(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】正極材料、正極板及び電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/58 20100101AFI20241024BHJP
H01M 4/136 20100101ALI20241024BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20241024BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20241024BHJP
【FI】
H01M4/58
H01M4/136
H01M4/36 E
H01M10/052
(21)【出願番号】P 2023517872
(86)(22)【出願日】2021-09-18
(86)【国際出願番号】 CN2021119310
(87)【国際公開番号】W WO2022057920
(87)【国際公開日】2022-03-24
【審査請求日】2023-05-10
(31)【優先権主張番号】202010987080.X
(32)【優先日】2020-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】510177809
【氏名又は名称】ビーワイディー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BYD Company Limited
【住所又は居所原語表記】No. 3009, BYD Road, Pingshan, Shenzhen, Guangdong 518118, P. R. China
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼娜
(72)【発明者】
【氏名】庄明昊
(72)【発明者】
【氏名】▲ハオ▼▲ロン▼
(72)【発明者】
【氏名】潘▲儀▼
【審査官】梅野 太朗
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-530684(JP,A)
【文献】特開2012-212663(JP,A)
【文献】国際公開第2016/088193(WO,A1)
【文献】特開2013-232313(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109962221(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0170479(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M4/00-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1リン酸マンガン鉄リチウム材料、第2リン酸マンガン鉄リチウム材料、第3リン酸マンガン鉄リチウム材料、第4リン酸マンガン鉄リチウム材料及び第5リン酸マンガン鉄リチウム材料を含み、前記第1リン酸マンガン鉄リチウム材料が凝集体であり、前記第4リン酸マンガン鉄リチウム材料と第5リン酸マンガン鉄リチウム材料がいずれも擬似単結晶であり、前記第2リン酸マンガン鉄リチウム材料と第3リン酸マンガン鉄リチウム材料が、それぞれ凝集体及び/又は擬似単結晶であり、
D
50
5<D
50
4<D
50
3<D
50
2<D
50
1の粒径関係を満たし、かつD
50
2=aD
50
1、D
50
3=bD
50
1、D
50
4=cD
50
1、D
50
5=dD
50
1であり、5μm≦D
50
1≦15μmであり、
ここで、前記D
50
1~D
50
5は、順に前記第1リン酸マンガン鉄リチウム材料~前記第5リン酸マンガン鉄リチウム材料の粒径D
50の値を表し、単位がいずれもμmであり、前記aの値の範囲が0.35~0.5であり、前記bの値の範囲が0.2~0.27であり、前記cの値の範囲が0.17~0.18であり、前記dの値の範囲が0.15~0.16であり、
前記第1リン酸マンガン鉄リチウム材料、第2リン酸マンガン鉄リチウム材料、第3リン酸マンガン鉄リチウム材料及び第4リン酸マンガン鉄リチウム材料の鉄に対するマンガンのモル比が順に増加し、前記第5リン酸マンガン鉄リチウム材料の鉄に対するマンガンのモル比が前記第3リン酸マンガン鉄リチウム材料の鉄に対するマンガンのモル比より大き
く、
前記第1リン酸マンガン鉄リチウム材料と、第2リン酸マンガン鉄リチウム材料と、第3リン酸マンガン鉄リチウム材料と、第4リン酸マンガン鉄リチウム材料と、第5リン酸マンガン鉄リチウム材料との粒子数比が(0.8~1.2):(0.8~1.2):(1.6~2.4):(6.4~9.6):(6.4~9.6)である、正極材料。
