(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】動作判別システム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/11 20060101AFI20241024BHJP
A61G 7/043 20060101ALI20241024BHJP
A61G 7/05 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
A61B5/11 100
A61G7/043
A61G7/05
(21)【出願番号】P 2024010930
(22)【出願日】2024-01-29
【審査請求日】2024-01-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 忠優
(72)【発明者】
【氏名】堀田 忍
(72)【発明者】
【氏名】村山 勝
【審査官】▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-118712(JP,A)
【文献】特開2017-140157(JP,A)
【文献】特開2013-210367(JP,A)
【文献】特開2023-012969(JP,A)
【文献】特開2013-183812(JP,A)
【文献】特開2019-170798(JP,A)
【文献】特開2015-008920(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第113633280(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00-5/03
A61B 5/11-5/113
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベッドと、前記ベッドの上の使用者の動作を判別する動作判別装置と、を備えた動作判別システムであって、
前記動作判別装置は、
前記使用者が加える荷重の変化を検知するセンサと、
前記センサが出力する出力信号を受信して前記使用者の動作を判別する判別装置と、を備え、
前記ベッドは、
ベッド本体と、
前記ベッド本体に載置される敷寝具と、を備え、
前記センサは、
帯状に形成されており、前記ベッド本体と前記敷寝具との間に配置されるとともに、前記敷寝具の上に前記使用者が横たわった在床状態において前記使用者の胴体に対応する位置に配置されており、
前記判別装置は、
前記使用者が前記ベッドの上で上体を起こしたときに前記センサが出力する起上り信号が前記出力信号に含まれるか否かを判断し、
前記起上り信号が前記出力信号に含まれることを条件として、前記使用者が前記ベッドの上で上体を起こした起上り状態にあると判別し、
前記出力信号は、
前記使用者が安静な状態で前記ベッドの上に横たわった安静状態において出力される安静時信号と、
前記使用者がベッドの上で横たわった状態で動くアクティブ状態において出力されるアクティブ時信号と、を備え、
前記安静時信号は規則的に振動する波形を有し、前記アクティブ時信号は不規則に振動する波形を有し、
前記起上り信号は、1つのピークを有する波形であって、前記アクティブ時信号よりも緩やかな波形であり、
前記判別装置は、
前記出力信号の波形が不規則に振動することを検知して、前記使用者が前記アクティブ状態であると判断し、
前記アクティブ時信号が検出された後に、前記1つのピークを有し前記アクティブ時信号よりも緩やかな波形を検出することを条件として、前記起上り信号が前記出力信号に含まれると判断する、動作判別システム。
【請求項2】
前記起上り信号は、1つのみのピークを有する
波形であり、
前記判別装置は、
前記起上り信号が、前記1つのみのピークを有する波形であることを条件として、前記起上り信号が前記出力信号に含まれると判断する、請求項1に記載の動作判別システム。
【請求項3】
前記出力信号のうち、前記ピークよりも前に検出される前記アクティブ時信号の振幅は、前記ピークよりも後の領域における振幅よりも大き
く、
前記判別装置は、
前記出力信号のうち、前記ピークよりも前に検出される前記アクティブ時信号の振幅が、前記ピークよりも後の領域における振幅よりも大きいことを条件として、前記起上り信号が前記出力信号に含まれると判断する、請求項1に記載の動作判別システム。
【請求項4】
前記起上り信号は、前記ピークに向けて前記出力信号が増加する増加領域と、前記ピークの後に前記出力信号が減衰する減衰領域と、を備え、
前記減衰領域における単位時間当たりの前記起上り信号の減少量の絶対値は、前記増加領域における単位時間当たりの前記起上り信号の増加量の絶対値よりも小さ
く、
前記判別装置は、
前記減衰領域における単位時間当たりの前記起上り信号の減少量の絶対値が、前記増加領域における単位時間当たりの前記起上り信号の増加量の絶対値よりも小さいことを条件として、前記起上り信号が前記出力信号に含まれると判断する、請求項1に記載の動作判別システム。
【請求項5】
前記減衰領域は、前記アクティブ時信号よりも緩やかな波形を有
し、
前記判別装置は、
前記減衰領域が、前記アクティブ時信号よりも緩やかな波形を有することを条件として、前記起上り信号が前記出力信号に含まれると判断する、請求項4に記載の動作判別システム。
【請求項6】
前記判別装置は、
前記
安静時信号の後に前記
アクティブ時信号が発生し、前記
アクティブ時信号の後に前記
起上り信号が発生した場合において、
前記起上り信号の振幅が、前記安静時信号の振幅よりも大きいことを条件として、前記起上り信号が前記出力信号に含まれると判断する、請求項1
または3に記載の動作判別システム。
【請求項7】
前記出力信号は、前記使用者の心拍に起因する信号に対応する周波数成分を有する心拍周波数信号を含み、
前記判別装置は、
