(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】エポキシ化合物およびその利用
(51)【国際特許分類】
C07D 303/16 20060101AFI20241024BHJP
C08G 59/12 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
C07D303/16 CSP
C08G59/12
(21)【出願番号】P 2023189791
(22)【出願日】2023-11-07
【審査請求日】2024-08-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】722013405
【氏名又は名称】四国化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】武田 琢磨
(72)【発明者】
【氏名】奥村 尚登
(72)【発明者】
【氏名】田原 晃生
(72)【発明者】
【氏名】熊野 岳
【審査官】鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/148538(WO,A1)
【文献】特開2009-256632(JP,A)
【文献】特開2013-234128(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
C08G
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式(I)で示されるエポキシ化合物。
【化1】
(式中、Xはヨウ素原子を表し、nは1~4の整数を表す。)
【請求項2】
請求項1記載のエポキシ化合物を含有することを特徴とする樹脂組成物。
【請求項3】
硬化剤及び/または硬化促進剤を含有する請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
請求項2~3のいずれかに記載の樹脂組成物を硬化して得られる硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なエポキシ化合物、該エポキシ化合物を含有する樹脂組成物及びその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
電気絶縁材料、構造材料等に用いられる熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂などが知られており、中でもエポキシ樹脂は、経済性と性能のバランスの点で優れるため、広く使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、芳香族多価グリシジルエステル化合物を含む硬化性エポキシ組成物が提案されており、芳香族多価グリシジルエステル化合物として、フタル酸グリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル等が開示されている。
しかしながら、これらの芳香族多価グリシジルエステル化合物を含む樹脂組成物は、硬化性の点でいまだ改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、新規なエポキシ化合物及びその用途を提供することを目的とする。具体的には、新規なエポキシ化合物、該エポキシ化合物を含有する樹脂組成物およびその硬化物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記の課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、ある種のヨードジカルボン酸と、エピクロロヒドリンとを反応させて得られるエポキシ化合物が新規な化合物であり、該化合物を含む樹脂組成物は硬化性が良好であること(ゲルタイムが短いこと)を見出し、本発明を完成するに至ったものである。
即ち、第1の発明は、化学式(I)で示されるエポキシ化合物である。
【0007】
【化1】
(式中、Xはヨウ素原子を表し、nは1~4の整数を表す。)
【0008】
第2の発明は、第1の発明のエポキシ化合物を含有することを特徴とする樹脂組成物である。
第3の発明は、硬化剤及び/または硬化促進剤を含有する第2の発明の樹脂組成物である。
第4の発明は、第2~3のいずれかの発明の樹脂組成物を硬化して得られる硬化物である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のエポキシ化合物は、分子内にオキシラン環(エポキシ基/グリシジル基)を2つ有するので、樹脂材料としての利用が期待される。
そして、本発明のエポキシ化合物は、分子内にヨウ素原子を有することにより、樹脂組成物の材料として使用した場合には、従来のエポキシ化合物を使用した場合に比べて、良好な硬化性を示し、且つ、優れた耐熱性および電気特性を有する硬化物を与えることが期待される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
<エポキシ化合物>
本発明は、前記の化学式(I)で示されるエポキシ化合物(以下、「本発明のエポキシ化合物」と云うことがある)に関する。
化学式(I)で示されるエポキシ化合物は、化学式(I-1)~化学式(I-3)で示されるエポキシ化合物を包含する。
【0011】
【化2】
(式中、Xおよびnは、前記と同様である。)
【0012】
化学式(I-1)で示されるエポキシ化合物としては、例えば、化学式(I-1-1)~化学式(I-1-6)で示されるエポキシ化合物を包含する。
