(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】海域堆積盆地における二酸化炭素の地中貯留の適合性評価方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/02 20240101AFI20241024BHJP
【FI】
G06Q50/02
(21)【出願番号】P 2023182160
(22)【出願日】2023-10-23
【審査請求日】2023-10-23
(31)【優先権主張番号】2022116011903
(32)【優先日】2022-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517455720
【氏名又は名称】青▲島▼海洋地▲質▼研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】袁勇
(72)【発明者】
【氏名】陳建文
(72)【発明者】
【氏名】曹珂
(72)【発明者】
【氏名】梁杰
(72)【発明者】
【氏名】王建▲強▼
(72)【発明者】
【氏名】楊長清
(72)【発明者】
【氏名】李慧君
(72)【発明者】
【氏名】李清
(72)【発明者】
【氏名】張銀国
(72)【発明者】
【氏名】孫晶
【審査官】谷川 智秀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2022/149515(WO,A1)
【文献】特開2015-037760(JP,A)
【文献】特開2010-119962(JP,A)
【文献】特開2014-038039(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピューターが行う、海域堆積盆地における二酸化炭素の地中貯留の適合性評価方法であって、
必要指標体系を構築し必要指標体系に対して定量的分析を行うステップであって、前記必要指標体系は、一次必要指標及び二次必要指標を含み、海域堆積盆地における二酸化炭素の地中貯留の基本的な地質条件、工学的条件及び貯留容量の優劣を記述するためのものであり、前記一次必要指標は、貯留容量、地質条件及び工学的条件を含み、一次必要指標である貯留容量は、盆地の面積、地層の厚さ、貯留容量及び単位面積の貯留容量の4つの二次必要指標を含み、一次必要指標である地質条件は、探査度、百年間地震活動のマグニチュード、圧力係数及び地温勾配の4つの二次必要指標を含み、一次必要指標である工学的条件は、開発度、離岸距離及び水深の3つの二次必要指標を含むステップAと、
二次必要指標の重みを計算して、各二次必要指標の重要度を決定するステップであって、
最初に、必要指標体系の重み計算モデルを構築し、当該モデルは、重み層、一次必要指標層及び二次必要指標層を含み、一次必要指標層及び二次必要指標層に対して、対応する一次必要指標層集合A={A
1,A
2,A
3}、二次必要指標層集合A
1={B
1,B
2,B
3,B
4}、A
2={C
1,C
2,C
3,C
4}、A
3={D
1,D
2,D
3}を構築し、ここで、A
1、A
2、A
3は、それぞれ、3つの一次必要指標である貯留容量、地質条件及び工学的条件を表し、B
1、B
2、B
3及びB
4は、それぞれ、一次必要指標である貯留容量の4つの二次必要指標を表し、C
1、C
2、C
3及びC
4は、それぞれ、一次必要指標である地質条件の4つの二次必要指標を表し、D
1、D
2、D
3は、それぞれ、一次必要指標である工学的条件の3つの二次必要指標を表し、
各集合の判断行列を作成し、集合Aの判断行列はUであり、集合A
1の判断行列はXであり、集合A
2の判断行列はYであり、集合A
3の判断行列はZであり、
各判断行列の表現式は、
特性根を用いてA、A
1、A
2、A
3
の集合中の各指標のそれぞれの集合に占める重みを決定し、
次に、Saaty尺度に基づいて、各一次必要指標層集合及び二次必要指標層集合中のいずれか2つの指標の相対的重要性を比較し定量的に表示し、各一次必要指標層集合及び二次必要指標層集合中の2つずつの指標を比較した結果をまとめてその対応する判断行列を作成し、集合Aの判断行列はUであり、集合A
1の判断行列はXであり、集合A
2の判断行列はYであり、集合A
