(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】熱伝導性シリコーングリース組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/36 20060101AFI20241024BHJP
H01L 23/373 20060101ALI20241024BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20241024BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
H01L23/36 D
H01L23/36 M
H05K7/20 F
C08L83/04
(21)【出願番号】P 2024549223
(86)(22)【出願日】2024-05-23
(86)【国際出願番号】 JP2024019021
【審査請求日】2024-08-26
(31)【優先権主張番号】P 2023146314
(32)【優先日】2023-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000237422
【氏名又は名称】富士高分子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】片石 拓海
【審査官】栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-216523(JP,A)
【文献】特開2014-080546(JP,A)
【文献】特開2002-294269(JP,A)
【文献】国際公開第2022/187569(WO,A1)
【文献】特開平06-155517(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/36
H01L 23/373
H05K 7/20
C08L 83/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の熱伝導性シリコーングリースと第2の熱伝導性シリコーングリースとそれらの接合部を含む、熱伝導性シリコーングリース組成物であって、
前記第1の熱伝導性シリコーングリースは、硬化反応触媒を含有し、かつ架橋剤を含まず、
前記第2の熱伝導性シリコーングリースは硬化反応触媒を含まず、かつ架橋剤を含み、
前記第1及び第2の熱伝導性シリコーングリースは、相対する少なくとも1つの面で前記接合部を介して接合されており、
前記接合部は、硬化しており、
前記接合部以外は、前記第1及び第2の熱伝導性シリコーングリースは未硬化状態である、熱伝導性シリコーングリース組成物。
【請求項2】
前記第1及び第2の熱伝導性シリコーングリースは、マトリックス樹脂と熱伝導性粒子とを含み、
前記マトリックス樹脂は、下記(A)および(C)成分を含み、
前記熱伝導性粒子は下記(B)成分を含む、
請求項1に記載の熱伝導性シリコーングリース組成物。
(A)40℃における動粘度が100~3000mm
2/sの付加反応硬化が可能なオルガノポリシロキサン:100質量部
(B)前記マトリックス樹脂100質量部に対して、熱伝導性フィラー:200~3000質量部
(C)R
aSi(OR')
4-a(但し、Rは炭素数8~12の非置換又は置換有機基、R'は炭素数1~4のアルキル基、aは0もしくは1)のアルコキシシラン:0~10質量部
【請求項3】
前記第1及び第2の熱伝導性シリコーングリースの前記マトリックス樹脂は、さらに
(D)非反応性シリコーンオイルを前記(A)成分の中に1~50質量%含む請求項2に記載の熱伝導性シリコーングリース組成物。
【請求項4】
前記熱伝導性粒子の材料は、アルミナ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、水酸化アルミ、石英及びシリカからなる群から選択される少なくとも一つである、
請求項2に記載の熱伝導性シリコーングリース組成物。
【請求項5】
前記第1及び第2の熱伝導性シリコーングリースの少なくとも一方は、熱伝導率が2.0W/m・K以上である
請求項1に記載の熱伝導性シリコーングリース組成物。
【請求項6】
前記第1及び第2の熱伝導性シリコーングリースは、それぞれ、23℃でのB型粘度計の絶対粘度が1000~20000Pa・sの範囲である
請求項1に記載の熱伝導性シリコーングリース組成物。
【請求項7】
前記第1及び第2の熱伝導性シリコーングリースは、それぞれ、30mLシリンジに充填し、吐出孔直径2.5mm、吐出圧力0.5MPaで9秒吐出させたときの吐出量が2~10gである
請求項1に記載の熱伝導性シリコーングリース組成物。
【請求項8】
前記熱伝導性シリコーングリース組成物を、2枚のプレート間に1.0g配置し、厚さ1.0mmに圧縮保持し、前記2枚のプレートを垂直に保持してヒートショック試験機に設置し、-40℃と125℃で30分ずつ保持し、500サイクル経過させるヒートショック試験において、前記熱伝導性シリコーングリース組成物の落下が5mm以内である
請求項1に記載の熱伝導性シリコーングリース組成物。
【請求項9】
請求項1に記載の熱伝導性シリコーングリース組成物の製造方法であって、
前記第1の熱伝導性シリコーングリースと第2の熱伝導性シリコーングリースとをそれぞれディスペンサーに充填する工程、
前記ディスペンサーの吐出孔から前記第1および第2の熱伝導性シリコーングリースを交互に吐出させて塗布し、その際に、それぞれの熱伝導性シリコーングリースが接触しないよう塗布厚さに対して10%~90%の隙間を作って塗布する工程、
塗布された前記第1および第2の熱伝導性シリコーングリースを塗布厚さに対して10~90%の圧縮率で圧縮成形することで、前記第1および第2の熱伝導性シリコーングリースの接触部分において付加反応を生じさせて接合部をそれぞれ形成し、それらの結合部を介して前記第1および第2の熱伝導性シリコーングリースを接合させて熱伝導性シリコーングリース組成物を生じる工程を含む、熱伝導性シリコーングリース組成物の製造方法。
【請求項10】
前記塗布する工程が、前記第1および第2の熱伝導性シリコーングリースを交互に円柱状に吐出させて塗布することにより行われる請求項9に記載の熱伝導性シリコーングリースの製造方法。
【請求項11】
前記塗布する工程が、前記第1および第2の熱伝導性シリコーングリースを交互にドット状に吐出させて塗布することにより行われる請求項9に記載の熱伝導性シリコーングリース組成物の製造方法。
【請求項12】
前記熱伝導性シリコーングリース組成物の製造方法は、発熱部品に前記熱伝導性シリコーングリース組成物を実装する際に実施する請求項9に記載の熱伝導性シリコーングリース組成物の製造方法。
【請求項13】
請求項1~8のいずれか一項の前記熱伝導性シリコーングリース組成物がシート状に成形された熱伝導性シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化により形成された結合部を介して第1及び第2の熱伝導性シリコーングリースが接合されている熱伝導性シリコーングリース組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のCPU等の半導体の性能向上はめざましく、それに伴い発熱量も膨大になっている。そのため発熱する電子部品には放熱体が取り付けられ、半導体などの発熱体と放熱体との密着性を改善する為に熱伝導性グリースが使われている。機器の小型化、高性能化、高集積化に伴い熱伝導性グリースには高熱伝導性とともに耐落下性が求められている。