化学式(I-2)で示されるエポキシ化合物としては、例えば、化学式(I-2-1)~化学式(I-2-11)で示されるエポキシ化合物を包含する。
化学式(I-3)で示されるエポキシ化合物としては、例えば、化学式(I-3-1)~化学式(I-3-8)で示されるエポキシ化合物を包含する。
【0013】
【0014】
【0015】
【0016】
<合成方法>
本発明のエポキシ化合物は、化学式(II)で示されるヨードジカルボン酸と、化学式(III)で示されるエピクロロヒドリンとを反応させることにより合成することができる(反応スキーム(A)参照)。
【0017】
【化6】
(式中、Xおよびnは、前記と同様である。)
【0018】
化学式(II)で示されるヨードジカルボン酸は、化学式(II-1)~化学式(II-3)で示されるヨードジカルボン酸を包含する。
【0019】
【化7】
(式中、Xおよびnは、前記と同様である。)
【0020】
化学式(II-1)で示されるヨードジカルボン化合物としては、例えば、化学式(II-1-1)~化学式(II-1-6)で示されるヨードジカルボン化合物を包含する。
化学式(II-2)で示されるヨードジカルボン化合物としては、例えば、化学式(II-2-1)~化学式(II-2-11)で示されるヨードジカルボン化合物を包含する。
化学式(II-3)で示されるヨードジカルボン化合物としては、例えば、化学式(II-3-1)~化学式(II-3-8)で示されるヨードジカルボン化合物を包含する。
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
これらのヨードジカルボン酸は、市販の試薬を購入して使用できるほか、例えば、市販のジカルボン酸をヨウ素化する方法や、キシレンをヨウ素化し、その後メチル基を酸化する方法等により合成することができる。
【0025】
化学式(III)で示されるエピクロロヒドリンは、市販の試薬を購入して使用できる。
【0026】
化学式(III)で示されるエピクロロヒドリンの使用量は、化学式(II)で示されるヨードジカルボン酸の使用量に対して、2~100倍モルの範囲における適宜の割合とすることが好ましい。
【0027】
本反応の実施においては、相間移動触媒(i)や塩基(ii)を使用してもよい。また、必要により、反応溶媒(iii)を適宜使用してもよい。
【0028】
相間移動触媒(i)としては、例えば、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、メチルトリオクチルアンモニウムクロリド、メチルトリデシルアンモニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、N,N-ジメチルピロリジニウムクロリド、N-エチル-N-メチルピロリジニウムヨージド、N-ブチル-N-メチルピロリジニウムブロミド、N-ベンジル-N-メチルピロリジニウムクロリド、N-エチル-N-メチルピロリジニウムブロミド、N-ブチル-N-メチルモルホリニウムブロミド、N-ブチル-N-メチルモルホリニウムヨージド、N-アリル-N-メチルモルホリニウムブロミド、N-メチル-N-ベンジルピペリジニウムクロリド、N-メチル-N-ベンジルピペリジニウムブロミド、N,N-ジメチルピペリジニウムヨージド、N-メチル-N-エチルピペリジニウムアセテート、N-メチル-N-エチルピペリジニウムヨージド等を挙げることができる。
【0029】
相間移動触媒(i)の使用量は、化学式(II)で示されるヨードジカルボン酸の使用量に対して、0.005~0.5倍モルの範囲における適宜の割合とすることが好ましい。
【0030】
塩基(ii)としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0031】
塩基(ii)の使用量は、化学式(II)で示されるヨードジカルボン酸の使用量に対して、2~20倍モルの範囲における適宜の割合とすることが好ましい。
【0032】
反応溶媒(iii)としては、反応を阻害しない限りにおいては特に限定されず、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;ヘキサン、ヘプタンのような脂肪族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロトリフルオロメタン、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;ホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ヘキサメチルホスホロトリアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類等を挙げることができる。これらの溶媒は、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0033】
本反応において、反応温度は、-10~150℃の範囲に設定されることが好ましい。また、反応時間は、設定した反応温度に応じて適宜設定されるが、1~48時間の範囲に設定することが好ましい。
【0034】
本反応終了後、得られた反応液から、例えば、反応溶媒の留去による反応液の濃縮や溶媒抽出法等の手段によって、目的物である本発明のエポキシ化合物を取り出すことができる。
更に、必要により、水等による洗浄や、活性炭処理、シリカゲルクロマトグラフィー、再結晶等の手段を利用して精製することができる。
【0035】
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、本発明のエポキシ化合物を必須成分として含有するが、本発明のエポキシ化合物を1種以上含有してもよい。
