(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置用部品、プラズマ処理装置用部品の製造方法、静電チャックおよびプラズマ処理装置用部品用繊維構造体
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20241024BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20241024BHJP
H05H 1/46 20060101ALN20241024BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H01L21/302 101G
H05H1/46 A
(21)【出願番号】P 2024058956
(22)【出願日】2024-04-01
(62)【分割の表示】P 2024030809の分割
【原出願日】2024-02-29
【審査請求日】2024-04-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000153591
【氏名又は名称】株式会社巴川コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100131842
【氏名又は名称】加島 広基
(74)【代理人】
【識別番号】100215267
【氏名又は名称】古屋 秀人
(74)【代理人】
【識別番号】100215555
【氏名又は名称】今井 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】清水 勇気
(72)【発明者】
【氏名】村松 健太郎
【審査官】境 周一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-027914(JP,A)
【文献】特開2021-111702(JP,A)
【文献】特開2020-047746(JP,A)
【文献】特開2020-109803(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/3065
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置製造工程におけるプラズマ処理装置の内部で用いられるプラズマ処理装置用部品であって、
第一部材と、第二部材と、前記第一部材と前記第二部材の間に配置された中間部材と、繊維を含むプラズマ保護材と、を備
え、
前記第一部材および前記第二部材の少なくとも一方は耐プラズマ性を有し、
前記繊維を含むプラズマ保護材は、前記中間部材の端部における前記
部品の外面側に配置さ
れ、
前記繊維を含むプラズマ保護材は、繊維からなる繊維構造体を含み、
前記繊維構造体の延びる方向は、前記中間部材の外周に沿っている、プラズマ処理装置用部品。
【請求項2】
前記繊維を含むプラズマ保護材は、前記中間部材の外周に配置されている、請求項1に記載の
プラズマ処理装置用部品。
【請求項3】
前記繊維の延びる方向は、前記中間部材の外周に沿っている、請求項1に記載の
プラズマ処理装置用部品。
【請求項4】
前記中間部材は、接合層である、請求項1に記載の
プラズマ処理装置用部品。
【請求項5】
前記繊維の延びる方向における長さは、前記中間部材の外周より長く、
前記中間部材の外周に沿って前記繊維が巻き廻されている、請求項1に記載の
プラズマ処理装置用部品。
【請求項6】
前記繊維構造体の延びる方向における長さは、前記中間部材の外周より長く、
前記中間部材の外周に沿って前記繊維構造体が巻き廻されている、請求項
1に記載の
プラズマ処理装置用部品。
【請求項7】
前記繊維は、無機繊維である、請求項1に記載の
プラズマ処理装置用部品。
【請求項8】
前記繊維構造体は、撚糸、不織布、メッシュまたは織布の少なくとも一つを含む、請求項
1に記載の
プラズマ処理装置用部品。
【請求項9】
請求項1に記載の
プラズマ処理装置用部品は静電チャックであって、
前記第一部材は、被保持物を保持する保持部材であり、前記第二部材は、前記保持部材を保持する基台である、静電チャック。
【請求項10】
前記保持部材の最外周は、前記プラズマ保護材の最外点より外側に位置している、請求項
9に記載の静電チャック。
【請求項11】
前記基台の最外周は、前記プラズマ保護材の最外点より外側に位置している、請求項
9に記載の静電チャック。
【請求項12】
半導体装置製造工程におけるプラズマ処理装置の内部に設置されるプラズマ処理装置用部品に用いられる、繊維を有する繊維構造体であって、
前記繊維構造体は耐プラズマ性を有し、
第一部材と、第二部材と、前記第一部材と前記第二部材の間に配置された中間部材と、前記繊維構造体と、を備えた
前記部品において、
前記中間部材の外周に沿って配置さ
れ、
前記繊維構造体の延びる方向は、前記中間部材の外周に沿っていることを特徴とする、
プラズマ処理装置用部品用繊維構造体。
【請求項13】
第一部材と、第二部材と、前記第一部材と前記第二部材の間に配置された中間部材と、繊維を有する繊維構造体と、を備えた
、半導体装置製造工程におけるプラズマ処理装置の内部で用いられるプラズマ処理装置用部品の製造方法であって、
前記第一部材と前記第二部材の間に中間部材を配置する工程と、
前記繊維構造体を前記中間部材の外周に沿って巻き廻す工程と、を含
み、
前記繊維構造体は耐プラズマ性を有し、
前記繊維構造体の延びる方向は、前記中間部材の外周に沿っている、プラズマ処理装置用部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐プラズマ構造、耐プラズマ構造の製造方法、静電チャック、エッジリング、繊維構造体、プラズマ処理装置用部材およびプラズマ処理装置用部材の補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体製造装置として、プラズマにより対象物のドライエッチングを行うエッチング装置が用いられており、エッチング装置では、静電気を利用して対象物を固定するために静電チャックが用いられる。静電チャックでは、対象物を固定保持する保持部材と、保持部材を保持する基台とが接合層により接合され、プラズマによる接合層のダメージを軽減するためのプラズマ保護層が接合層の外面に接合されている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-165776号公報
【文献】特開2021-44303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、2に記載のプラズマ保護層は、熱硬化性樹脂やエラストマーから形成されており、耐プラズマ性などの観点から更なる改善が求められている。同様に、プラズマ処理装置等におけるプラズマを用いる密閉空間においても密閉性を維持する上で、耐プラズマ性などの観点から更なる改善が求められている。このような改善により、静電チャックやプラズマ処理装置等の高寿命化が期待できる。
【0005】
本発明は、高寿命の耐プラズマ構造、静電チャック、エッジリング、繊維構造体、プラズマ処理装置用部材、ならびにそのような耐プラズマ構造の製造方法およびプラズマ処理装置用部材の補修方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の耐プラズマ構造は、
第一部材と、第二部材と、前記第一部材と前記第二部材の間に配置された中間部材と、繊維を含むプラズマ保護材と、を備えた耐プラズマ構造であって、
前記第一部材および前記第二部材の少なくとも一方は耐プラズマ性を有し、
前記繊維を含むプラズマ保護材は、前記中間部材の端部における前記耐プラズマ構造の外面側に配置されることを特徴とする。
【0007】
本開示の耐プラズマ構造において、
前記繊維を含むプラズマ保護材は、前記中間部材の外周に配置されてもよい。
【0008】
本開示の耐プラズマ構造において、
前記繊維の延びる方向は、前記中間部材の外周に沿っていてもよい。
【0009】
本開示の耐プラズマ構造において、
前記繊維を含むプラズマ保護材は、繊維からなる繊維構造体を含んでもよい。
【0010】
本開示の耐プラズマ構造において、
前記繊維構造体の延びる方向は、前記中間部材の外周に沿っていてもよい。
【0011】
本開示の耐プラズマ構造において、
前記中間部材は、接合層でもよい。
【0012】
本開示の耐プラズマ構造において、
前記繊維の延びる方向における長さは、前記中間部材の外周より長く、