【0003】
特開2020-104078号公報には、1液と2液の熱伝導性グリースを2つのシリンジに充填し、吐出口が混合部となっており、1液と2液を混合して吐出することが提案されている。本発明者は、特許第6674590号公報において、硬化シートと未硬化シートを面方向に積層した熱伝導性シートを提案している。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、第1の熱伝導性シリコーングリースと第2の熱伝導性シリコーングリースとそれらの接合部を含む、熱伝導性シリコーングリース組成物であって、
前記第1の熱伝導性シリコーングリースは、硬化反応触媒を含有し、かつ架橋剤を含まず、
前記第2の熱伝導性シリコーングリースは硬化反応触媒を含まず、かつ架橋剤を含み、
前記第1及び第2の熱伝導性シリコーングリースは、相対する少なくとも1つの面で前記接合部を介して接合されており、
前記接合部は、硬化しており、
前記接合部以外は、前記第1及び第2の熱伝導性シリコーングリースは未硬化状態である、熱伝導性シリコーングリース組成物である。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】
図1Aは本発明の一実施形態における第1及び第2の熱伝導性シリコーングリースを、それぞれのディスペンサーから交互に円柱状に塗布した状態の模式的平面図であり、
図1Bは圧縮成形した模式的平面図である。
【
図2】
図2Aは本発明の別の実施形態における第1及び第2の熱伝導性シリコーングリースを、それぞれのディスペンサーから交互にドット状に塗布した状態の模式的平面図であり、
図2Bは圧縮成形した模式的平面図である。
【
図3】
図3は本発明の一実施形態における熱伝導性シートの使用方法を示す模式的断面図である。
【
図4】
図4A-Bは本発明の一実施例における試料の熱伝導率の測定方法を示す模式的説明図である。
【
図5】
図5A-Dは、本発明の一実施例で使用する落下試験を説明する模式的説明図である。
【
図6】
図6は本発明の一実施例で使用するD50=0.3μmの不定形アルミナ(オクチルトリメトキシシラン表面処理)の5000倍の写真である。
【
図7】
図7は本発明の一実施例で使用するD50=2.3μm不定形アルミナ(デシルトリメトキシシラン表面処理)の2000倍の写真である。
【
図8】
図8は本発明の一実施例で使用するD50=15μmの不定形窒化アルミニウム(表面処理なし)の2000倍の写真である。
【
図9】
図9は本発明の一実施例で使用するD50=105μmの球状アルミナ(表面処理なし)の100倍の写真である。
【
図10】
図10は本発明の一実施例で使用する球状凝集窒化ホウ素,D50=25μm(表面処理なし)の写真である。
【
図11】
図11は本発明の一実施例で使用する球状凝集窒化ホウ素,D50=60μm(表面処理なし)の写真である。
【発明の詳細な説明】
【0006】
しかし、前記従来技術は、耐落下性を期待して、2液硬化型の熱伝導性材料が使われているが、ディスペンサー内で2液を混合した後に塗布するため、混合後すぐに塗布を完了しないとディスペンサー内で熱伝導性材料の硬化が進行してしまう場合がある。それを避けるため、混合後にディスペンサー内での熱伝導性材料の保管時間を長くとれず、装置の清掃に時間がかかるのが問題となっていた。
【0007】
本発明は前記従来の問題を解決するため、ディスペンサーで塗布が可能であり、耐落下性が良好であり、かつ塗布後に硬化するためディスペンサー内で硬化が進行することがない熱伝導性シリコーングリース組成物及びこれの製造方法を提供する。
【0008】
本発明の熱伝導性シリコーングリース組成物は、第1の熱伝導性シリコーングリースと第2の熱伝導性シリコーングリースとそれらの接合部を含む熱伝導性シリコーングリース組成物であって、前記第1の熱伝導性シリコーングリースは、硬化反応触媒を含有し、かつ架橋剤を含まず、前記第2の熱伝導性シリコーングリースは硬化反応触媒を含まず、かつ架橋剤を含み、前記第1及び第2の熱伝導性シリコーングリースは、相対する少なくとも1つの面で前記接合部を介して接合されており、前記接合部は、硬化しており、前記接合部以外は、前記第1及び第2の熱伝導性シリコーングリースは未硬化状態である。
【0009】
本発明の熱伝導性シリコーングリース組成物の製造方法は、前記の熱伝導性シリコーングリース組成物の製造方法であって、前記第1の熱伝導性シリコーングリースと第2の熱伝導性シリコーングリースとをそれぞれディスペンサーに充填する工程、前記ディスペンサーの吐出孔から前記第1および第2の熱伝導性シリコーングリースを交互に吐出させて塗布し、その際に、それぞれの熱伝導性シリコーングリースが接触しないよう塗布厚さに対して10%~90%の隙間を作って塗布する工程、塗布された前記第1および第2の熱伝導性シリコーングリースを塗布厚さに対して10~90%の圧縮率で圧縮成形することで、前記第1および第2の熱伝導性シリコーングリースの接触部分において付加反応を生じさせてそれぞれ接合部を形成し、それらの結合部を介して前記第1および第2の熱伝導性シリコーングリースを接合させて熱伝導性シリコーングリース組成物を生じる工程を含む。
【0010】
本発明の熱伝導性シリコーングリース組成物は、前記第1の熱伝導性シリコーングリースと第2の熱伝導性シリコーングリースとをそれぞれディスペンサーに充填する工程、
前記ディスペンサーの吐出孔から前記第1および第2の熱伝導性シリコーングリースを交互に塗布して配置し、その際に、それぞれの熱伝導性シリコーングリースが互いに接触しないよう塗布厚さに対して10%~90%の隙間を作って塗布する工程、
塗布された前記第1および第2の熱伝導性シリコーングリースを塗布厚さに対して10~90%の圧縮率で圧縮成形することで、前記第1および第2の熱伝導性シリコーングリースの接触部分において付加反応を生じさせてそれぞれ接合部を形成し、それらの結合部を介して前記第1および第2の熱伝導性シリコーングリースを接合させて熱伝導性シリコーングリース組成物を生じる工程を含む方法により製造される。つまり前記接合部は付加反応により硬化しているが、前記接合部以外は前記第1及び第2の熱伝導性シリコーングリースは未硬化状態である。このような製造方法によれば、第1の熱伝導性シリコーングリースと第2の熱伝導性シリコーングリースはディスペンサーで塗布が可能であり、耐落下性が良好であり、かつ第1及び第2の熱伝導性シリコーングリースは塗布後に硬化するため、塗布前にディスペンサー内で硬化が進行することがない。
【0011】
また、本発明の熱伝導性シリコーングリース組成物は、前記接合部が付加反応により硬化しており、前記接合部以外は未硬化状態であることにより、硬化部は硬度が高いが、未硬化部分は硬度が低いため自由な変形が可能であり、発熱部及び/又は放熱部の凹凸に追従しやすい。このため、本発明の熱伝導性シリコーングリース組成物は、電気・電子部品等の発熱部と放熱体の間に介在させる放熱シート:TIM(Thermal Interface Material)として好適である。
