモリ32等に記憶してもよい。エアバッグECU10は、この後に処理をS60に移行してもよい。これにより、以降において、S70、S90、S100では、接近物体の検出結果に基づく標準作動閾値Thxan、上側作動閾値Thxau、下側作動閾値Thxadが作動閾値Thxaとして設定される。
【0146】
(3f)上述の実施形態において、エアバッグECU10は、車体に作用する衝撃のうち左右方向の衝撃を検出する第3検出装置(例えば、加速度センサ)による第3検出値としての検出値Gyを取得し、検出値Gyをエアバッグ52の制御に用いてもよい。なお、第1加速度センサ11、第2加速度センサ12、及び第3検出装置に代えて、前後方向をx軸とし、左右方向をy軸とし、上下方向をz軸として、3軸において加速度を検出する3軸加速度センサが用いられてもよい。
【0147】
エアバッグシステム1は、車両の側面(すなわち、左右方向)から衝撃を受けたときに、ドアと乗員との隙間を埋めるように膨らむ側突用エアバッグを備えていてもよい。側突用エアバッグには、運転席側に配置される運転席用エアバッグと助手席側に配置される助手席用エアバッグとが含まれてもよい。
【0148】
車両がカーブ道路を走行しているときに、前方を走行する荷台の高いトラック等の後部に車両が追突して潜り込んだ場合、車体には、下方向及び前後方向に加えて左右方向の衝撃も作用する状況が生じ、側突用エアバッグを展開させるべき状況が生じ得る。エアバッグECU10は、このような場合に、左右方向における衝撃の方向及び大きさに応じて、側突用エアバッグの展開制御を実行してもよい。
【0149】
この場合、例えば、エアバッグECU10は、
図4に示すフローチャートにおいて、S80にて肯定判定された後に、検出値Gyを取得し、左右方向において車両に作用する衝撃の方向を特定してもよい。また、方向と共に大きさを特定してもよい。そして、エアバッグECU10は、運転席用及び助手席用エアバッグのうち、特定した方向を展開対象方向とするエアバッグを展開させるための作動閾値をエアバッグが展開し易い値に変更し、他方のエアバッグを展開させるための作動閾値をエアバッグが展開し難い値に変更し、処理をS90に移行してもよい。
【0150】
つまり、エアバッグECU10は、上述のようなカーブ道路を走行している時の潜り込みにおいて、左右方向のうち運転席側からの衝撃が車体に作用している場合には、運転席用エアバッグを展開させるための作動閾値をエアバッグが展開し易い値に変更し、助手席用エアバッグを作動させるための作動閾値をエアバッグが展開し難い値に変更する。これにより、運転席用エアバッグを速やかに展開させることができる一方、助手席用エアバッグの展開を抑制できるので車両から脱出する際に助手席側ドアからの脱出を容易とすることができる。
【0151】
(3g)上述の実施形態において、第1加速度センサ11、第2加速度センサ12、セーフィングセンサ13の衝撃の方向と検出値の符号との関係は、上述の関係に限定されるものではなく、適宜定められてよい。また、上述の実施形態において、加速度センサに代えて、応力検出センサが第1加速度センサ11、第2加速度センサ12として用いられてもよい。応力検出センサは、歪みゲージを用いて、前後方向又は上下方向に作用する衝撃の大きさに応じた応力信号を出力するものであってもよい。又は、加速度センサに代えて圧電フィルムが用いられてもよい。圧電フィルムは、フィルムに作用する力を電圧や歪に変換する。
【0152】
(3h)本開示に記載のエアバッグECU10及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載のエアバッグECU10及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載のエアバッグECU10及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されてもよい。エアバッグECU10に含まれる各部の機能を実現する手法には、必ずしもソフトウェアが含まれている必要はなく、その全部の機能が、一つあるいは複数のハードウェアを用いて実現されてもよい。
【0153】
(3i)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【0154】
(3j)上述したエアバッグECU10又はマイコン30の他、エアバッグECU10を構成要素とするシステム、エアバッグECU10又はマイコン30を機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した半導体メモリ、エアバッグの作動制御方法など、種々の形態で本開示を実現することもできる。
【符号の説明】
【0155】
1…エアバッグシステム、10…エアバッグECU、11…第1加速度センサ、12…第2加速度センサ、14…物体検出センサ、15…エアバッグ作動装置、30…マイコン、3 1…CPU、52…エアバッグ。
【要約】
【課題】エアバッグの作動制御を精度よく行う。
【解決手段】車両に搭載されるエアバッグ制御装置10は、作動判定部と、出力部と、方向判定部と、変更部と、を備える。作動判定部は、第1検出値と作動閾値とを比較し、比較結果に基づいてエアバッグ52を展開させる展開用信号を生成する。出力部は、予め定められた出力条件が満たされる場合に、展開用信号を出力する。方向判定部は、第2検出値に基づいて、上下方向において車体に作用する衝撃の方向を判定する。変更部は、車体に作用する衝撃の方向が下方向であると判定されたときに、下方向であると判定されなかったときよりも、エアバッグが展開し易い方向に作動閾値を変更する。
【選択図】
図1