【請求項2】
前記第1リン酸マンガン鉄リチウム材料の鉄に対するマンガンのモル比が1~1.25の範囲にあり、前記第2リン酸マンガン鉄リチウム材料の鉄に対するマンガンのモル比が1.5~2.33の範囲にあり、前記第3リン酸マンガン鉄リチウム材料の鉄に対するマンガンのモル比が2.33~4の範囲にあり、前記第4リン酸マンガン鉄リチウム材料及び第5リン酸マンガン鉄リチウム材料の鉄に対するマンガンのモル比がいずれも4~9の範囲にある、請求項1に記載の正極材料。
【請求項3】
前記aの値の範囲が0.41~0.45であり、前記bの値の範囲が0.21~0.23である、請求項1又は2に記載の正極材料。
【請求項4】
前記aが0.41であり、前記bが0.23であり、前記cが0.18であり、前記dが0.16である、請求項1~3のいずれか一項に記載の正極材料。
【請求項5】
前記第1リン酸マンガン鉄リチウム材料と、第2リン酸マンガン鉄リチウム材料と、第3リン酸マンガン鉄リチウム材料と、第4リン酸マンガン鉄リチウム材料と、第5リン酸マンガン鉄リチウム材料との粒子数比が1:1:2:8:8である、請求項1~
4のいずれか一項に記載の正極材料。
【請求項6】
前記凝集体の一次粒子のメジアン径が100nm~500nmの範囲にある、請求項1~
5のいずれか一項に記載の正極材料。
【請求項7】
集電体と、前記集電体上に配置された正極材料層とを含み、前記正極材料層が、請求項1~
6のいずれか一項に記載の正極材料を含む、正極板。
【請求項8】
請求項
7に記載の正極板を含む、電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の参照出願)
本願は、2020年9月18日に中国国家知識産権局に提出された、出願名称が「正極材料、正極スラリー、正極板及び電池」である中国特許出願第202010987080.X号の優先権を主張するものであり、その全ての内容は参照により本願に組み込まれるものとする。
【0002】
本願は、電池の技術分野に関し、具体的には、正極材料、正極板及び電池に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウムイオン電池の正極材料は、電池の特性に対して極めて重要である。動力電池に一般的に使用される正極材料は、三元系材料、リン酸鉄リチウム材料、リン酸マンガン鉄リチウム材料を含み、リン酸マンガン鉄リチウム(LMFPと略称される)は、安全性及びサイクル特性が三元系材料の安全性及びサイクル特性より高く、その電位がリン酸鉄リチウム(リン酸鉄リチウムの電位が3.4Vである)の電位よりはるかに高く、電池のエネルギー密度を上げる見込みがあるため、安全性がより高く、エネルギー密度がより高いリン酸マンガン鉄リチウム材料は、徐々に動力電池の主な正極材料となる。
【0004】
現在の市場によく見られるLMFPの製品形態は、主に擬似単結晶及び凝集体の2種があり、擬似単結晶材料は、1つ又は少数(5つ未満)の一次粒子で構成されたものであり、内部粒界が非常に少なく、凝集体材料は、複数の一次粒子が凝集した二次粒子材料であり、内部粒界が多い。擬似単結晶LMFP材料の一次粒子が大きいため、このような材料は、電池のサイクル過程におけるマンガン溶出程度が低いが、同じ金属割合で到達できる容量が低い。一方、凝集体の一次粒子が小さいと、比表面積が大きく、このような材料の到達できる容量は高い。しかしながら、凝集体材料は、圧縮過程において押し潰されやすく、このような材料の新鮮な表面が電解液に曝されることを引き起こす。その結果、電池のサイクル中に深刻なマンガン溶出現象が発生することを引き起こし、サイクル特性が劣化する。また、LMFP材料のMn/Feモル比は、構造安定性、電池のサイクル安定性、レート特性などに影響を与える重要な要因である。したがって、高い容量、低いマンガン溶出量、高いサイクル安定性などの特性を兼ねる電池を製造するように、全く新しいLMFP含有の正極材料を提供する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願は、正極材料における粒径が異なる多種のLMFP材料の粒径の設計と、粒径が異なるLMFP材料の形態及びMn/Feモル比の設計とにより、該正極材料で製造された正極板が適切な圧密密度を有するとともに、電池の各電気化学特性を最適化することができる、正極材料、正極板及び電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