本発明の樹脂組成物中における本発明のエポキシ化合物の含有量は、0.001~99重量%の割合であることが好ましい。
【0036】
本発明の樹脂組成物には、本発明のエポキシ化合物に加え、必要に応じて別のエポキシ化合物、硬化剤、硬化促進剤、添加剤を含有してもよい。また、本発明において、樹脂組成物とは、硬化前の混合物の状態を意味する。
【0037】
本発明のエポキシ化合物を重合させると硬化物が得られるが、この重合時に、本発明のエポキシ化合物とは別のエポキシ化合物(注:エポキシ樹脂と称されることがある)を共存させることにより、本発明のエポキシ化合物と、別のエポキシ化合物が共重合した硬化物を得ることができる。
【0038】
別のエポキシ化合物としては、分子内にオキシラン環(エポキシ基/グリシジル基)を有するものであれば、特に制限なく使用可能であり、例えば、
ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、カテコール、レゾルシノール等の多価フェノールまたはグリセリンやポリエチレングリコール等の多価アルコールとエピクロロヒドリンを反応させて得られるポリグリシジルエーテル類;
p-ヒドロキシ安息香酸、β-ヒドロキシナフトエ酸等のヒドロキシカルボン酸とエピクロロヒドリンを反応させて得られるグリシジルエーテルエステル類;
フタル酸、テレフタル酸等のポリカルボン酸とエピクロロヒドリンを反応させて得られるポリグリシジルエステル類;
1,3,4,6-テトラグリシジルグリコールウリル等の分子内に2つ以上のエポキシ基を有するグリシジルグリコールウリル化合物;
3′,4′-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等の脂環式エポキシ化合物;
トリグリシジルイソシアヌレート、ヒダントイン型エポキシ化合物等の含窒素環状エポキシ化合物;
更に、エポキシ化フェノールノボラック樹脂、エポキシ化クレゾールノボラック樹脂、エポキシ化ポリオレフィン、環式脂肪族エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂の他、
炭素-炭素二重結合およびグリシジル基を有する有機化合物と、SiH基を有するケイ素化合物とのヒドロシリル化付加反応によるエポキシ変性オルガノポリシロキサン化合物(例えば、特開2004-99751号公報や特開2006-282988号公報に開示されたエポキシ変性オルガノポリシロキサン化合物)等が挙げられ、これらを組み合わせて使用してもよい。
【0039】
本発明の樹脂組成物中における、本発明のエポキシ化合物と別のエポキシ化合物の各々の含有量の割合については、別のエポキシ化合物の含有量が、本発明のエポキシ化合物の含有量に対して、0~1000倍量(重量比)の範囲における適宜の割合とすることが好ましく、0.01~100倍量(重量比)の範囲における適宜の割合とすることがより好ましい。
【0040】
硬化剤としては、フェノール性水酸基を有する化合物、酸無水物、アミン類のほか、メルカプトプロピオン酸エステル、エポキシ樹脂末端メルカプト化合物等のメルカプタン化合物が挙げられる。
【0041】
フェノール性水酸基を有する化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールS、テトラクロロビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA、ジヒドロキシナフタレン、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールAノボラック、臭素化フェノールノボラック、レゾルシノール等が挙げられる。
【0042】
酸無水物としては、例えば、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、ナジック酸無水物、ハイミック酸無水物、メチルナジック酸無水物、メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸無水物、メチルノルボルナン-2,3-ジカルボン酸等が挙げられる。
【0043】
アミン類としては、例えば、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンジアミン、ダイマー酸変性エチレンジアミン、4,4′-ジアミノジフェニルスルホン、4,4′-ジアミノジフェノールエーテル等が挙げられる。
硬化剤としてこれらを単独で、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0044】
本発明の樹脂組成物において、硬化剤の含有量は、エポキシ化合物(本発明のエポキシ化合物と別のエポキシ化合物の合計)100重量部に対して、10~300重量部であることが好ましく、100~200重量部であることがより好ましい。
【0045】
硬化促進剤としては、アミン系化合物やイミダゾール化合物、トリフェニルホスフィン、ジフェニルナフチルホスフィン、ジフェニルエチルホスフィン等の有機ホスフィン系化合物、芳香族ホスホニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族セレニウム塩等が挙げられる。
【0046】