前記中間部材の外周に沿って前記繊維が巻き廻されてもよい。
【0013】
本開示の耐プラズマ構造において、
前記繊維構造体の延びる方向における長さは、前記中間部材の外周より長く、
前記中間部材の外周に沿って前記繊維構造体が巻き廻されてもよい。
【0014】
本開示の耐プラズマ構造において、
前記繊維は、無機繊維でもよい。
【0015】
本開示の耐プラズマ構造において、
前記繊維構造体は、撚糸、不織布、メッシュまたは織布の少なくとも一つを含んでもよい。
【0016】
本開示の静電チャックは、
本開示の耐プラズマ構造を備え、
前記第一部材は、被保持物を保持する保持部材であり、前記第二部材は、前記保持部材を保持する基台であることを特徴とする。
【0017】
本開示の静電チャックにおいて、
前記保持部材の最外周は、前記プラズマ保護材の最外点より外側に位置してもよい。
【0018】
本開示の静電チャックにおいて、
前記基台の最外周は、前記プラズマ保護材の最外点より外側に位置してもよい。
【0019】
本開示のエッジリングは、
本開示の耐プラズマ構造を備えたことを特徴とする。
【0020】
本開示のプラズマ処理装置用部材は、
本開示の耐プラズマ構造を備えたことを特徴とする。
【0021】
本開示の繊維構造体は、
繊維を有する繊維構造体であって、
第一部材と、第二部材と、前記第一部材と前記第二部材の間に配置された中間部材と、本開示の繊維構造体と、を備えた耐プラズマ構造において、
前記中間部材の外周に沿って配置されたことを特徴とする。
【0022】
本開示の耐プラズマ構造の製造方法は、
第一部材と、第二部材と、前記第一部材と前記第二部材の間に配置された中間部材と、繊維を有する繊維構造体と、を備えた本開示の耐プラズマ構造の製造方法であって、
前記第一部材と前記第二部材の間に中間部材を配置する工程と、
前記繊維構造体を前記中間部材の外周に沿って巻き廻す工程と、を含むことを特徴とする。
【0023】
本開示のプラズマ処理装置用部材の補修方法は、
第一部材と、第二部材と、前記第一部材と前記第二部材の間に配置された中間部材と、を備えたプラズマ処理装置用部材の補修方法であって、
繊維を有する繊維構造体を、前記中間部材の外周に沿って巻き廻す工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本開示によれば、高寿命の耐プラズマ構造、静電チャック、エッジリング、繊維構造体、プラズマ処理装置用部材、ならびにそのような耐プラズマ構造の製造方法およびプラズマ処理装置用部材の補修方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本開示の実施の形態に係る耐プラズマ構造の概略構成を示す断面図である。
【
図2】本開示の実施の形態に係る耐プラズマ構造の別の概略構成を示す断面図である。
【
図3】本開示の実施の形態に係る耐プラズマ構造(静電チャック)の補修方法の概略を示す図である。
【
図4】本開示の実施の形態に係る静電チャックの概略構成を示す断面図である。
【
図5】本開示の実施の形態に係る静電チャックの別の概略構成を示す断面図である。
【
図6】本開示の実施の形態に係るエッジリングの概略構成を示す図である。
【
図7】本開示の実施の形態係る静電チャックを囲うようにエッジリングを配置した概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本開示の実施の形態について説明するが、本開示に係る発明はこれらに限定されない。
【0027】
[耐プラズマ構造]
図1、
図2は、本開示の実施の形態に係る耐プラズマ構造の概略構成を示す断面図である。
図1に示すように、耐プラズマ構造1は、第一部材2と、第二部材3と、第一部材2と第二部材3の間に配置された中間部材4と、繊維を含むプラズマ保護材5と、を備える。第一部材2および第二部材3の少なくとも一方は耐プラズマ性を有する。繊維を含むプラズマ保護材5(以下単に、プラズマ保護材5ともいう)は、中間部材4の端部における耐プラズマ構造1の外面側に配置される。ここで、耐プラズマ構造1の「外面側」とは、外部雰囲気に接する側を意味する。なお、本開示の実施の形態に係るエッジリングの概略構成を示す断面図である
図6(B)では、プラズマ保護材45a、45b(プラズマ保護材5)は、中間部材44の端部におけるエッジリング41(耐プラズマ構造1)の外周と内周に配置されており、これらの外周と内周はいずれも、外部雰囲気に接する耐プラズマ構造1(エッジリング41)の外面側に位置している。
【0028】
(第一部材2および第二部材3)
耐プラズマ構造1において、第一部材2および第二部材3のいずれかが耐プラズマ性を有していればよい。すなわち、第一部材2のみが耐プラズマ性を有する材料(耐プラズマ性材料)から形成されても、第二部材3のみが耐プラズマ性材料から形成されてもよい。第一部材2および第二部材3の両方が耐プラズマ性材料から形成されると、その間に配置される中間部材4をプラズマからより効果的に保護することができるため、好ましい。第一部材2および/または第二部材3は、後述する繊維を含むプラズマ保護材5であってもよい。
図2に示す耐プラズマ構造1aの第一部材2aのように、第一部材2および/または第二部材3は、繊維を含むプラズマ保護材5としてもよい。なお、第一部材2および/または第二部材3は、複数の構成要素から構成されてもよい。
【0029】
耐プラズマ性材料として、有機材料や無機材料が挙げられる。有機材料として、ナイロン、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、アクリル、ポリオレフィン、芳香族ポリエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、フッ素樹脂、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール樹脂、フェノール樹脂、塩化ビニルおよびシリコーン樹脂が好ましいが、これらに限定されない。無機材料として、金属、セラミックスが好ましいが、これらに限定されない。無機材料の例として、イットリウム、アルミニウム、ジルコニウム、ハフニウム、カルシウム、マグネシウム、ニッケル、チタンおよび珪素のうち少なくとも1種を含むものが挙げられ、これらの酸化物、水酸化物、炭化物またはこれらの混合物(鉱物等)でもよく、混合物中にはハイドロキシアパタイトを含んでもよい。
【0030】
(中間部材4)
中間部材4としては特に限定されず、接合、封止、絶縁、断熱、熱伝導、導電等の機能を有するものであってもよく(以下、「機能部材」ともいう)、何の機能を意図していない充填材や空間であってもよい。従って、中間部材4の材質も限定されない。中間部材4の形状としても特に限定されず、中空状、層状等でもよい。中間部材4の具体例としては、封止材(Oリング)、接合層(
図4の接合層14)等が挙げられる。
【0031】
(接合層)
機能部材の1つである接合層としては特に限定されず、金属、接着材料(樹脂)等を用いることができる。金属として、作業性の観点から、ロウ材(銀ロウ、銅ロウ、銅合金ロウ、アルミニウムロウ、ニッケルロウ、活性銀ロウ、チタンロウ、はんだ材等)を用いることができる。これらは、接合する第一部材2と第二部材3の性質(熱膨張、熱伝導率等)との関係でより適切なものを選択できる。
【0032】
(接着材料)
上記接合層(機能部材)は、接着材料であってもよい。接着材料として、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、これらの接着材料にフィラーを混ぜたもの、等が挙げられる。接着性と耐熱性の観点から、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、これらの接着材料にフィラーを混ぜたものが好ましく、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、これらにフィラーを混ぜたものがより好ましく、シリコーン樹脂、シリコーン樹脂にフィラーを混ぜたものがさらに好ましいが、これらに限定されない。
【0033】
(封止材)
中間部材4は封止材(シール材)であってもよい。封止材として、シリコーン、ポリイミド、芳香族ポリエーテルケトン、フッ素樹脂、エラストマー、これらの封止材にフィラーを混ぜたものが挙げられる。耐プラズマ性および耐熱性の観点から、フッ素樹脂、フッ素樹脂にフィラーを混ぜたものが好ましいが、これらに限定されない。封止材の形状としてはリング状(例えば、Oリング)であってもよく、未硬化の硬化型液状樹脂を任意の形状に流し込み、封止材を形成してもよい。