【0012】
本発明は、第1の熱伝導性シリコーングリースと第2の熱伝導性シリコーングリースとそれらの接合部を含む熱伝導性シリコーングリース組成物であって、前記第1の熱伝導性シリコーングリースは、硬化反応触媒を含有し、かつ架橋剤を含まず、前記第2の熱伝導性シリコーングリースは硬化反応触媒を含まず、かつ架橋剤を含み、前記第1及び第2の熱伝導性シリコーングリースは、相対する少なくとも1つの面で前記接合部を介して接合されており、前記接合部は、硬化しており、前記接合部以外は前記第1及び第2の熱伝導性シリコーングリースは未硬化状態である熱伝導性シリコーングリース組成物である。未硬化状態の前記第1及び第2の熱伝導性シリコーングリースは自由な変形が可能であり、発熱部及び/又は放熱部の凹凸に追従しやすい。また、前記接合部は付加反応により硬化しているため、保形性もあり、耐落下性が良好である。本発明の熱伝導性シリコーングリース組成物の耐落下性が良好なのは、前記接合部が硬化していることにより、浸み出し成分が閉じ込められるためと推測される。
【0013】
[第1および第2の熱伝導性シリコーングリース]
前記第1及び第2の熱伝導性シリコーングリースは、マトリックス樹脂と熱伝導性粒子とを含み、前記マトリックス樹脂は、下記(A)および(C)成分を含み、前記熱伝導性粒子は下記(B)成分を含むことが好ましい。下記の組成であれば、ディスペンサーにより第1及び第2の熱伝導性シリコーングリースの塗布がスムースにできる。なお、前記第1の熱伝導性シリコーングリースと前記第2の熱伝導性シリコーングリースはマトリックス樹脂と熱伝導性粒子をそれぞれ含むが、前記第1の熱伝導性シリコーングリースのマトリックス樹脂と前記第2の熱伝導性シリコーングリースのマトリックス樹脂は同一であっても異なっていてもよい。異なっている場合、前記第1および第2の熱伝導性シリコーングリースに含まれる下記(A)成分および(C)成分の少なくとも一方の種類および/または含量が異なっていてもよい。また、前記第1の熱伝導性シリコーングリースの熱伝導性粒子と前記第2の熱伝導性シリコーングリースの熱伝導性粒子は同一であっても異なっていてもよい。異なっている場合、前記第1および第2の熱伝導性シリコーングリースに含まれる下記(B)成分の種類および/または含量が異なっていてもよい。
(A)40℃における動粘度が100~3000mm2/sの付加反応硬化が可能なオルガノポリシロキサン:100質量部
(B)前記マトリックス樹脂100質量部に対して、熱伝導性フィラー:200~3000質量部
(C)RaSi(OR')4-a(但し、Rは炭素数8~12の非置換又は置換有機基、R'は炭素数1~4のアルキル基、aは0もしくは1)のアルコキシシラン:0~10質量部
【0014】
<マトリックス樹脂>
ここでマトリックス樹脂とは、前記硬化反応触媒、または前記架橋剤を含む。前記マトリックス樹脂には前記(A)成分、(C)成分を含み、下記の(D)成分(非反応性シリコーンオイル)を加える場合はこれも含める。
【0015】
(1)硬化反応触媒
硬化反応触媒としてはヒドロシリル化反応に用いられる触媒を用いることができる。前記硬化反応触媒としては、例えば白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類やビニルシロキサンとの錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒などの白金族金属触媒が挙げられ、白金族金属触媒が好ましい。前記硬化反応触媒は、前記マトリックス樹脂に対して重量単位で好ましくは1~3,500ppm(硬化有効量の10~35,000倍)、より好ましくは5~2000ppm、さらに好ましくは7~700ppm添加するのが好ましい。
【0016】
(2)架橋剤
架橋剤としては、オルガノハイドロジェンポリシロキサンが挙げられる。オルガノハイドロジェンポリシロキサンは架橋剤として作用し、この成分中のSiH基とオルガノポリシロキサン(A成分)のアルケニル基とが付加反応(ヒドロシリル化)することにより硬化させる。かかるオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、一分子中にケイ素原子に結合した水素原子(即ち、SiH基)を2個以上有するものであれば架橋剤として用いることができる。このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、環状、分岐状、三次元網状構造のいずれであってもよい。また、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの一分子中のケイ素原子の数(即ち、重合度)は2~1000、特に2~300程度のものを架橋剤として好ましく使用することができる。
【0017】
前記オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、前記のようにSiH基を含む。前記オルガノハイドロジェンポリシロキサンにおいて、SiH基の位置は特に制約はなく、分子鎖の末端でも分子鎖非末端(分子鎖途中)でもよい。また、水素原子以外のケイ素原子に結合した有機基としては、前記一般式(I)のR1と同様の脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換一価炭化水素基が挙げられる。
【0018】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては下記式(I)のものが例示できる。
【0019】
【0020】
上記の式(I)中、
R6は互いに同一又は異なっていてもよく、水素、アルキル基、フェニル基、エポキシ基、アクリロイル基、メタアクリロイル基、またはアルコキシ基であり、少なくとも2つは水素である。
Lは0~1,000の整数、特には0~300の整数であり、
Mは1~200の整数である。
【0021】
(3)オルガノポリシロキサン((A)成分)
オルガノポリシロキサンは、マトリックス樹脂における主剤(ベースポリマー成分)であり、例えば一分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を2個以上含有する。このオルガノポリシロキサンは、アルケニル基として、ビニル基、アリル基等の炭素原子数2~8、特に2~6の、ケイ素原子に結合したアルケニル基を一分子中に2個有する。前記オルガノポリシロキサンの粘度は25℃で10~1,000,000mPa・s、特に100~100,000mPa・s、より好ましくは100~3,000mPa・sであることが作業性、硬化性などから望ましい。前記オルガノポリシロキサンの40℃における動粘度は100~3,000mm2/s、好ましくは100~2,000mm2/s、より好ましくは100~1,000mm2/sである。
【0022】
具体的には、下記一般式(II)で表される1分子中に平均2個以上かつ分子鎖末端のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有する直鎖状オルガノポリシロキサンを使用することができる。25℃における粘度は10~1,000,000mPa・sのものが作業性、硬化性などから望ましい。なお、この直鎖状オルガノポリシロキサンは少量の分岐状構造(三官能性シロキサン単位)を分子鎖中に含有するものであってもよい。