前記心拍周波数信号が非検出である状態で前記起上り信号を検出することを条件として、前記起上り信号が前記出力信号に含まれると判断する、請求項1に記載の動作判別システム。
【請求項8】
前記センサは、前記使用者の動作に起因して生じる前記敷寝具の振動を検出する、請求項1に記載の動作判別システム。
【請求項9】
前記ベッドには、前記使用者が横たわった状態において前記使用者の頭側および足側を含む頭足方向が設定されており、
前記在床状態において前記頭足方向の前記センサの幅寸法が、前記使用者の胴体長よりも短い、請求項1に記載の動作判別システム。
【請求項10】
前記センサは、前記ベッドの上に前記使用者が横たわった在床状態において、前記使用者の肩から腰の間に対応する位置に配置されている、請求項1に記載の動作判別システム。
【請求項11】
前記センサは、前記ベッドの上に前記使用者が横たわった在床状態において、前記使用者の脇の下から腰の間に対応する位置に配置されている、請求項1に記載の動作判別システム。
【請求項12】
前記ベッド本体は、
フレームと、
前記フレームに載置された床板と、を備え、
前記センサは、前記床板の上面に固定されている、請求項1に記載の動作判別システム。
【請求項13】
前記センサの両端部は、前記床板に固定されている、請求項12に記載の動作判別システム。
【請求項14】
前記ベッドには、前記使用者が横たわった状態において前記使用者の頭側および足側を含む頭足方向が設定されており、
前記ベッドは、さらに、
前記ベッドのうち前記頭足方向と交差する方向の少なくとも一方の側縁であり、かつ、前記頭足方向の前記頭側に、前記使用者が前記ベッドから離床することを規制する離床規制部材を備え、
前記ベッドのうち前記頭足方向の前記足側には、前記使用者が前記ベッドから離床可能な離床領域が設定されている、請求項1に記載の動作判別システム。
【請求項15】
前記ベッドには、前記使用者が横たわった状態において前記使用者の頭側および足側を含む頭足方向が設定されており、
前記センサが前記ベッドに配置された状態において、前記頭足方向と交差する左右方向に係る前記センサの長さ寸法は、前記左右方向の幅寸法の80%以上である、請求項1に記載の動作判別システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動作判別システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、病院、または介護施設等において、ベッドに在床する、体の不自由な患者、または高齢者等の被介護者は、ベッドから自力で離れようとすると、ベッドから転落または転倒するおそれがある。そこで、被介護者がベッドから離れる離床を検出する離床センサを用いて、離床センサが被介護者の離床を検知した場合には、介護者に通知することにより、被介護者の離床を補助することが検討されている。
【0003】
特開2012-29871号公報(特許文献1)には、上記のような離床センサとして、ベッドの上に圧力センサを配置し、圧力センサで検出される使用者の体圧が所定値以下となった場合に、離床したと判定する離床センサが開示されている。
【0004】
また、特開2012-11174号公報(特許文献2)には、ベッドの各脚部に荷重センサを設け、それら荷重センサで検出された荷重重心の移動量が所定値以下となった場合に、離床したと判定する離床センサが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-29871号公報
【文献】特開2012-11174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載の離床センサでは、使用者が完全に離床した後に離床が検出される。このため、離床するよりも早い段階で、使用者の動作を検出することが好ましい。
【0007】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、使用者がベッドの上で上体を起こした状態を検知する動作判別システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、
ベッドと、前記ベッドの上の使用者の動作を判別する動作判別装置と、を備えた動作判別システムであって、
前記動作判別装置は、
前記使用者が加える荷重の変化を検知するセンサと、
前記センサが出力する出力信号を受信して前記使用者の動作を判別する判別装置と、を備え、
前記ベッドは、
ベッド本体と、
前記ベッド本体に載置される敷寝具と、を備え、
前記センサは、
帯状に形成されており、前記ベッド本体と前記敷寝具との間に配置されるとともに、前記敷寝具の上に前記使用者が横たわった在床状態において前記使用者の胴体に対応する位置に配置されており、
前記判別装置は、
前記使用者が前記ベッドの上で上体を起こしたときに前記センサが出力する起上り信号が前記出力信号に含まれるか否かを判断し、
前記起上り信号が前記出力信号に含まれることを条件として、前記使用者が前記ベッドの上で上体を起こした起上り状態にあると判別し、
前記出力信号は、
前記使用者が安静な状態で前記ベッドの上に横たわった安静状態において出力される安静時信号と、
前記使用者がベッドの上で横たわった状態で動くアクティブ状態において出力されるアクティブ時信号と、を備え、
前記安静時信号は規則的に振動する波形を有し、前記アクティブ時信号は不規則に振動する波形を有し、
前記起上り信号は、1つのピークを有する波形であって、前記アクティブ時信号よりも緩やかな波形であり、
前記判別装置は、
前記出力信号の波形が不規則に振動することを検知して、前記使用者が前記アクティブ状態であると判断し、