【0034】
(プラズマ保護材5)
プラズマ保護材5は繊維を含み、耐プラズマ性材料から形成されるものである。プラズマ保護材5は、樹脂材料のような中間部材4をプラズマ空間から保護するものであり、樹脂材料をプラズマ空間から隔離または遠ざけることができる。プラズマ保護材5によって中間部材4までの経路が塞がれて、中間部材4をプラズマが届くまでの距離が長くなり、プラズマが失活して、中間部材4に対する影響を減少させることができる。プラズマ保護材5が繊維から構成される場合、繊維間や繊維の周囲に空隙ができ、このような空隙により外界の寸法変化に追従し、応力を緩和することができる(クッション性)。例えば、加熱による第一部材2と第二部材3の寸法変化に追従し、寸法変化により生じた応力を緩和することができ、結果、耐プラズマ構造1の高寿命化が図れる。また、プラズマ保護材5がセラミックス等に繊維を混ぜて構成される場合、繊維はセラミックスの骨材となり、プラズマ保護材5の応力に対する強度が増大する。結果、外界の寸法変化に対する応力耐性が上昇し、耐プラズマ構造1の高寿命化が図れる。
【0035】
プラズマ保護材5を構成する繊維としては、無機繊維が好ましく、その例として、イットリウム、アルミニウム、ジルコニウム、ハフニウム、カルシウム、マグネシウム、ニッケル、チタンおよび珪素のうち少なくとも1種を含むものが挙げられ、これらの酸化物、水酸化物、炭化物、有機繊維の表面にこれらの無機化合物をコーティングした繊維、これらの混合物からプラズマ保護材5を構成してもよいが、これらに限定されない。さらに、市販されている無機繊維として、ニチアス社製ファインフレックス、イソライト工業社製イソウール、イビデン社製イビウール、新日化サーマルセラミックス社製スーパーウール、3M社製ネクステル、日本グラスファイバー工業社製エヌシリカ、BelChem社製BelCo Tex、ニチビ社製ニチビアルフ、三井鉱山マテリアル社製アルマックス、Saffi Fibres社製SAFFIL、デンカ社製デンカアルセン、ニチアス社製ルビール、三菱化学産資社製マフテック、住友化学社製アルテックス、日東紡社製ロックファイバー、ニチアス社製MGマイティウール、日本ロックウール工業社製エスファイバー、ラピナス社製ロックフィル、日本カーボン社製ニカロン、宇部興産社製チラノ繊維、日本精線社製ナスロン、べカルト社製Bekipor、ユニチカ社製BOLFUR、ユニチカ社製SENCY、ユニチカ社製ユニチカグラスファイバー、日東紡社製ニットーボーグラスファイバー、日本電気硝子社製Eガラス、日本電気硝子社製ARG、旭硝子社製アルファイバーが挙げられる。
【0036】
プラズマ保護材5は、中間部材4の端部における耐プラズマ構造1の外面側に配置される。プラズマ保護材5は、中間部材4の外周に配置されてもよく、プラズマ保護材5は、中間部材4の外周に沿って備えられていることが好ましい。プラズマ保護材5の繊維の延びる方向は、中間部材4の外周に沿っていることが好ましい。
【0037】
プラズマ保護材5の繊維の延びる方向における長さは、中間部材4の外周より長く、中間部材4の外周に沿って繊維が巻き廻されていても、(きつく)巻きつけられていてもよい(これらの結果、中間部材の周囲に1周または複数周存在することを含む)。ここで、プラズマ保護材5は中間部材4に直接巻き廻されてもよいし、第一部材2と第二部材3の間に挟まれて巻き廻されてもよい(即ち、プラズマ保護材5は中間部材4から離れていてもよい)。なお、本明細書において、「繊維」とは糸状の物質をいい、その構造(形状)は特に限定されないが、プラズマ保護材5の繊維の直径は、好ましくは0.01mm~0.2mmであり、より好ましくは0.02mm~0.1mmである。繊維の直径が平均でこれらの範囲内であると、応力緩和性および耐プラズマ性の観点から好ましい。繊維のアスペクト比(長さ/直径)は、用途にも依るが、1,000~2,200,000が好ましく、28,000~2,200,000がより好ましく、140,000~1,200,000がさらに好ましい。繊維長(アスペクト比)が長いほど、良好な耐プラズマ性、耐久性、耐パーティクル性が得られる傾向があるからである。
【0038】
繊維を含むプラズマ保護材5の構造(形状)は特に限定されないが、プラズマ保護材5は、繊維からなる繊維構造体であってよい。繊維構造体として、撚糸、不織布、織布、メッシュ状の構造体であってもよく、隙間(空隙)を備える複数の構成部品(繊維等)から構成されてもよい。これらの繊維構造体の製造方法として用法に合わせて公知のものを採用できる。例えば、撚糸は、複数の繊維を合わせて、撚りをかけることで製造することができ、不織布は、乾式法、湿式法で製造することができるが、これらに限定されない。プラズマ保護材5の上述した「空隙」も、上述のような応力緩和性や高寿命化を図ることができれば、特に限定されない。例えば、プラズマ保護材5として、上述した耐プラズマ性材料から形成した1本の繊維を中間部材4の外周に沿って巻き廻したものでもよい。この場合も、巻き廻された繊維間の空隙により、第一部材2と第二部材3の寸法変化に追従し、寸法変化により生じた応力を緩和する効果を発揮し得る。結果、高寿命な耐プラズマ構造1を提供することができる。
【0039】
また、プラズマ保護材5(繊維構造体)は、繊維束を含むことが好ましい。即ち、単に繊維のみを含む場合よりも束にすることにより応力緩和性、強度、取扱性(配置や除去を含む)が向上する。繊維束中の各繊維の材質や寸法等は同じでも異なっていてもよいが、方向・向きが揃っていて寸法も略同じであることが好ましい。束にされる繊維の数は特に限定されず、中間部材4の厚さや繊維の直径等を考慮して適宜設定できる。例えば、無機繊維からなる繊維束は第一部材2と第二部材3の間に挟まれていることが好ましい。すなわち、第一部材2と第二部材3の間に挟まれていることにより、中間部材4はプラズマ雰囲気から隔離され、かつ、繊維束が脱落し難くすることができる。このように繊維の数を選択設定すれば、耐プラズマ構造1の高寿命化を図ることができる。また、繊維束において、形状の維持とクッション性を両立できる程度に繊維同士が結着していることが好ましい。
【0040】
繊維構造体の延びる(延在する)方向も、中間部材4の外周に沿っていることが好ましく、すなわち、プラズマ保護材5を構成する繊維束も、中間部材4の外周に沿って延在していることが好ましい。また、繊維束の各繊維の方向も中間部材4の外周に沿っていることが好ましい。このように、繊維の方向が揃っていることにより、第一部材2と第二部材3の間にプラズマ保護材5としての繊維束を均一に入れることができるため、第一部材2とプラズマ保護材5の間および第二部材3とプラズマ保護材5の間における隙間が小さくなり、耐プラズマ性が向上する。結果、耐プラズマ構造1の長寿命化を図ることができる。
【0041】
また、プラズマ保護材5の繊維構造体の延びる方向における長さは、中間部材4の外周より長く、中間部材4の外周に沿って繊維構造体が巻き廻されてもよい(
図3)。なお、
図3(A)(B)は、中間部材4の外周に沿ってプラズマ保護材5が巻き廻される際の耐プラズマ構造1の上面図、斜視図の例である。
【0042】
また、プラズマ保護材5に含まれる繊維束は、撚糸形状を含むことが好ましい。撚った繊維同士が繊維束中で互いに移動することができれば、高い強度とクッション性の両立を実現できる。また、撚糸の高い強度は、プラズマ保護材5の強度を上げることができ、耐プラズマ構造1からプラズマ保護材5を除去することも容易となる。また、撚糸は繊維束中で繊維がほぐれることでも応力緩和できる。撚り方としては特に限定されないが、1メートルにつき換算すると5~360回転とすることができ、好ましくは20~300回転の範囲である。捻り方において、上記範囲であると、繊維束の強度と応力緩和性だけでなく、プラズマ処理時におけるパーティクル発生の抑制をバランスよく実現することができる。結果、高寿命な耐プラズマ構造1を提供することができる。ここで「パーティクル」とは、主にプラズマ処理時に耐プラズマ構造1から発生する小さな欠片のことを意味する。パーティクルは被保持物Wの不純物になる虞がある。例えば、プラズマ保護材5の強度が低い場合、プラズマ処理により繊維は破壊され、パーティクルとして被保持物Wに付着する虞がある。また、プラズマ保護材5により中間部材4がプラズマ雰囲気から隔離または遠ざけられてない場合、中間層はプラズマ雰囲気によって劣化し、破壊され、パーティクルとして被保持物Wに付着する虞がある。
【0043】