硬化促進剤としては、例えば、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等のアミン化合物、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール等のイミダゾール化合物、トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィン等の有機ホスフィン化合物、テトラブチルホスフォニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムジエチルホスホロジチオネート等のホスホニウム化合物、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、2-メチル-4-メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N-メチルモルホリン・テトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩、酢酸鉛、オクチル酸錫、ヘキサン酸コバルト等の脂肪族酸金属塩等が挙げられる。これらの硬化促進剤の一部は、前述の硬化剤としても用いることができることは既に知られている。
硬化促進剤としてこれらを単独で、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0047】
本発明の樹脂組成物において、硬化促進剤の含有量は、エポキシ化合物(本発明のエポキシ化合物と別のエポキシ化合物の合計)100重量部に対して、0.01~10.0重量部であることが好ましく0.1~5重量部であることがより好ましい。
【0048】
本発明の樹脂組成物において、硬化剤、硬化促進剤は、硬化剤または硬化促進剤のみを単独で使用してもよく、硬化剤及び硬化促進剤を組み合わせて使用してもよい。
【0049】
本発明の樹脂組成物は、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、
非晶性シリ力、結晶性シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、アルミナ、マグネシア、クレー、タルク、ケイ酸カルシウム、酸化チタン等の無機質充填材、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル等の各種ポリマー、エチレングリコール、プロピレングリコール等の脂肪族ポリオール、脂肪族又は芳香族カルボン酸化合物、フェノール化合物等の炭酸ガス発生防止剤、ポリアルキレングリコール等の可撓性付与剤、酸化防止剤、可塑剤、滑剤、シラン系等のカップリング剤、無機充填材の表面処理剤、難燃剤、帯電防止剤、着色剤、帯電防止剤、レベリング剤、イオントラップ剤、摺動性改良剤、各種ゴム、有機ポリマービーズ、ガラスビーズ、グラスファイバー等の無機充填材等の耐衝撃性改良剤、揺変性付与剤、界面活性剤、表面張力低下剤、消泡剤、沈降防止剤、光拡散剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、離型剤、蛍光剤、導電性充填材等の添加剤(改質剤)を含有してもよい。
【0050】
本発明のエポキシ化合物は、プリント配線板や電子部品用の塗料、封止材、接着剤、レジストインク等のほか、木工用塗料、光ファイバーやプラスチック、缶の表面を保護するためのコーティング剤としてのエポキシ樹脂組成物や、ボールグリッドアレイ半導体封止用エポキシ樹脂組成物、光半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物、アンダーフィルとして用いられる半導体封止用エポキシ樹脂組成物、リソグラフィー用レジスト下層膜形成用エポキシ樹脂組成物の材料として有用である。
【実施例】
【0051】
以下、実施例を用いて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
なお、エポキシ化合物の合成において使用した主原料等は、以下のとおりである。
【0052】
・4-ヨードフタル酸(富士フイルム和光純薬製、化学式(II-3-2)参照。)
・2,3,5-トリヨードテレフタル酸(合成例1、2の方法にて合成した。化学式(II-1-5)参照。)
・2,4,5,6-テトラヨードイソフタル酸(特開平06-345705号公報に記載の方法に準拠して合成した。化学式(II-2-11)参照。)
・エピクロロヒドリン(富士フイルム和光純薬製)
・テトラメチルアンモニウムクロリド(富士フイルム和光純薬製)
・水酸化ナトリウム(富士フイルム和光純薬製)
・クロロホルム(富士フイルム和光純薬製)
・酢酸エチル(富士フイルム和光純薬製)
・メタノール(富士フイルム和光純薬製)
【0053】
樹脂組成物の調製において使用した主原料等は、以下のとおりである。
(A)エポキシ化合物
・イソフタル酸ジグリシジルエステル(中国特許出願公開第103864724号公報に記載の方法に準拠して合成した。化学式(1)参照。)
(B)硬化促進剤
・2-エチル-4-メチルイミダゾール(四国化成工業社製、商品名「キュアゾール2E4MZ」、以下、「2E4MZ」と云う。)
【0054】
【0055】
〔合成例1〕
<2-アミノ-3,5-ジヨードテレフタル酸の合成>
容量200mLのフラスコに、2-アミノテレフタル酸7.25g(40mmol)、酢酸16mLを仕込み、室温下で撹拌しながら一塩化ヨウ素25.9g(160mmol)と36%濃塩酸3.0g(30.2mmol)とイオン交換水52gの混合物を滴下した。続いて、50℃で85時間撹拌した。反応液をろ過後、得られた固体にテトラヒドロフランとトルエンを加えて再結晶を行った。これをろ過し、乾燥することで黄色固体を14.3g得た(収率:82%)。
【0056】
得られた黄色固体の1H-NMRスペクトルデータは、以下のとおりであった。
・1H-NMR(CDCl3) δ:8.11(s, 1H).