前記アクティブ時信号が検出された後に、前記1つのピークを有し前記アクティブ時信号よりも緩やかな波形を検出することを条件として、前記起上り信号が前記出力信号に含まれると判断する、動作判別システムにある。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、使用者が離床状態と判別されるよりも前に、使用者がベッドの上で上体を起こした起上り状態を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態1に係る動作判別システムを示すブロック図である。
【
図2】実施形態1に係るベッドを示す、
図1のII-II線断面図である。
【
図3】実施形態1に係るベッドについて、マットレスを取外した状態を示す平面図である。
【
図4】実施形態1に係るセンサを示す断面図である。
【
図5】実施形態1に係る動作判別装置が生成する信号を示す図であり、(a)は出力信号、(b)は心拍周波数信号、(c)は呼吸周波数信号である。
【
図6】実施形態1において、在床状態(安静状態)について説明するための図である。
【
図7】実施形態1において、在床状態(アクティブ状態)について説明するための図である。
【
図8】実施形態1において、起上り状態について説明するための図である。
【
図9】実施形態1において、端座状態について説明するための図である。
【
図10】実施形態1において、離床状態について説明するための図である。
【
図11】実施形態2において、起上り状態を判別する処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態1)
1.動作判別システムの概要
以下に、本発明を動作判別システムに適用した実施形態について説明する。本形態に係る動作判別システムは、ベッドの使用者の動作を判別する。ベッドの使用者は、ベッドの上に安静に横たわった在床状態、ベッドの上で寝返り等の動作を行うアクティブ状態、ベッドの上で上体を起こす起上り状態、使用者がベッドから離れた離床状態等、種々の状態を取りうる。
【0012】
使用者が、体が不自由であったり、高齢であったりした場合、使用者がベッドから離れようとすると、ベッドから転落したり、転倒したりするおそれがある。そこで、使用者がベッドから離れようとする動作を、できるだけ早期に検出することが望ましい。本形態に係る動作判別装置は、使用者がベッドを離れようとする動作を開始する際における、ベッドの上で上体を起こす動作を判別することができる。
【0013】
2.動作判別システム10の構成
以下に、
図1~
図4を参照して、本形態の動作判別システム10について説明する。本形態に係る動作判別システム10は、動作判別装置11と、ベッド20と、を備える。ベッド20は、全体として、頭足方向に長尺な形状に形成されている。頭足方向は、使用者Uの頭側と足側とを含む方向と定義される。ベッド20は、ベッド本体20aと、マットレス25(敷寝具の一例)と、手すり26と、を備える。以下の説明において、複数の同一部材については、一部の部材にのみ符号を付し、他の部材については符号を省略する場合がある。
【0014】
図1および
図2に示すように、ベッド20は、ベッド本体20aと、マットレス25と、手すり26と、を備える。ベッド本体20aは、ヘッドボード21と、フットボード22と、フレーム23と、床板24と、を備える。ベッド本体20aは、頭足方向の頭側において上下方向にのびるヘッドボード21と、頭足方向の足側において上下方向にのびるフットボード22と、を備える。ヘッドボード21およびフットボード22の材質は特に限定されず、木製でも良いし、金属製でも良い。ヘッドボード21とフットボード22は、頭足方向に長尺な一対のフレーム23によって連結されている。フレーム23は、ベッド20の、左右方向の端部のそれぞれに配置されている。フレーム23の材質は特に限定されないが、使用者Uの体重を支えるために、金属製が好ましい。ただし、ベッド20は、枠状のフレームと、フレームの四隅から下方にのびる脚部と、を備える構成としても良い。
【0015】
図3に示すように、一対のフレーム23の間には、左右方向にのびる複数(本形態では7つ)の床板24が、一対のフレーム23に架渡されるように配置されている。床板24を構成する材料は特に限定されず、木材、樹脂、金属等、任意の材料を選択できる。床板24の個数は特に限定されず、1つ、または、2つ~6つ、若しくは8つ以上でも良い。隣合う床板24は、間隔を空けて配置されている。ただし、隣合う床板24は互いに接触して配置されていても良い。
【0016】
図2に示すように、床板24の上には、マットレス25が載置されている。ただし、床板24の上には、敷寝具の他の例として、敷布団、敷毛布等が載置されていても良い。マットレス25は、上方から見て、頭足方向に長尺な長方形状に形成されている。マットレス25は、上下方向について、床板24を覆うように配置されている。ただし、
図2においては、使用者Uは省略されている。
【0017】
図1に示すように、ベッド20には、少なくとも使用者Uの胴体が位置する両側(左右方向の両側)に、手すり26が配置されている。手すり26は、左右方向に一方側にのみ配置されていても良い。胴体は、使用者Uの体のうち、頭、首、四肢を除く部分である。手すり26は、マットレス25の上面よりも上方に突出して配置されている。手すり26は、ベッド20の、頭足方向の頭側に配置されており、足側には配置されていない。手すり26は、使用者Uがベッド20から起上るときに上体を支えるために配置されているとともに、使用者Uがベッド20から落下することを抑制するために配置されている。手すり26を構成する材料は特に限定されず、木材、樹脂、金属等、適宜に選択できる。本形態に係る手すり26は、金属製とされる。
【0018】
