(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】位置検出装置
(51)【国際特許分類】
G01B 7/00 20060101AFI20241024BHJP
G01D 5/20 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
G01B7/00 101E
G01D5/20 K
(21)【出願番号】P 2023198876
(22)【出願日】2023-11-24
【審査請求日】2024-01-31
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】310017828
【氏名又は名称】株式会社マグネスケール
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】弁理士法人タス・マイスター
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 順吏
【審査官】山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-267921(JP,A)
【文献】特開2001-074006(JP,A)
【文献】特開2013-246051(JP,A)
【文献】特表2019-506618(JP,A)
【文献】特開平10-170356(JP,A)
【文献】特開平10-153402(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 7/00-7/34
G01D 5/00-5/252
5/39-5/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺形状を有し、その長手方向に沿って移動可能に設けられるとともに、該長手方向に沿って設けられた複数の導電性の被検出部を有する移動体と、
前記移動体の移動方向に沿って配列されるとともに、前記移動体の各被検出部と所定間隔をあけて対向可能に設けられ、前記移動体の相対的な変位を検出するための複数の相対変位検出部と、
前記相対変位検出部からの各出力信号を処理して、前記移動体の変位を算出する位置算出部と、
前記移動体の移動方向において、前記相対変位検出部を挟んでその一方側、又は他方側に、前記移動体の各被検出部と前記所定間隔をあけて対向可能に設けられ、前記移動体の絶対的な位置を検出するための絶対位置検出部と、を備え、
前記相対変位検出部は、それぞれ、LC回路を形成するための巻き線コイル及び該巻き線コイルの両端部間に接続されたコンデンサを備え
、
前記絶対位置検出部は、LC回路を形成するための巻き線コイルであって、前記相対変位検出部の巻き線コイルよりも長い長さを有する巻き線コイル、及び該巻き線コイルの両端部間に接続されたコンデンサを備え、
前記位置算出部は、前記相対変位検出部及び絶対位置検出部からの出力信号を処理して、前記移動体の位置を検出するように構成された位置検出装置。
【請求項2】
長尺形状を有し、その長手方向に沿って移動可能に設けられるとともに、該長手方向に沿って設けられた複数の導電性の被検出部を有する移動体と、
前記移動体の移動方向に沿って配列されるとともに、前記移動体の各被検出部と所定間隔をあけて対向可能に設けられ、前記移動体の相対的な変位を検出するための複数の相対変位検出部と、
前記相対変位検出部からの各出力信号を処理して、前記移動体の変位を算出する位置算出部と、を備え、
前記相対変位検出部は、それぞれ、LC回路を形成するための巻き線コイル及び該巻き線コイルの両端部間に接続されたコンデンサを備え、
前記相対変位検出部はn個設けられ、その各巻き線コイルが同じ長さであり、且つ、各巻き線コイルは、その長さをLとして、相互に(L±L/n)の間隔をあけて配列され、
前記移動体の各被検出部は、その前記長手方向の幅が前記相対変位検出部の巻き線コイルの長さと同じであり、且つ前記相対変位検出部の巻き線コイルの長さに相当する距離をあけて配設されてい
る位置検出装置。
【請求項3】
長尺形状を有し、その長手方向に沿って移動可能に設けられるとともに、該長手方向に沿って設けられた複数の導電性の被検出部を有する移動体と、
前記移動体の移動方向に沿って配列されるとともに、前記移動体の各被検出部と所定間隔をあけて対向可能に設けられ、前記移動体の相対的な変位を検出するための複数の相対変位検出部と、
前記相対変位検出部からの各出力信号を処理して、前記移動体の変位を算出する位置算出部と、を備え、
前記相対変位検出部は、それぞれ、LC回路を形成するための巻き線コイル及び該巻き線コイルの両端部間に接続されたコンデンサを備え、
前記各巻き線コイルは、中空の円筒形状を有し、
前記移動体は、
一方が開口した有底、且つ中空形状の円筒体と、
軸形状を有し、前記円筒体の底部を貫通するとともに、前記底部に固着された軸部と、を含み、
前記複数の被検出部は、
前記円筒体内に内嵌されたリング状の円筒体側被検出部と、
前記円筒体の径方向において前記円筒体側被検出部よりも内側に前記円筒体側被検出部に対向して設けられ、前記軸部に外嵌された円筒形状の軸部側被検出部と、を含み、
前記円筒体側被検出部及び前記軸部側被検出部は、前記円筒体の径方向における前記円筒体側被検出部と前記軸部側被検出部との間を、各前記巻線コイルが相対的に通過可能に設けられている位置検出装置。
【請求項4】
前記各巻き線コイルは、平面コイルである請求項1
~3のいずれか1項に記載の位置検出装置。
【請求項5】
長尺形状を有し、その長手方向に沿って移動可能に設けられるとともに、該長手方向に沿って設けられた複数の導電性の被検出部を有する移動体と、
前記移動体の各被検出部と所定間隔をあけて対向可能に設けられ、前記移動体の移動方向と直交する方向に並んで配設されるとともに、前記移動方向に沿って、相互に前後するように配設され、前記移動体の相対的な変位を検出するための複数の相対変位検出部と、
前記相対変位検出部からの各出力信号を処理して、前記移動体の変位を算出する位置算出部と、
前記移動体の移動方向において、前記相対変位検出部を挟んで、その一方側、又は他方側に、前記移動体の各被検出部と前記所定間隔をあけて対向可能に設けられ、前記移動体の絶対的な位置を検出するための絶対位置検出部と、を備え、
前記相対変位検出部は、それぞれ、LC回路を形成するための平面コイルである巻き線コイル、及び該巻き線コイルの両端部間に接続されたコンデンサを備え
、
前記絶対位置検出部は、LC回路を形成するための平面コイルである巻き線コイル、及び該巻き線コイルの両端部間に接続されたコンデンサを備えるとともに、該絶対位置検出部の巻き線コイルは、前記相対変位検出部の巻き線コイルよりも長い長さを有し、
前記位置算出部は、前記相対変位検出部及び絶対位置検出部からの出力信号を処理して、前記移動体の位置を検出するように構成された位置検出装置。
【請求項6】
前記相対変位検出部はn個設けられ、その各巻き線コイルが同じ長さであり、且つ、各巻き線コイルは、その長さをLとして、(L±L/n)に相当する距離だけ、前記移動方向に沿って、相互に前後するように配設され、
前記移動体の各被検出部の前記長手方向の幅が前記相対変位検出部の巻き線コイルの長さと同じである請求項