繊維束の各繊維の直径は、好ましくは0.01mm~0.2mmであり、より好ましくは0.02mm~0.1mmである。繊維の直径が平均でこれらの範囲内であると、応力緩和性および耐プラズマ性の観点から好ましい。また、繊維束の各繊維のアスペクト比は、好ましくは500以上であり、より好ましくは1000以上、さらに好ましくは8000以上である。このように各繊維が長繊維であると、プラズマ保護材5の応力緩和性が向上し、結果、高寿命な耐プラズマ構造1を提供することができる。なお、本明細書における「直径」は、顕微鏡で撮像された繊維または繊維束の延びる方向に対する任意の垂直断面における断面積を算出し(例えば、公知ソフトにて算出する。)、当該断面積と同一面積を有する円の直径を算出することにより導かれた面積径の平均値(例えば、20個の繊維または繊維束の平均値)である。また、本明細書における繊維束の「長さ」は、例えば、繊維束における任意の繊維10本の長さの平均値である。
【0044】
プラズマ保護材5は第一部材2、第二部材3、中間部材4と結着していなくてもよく、例えば、プラズマ保護材5として繊維構造体(撚糸、メッシュ、不織布、金属ワイヤ等)を第一部材2と第二部材3の間から中間部材4に向けて押し込んでもよい。
【0045】
プラズマ保護材5と中間部材4は、少なくとも一部で離間していることが好ましく、一部で離間し、かつ、他部で密着していることがより好ましい(例えば、
図5に示す耐プラズマ構造を有する静電チャック21では、プラズマ保護材25の第一部材22に接する側と第二部材23に接する側は、中間部材である接合層24の外周部分24aから離間している)。中間部材4からプラズマ保護材5が完全に離間していると脱落する虞があるが、一部を離間し、一部を密着させれば、応力緩和性を向上させることができる。結果、高寿命な耐プラズマ構造1を提供することができる。
【0046】
以下に、本開示のその他の実施形態を説明するが、耐プラズマ構造1の構成要素と同じまたは類似する構成要素の参照番号には10、20、30、40などと加えてある(すなわち、例えば、
図4のプラズマ保護材15はプラズマ保護材5と同じまたは類似する構成要素である)。また、特に好ましい実施形態として、同じまたは類似する構成要素でも異なる名称を付す場合もある(例えば、
図6のエッジリング部分42とエッジリング部分43はそれぞれ第一部材2と第二部材3に対応し、耐プラズマ性材料から形成されてもよいが、異なる名称を付している)。これらの説明は適宜省略する。
【0047】
[静電チャック11]
本開示によれば、
図4に示すような、耐プラズマ構造1を備えた静電チャック11を提供する。すなわち、
図4では、上記耐プラズマ構造1は、被保持物Wを保持する保持部材12と、保持部材12を保持する基台13とすることができる。より具体的には、静電チャック11は、被保持物Wを保持する保持部材12と、保持部材12を保持する基台13と、保持部材12と基台13の間に配置された接合層14と、繊維を含むプラズマ保護材15を有し、繊維を含むプラズマ保護材15は接合層14の端部における静電チャック11の外面側に配置される。プラズマ保護材15は、後述するようにプラズマに対して耐性を有し、接合層14以外でも静電チャック11の所望の位置にプラズマ保護材15を設けることができる。
【0048】
(保持部材12)
保持部材12は、被保持物Wを吸着して保持するためのものである。保持部材12の形状は限定されず、被保持物Wの形状に合わせて円板状や四角形状にすることもできる。保持部材12の寸法も、被保持物Wに合わせて適宜設定できる。なお、「被保持物W」も限定されず、例えば、ウェハ(シリコンウェハ、石英ウェハ、SiCウェハ等)、フラットパネルディスプレイ(FPD)パネルや基板、金属部材、フィルム部材、樹脂部材(自動車内装材等)、ガラス部材等のワークピースを包含し得る。
【0049】
保持部材12としては、セラミックス基板(アルミナ、窒化アルミニウム、酸化イットリウム、炭化珪素等)基板、樹脂基板、アルミニウムやステンレス鋼等からなる金属基板等が挙げられる。なお、樹脂基板は、耐プラズマ性と耐熱性の観点から、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、芳香族ポリエーテルケトン、フッ素系ポリマー等が挙げられる。保持部材12は、2種類以上から構成される基板でもよい。耐プラズマ性と耐熱性の観点から、保持部材12はセラミックス基板、樹脂基板、セラミックスと樹脂からなる複合基板であることが好ましい。
【0050】
保持部材12の厚さも特に限定されず、0.2mm~7mmの範囲内とすることができる。また、後述のように保持部材12に内部電極が設けられる場合、保持部材12の厚さは、3mm~10mmの範囲内としてもよい。
【0051】
また保持部材12における被保持物Wを保持する側の面には、複数の突起を設けてもよい。これらの突起の上面で被保持物Wを保持(吸着)することで、保持部材12と被保持物Wとの接触面積が低減される。結果、被保持物Wの品質を保つことができると共に、静電チャック11の高寿命化を図ることができる。突起の数、配列、形状、高さ、寸法等は特に限定されない。突起の形状は、被保持物Wの品質維持の観点から円盤状または円柱状が好ましく、各突起の上面は平らであることが好ましい。突起の形状および高さ等が上記のようなものであれば、被保持物Wの品質を良好に保ち、より高寿命の静電チャック11を提供することができる。
【0052】
(基台13)
基台13は、保持部材12を保持するものであり、冷却機能も有する。基台13の形状、材料、厚さ等は用途に合わせて適宜設計変更できる。例えば、基台13の材料としては、セラミック、金属、およびこれらを組み合わせたものが挙げられる。セラミックの例としては、アルミナ、窒化アルミニウム、酸化イットリウム、炭化ケイ素等が挙げられ、金属の例としては、アルミニウム、ステンレス鋼等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
(接合層14)
接合層14は、保持部材12や基台13等の各部材を接合するものである。接合層14の厚さ(高さ)は、特に限定されないが、好ましくは20μm~1000μm、より好ましくは50μm~800μm、さらに好ましくは100μm~500μmである。接合層14の厚さがこの範囲内であれば、接合層14は、加熱時における保持部材12と基台13の寸法変化の応力に好適に耐え、かつ、プラズマ処理工程において接合層14とプラズマ雰囲気との接触を限定できる。結果、より高寿命な静電チャック11を提供することができる。
【0054】
接合層14の材料として、金属、接着材料(樹脂)等が挙げられる。金属として、作業性の観点から、ロウ材(銀ロウ、銅ロウ、銅合金ロウ、アルミニウムロウ、ニッケルロウ、活性銀ロウ、チタンロウ、はんだ材等)を用いることができるが、これらに限定されない。ロウ材は、接合する保持部材12と基台13の性質(熱膨張、熱伝導率等)との関係でより適切なものを選択できる。また、接着材料としては、熱可塑性エラストマー、熱硬化性エラストマー、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、これらにフィラーを混合させたものなどが挙げられ、接着性と耐熱性の観点からシリコーン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、これらにフィラーを混ぜたものが好ましく、シリコーン樹脂、シリコーン樹脂にフィラーを混ぜたものがより好ましい。
【0055】
接合層14は、熱伝導性フィラーを含んでもよい。熱伝導性フィラーを含むことにより、接着性と熱伝導性を両立できるため、接合層14の熱劣化が抑制できる。結果、高寿命の静電チャック11を提供することができる。熱伝導性フィラーとしては、金属、アルミナ、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ホウ素、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、ダイヤモンドなどが挙げられるが特に限定されない。熱伝導性フィラーの量、形状等も特に限定されない。
【0056】
本開示によれば、
図5に示したような静電チャック21も提供できる。接合層24は、面方向における位置により、異なる接合層24を用いてもよい。例えば、接合層24の中央部分24bと外周部分24aで異なる種類の材料を用いてもよい(
図5)。加熱時における保持部材22と基台23の寸法変化の応力に好適に耐えることができる。
【0057】