使用者Uは、手すり26が設けられていることにより、ベッド20から降りる場合には、ベッド20のうち手すり26が配置されていない領域から離床する。このように、本形態においては、使用者Uがベッド20から降りることのできる離床領域が、頭足方向のうち足側、すなわち、手すり26が配置されていない領域に設定されている。これにより、使用者Uは、ベッド20のうち、頭足方向の足側からのみ離床する。この結果、使用者Uの動作範囲が制約されるので、使用者Uの動作の検知精度を向上させることができる。
【0019】
図1に示すように、ベッド20には、手すり26によって左右方向への移動が抑制された領域に、センサ30が配置されている。さらに詳細には、ベッド20には、ベッド20上に使用者Uが横たわった状態において、使用者Uの胴体に対応する位置に、センサ30が配置されている。センサ30は、使用者Uの胴体のうち肩から腰の間に対応する位置に配置されることが好ましい。さらに、センサ30が、使用者Uの胴体のうち脇の下からへその間に対応する位置に配置されることにより、使用者Uの心拍、または呼吸を精度よく検知することができるので、より好ましく、みぞおちに対応する位置に配置されることがさらに好ましい。また、左右方向に係るセンサ30の長さ寸法については、ベッド20の上の使用者Uの動作を検出可能な大きさに設定することが好ましい。左右方向に係るセンサ30の長さ寸法は、左右方向に係るベッド20の幅寸法の80%以上に設定されていることが好ましく、90%以上がより好ましく、95%以上がさらに好ましい。
【0020】
ベッド20に使用者Uが横たわった状態において、使用者Uの胴体は、頭足方向にのびている。センサ30の、頭足方向の幅寸法は、ベッド20に横たわった使用者Uの胴体長よりも短く設定されている。また、センサ30の製造コストを低減することができるので、頭足方向に係るセンサ30の幅寸法は、5cm以上15cm以下であることが好ましく、9cm以上11cm以下がより好ましい。本形態においては、頭足方向に係るセンサ30の幅寸法は実質的に10cmに設定されている。実質的に10cmとは、10cmである場合を含むとともに、10cmでない場合であっても実質的に10cmと認定しうる場合も含む。
【0021】
一方、ベッド20の上に使用者Uが起上った状態、またはベッド20の側縁のうち手すりが配置されていない領域に使用者Uが座った状態においては、センサ30の鉛直上方の位置には使用者Uは位置しない。このため、ベッド20の上に使用者Uが起上った状態、またはベッド20の側縁のうち手すりが配置されていない領域に使用者Uが座った状態においては、センサ30は、使用者Uの心拍および呼吸に起因する圧力または振動を直接には検出しない。一方、センサ30は、ベッド20の上の使用者Uの動作に起因する圧力または振動を検出する。
【0022】
本形態においては、頭足方向に係るセンサ30の幅寸法については、ベッド20の上に使用者Uが起上った状態、およびベッド20の側縁のうち手すりが配置されていない領域に使用者Uが座った状態において、使用者Uの鉛直下方にセンサ30が配置されない構成とされている。
【0023】
図3に示すように、センサ30は、床板24の上面に配置されている。センサ30は、左右方向に長尺な帯状に形成されている。センサ30の、左右方向の長さ寸法は、床板24の、左右方向の長さ寸法よりもやや短く形成されている。
【0024】
センサ30は、一の床板24の上に載置された状態で、1つ、または複数の拘束部材によって、床板24に固定されている。本形態では、センサ30の、左右方向の両端部が、床板24に、拘束部材27によって固定されている。センサ30を床板24に固定する拘束部材27の個数は、3つ以上でも良い。
【0025】
拘束部材27は、ベルト、面ファスナー、テープ、両面テープ、結束バンド等、任意の拘束部材27を適宜に選択できる。また、センサ30は、床板24に、接着されても良いし、ねじ止めされていても良い。
【0026】
また、センサ30は、マットレス25の下面に固定されても良い。マットレス25への固定方法は特に限定されず、マットレス25の下面にセンサ30を接着しても良いし、マットレス25の下面にセンサ30を縫付けても良い。また、マットレス25の下面に、センサ30を収容可能なポケットを形成し、このポケット内にセンサ30を収容しても良い。
【0027】
センサ30は、使用者Uの動作に起因して生じるマットレス25の振動を検出可能な構成とされている。
【0028】
図4に示すように、センサ30は、基材31と、弾性体32と、センサ30シートと、を備える。
【0029】
基材31は、左右方向に長尺に形成されている。基材31を構成する材料としては、特に限定されず、鉄、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属、樹脂等、任意の材料を適宜に選択できる。本形態に係る基材31は金属製である。
【0030】
基材31の上面には、弾性を有する弾性体32が固定されている。弾性体32は特に限定されず、スチレン・ブタジエンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム等のゴム、ポリウレタンフォーム、ポリスチレンフォーム、ポリエチレンフォーム等の発泡樹脂等、任意の材料を適宜に選択できる。基材31と弾性体32との固定方法は特に限定されず、例えば、接着されていても良いし、熱融着されていても良い。
【0031】
弾性体32の上面には、センサシート33が固定されている。センサシート33は、圧電センサまたは静電センサにより構成される。本形態においては、センサシート33は、シート状(膜状)に形成されている。センサシート33は、マットレス25の下面から圧力を受けることにより、受けた圧力に対応する物理量を出力することができる。ただし、弾性体32とセンサシート33とが固定されておらず、センサシート33が弾性体32と異なる部材に固定されることにより、弾性体32とセンサシート33との相対的位置が保持される構成としても良い。