5に記載の位置検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触式の位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
接触式の位置検出装置として、従来、特開2003-161635号公報に開示された位置検出器が知られている。この位置検出器は、中空の円筒状をしたコイルと、このコイルに挿通されて、当該コイル内を移動する軸状移動体と、を備えており、軸状移動体の外周面には、導電性または磁気抵抗の異なるパターンが形成され、パターンは軸状移動体の軸線方向に沿って幅が減少又は増加するように形成されている。
【0003】
この位置検出器は、コイルに対して周期的に矩形波を印加することによって、軸状移動体の変位を検出するというものである。軸状移動体が移動すると、その変位に応じてコイルとパターンとの間の重合距離または重合面積が変化し、これにより、コイルのインダクタンスが変化して、矩形波の減衰状態が変化する。したがって、この矩形波の減衰状態を計測することで、軸状移動体の直線方向の変位を検出することができる。
【0004】
即ち、この位置検出器では、コイルと導体である軸状移動体との位置関係により、当該軸状移動体に誘導電流が発生して、コイルのインダクタンスが変化するという現象を利用するものであり、コイルのインダクタンスの変化を周波数成分として取り出すことによって、軸状移動体の変位を検出するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した従来の位置検出器における位置検出の分解能は、軸状移動体の位置の変化量(変位量)をΔdとし、軸状移動体の位置変化の前後における周波数の変化をΔfとすると、Δf/Δdとして求まるため、分解能を高くするためには、周波数の変化(Δf)を大きくする必要がある。
【0007】
一方、長い距離の位置検出を行うには、コイル長(コイルの幅方向の長さ)を長くする必要があるが、コイルのインダクタンスの変化を取り出すことができる周波数の変化は、コイルの長さに比例しては大きくならないという特性があり、むしろ、逆に、長距離の位置検出を行うべくコイル長を長くする場合には、測定精度の保証という観点から、位置検出の分解能を低く押さえる必要があった。
【0008】
本発明は以上の実情に鑑み成されたものであって、検出距離が長い場合でも高い分解能で高精度に位置検出することができる位置検出装置の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明は、
長尺形状を有し、その長手方向に沿って移動可能に設けられるとともに、該長手方向に沿って設けられた複数の導電性の被検出部を有する移動体と、
前記移動体の移動方向に沿って配列されるとともに、前記移動体の各被検出部と所定間隔をあけて対向可能に設けられ、前記移動体の相対的な変位を検出するための複数の相対変位検出部と、
前記相対変位検出部からの各出力信号を処理して、前記移動体の変位を算出する位置算出部と、を備え、
前記相対変位検出部は、それぞれ、LC回路を形成するための巻き線コイル及び該巻き線コイルの両端部間に接続されたコンデンサを備えた位置検出装置に係る。
【0010】
この態様(第1の態様)の位置検出装置によれば、以下のようにして移動体の変位が検出される。即ち、移動体が移動すると、LC回路を有する各相対変位検出部の発振周波数が正弦波で変動し、この各発振周波数が位置算出部によって取得される。そして、当該位置算出部において、各発振周波数の変動と移動体の変位との相関に基づいて、移動体の変位が算出される。
【0011】
その際、相対変位検出部とは、移動体の移動方向に沿って配列されているので、各相対変位検出部から取り出される各発振周波数の変動は、相互間で位相がシフトした正弦波となっている。正弦波は、その上限及び下限のピーク付近において、移動体の位置変化に対して、発振周波数の変化が小さくなっているため、このピーク付近の発振周波数の変化に基づいて、移動体の位置変化を算出すると、当該移動体の位置変化を高精度に(高分解能で)検出することができない。
【0012】
一方、ピーク付近を除いたその間(以下、ピーク間)については、移動体の位置変化に対して、発振周波数が大きく変化するため、このピーク間では、その発振周波数の変化に基づいて、当該移動体の位置変化を高精度に(高分解能で)検出することができる。そこで、本発明に係る位置検出装置では、位相がシフトする各相対変位検出部における正弦波の内、ピーク付近を除いたピーク間の発振周波数の変化を選択的に用いることで、移動体の位置変化を高精度に(高分解能で)検出することができる。このように、本発明に係る位置検出装置によれば、移動体の位置変化を高精度に(高分解能で)検出することができる。
【0013】
第1の態様の位置検出装置は、更に、
前記移動体の移動方向において、前記相対変位検出部を挟んでその一方側、又は他方側に、前記移動体の各被検出部と前記所定間隔をあけて対向可能に設けられ、前記移動体の絶対的な位置を検出するための絶対位置検出部を備え、
前記絶対位置検出部は、LC回路を形成するための巻き線コイルであって、前記相対変位検出部の巻き線コイルよりも長い長さを有する巻き線コイル、及び該巻き線コイルの両端部間に接続されたコンデンサを備え、
前記位置算出部は、前記相対変位検出部及び絶対位置検出部からの出力信号を処理して、前記移動体の位置を検出するように構成された態様(第2の態様)を採ることができる。
【0014】
この位置検出装置によれば、相対変位検出部の巻き線コイルより長い巻き線コイルを有する絶対位置検出部を設けているので、この絶対位置検出部によって、移動体の長い距離の移動を検出することができる。したがって、この絶対位置検出部を相対変位検出部と併用することによって、位置算出部は、絶対位置検出部の発振周波数から、移動体の大まかなアブソリュート位置(絶対位置)を検出することができ、加えて、相対変位検出部の発振周波数の変化から、移動体の高精度(高分解能)な変位(インクリメント位置)を検出することができる。この結果、位置算出部は、移動体の絶対位置を高精度に(高分解能で)検出することができる。
【0015】
また、第1の態様又は第2の態様の位置検出装置において、
前記相対変位検出部はn個設けられ、その各巻き線コイルが同じ長さであり、且つ、各巻き線コイルは、その長さをLとして、相互に(L±L/n)の間隔をあけて配列され、
前記移動体の各被検出部は、その前記長手方向の幅が前記相対変位検出部の巻き線コイルの長さと同じであり、且つ前記相対変位検出部の巻き線コイルの長さに相当する距離をあけて配設された態様を採ることができる。
【0016】
また、第1から第3の態様のいずれかの位置検出装置において、
前記各巻き線コイルは、中空の円筒形状を有し、
前記移動体は、軸形状を有するとともに、前記被検出部は円筒形状を有し、各前記巻き線コイル内に挿通可能に設けられた態様(第4の態様)を採ることができる。
【0017】
或いは、第1から第3の態様のいずれかの位置検出装置において、
前記各巻き線コイルを平面コイルとした態様(第5の態様)を採ることができる。
【0018】
また、本発明は、
長尺形状を有し、その長手方向に沿って移動可能に設けられるとともに、該長手方向に沿って設けられた複数の導電性の被検出部を有する移動体と、