3の判断行列はZであり、判断行列Uの重みベクトルu=(u
1,u
2,u
3)
T、判断行列Xの重みベクトルx=(x
1,x
2,x
3,x
4)
T、判断行列Yの重みベクトルy=(y
1,y
2,......,y
m)
T、判断行列Zの重みベクトルz=(z
1,z
2,z
3)
Tを求め、各重みベクトルの要素は、即ち、対応する指標の各集合における重みであり、さらにA、A
1、A
2、A
3集合中の各指標のそれぞれの集合に占める重みを得て、
二次必要指標層の重みベクトルx、y、zから行列Eを構成し、行列E及び一次必要指標層の重みベクトルuを計算することにより重みベクトルW=(w
1,w
2,w
3,......,w
11)
Tを得て、二次指標層中の指標の最終的な重みはw
1、w
2、w
3,......,w
11となり、さらに二次必要指標層中の全ての指標の重み層に対する重みを得るステップA1と、
二次必要指標値を分類し、分類結果に値を割り当てるステップA2であって、
二次必要指標値に対して、それぞれ、優等、中等及び劣等の3つのカテゴリーを設定し、設定されたカテゴリーに対して優劣度に基づいて対応する値G
h、G
m、G
lを割り当て、即ち、
ここで、L
hは優等カテゴリーであり、L
mは中等カテゴリーであり、L
lは劣等カテゴリーであり、G
h>G
m>G
lであり、G
h、G
m、G
l∈[1,10]である、ステップA2と、
核心指標体系を構築しそれを定量的に記述するステップであって、前記核心指標体系は、安全性及び掘削井工事の実施可能性を含み、海域堆積盆地における二酸化炭素の地中貯留工事の実施の安全性及び実行可能性を記述するためのものであるステップBと、
ステップA及びステップBに基づいて海域堆積盆地の適合性の総合スコアを計算し、
ここで、Sは海域堆積盆地の適合性の総合スコアであり、nは二次必要指標の数を表し、wiはi番目の二次必要指標の重みであり、P
i(x)は二次必要指標のカテゴリーによる割当値であり、xは二次必要指標値に設定されるカテゴリーを表し、Fは核心指標体系であり、f
1は安全性であり、f
2は掘削井工事の実施可能性であるステップCとを含むことを特徴とする海域堆積盆地における二酸化炭素の地中貯留の適合性評価方法。
【請求項2】
前記ステップBで、前記安全性とは、海域堆積盆地が地震帯にあるかどうかを指し、前記掘削井工事の実施可能性とは、現在海域堆積盆地内に油ガス掘削井があるかどうかを指し、海域堆積盆地が地震帯にある場合は安全性指標の割当値が0であり、そうでなければ割当値は1であり、油ガス掘削井がない場合は掘削井工事の実施可能性指標の割当値が0であり、そうでなければ割当値は1であることを特徴とする請求項1に記載の海域堆積盆地における二酸化炭素の地中貯留の適合性評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海域における二酸化炭素の地中貯留の分野に属し、具体的には、二重指標体系での連成解析に基づく海域堆積盆地における二酸化炭素の地中貯留の適合性評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素の地中貯留の適合性とは、貯留容量、工学技術、社会経済、地質的安全性などの条件による制約の下の、堆積盆地又はその異なる地質構造単位又はローカルサイトの二酸化炭素の地中貯留に好適である優劣度のことを指す。大規模な堆積盆地における二酸化炭素の地中貯留の適合性評価を行うのは、二酸化炭素の地中貯留に好適な盆地を選別することができ、評価結果は、地中貯留の計画及び関連対策と措置の策定を行うために役立つ(郭建強ら,2014)。二酸化炭素の地中貯留の媒体は、塩水帯水層、石油及びガス貯留層、炭層、塩基性-超塩基性岩、有機頁岩、カルスト洞窟などを含むが、我が国の海域では塩基性-超塩基性岩、採掘不可能な炭層、有機頁岩及びカルスト洞窟の分布が限られており、資源容量が小さいため、塩水帯水層と石油及びガス貯留層は主な媒体である。世界範囲で二酸化炭素の地中貯留のローカルサイトの適合性評価方法は多いが、大規模な堆積盆地に対する適合性評価方法は少ない。
【0003】