【0032】
センサシート33は、圧電センサである場合には、第1電極層33a、第2電極層33b、圧電材料により形成される中間層33cを備える。第1電極層33a、中間層33cおよび第2電極層33bの順で積層されている。
【0033】
本形態に係る第1電極層33aおよび第2電極層33bは、それぞれ1枚の導電性シートにより構成されている。これにより、センサシート33は、1つのチャンネルの出力信号を出力する。
【0034】
また、第1電極層33aおよび第2電極層33bの一方が1枚の導電性シートにより構成され、他方がそれぞれ離間して配列された複数の導電性シートにより構成されるようにしても良い。さらに、第1電極層33aおよび第2電極層33bが、それぞれ複数の導電性シートにより構成されるようにしても良い。例えば、第1電極層33aを構成する複数の導電性シートと第2電極層33bを構成する複数の導電性シートとの対向位置が、1列に配列するように構成されたり、マトリックス状に配列するように構成されたりしても良い。上記の構成によれば、センサシート33は、複数のチャンネルの出力信号を出力することができる。これにより、複数の出力信号によって互いに補完したり、複数の出力信号同士の関係性を考慮することにより検知精度を向上させたりすることが可能になるので好ましい。
【0035】
センサシート33が圧電センサである場合の中間層33cは、圧電材料により構成されている。中間層33cは、圧縮力が付与された場合に、圧縮力に応じた電力を発生する。これにより、センサシート33は、センサシート33に加えられた荷重の変化に応じた出力信号を出力する。
【0036】
センサシート33は静電センサを適用する構成としても良い。センサシート33は、静電センサである場合には、誘電材料により形成される中間層33cを備える。中間層33cは、圧縮力が付与された場合に、第1電極層33aと第2電極層33bとの間の距離が短くなることにより、第1電極層33aと第2電極層33bとの静電容量を変化させる。
【0037】
図1に示すように、センサ30は、処理装置40に、有線または無線により電気的に接続されている。センサ30は、出力信号を処理装置40に送信する。処理装置40は、演算装置41と、判別装置42と、記憶装置43と、を備える。
【0038】
演算装置41は、センサ30から送信された出力信号を受信して、出力信号を処理することにより、出力信号とは異なる信号を生成する。演算装置41は、心拍周波数信号、および呼吸周波数信号、を生成する。
【0039】
図5を参照して、出力信号について説明する。
図5に示す出力信号は、演算装置41がセンサ30から受信する信号である。出力信号は、センサ30から出力される単チャンネルの信号である。出力信号は、センサ30に対して付与された荷重の変化量に対応する信号である。出力信号は、使用者Uの体動に起因する信号、使用者Uの呼吸に起因する信号、使用者Uの心拍に起因する信号、使用者Uの脈拍に起因する信号等を含む。
【0040】
判別装置42は、出力信号について判断することにより、使用者Uの動作を判別し、使用者Uがどのような状態にあるかを判断する。
【0041】
記憶装置43は、本形態の動作判別装置11に動作を制御するプログラム、種々の閾値等、任意のデータを格納する(
図1参照)。
【0042】
判別装置42は、インターネットまたはイントラネット等のネットワーク44を介して、端末装置45に信号を送信し、または、端末装置45から信号を受信する。端末装置45は特に限定されず、液晶ディスプレイ等の表示装置でも良いし、タブレット端末でも良いし、スマートフォンでも良いし、本形態の動作判別装置11専用の端末装置45でも良い。端末装置45は、判別装置42からの信号を受信して、使用者Uの状態を報知する。報知する手段は特に限定されず、画面による表示、音声による報知等、任意の手段を採用しうる。
【0043】
3.使用者Uの動作
次に、
図6~
図10を参照して、使用者Uの動作について説明する。以下に説明における、使用者Uの動作の分類は、単なる例示であり、使用者Uの動作は以下の分類に限定されない。
【0044】
図6には、使用者Uがベッド20上に横たわった在床状態を示す。在床状態において、使用者Uは、ベッド20のマットレス25の上に、頭をヘッドボード21に向け、足をフットボード22に向けて横たわっている。さらに、
図6において、使用者Uは、ベッド20上に横たわって睡眠したり、ベッド20の上で覚醒した状態で動かないでいたりする等、安静状態となっている。安静状態は、在床状態に含まれる。在床状態における使用者Uの頭から腰までの部分の、左右方向の両側には、手すり26が配置されている。本形態では、使用者Uの胴体の下方には、センサ30が配置されている。詳細には、センサ30が配置される位置としては、検知精度向上の観点から、使用者Uの脇の下から腰の間の領域の下方が好ましく、脇の下からへその間の領域の下方がより好ましく、みぞおちの下方がさらに好ましい。
【0045】
使用者Uが在床状態にある場合、センサ30は、使用者Uからマットレス25に付与された圧力または振動を検出して、出力信号を出力する。在床状態において、使用者Uからマットレス25に付与される圧力には、使用者Uの呼吸動作に起因する圧力、使用者Uの心拍に基づく圧力が例示される。
【0046】
判別装置42は、使用者Uが在床状態にあることを判別する。また、判別装置42は、使用者Uが在床状態にあることを端末装置45に報知させる。ただし、判別装置42は、端末装置45に使用者Uが安静状態にあることを報知させても良いし、報知させなくても良い。
【0047】
図7には、使用者Uがベッド20の上で横たわった状態で動いているアクティブ状態を示す。アクティブ状態は、使用者Uが、ベッド20のマットレス25の上で、寝返りを打ったり、上体を起こす準備動作として手すり26につかまったりする状態を含む。アクティブ状態においては、使用者Uの上体はベッド20のマットレス25と接触している。アクティブ状態にある使用者Uは、ベッド20の上で横たわった状態で動いているので、アクティブ状態は、在床状態に含まれる。