前記移動体の各被検出部と所定間隔をあけて対向可能に設けられ、前記移動体の移動方向と直交する方向に並んで配設されるとともに、前記移動方向に沿って、相互に前後するように配設され、前記移動体の相対的な変位を検出するための複数の相対変位検出部と、
前記相対変位検出部からの各出力信号を処理して、前記移動体の変位を算出する位置算出部と、を備え、
前記相対変位検出部は、それぞれ、LC回路を形成するための平面コイルである巻き線コイル、及び該巻き線コイルの両端部間に接続されたコンデンサを備えた位置検出装置に係る。
【0019】
この態様(第6の態様)の位置検出装置によれば、第1の態様の位置検出装置と同様に、以下のようにして移動体の変位が検出される。即ち、移動体が移動すると、LC回路を有する相対変位検出部の発振周波数が正弦波で変動し、この各発振周波数が位置算出部によって取得される。そして、当該位置算出部において、各発振周波数の変動と移動体の変位との相関に基づいて、移動体の変位が算出される。
【0020】
その際、相対変位検出部とは、移動体の移動方向に沿って前後するように配設されているので、相対変位検出部から取り出される発振周波数の変動は、相互間で位相がシフトした正弦波となっている。正弦波は、その上限及び下限のピーク付近において、移動体の位置変化に対して、発振周波数の変化が小さくなっているため、このピーク付近の発振周波数の変化に基づいて、移動体の位置変化を算出すると、当該移動体の位置変化を高精度に(高分解能で)検出することができない。
【0021】
一方、ピーク付近を除いたピーク間については、移動体の位置変化に対して、発振周波数が大きく変化するため、このピーク間では、その発振周波数の変化に基づいて、当該移動体の位置変化を高精度に(高分解能で)検出することができる。そこで、本発明に係る位置検出装置では、位相がシフトする相対変位検出部における各正弦波の内、ピーク付近を除いたピーク間の発振周波数の変化を選択的に用いることで、移動体の位置変化を高精度に(高分解能で)検出することができる。このように、本発明に係る位置検出装置によれば、移動体の位置変化を高精度に(高分解能で)検出することができる。
【0022】
第6の態様の位置検出装置は、更に、
前記移動体の移動方向において、前記相対変位検出部を挟んで、その一方側、又は他方側に、前記移動体の各被検出部と前記所定間隔をあけて対向可能に設けられた絶対位置検出部を更に備え、
前記絶対位置検出部は、LC回路を形成するための平面コイルである巻き線コイル、及び該巻き線コイルの両端部間に接続されたコンデンサを備えるとともに、該絶対位置検出部の巻き線コイルは、前記相対変位検出部の巻き線コイルよりも長い長さを有し、
前記位置算出部は、前記相対変位検出部及び絶対位置検出部からの出力信号を処理して、前記移動体の変位を検出するように構成された態様(第7の態様)を採ることができる。
【0023】
この位置検出装置によれば、第2の態様の位置検出装置と同様に、相対変位検出部の巻き線コイルよりも長い長さを有する巻き線コイルを有する絶対位置検出部を設けているので、この絶対位置検出部によって、移動体の長い距離の移動を検出することができる。したがって、この絶対位置検出部を相対変位検出部と併用することによって、位置算出部は、絶対位置検出部の発振周波数の変化から、移動体の大まかなアブソリュート位置(絶対位置)を検出することができ、加えて、相対変位検出部の発振周波数の変化から、移動体の高精度(高分解能)な変位(インクリメント位置)を検出することができる。この結果、位置算出部は、移動体の絶対位置を高精度に(高分解能で)検出することができる。
【0024】
また、第6の態様又は第7の態様の位置検出装置において、
前記相対変位検出部はn個設けられ、その各巻き線コイルが同じ長さであり、且つ、各巻き線コイルは、その長さをLとして、(L±L/n)に相当する距離だけ、前記移動方向に沿って、相互に前後するように配設され、
前記移動体の各被検出部の前記長手方向の幅を、前記相対変位検出部の巻き線コイルの長さと同じにした態様(第8の態様)を採ることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、位相がシフトする各相対変位検出部における各正弦波の内、ピーク付近を除いたピーク間の発振周波数の変化を選択的に用いることで、移動体の位置変化を高精度に(高分解能で)検出することができる。
【0026】
また、相対変位検出部の巻き線コイルより長い巻き線コイルを有する絶対位置検出部を設けることで、この絶対位置検出部によって、移動体の長い距離の移動を検出することができる。そして、絶対位置検出部と、相対変位検出部と併用することによって、位置算出部は、絶対位置検出部の発振周波数の変化から、移動体アブソリュート位置を検出することができ、加えて、相対変位検出部の発振周波数の変化から、移動体の高精度(高分解能)な変位(インクリメント位置)を検出することができる。この結果、位置算出部は、移動体の絶対位置を高精度に(高分解能で)検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の一実施形態に係る位置検出装置を示した斜視図である。
【
図2】本実施形態に係る位置検出装置を示した正面図である。
【
図3】本実施形態に係る位置検出装置を示した右側面図である。
【
図4】本実施形態に係る測定部の概略構成を一部ブロック図で示した平面図に相当する説明図である。
【
図5】(a)は
図4に示した移動体の左側面図であり、(b)は
図4に示した第1検出部、第2検出部及び第3検出部を構成する各巻き線コイルの側面図である。
【
図6】移動体と巻き線コイルとの位置関係と発振周波数との関係を示したグラフである。
【
図7】移動体と巻き線コイルとの位置関係と発振周波数との関係を示したグラフである。
【
図8】移動体と巻き線コイルとの位置関係と発振周波数との関係を示したグラフである。
【
図9】移動体と巻き線コイルとの位置関係と発振周波数との関係を示したグラフである。
【
図10】本実施形態に係るデータ記憶部に記憶されるデータであって、移動体の位置と、各巻き線コイルから得られる発振周波数との関係に係るデータテーブルである。
【
図11】本実施形態に係る検出部の変形例を示す説明図である。
【
図12】移動体と巻き線コイルとの位置配置関係に係る変形例を示した説明図である。
【
図15】移動体及び巻き線コイルの変形例を示した平面図に相当する説明図である。
【
図16】
図15に示した移動体及び巻き線コイルの正面図である。
【
図17】
図15に示した変形例に適用可能な移動体の更なる変形例を示した底面図に相当する説明図である。
【
図18】
図15に示した変形例における第1検出部、第2検出部及び第3検出部の配置に関する更なる変形例を示した平面図に相当する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の具体的な実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1から
図3に示すように、本例の位置検出装置1は、相互に一体的に連結された測定部10及び表示部50から構成される。
【0029】