【0023】
【0024】
式(II)中、
R1は互いに同一又は異種の脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換一価炭化水素基であり、
R2はアルケニル基であり、
kは0又は正の整数である。
【0025】
ここで、一般式(II)において、R1の脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換の一価炭化水素基としては、例えば、炭素原子数1~10、特に1~6のものが好ましい。具体的には、脂肪族不飽和結合を有さない非置換の一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;が挙げられる。脂肪族不飽和結合を有さない置換の一価炭化水素基としては、前記非置換の一価炭化水素基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子;シアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフロロプロピル基等のハロゲン置換アルキル基、シアノエチル基等が挙げられる。
【0026】
一般式(II)において、R2のアルケニル基としては、例えば炭素原子数2~6、特に2~3のものが好ましく、具体的にはビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられ、好ましくはビニル基である。
【0027】
一般式(II)において、kは、0又は正の整数であり、例えば0≦k≦10000を満足する0又は正の整数であり、好ましくは5≦k≦2000、より好ましくは10≦k≦1200を満足する整数である。
【0028】
オルガノポリシロキサンとしては一分子中に例えばビニル基、アリル基等の炭素原子数2~8、特に2~6のケイ素原子に結合したアルケニル基を3個以上、通常、3~30個、好ましくは、3~20個程度有するオルガノポリシロキサンを併用しても良い。分子構造は直鎖状、環状、分岐状、三次元網状のいずれの分子構造のものであってもよい。好ましくは、主鎖がジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖された、25℃での粘度が10~1,000,000mPa・s、特に100~100,000mPa・sの直鎖状オルガノポリシロキサンである。
【0029】
一分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を2個以上含有するオルガノポリシロキサンにおいて、アルケニル基は分子のいずれかの部分に結合していればよい。例えば、分子鎖末端、あるいは分子鎖非末端(分子鎖途中)のケイ素原子に結合しているものを含んでも良い。なかでも下記一般式(III)で表される、分子鎖両末端のケイ素原子上にそれぞれ1~3個のアルケニル基を有する直鎖状オルガノポリシロキサンであって、25℃における粘度が10~1,000,000mPa・sのものが作業性、硬化性などから望ましい。但し、この直鎖状オルガノポリシロキサンの分子鎖末端のケイ素原子に結合したアルケニル基が、両末端合計で3個未満である場合には、分子鎖非末端(分子鎖途中)のケイ素原子に結合したアルケニル基を(例えばジオルガノシロキサン単位中の置換基として)少なくとも1個有する直鎖状オルガノポリシロキサンが好ましい。上記でも述べた通りこのような直鎖状オルガノポリシロキサンは、25℃における粘度が10~1,000,000mPa・sのものが作業性、硬化性などから望ましい。なお、この直鎖状オルガノポリシロキサンは少量の分岐状構造(三官能性シロキサン単位)を分子鎖中に含有するものであってもよい。
【0030】
【0031】
式(III)中、
R3は互いに同一又は異なっていてもよく、非置換又は置換の一価炭化水素基であって、少なくとも1個がアルケニル基である。
R4は互いに同一又は異なっていてもよく、脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換の一価炭化水素基であり、
R5はアルケニル基であり、
lおよびmは互いに独立して0又は正の整数である。
【0032】
ここで、一般式(III)において、R3の非置換又は置換の一価炭化水素基としては、炭素原子数1~10、特に1~6のものが好ましい。具体的には、非置換の一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基;が挙げられる。置換の一価炭化水素基としては、前記非置換の一価炭化水素基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子;シアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフロロプロピル基等のハロゲン置換アルキル基やシアノエチル基等が挙げられる。
【0033】
また、一般式(III)において、R4の脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換の一価炭化水素基としても、炭素原子数1~10、特に1~6のものが好ましい。R4の脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換の一価炭化水素基としては、上記R1の脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換一価炭化水素基の具体例と同様のものが例示できるが、但しアルケニル基は含まない。
【0034】
一般式(III)において、R5のアルケニル基としては、例えば炭素数2~6、特に炭素数2~3のものが好ましく、具体的には前記式(化1)のR2と同じものが例示され、好ましくはビニル基である。
【0035】
一般式(III)において、lおよびmは、0又は正の整数であり、例えば0<l+m≦10000を満足する0又は正の整数であり、好ましくは5≦l+m≦2000、より好ましくは10≦l+m≦1200で、かつ0<l/(l+m)≦0.2、好ましくは、0.0011≦l/(l+m)≦0.1を満足する整数である。
【0036】
(4)RaSi(OR')4-aのアルコキシシラン((C)成分)
前記(C)成分の式RaSi(OR')4-a(但し、Rは炭素数8~12の非置換又は置換有機基、R'は炭素数1~4のアルキル基、aは0もしくは1)のアルコキシシランは粘度調整剤として機能する。(C)成分を含むことにより、熱伝導性シリコーングリースは、吐出性が更に良好になり、好ましい。
【0037】
(C)成分の式RaSi(OR’)4-a(Rは炭素数8~12の非置換または置換有機基、R’は炭素数1~4のアルキル基、aは0もしくは1)で示されるアルコキシシランは、例えば、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン等が挙げられる。前記アルコキシシランは、一種又は二種以上混合して使用することができる。表面処理剤として、前記アルコキシシランと片末端シラノールシロキサンを併用してもよい。
【0038】
(5)非反応性シリコーンオイル((D)成分)