例えば、世界範囲で二酸化炭素の地中貯留のローカルサイトの適合性研究方法として、デンマーク(Anthonsen et al.,2014)、欧州連合(Vangkilde et al.,2009)、米国(Oldenburg,2005)の科学者が、それぞれ、ローカルサイトレベルの適合性評価指標体系を策定しており、ローカルサイトの地質条件、二酸化炭素貯留容量、サイトの安全性などの面を重点的に検討している。沈平平(2009)が、我が国の油ガス田の地質学的特徴に基づいて、盆地の特徴、断裂活動、盆地資源及び貯留層の特徴に注目するローカルサイトの適合性評価指標体系を策定している。これらの指標体系には共通の特徴があり、即ち、二酸化炭素の地中貯留のローカルサイトの安全性に重点が置かれ、堆積盆地のような大規模なレベルとなると指向性及び普遍性が欠けている。
【0004】
従来の大規模な堆積盆地に対する適合性評価方法は、陸域の堆積盆地及び近海の探査度の高い堆積盆地の貯留条件に重点が置かれている。例えば、カナダの科学者Bachu(2003)が、堆積盆地の特徴に基づいて、大規模な堆積盆地に対する二酸化炭素の地中貯留の適合性評価指標体系を策定しているが、この指標集では、陸域盆地と海域盆地をまとめて検討しており、しかも盆地が陸域かそれとも海域に位置するかを1つの指標としているため、海域堆積盆地における二酸化炭素の地中貯留の適合性評価には不向きであることが自明である。Gibson-Pooleが、2008年にオーストラリアの貯留条件に基づいて、貯留空間の影響を強調し、二酸化炭素源という指標を廃棄することで、当該指標体系を発展させた。霍伝林(2014)が、当該指標体系を一層発展させたが、当該指標体系は、データの蓄積度が高い盆地に適するもので、評価プロセスが定性的判断から定量的評価に移行している。郭建強ら(2014)によって確立された指標体系は、陸域堆積盆地の地質条件のほうを多く検討している。
【0005】
現在、我が国が管轄している全海域の堆積盆地(約30カ所)の基本的な地質学的及び工学的条件、全体的に探査度が低いという探査及び開発の現状などについては、従来の大規模な堆積盆地の適合性評価方法は海域の指向性が欠けている。探査度が低いため一部の評価指標を判断しにくいだけでなく、いずれも単一の指標体系が用いられ、定性的指標が中心となり、定量的指標が欠けているため、定性的評価から定量的評価に移行しているプロセスであり、評価結果の正確度はさらに向上させる余地がある。したがって、実際の利用にあたっては、普遍性を向上させるとともに、全指標の定量的表現及び評価結果の定量的表示を実現するために、新規な海域堆積盆地における二酸化炭素の地中貯留の適合性評価方法を提案することが急務となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、大規模な堆積盆地の適合性評価方法における欠点に対し、二重指標体系での連成解析に基づく海域堆積盆地における二酸化炭素の地中貯留の適合性評価方法を提案し、これにより、評価結果の正確度及び科学性を向上させるとともに、単純で、速やかな評価というニーズを満たす。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の技術的解決手段を用いて実現される。海域堆積盆地における二酸化炭素の地中貯留の適合性評価方法であって、以下のステップを含む。
ステップAであって、必要指標体系を構築し必要指標体系に対して定量的分析を行い、前記必要指標体系は、一次必要指標及び二次必要指標を含み、海域堆積盆地における二酸化炭素の地中貯留の基本的な地質条件、工学的条件及び貯留容量の優劣を記述するためのものである。
ステップA1であって、二次必要指標の重みを計算して、各二次必要指標の重要度を決定する。
ステップA2であって、二次必要指標値を分類し、分類結果に値を割り当てる。
ステップBであって、核心指標体系を構築しそれを定量的に記述し、前記核心指標体系は、安全性及び掘削井工事の実施可能性を含み、海域堆積盆地における二酸化炭素の地中貯留工事の実施の安全性及び実行可能性を記述するためのものである。
ステップCであって、ステップA及びステップBに基づいて二重指標体系での連成評価を行って、適合性評価結果の定量的表示を実現し、
ここで、Sは海域堆積盆地の適合性の総合スコアであり、nは二次必要指標の数を表し、wiはi番目の二次必要指標の重みであり、P
