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特許7576718マイクロ波ヒートシールとフラッシュ紡糸による不織布のプロセス方法、マイクロ波ヒートシール装置及び不織布製造設備
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  • 特許-マイクロ波ヒートシールとフラッシュ紡糸による不織布のプロセス方法、マイクロ波ヒートシール装置及び不織布製造設備 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】マイクロ波ヒートシールとフラッシュ紡糸による不織布のプロセス方法、マイクロ波ヒートシール装置及び不織布製造設備
(51)【国際特許分類】
   D04H 1/554 20120101AFI20241024BHJP
   D04H 1/724 20120101ALI20241024BHJP
【FI】
D04H1/554
D04H1/724
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023579447
(86)(22)【出願日】2023-03-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(86)【国際出願番号】 CN2023083629
(87)【国際公開番号】W WO2023185669
(87)【国際公開日】2023-10-05
【審査請求日】2023-12-21
(31)【優先権主張番号】202210316584.8
(32)【優先日】2022-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523481182
【氏名又は名称】厦門当盛新材料有限公司
【氏名又は名称原語表記】XIAMEN DANGSHENG NEW MATERIAL CO., LTD
【住所又は居所原語表記】101, No.17-2 Fengshan North Fifth Road, Haicang District Xiamen, Fujian, China
(74)【代理人】
【識別番号】100205936
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 海龍
(74)【代理人】
【識別番号】100132805
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 貴之
(72)【発明者】
【氏名】羅 章生
(72)【発明者】
【氏名】朱 慧飛
(72)【発明者】
【氏名】何 力軍
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特表2000-516670(JP,A)
【文献】特開2004-232139(JP,A)
【文献】特公昭58-037428(JP,B2)
【文献】特開2003-052447(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110528172(CN,A)
【文献】国際公開第2008/108238(WO,A1)
【文献】特開2014-084548(JP,A)
【文献】特開2011-047062(JP,A)
【文献】特開平06-287852(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2003-0086401(KR,A)
【文献】特表2005-521803(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0157442(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0056257(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 1/00 - 18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
S1であって、トウを収集及び積層して不織布前駆体とし、不織布前駆体に、マイクロ波のエネルギーを吸収してそれを熱エネルギーに変換するためのマイクロ波加熱液を加えるステップと、
S2であって、S1で得られた不織布前駆体にマイクロ波加熱処理を行い、マイクロ波加熱後の不織布の熱プレス成形を行うステップとを含み、
前記マイクロ波加熱液は、マイクロ波エネルギーの吸収能力の強い極性溶媒であることを特徴とするマイクロ波ヒートシールとフラッシュ紡糸による不織布のプロセス方法。