表示部50は、箱状をしたケース51と、このケース51内に収納された表示制御部(図示せず)と、ケース51の開口51aから外部に露出するように当該該ケース51内に収納され、前記表示制御部(図示せず)に接続された液晶パネル52と、を備えて構成される。液晶パネル52には、前記表示制御部(図示せず)による制御の下で、前記測定部10によって測定された測定値が表示される。
【0030】
前記測定部10は、ケース11、測定子12、移動体13、相対変位検出部としての第1検出部20及び第2検出部25、絶対位置検出部としての第3検出部30、発振制御・周波数変換器40、位置算出部41並びにデータ記憶部42などから構成される(
図1~
図4参照)。
【0031】
ケース11は、箱状をしており、前記ケース51に連結されている。測定子12は、軸状をしており、その一端がケース11の下面から外方に延出され、他端がケース11内に位置するとともに、その軸線に沿った方向に進退可能、且つ進出方向に付勢された状態で当該ケース11に保持されている。
【0032】
前記移動体13、第1検出部20、第2検出部25、第3検出部30、発振制御・周波数変換器40、位置算出部41及びデータ記憶部42は、それぞれケース11内に設けられる。移動体13は、前記測定子12と同軸となるように当該測定子12に連結された軸部14、この軸部14に外嵌された複数、本例では、4個の被検出部15a,15b,15c,15dからなる。
【0033】
図5(a)に示すように、軸部14は中実の円筒形状を有している。また、被検出部15a,15b,15c及び15dは中空の円筒形状を成しており、所定の等間隔で当該軸部14に外嵌されている。軸部14の材質に制限はないが、高精度の測定精度を実現するという観点から一例を挙げると、ステンレス製であるのが好ましい。また、被検出部15a,15b,15c及び15dは導電性を有していれば良く、この他に材質上の制限はないが、好ましい材質として、銅又はアルミニウムを例示することができる。本例では、一例として、4個の被検出部15a,15b,15c,15dを設けているが、これに限られるものではなく、被検出部は、3つ以下(1以上)でも、5つ以上であっても良い。
【0034】
前記第1検出部20は、巻き線コイルである第1コイル21及びその両端部21a,21b間に接続されたコンデンサ22からなり、第2検出部25は、同じく巻き線コイルである第2コイル26及びその両端部26a,26b間に接続されたコンデンサ27からなる。同様に、第3検出部30は、巻き線コイルである第3コイル31及びその両端部31a,31b間に接続されたコンデンサ32からなる。これら第1検出部20、第2検出部25及び第3検出部30は、それぞれ第1コイル21,第2コイル26,第3コイル31と、コンデンサ22,27,32とから構成されるLC回路であり、第1コイル21,第2コイル26,第3コイル31のインダクタンス成分とコンデンサ22,27,32の容量成分により、電気的に発振する。
【0035】
図5(b)に示すように、第1コイル21、第2コイル26及び第3コイル31は、中空の円筒形状を有しており、
図4に示すように、それぞれが相互に同軸となる位置関係に配設されるとともに、移動体13とも同軸となるように配設されている。また、第1コイル21及び第2コイル26のコイル長(コイルの幅)は同じ長さLであり、相互間の距離(間隔)はL/2となっている。尚、第3コイル31のコイル長は、位置検出装置1としての測長性能(測定可能な長さ)に応じて設定される。また、本例では、移動体13に対して、第3コイル31が最も近くに配設され、次いで、第1コイル21、第2コイル26の順に配設され、第3コイル31と第1コイル21との間の間隔は、測定精度に応じた適宜間隔に設定されている。言い換えれば、第3コイル31と第1コイル21とは導体であり、あまりに近く配置すると相互に影響を受けるため、この影響が小さくなるような距離に配置される。
【0036】
前記移動体13の被検出部15a,15b,15c及び15dは、その軸線方向に沿った幅寸法が第1コイル21及び第2コイル26のコイル長と同じ寸法Lであり、且つ相互間の間隔もコイル長と同じ寸法Lに設定されている。また、被検出部15a,15b,15c及び15dの外径は、当該被検出部15a,15b,15c及び15dが、第1コイル21、第2コイル26及び第3コイル31内を、これらに接触しないで通過可能な、できる限り大きな径に設定されている。
【0037】
前記発振制御・周波数変換器40は、電気、電子回路から構成され、第1コイル21の両端部21a,21b、第2コイル26の両端部26a,26b及び第3コイル31の両端部31a,31bが接続されて、第1検出部20、第2検出部25及び第3検出部30の発振を制御するとともに、各LC回路の発振周波数をデジタル値に変換して出力する機器である。
【0038】
図6(a)に示すように、例えば、導体である被検出部15aを矢示方向に移動させて、第1コイル21内を通過させると、第1コイル21が構成するLC回路の発振周波数は、
図6(b)に示すように変化する。
図6(b)において、導体位置は、被検出部15aと第1コイル21との相対的な位置関係であり、被検出部15aが第1コイル21内に侵入するにつれて、LC回路の発振周波数が高くなり、被検出部15aが第1コイル21と重なった状態で、発振周波数が最大(ピーク)となり、被検出部15aが第1コイル21から抜け出るに従い、LC回路の発振周波数が低くなる。このように、LC回路の発振周波数は、被検出部15aと第1コイル21との相対的な位置関係によって変化する正弦波を描く。
【0039】
そして、発振制御・周波数変換器40は、被検出部15a,15b,15c及び15dとの位置関係によって変化する第1検出部20、第2検出部25及び第3検出部30における各発振周波数を検出して、これらをデジタル値として出力する。この発振制御・周波数変換器40における発振周波数の検出は、所定のサンプリング間隔ごとに実行される。
【0040】
ところで、
図6から分かるように、このような正弦波の場合、正弦波の上限及び下限のピーク付近では、被検出部15aと第1コイル21との相対的な位置変化(ΔD)に対する、発振周波数の変化(Δf)が小さいため、このピーク付近では、発振周波数の変化(Δf)から、位置変化(ΔD)を高精度に(高分解能で)検出するのは難しい。逆に、ピーク付近を除いた部分、即ち、ピーク付近とピーク付近との間(ピーク間)の部分は傾斜が大きく、位置変化(ΔD)に対する発振周波数の変化(Δf)も大きいため、発振周波数の変化(Δf)から、位置変化(ΔD)を高精度に(高分解能で)検出することができる。
【0041】
そこで、本例では、移動体13に複数の被検出部15a,15b,15c及び15dを形成するとともに、この移動体13の移動経路に、第3検出部30、第1検出部20及び第2検出部25を配設した構成を採用した。尚、第3検出部30は、設定された移動経路における移動体13の位置を、アブソリュート位置(絶対位置)として検出するためのものであり、第1検出部20及び第2検出部25は、移動体13の位置を、インクリメント位置(相対位置)として検出するためのものである。
【0042】