具体的には、第1態様では、本願に係る正極材料は、第1リン酸マンガン鉄リチウム材料、第2リン酸マンガン鉄リチウム材料、第3リン酸マンガン鉄リチウム材料、第4リン酸マンガン鉄リチウム材料及び第5リン酸マンガン鉄リチウム材料を含み、前記第1リン酸マンガン鉄リチウム材料が凝集体であり、前記第4リン酸マンガン鉄リチウム材料と第5リン酸マンガン鉄リチウム材料がいずれも擬似単結晶であり、前記第2リン酸マンガン鉄リチウム材料と第3リン酸マンガン鉄リチウム材料が、それぞれ凝集体及び/又は擬似単結晶であり、
D50
5<D50
4<D50
3<D50
2<D50
1の粒径関係を満たし、かつD50
2=aD50
1、D50
3=bD50
1、D50
4=cD50
1、D50
5=dD50
1であり、5μm≦D50
1≦15μmであり、
ここで、前記D50
1~D50
5は、順に前記第1リン酸マンガン鉄リチウム材料~前記第5リン酸マンガン鉄リチウム材料の粒径D50の値を表し、単位がいずれもμmであり、前記aの値の範囲が0.35~0.5であり、前記bの値の範囲が0.2~0.27であり、前記cの値の範囲が0.17~0.18であり、前記dの値の範囲が0.15~0.16であり、
前記第1リン酸マンガン鉄リチウム材料、第2リン酸マンガン鉄リチウム材料、第3リン酸マンガン鉄リチウム材料及び第4リン酸マンガン鉄リチウム材料の鉄に対するマンガンのモル比が順に増加し、前記第5リン酸マンガン鉄リチウム材料の鉄に対するマンガンのモル比が前記第3リン酸マンガン鉄リチウム材料の鉄に対するマンガンのモル比より大きい。
【0007】
第2態様では、本願に係る正極スラリーは、本願の第1態様に記載の正極材料と、導電剤及び溶媒とを含む。
【0008】
第3態様では、本願に係る正極板は、集電体と、前記集電体上に配置された正極材料層とを含み、前記正極材料層は、本願の第1態様に記載の正極材料を含むか、又は本願の第2態様に記載の正極スラリーを前記集電体に塗布したものである。
【0009】
第4態様では、本願に係る電池は、本願の第3態様に記載の正極板を含む。
【発明の効果】
【0010】
本願の有益な効果は、以下を含む:本願に係る正極材料に含まれる5種のリン酸マンガン鉄リチウム材料が上記特定のD50粒径関係、上記特定の形態要件及び特定のMn/Feモル比の大きさ要件を満たす場合、該正極材料で製造された正極板の圧密密度が大きく、そして、該正極板を有する電池が、高い容量、電圧プラトー、サイクル安定性、及び低いマンガン溶出量などの優れた電気特性を持つ。
【0011】
本願の追加の態様及び利点は、一部が以下の説明において示され、一部が以下の説明において明らかになるか、又は、本願の実施により把握される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の説明は、本願の例示的な実施形態であり、説明すべきこととして、当業者にとって、本願の原理から逸脱することなく、さらに複数の改良及び修正を行うことができ、これら改良及び修正も本願の保護範囲にあると考えられる。
【0013】
本願の第1態様では、本願の実施例に係る正極材料は、第1リン酸マンガン鉄リチウム材料、第2リン酸マンガン鉄リチウム材料、第3リン酸マンガン鉄リチウム材料、第4リン酸マンガン鉄リチウム材料及び第5リン酸マンガン鉄リチウム材料を含み、第1リン酸マンガン鉄リチウム材料が凝集体であり、第4リン酸マンガン鉄リチウム材料と第5リン酸マンガン鉄リチウム材料がいずれも擬似単結晶であり、第2リン酸マンガン鉄リチウム材料と第3リン酸マンガン鉄リチウム材料がそれぞれ凝集体及び/又は擬似単結晶であり、
D50
5<D50
4<D50
3<D50
2<D50
1の粒径関係を満たし、かつD50
2=aD50
1、D50
3=bD50
1、D50
4=cD50
1、D50
5=dD50
1であり、5μm≦D50
1≦15μmであり、
ここで、D50
1~D50
5は、順に上記第1リン酸マンガン鉄リチウム材料~上記第5リン酸マンガン鉄リチウム材料の粒径D50の値を表し、単位がいずれもμmであり、aの値の範囲が0.35~0.5であり、bの値の範囲が0.2~0.27であり、cの値の範囲が0.17~0.18であり、dの値の範囲が0.15~0.16であり、
前記第1リン酸マンガン鉄リチウム材料、第2リン酸マンガン鉄リチウム材料、第3リン酸マンガン鉄リチウム材料及び第4リン酸マンガン鉄リチウム材料の鉄に対するマンガンのモル比が順に増加し、前記第5リン酸マンガン鉄リチウム材料の鉄に対するマンガンのモル比が前記第3リン酸マンガン鉄リチウム材料の鉄に対するマンガンのモル比より大きい。
【0014】
本願では、上記D50
1~D50