【請求項2】
前記マイクロ波加熱液の表面張力は、20~73mN/mであることを特徴とする請求項1に記載のマイクロ波ヒートシールとフラッシュ紡糸による不織布のプロセス方法。
【請求項3】
前記マイクロ波加熱液の常圧における沸点は、前記不織布の融点以上であり、又は、前記マイクロ波加熱液の常圧における沸点は、不織布の融点±10℃であることを特徴とする請求項1に記載のマイクロ波ヒートシールとフラッシュ紡糸による不織布のプロセス方法。
【請求項4】
前記マイクロ波加熱液は、アルコール、カルボン酸、水のうちの1つ又は複数の組み合わせであることを特徴とする請求項1に記載のマイクロ波ヒートシールとフラッシュ紡糸による不織布のプロセス方法。
【請求項5】
前記マイクロ波加熱液は、1-ペンタノール及びエタノールからなり、
前記1-ペンタノールとエタノールの質量比は(40~95):10であることを特徴とする請求項1に記載のマイクロ波ヒートシールとフラッシュ紡糸による不織布のプロセス方法。
【請求項6】
S2で、前記マイクロ波加熱処理の時のマイクロ波周波数は300~25000MHzであり、マイクロ波加熱処理室内のマイクロ波加熱液の沸点は、不織布の融点±5℃であることを特徴とする請求項1に記載のマイクロ波ヒートシールとフラッシュ紡糸による不織布のプロセス方法。
【請求項7】
不織布前駆体にマイクロ波加熱液を加える前に、不織布前駆体に予圧成形処理を行うことを特徴とする請求項1に記載のマイクロ波ヒートシールとフラッシュ紡糸による不織布のプロセス方法。
【請求項8】
前記トウの素材は、ポリエチレンであることを特徴とする請求項1に記載のマイクロ波ヒートシールとフラッシュ紡糸による不織布のプロセス方法。
【請求項9】
請求項1~のいずれか一項に記載のマイクロ波ヒートシールとフラッシュ紡糸による不織布のプロセス方法を実現するためのマイクロ波ヒートシール装置であって、
マイクロ波遮断箱体と、マイクロ波発生装置と、不織布前駆体にマイクロ波加熱液をスプレーするためのスプレー装置とを含み、前記マイクロ波発生装置及びスプレー装置は、マイクロ波遮断箱体内に配置されることを特徴とするマイクロ波ヒートシール装置。
【請求項10】
フラッシュ紡糸のトウ製造装置と、マイクロ波ヒートシール装置とを含み、
前記マイクロ波ヒートシール装置として請求項9に記載のマイクロ波ヒートシール装置を採用することを特徴とする不織布製造設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラッシュ紡糸の技術分野に関し、特に、マイクロ波ヒートシールとフラッシュ紡糸による不織布のプロセス方法、マイクロ波ヒートシール装置及び不織布製造設備に関する。
【背景技術】
【0002】
不織布は、方向性のある又はランダムな繊維によって構成されており、防湿性と通気性を備え、柔らかで、軽量で、不燃性であり、分解しやすく、無毒と刺激性がなく、カラフルで、低価格で、リサイクルが可能であるなどの特徴を有する。
【0003】
不織布は、一般的に化学繊維又は植物繊維を原料とするが、現在、フラッシュ紡糸も不織布原料の1つである。フラッシュ紡糸とは、ポリマー溶液をその溶媒の沸点以上で高圧に押し出し、押し出された溶液の細い流れから、圧力が急激に低下する時に溶媒がフラッシュして、ポリマーが固化して繊維になることを指す。溶媒フラッシュによりポリマーを冷却して固化させて繊維を形成させる紡糸方法は、溶液フラッシュ紡糸とも呼ばれ、ただし、フラッシュ紡糸の製造では、ポリマー及び溶媒が溶媒の沸点以上で分解せず、且つ溶媒が蒸発しやすいことが求められる。
【0004】
フラッシュ紡糸技術は、不織布の生産方法として、主な過程は、ポリマーを溶媒に溶解し、高分子溶液を形成させた後、紡糸口金から温度又は圧力が元と異なる誘電領域に吐出して、液体の細い流れを形成させ、細い流れの中の溶媒がフラッシュして元の細い流れの形態が変わり、そして熱を連れ出すと、溶質であるポリマーが析出した後に急速に冷却して、溶媒ガス流、及び微細な三次元網目構造を備えるトウ(フィラメント束)を形成させ、即ち、紡糸溶液が紡糸口金から離れる時に、溶媒が急速に蒸発して、ミクロン又はサブミクロンの細さのモノフィラメントからなる網目構造の長繊維トウを生成し、次に、特定の方法でこれらのトウを沈殿させて収集して、その熱プレス成形を行うと不織布を得ることができる。
【0005】
トウを沈殿させて収集して、その熱プレス成形を行って不織布を得る方法として、従来のフラッシュ紡糸不織布の熱プレスローラー成形方法は簡単であるが、製品は層化しやすく、層化・剥離強度が低く、これは成形されたフラッシュ紡糸不織布原料(典型的なのは、例えば、フラッシュ紡糸ポリエチレン)の熱伝導性が一般に不良であり、フラッシュ紡糸不織布の表層と中間層との間に温度勾配があるため、フラッシュ紡糸不織布におけるトウの表層の結束力は中間層より大きいためである。