そして、前記位置算出部41は、所定のサンプリング間隔ごとに第1検出部20、第2検出部25及び第3検出部30から出力される発振周波数、及びデータ記憶部42に格納されたデータに基づいて、移動体13の軸線方向に沿った位置を算出し、算出した位置データを前記表示部50に出力する。そして、表示部50は、位置算出部41から送信された位置データを、前記表示制御部(図示せず)による制御の下で、液晶パネル52に表示する。尚、データ記憶部42には、
図10に示したデータテーブルが予め格納されている。
【0043】
次に、本例における位置検出の原理について説明する。
[位置検出の原理]
図7(a)に示すように、前記移動体13をその軸線に沿った方向である矢示方向に移動させて、第1検出部20の第1コイル21内を通過させると、第1コイル21から取り出されるLC回路の発振周波数は、
図7(b)に示すように変化する。即ち、発振周波数は、被検出部15a,15b,15c及び15dと第1コイル21とが重なり合う位置で、上限のピーク値を示し、被検出部15a,15b,15c及び15dと第1コイル21とが重ならない位置で、下限のピーク値を示す、波長λが2Lの正弦波を描く。
【0044】
そして、
図8に示すように、移動体13の移動方向(変位方向であり、矢示方向)において、第1検出部20の第1コイル21の下流側に、L/2の間隔をあけて、第2検出部25の第2コイル26を配設した状態で、移動体13をその軸線に沿って矢示方向に移動させて、第1検出部20の第1コイル21内、及び第2検出部25の第2コイル26内を通過させると、第1コイル21から取り出されるLC回路の発振周波数は
図8(b)において実線で示すような正弦波で変化し、第2コイル26から取り出されるLC回路の発振周波数は同じく
図8(b)において一点鎖線で示すような正弦波で変化する。
【0045】
図8(b)から分かるように、第1コイル21の発振周波数の変化は、第2コイル26の発振周波数の変化に対して、その位相がλ/4(=L/2)だけ進んでいる。即ち、第1コイル21の発振周波数の変化波形(正弦波)と、第2コイル26の発振周波数の変化波形(正弦波)とは、移動体13の移動方向において、一方の波形のピーク付近と、他方の波形のピーク間とが重なった状態となっている。尚、本例では、位相差を±λ/4とすることが目的であるので、第1コイル21と第2コイル26との間隔は、3L/2とすることもできる。
【0046】
上述したように、正弦波の上限、下限のピーク付近では、発振周波数の変化(Δf)から、位置変化(ΔD)を高精度に(高分解能で)検出するのは難しいが、逆に、ピーク付近とピーク付近との間(ピーク間)では、発振周波数の変化(Δf)から、位置変化(ΔD)を高精度に(高分解能で)検出することができる。
図8(c)に、
図8(b)に示した第1コイル21の発振周波数及び第2コイル26の発振周波数について、それぞれの単位長さ当たりの周波数の変化(Δf)を図示している。尚、
図8(c)のグラフは、
図8(b)に示したグラフを微分処理したものである。
【0047】
図8(c)に示した各波形において、上側の破線より上の部分、及び下側の破線より下の部分は周波数の変化(Δf)が大きい範囲であって、この領域は、
図8(b)に示した各波形のピーク間に相当する領域であり、発振周波数の変化(Δf)から、位置変化(ΔD)を高精度に(高分解能で)検出することができる領域である。そして、このピーク間にある各発振周波数の波形は、移動体13の移動方向において連続している。したがって、第1コイル21から取り出される発振周波数と、第2コイル26から取り出される発振周波数の内、変化波形がピーク間に相当する発振周波数を選択的に用いることで、移動体13の位置を高精度に検出することができる。尚、この点を分かり易くするために、
図8(b)及び(c)において、第1コイル21の発振周波数の使用領域、及び第2コイル26の発振周波数の使用領域についての一例を図示している。この例では、Δfのピークの約70%以上の部分だけを使うことになる。
【0048】
そして、この第1コイル21及び第2コイル26から取り出される発振周波数を用いることで、移動体13が或る位置からどの位の距離だけ変位したかを検出することができる、即ち、インクリメント値(相対値)としての移動体13の変位を検出することができる。
【0049】
図9では、移動体13の移動方向において、第1検出部20の第1コイル21の上流側に、所定の間隔をあけて、第3検出部30の第3コイル31を配設している。この状態で、移動体13をその軸線に沿って矢示方向に移動させて、第3検出部30の第3コイル31内、第1検出部20の第1コイル21内、及び第2検出部25の第2コイル26内を通過させると、第1コイル21から取り出されるLC回路の発振周波数は
図9(b)に示すような正弦波で変化し、第2コイル26から取り出される発LC回路の振周波数は
図9(c)に示すような正弦波で変化し、第3コイル31から取り出される発LC回路の振周波数は
図9(d)に示すように変化する。
【0050】
移動体13が第3検出部30の第3コイル31内を通過すると、第3コイル31から取り出されるLC回路の発振周波数は、移動方向における後ろ三つの被検出部、即ち、被検出部15b,15c及び15dが第3コイル31内にある時をピークとして、
図9(d)に示すように、順次、被検出部15b,15c及び15dが通過するにしたがって、徐々に振動周波数が小さくなり、全体として、ほぼ、線形的に変化する。移動体13と第3コイル31との相対的な位置変化(ΔD)に対する、発振周波数の変化(Δf)は小さいため、発振周波数の変化(Δf)から、位置変化(ΔD)を高精度に(高分解能で)検出するのは難しいが、第3コイル31から取り出される発振周波数から移動体13の大まかなアブソリュート位置(絶対位置)を検出することができる。
【0051】
以上のように、
図9に示した例では、第3コイル31から取り出される発振周波数から移動体13の大まかなアブソリュート位置(絶対位置)(低分解能の位置)を検出することができ、第1コイル21及び第2コイル26から取り出される発振周波数から、移動体13のインクリメント値(相対値)としての高精度な変位(高分解能の変位)を検出することができる。したがって、第3コイル31から取り出される発振周波数、及び第1コイル21及び第2コイル26から取り出される発振周波数の双方を用いることで、移動体13の絶対位置を高精度に検出することができる。
【0052】
理解を容易にするために、
図9に示した例において、第1コイル21、第2コイル26及び第3コイル31から取り出される発振周波数と、移動体13の具体的な位置との関係を例示する。但し、この例示は説明のための一例であって、具体的な例において、これが再現されることを保証するものではない。
【0053】
第1コイル21及び第2コイル26からそれぞれ取り出される発振周波数は、
図9(b)及び(c)を参照すると、最大値が2.000MHz、最小値が1.000MHzであり、高分解能として使用可能な範囲(ピーク間の範囲)は1.300MHz~1.800MHzの範囲であり、これに対応する移動体13の変位はL/2である。仮に、L=2mmとすると、高分解能として検出可能な変位は1mmである。また、第3コイル31から取り出される発振周波数は、