前記第1及び第2の熱伝導性シリコーングリースのマトリックス樹脂は、それぞれ、さらに(D)非反応性シリコーンオイルを前記(A)成分の中に1~50質量%含んでもよい。これによりディスペンサーにより塗布がスムースにできる。前記第1及び第2の熱伝導性シリコーングリースのマトリックス樹脂に含まれる(D)非反応性シリコーンオイルは、同一または異なっていてもよい。異なっている場合、前記第1および第2の熱伝導性シリコーングリースに含まれる(D)成分の種類および/または含量が異なっていてもよい。
【0039】
前記非反応性シリコーンオイルは、25℃における動粘度が例えば50~3,000mm2/s、好ましくは70~2,500mm2/sである。粘度測定はブルックリンフィールド型回転粘度計 SP No.2を使用して測定する。動粘度が前記範囲であれば、オイルブリードは低く抑えられ、熱伝導性粒子の充填性も良好になる。前記非反応性シリコーンオイルは反応性基を有さないシリコーンポリマーであり、例えばジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等が挙げられる。
【0040】
<熱伝導性粒子>
熱伝導性粒子は、マトリックス樹脂100質量部に対して200~3,000質量部添加するのが好ましい。これにより熱伝導性シリコーングリース組成物の熱伝導率を高く保つことができる。熱伝導性粒子の材料としては、アルミナ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、水酸化アルミ、石英及びシリカからなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましく、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、およびアルミナからなる群から選択される少なくとも一つがより好ましい。形状は球状,鱗片状,多面体状等様々なものを使用できる。アルミナを使用する場合は、純度99.5重量%以上のα-アルミナが好ましい。熱伝導性粒子の比表面積は0.06~10m2/gの範囲が好ましい。比表面積はBET比表面積であり、測定方法はJIS R1626にしたがう。熱伝導性粒子の平均粒子径は、0.1~100μmの範囲が好ましい。粒子径の測定はレーザー回折光散乱法により、メジアン径を測定する。この測定器としては、例えば堀場製作所製社製のレーザー回折/散乱式粒子分布測定装置LA-950S2がある。
【0041】
熱伝導性粒子は平均粒子径が異なる少なくとも2つの熱伝導性粒子を併用してもよい。このようにすると大きな粒子径の間に小さな粒子径の熱伝導性粒子が埋まり、最密充填に近い状態で充填でき、熱伝導性が高くなるからである。
【0042】
前記熱伝導性粒子は、式RaSi(OR’)4-a(Rは炭素数8~12の非置換または置換有機基、R’は炭素数1~4のアルキル基、aは0もしくは1)で表されるアルコキシシラン、もしくはその部分加水分解物で表面処理されるのが好ましい。RaSi(OR’)4-a(Rは炭素数8~12の非置換または置換有機基、R’は炭素数1~4のアルキル基、aは0もしくは1)で示されるアルコキシシランは、例えば、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン等が挙げられる。前記アルコキシシランは、一種又は二種以上混合して使用することができる。表面処理剤として、前記アルコキシシランと片末端シラノールシロキサンを併用してもよい。ここでいう表面処理とは共有結合のほか吸着なども含む。表面処理は平均粒子径D=10μm以下の熱伝導性粒子に対して行うのが好ましい。D=10μm以下の熱伝導性粒子は比表面積が高く、白金触媒を吸着してしまい、硬化阻害を起こしやすいが、表面処理することによりこれを防ぐことができる。
【0043】
前記熱伝導性粒子は、熱伝導性フィラー((B)成分)を含む。
(1)熱伝導性フィラー((B)成分)
熱伝導性フィラーは、電気伝導性フィラー、電気絶縁性フィラー等があるが、いずれでもよい。電気伝導性フィラーとしては、カーボンブラック等の炭素粉末又は金属粉末がある。金属粉末の場合は表面抵抗が1Ω/□以下の金属粉末がよく、具体的には金、銀、白金、銅、ニッケル、鉄、パラジュウム、コバルト、クロム、アルミニウム等の金属類やステンレス等の合金類からなる粉末、又は電気抵抗を低減する為に表面を金、銀、等の貴金属で被覆した金属粉末が好ましい。電気絶縁性フィラーとしては、アルミナ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、水酸化アルミ、石英又はシリカのフィラーが好ましく、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、およびアルミナからなる群から選択される少なくとも一つがより好ましい。熱伝導性フィラーの形状は球状,鱗片状,多面体状等様々なものであってもよい。熱伝導性フィラーとしてアルミナを使用する場合は、純度99.5重量%以上のα-アルミナが好ましい。熱伝導性フィラーの比表面積は0.06~10m2/gの範囲が好ましい。比表面積はBET比表面積であり、測定方法はJIS R1626にしたがう。熱伝導性フィラーの平均粒子径は、0.1~100μmの範囲が好ましい。平均粒子径は、レーザー回折光散乱法による粒度分布測定において、体積基準による累積粒度分布のD50(メジアン径)である。この測定器としては、例えば堀場製作所製社製のレーザー回折/散乱式粒子分布測定装置LA-950S2がある。
【0044】
前記熱伝導性フィラーは、粒径が異なるフィラーの混合物であってもよい。具体的には、以下の2種類のフィラー混合物が例示できる。
【0045】
(i)フィラー混合物1
熱伝導性フィラー(B)は、中心粒径(D50)が0.01~10μmの熱伝導性フィラー(B1)と、中心粒径(D50)が10μmを超え80μm以下の熱伝導性フィラー(B2)と、中心粒径(D50)が80μmを超え150μm以下の熱伝導性フィラー(B3)を含むのが好ましい。このような構成の熱伝導性フィラー(B)を用いることにより、熱伝導性シリコーングリース組成物中で熱伝導性フィラー(B)を最密充填に近い状態で充填することができ、その結果、熱伝導性シリコーングリース組成物の熱伝導性を高くできるからである。中心粒径は、レーザー回折光散乱法により測定される体積基準による累積粒度分布のD50(メジアン径)である。この測定器としては、例えば堀場製作所社製のレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-950S2がある。
【0046】
前記熱伝導性フィラー(B1)は不定形アルミナが好ましい。アルミナはコストが安いからである。前記熱伝導性フィラー(B2)は、アルミナ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、水酸化アルミニウム及び炭化ケイ素からなる群から選択される少なくとも一つの熱伝導性フィラーであるのが好ましい。前記熱伝導性フィラー(B2)の形状は不定形が好ましい。前記熱伝導性フィラー(B3)は、球状アルミナが好ましい。前記熱伝導性フィラー(B3)として球状アルミナの添加割合が高いと、熱伝導性シリコーングリース組成物の熱伝導性を高くでき、コストも安くできる。なお、熱伝導性フィラー(B)としてアルミナを用いる場合、熱伝導性フィラー(B)には、D50(メジアン径)が0.01μm以上1μm未満のいわゆるサブミクロン粒子(B1-1)と、1μm以上10μm以下の小粒子(B1-2)と、80μmを超え150μm以下の大粒子(B3)を組み合わせて使用することが好ましい。このような構成の熱伝導性フィラー(B)を用いることにより、熱伝導性シリコーングリース組成物中で熱伝導性フィラー(B)を最密充填でき、その結果、熱伝導性シリコーングリース組成物の熱伝導性を高くできるからである。なお、不定形アルミナは、粉砕ないしは破砕によって製造され、市販品を使用できる。これらの熱伝導性フィラー(B1)、(B2)および(B3)は熱伝導性が高い。