【0048】
アクティブ状態において、使用者Uからマットレス25に付与される圧力には、使用者Uの体動に起因する圧力、使用者Uの呼吸動作に起因する圧力、使用者Uの心拍に基づく圧力が例示される。
【0049】
判別装置42は、使用者Uがアクティブ状態にあることを判別する。本形態に係る判別装置42は、使用者Uがアクティブ状態にあることを端末装置45に報知させない。ただし、判別装置42は、使用者Uがアクティブ状態にあることを端末装置45に報知させる構成としても良い。
【0050】
図8には、使用者Uがベッド20上で上体を起こした起上り状態を示す。起上り状態においては、使用者Uは、ベッド20のマットレス25の上で、上体を起こした状態で座っている。起上り状態においては、使用者Uの上体はマットレス25の上面から離れている。
【0051】
起上り状態において、使用者Uからマットレス25に付与される圧力には、使用者Uの体動に起因する圧力が例示される。使用者Uの呼吸に基づく圧力、および使用者Uの心拍に基づく圧力は、マットレス25に直接には付与されない。ただし、使用者Uの臀部、足、手等、マットレス25と接触した部分から、使用者Uの呼吸に基づく圧力、および使用者Uの心拍に基づく圧力が間接的にマットレス25に付与される場合がある。
【0052】
判別装置42は、使用者Uが起上り状態にあることを判別する。また、判別装置42は、使用者Uが起上り状態にあることを端末装置45に報知させる。
【0053】
図9には、使用者Uがベッド20の側縁に座った端座状態を示す。端座状態においては、使用者Uの上体はマットレス25の上面から離れている。
【0054】
端座状態において、使用者Uからマットレス25に付与される圧力には、使用者Uの体動に起因する圧力が例示される。また、使用者Uの呼吸に基づく圧力、および使用者Uの心拍に基づく圧力についても、マットレス25に、ごくわずか付与される。このため、呼吸信号または心拍信号については「不検出」と判定される場合がある。一方、使用者Uが端座状態にある場合に、体を揺らす等の動きにより、マットレス25に圧力が付与された場合、呼吸信号または心拍信号が「検出」と判定される場合がある。
【0055】
本形態に係る判別装置42は、使用者Uが端座状態にあることを判別しない。また、本形態に係る判別装置42は、使用者Uが端座状態にあることを端末装置45に報知させない。ただし、判別装置42は、使用者Uが端座状態にあることを判別しても良いし、また、使用者Uが端座状態にあることを端末装置45に報知させても良い。
【0056】
図10には、使用者Uがベッド20から離れた離床状態を示す。離床状態においては、原則として、センサ30は、使用者Uからマットレス25に付与される圧力を検出しない。ただし、使用者Uがベッド20から離れた直後においては、マットレス25が振動することにより、センサ30に圧力が付与されて、センサ30が出力信号を出力する場合がある。
【0057】
判別装置42は、使用者Uが離床状態にあることを判別する。また、判別装置42は、使用者Uが離床状態にあることを端末装置45に報知させる。
【0058】
4.信号について
図5(a)~
図5(c)を参照して、出力信号と、演算装置41が生成する信号について説明する。ただし、
図5(a)~
図5(c)のグラフは、説明の便宜のため、グラフごとに、縦軸のスケールを調整している。このため、グラフごとに波形の大小を比較することができない点に留意されたい。
【0059】
図5(a)に、出力信号を示す。出力信号は、演算装置41がセンサ30から受信する信号である。出力信号は、センサ30から出力される単チャンネルの信号である。出力信号は、センサ30に対して付与された荷重の変化量に対応する信号である。出力信号は、使用者Uの体動に起因する信号、使用者Uの呼吸に起因する信号、使用者Uの心拍に起因する信号、使用者Uの脈拍に起因する信号等を含む。
【0060】
図5(b)に、心拍周波数信号を示す。演算装置41は、出力信号に、使用者Uの心拍に起因する信号に対応する周波数成分を通過させるバンドパスフィルタを用いることにより、心拍周波数信号を生成する。バンドパスフィルタは、9~15Hzの周波数成分を通過させる。心拍によって人体に生じる振動(心弾動)の周波数帯域は、数Hz~20Hz程度といわれており、出力信号のうち上記した9~15Hzの周波数成分を通過させることにより、使用者Uの心拍に起因する信号を明瞭に検出することができる。判別装置42は、心拍周波数信号に基づいて使用者Uの心拍を検出し、心拍に関する信号を端末装置に送信する。
【0061】
図5(c)に、呼吸周波数信号を示す。演算装置41は、出力信号の振動中心を基線BLとして出力信号を積分することにより、呼吸周波数信号を生成する。詳細には、出力信号の振動中心を基線BLとして、基線BLよりも上方の部分は正の符号を付して積算し、基線BLよりも下方の部分は負の符号を付して積算する。一般的に、寝返り等の体動に起因する信号の周波数帯域は、約2Hz以下といわれており、心拍周波数信号の周波数帯域よりも呼吸成分の周波数帯域に近い。積分にはローパスの効果があるので、呼吸成分を明瞭に捉えることができる。ただし、演算装置41は、呼吸に起因する信号に対応する成分を通過させるローパスフィルタを用いることにより、呼吸周波数信号を生成しても良い。判別装置42は、呼吸周波数信号に基づいて使用者Uの呼吸を検出し、呼吸に関する信号を端末装置に送信する。
【0062】
次に、
図5(a)を参照して、出力信号について説明する。