i(x)は二次必要指標のカテゴリーによる割当値であり、xは二次必要指標値に設定されるカテゴリーを表し、Fは核心指標体系であり、f
1は安全性であり、f
2は掘削井工事の実施可能性である。
【0008】
さらに、前記ステップAで、前記一次必要指標は、貯留容量、地質条件及び工学的条件を含み、一次必要指標である貯留容量は、盆地の面積、地層の厚さ、貯留容量及び単位面積の貯留容量の4つの二次必要指標を含み、一次必要指標である地質条件は、探査度、百年間地震活動のマグニチュード、圧力係数及び地温勾配の4つの二次必要指標を含み、一次必要指標である工学的条件は、開発度、離岸距離及び水深の3つの二次必要指標を含む。
【0009】
さらに、前記ステップA1で、二次必要指標の重みの計算は、具体的には以下の方式を用いる。
最初に、必要指標体系の重み計算モデルを構築し、当該モデルは、重み層、一次必要指標層及び二次必要指標層を含み、一次必要指標層及び二次必要指標層に対して、対応する一次必要指標層集合A={A1,A2,A3}、二次必要指標層集合A1={B1,B2,B3,B4}、A2={C1,C2,C3,C4}、A3={D1,D2,D3}を構築し、ここで、A1、A2、A3は、それぞれ、3つの一次必要指標である貯留容量、地質条件及び工学的条件を表し、B1、B2、B3及びB4は、それぞれ、一次必要指標である貯留容量の4つの二次必要指標を表し、C1、C2、C3及びC4は、それぞれ、一次必要指標である地質条件の4つの二次必要指標を表し、D1、D2、D3は、それぞれ、一次必要指標である工学的条件の3つの二次必要指標を表す。
次に、Saaty尺度に基づいて、各一次必要指標層集合及び二次必要指標層集合中のいずれか2つの指標の相対的重要性を比較し定量的に表示し、各一次必要指標層集合及び二次必要指標層集合中の2つずつの指標を比較した結果をまとめてその対応する判断行列を作成し、集合Aの判断行列はUであり、集合A1の判断行列はXであり、集合A2の判断行列はYであり、集合A3の判断行列はZであり、判断行列Uの重みベクトルu=(u1,u2,u3)T、判断行列Xの重みベクトルx=(x1,x2,x3,x4)T、判断行列Yの重みベクトルy=(y1,y2,......,ym)T、判断行列Zの重みベクトルz=(z1,z2,z3)Tを求め、各重みベクトルの要素は、即ち、対応する指標の各集合における重みであり、さらにA、A1、A2、A3集合中の各指標のそれぞれの集合に占める重みを得る。
二次必要指標層の重みベクトルx、y、zから行列Eを構成し、行列E及び一次必要指標層の重みベクトルuを計算することにより重みベクトルW=(w1,w2,w3,......,w11)Tを得て、二次指標層中の指標の最終的な重みはw1、w2、w3、......、w11となり、さらに二次必要指標層中の全ての指標の重み層に対する重みを得る。
【0010】
さらに、前記ステップA2で、11の二次必要指標に対して、それぞれ、優等、中等及び劣等の3つのカテゴリーを設定し、設定されたカテゴリーに対して優劣度に基づいて対応する値G
h、G
m、G
lを割り当て、即ち、
ここで、L
hは優等カテゴリーであり、L
mは中等カテゴリーであり、L
lは劣等カテゴリーであり、G
h>G
m>G
lであり、G
h、G
m、G
l∈[1,10]である。
【0011】
さらに、前記ステップBで、前記安全性とは、海域堆積盆地が地震帯にあるかどうかを指し、前記掘削井工事の実施可能性とは、現在海域堆積盆地内に油ガス掘削井があるかどうかを指し、海域堆積盆地が地震帯にある場合は安全性指標の割当値が0であり、そうでなければ割当値は1であり、油ガス掘削井がない場合は掘削井工事の実施可能性指標の割当値が0であり、そうでなければ割当値は1である。
【発明の効果】
【0012】
従来技術と比べて、本発明の利点及び有益な効果は次のとおりである。
本技術的解決手段は、必要指標体系及び核心指標体系を構築し、必要指標体系に基づいて海域堆積盆地における二酸化炭素の地中貯留の基本的な地質条件、工学的条件及び貯留容量の優劣を記述し、核心指標体系に基づいて海域堆積盆地における二酸化炭素の地中貯留工事の実施の安全性及び実行可能性を記述するものであり、指標体系は全面的であり且つ海域の指向性があり、単一指標体系の一面性の問題を効果的に解決する。