【0047】
前記熱伝導性フィラー(B1)、(B2)、(B3)の質量割合は、(B2)≦(B1)≦(B3)が好ましい。この割合を満たすことにより熱伝導性シリコーングリース組成物中において熱伝導性フィラーを最密充填に近い状態で充填することができ、その結果、熱伝導性シリコーングリース組成物の熱伝導性を高くできるからである。
【0048】
前記熱伝導性フィラー(B)は、前記マトリックス樹脂100質量部に対して、好ましくは前記熱伝導性フィラー(B1)を100~1,000質量部、より好ましくは150~1,000質量部、さらに好ましくは300~850質量部含む。また、前記熱伝導性フィラー(B)は、前記マトリックス樹脂100質量部に対して前記熱伝導性フィラー(B2)を好ましくは100~500質量部、より好ましくは150~500質量部、さらに好ましくは200~450質量部含む。また、前記熱伝導性フィラー(B)は、前記マトリックス樹脂100質量部に対して前記熱伝導性フィラー(B3)を300~1,400質量部含んでいると好ましく、300~1,300質量部含んでいるとより好ましく、500~1,200質量部含んでいるとさらに好ましい。これにより、高い熱伝導率を有し、比較的垂れ落ちにくく、吐出性の良好な熱伝導性シリコーングリース組成物を得ることができる。同様の理由から、前記熱伝導性フィラー(B)は、前記マトリックス樹脂100質量部に対して前記熱伝導性フィラー(B1)を100~1,000質量部、前記熱伝導性フィラー(B2)を100~500質量部、前記熱伝導性フィラー(B3)を300~1,400質量部含んでいるのが好ましく、前記熱伝導性フィラー(B1)を150~1,000質量部、前記熱伝導性フィラー(B2)を150~500質量部、前記熱伝導性フィラー(B3)を300~1,300質量部含んでいるのがより好ましく、前記熱伝導性フィラー(B1)を300~850質量部、前記熱伝導性フィラー(B2)を200~450質量部、前記熱伝導性フィラー(B3)を500~1,200質量部含んでいるのが更に好ましい。
【0049】
中心粒径(D50)が0.01~10μmの前記熱伝導性フィラー(B1)、中心粒径(D50)が10μmを超え80μm以下の前記熱伝導性フィラー(B2)および中心粒径(D50)が80μmを超え150μm以下の前記熱伝導性フィラー(B3)は、中心粒径(D50)が異なる2種類以上の熱伝導性フィラーをそれぞれ含んでもよい。このような構成の熱伝導性フィラー(B)を用いることにより、熱伝導性シリコーングリース組成物中で熱伝導性フィラー(B)を最密充填でき、その結果、熱伝導性シリコーングリース組成物の熱伝導性を高くできるからである。例えば、前記熱伝導性フィラー(B1)は、中心粒径(D50)が異なる2種類以上の熱伝導性フィラーを含むのが好ましい。具体的には、前記熱伝導性フィラー(B1)は、中心粒径(D50)が0.01μm以上1μm未満の熱伝導性フィラー(B1-1)と中心粒径(D50)が1μm以上10μm以下の熱伝導性フィラー(B1-2)とを含むのが好ましく、中心粒径(D50)が0.05μm以上1μm未満の熱伝導性フィラー(B1-1)と中心粒径(D50)が1μm以上8μm以下の熱伝導性フィラー(B1-2)とを含むのがより好ましく、中心粒径(D50)が0.1μm以上1μm未満の熱伝導性フィラー(B1-1)と中心粒径(D50)が1μm以上5μm以下の熱伝導性フィラー(B1-2)とを含むのがさらに好ましい。このような構成の熱伝導性フィラー(B)を用いることにより、熱伝導性シリコーングリース組成物中で熱伝導性フィラー(B)を最密充填でき、その結果、熱伝導性シリコーングリース組成物の熱伝導性を高くできるからである。前記熱伝導性フィラー(B1)が前記熱伝導性フィラー(B1-1)と前記熱伝導性フィラー(B1-2)を含む場合、前記熱伝導性無機粒子(B1)は、前記マトリックス樹脂100質量部に対して、前記熱伝導性フィラー(B1-1)を50~400質量部と前記熱伝導性フィラー(B1-2)を50~600質量部含むのが好ましく、前記熱伝導性フィラー(B1-1)を50~400質量部と前記熱伝導性フィラー(B1-2)を100~600質量部含むのがより好ましく、前記熱伝導性フィラー(B1-1)を100~350質量部と前記熱伝導性フィラー(B1-2)を200~500質量部含むのがさらに好ましい。このような構成の熱伝導性フィラー(B)を用いることにより、熱伝導性シリコーングリース組成物中で熱伝導性フィラー(B)を最密充填でき、その結果、熱伝導性シリコーングリース組成物の熱伝導性を高くできるからである。
【0050】
中心粒径(D50)が0.01~10μmの熱伝導性フィラー(B1)の一部又は全部は、式RaSi(OR’)4-a(但し、Rは炭素数8~12の非置換又は置換有機基、R’は炭素数1~4のアルキル基、aは0もしくは1)で示されるアルコキシシラン(前記(C)成分と同様)で予め表面処理されているのが好ましい。予め表面処理とは、混合前に前処理しておくことである。予め熱伝導性フィラー(B1)を表面処理することにより、熱伝導性フィラー(B1)をマトリックス樹脂に充填しやすくなるとともに、熱伝導性フィラー(B1)へ硬化反応触媒(例えば白金系触媒)が吸着されるのを防ぎ、硬化阻害を防止する効果がある。これは保存安定性に有用である。とくにD50(メジアン径)が10μm以下の小粒子は硬化反応触媒が吸着される傾向が高いことから、D50(メジアン径)が10μm以下の熱伝導性フィラーを表面処理するのが好ましい。ここでいう表面処理とは共有結合のほか吸着なども含む。表面処理された熱伝導性フィラー(B1)は、マトリックス樹脂との混合性が良好となる。熱伝導性フィラー100質量部に対し、前記非反応性シリコーンオイルは0.01~10質量部添加するのが好ましい。
【0051】
前記フィラー混合物1の含有量は、マトリックス樹脂100質量部に対して400~3000質量部であり、好ましくは500~2900質量部であり、より好ましくは600~2800質量部である。
【0052】
(ii)フィラー混合物2
熱伝導性フィラー(B)は、球状凝集窒化ホウ素粒子を含むのが好ましい。
前記球状凝集窒化ホウ素粒子は、中心粒径D50が10μm以上30μm以下の球状凝集窒化ホウ素粒子(B4)と、中心粒径D50がB1の2倍以上であり、かつ中心粒径D50が30μmを超え100μm以下の球状凝集窒化ホウ素粒子(B5)とを含む。球状凝集窒化ホウ素粒子(B5)の配合量と球状凝集窒化ホウ素粒子(B4)の配合量の比(B5/B4、質量比)は、1.00~6.00である。前記配合量の比(B5/B4、質量比)は、好ましくは1.20~5.50であり、より好ましくは1.40~5.50であり、さらに好ましくは1.60~5.40である。
【0053】