【0006】
上記のフラッシュ紡糸不織布の熱プレスローラー成形方法の欠点を克服するために、当分野では代わりにマイクロ波加熱方法が採用され、マイクロ波加熱方法を採用する最も大きな特徴は、マイクロ波は被加熱物の内部で発生され、熱源は物体の内部に由来し、均一に加熱し、「外は焼けたが中は生焼けである」ような中途半端な出来はなく、製品の品質を向上させるために役立つとともに、「内外同時加熱」により加熱時間が大幅に短縮され、加熱効率は高く、製品の生産量を向上させるために役立つことである。マイクロ波加熱は慣性が非常に小さいため、温度昇降の急速な制御を実現でき、連続生産及び自動制御のために役立つ。フラッシュ紡糸不織布成形プロセスで従来のプロセスの熱プレスローラー加熱の代わりにマイクロ波加熱を採用するのは製品の剥離強度の向上につながる。
【0007】
しかし、不織布によく使用される原料の特性(例えば、ポリエチレンフラッシュ紡糸)により、一部の不織布にはマイクロ波エネルギーの吸収能力が弱いという問題があり、これは不織布におけるマイクロ波加熱の均一性に影響を与え、不織布の成形過程でマイクロ波加熱の均一性が悪いと、不織布の表面と内部の温度勾配は大きくなり、不織布の層化・剥離強度は悪くなる。
【0008】
授権公告号がCN107513196Bで、公開日が2017年12月26日である中国発明特許にはマイクロ波を使用してポリマーを効率的に加熱する方法が開示され、効率的な波吸収特性を備える少量の誘電損失セラミック材料をポリマー又はそのモノマー又はオリゴマーに添加することにより、マイクロ波によって加熱できない従来の低誘電損失のマイクロ波透過性ポリマー及びそのモノマーとオリゴマーは、マイクロ波の作用で、急速に加熱され得る。しかし、フラッシュ紡糸システムでは、高分子溶液の成分配合比及びプロセス条件が厳しいため、開示された当該形態どおりに直接、紡糸システムに効率的な波吸収特性を備える誘電損失セラミック材料を加えるのは難しく、効率的な波吸収特性を備える適切な誘電損失セラミック材料をスクリーニングして不織布の製造に用いるのも難しい。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、上記の背景技術で言及された従来の不織布は層化・剥離強度が不十分であるという課題を解決するために、以下のステップを含むマイクロ波ヒートシールとフラッシュ紡糸による不織布のプロセス方法を提供し、
S1であって、トウを収集及び積層して不織布前駆体とし、不織布前駆体に、マイクロ波のエネルギーを吸収してそれを熱エネルギーに変換するためのマイクロ波加熱液を加え、
S2であって、S1で得られた不織布前駆体にマイクロ波加熱処理を行い、マイクロ波加熱後の不織布の熱プレス成形を行い、
前記マイクロ波加熱液は、マイクロ波エネルギーの吸収能力の強い極性溶媒である。
【0010】
一実施例では、前記マイクロ波加熱液の表面張力が、20~50mN/mである。
【0011】
一実施例では、前記マイクロ波加熱液の常圧における沸点が前記不織布の融点以上であり、又は、前記マイクロ波加熱液の常圧における沸点が不織布の融点±10℃である。
【0012】
一実施例では、前記マイクロ波加熱液が、アルコール、カルボン酸、水のうちの1つ又は複数の組み合わせである。
【0013】
一実施例では、前記マイクロ波加熱液が1-ペンタノール及びエタノールからなり、前記1-ペンタノールとエタノールの質量比が(40~95):10である。
【0014】
一実施例では、前記マイクロ波加熱処理の時のマイクロ波周波数が300~25000MHzであり、前記マイクロ波加熱処理の時のマイクロ波周波数が300~25000MHzであり、マイクロ波加熱処理室内のマイクロ波加熱液の沸点が不織布の融点±5℃である。
【0015】
一実施例では、不織布前駆体にマイクロ波加熱液を加える前に、不織布前駆体に予圧成形処理を行う。好ましくは、前記不織布前駆体が予成形ローラーの熱間圧延によって予圧成形される。
【0016】
本発明は、また、マイクロ波ヒートシール装置を提供し、前記マイクロ波ヒートシール装置は、上記のマイクロ波ヒートシールとフラッシュ紡糸による不織布のプロセス方法を実現するために用いられ、マイクロ波遮断箱体と、マイクロ波発生装置と、不織布前駆体にマイクロ波加熱液をスプレーするためのスプレー装置とを含み、前記マイクロ波発生装置及びスプレー装置は、マイクロ波遮断箱体内に配置される。
【0017】