また、適合性評価指標体系を構築した上で、全指標の定量的記述を実現し、従来の評価で評価指標の定性的分析による適合性評価結果の多重解の問題を解決し、また、二重指標体系での連成解析の方法を作成し、適合性評価結果の定量的表示を実現し、結果の正確度及び科学性を向上させている。本技術的解決手段は指標体系の構造が明瞭であり、論理的に理解しやすく、計算プロセスが単純であるため、普及及び利用しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の実施例に記載の評価方法のフローチャートである。
【
図2】
図2は、本発明の実施例の必要指標体系の重み計算モデルの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の上記の目的、特徴及び利点を一層明瞭に理解することができるよう、図面及び実施例を参照して本発明をさらに説明する。以下の記述で、本発明の充分な理解のために多くの細部が記載されているが、本発明は、ここの記述と異なる他の方式で実施されてもよく、したがって、本発明は以下に開示される特定の実施例に限定されない。
【0015】
本実施例は、海域堆積盆地における二酸化炭素の地中貯留の適合性評価方法を開示し、当該方法は二重指標体系での連成解析を用いて適合性評価を行い、
図1に示されるように、以下のステップを含む。
ステップAであって、必要指標体系を構築し必要指標体系に対して定量的分析を行う。
ステップBであって、核心指標体系を構築しそれを定量的に記述する。
ステップCであって、ステップA及びステップBに基づいて二重指標体系での連成評価を行って、適合性評価結果の定量的表示を実現する。
【0016】
一.必要指標体系の構築及びその定量的分析:
1.必要指標体系を構築する。一次必要指標及び二次必要指標を含む。
本実施例では、前記必要指標体系は、二酸化炭素の地中貯留の基本的な地質条件の優劣を表し、必要指標体系は、一次必要指標及び二次必要指標を含み、一次必要指標は、貯留容量、地質条件及び工学的条件を含み、3つの一次指標は、さらに11の二次必要指標を含み、具体的には以下のとおりである。
(1)一次必要指標である貯留容量は、盆地の面積、地層の厚さ、貯留容量及び単位面積の貯留容量の4つの二次必要指標を含む。
【0017】
1.盆地の面積であって、盆地の境界の平面における投影による面積であり、盆地の二酸化炭素の地中貯留容量の大きさをある程度決定しており、理論的には、面積が大きいほど二酸化炭素の地中貯留に役立つ。
【0018】
2.地層の厚さであって、堆積盆地の範囲内で二酸化炭素を貯留する地層の厚さを指し、理論的には、地層の厚さが大きいほど二酸化炭素の地中貯留に役立ち、また、埋没深度も実施条件に影響を与える。
【0019】
3.貯留容量であって、貯留容量が大きいほど、二酸化炭素の地中貯留に好適である。
【0020】
4.単位面積の貯留容量であって、盆地の単位面積の二酸化炭素を貯留する容量を指し、単位面積の貯留容量が大きいほど二酸化炭素の地中貯留に役立つ。
【0021】
(2)一次必要指標である地質条件は、探査度、百年間地震活動のマグニチュード、圧力係数及び地温勾配の4つの二次必要指標を含む。
【0022】
1.探査度であって、当該指標は、堆積盆地に対する認識及びデータの蓄積度を反映しており、実施における二次元地震測地線の距離に基づく。探査度が高いほど、取得された評価指標の信頼性及び正確度は高く、堆積盆地における二酸化炭素の地中貯留の適合性に正確な評価を行うことに役立つ。
【0023】
2.百年間地震活動のマグニチュードであって、百年間の地震発生状況で評価し、過去の地震記録に基づく。地域内で発生した地震のグレードが大きいほど、頻度が高いほど、適合性は悪い。
【0024】
3.圧力係数であって、盆地の地層圧力と静水圧との比を指し、地層圧力に異常があるかどうかを判断するための主なパラメータであり、二酸化炭素の地中貯留の安全性に影響を与える重要な要因である。
【0025】
4.地温勾配であって、100メートルの垂直深さごとの温度上昇(℃)の値で示す。当該指標は、深さに従う地層の温度上昇速度を反映しており、地層の地熱特性の重要なパラメータの1つであり、二酸化炭素の地中貯留容量に影響を与える重要な要因である。地温勾配は、地球内部の熱及び地層の熱伝導率から決定される。