図9(d)を参照すると、最大値が3.00MHz、最小値が1.00MHzであり、発振周波数が3.00MHzのとき移動体13の変位は0mmであり、発振周波数が1.00MHzのとき10mmである。
【0054】
そして、移動体13の変位と、第1コイル21、第2コイル26及び第3コイル31からそれぞれ取り出される発振周波数との関係を、キャリブレーションによって予め取得しておき、これらの相関をデータテーブルとして前記データ記憶部42に格納する。尚、キャリブレーション時には、例えば、移動体13の変位を1μm単位として各発振周波数を取得することができるがこれに限られるものではない。データテーブルの一例を
図10に示す。
図10において、位置は0.001mm(=1μm)間隔である。
【0055】
前記位置算出部41は、第1コイル21、第2コイル26及び第3コイル31からそれぞれ取り出される発振周波数を発振制御・周波数変換器40から取得し、移動体13の変位(位置)を、データ記憶部42に格納されたデータテーブルを参照して算出する。例えば、第3コイル31の発振周波数が2.78MHzであるとすると、位置算出部41は、この2.78MHzに相当する移動体13の位置を、データ記憶部42に格納されたデータテーブルを参照して、例えば、0.55mm(=550μm)の位置であると推定する。次に、位置算出部41は、第1コイル21及び第2コイル26の発振周波数を参照して、発振周波数が1.3MHz~1.8MHzの範囲に内にある方の発振周波数を使用する。
【0056】
例えば、このときの第1コイル21の発振周波数が1.530MHz、第2コイル26の発振周波数が1.005MHzであったとすると、位置算出部41は、第1コイル21の発振周波数である1.530MHzを使用し、この1.530MHzを用いて、移動体13の変位を算出する。具体的には、第3コイル31の発振周波数(2.78MHz)から算出される移動体13の位置である0.55mm(=550μm)を基準に、この位置に対する位置ずれ(変位)を算出して、移動体13の位置とする。基準位置での第1コイル21の発振周波数は1.525MHzであるので、位置算出部41は、補間処理によって、第1コイル21の発振周波数は1.530MHzであるときの変位分を算出する。
図9(b)を参照すると、発振周波数の変化Δfと変位ΔDとの関係、即ち、ΔD/Δfは、ΔD/Δf=1mm/0.5MHz=2mm/MHzであり、Δfは0.005MHzであるので、位置ずれ(変位)ΔDは、ΔD=2000μm×0.005MHz=10μmとなる。以上から、移動体13の位置(絶対量としての変位)は、0.55+0.01=0.56mm(=560μm)となる。
【0057】
尚、
図10に示した例では、移動体13の位置を10μm単位として、当該移動体13の位置と、第1コイル21、第2コイル26及び第3コイル31の発振周波数との相関を表すデータテーブルとしたがこれに限られるものではなく、移動体13の位置を10μmより大きい単位としても良く、逆に、より細かい単位としても良い。大きい単位とした場合には、第3コイル31の発振周波数から算出される移動体13の絶対位置を補間処理によって、細かい単位で算出することができる。第3コイル31の発振周波数から算出される移動体13の基準位置からの変位分についても、第1コイル21及び第2コイル26の発振周波数を用いた補間処理によって、より分解能の高い変位を算出することができる。
【0058】
以上のように、本例の位置検出装置1によれば、第3コイル31から取り出される発振周波数から移動体13の大まかなアブソリュート位置(絶対位置)(低分解能の位置)を検出することができ、第1コイル21及び第2コイル26から取り出される発振周波数から、移動体13のインクリメント値(相対値)としての高精度な変位(高分解能の変位)を検出することができる。したがって、第3コイル31から取り出される発振周波数、及び第1コイル21及び第2コイル26から取り出される発振周波数の双方を用いることで、移動体13の絶対位置を高精度に検出することができる。
【0059】
以上、本発明の具体的な実施の形態について説明したが、本発明が採り得る具体的な態様は、何ら上例の態様に限定されるものではない。
【0060】
例えば、上例では、移動体13の変位のインクリメント値(相対値)を検出する相対変位検出部として、第1検出部20及び第2検出部25の2つの相対変位検出部を設けたが、当該相対変位検出部を設けることができる数は2つに限られるものではなく、3つ以上の相対変位検出部を設けることができる。その一例として、3つの相対変位検出部を設けた例を
図11に示している。
【0061】
図11(a)に示した例は、
図4に示した位置検出装置1に、相対変位検出部としての第4検出部35を設けたものに相当するが、この例では、第1コイル21と第2コイル26との間の間隔は、2L/3に設定されている。第4検出部20は、第1検出部20及び第2検出部25と同様に、巻き線コイルである第4コイル36、及びその両端部間に接続されたコンデンサ(図示せず)からなり、第4コイル36の両端部は前記発振制御・周波数変換器40に接続されている。尚、
図11(a)では、
図4及び
図9に示した、第3コイル31の図示を省略している。
【0062】
第4コイル36は、第1コイル21及び第2コイル26と同様に、中空の円筒形状を有しており、これらと同軸となるように、且つ、
図11において、第2コイル26より矢示方向右側に、これと2L/3の間隔をあけて配設されている。また、第4コイル36のコイル長は、第1コイル21及び第2コイル26のコイル長と同じ長さLである。尚、各コイル間の間隔は、コイルの個数によって設定され、n個のコイルを設ける場合には、間隔は、(L±L/n)に一般化される。
【0063】
この例では、
図11(a)に示すように、移動体13をその軸線に沿って矢示方向に移動させて、第1検出部20の第1コイル21内、第2検出部25の第2コイル26内、及び第4検出部35の第4コイル36内を通過させると、第1コイル21から取り出されるLC回路の発振周波数は
図11(b)において実線で示すような正弦波で変化し、第2コイル26から取り出されるLC回路の発振周波数は、同じく
図11(b)において一点鎖線で示すような正弦波で変化し、第4コイル36から取り出されるLC回路の発振周波数は同じく
図11(b)において点線で示すような正弦波で変化する。
【0064】
図11(b)から分かるように、第2コイル26の発振周波数の変化は、第4コイル36の発振周波数の変化に対して、その位相がλ/6(=L/3)だけ進み、第1コイル21の発振周波数の変化は、第2コイル26の発振周波数の変化に対して、その位相がλ/6(=L/3)だけ進んでいる。
【0065】
図11(c)に、
図11(b)に示した第1コイル21の発振周波数、第2コイル26の発振周波数、及び第4コイル36の発振周波数について、それぞれの単位長さ当たりの周波数の変化(Δf)、即ち、
図11(b)に示したグラフを微分処理したものを図示している。
図11(c)に示した各波形において、上側の破線より上の部分、及び下側の破線より下の部分は周波数の変化(Δf)が大きい範囲であって、この領域は、
図11(b)に示した各波形のピーク間に相当する領域であり、発振周波数の変化(Δf)から、位置変化(ΔD)を高精度に(高分解能で)検出することができる領域である。そして、このピーク間にある各発振周波数の波形は、移動体13の移動方向において連続している。