(プラズマ保護材15)
プラズマ保護材15は、接合層14を保護するためプラズマ雰囲気から隔離または遠ざけるものであり、好ましくは接合層14の外周に沿って設けられる。
【0058】
プラズマ保護材15は、異なる材料の組み合わせであってもよい。プラズマ保護材15も上述のような撚糸等の繊維構造体とすることができる。
【0059】
(保護材)
静電チャック11は、プラズマ保護材15の外周に沿って設けられた保護材を更に備えてもよい(図示せず)。この保護材は、プラズマ保護材15の強度を向上させ、プラズマ保護材15から発生するパーティクルを抑制することができる。また、保護材は、プラズマ保護材15を固定しプラズマ保護材15を保持することもできる。応力緩和のため、保護材の少なくとも一部はプラズマ保護材15と離間していることが好ましい。
【0060】
保護材の材料としては、プラズマ保護材15を保持固定するために樹脂等の有機物を用いることができる。樹脂の例としては、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。また、接合層14やプラズマ保護材15を保護するために耐プラズマ性の材料を用いることができ、特にアルミナ、炭化珪素、金属酸化物等を用いることが好ましい。
【0061】
また、保護材は、無機粒子を含んだペースト、金属の有機化合物溶液、金属錯体溶液等を塗布後焼結して形成することができ、無機材料を溶射して形成することもできる。
【0062】
(その他)
本実施の形態による静電チャック11において、電圧を印加して静電気力(クーロン力)を発生させて被保持物Wを吸着するために内部電極(図示せず)を保持部材12に設けることができる。或いは、このような内部電極を基台13に設けてもよい。
【0063】
内部電極としては、電圧を印加した際に静電吸着力を発現できる導電性物質からなるものであれば特に限定されない。内部電極としては、例えば、銅、アルミニウム、金、銀、白金、クロム、ニッケル、タングステン等の金属からなる薄膜、および前記の金属から選択される少なくとも2種の金属からなる薄膜が好適に用いられ、セラミック材料にこのような導電性物質を含有させたものでもよい。このような導電性物質の薄膜としては、蒸着、メッキ、スパッタリング、溶射等により成膜されたものや、導電性ペーストを塗布乾燥して成膜されたもの、具体的には、銅箔等の金属箔が挙げられる。
【0064】
また、保持部材12の最外周は、プラズマ保護材15(または保護材)の最外点より外側に位置していることが好ましく、基台13の最外周も、プラズマ保護材15(または保護材)の最外点より外側に位置していることがより好ましい(
図4)。プラズマ保護材15や保護材のプラズマによる劣化が抑制されるからである。さらに、保持部材12の最外周が基台13の最外周よりも外側に位置していれば、静電チャック11と共に用いられるエッジリング41(
図6、7)などの他の部材と基台13が干渉することなく好ましい。
【0065】
(静電チャック11の製法、用途)
静電チャック11は、例えば、以下のように製造できる。まず、保持部材12および基台13を用意する。このとき、上述したように、保持部材12か基台13のいずれかに、銅等の金属をパターン形成して内部電極を形成する。次に、保持部材12と基台13を、接合層14を介して接合する。ここまでは、従来の静電チャックの製法でも行われている。従来の静電チャックでは、保持部材と基台を、接合層を介して接合した後、Oリングまたは接着剤(エラストマー、アクリルゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、熱硬化樹脂等)が設けられる。これに対し、本開示の実施形態では、上述のようなプラズマ保護材15が接合層14端部における静電チャック11の外面側に設けられる。さらに、プラズマ保護材15の外周に沿って保護材が適宜設けられる(
図4)。
【0066】
本実施の形態による静電チャック11は、保持部材12や基台13に埋まっている内部電極に電圧を印加することによりクーロン力を発生させ被保持物Wを吸着させる。例えば、半導体製造工程におけるドライエッチングやCVDプロセスにおいて、ウェハ(被保持物W)を吸着するために静電チャック11を用いることができる。特に、プラズマを用いる装置や方法において、本実施の形態による静電チャック11であれば、プラズマ照射によって保持部材12や基台13が高温になり膨張したとしても、例えば、プラズマ保護材5が無機繊維構造体を備える場合、無機繊維間に空隙が発生し保持部材12と基台13との膨張収縮差による応力を吸収することができ、結果、静電チャック11の高寿命化を図ることができる。また、プラズマ保護材15がセラミックス等に上述したような繊維を混ぜて構成される場合、繊維はセラミックスの骨材となり、プラズマ保護材15の応力に対する強度が増大する。結果、外界の寸法変化に対する応力耐性が上昇し、静電チャック11の高寿命化が図れる。
【0067】
さらに、従来の静電チャックと比べ、静電チャック11の製法は概して、プラズマ保護材15を設けるか否かが相違することから、従来の静電チャックを補修する際に容易に本開示に係る静電チャック11へと製造することができる(
図3)。
【0068】
[エッジリング41]
また、本開示の一実施形態として、
図6(A)(B)に示すような耐プラズマ構造を備えたエッジリング41を提供する。
図6(A)、(B)はそれぞれエッジリング41の斜視図、断面図である。本開示のエッジリング41は、静電チャックの外周を囲うように形成され、リング状に形成される。また、プラズマ処理工程で用いられ、静電チャックの保持部材の上面に吸着されたウェハ等の被保持物Wに対して、均一にプラズマ処理を行うために使用される(
図7)。
図6では、より具体的には、エッジリング41は、エッジリング部分42と、エッジリング部分43と、エッジリング部分42とエッジリング部分43の間に配置された接合層(中間部材)44と、繊維を含むプラズマ保護材45を有し、プラズマ保護材45は、接合層44におけるエッジリング41の外面側に配置される。プラズマ保護材45は、プラズマに対して耐性を有し、接合層44以外でもエッジリング41の所望の位置にプラズマ保護材45を設けることができる。
【0069】
(エッジリング部分42、43)
エッジリング部分42、43は、エッジリング41を構成する部分である。エッジリング部分42、43の材質として、半導体、導電体、絶縁体、これらを2つ以上組み合わせたものが挙げられるが、これらに限定されない。これらを所望の組み合わせにすることで、誘電特性が制御でき、静電チャックの保持部材の上面に吸着されたウェハ等の被保持物Wに対して、均一にプラズマ処理することができる。結果、長寿命なエッジリング41を提供することができる。
【0070】
(接合層44)
接合層44は、エッジリング部分42やエッジリング部分43等の各部材を接合するものである。接合層14の厚さ(高さ)は、特に限定されないが、好ましくは20μm~1000μm、より好ましくは50μm~800μm、さらに好ましくは100μm~500μmである。接合層14の厚さがこの範囲内であれば、接合層44は、加熱時におけるエッジリング部分42とエッジリング部分43の寸法変化の応力に好適に耐え、かつ、プラズマ処理工程において接合層44とプラズマ雰囲気との接触を限定できる。結果、より高寿命なエッジリング41を提供することができる。
【0071】
接合層44、プラズマ保護材45として、上述した接合層14やプラズマ保護材15と同じものを用いることができる。エッジリング41でも保護材が設けられてもよい。
【0072】
(エッジリング41の製法、用途)
エッジリング41は、例えば、以下のように製造できる。まず、エッジリング部分42およびエッジリング部分43を用意する。このとき、上述したように、エッジリング部分42とエッジリング部分43を、接合層44を介して接合する。ここまでは、従来のエッジリングの製法でも行われている。従来のエッジリングでは、エッジリング部分42とエッジリング部分43を、接合層を介して接合した後、Oリングまたは接着剤(エラストマー、アクリルゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、熱硬化樹脂等)が設けられる。これに対し、本開示の実施形態では、上述のようなプラズマ保護材45が接合層44の端部におけるエッジリング41の外面側に設けられる。さらに、プラズマ保護材45の外周に沿って保護材が適宜設けられる(図示せず)。
【0073】