5を順にそれぞれの二次粒子の粒径と見なしてもよい(LMFP擬似単結晶材料が1つの一次粒子で構成されると、「二次粒子」と見なしてもよい)。異なる形態、異なる粒径D50の値及び異なるMn/Feモル比を有するLMFP材料は、電池のレート特性及び電池のサイクル安定性、Mn溶出量などに影響を与える。凝集体形態の第1リン酸マンガン鉄リチウム材料は、粒界が多く、その内部にリチウムイオンが拡散する場合に乗り越えるエネルギー障壁が大きいが、それを構成する一次粒子の粒径が小さく、リチウムイオンのその内部における拡散経路が短く、Mn/Feモル比が最も小さく、レート特性が高く、また、材料の大きい比表面積による高いMn溶出程度を低下させることに寄与することができる。擬似単結晶形態の第4及び第5リン酸マンガン鉄リチウム材料は、粒界が少なく、拡散エネルギー障壁が小さいが、一次粒子の粒径が大きく、リチウムイオンのそれらの内部における拡散経路が長く、Mn/Feモル比が大きく、高い構造安定性を維持するとともに、電池の電圧プラトー、エネルギー密度などの特性をさらに向上させることができる。したがって、上記特定の形態要件、D50粒径要件及びMn/Feモル比の総合作用で、上記5種のリン酸マンガン鉄リチウム材料は、充放電能力が基本的に同じであり、構造がいずれも安定し、上記正極材料で製造された電池は、高いレート特性、高い容量、高いサイクル安定性、低いマンガン溶出量などの優れた特性を有することができる。
【0015】
また、上記5種のLMFPの特定のD50粒径要件で、上記正極材料で製造された正極板は、良好な圧密密度を有するようにすることができる。上記a、b、c、dの値が上記範囲にないと、この5種のリン酸マンガン鉄リチウム材料に対して粒度をうまく区分することができないため、異なる粒度レベルのLMFP材料の多段充填によりそれらで製造された極板の圧密密度を上げることができない。
【0016】
本願の一実施例では、上記aの値の範囲は、0.41≦a≦0.45であり、上記bの値の範囲は、0.21≦b≦0.23である。本願の別の実施例では、上記aは、0.41であり、上記bは、0.23であり、上記cは、0.18であり、上記dは、0.16である。
【0017】
本願では、第1リン酸マンガン鉄リチウム材料のD50
1が小さすぎると、上記多種の異なるサイズの粒子を組み合わせても、正極板の圧密密度は、依然として低く、また、該第1リン酸マンガン鉄リチウム材料は、D50
1が小さすぎると、一次粒子の粒径がより小さく、該第1リン酸マンガン鉄リチウム材料の比表面積が増加し、さらに電解液との副反応が増加し、該第1リン酸マンガン鉄リチウム材料のサイクル過程における構造安定性が低下し、Mn溶出量が増加する。第1リン酸マンガン鉄リチウム材料のD50
1が大きすぎると、正極板の圧密密度は、ある程度低下し、また、上記各粒子間の粒度関係によっては、この場合の擬似単結晶形態の第4、第5リン酸マンガン鉄リチウム材料の粒子の粒径も大きいため、リチウムイオンのこの2種の材料における拡散経路が長くなり、さらに電池のレート特性が低下することを引き起こす。
【0018】
なお、「第2リン酸マンガン鉄リチウム材料と第3リン酸マンガン鉄リチウム材料がそれぞれ凝集体及び/又は擬似単結晶である」ことは、第2リン酸マンガン鉄リチウム材料が凝集体若しくは擬似単結晶であるか、又は凝集体と擬似単結晶の両方を含有し、同様に第3リン酸マンガン鉄リチウム材料が凝集体若しくは擬似単結晶であるか、又は凝集体と擬似単結晶の両方を含有すると理解することができる。
【0019】
本願では、第1リン酸マンガン鉄リチウム材料、第2リン酸マンガン鉄リチウム材料、第3リン酸マンガン鉄リチウム材料及び第4リン酸マンガン鉄リチウム材料のMn/Feモル比は、順に増加し、第4及び第5リン酸マンガン鉄リチウム材料のMn/Feモル比は、いずれも順に第3リン酸マンガン鉄リチウム材料のMn/Feモル比より大きく、第3リン酸マンガン鉄リチウム材料のMn/Feモル比は、第2リン酸マンガン鉄リチウム材料のMn/Feモル比より大きく、第2リン酸マンガン鉄リチウム材料のMn/Feモル比は、第1リン酸マンガン鉄リチウム材料のMn/Feモル比より大きい。第5リン酸マンガン鉄リチウム材料のMn/Feモル比は、第4リン酸マンガン鉄リチウム材料のMn/Feモル比に等しくても、等しくなくてもよい。
【0020】
本願の一実施例では、上記第1リン酸マンガン鉄リチウム材料のMn/Feモル比は、1~1.25である。上記第2リン酸マンガン鉄リチウム材料のMn/Feモル比は、1.5~2.33である。上記第3リン酸マンガン鉄リチウム材料のMn/Feモル比は、2.33~4である。上記第4リン酸マンガン鉄リチウム材料と第5リン酸マンガン鉄リチウム材料のMn/Feモル比は、それぞれ4~9である。5種のLMFP材料のMn/Feモル比がこれらの範囲にあると、上記5種のリン酸マンガン鉄リチウム材料は、充放電レベルの一致性がより高く、構造安定性がより高くなる。