球状凝集窒化ホウ素粒子(B4)としては、例えば、Momentive社製、商品名"PTX25"が、球状凝集窒化ホウ素粒子(B5)としては、例えば、Momentive社製、商品名"PTX60"が使用できる。"PTX25"および"PTX60"のカタログは、インターネットURL:https://www.tomo-e.co.jp/upload/newsJA/29SVF8R-newsJA#content-012.pdfより入手可能である。
【0054】
前記フィラー混合物2の含有量は、マトリックス樹脂100質量部に対して10~300質量部であり、好ましくは50~250質量部であり、より好ましくは60~200質量部である。
【0055】
<その他の成分>
本発明の熱伝導性シリコーングリース組成物には、必要に応じて前記以外の成分を配合することができる。熱伝導性シリコーングリース組成物には、例えばベンガラ、酸化チタン、酸化セリウムなどの耐熱向上剤、難燃助剤、フィラーの表面処理等の目的でアルキルトリアルコキシシランなどを添加してもよい。熱伝導性シリコーングリース組成物には、フィラー表面処理などの目的で添加する材料として、アルコキシ基含有シリコーンを添加しても良い。熱伝導性シリコーングリース組成物には、シランカップリング剤等の接着プロモーターを添加しても良い。熱伝導性シリコーングリース組成物には、着色、調色の目的で有機或いは無機顔料を添加しても良い。
【0056】
前記第1及び第2の熱伝導性シリコーングリースの少なくとも一方は、熱伝導率が2.0W/m・K以上であるのが好ましく、3.0W/m・K以上がより好ましく、4.0W/m・K以上がさらに好ましい。上限は20.0W/m・K以下である。
【0057】
前記第1及び第2の熱伝導性シリコーングリースは、それぞれ、23℃でのB型粘度計の絶対粘度が1,000~20,000Pa・sの範囲であるのが好ましく、より好ましくは1,500~18,000Pa・sであり、さらに好ましくは2,000~15,000Pa・sである。絶対粘度がこの範囲であれば、ディスペンサーによる熱伝導性シリコーングリースの塗布がスムースにできる。
【0058】
前記第1及び第2の熱伝導性シリコーングリースは、それぞれ、30mLシリンジに充填し、吐出孔直径2.5mm、吐出圧力0.5MPaで9秒吐出させたときの吐出量が2~10gであるのが好ましい。これによりディスペンサーによる塗布がスムースにできる。
【0059】
[接合部]
前記第1及び第2の熱伝導性シリコーングリースは、相対する少なくとも1つの面で前記接合部を介して接合されている。前記接合部は、前記第1及び第2の熱伝導性シリコーングリースが互いに接触することにより、前記第1の熱伝導性シリコーングリースの硬化反応触媒と、前記第2の熱伝導性シリコーングリースの架橋剤とによる付加反応が生じて硬化することによりそれぞれ形成されている。前記第1及び第2の熱伝導性シリコーングリースが厚さ方向に接触する際、第1の熱伝導性シリコーングリースに含有される硬化反応触媒が、未硬化の第2の熱伝導性シリコーングリースに浸透、次いで拡散し、前記硬化反応触媒と前記架橋剤とによる付加反応を生じて硬化させる。この硬化により生じた接合部を介して、前記第1及び第2の熱伝導性シリコーングリースは、接合されている。なお、前記接合部以外は、前記第1及び第2の熱伝導性シリコーングリースは未硬化状態である。
【0060】
[熱伝導性シリコーングリース組成物]
以下図面を用いて本発明の熱伝導性シリコーングリース組成物を説明する。以下の図面において、同一符号は同一物を示す。
図1Aおよび
図1Bは本発明の一実施形態における熱伝導性シリコーングリース組成物の模式的平面図である。
図1Aにおいて、第1の熱伝導性シリコーングリース2a、2b、及び第2の熱伝導性シリコーングリース3a、3bを、それぞれのディスペンサーから交互に円柱状に吐出させて塗布し、円柱状配列体1にした。
図1Bは円柱状配列体1を圧縮成形し、成形体4にした。
図1Bにおいて、前記第1の熱伝導性シリコーングリース2a、2b及び第2の熱伝導性シリコーングリース3a、3bが接触することにより付加反応が生じて硬化することにより接合部5a、5b、5cが形成され、その他の前記第1熱伝導性シリコーングリース2a、2b及び第2の熱伝導性シリコーングリース3a,3bは未硬化状態である。
【0061】
図2Aおよび
図2Bは本発明の別の実施形態における熱伝導性シリコーングリース組成物の模式的平面図である。
図2Aにおいて、第1の熱伝導性シリコーングリース7a,7b、及び第2の熱伝導性シリコーングリース8a、8bを、それぞれのディスペンサーから交互にドット状に吐出させて塗布し、ドット状配列体6にした。
図2Bはドット状配列体6を圧縮成形し、成形体10にした。
図2Bにおいて前記第1の熱伝導性シリコーングリース7a、7b及び第2の熱伝導性シリコーングリース8a、8bが接触することにより付加反応が生じて硬化することにより接合部9a、9b、9cが形成され、その他の前記第1熱伝導性シリコーングリース7a、7b及び第2の熱伝導性シリコーングリース8a,8bは未硬化状態である。
【0062】
前記熱伝導性シリコーングリース組成物を、2枚のプレート間に1.0g配置し、厚さ1.0mmに圧縮保持し、前記2枚のプレートを垂直に保持してヒートショック試験機に設置し、-40℃と125℃で30分ずつ保持し、500サイクル経過させるヒートショック試験において、前記熱伝導性シリコーングリース組成物の落下が5mm以内であるのが好ましい。これにより、前記熱伝導性シリコーングリース組成物の耐落下性を良好に保てる。前記熱伝導性シリコーングリース組成物の耐落下性が高いと、前記組成物からの浸み出しがなく、発熱部品に組み込んだ後に周囲への汚染が防止でき、好ましい。
【0063】
[熱伝導性シリコーングリース組成物の製造方法]
本発明の熱伝導性シリコーングリース組成物の製造方法は、前記第1の熱伝導性シリコーングリースと第2の熱伝導性シリコーングリースとをそれぞれディスペンサーに充填する工程、前記ディスペンサーの吐出孔から前記第1および第2の熱伝導性シリコーングリースを交互に吐出させて塗布し、その際に、それぞれの熱伝導性シリコーングリースが接触しないよう塗布厚さに対して10%~90%の隙間を作って塗布する工程、塗布された前記第1および第2の熱伝導性シリコーングリースを塗布厚さに対して10~90%の圧縮率で圧縮成形することで、前記第1および第2の熱伝導性シリコーングリースの接触部分において付加反応を生じさせてそれぞれ接合部を形成し、それらの結合部を介して前記第1および第2の熱伝導性シリコーングリースを接合させて熱伝導性シリコーングリース組成物を生じる。例えば、前記隙間が塗布厚さに対して10%の場合は前記第1および第2の熱伝導性シリコーングリースを10%の圧縮率で圧縮成形し、前記隙間が塗布厚さに対して90%の場合は前記第1および第2の熱伝導性シリコーングリースを90%の圧縮率で圧縮成形する。これにより空隙のない熱伝導性シリコーングリース組成物を得ることができる。
【0064】