本実施の形態によるエッジリング41は、上述したように高寿命なものである。また、プラズマを用いる装置や方法において、プラズマ照射によってエッジリング部分42やエッジリング部分43が高温になり膨張したとしても、例えば、プラズマ保護材45が無機繊維構造体を備える場合においては、無機繊維間に空隙が発生しエッジリング部分42とエッジリング部分43との膨張収縮差による応力を吸収することができ、結果、エッジリング41の高寿命化を図ることができる。また、プラズマ保護材45がセラミックス等に上述したような繊維を混ぜて構成される場合、繊維はセラミックスの骨材となり、プラズマ保護材45の応力に対する強度が増大する。結果、外界の寸法変化に対する応力耐性が上昇し、エッジリング41の高寿命化が図れる。
【0074】
さらに、従来のエッジリングと比べ、エッジリング41の製法は概して、プラズマ保護材45を設けるか否かが相違することから、従来のエッジリングを補修する際に容易に本開示に係るエッジリング41を製造することができる。
【0075】
[プラズマ処理装置用部材]
図示はしないが、本開示の一実施形態として、耐プラズマ構造を備えたプラズマ処理装置用部材を提供することができる。プラズマ処理装置では、プラズマ雰囲気に晒されるため、その筐体や装置の内部に設置される部品等(静電チャック、エッジリング、装置内壁等)も耐プラズマ性が求められる。例えば、半導体装置製造工程で用いられるプラズマ処理装置では、ウェハ等の被加工物の搬入出と内部の真空状態の確保との両立のため、着脱可能になっており、着脱部にはOリング等の封止材(シール材)等が用いられる。これらの着脱部等に本開示の耐プラズマ構造を備えれば、プラズマ処理装置を高寿命化することができる。本開示におけるプラズマ処理装置用「部材」とは、プラズマ処理装置において本開示の耐プラズマ構造を備えるものである。例えば、筐体や着脱部が挙げられる。また、本開示の耐プラズマ構造をプラズマ処理装置自体がその一部として備えてもよい。すなわち、本開示の一実施形態として、耐プラズマ構造を備えたプラズマ処理装置を提供することもできる。
【0076】
プラズマ処理装置の耐プラズマ性の壁に亀裂がある場合、この壁を第一部材2と第二部材3とし、第一部材2と第二部材3の間の亀裂にプラズマ保護材5および中間部材4として充填材や接着剤(プラズマ保護材5を第一部材2と第二部材3に接着させる)に挿入することできる。このように、本開示のプラズマ保護材5を修理材として利用することもできる。
【0077】
(プラズマ処理装置用部材の製法、補修方法)
プラズマ処理装置用部材(耐プラズマ構造1)は、例えば、以下のように製造できる。まず、第一部材2および第二部材3を用意する。このとき、上述したように、第一部材2と第二部材3の間に、中間部材4を配置する。ここまでは、従来のプラズマ処理装置用部材の製造方法でも行われている。従来のプラズマ処理装置用部材では、第一部材と第二部材を、接合層を介して接合した後、Oリングまたは接着剤(エラストマー、アクリルゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、熱硬化樹脂等)が設けられる。これに対し、本開示の実施形態では、上述のようなプラズマ保護材5が中間部材4の端部におけるプラズマ処理装置用部材の外面側に設けられる。例えば、繊維を有する繊維構造体を、中間部材4の外周に沿って巻き廻すことで、プラズマ保護材5を設置することができる。さらに、プラズマ保護材5の外周に沿って保護材が適宜設けられる(図示せず)。プラズマ処理装置用部材(耐プラズマ構造1)の補修方法は、プラズマ処理装置用部材の製法のように、繊維構造体を中間部材の外周に沿って巻き廻す工程を含むものである。
【0078】
以上のような構成からなる本実施の形態の耐プラズマ構造1、静電チャック11、エッジリング41およびプラズマ処理装置用部材によれば、第一部材2と、第二部材3と、第一部材2と第二部材3の間に配置された中間部材4と、繊維を含むプラズマ保護材5と、が設けられている。第一部材2および第二部材3の少なくとも一方は耐プラズマ性を有し、繊維を含むプラズマ保護材5は、中間部材4の端部における耐プラズマ構造1の外面側に配置される。
【0079】
また、本開示の一実施形態である繊維構造体は繊維を有し、第一部材2と、第二部材3と、第一部材2と第二部材3の間に配置された中間部材4と、を備えた耐プラズマ構造1において、この繊維構造体は、中間部材4の外周に沿って配置されている。
【0080】
また、本開示の一実施形態である耐プラズマ構造1の製造方法によれば、第一部材2と第二部材3の間に中間部材を配置する工程と、繊維構造体を中間部材4の外周に沿って巻き廻す工程と、が含まれる。
【0081】
また、本開示の一実施形態であるプラズマ処理装置用部材の補修方法によれば、プラズマ処理装置用部材は、第一部材2と、第二部材3と、第一部材2と第二部材3の間に配置された中間部材4を備えるものであり、この補修方法には、繊維を有する繊維構造体を、中間部材4の外周に沿って巻き廻す工程が含まれる。
【0082】
上述したように、耐プラズマ構造1では、プラズマ保護材5と第一部材2等が耐プラズマ性を有することから、中間部材4ひいては耐プラズマ構造1の高寿命化が図られている。また、プラズマ保護材5が備える空隙により、例えば、保持部材12と基台13の寸法変化に追従し、応力を緩和することができ、静電チャック11の高寿命化を図ることができる。また、プラズマ保護材5がセラミックス等に繊維を混ぜて構成される場合、繊維はセラミックスの骨材となり、プラズマ保護材5の応力に対する強度が増大し、例えば、保持部材12と基台13の寸法変化に対する応力耐性が上昇し、静電チャック11の高寿命化が図れる。
【0083】
また、本実施の形態の耐プラズマ構造1、静電チャック11、エッジリング41およびプラズマ処理装置用部材、繊維構造体、耐プラズマ構造1の製造方法、プラズマ処理装置用部材の補修方法において、繊維を含むプラズマ保護材5は、中間部材4の外周に配置されてもよい。また、繊維の延びる方向は、中間部材4の外周に沿っていてもよい。
【0084】
また、本実施の形態の耐プラズマ構造1、静電チャック11、エッジリング41およびプラズマ処理装置用部材、繊維構造体、耐プラズマ構造1の製造方法、プラズマ処理装置用部材の補修方法において、繊維を含むプラズマ保護材5は、繊維からなる繊維構造体を含んでもよい。言い換えれば、繊維構造体はプラズマ保護材5と同様に耐プラズマ性材料から形成されたものでもよい。
【0085】
また、本実施の形態の耐プラズマ構造1、静電チャック11、エッジリング41およびプラズマ処理装置用部材において、繊維構造体の延びる方向は、中間部材4の外周に沿っていてもよい。
【0086】
また、本実施の形態の耐プラズマ構造1、静電チャック11、エッジリング41およびプラズマ処理装置用部材、繊維構造体、耐プラズマ構造1の製造方法、プラズマ処理装置用部材の補修方法において、中間部材4は、接合層であってもよい。
【0087】
また、本実施の形態の耐プラズマ構造1、静電チャック11、エッジリングおよびプラズマ処理装置用部材、繊維構造体、耐プラズマ構造1の製造方法、プラズマ処理装置用部材の補修方法において、繊維の延びる方向における長さは、中間部材4の外周より長く、中間部材4の外周に沿って繊維が巻き廻されていてもよい。
【0088】
また、本実施の形態の耐プラズマ構造1、静電チャック11、エッジリング41およびプラズマ処理装置用部材、繊維構造体、耐プラズマ構造1の製造方法、プラズマ処理装置用部材の補修方法において、繊維構造体の延びる方向における長さは、中間部材4の外周より長く、中間部材4の外周に沿って繊維構造体が巻き廻されていてもよい。
【0089】
また、本実施の形態の耐プラズマ構造1、静電チャック11、エッジリング41およびプラズマ処理装置用部材、繊維構造体、耐プラズマ構造1の製造方法、プラズマ処理装置用部材の補修方法において、繊維は、無機繊維であってもよい。
【0090】
また、本実施の形態の耐プラズマ構造1、静電チャック11、エッジリング41およびプラズマ処理装置用部材、繊維構造体、耐プラズマ構造1の製造方法、プラズマ処理装置用部材の補修方法において、繊維構造体は、撚糸、不織布、メッシュまたは織布の少なくとも一つを含んでもよい。
【0091】
また、本実施の形態の静電チャック11において、第一部材2を被保持物を保持する保持部材12とし、第二部材3を保持部材12を保持する基台13とすることができる。
【0092】
また、本実施の形態の静電チャック11において、保持部材12の最外周は、プラズマ保護材5の最外点より外側に位置してもよく、基台13の最外周は、プラズマ保護材5の最外点より外側に位置してもよい。