図5(a)に示すグラフにおいて、第1領域Aにおける出力信号(第1信号)は、比較的に規則正しい波形を示している。このような状態の使用者Uは、ベッド20の上で横たわって安静な状態にあると考えられる(
図6参照)。第1領域Aにおける出力信号は、使用者Uがベッド20の上に安静に横たわった状態で出力される安静時信号である。安静時信号のグラフに示される規則正しい波形は、呼吸に起因する信号、および心拍に起因する信号であると考えられる。
【0063】
図5(a)に示すグラフにおいて、第2領域Bにおける出力信号(第2信号)は、第1領域Aの波形に比べて振幅が大きく、また、波形が乱れている。このような状態の使用者Uは、ベッド20の上で横たわった状態で、寝返りを打ったり、起上ろうとして手すり26をつかんだりしていると考えられる(
図7参照)。第2領域Bにおける出力信号は、使用者Uがベッド20の上に横たわった状態で動くアクティブ状態において出力されるアクティブ時信号である。アクティブ時信号のグラフに示される波形は、使用者Uの動作に起因する信号と考えられる。
【0064】
図5(a)に示すグラフにおいて、第3領域Cにおける出力信号(第3信号)は、第2領域Bと第3領域Cとの境界部分に1つのピークPが見られ、このピークPが、緩やかに減衰して振幅が0となっている。本形態では、出力信号のうち、ピークPを含む波形を起上り信号Sとする。
【0065】
本形態においては、出力信号のうち、ピークPよりも前の領域における振幅は、ピークPよりも後の領域における振幅よりも大きい。詳細には、第2領域Bにおける出力信号の振幅は、第3領域Cにおける出力信号の振幅よりも大きい。これにより、起上り信号Sを明瞭に区別することができる。
【0066】
また、起上り信号Sは、出力信号がピークPに向けて増加する増加領域Dと、ピークPを超えて出力信号が減衰する減衰領域Eと、を備える。減衰領域Eにおける単位時間当たりの起上り信号Sの減少量の絶対値は、増加領域Dにおける単位時間当たりの起上り信号Sの増加量の絶対値よりも小さい。換言すると、ピークPよりも前の増加領域Dにおいて起上り信号Sは急峻に増加し、ピークPよりも後の減衰領域Eにおいて起上り信号Sは緩やかに減衰している。これにより、起上り信号Sを明瞭に区別することができる。
【0067】
起上り信号Sが出力されるような状態の使用者Uは、ベッド20の上に
上体を起こして起上り状態になっていると考えられる(
図8参照)。第2領域Bと第3領域Cとの境界部分に観測される1つのピークPは、使用者Uが
上体を起こす際に、マットレス25に付与された圧力に起因する信号であると考えられる。ピークPの緩やかな減衰は、付与された圧力によってマットレス25が振動し、この振動が緩やかに減衰したものであると考えられる。
【0068】
図5(a)のピークPを含む起上り信号Sは、第1領域Aにおいて検出される安静時信号の波形が規則正しく振動しているのに対し、1つの波形が検出され、この波形が緩やかに減衰している。この点で、起上り信号Sに係るピークPと、安静時信号の波形とは区別される。
【0069】
また、
図5(a)のピークPは、第2領域Bにおいて検出されるアクティブ時信号の波形が不規則に振動し、かつ鋭いピークを有するのに対し、1つのピークが緩やかに減衰している。この点で、起上り信号Sに係るピークPと、アクティブ時信号の波形とは区別される。起上り信号Sに係るピークPは、アクティブ時信号が検出され、アクティブ時信号の検出が継続した後、アクティブ時信号が非検出となった後に検出される。
【0070】
また、
図5(a)のピークPと、
図5(b)の心拍周波数信号と、を比較すると、起上り信号SのピークPは、第2領域Bと第3領域Cとの境界部分において、心拍周波数信号が非検出となった後に、検出されている。これにより、起上り信号Sに係るピークPを区別することができる。
【0071】
上記のように、出力信号から、起上り信号Sに係るピークPを区別し、この起上り信号Sに係るピークPを検出することにより、使用者Uが起上り状態にあることを判別することができる。
【0072】
さて、
図5(a)の第3領域Cに対応する状態としては、使用者Uが、
図8に示す起上り状態にある場合、および、
図9に示す端座状態にある場合が想定される。この場合、使用者Uの
上体は、ベッド20のマットレス25から離れている。このため、センサ30は、使用者Uの、心拍に基づく圧力、および呼吸に基づく圧力を直接に検出することはできない。しかし、センサ30は、使用者Uの身体のうち、ベッド20のマットレス25と接触した部分から、使用者Uの身体の動作に伴ってマットレス25に付与された圧力を検知する。
【0073】
使用者Uが起上り状態または端座状態にあるときに、使用者Uからベッド20のマットレス25に付与された圧力により、センサ30は出力信号を出力する。この出力信号には、呼吸に起因する信号に対応する周波数成分と、心拍に起因する信号に対応する周波数成分と、が含まれる場合がある。
【0074】
上記のように、使用者Uの動作が終了した場合でも、使用者Uからマットレス25に付与された圧力に起因してマットレス25が振動すると、この振動の減衰部分のうち心拍に対応する周波数成分が検出される場合がある。このため、判別装置42は、起上り信号Sに係るピークPを検出した後、所定時間継続して出力信号が検出されないことを条件として、使用者Uがベッド20から離れた離床状態であると判断する(
図5(a)参照)。
【0075】
5.本形態の作用効果について
続いて、本形態の作用効果について説明する。本形態に係る動作判別システム10は、ベッド20と、ベッド20の上の使用者Uの動作を判別する動作判別装置11と、を備える。動作判別装置11は、使用者Uが加える荷重の変化を検知するセンサ30と、センサ30が出力する出力信号を受信して使用者Uの動作を判別する判別装置42と、を備える。ベッド20は、ベッド本体20aと、ベッド本体20aに載置されるマットレス25と、を備える。センサ30は、帯状に形成されており、ベッド本体20aとマットレス25との間に配置されるとともに、マットレス25の上に使用者Uが横たわった在床状態において使用者Uの胴体に対応する位置に配置されている。判別装置42は、出力信号に基づいて、使用者Uがベッド20の上で上体を起こした起上り状態を判別する。本形態によれば、使用者Uがベッド20から離床する前の段階で、起上り状態を判別することができる。