本発明は、また、フラッシュ紡糸のトウ製造装置と、マイクロ波ヒートシール装置とを含む不織布製造設備を提供し、前記マイクロ波ヒートシール装置は、上記のマイクロ波ヒートシール装置を採用する。
【発明の効果】
【0018】
上述のことから分かるように、従来技術と比べて、本発明によって提供されるマイクロ波ヒートシールとフラッシュ紡糸による不織布のプロセス方法は、以下の有益な効果を有する。
本発明によって提供される当該プロセス方法によって不織布を製造する場合は、不織布の内層は従来の熱プレス成形プロセスのように温度勾配があるわけではないため、トウ繊維間の結合強度はより均一で堅牢であり、最終的に完成不織布の層化・剥離強度は顕著に向上する。
【0019】
本発明の他の特徴及び有益な効果は、以下の明細書の記載で述べられ、かつ、その一部が明細書から自明になるか、又は本発明の実施で知られる。本発明の目的及び他の有益な効果は、明細書、特許請求の範囲及び図面で特別に説明された構造によって実現され、得られてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
以下、本発明の実施例又は従来技術に係る技術的解決手段をより明瞭に説明するために、実施例又は従来技術の記述で使用すべき図面を簡単に紹介し、言うまでもないが、以下の記述に出る図面は本発明のいくつかの実施例であり、当業者は、新規性のある作業をすることなく、これらの図面に基づいて他の図面を得ることができ、以下の記述に係る図面に記載される位置関係は、特に説明がなければ、いずれも図面におけるアセンブリの描画方向に準拠する。
【0021】
図1図1は、本発明の一実施例によって提供される不織布製造設備の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施例の目的、技術的解決手段及び利点がより明瞭になるよう、本発明の実施例に係る図面を参照して、本発明の実施例に係る技術的解決手段を明瞭、かつ完全に記述し、自明なことに、記述される実施例は、全ての実施例ではなく、本発明のいくつかの実施例であり、以下に記述される本発明の異なる実施形態において設計される技術特徴は互いに矛盾するものでさえなければ互いに組み合わせることができ、当業者は、本発明の実施例に基づいて、新規性のある作業をすることなく得ていた他の実施例の全てが、いずれも本発明の保護範囲に属する。
【0023】
本発明を記述するにあたり、なお、本発明で使用される全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は当業者が理解している一般的な意味と同じ意味を有するもので、本発明に対する制限として理解できず、さらに、本発明で使用される用語は本明細書の文脈及び関連分野におけるこれらの用語の意味と一致する意味を有するものと理解すべきであり、本発明で明確に定義される場合を除き、理想的な又は正式的な意味で理解すべきではない。
【0024】
本発明は、以下のステップを含むマイクロ波ヒートシールとフラッシュ紡糸による不織布のプロセス方法を提供する。
(1)トウ300を収集及び積層して不織布前駆体500とし、不織布前駆体500に、マイクロ波のエネルギーを吸収してそれを熱エネルギーに変換するためのマイクロ波加熱液400を加え、前記マイクロ波加熱液400は、マイクロ波エネルギーの吸収能力の強い極性溶媒である。
【0025】
(2)得られた不織布前駆体500にマイクロ波加熱処理を行い、マイクロ波加熱後の不織布の熱プレス成形を行う。
【0026】
具体的には、本発明によって提供されるマイクロ波ヒートシールとフラッシュ紡糸による不織布のプロセス方法は、マイクロ波エネルギーの吸収能力の弱い不織布の製造で、マイクロ波加熱を行う前に、不織布前駆体500に、マイクロ波のエネルギーを吸収してそれを熱エネルギーに変換するためのマイクロ波加熱液400を加え、マイクロ波加熱液400が不織布の内層の繊維に染み込み、そしてマイクロ波によって加熱された後、不織布中のマイクロ波加熱液400はマイクロ波のエネルギーを吸収して、温度が上昇して、熱を不織布前駆体500の繊維に伝達し、マイクロ波加熱液400が沸点に達して蒸発し、不織布前駆体500中の繊維は均一に加熱されて融点温度又はその近くに達し、さらにその熱プレス成形を行い、この時にその内層には従来の熱プレス成形プロセスのように温度勾配があるわけではないため、繊維間の結合強度はより均一で堅牢であり、最終的に完成不織布600の層化・剥離強度は向上する。
【0027】