このスペクトルデータより、得られた黄色固体は、表題の化合物(2-アミノ-3,5-ジヨードテレフタル酸)であると同定した。
【0057】
〔合成例2〕
<2,3,5-トリヨードテレフタル酸(化学式(II-1-5))の合成>
容量1000mLのフラスコに、2-アミノ-3,5-ジヨードテレフタル酸4.33g(10mmol)、イオン交換水10.00g、アセトニトリル10.00gおよび95%硫酸2.06g(20mmol)を仕込み、窒素置換後、-10℃下で撹拌しながら40%亜硝酸ナトリウム水溶液5.18g(30mmol)を滴下した。-10℃下で1時間撹拌後、53%ヨウ化ナトリウム水溶液11.31g(40mmol)を-10℃下で滴下し、さらに12時間撹拌した。35%亜硫酸水素ナトリウム水溶液でクエンチした後、ろ過により固体を回収した。ろ過物にイオン交換水25gを加えてリスラリーし、ろ過した後、乾燥することで褐色固体を4.24g得た(収率:78%)。
【0058】
得られた褐色固体の1H-NMRスペクトルデータは、以下のとおりであった。
・1H-NMR(CDCl3) δ:7.88(s, 1H).
このスペクトルデータより、得られた褐色固体は、化学式(II-1-5)で示される表題の化合物(2,3,5-トリヨードテレフタル酸)であると同定した。
【0059】
〔実施例1〕
<4-ヨードフタル酸ジグリシジルエステル(化学式(I-3-2))の合成>
容量100mLの3口フラスコに、4-ヨードフタル酸2.92g(10mmol)とエピクロロヒドリン37.01g(400mmol)、テトラメチルアンモニウムクロリド54.8mg(0.5mmol)を仕込み、80℃で6時間撹拌した。次に反応液を2℃まで冷却し、48%水酸化ナトリウム水溶液2.00g(24mmol)を添加し、30℃で14時間撹拌した。反応液にイオン交換水10.0gを加えた後、分液により水層を除去し、有機層を濃縮した。得られた濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/酢酸エチル=30/1(w/w))により精製し、1.33gの無色液体を得た(収率:33%)。
【0060】
得られた無色液体の1H-NMRスペクトルデータは、以下のとおりであった。
・1H-NMR(DMSO-d6) δ:8.12-8.08(m, 2H), 7.60-7.55(m, 1H), 4.65(dd, 2H), 4.09(dd, 2H), 3.31-3.25(m, 2H), 2.83(dt, 2H), 2.70-2.66(m, 2H).