【0093】
なお、本実施の形態による耐プラズマ構造1、静電チャック11、エッジリング41、プラズマ処理装置用部材、繊維構造体、耐プラズマ構造1の製造方法、プラズマ処理装置用部材の補修方法は、上述した態様や組み合わせに限定されることはない。
【0094】
例えば、保持部材12または基台13に設けられる内部電極は1つだけでなく、2つ設けてもよい。
【0095】
例えば、エッジリング部分42またはエッジリング部分42の内部に、電極を設けてもよい。
【0096】
例えば、エッジリング41は、エッジリング部分42およびエッジリング部分43に加えて、一つ以上の部材をさらに備えていてもよく、これらの部材の間に中間部材4を配置し、中間部材4の外周にプラズマ保護材5を備えてもよい。
【0097】
以下、本開示について実施例および比較例を用いてより詳細に説明する。
【0098】
[静電チャックの製造方法]
【0099】
(実施例1)
表1に示した構成になるように、静電チャック状の耐プラズマ構造体(以後、静電チャック)を作製した。すなわち、アルミニウム基台(第二部材。直径296mm、厚み30mm)の外周20mm幅を除く上面に、塗布後0.2mm厚みになるようにシリコーン接着剤(中間部材、接合層)を塗布し、このシリコーン接着剤を介して、基台の上面に保持部材(第一部材)としてアルミナ板(直径297mm、厚み4mm)を貼合した。次いで、表1に示したアルミナ繊維からなるアルミナ繊維束(プラズマ保護材)をシリコーン接着剤(接合層)の外周端部、アルミナ板、基台で囲まれた凹部(接合層の外周)に巻き廻してアルミナ板、基台間に固定した。そして、バーナーを用いた焼成により、アルミナ繊維束の終点を、位置が重なったアルミナ繊維束の一部と結着させた。なお、アルミナ繊維束は接合層と接しており、基台およびアルミナ板の外周端部からアルミナ繊維束ははみ出していなかった。その後、120℃に設定した恒温槽に2時間静置しシリコーン接着剤を硬化させ、静電チャックを作製した。
【0100】
(実施例2、3)
表1に示した構成になるように、実施例1の静電チャックと同様に実施例2、3の静電チャックを作製した。なお、接合層の外周端部、アルミナ板、基台で囲まれた凹部に巻き付ける代わりに、表1に示したアルミナ繊維束(繊維長は15mmまたは200mm)を3本ずつ隣り合わせに並ぶように、かつ、アルミナ繊維束の延びる方向が接合層の外周に沿うように、接合層の外周全域に沿って挿入させた。
【0101】
(実施例4~13)
表1に示した構成になるように、実施例1の静電チャックと同様に実施例4~13の静電チャックを作製した。なお、表1において、「繊維束1」はセラミック・ウール工業社製CY-640D、「繊維束2」は、セラミック・ウール工業社製CY-1280D、「繊維束3」はニチビ社製CT-2560D、「繊維束4」は日本精線社製ナスロン12-100/2、「繊維束5」は東レ社製T300-1000を示す(表2も同様である)。
【0102】
(比較例1)
表1に示した構成になるように、実施例1の静電チャックと同様に比較例1の静電チャックを作製した。なお、シリコーン接着剤は塗布後に3.0mm厚みになるように塗布し、比較例1のプラズマ保護材としては、フッ素ゴム系Oリング(NOK社製AS568-277-D、線径3.5mm、外径299mm、内径292mm)を用い、接合層の外周端部、アルミナ板、基台で囲まれた凹部に挿入した。
【0103】
(比較例2)
表1に示した構成になるように、実施例1の静電チャックと同様に比較例2の静電チャックを作製した。なお、比較例2のプラズマ保護材は、アルミナ粒子(フジミ社製、SURPREX AHP50、粒径45μm(製造元公称値))を、接合層の外側から、接合層の外周端部、アルミナ板、基台で囲まれた凹部に溶射して形成された。
【0104】
(実施例14)
表2に示した構成になるように、エッジリングを作製した。すなわち、リング状のアルミナ板(第一部材。外径340mm、内径300mm、厚み16mm)の表面に、塗布後0.2mm厚みになるように、かつ、アルミナ板の外周および内周10mm幅を除く表面にシリコーン接着剤(中間部材、接合層。信越化学工業社製、付加硬化型シリコーンゴムKE-8101)を塗布し、このアルミナ板と同寸法のリング状のアルミニウム板(第二部材)をシリコーン接着剤の上側から貼合した。次いで、シリコーン接着剤(接合層)の外周および内周端部、アルミナ板、アルミニウム板で囲まれた凹部に、表2に示したアルミナ繊維からなるアルミナ繊維束(プラズマ保護材)を接合層の外周および内周に沿って挿入した。そして、バーナーを用いた焼成により、アルミナ繊維束の終点を重なったアルミナ繊維束の一部と結着させた。なお、アルミナ繊維束は接合層と接しており、アルミナ板およびアルミニウム板の外周および内周端部からアルミナ繊維束ははみ出していなかった。その後、120℃に設定した恒温槽に2時間静置しシリコーン接着剤を硬化させ、エッジリングを作製した。
【0105】
(実施例15、16)
表2に示した構成になるように、実施例14のエッジリングと同様に実施例15、16のエッジリングを作製した。なお、プラズマ保護材はアルミナ繊維からなるアルミナ繊維束を接合層の外周および内周端部に挿入する代わりに、表2に示したアルミナ繊維束を3本ずつ隣り合わせに並ぶように、かつ、アルミナ繊維束の延びる方向が接合層の外周および内周に沿うように、接合層の外周および内周端部の全域に沿って挿入させた。
【0106】
(実施例17~22)
表2に示した構成になるように、実施例14のエッジリングと同様に実施例17~22のエッジリングを作製した。
【0107】
(比較例3)
表2に示した構成になるように、実施例14のエッジリングと同様に比較例3のエッジリングを作製した。なお、比較例3では、シリコーン接着剤は塗布後に3.0mm厚みになるように塗布し、プラズマ保護材にはシリコーン接着剤の外周にフッ素ゴム系Oリング(NOK社製AS568-279-D、線径3.5mm、外径337mm、内径330mm)、内周にフッ素ゴム系Oリング(NOK社製AS568-278-D、線径3.5mm、外径311mm、内径304mm)を用い、シリコーン接着剤(接合層)の外周および内周端部、アルミナ板およびアルミニウム板で囲まれた凹部に挿入した。
【0108】
(比較例4)
表2に示した構成になるように、実施例14のエッジリングと同様に比較例4のエッジリングを作製した。なお、比較例4のプラズマ保護材は、アルミナ粒子(フジミ社製SURPREX AHP50、粒径45μm(製造元公称値))を、接合層の外側および内側から、接合層の内周および外周端部、アルミナ板、アルミニウム板で囲まれた凹部に向けてプラズマ溶射して形成された。
【0109】
[評価方法]
(設置後の断面繊維本数の測定)
実施例1~22の静電チャックおよびエッジリングにおける、設置後の断面繊維本数は、下記に示した条件で測定した。すなわち、各静電チャックおよびエッジリングに設置されたプラズマ保護材を垂直方向に裁断し、得られた断面からマイクロスコープ(キーエンス社製、VHX-5000)用いて断面繊維本数を測定した。
(耐プラズマ性の評価)
実施例1~22、比較例1~4の静電チャックおよびエッジリングを、下記に示した条件でプラズマ処理を行った。その後、プラズマ保護材を取り除き、デジタルマイクロスコープ(キーエンス社製 VHX-6000)を用いて100倍の倍率で、シリコーン接着剤の端部を観察した。耐プラズマ性の評価は、プラズマ処理前後でシリコーン接着剤の外観の変化がない場合を「A+」、シリコーン接着剤の外周または内周端部表面が、シリコーン接着剤内部に向かって最大2mm未満後退している場合を「A」、シリコーン接着剤の外周または内周端部表面が、シリコーン接着剤内部に向かって最大2mm以上5mm未満後退している場合を「B」、シリコーン接着剤が残存しており、シリコーン接着剤の外周または内周端部表面が、シリコーン接着剤内部に向かって最大5mm以上8mm未満後退している場合を「C」、シリコーン接着剤の外周または内周端部表面が、シリコーン接着剤内部に向かって8mm以上後退している、または、シリコーン接着剤が全て消失している場合を「D」、とした。
【0110】
プラズマ処理装置:Unity Me(東京エレクトロン社製)
高周波電源出力 :1000W
高周波電源周波数:13.56MHz
バイアス電源出力:なし
真空度 :300mTorr
酸素ガス流量 :400sccm
フッ素ガス流量 :200sccm
載置面温度 :25℃
プラズマ処理時間:24時間