ただし、ステップ(1)で、マイクロ波加熱液400の選択について、前記マイクロ波加熱液400は、マイクロ波エネルギーの吸収能力の強い極性溶媒である。好ましくは、前記マイクロ波加熱液400の表面張力が十分に低く、これによってマイクロ波加熱液400は前記不織布に浸透することができ、具体的には、前記マイクロ波加熱液400の表面張力は、20~73mN/mであることが好ましい。好ましくは、前記マイクロ波加熱液400の常圧における沸点が前記不織布の融点以上であり、又は、前記マイクロ波加熱液400の常圧における沸点が不織布の融点±10℃であり、マイクロ波加熱液400の常圧温度を特定の範囲に限定することが好ましく、その常圧における沸点が高すぎるとマイクロ波加熱液400の凝縮回収のコストは高くなり、且つ不織布繊維同士が溶融して互いに融着する可能性があり、常圧における沸点が低すぎると、マイクロ波加熱処理の時のマイクロ波加熱処理室内の気圧に対して大幅に調整しないと、マイクロ波加熱液は不織布に十分な熱を伝達することができないため、コストは高い。
【0028】
素材が高密度ポリエチレンである不織布の場合は、前記マイクロ波加熱液400は、アルコール、カルボン酸、水のうちの1つ又は複数の組み合わせであることが好ましく、ただし、前記一価アルコールとして、1-ペンタノール、エタノール、エチレングリコール、グリセロールなどの従来の一価アルコール又は多価アルコール溶液を用いてもよく、前記カルボン酸として、酢酸、プロピオン酸などを用いてもよい。より好ましくは、前記マイクロ波加熱液400が1-ペンタノール及びエタノールからなり、前記1-ペンタノールとエタノールの質量比が(40~95):10であり、ただし、1-ペンタノールとエタノールは共沸混合物であり(両者は無限に混和する)、当該混合物は、不織布前駆体500の内層繊維によく染み込んで浸透することができ、染み込み浸透性が良好であり、且つそのマイクロ波エネルギーの吸収能力は強く、その常圧における沸点は、高密度ポリエチレン不織布で当該マイクロ波ヒートシールプロセスを用いる最適な温度に近いため、特に大きな加圧又は真空を必要とせず、当該混合物をスプレーしてマイクロ波加熱処理を行って得た不織布600は内層には従来の熱プレス成形プロセスにある温度勾配が解消されており、トウ繊維間の結合強度は均一で堅牢であり、最終的に完成不織布600の層化・剥離強度は顕著に向上する。より好ましくは、前記マイクロ波加熱液400が質量比90:10の1-ペンタノール及びエタノールからなる。
【0029】
ステップ(1)で、好ましくは、マイクロ波加熱液の最低の添加量は不織布の単位面積の質量の5%であり、最大の場合は不織布がマイクロ波加熱液を吸収して飽和状態になるまで加える。好ましくは、マイクロ波加熱液の添加量が10~120g/mであり、即ち、単位面積の不織布前駆体500におけるマイクロ波加熱液の添加量は、10~120g/mである。
【0030】
ただし、ステップ(2)で、好ましくは、前記マイクロ波加熱処理の時のマイクロ波周波数が300~25000MHzであり、マイクロ波加熱時間が1~3分であり、より好ましくは、前記マイクロ波加熱処理の時のマイクロ波周波数が433MHz、915MHz、2450MHz、5800MHz又は22125MHzである。好ましくは、マイクロ波加熱処理室の気圧を制御することによりマイクロ波加熱処理室内のマイクロ波加熱液の沸点は不織布の融点±5℃になる。
【0031】
ただし、ステップ(2)で、好ましくは、二次熱プレス成形の温度が140~150℃であり、圧力が4~6MPaである。
【0032】
好ましくは、不織布前駆体500にマイクロ波加熱液400を加える前に、不織布前駆体500に予圧成形処理を行い、不織布前駆体500の予圧成形は後の加工工程に備えるためである。具体的には、不織布前駆体500は、予成形ローラー109の熱間圧延によって初歩的に予備成形してもよく、初歩的成形の温度は、140~150℃であり、圧力は、4~6MPaである。
【0033】
本発明は、また、図1の実施例に示される、上記のマイクロ波ヒートシールとフラッシュ紡糸による不織布のプロセス方法を実現するためのマイクロ波ヒートシール装置200を提供し、当該装置は、マイクロ波遮断箱体210と、マイクロ波発生装置230と、不織布前駆体500にマイクロ波加熱液400をスプレーするためのスプレー装置220とを含み、前記マイクロ波発生装置230及びスプレー装置220は、マイクロ波遮断箱体210内に配置される。
【0034】