【0026】
(3)一次必要指標である工学的条件は、開発度、離岸距離及び水深の3つの二次必要指標を含む。
【0027】
1.開発度であって、当該指標は、盆地の油ガスの開発度を反映しており、盆地内の石油及びガス貯留層の平均油ガス採取度に基づく。開発度が高いほど、掘削井プラットフォームが多いほど、配管が発達しているほど、工学的条件は良い。
【0028】
2.離岸距離であって、盆地/区域の海岸に対する最短の距離である。距離が遠いほど、輸送及び注入のコストが高いほど、技術的難易度が高いほど、二酸化炭素の地中貯留に役立たない。
【0029】
3.水深であって、水深が150メートルより大きい場合は、より先端的で高価なプラットフォーム及びプロセスが必要となる。深さが大きいほど技術的難易度が高いほど、コストは高い。
【0030】
2.必要指標体系を定量的に分析する。二次必要指標の重みの計算及び二次必要指標値の分類を含む。
(1)二次必要指標の重みの計算とは、各二次必要指標の重要度を決定することを指し、具体的な計算プロセスは次のとおりである。
最初に、必要指標体系の重み計算モデルを構築し、
図2に示されるように、当該モデルは、重み層、一次必要指標層及び二次必要指標層を含む。モデルの一次必要指標層及び二次必要指標層に対して指標集合、即ち、一次必要指標層集合A={A
1,A
2,A
3}、二次必要指標層集合A
1={B
1,B
2,B
3,B
4}、A
2={C
1,C
2,C
3,C
4}、A
3={D
1,D
2,D
3}を形成させる。Saaty尺度に基づいて、各指標集合中のいずれか2つの指標の相対的重要性を比較し定量的に表示し、例えば、A
iとA
jの2つの指標が同じ重要性を有する場合は、a
ijに値1を割り当て、A
iがA
jよりもはるかに重要である場合は、a
ijに値9を割り当て、逆の場合は逆数をとり、Saaty尺度の原理が成熟しているため、ここで多くは記載しない。集合中の2つずつの指標を比較した結果をまとめて各集合の判断行列を作成し、集合Aの判断行列はUであり、集合A
1の判断行列はXであり、集合A
2の判断行列はYであり、集合A
3の判断行列はZである。各判断行列の表現式は次のとおりである。
【0031】
式中、nは判断行列の次数であり、e
ijは判断行列の要素で、i=1,2,3,......,nであり、Pは判断行列であり、P×Qは判断行列とその対応する重みベクトルの乗算である。
【0032】
このようにして判断行列Uの重みベクトルu=(u1,u2,u3)T、最大固有値λu、判断行列Xの重みベクトルx=(x1,x2,x3,x4)T、最大固有値λx、判断行列Yの重みベクトルy=(y1,y2,......,ym)T、最大固有値λy、判断行列Zの重みベクトルz=(z1,z2,z3)T、最大固有値λzを得た。各重みベクトルの要素は、即ち、対応する指標の各集合における重みである。
【0033】
当該方法で得た各集合の重み分布の合理性について整合度チェックを行う必要がある。整合度指標CIにより、整合比CRを求める。CR<0.1である場合は、重み分布が整合度要件に適合することを表し、得られた重みは許容され、そうでなければ、整合度チェックが通るまで、判断行列の要素の取得値を調整する必要がある。計算式は次のとおりである。
CI=(λmax-n)/(n-1),CR=CI/RI
式中、RIはSaaty平均ランダム整合度指標であり、判断行列の次数n=3である場合にRI=0.58であり、判断行列の次数n=4である場合にRI=0.9である。
【0034】
このように得た行列Uの整合度指標はCI0であり、ランダム整合度指標はRIn=3であり、行列Xの整合度指標はCI1であり、ランダム整合度指標はRIn=4であり、行列Yの整合度指標はCI2であり、ランダム整合度指標はRIn=4であり、行列Zの整合度指標はCI3であり、ランダム整合度指標はRIn=3である。
【0035】
A、A
1、A
2、A
3などの集合中の各指標のそれぞれの集合に占める重みを取得した後、二次必要指標層中の全ての指標の重み層に対する重みを計算する必要がある。二次必要指標層の重みベクトルx、y、zから行列Eを構成し、行列E及び一次必要指標層の重みベクトルuを計算することにより重みベクトルW=(w