【0111】
(耐久性の評価)
実施例1~22、比較例1~4の静電チャックおよびエッジリングについて耐久性の評価を行った。具体的には、以下の条件で冷熱サイクルおよびプラズマ処理を行い、静電チャックおよびエッジリングの接合層、プラズマ保護材の割れまたは剥がれなどの評価を行った。冷熱サイクル試験では、0℃に設定した恒温槽(エスペック社製TCC‐151W)に静電チャックおよびエッジリングを投入し、昇温速度10℃/分で120℃まで昇温させた後、120℃で30分間保持し、降温速度10℃/分で0℃まで降温させる工程を200サイクル行った。その後、恒温槽から取り出した静電チャックおよびエッジリングをプラズマ装置内に設置し、10時間プラズマ処理を行った。その後、静電チャックおよびエッジリングの外観を観察し評価とした。耐久性の評価は、静電チャックおよびエッジリングについて、接合層およびプラズマ保護材に割れ、剥がれが共に発生しなかった場合を「A」、プラズマ保護材のみに割れまたは剥がれが発生した場合を「B」、接合層のみに割れまたは剥がれが発生した場合を「C」、接合層およびプラズマ保護材共に割れまたは剥がれが発生した場合を「D」と評価した。なお、プラズマ処理条件を下記に示した。
【0112】
プラズマ処理装置:Unity Me(東京エレクトロン社製)
高周波電源出力 :1000W
高周波電源周波数:13.56MHz
バイアス電源出力:なし
真空度 :300mTorr
酸素ガス流量 :400sccm
フッ素ガス流量 :200sccm
載置面温度 :25℃
プラズマ処理時間:10時間
【0113】
(耐パーティクル性の評価1)
実施例1~13、比較例1、2の静電チャックについて耐パーティクル性(パーティクル発生能)の評価を行った。具体的には、静電チャックの載置面(保持部材)にダミーウェハを載置し、プラズマ処理した後のダミーウェハの載置面に接していた側の面に付着したパーティクルの数を算出した。すなわち、静電チャックの載置面にダミーウェハ(直径300mm、厚さ775mm、材質シリコン)を載置した後、プラズマ装置内に設置し、24時間プラズマ処理を行った。その後、静電チャックを取り出し、ダミーウェハを載置面から持ち上げ、ダミーウェハの載置面に接していた側の面に付着したパーティクルの数と大きさを、ウェハ表面検査装置(TOPCON社製 WM-10)で計測し、直径が0.5μm以上1.0μm未満であるパーティクル数および直径が1.0μm以上であるパーティクル数を計測した。耐パーティクル性の評価は、合計のパーティクル数が1000未満の場合を「A」、パーティクル数が1000以上5000未満の場合を「B」、パーティクル数が5000以上10000未満の場合を「C」、パーティクル数が10000以上の場合を「D」と評価した。なお、プラズマ処理条件を下記に示した。
【0114】
プラズマ処理装置:Unity Me(東京エレクトロン社製)
高周波電源出力 :1000W
高周波電源周波数:13.56MHz
バイアス電源出力:なし
真空度 :300mTorr
酸素ガス流量 :400sccm
フッ素ガス流量 :200sccm
載置面温度 :25℃
プラズマ処理時間:24時間
【0115】
(耐パーティクル性の評価2)
実施例14~22、比較例3、4のエッジリングについて耐パーティクル性の評価を行った。具体的には、エッジリングの内周側に実施例1の静電チャックを設置し、静電チャックの載置面にダミーウェハを載置した後、プラズマ処理を行った。その後取り出したダミーウェハの載置面に接していた側の面に付着したパーティクルの数を算出した。すなわち、エッジリングの内周側に実施例1の静電チャックを設置し、静電チャックの載置面にダミーウェハ(直径300mm、厚さ775mm、材質シリコン)を載置し評価サンプルとした。その後、評価サンプルをプラズマ装置内に設置し、24時間プラズマ処理を行った。プラズマ処理終了後、評価サンプルを取り出し、ダミーウェハを載置面から持ち上げ、ダミーウェハの載置面に接していた側の面に付着したパーティクルの数と大きさを、ウェハ表面検査装置(TOPCON社製 WM-10)で計測し、直径が0.5μm以上1.0μm未満であるパーティクル数および直径が1.0μm以上であるパーティクル数を計測した。耐パーティクル性の評価は、合計のパーティクル数が1500未満の場合を「A」、パーティクル数が1500以上5500未満の場合を「B」、パーティクル数が5500以上10500未満の場合を「C」、パーティクル数が10500以上の場合を「D」と評価した。なお、プラズマ処理条件を下記に示した。
【0116】
プラズマ処理装置:Unity Me(東京エレクトロン社製)
高周波電源出力 :1000W
高周波電源周波数:13.56MHz
バイアス電源出力:なし
真空度 :300mTorr
酸素ガス流量 :400sccm
フッ素ガス流量 :200sccm
載置面温度 :25℃
プラズマ処理時間:24時間
【0117】
【0118】
【0119】
(総合評価)
表1、表2に示すように、繊維を含むプラズマ保護材を備えた本開示の耐プラズマ構造(静電チャック、エッジリング)は、繊維を含まない比較例1~4の耐プラズマ構造に比べ、耐プラズマ性、耐久性、耐パーティクル性がバランスよく発揮され、総合的に高寿命であることが分かる。
【0120】
フッ素ゴムからなるOリングを備えた比較例1、3では、耐久性が優れているものの、プラズマに対して脆弱であった。実施例のような撚糸の場合、複数の繊維が結着せず絡んで構成されているため、応力が加わった際に位置関係を変化させて緩和されたと考えられる。これに対して、比較例3の場合、一体となった構造(バルク体)のため位置関係が変化した際に変形できず、結果、割れたと考えられる。また、繊維ではなくアルミナ粒子をプラズマ溶射してプラズマ保護材を形成した比較例2、4では、耐パーティクル性に劣るだけでなく、特に耐久性においては、熱応力に脆弱であり、評価後にプラズマ保護材が割れていた。
【0121】
実施例1~5、14~18の結果から、繊維長(アスペクト比)が長いほど、良好な評価が得られることが分かる。また、繊維長が短いと、耐プラズマ性に劣るだけでなく、耐パーティクル性も低下することが分かった。なお、耐久性については、繊維長に関わらず、良好な結果となった。
【0122】
実施例6~9、20~22の結果から、捻り回数が多すぎると、耐久性と耐プラズマ性が低下することが分かった。これは、繊維が固定されることにより応力の緩和がし難くなること、応力の緩和が不足することにより基台および保持部材とプラズマ保護材の間に隙間が増えることが原因と考えられる。他方、捻り回数が少ない場合、耐プラズマ性と耐パーティクル性が低下することが分かった。以上より、好ましい捻り回数(1メートル換算)は20~300回であることが示唆された。つまり、上記の範囲に設定することで、応力の緩和とパーティクル発生抑制が両立できる。
【0123】
実施例10~11の結果から、繊維束が太くなると(繊維束中の繊維数が多くなると)、耐プラズマ性が低下した。これは繊維が多くなることで繊維の可動領域が減り、応力緩和がし難くなり、結果、基台と繊維束および保持部材と繊維束の間の隙間が大きくなることが原因と考えられる。
【0124】
SUS繊維を用いた実施例12では、耐プラズマ性が低かった。材質の反発性が低く、基台と保持部材の間に隙間が発生したことが原因と考えられる。耐久性は良好な結果であったが、これは繊維の応力緩和性が高いためと考えられる。炭素繊維を用いた実施例13では、耐久性と耐パーティクル性が低かった。これは繊維の反発性が高く、少しの応力で繊維が破壊され易いためと考えられる。
【符号の説明】
【0125】
1、1a、11、21、41 耐プラズマ構造(静電チャック、エッジリング)
2、2a、12、22、42 第一部材(保持部材、エッジリング部分)
3、13、23、43 第二部材(基台、エッジリング部分)
4、14、24a、24b、44 中間部材(接合層)
5、15、25、45、45a、45b プラズマ保護材
W 被保持物
【要約】
【課題】高寿命の耐プラズマ構造、静電チャック、エッジリング、繊維構造体、プラズマ処理装置用部材、ならびにそのような耐プラズマ構造の製造方法およびプラズマ処理装置用部材の補修方法を提供する。
【解決手段】第一部材2と、第二部材3と、第一部材2と第二部材3の間に配置された中間部材4と、繊維を含むプラズマ保護材5と、が設けられている。第一部材2および第二部材3の少なくとも一方は耐プラズマ性を有し、繊維を含むプラズマ保護材5は、中間部材4の端部における耐プラズマ構造1の外面側に配置される。
【選択図】
図1