具体的に実施するにあたり、図1に示すように、不織布前駆体500はマイクロ波遮断箱体210内に入り、不織布の成分のマイクロ波のエネルギーに対する吸収が弱い場合は、スプレー装置220はマイクロ波加熱液400をスプレーしてそれが不織布前駆体500の内層繊維に染み込み、そしてマイクロ波発生装置230によって発生されたマイクロ波が照射すると、不織布前駆体500中のマイクロ波加熱液400がマイクロ波のエネルギーを吸収して、温度が上昇して、沸点に達して蒸発し、不織布繊維中のトウ300は均一加熱されて融点温度又はその近くに達し、次に成形ローラー240によってプレス成形されることによって、不織布の内層の繊維間の結合はより堅牢になり、最終的に完成不織布600の層化・剥離強度は向上する。
【0035】
好ましくは、前記マイクロ波ヒートシール装置200のマイクロ波遮断箱体210にガス回収孔211がさらに設けられ、使用する時は、不織布中のマイクロ波加熱液400は沸点に達して蒸発し、ガス状のマイクロ波加熱液400を回収孔211から回収し、前記ガス回収孔211は、ガス状のマイクロ波加熱液400を回収するために用いられるだけでなく、ガス回収孔211によって前記マイクロ波遮断箱体210内の気圧を制御することにより、マイクロ波加熱液400の沸点を調整して、不織布中の繊維の温度の間接的な制御という目的を達成することができる。
【0036】
好ましくは、前記マイクロ波ヒートシール装置200が、マイクロ波加熱後の不織布前駆体500に熱プレス成形を行うための熱プレス機構をさらに含み、前記熱プレス機構は、マイクロ波遮断箱体210内に設けられる。
具体的には、図1に示すように、前記熱プレス機構として熱プレス成形ローラー240を用いてもよい。熱プレス機構をマイクロ波遮断箱体210内に設けることにより、マイクロ波加熱後の不織布前駆体500に対して速やかに熱プレス成形し、完成不織布600の性能を向上させるために役立つ。なお、上記の設計により、他のタイプの熱プレス機構を用いてマイクロ波加熱後の不織布前駆体500に熱プレス成形を行ってもよく、これには、実施例に記載の熱プレス成形ローラー240が含まれるが、それに限定されない。
【0037】
好ましくは、前記マイクロ波遮断箱体210に入口及び出口が設けられ、前記入口及び出口にはいずれも位置が対向する1対の第2密封ローラー212が設けられ、これによって不織布前駆体500は入口の第2密封ローラー212の間からマイクロ波遮断箱体210に入って、マイクロ波加熱処理及び熱プレス成形処理を経て出口の第2密封ローラー212の間から出てくる。入口及び出口に第2密封ローラー212を設けるのは、マイクロ波遮断箱体210の密封性を向上させるために役立つ。
【0038】
図1に示すように、本発明は、また、フラッシュ紡糸のトウ製造装置100と、上記のマイクロ波ヒートシール装置200とを含む不織布製造設備を提供し、使用する時は、フラッシュ紡糸のトウ製造装置100は、トウ300を製造してトウ300を収集及び積層して不織布前駆体500とするために用いられ、次に不織布前駆体500をマイクロ波ヒートシール装置200でマイクロ波加熱して熱プレス成形させて、完成不織布600を得る。
【0039】
ただし、前記フラッシュ紡糸のトウ製造装置100は、従来の装置であり、外箱101、紡糸装置102、減圧板103、低温圧力領域104、紡糸口金105、偏向板106、収集面107、第1密封ローラー108、予成形ローラー109、軸受110、回転軸111、駆動軸112、紡糸ガス回収孔113などの部品及び機構を含み、当該フラッシュ紡糸のトウ製造装置100の機構やパーツなどの接続関係及び位置関係、その動作原理及び過程はいずれも従来技術であり、ここで説明を省略する。
【0040】
なお、上記の設計により、当業者は、他の適合するモデル及びタイプの従来のフラッシュ紡糸のトウ製造装置100を用いてもよく、これには、上記の形態に記載のフラッシュ紡糸のトウ製造装置100が含まれるが、それに限定されない。
【0041】
本発明は、また、下記の実施例及び比較例を提供する。
(実施例1)
(1)トウ300及び不織布前駆体500の製造
紡糸原液であって、メルトフローインデックスが8g/10分である高密度ポリエチレン(HDPE)をフラッシュ紡糸の溶質として用い、高密度ポリエチレン(HDPE)の融点は約135℃である。ジフルオロクロロメタン(R22)、テトラフルオロジクロロエタン(R114)をフラッシュ紡糸の溶媒とし、窒素(N)を溶解用の加圧ガスとし、ただし、6:33:11の質量比のHDPE、R22、R144を6MPaのNにおいて220℃で加圧下撹拌しながら溶解して、フラッシュ紡糸溶液を調製し、これは紡糸原液である。
【0042】
製造過程であって、フラッシュ紡糸のトウ製造装置100を用いてトウ300を製造し、具体的な過程は、紡糸原液を紡糸口金から吐出させて、紡糸原液の溶媒が瞬時に蒸発し、紡糸原液のポリマーが冷却し固化して繊維束を形成させ、繊維束は収集面107に堆積されて凝集して繊維網を形成すると、不織布前駆体500を得る。ただし、製造過程のプロセスパラメータとしては、紡糸孔の直径が0.5mmであり、紡糸速度が12000m/分であり、収集面で凝集される繊維網が約70g/mである。