【0066】
したがって、この例においても、第1コイル21から取り出される発振周波数、第2コイル26から取り出される発振周波数、及び第4コイル36から取り出される発振周波数の内、変化波形がピーク間に相当する発振周波数を選択的に用いることで、移動体13の位置を高精度に検出することができる。尚、これを分かり易くするために、
図11(b)及び(c)において、第1コイル21の発振周波数の使用領域、第2コイル26の発振周波数の使用領域、及び第4コイル36の発振周波数の使用領域についての一例を図示している。この例では、Δfのピークの約87%以上の部分だけを使うことになる。
【0067】
また、上例では、移動体13の移動方向(変位方向)において、その上流側から下流側に向けて、順次、第3コイル31、第1コイル21及び第2コイル26を同軸に配設したが、この態様に限られるものではなく、例えば、
図12に示すように、上流側から下流側に向けて、第1コイル21、第2コイル26、第3コイル31の順に配設した態様としても良い。このような態様でも、移動体13の位置を高精度に検出することができる。
図11に示した3以上の検出部を設けた態様においても同様である。
【0068】
また、
図4、
図11及び
図12に示した態様の位置検出装置において、移動体13のアブソリュート位置(絶対位置)ではなく、インクリメント位置(相対変位)のみを検出する場合には、第3検出部30を備えている必要はなく、第1検出部20及び第2検出部25のみを備えていればよい。このような態様においても、移動体13のインクリメント位置(相対変位)を高分解能で高精度に検出することができる。
【0069】
また、
図4、
図11及び
図12に示した態様の位置検出装置等において、前記移動体13は、
図13及び
図14に示した態様を採ることができる。
図13は、移動体13に代わる移動体53を示している。
図13(a)は移動体13の正断面図であり、
図13(b)は(a)の右側面図である。
【0070】
図13(a)に示すように、移動体53は、一方が開口した有底、且つ中空状の円筒体54b、及びこの円筒体54bの図示左側端面(底部の外端面)に、当該円筒体54bと同軸に延出するように形成された軸部54aからなる保持部54と、円筒体54bの内周面に、所定間隔で設けられたリング状の凸部となる被検出部55a,55b,55c及び55dとから構成される。
【0071】
移動体13の場合と同様に、軸部54a及び円筒体54bの材質に制限はないが、高精度の測定精度を実現するという観点からステンレス製であるのが好ましい。また、被検出部55a,55b,55c及び55dは導電性を有していれば良く、この他に材質上の制限はないが、好ましい材質として、銅又はアルミニウムを例示することができる。また、
図13では、一例として、4個の被検出部55a,55b,55c,55dを設けているが、これに限られるものではなく、被検出部は、3つ以下(1以上)でも、5つ以上であっても良い。
【0072】
被検出部55a,55b,55c及び55dは、それぞれその幅が第1コイル21及び第2コイル26のコイル長と同じ寸法Lに形成され、且つ、相互間の間隔が寸法Lとなっている。この被検出部55a,55b,55c及び55dは、それぞれリング状に形成されたものを、打ち込みにより円筒体54b内に内嵌させることによって形成することできる。或いは、中空且つ円筒状の素体を円筒体54b内に内嵌させた後、凹部となる溝部を削り出すことによっても形成することができる。尚、被検出部55a,55b,55c及び55dの内径は、第1コイル21、第2コイル26及び第3コイル31が、これらに接触しないで通過可能な、できる限り小さな径に設定されている。
【0073】
この移動体53を、矢示方向に移動させると、被検出部55a,55b,55c及び55d内を、第3コイル31、第1コイル21、及び第2コイル26が相対的に通過し、これによって、各コイル31,21,26から正弦波となる発振周波数が取り出される。
【0074】
また、
図14に示した移動体60は、上述した移動体13と移動体53とを合体して、相互に連結させた複合型の移動体である。この例では、保持部54の軸部54aが移動体13の軸部14と一体化され、円筒体54bの底部が軸部14により貫通されて、当該底部が軸部14に固着された態様を採る。そして、移動体13の被検出部15a,15b,15c及び15dが、移動体53の円筒体54b内に位置し、それぞれの位置が、被検出部55a,55b,55c及び55dに対して合致するように設けられている。尚、被検出部15a,15b,15c及び15dと、被検出部55a,55b,55c及び55dとの間の間隔は、第3コイル31、第1コイル21、及び第2コイル26が相対的に通過可能な間隔となっている。
【0075】
この移動体60を、矢示方向に移動させると、被検出部15a,15b,15c及び15dと、被検出部55a,55b,55c及び55dとの隙間内に、第3コイル31、第1コイル21、及び第2コイル26が進入してそれぞれが相対的に通過し、これによって、各コイル31,21,26から正弦波となる発振周波数が取り出される。そして、この態様では、被検出部15a,15b,15c及び15dと、被検出部55a,55b,55c及び55dとによって、第3コイル31、第1コイル21、及び第2コイル26を挟み込む態様となっているので、各コイル31,21,26から取り出される正弦波としての発振周波数の変化を大きくすることができ、より高精度な位置検出が可能となる。
【0076】
また、上例では、第1検出部20の第1コイル21、第2検出部25の第2コイル26及び第3検出部の第3コイル31を中空の円筒形状に形成したが、第1コイル21、第2コイル26及び第3コイル31の形状は、このような中空の円筒形状に限られるものではなく、
図15に示すような平面的な形状を有するものであっても良い。
図11に示した3以上の検出部を設けた態様においても同様である。
【0077】
図15に示した位置検出装置100は、第1検出部120、第2検出125及び第3検出部130、移動体113の構成が上述した位置検出装置1と異なる。したがって、
図15において、位置検出装置1と同じ構成部分については同じ符号を付している。
【0078】
図15に示すように、位置検出装置100は、基板116上に平面的に形成され、且つ移動体113の移動方向である矢示方向に沿って一列に整列された第3コイル131、第1コイル121及び第2コイル126を備えている。この位置検出装置100では、第1コイル121及び両端部121a,121b間に接続されたコンデンサ122から第1検出部120が構成され、第2コイル126及びその両端部126a,126b間に接続されたコンデンサ127から第2検出部125が構成される。また、第3コイル131及びその両端部131a,131b間に接続されたコンデンサ132から第3検出部130が構成される。
【0079】
そして、第1コイル121の両端部121a,121b、第2コイル126の両端部126a,126b及び第3コイル131の両端部131a,31bがそれぞれ基板116上に設けられた前記発振制御・周波数変換器40に接続されている。第1コイル121、第2コイル126及び第3コイル131のコイル長(矢示方向の幅)、並びに配置間隔は、位置検出装置1の例と同じである。