【0076】
本形態に係る判別装置42は、使用者Uがベッド20の上で上体を起こしたときにセンサ30が出力する起上り信号Sが出力信号に含まれるか否かを判断し、起上り信号Sが出力信号に含まれることを条件として、使用者Uが起上り状態にあると判別する。これにより、使用者Uの起上り状態を判別することができる。
【0077】
本形態に係るセンサ30は、使用者Uの動作に起因して生じるマットレス25の振動を検出する。これにより、センサ30の鉛直上方に使用者Uがいない場合でも、ベッド20の上における使用者Uの動作をセンサ30により検出することができる。
【0078】
本形態においては、ベッド20には、使用者Uが横たわった状態において使用者Uの頭側および足側を含む頭足方向が設定されており、在床状態において頭足方向の前記センサ30の幅寸法が、使用者Uの胴体長よりも短いことが好ましい。
【0079】
センサ30は、ベッド20上に使用者Uが横たわった在床状態において、使用者Uの肩から腰の間に対応する位置に配置されていることが好ましい。これにより、使用者Uの動作を精度よく検出することができる。さらに、センサ30は、ベッド20上に使用者Uが横たわった在床状態において、使用者Uの脇の下から腰の間に対応する位置に配置されていることが、より好ましい。これにより、使用者Uの動作の検出精度をより向上させることができる。
【0080】
本形態に係るベッド本体20aは、フレームと、フレームに載置された床板と、を備える。センサ30は、床板の上面に固定されている。これにより、センサ30の配置場所が、使用者Uの動作や、シーツ、掛毛布、または掛布団等の移動によって変化することを抑制できる。この結果、ベッド20上における使用者Uの動作の検出精度が変化することを抑制できる。
【0081】
(実施形態2)
次に、
図5および
図11を参照して、実施形態2について説明する。
図11に、起上り状態を判別する処理に係るフローチャートを示す。
【0082】
起上り状態を判別する処理が実行されると、判別装置42は、
図5に示す出力信号を取得する(S1)。
【0083】
判別装置42は、取得した出力信号を分析し、比較的に規則正しく振動する第1信号を含む第1領域Aが発生したかを判断する(S2)。演算装置41は、第1領域Aが発生したと判断した場合(S2:Y)、出力信号を分析し、第1信号に比べて振幅が大きく、また、波形が乱れた第2信号を含む第2領域Bが発生したかを判断する(S3)。
【0084】
判別装置42は、第2領域Bが発生した場合(S3:Y)、出力信号を分析し、緩やかに減衰する第3信号を含む第3領域Cが発生したかを判断する(S4)。
【0085】
判別装置42は、第3領域Cが発生した場合(S4:Y)、第1信号の振幅が、第3信号の振幅よりも小さいかについて判断する(S5)。
【0086】
判別装置42は、第1信号の振幅が第3信号の振幅よりも小さいと判断した場合(S6:Y)、使用者Uが起上り状態にあると判別する(S6)。以上により、起上り状態を判別する処理が終了する。
【0087】
一方、判別装置42は、第1領域Aが発生していないと判断した場合(S2:N)、S2の処理を繰返す。
【0088】
また、判別装置42は、第2領域Bが発生していないと判断した場合(S3:N)、S2~S3の処理を繰返す。
【0089】
また、判別装置42は、第3領域Cが発生していないと判断した場合(S4:N)、S3~S4の処理を繰返す。
【0090】
また、判別装置42は、第1信号の振幅が、第3信号の振幅よりも大きくないと判断した場合(S5:N)、S2~S5の処理を繰返す。
【0091】
以上により、起上り状態を判別する処理が終了する。
【0092】
なお、実施形態2以降において用いた符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0093】
本形態によれば、第2領域Bと第3領域Cとの間において、起上り信号Sに係るピークPが不明確である場合であっても、使用者Uが起上り状態にあるか否かを判別することができる。
【0094】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0095】
10:動作判別システム、11:動作判別装置、20:ベッド、20a:ベッド本体、24:床板、25:マットレス、27:拘束部材、30:センサ、31:基材、32:弾性体、33:センサシート、A:第1領域、B:第2領域、C:第3領域、D:増加領域、E:減衰領域、P:ピーク、S:起上り信号、U:使用者
【要約】
【課題】使用者がベッドの上で上体を起こした状態を検知する動作判別システムを提供する。
【解決手段】ベッド20と、ベッド20の上の使用者Uの動作を判別する動作判別装置11と、を備えた動作判別システム10であって、動作判別装置11は、使用者Uが加える荷重の変化を検知するセンサ30と、センサ30が出力する出力信号を受信して使用者Uの動作を判別する判別装置42と、を備え、ベッド20は、ベッド本体20aと、ベッド本体20aに載置されるマットレス25と、を備え、センサ30は、帯状に形成されており、ベッド本体20aとマットレス25との間に配置されるとともに、マットレス25の上に使用者Uが横たわった在床状態において使用者Uの胴体に対応する位置に配置されており、判別装置42は、出力信号に基づいて、使用者Uがベッド20の上で上体を起こした起上り状態を判別する。
【選択図】
図1