【0043】
(2)不織布前駆体500の予圧成形であって、不織布前駆体500は予成形ローラー109の熱間圧延によって予備成形され、シートを形成し、ただし、初歩的成形の温度は、140℃であり、圧力は、4MPaである。
【0044】
(3)マイクロ波ヒートシールとフラッシュ紡糸による不織布ステップであって、不織布前駆体500をマイクロ波ヒートシール装置200に送り込み、不織布前駆体500にマイクロ波加熱液400をスプレーし、スプレー後の不織布前駆体500にマイクロ波加熱処理を行い、次にマイクロ波加熱後の不織布の二次熱プレス成形を行って、完成不織布600を得る。
【0045】
ただし、マイクロ波加熱液400は、質量比90:10の1-ペンタノール及びエタノールからなり、エタノールは、95%工業用アルコールを用い、その表面張力が約22.3mN/mであり、常圧における沸点が約78℃であり、1-ペンタノールの表面張力は約27.15mN/mであり、常圧における沸点は約137.5℃であり、マイクロ波加熱液のスプレー量は約50g/mであり、マイクロ波加熱処理でマイクロ波周波数は2450MHzであり、マイクロ波遮断箱体210(即ち、マイクロ波加熱処理室)の内圧を制御することによりマイクロ波遮断箱体210内のマイクロ波加熱液の沸点を130℃程度とし、マイクロ波加熱時間は、1分であり、二次熱プレス成形の圧力は、4MPaであり、二次熱プレス成形の温度は、140℃である。
【0046】
(実施例2)
実施例2に係るトウ300及び不織布前駆体500の製造、不織布前駆体500の予圧成形の過程と条件は、実施例1と完全に一致する。
マイクロ波ヒートシールとフラッシュ紡糸による不織布ステップであって(当該ステップは、実施例と一致し、違いは実施例2のマイクロ波加熱液400が1-ペンタノールであるだけである)、不織布前駆体500にマイクロ波加熱液400をスプレーし、スプレー後の不織布前駆体500にマイクロ波加熱処理を行い、次にマイクロ波加熱後の不織布の二次熱プレス成形を行って、完成不織布600を得る。
ただし、マイクロ波加熱液400は、1-ペンタノールであり、その表面張力が約27.15mN/mであり、常圧における沸点が約137.5℃であり、マイクロ波加熱液スプレー量が約50g/mであり、マイクロ波加熱処理でマイクロ波周波数は2450MHzであり、マイクロ波遮断箱体210の内圧は0.09MPaであり、マイクロ波加熱時間は、2分であり、二次熱プレス成形の圧力は、4MPaであり、二次熱プレス成形の温度は、140℃である。
【0047】
(実施例3)
実施例3に係るマイクロ波ヒートシールとフラッシュ紡糸による不織布の製造方法及び製造条件はいずれも実施例と一致し、違いは次のとおりだけである。
マイクロ波ヒートシールとフラッシュ紡糸による不織布ステップで、マイクロ波加熱液400は、質量比45:10の1-ペンタノール及びエタノールからなり、エタノールは、95%工業用アルコールを用い、その表面張力が約22.3mN/mであり、常圧における沸点が約78℃であり、1-ペンタノールの表面張力は約27.15mN/mであり、常圧における沸点は約137.5℃であり、マイクロ波加熱液のスプレー量は約50g/mであり、マイクロ波加熱処理でマイクロ波周波数は22125MHzであり、マイクロ波遮断箱体210(即ち、マイクロ波加熱処理室)の内圧を制御することによりマイクロ波遮断箱体210内のマイクロ波加熱液の沸点を130℃程度とし、マイクロ波加熱時間は、3分であり、二次熱プレス成形の圧力は、6MPaであり、二次熱プレス成形の温度は、150℃である。
【0048】
(比較例1)
比較例1に係るトウ300及び不織布前駆体500の製造の過程及び条件は、実施例1と完全に一致し、違いは次のとおりだけである。
トウ300を収集及び積層して不織布前駆体500とした後、比較例1では、従来の熱プレス成形プロセスを用いて不織布前駆体500に熱プレス成形処理を行って完成不織布600を得る。ただし、熱プレス成形処理で熱プレス温度は、149℃であり、圧力は、6MPaである。
【0049】
(比較例2)
比較例1に係るトウ300及び不織布前駆体500の製造の過程及び条件は、実施例1と完全に一致し、違いは次のとおりだけである。