【0021】
本願の一実施例では、上記正極材料において、上記凝集体の一次粒子のメジアン径は、100nm~500nmの範囲にある。即ち、上記第1リン酸マンガン鉄リチウム材料の一次粒子のメジアン径は、100nm~500nmの範囲にあり、凝集体形態の第2リン酸マンガン鉄リチウム材料の一次粒子のメジアン径は、100nm~500nmの範囲にあり、凝集体形態の第3リン酸マンガン鉄リチウム材料の一次粒子のメジアン径は、100nm~500nmの範囲にある。
【0022】
二次粒子の同じ粒径の設計では、一方では、メジアン径が上記メジアン径の範囲にある凝集体は、該LMFP材料の二次粒子を構成する一次粒子の数の増加による二次粒子の比表面積の増加を回避し、さらに、副反応が発生する面積の増加を回避することができ、また、正極板の圧縮過程において、二次粒子の破砕率を低下させ、さらに新たな界面の生成及び電池特性の劣化を引き起こすという問題を回避することができる。一方では、メジアン径が上記メジアン径の範囲にある凝集体は、リチウムイオンの二次粒子材料における拡散経路を短縮することにより、LMFP材料の容量発揮が低く、電池の抵抗が増加し、電力特性が低下するという問題を回避する。また、上記凝集体のメジアン径が上記範囲にあると、凝集体の一次粒子が小さすぎることによる電解液との副反応の増加を回避し、さらに凝集体の構造安定性の低下、Mn溶出量の増加を回避することができる。また、リチウムイオンの凝集体における拡散経路を適切にし、電池のレート特性を改善することができる。
【0023】
本願の一実施例では、上記擬似単結晶の一次粒子の粒径は、0.5μm~2.5μmの範囲にある。これにより、擬似単結晶の一次粒子が大きすぎることによりリチウムイオンの拡散経路が長くなり、電池のレート特性が低下することを回避することができる。本願の一具体的な実施例では、上記第4リン酸マンガン鉄リチウム材料と第5リン酸マンガン鉄リチウム材料の一次粒子の粒径は、いずれも1.5μm~2.5μmの範囲にあってもよく、擬似単結晶形態の第3リン酸マンガン鉄リチウム材料の一次粒子のメジアン径は、1.0μm~1.5μmの範囲にあり、擬似単結晶形態の第2リン酸マンガン鉄リチウム材料の一次粒子のメジアン径は、0.5μm~1.0μmの範囲にある。これにより、上記5種のリン酸マンガン鉄リチウム材料の充放電の一致性がより高くなる。
【0024】
本願では、上記第1リン酸マンガン鉄リチウム材料と、第2リン酸マンガン鉄リチウム材料と、第3リン酸マンガン鉄リチウム材料と、第4リン酸マンガン鉄リチウム材料と、第5リン酸マンガン鉄リチウム材料との粒子数比は、(0.8~1.2):(0.8~1.2):(1.6~2.4):(6.4~9.6):(6.4~9.6)であってもよい。上記5種のリン酸マンガン鉄リチウム材料の粒子数比が上記範囲にあると、上記正極材料で製造された正極板は、高い圧密密度(2.55g/cm3以上)を有することができる。本願の一実施例では、上記第1リン酸マンガン鉄リチウム材料と、第2リン酸マンガン鉄リチウム材料と、第3リン酸マンガン鉄リチウム材料と、第4リン酸マンガン鉄リチウム材料と、第5リン酸マンガン鉄リチウム材料との粒子数比は、1:1:2:8:8である。これにより、正極板は、極めて高い圧密密度(例えば、約2.9g/cm3)を有することができる。さらに、上記第1リン酸マンガン鉄リチウム材料と、第2リン酸マンガン鉄リチウム材料と、第3リン酸マンガン鉄リチウム材料と、第4リン酸マンガン鉄リチウム材料と、第5リン酸マンガン鉄リチウム材料との粒子質量比は、100:14:2.5:0.5:0.3であってもよい。
【0025】
本願の一実施例では、上記第1~第5リン酸マンガン鉄リチウム材料の表面は、該各リン酸マンガン鉄リチウム材料の導電性が向上するように、いずれも炭素被覆層を有してもよい。
【0026】
上記凝集体形態のLMFP材料は、以下のステップ(1)~ステップ(4)を含む方法で製造することができる。
【0027】
ステップ(1)において、LMFPを合成する原材料(マンガン源、鉄源、リン源、リチウム源及び炭素源)を一定の質量比で混合し、混合後の材料を、材料の粒径が40nm~60nmになるまで水で湿式粉砕する。
【0028】
ステップ(2)において、上記粉砕後の湿った材料を噴霧乾燥させて、乾燥粉体を得る。
【0029】