【0080】
図16に示すように、移動体113は軸部114及び本体115から構成される。軸部114は中実の円筒状を有し、前記測定子12と同軸となるように当該測定子12に連結され、適宜支持部材によって、軸線に沿った方向に移動可能に支持される。本体115は、正面から見て、櫛歯状、言い換えれば、輪郭線が矩形波状に形成されており、
図16において下方に突出する4つの突出部が形成され、右から順に被検出部115a,115b,115c及び115dとなっている。移動方向(変位方向)である矢示方向における各被突出部115a,115b,115c及び115dの幅、及びその間の谷部の幅は、位置検出装置1の移動体13における例と同じである。また、移動体113は、その被検出部115a,115b,115c及び115dの下面と、基板116の上面と間に、所定の間隔をあけて、一列に整列された第3コイル131、第1コイル121及び第2コイル126の上方を矢示方向に変位可能に設けられている。
【0081】
以上の構成を備えた位置検出装置100においても、上述した位置検出装置1と同様の作用、効果が奏される。
【0082】
また、この位置検出装置100において、前記移動体113は、
図17に示した変形例としての態様を採ることができる。
【0083】
図17(a)に示した移動体143は、軸部144及び本体145から構成される。軸部144は中実の円筒状を有し、前記測定子12と同軸となるように当該測定子12に連結され、適宜支持部材によって、軸線に沿った方向に変位可能に支持される。本体145は、その変位方向(矢示方向)に沿って長尺に設けられる平面視矩形状をしており、第3コイル131、第1コイル121及び第2コイル126と対向する側の面に、矩形の導体が変位方向に沿って列設されている。導体は右から順に被検出部146a,146b,146c及び146dとなっている。変位方向(矢示方向)における各被検出部146a,146b,146c及び146dの幅、及びその間隔は、位置検出装置1の移動体13における例と同じである。
【0084】
また、
図17(b)に示した移動体153は、軸部154及び本体155から構成される。軸部154は中実の円筒状を有し、前記測定子12と同軸となるように当該測定子12に連結され、適宜支持部材によって、軸線に沿った方向に変位可能に支持される。本体155は導体から構成されており、その変位方向(矢示方向)に沿って長尺に設けられる平面視矩形状をしている。また、本体155は、その長手方向に沿って、4つの矩形をした打ち抜き空間が形成されており、残った導体部分が、右から順に被検出部156a,156b,156c及び156dとなっている。変位方向(矢示方向)における各被検出部156a,156b,156c及び156dの幅、及びその間隔は、位置検出装置1の移動体13における例と同じである。
【0085】
また、
図15に示した第3コイル131、第1コイル121及び第2コイル126の基板116上への配置は、変形例として、
図18に示した配置を例示することができる。
【0086】
図18(a)及び(b)に示した例では、移動体113の変位方向(矢示方向)に沿って、第3コイル131、第1コイル121及び第2コイル126を設けるとともに、第1コイル121及び第2コイル126については、変位方向(矢示方向)と直交する方向に並設した配置にしている。また、第2コイル126は、第1コイル121に対して、L/2だけ移動体113の変位方向(矢示方向)にシフトしている。この例において、第2コイル126と第1コイル121との前記直交方向における間隔は、任意に設定される。尚、相対変位検出部としてn個のコイルを設ける場合には、各コイル相互間で移動体113の変位方向(矢示方向)にシフト距離は、(L±L/n)に一般化される。
【0087】
そして、第3コイル131は、(a)に示すように、変位方向と直交する方向において、第1コイル121及び第2コイル126の内側に配置することができ、或いは、(b)に示すように、変位方向と直交する方向において、第2コイル126の外側に配置することができ、また、図示はしていないが、同じく変位方向と直交する方向において、第1コイル121の外側に配置することができる。これらの場合、移動体131の変位方向と直交する方向の幅、言い換えれば、その被検出部115a,115b,115c,115dの幅は、これらが第3コイル131、第1コイル121及び第2コイル126と上下方向に重なる幅に設けられる。
図17に示した移動体143及び153についても同様である。
【0088】
また、上例では、位置算出部41及びデータ記憶部42を、測定部10としてケース11内に設けた構成としたが、このような構成に限られるものではなく、位置算出部41及びデータ記憶部42を、ケース11とは別に向けた構成としても良い。この場合、位置算出部41と発振制御・周波数変換器40とは通信手段によって接続され、発振制御・周波数変換器40から位置算出部41に発振周波数データが送信される。そして、この場合に、表示部50も測定部10とは別体として設けられていてもよく、表示部10は位置算出部41及びデータ記憶部42と一体的に形成されていても良い。
【0089】
或いは、測定部10と表示部50とが別体として設けられ、位置算出部41と表示部10とが通信手段によって接続された構成であっても良い。この場合、位置算出部41から表示部50に測定値としての位置データが送信され、表示部50に測定値が表示される。
【0090】
繰り返しになるが、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。当業者にとって変形および変更が適宜可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変更が含まれる。
【符号の説明】
【0091】
1 位置検出装置
10 測定部
11 ケース
12 測定子
13 移動体
14 軸部
15 被検出部
15a 第1被検出部
15b 第2被検出部
15c 第3被検出部
15d 第4被検出部
20 第1検出部
21 巻き線コイル
22 コンデンサ
25 第2検出部
26 巻き線コイル
27 コンデンサ
30 第3検出部
31 巻き線コイル
32 コンデンサ
40 発振制御・周波数変換器
41 位置算出部
42 データ記憶部
50 表示部
【要約】
【課題】高い分解能で高精度に位置検出することができる位置検出装置を提供する。
【解決手段】長尺形状を有し、その長手方向に沿って移動可能に設けられるとともに、該長手方向に沿って設けられた複数の導電性の被検出部15a,15b,15c,15dを有する移動体13と、移動体13の移動方向に沿って配列され、移動体13の各被検出部15a,15b,15c,15dと所定間隔をあけて対向可能に設けられた第1検出部20及び第2検出部25と、第1検出部20及び第2検出部25からの出力信号を処理して、移動体13の変位を検出する変位検出部40,41と、を備える。第1検出部20及び第2検出部25は、それぞれ、LC回路を形成するための巻き線コイル21,26、及び該巻き線コイル21,26の両端部間に接続されたコンデンサ22,27を備える。
【選択図】
図4