マイクロ波ヒートシールとフラッシュ紡糸による不織布ステップで、不織布前駆体500にマイクロ波加熱液400をスプレーせず、不織布前駆体500に直接、マイクロ波加熱処理を行い、次にマイクロ波加熱後の不織布の二次熱プレス成形を行って、完成不織布600を得る。ただし、マイクロ波加熱処理でマイクロ波周波数及びマイクロ波加熱時間は実施例1と同じであり、二次熱プレス成形の圧力は、4MPaであり、二次熱プレス成形の温度は、140℃である。
【0050】
実施例及び比較例で製造した完成不織布600に対して、同じ試験条件で関連する性能試験を行い、試験結果は、次の表1に示すとおりである。
【表1】
【0051】
表1から分かるように、実施例1及び実施例2の層化・剥離強度、静水圧は、いずれも比較例1、2より大きく、また、実施例1の層化・剥離強度、静水圧は、いずれも実施例2、3より優れ、比較例2の層化・剥離強度、静水圧は、いずれも比較例1よりやや高い。
【0052】
上記のことを要約すると、従来技術と比べて、本発明によって提供されるマイクロ波ヒートシールとフラッシュ紡糸による不織布のプロセス方法は、マイクロ波加熱の均一性により、マイクロ波加熱液400を導入してマイクロ波の吸収能力の弱い不織布を加熱することにより、成形過程でフラッシュ紡糸不織布の表層と内層の温度勾配を低減させて、不織布の層化・剥離強度を顕著に向上させることができる。
【0053】
なお、実施例で紡糸原液のポリマーとして用いるのは、ポリエチレンであり(即ち、トウ300の素材は、ポリエチレンであり)、上記の設計により、当該マイクロ波ヒートシールとフラッシュ紡糸による不織布のプロセス方法は、他のポリマー材料にも適合し、これには、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミドなどが含まれるが、それらに限定されず、そのうち、ポリオレフィンは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)などであってもよい。
同様に、ポリエチレントウ300、ポリエチレントウ300を積層して不織布前駆体500を形成させる製造方法は、いずれも従来技術であり、当業者は、適応的に選択してもよく、これには、実施例に記載の形態が含まれるが、それに限定されない。
本発明の方法は、フラッシュ紡糸不織布の成形に用いるだけでなく、他の技術タイプの不織布の成形、フィルムの複合などの関連分野に用いてもよく、原理は同じである。
本明細書で「常圧」とは、1つの標準大気圧(101.325kPa、即ち0.101325MPa)を指し、溶液の常圧における沸点とは、1つの標準大気圧における溶液の沸点を指す。
【0054】
また、当業者が理解できるだろうが、従来技術に多くの課題があるが、本発明の各実施例又は技術的解決手段はその1つ又は複数について改善できるが、必ずしも従来技術又は背景技術で列挙されている全ての技術的課題を同時に解決しなくてもよい。当業者が理解できるだろうが、1つの請求項で言及されてない内容は、当該請求項に対する制限と見なすべきではない。
【0055】
本明細書ではトウ、不織布前駆体、マイクロ波加熱など多くの用語が使われているが、他の用語を使用する可能性は除外しない。これらの用語を使用するのは、本発明の趣旨をより便利に記述及び解釈するためだけであり、それらをいかなる追加の制限に解釈しても本発明の趣旨に背く。本発明の実施例の明細書、特許請求の範囲及び上記の図面における用語「第1」「第2」など(ある場合)は、類似する対象を区別するために用いられ、必ずしも特定の順番又は前後関係を記述するためのものとは限らない。
【0056】
最後に声明すべきことであるが、上記の各実施例は、制限を加えるのではなく、本発明の技術的解決手段を説明するためのものに過ぎない。前記各実施例を参照して本発明を詳細に説明しているが、当業者は、依然として前記各実施例に記載の技術的解決手段について変更、又はその一部若しくは全ての技術特徴について同等な差し替えを行うことができ、これらの変更若しくは差し替えにより、対応する技術的解決手段の趣旨は本発明の各実施例の技術的解決手段の範囲から逸脱することにならない、ということを理解できるだろう。
【符号の説明】
【0057】
100 フラッシュ紡糸のトウ製造装置
200 マイクロ波ヒートシール装置
300 トウ
400 マイクロ波加熱液
500 不織布前駆体
600 完成不織布
101 外箱
102 紡糸装置
103 減圧板
104 低温圧力領域
105 紡糸口金
106 偏向板
107 収集面
108 第1密封ローラー
109 予成形ローラー
110 軸受
111 回転軸
112 駆動軸
210 マイクロ波遮断箱体
220 スプレー装置
230 マイクロ波発生装置
240 成形ローラー
211 回収孔
212 第2密封ローラー
113 紡糸ガス回収孔
図1