ステップ(3)において、酸素濃度が150ppm未満の雰囲気で、上記乾燥粉体を焼結し、焼結過程は、順に第1昇温段階、第1恒温段階、第2昇温段階、第2恒温段階及び降温段階を含み、第1昇温段階は、室温から第1恒温温度(例えば、400℃)まで昇温する段階であり、昇温時間が2.5h~3.5hであってもよく、第1恒温段階は、恒温時間が3.5h~5.5hであり、第2昇温段階は、第1恒温温度(例えば、400℃)から第2恒温温度(例えば、700℃)まで昇温する段階であり、昇温時間が2.5h~4.0hであってもよく、第2恒温段階は、恒温時間が2.5h~4.5であってもよく、降温段階は、第2恒温温度(例えば、700℃)から約50℃まで降温する段階であり、降温時間が5.5h~7.5hである。
【0030】
ステップ(4)において、焼結後の材料に対して、圧力が3MPa~5MPaであってもよく、時間が2h~3hであってもよい気流破砕を行い、その後にふるい分け分級を行って、所望の粒径D50を有する材料を得る。
【0031】
本願の一実施例では、上記ステップ(1)において、混合の時間は、0.5h~1.5hであってもよく、本願の別の実施例では、上記ステップ(1)において、混合の時間は、0.75h~1.2hであってもよい。
【0032】
本願の一実施例では、ステップ(1)において、リン酸マンガン鉄を同時にマンガン源、鉄源及びリン源として選択してもよい。リチウム源は、水酸化リチウム、炭酸リチウム、硝酸リチウム、シュウ酸リチウム、リン酸二水素リチウム、クエン酸リチウム及び酢酸リチウムのうちの少なくとも1種を含んでもよいが、これらに限定されない。炭素源は、グルコース、スクロース、デンプン、フルクトース、クエン酸、アスコルビン酸及びポリエチレングリコールのうちの少なくとも1種を含むが、これらに限定されない。
【0033】
本願の一実施例では、上記ステップ(1)において、粉砕時に、まず、直径が0.6mm~0.8mmの粉砕媒体で材料を、粒径が50μm以下になるまで粉砕し、次に、直径が0.1mm~0.3mmの粉砕媒体で材料を、粒径が40nm~60nmになるまで粉砕し、
本願の一実施例では、上記ステップ(2)において、噴霧乾燥時の入口温度は、150℃~200℃であってもよく、本願の別の実施例では、噴霧乾燥時の入口温度は、160℃~180℃であってもよい。
【0034】
上記擬似単結晶形態のLMFP材料の製造方法は、凝集体形態のLMFP材料の製造方法と対比すると、焼結時の第1恒温温度及び第2恒温温度が異なり、気流破砕の圧力が異なるという点で相違する。
【0035】
擬似単結晶形態のLMFP材料を製造する場合、焼結過程において、第1昇温段階は、室温から第1恒温温度(例えば、450℃)まで昇温する段階であり、昇温時間が2.5h~3.5hであってもよく、第1恒温段階は、恒温時間が3.5h~5.5hであり、第2昇温段階は、第1恒温温度(例えば、450℃)から第2恒温温度(例えば、750℃)まで昇温する段階であり、昇温時間が2.5h~4.0hであってもよく、第2恒温段階は、恒温時間が2.5h~4.5であってもよく、降温段階は、第2恒温温度(例えば、750℃)から約50℃)まで降温する段階であり、降温時間が6.5h~8.5hである。そして、擬似単結晶形態のLMFP材料を製造する場合、上記焼結の後に、5MPa~8MPaの圧力で気流破砕を2h~3h行い、その後にふるい分け分級を行って、所望の粒径を有する材料を得ることができる。
【0036】
本願の実施例に係る正極スラリーは、上記正極材料を含む。該正極スラリーは、導電剤、結着剤及び溶媒をさらに含む。
【0037】
本願の第2態様では、上記正極材料と導電剤と結着剤との質量比は、100:(0.5~5):(0.5~5)である。本願の別の実施例では、上記正極スラリーにおける固形分含有量は、10wt%~80wt%である。
【0038】
上記導電剤は、カーボンナノチューブ、カーボンブラック及びグラフェンのうちの少なくとも1種を含み、本願の別の実施例では、上記導電剤は、カーボンナノチューブ、カーボンブラック及びグラフェンを含み、3元導電剤により、該正極スラリーで形成された正極材料層は、高い導電性を有する。さらに、カーボンナノチューブとカーボンブラックとグラフェンとの質量比は、6:5:2であってもよい。
【0039】
上記結着剤は、電池の分野における一般的な選択であり、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニルアルコール(PVA)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド(PI)、ポリ(アクリル酸)(PAA)、ポリアクリレート、ポリオレフィン、カルボキシメチルセルロース(CMC)ナトリウム及びアルギン酸ナトリウムから選択される1種又は複数種であってもよい。PVDFは、フッ化ビニリデンと極性基含有のオレフィン系化合物とが共重合した共重合体であってもよく、極性基は、カルボキシル基、エポキシ基、ヒドロキシ基及びスルホン酸基のうちの少なくとも1種を含み、極性基の存在により、正極スラリーで形成された正極材料層と集電体との間の剥離強度を向上させることができる。