1,w
2,w
3,......,w
11)
Tを得て、二次指標層中の指標の最終的な重みはw
1、w
2、w
3,......,w
11となる(表1)。計算式は次のとおりである。
【0036】
上記の方法で得た二次指標層中の全ての指標の重み分布の合理性については同様に整合度チェックを行う必要がある。整合比CR
wを取得し、CR
w<0.1である場合は、重み分布が整合度要件に適合することを表し、得られた重みは許容され、そうでなければ、整合度チェックが通るまで、判断行列の要素の取得値を調整する必要がある。計算式は次のとおりである。
CR
w=(u
1×CI
1+u
2×CI
2+u
3×CI
3)/(RI
n=4+RI
n=4+RI
n=3)
(2)二次必要指標値の分類とは、11の二次必要指標に対して、それぞれ、優等、中等、劣等の3つのカテゴリーに設定し、設定されたカテゴリーに対して優劣度に基づいて値を割り当て、具体的な優劣設定の数値及び割当値は実際の状況に基づいて決定され、ここでは具体的に限定されない。例えば、本実施例では、「貯留容量」は、>1000億トン、500~1000億トン及び<500億トンの3つのカテゴリーと設定され、次に、3つのカテゴリーに対して優から劣までそれぞれ値G
h、G
m、G
lを割り当て、表1に示すとおりである。
【表1】
【0037】
二.核心指標体系の構築及びその定量的記述
核心指標体系及び定量的記述は、核心指標体系の構成及び値の取得を含み、核心指標体系は、海域における二酸化炭素の地中貯留工事の実施の安全性及び掘削井工事の実施可能性を重点的に検討し、核心指標体系の制約を満たすかどうかは海域における二酸化炭素の地中貯留の適合性を決め、安全性(海域堆積盆地が地震帯にあるかどうかを指す)及び掘削井工事の実施可能性(海域堆積盆地内に油ガス掘削井があるかどうかを指す)の2つの指標から構成される。地震帯は、地震が集中して分布する規則的な帯状の地域であり、盆地で百年間マグニチュード8以上の地震があるかどうかに基づいて設定され、ある場合は安全性指標の割当値は0であり、そうでなければ割当値は1である。掘削井工事の実施可能性は、主に、現在我が国では盆地内で油ガス掘削井工事を実施したことがあるかどうかで判断され、油ガス掘削井がなければ掘削井工事の実施可能性指標の割当値は0であり、そうでなければ割当値は1である。
【0038】
三.二重指標体系での連成評価
二重指標体系での連成評価は、必要指標体系及び核心指標体系で連成解析を行って、適合性評価結果の定量的表示を実現するものである。加重スコアリングの方法を用いて海域堆積盆地の必要指標体系スコアを得て、次に、核心指標体系と連成させて盆地の二酸化炭素の地中貯留の適合性の総合スコアを得て、具体的には以下のとおりである。
ここで、Sは海域堆積盆地の適合性の総合スコアであり、
w
iは二次必要指標の重みであり、
P
iは二次必要指標のカテゴリーによる割当値であり、
Fは核心指標体系であり、f
1は安全性であり、f
2は掘削井工事の実施可能性であり、
G
hは優等カテゴリーの割当値であり、G
mは中等カテゴリーであり、G
lは劣等カテゴリーであり、G
h>G
m>G
lであり、G
h,G
m,G
l∈[1,10]であり、本実施例では、G
h、G
m、G
lの対応する取得値は10、6、2であり、
L
hは優等カテゴリーであり、L
mは中等カテゴリーであり、L
lは劣等カテゴリーである。
【0039】
本実施例は、二重指標体系での連成解析の方法により適合性評価結果の定量的表示を実現し、スコアの数値は、現在の油ガス探査開発度下における、海域堆積盆地における二酸化炭素の地中貯留条件の優劣を表し、スコアが高いほど、当該区域の二酸化炭素の地中貯留条件は優れる。
【0040】
上述したのは、本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明に他の形式で限定を行ったものではなく、当業者であれば上記で開示されている技術内容に変更を入れ又は同等な変化のある等価な実施例に変形させて他の分野に用いることができ、なお、本発明の技術的解決手段の内容から逸脱せず、本発明の技術上の趣旨に基づいて上記の実施例に作った単純な補正、同等な変化と変形であれば、いずれも本発明の技術的解決手段の保護範囲に属する。