このスペクトルデータより、得られた無色液体は、化学式(I-3-2)で示される表題の化合物(4-ヨードフタル酸ジグリシジルエステル)であるものと同定した。
【0061】
〔実施例2〕
<2,3,5-トリヨードテレフタル酸ジグリシジルエステル(化学式(I-1-5))の合成>
容量100mLの3口フラスコに、2,3,5-トリヨードテレフタル酸10.88g(20mmol)とエピクロロヒドリン37.01g(400mmol)、テトラメチルアンモニウムクロリド110mg(1mmol)を仕込み、80℃で6時間撹拌した。次に反応液を2℃まで冷却し、48%水酸化ナトリウム水溶液4.00g(48mmol)を添加し、30℃で20時間撹拌した。反応液にイオン交換水24.00gを加えた後、分液により水層を除去し、有機層を濃縮した。得られた濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=20/1(w/w))により精製し、4.07gの淡黄色固体を得た(収率:31%)。
【0062】
得られた淡黄色固体の1H-NMRスペクトルデータは、以下のとおりであった。
・1H-NMR(DMSO-d6) δ:8.02(s, 1H), 4.73-4.60(m, 2H), 4.17-4.03(m, 2H), 3.40-3.30(m, 2H), 2.90-2.82(m, 2H), 2.80-2.70(m, 2H).
このスペクトルデータより、得られた淡黄色固体は、化学式(I-1-5)で示される表題の化合物(2,3,5-トリヨードテレフタル酸ジグリシジルエステル)であるものと同定した。
【0063】
〔実施例3〕
<2,4,5,6-テトラヨードイソフタル酸ジグリシジルエステル(化学式(I-2-11))の合成>
容量100mLの3口フラスコに、2,4,5,6-テトラヨードイソフタル酸13.39g(20mmol)とエピクロロヒドリン37.01g(400mmol)、テトラメチルアンモニウムクロリド110mg(1mmol)を仕込み、80℃で6時間撹拌した。次に反応液を2℃まで冷却し、48%水酸化ナトリウム水溶液4.00g(48mmol)を添加し、30℃で20時間撹拌した。反応液にイオン交換水24.00gを加えた後、分液により水層を除去し、有機層を濃縮した。得られた濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=20/1(w/w))により精製し、8.76gの淡黄色固体を得た(収率:56%)。
【0064】
得られた淡黄色固体の1H-NMRスペクトルデータは、以下のとおりであった。
・1H-NMR(DMSO-d6) δ:4.65(dd, 2H), 4.09(dd, 2H), 3.40-3.30(m, 2H), 2.86(t, 2H), 2.75(dd, 2H).
このスペクトルデータより、得られた淡黄色固体は、化学式(I-2-11)で示される表題の化合物(2,4,5,6-テトラヨードイソフタル酸ジグリシジルエステル)であるものと同定した。
【0065】
〔実施例4〕
エポキシ化合物として、実施例1のエポキシ化合物を10.0gと、硬化促進剤として2E4MZを0.5gとを混合して、樹脂組成物(エポキシ樹脂組成物)を調製した。
この樹脂組成物について、熱板法(JIS C-2105)により、150℃におけるゲルタイムを測定して硬化性能を評価した。
得られた結果は、表1に示したとおりであった。
【0066】
〔実施例5、比較例1〕
実施例4の場合と同様にして、表1に示した組成を有する樹脂組成物を調製し、それらの樹脂組成物について、ゲルタイムを測定して硬化性能を評価した。
得られた評価結果を表1に示す。
【0067】
【0068】
表1より、エポキシ化合物として本発明のエポキシ化合物を用いた場合(実施例4、5)には、従来のエポキシ化合物を用いた場合(比較例1)に比べて、ゲルタイムが短いことから、硬化性に優れることが確認された。
そのため、本発明のエポキシ化合物は、従来のエポキシ化合物に比べて、樹脂の材料として好適であると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明のエポキシ化合物は、分子内にヨウ素原子を有することにより、樹脂組成物の材料として使用した場合には、従来のエポキシ化合物を使用した場合に比べて、良好な硬化性を示し、且つ、優れた耐熱性および電気特性を有する硬化物を与えることが期待される。
そのため、本発明のエポキシ化合物は、樹脂の材料として好適であると考えられる。
【要約】
【課題】 本発明は、新規なエポキシ化合物及びその用途を提供することを目的とする。具体的には、新規なエポキシ化合物、該エポキシ化合物を含有する樹脂組成物およびその硬化物を提供することを目的とする。
【解決手段】 化学式(I)で示されるエポキシ化合物。
【化1】
(式中、Xはヨウ素原子を表し、nは1~4の整数を表す。)
【選択図】 なし