【0040】
上記溶媒は、電池の分野における一般的な選択であり、例えば、N-メチルピロリドン(NMP)を用いる。
【0041】
本願の一実施例では、上記正極スラリーには、正極スラリーの分散性及び安定性をよりよく向上させるように分散剤がさらに含有されてもよい。分散剤は、ポリビニルピロリドン(PVP)などであってもよい。
【0042】
上記正極スラリーを調製する場合、粒度が大きい第1LMFP材料、第2LMFP材料及び第3LMFP材料をそれらの粉末形態で添加し、このように混合時に沈降が発生することを防止することができ、粒度が小さい第4LMFP材料及び第5LMFP材料をそれらの粉末形態で添加しても、それらのスラリー形態で添加してもよく、それぞれのスラリーには、有機溶媒に加えて、分散剤、例えばPVPなどが含有されてもよい。
【0043】
本願の第3態様では、本願の実施例に係る正極板は、集電体と、上記集電体上に配置された正極材料層とを含み、上記正極材料層は、上記正極材料を含むか、又は上記正極スラリーを上記集電体に塗布したものである。これにより、上記正極材料を含有する正極板は、高い圧密密度を有する。
【0044】
上記正極材料層は、上記正極材料に加えて、導電剤と結着剤をさらに含む。正極材料層は、上記正極スラリーを集電体に塗布したものである。
【0045】
本願の第4態様では、本願の実施例に係る電池は、上記正極板を含む。該電池は、高い容量、低い確率のマンガン溶出、高いサイクル安定性などの優れた電気特性を有する。
【0046】
以下、複数の実施例を参照して本願の実施例をさらに説明する。
【0047】
正極材料の製造について、
上記形態要件を満たす第1LMFP材料~第5LMFP材料をそれぞれ粒子1、粒子2、粒子3、粒子4、粒子5と表記し、表1における粒度、数量、Mn/Feモル比に基づいて、それぞれ5種の粒子を選択して、混合して、異なる実施例に対応する正極材料を得る。
【0048】
各LMFP材料の各項目の測定方法は、以下のとおりである。
【0049】
各LMFP材料の粒度の測定方法について、測定装置としてレーザー粒度計を用いて、基準モデルがマルバーン2000/3000である。測定方法は、各LMFP材料を脱イオン水で分散させ、10min超音波処理を行い、粒子の屈折率を1.74として、測定して各LMFP材料の粒径D50を得ることである。
【0050】
粒径が異なるLMFP材料の粒子数の測定方法は、粒径が異なるLMFP材料を略球形状とし、各粒子の粒径D50と体積密度(約3.6g/cm3)に基づいて、個々の球の質量を計算することである。粒径が異なるLMFP材料の供給質量を制御することにより、粒径が異なるLMFP材料の粒子数を制御する。
【0051】
各LMFP材料の一次粒子のメジアン径(粒径D50)の測定方法は、走査型電子顕微鏡(SEM)により10000倍の倍率で各LMFP材料の写真を撮像し、約300個の一次粒子のサイズを人為的に測定し、かつ個数分布を作成して、一次粒子のメジアン径を得ることである。
【0052】
各LMFP材料のMn/Feモル比について、0.2000gの各LMFP粒子を秤量し、分析的に純粋な市販の塩酸、硝酸を添加し加熱して分解させた後(分解液の調製は、体積比が1:1の市販の濃塩酸と水の混合液を1mL取って、3mLの市販の濃硝酸と混合することである)、濾紙で濾過し、かつ脱イオン水で濾紙を3回以上洗い流して、イオンが濾液に十分に入ることを保証した後、100mlに定容し、GB/T9723-2007の化学試薬:フレーム原子吸光分析通則(AAS)に従ってFeとMnのイオン濃度を測定し検出し、かつMn/Feモル比を計算する。
【0053】
正極スラリーの製造について、一定の割合の有機溶媒NMPと結着剤PVDFとを撹拌機に添加し、1h撹拌した後、導電剤(具体的には、質量比が0.6:0.5:0.3のカーボンチューブ、カーボンブラック及びグラフェンの混合物)を添加し、30min撹拌して、粒子1、粒子2及び粒子3をそれぞれの粉末形態で添加し、1.5h撹拌した後、粒子4と粒子5の、PVP含有のNMPスラリーを添加し、1.5h撹拌し、ふるいにかけて、正極スラリーを得る。正極スラリーにおいて、粒子1~粒子5で構成された正極材料と、導電剤と、結着剤PVDFと、有機溶媒NMPとの質量比は、100:2:2:30である。
【0054】
正極板の製造について、各実施例に対応する正極スラリーをアルミニウム箔の両側の表面にそれぞれ塗布し、乾燥させた後、アルミニウム箔に正極材料層を形成して、圧縮されない正極板を得て、圧縮されない正極板を40×100mmの大きさにして、大型水圧プレスで圧縮して、圧縮した正極板を得る。正極板の面密度及び圧縮後の厚さに基づいて、正極板の圧密密度を計算し、結果を表2にまとめる。
【0055】
電池の製造について、各実施例に対応する正極スラリーを、面密度が2.0g/dm2で、圧密密度が2.65g/cm3の片面正極板に製造し、各片面正極板で2025のボタン電池を製造する。
【0056】
まず、各実施例に対応する正極スラリーを、面密度が4.0g/dm2で、圧密密度が2.65g/cm3の両面正極板に製造して、面密度が2.1g/dm2で、圧密密度が1.60g/cm3の両面負極板を提供し、セパレータとしてPPフィルムを用いて、組み立て053450全電池を得る。
【0057】
各ボタン電池の比容量を測定し、各全電池の中央値電圧、レート特性及びサイクル過程における負極のMn溶出量を測定し、結果を表2にまとめる。
【0058】
比容量の測定方法は、各実施例に対応するボタン電池に対して、0.1Cで電圧が4.3Vになるとともにオフ電流が0.05Cになるまで定電流-定電圧(CC-CV)充電を行って、0.1Cで電圧が2.5Vになるまで定電流-定電圧放電を行い、このように充放電サイクルを3回行って、第3回サイクル後の放電容量を取って、正極板の正極材料層の塗布量で除算し、電池の比容量を計算することである。
【0059】
中央値電圧とは、電池の1/3Cの放電曲線における、放電容量の半分に対応する放電電圧を指す。中央値電圧の測定方法は、各実施例に対応する全電池に対して、1/3Cで電圧が4.3Vになるとともにオフ電流が0.05Cになるまで定電流-定電圧(CC-CV)充電を行って、1/3Cで電圧が2.5Vになるまで定電流-定電圧(CC-CV)放電を行って、電圧vs容量の放電曲線をプロットし、中央値電圧を見つけることである。
【0060】
レート特性の測定方法は、25℃で、各実施例に対応する全電池を0.2Cで4.2Vに定電流充電して、0.2Cと5Cの異なるレートでそれぞれ2.5Vに定電流放電し、5Cでの放電容量と0.2Cでの放電容量との比を計算し、この値で電池のレート特性を評価することである。
【0061】
負極のMn溶出量の測定方法は、45℃で、各実施例に対応する全電池を1Cで4.3Vに定電流充電して、1Cで2.5Vに定電流放電し、このように500回の充放電サイクルを行った後、電池を解体し、負極板の負極材料中のMn含有量を測定し、Mn含有量を誘導結合プラズマ発光分析装置(ICP)で測定することである。
【0062】
また、本願の技術手段の有益な効果を際立たせるために、比較例1~7の正極材料をさらに提供し、それらに使用された各LMFP材料のパラメータを表1にまとめる。
【0063】
【0064】
【0065】
表1~2から分かるように、実施例1~実施例13の正極材料では、各粒子の形態、粒度関係、Mn/Fe比の大きさ関係がいずれも本願に記載の要件を満たす場合、正極板の圧密密度が2.65g/cm3以上に達し、最大で2.86g/cm3に達することができ、電池の比容量が基本的に明らかに低下しないため、電池に高いエネルギー密度を有する。また、上記各実施例の正極材料により、電池は、高い中央値電圧、高いレート特性及び優れたサイクル特性を併せ持つことができる。例えば、各実施例の正極材料で製造された電池は、レート特性に優れ、5Cと0.2Cでの放電容量の比率が84%以上であり、91%に達することができ、これは、電池の連続出力特性が高いことを表明する。電池に対して、45℃で500回のサイクルを行った後、負極のMn溶出量が低く、500ppmより低い。
【0066】
また、比較例1~2と実施例1との比較から分かるように、第2LMFP材料~第5LMFP材料と第1LMFP材料との粒径D50の比のa、b、c、dが上述した定義範囲にないと、それらで製造された極板の圧密密度を大幅に低下させることになる。比較例3~5と実施例1との比較から分かるように、この5種のLMFP材料の粒子数比が上述した定義範囲にないと、極板の圧密密度を顕著に低下させることになる。比較例7と実施例1との比較から分かるように、第1LMFP材料~第5LMFP材料のMn/Feモル比が本願において定義されている大きさ関係を満たさないと、電池のレート特性を明らかに低下させ、負極のMn溶出量を大幅に増加させることになる。
【0067】
上述した実施例は、本願のいくつかの実施形態を示すものに過ぎず、その説明が具体的で詳細であるが、本願の特許請求の範囲を限定するものと理解してはならない。なお、当業者にとっては、本願の構想から逸脱しない前提で、さらにいくつかの変形及び改良を行うことができ、これらは、いずれも本願の保護範囲に属する。したがって、本願の保護範囲は、添付された特許請求の範囲を基準とすべきである。