前記製造方法の塗布工程においては、前記塗布する工程は、前記第1および第2の熱伝導性シリコーングリースを交互に円柱状に吐出させて塗布してもよいし、交互にドット状に吐出させて塗布してもよい。また、前記製造方法は、発熱部品に前記熱伝導性シリコーングリース組成物を実装する際に実施してもよい。円柱状の場合、その円柱は直径0.5~3.0mm、長さ50~1000mmが好ましい。ドット状の場合、そのドットは直径0.5~30mmが好ましい。前記の範囲の熱伝導性シリコーングリース組成物は、発熱性電気・電子部品に組み込むのに都合がよい。熱伝導性シリコーングリース組成物はシート状に成形された熱伝導性シートでもよい。その熱伝導性シートの厚みは0.1~5mmが好ましい。
【0065】
前記製造方法における圧縮成形は、80~150℃の範囲の温度、5~60分の間、行うのが好ましい。前記の範囲であれば、熱伝導性シリコーングリース組成物を実装する際の効率化が図れる。
【0066】
[熱伝導性シート]
本発明は、本発明の熱伝導性シリコーングリース組成物がシート状に成形された熱伝導性シートに関する。
図3は本発明の一実施形態における熱伝導性シートを放熱構造体16に組み込んだ模式的断面図である。熱伝導性シート11bは、半導体素子等の電子部品13の発する熱を放熱するものであり、ヒートスプレッダ12の電子部品13と対峙する主面12aに固定され、電子部品13とヒートスプレッダ12との間に挟持される。また、熱伝導性シート11aは、ヒートスプレッダ12とヒートシンク15との間に挟持される。そして、熱伝導性シート11a,11bは、ヒートスプレッダ12とともに、電子部品13の熱を放熱する放熱部材を構成する。ヒートスプレッダ12は、例えば方形板状に形成され、電子部品13と対峙する主面12aと、主面12aの外周に沿って立設された側壁12bとを有する。ヒートスプレッダ12は、側壁12bに囲まれた主面12aに熱伝導性シート11bが設けられ、また主面12aと反対側の他面12cに熱伝導性シート11aを介してヒートシンク15が設けられる。電子部品13は、例えば、BGA等の半導体素子であり、配線基板14へ実装されている。
【0067】
また、本発明は、一態様において、本発明の熱伝導性シリコーングリース組成物をシート状に成形し、次いで硬化すること、を含む熱伝導性シートの製造方法である。本発明の熱伝導性シリコーングリース組成物は、シート成形され、硬化されると、熱界面材料(TIM(Thermal Interface Material))として好適である。シート成形の方法は、圧延成形法でもよいし、プレス成形法(型締法)でもよい。シート成形は、コンパウンド状の熱伝導性シリコーングリース組成物をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに挟み圧延することで行うのが好ましく、硬化は、80~150℃で10~120分間加熱することで行うのが好ましい。
【0068】
また、本発明は、一態様において、発熱体と放熱体の間に本発明の熱伝導性シートを介在させる本発明の熱伝導性シートの使用に関する。発熱体としては、例えば、半導体素子等の電子部品、または電気部品が、放熱体としては、例えば、ヒートスプレッダやヒートシンク等が挙げられる。
【0069】
本発明は、以下の態様を含む。
【0070】
[項1] 第1の熱伝導性シリコーングリースと第2の熱伝導性シリコーングリースとそれらの接合部を含む、熱伝導性シリコーングリース組成物であって、
前記第1の熱伝導性シリコーングリースは、硬化反応触媒を含有し、かつ架橋剤を含まず、
前記第2の熱伝導性シリコーングリースは硬化反応触媒を含まず、かつ架橋剤を含み、
前記第1及び第2の熱伝導性シリコーングリースは、相対する少なくとも1つの面で前記接合部を介して接合されており、
前記接合部は、硬化しており、
前記接合部以外は、前記第1及び第2の熱伝導性シリコーングリースは未硬化状態である、熱伝導性シリコーングリース組成物。
【0071】
[項2] 前記硬化反応触媒は、ヒドロシリル化反応に用いられる触媒である項1に記載の熱伝導性シリコーングリース組成物。
【0072】
[項3] 前記硬化反応触媒は、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類やビニルシロキサンとの錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒などの白金族金属触媒、好ましくは白金系金属触媒である項1または2に記載の熱伝導性シリコーングリース組成物。
【0073】
[項4] 前記架橋剤は、オルガノハイドロジェンポリシロキサンである項1~3のいずれか一項に記載の熱伝導性シリコーングリース組成物。
【0074】
[項5] 前記オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、一分子中にケイ素原子に結合した水素原子(即ち、SiH基)を2個以上有する、項4に記載の熱伝導性シリコーングリース組成物。
【0075】
[項6] 前記第1及び第2の熱伝導性シリコーングリースは、マトリックス樹脂と熱伝導性粒子とを含む、項1~5のいずれか一項に記載の熱伝導性シリコーングリース組成物。
【0076】
[項7] 前記マトリックス樹脂は、下記(A)および(C)成分を含む、項6に記載の熱伝導性シリコーングリース組成物。
(A)40℃における動粘度が100~3000mm2/sの付加反応硬化が可能なオルガノポリシロキサン:100質量部
(C)RaSi(OR')4-a(但し、Rは炭素数8~12の非置換又は置換有機基、R'は炭素数1~4のアルキル基、aは0もしくは1)のアルコキシシラン:0~10質量部
【0077】
[項8] 前記オルガノポリシロキサンは、アルケニル基として、ビニル基、アリル基等の炭素原子数2~8、特に2~6の、ケイ素原子に結合したアルケニル基を一分子中に2個有する、項7に記載の熱伝導性シリコーングリース組成物。
【0078】
[項9] 前記アルコキシシランは、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、およびドデシルトリエトキシシランからなる群から選択される1以上である、項7または8に記載の熱伝導性シリコーングリース組成物。
【0079】
[項10] 前記第1及び第2の熱伝導性シリコーングリースの前記マトリックス樹脂は、さらに
(D)非反応性シリコーンオイルを前記(A)成分の中に1~50質量%含む項7~9のいずれか一項に記載の熱伝導性シリコーングリース組成物。
【0080】
[項11] 前記非反応性シリコーンオイルは、25℃における動粘度が例えば50~3,000mm2/s、好ましくは70~2,500mm2/sである、項10に記載の熱伝導性シリコーングリース組成物。
【0081】
[項12] 前記非反応性シリコーンオイルは、ジメチルポリシロキサンおよび/またはジフェニルポリシロキサンである、項10または11に記載の熱伝導性シリコーングリース組成物。
【0082】
[項13] 前記熱伝導性粒子は下記(B)成分を含む、
項6~12のいずれか一項に記載の熱伝導性シリコーングリース組成物。
(B)前記マトリックス樹脂100質量部に対して、熱伝導性フィラー:200~3000質量部
【0083】
[項14] 前記熱伝導性粒子の材料は、好ましくはアルミナ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、水酸化アルミ、石英及びシリカからなる群から選択される少なくとも一つ、より好ましくは窒化アルミニウム、窒化ホウ素、およびアルミナからなる群から選択される少なくとも一つである、項6~13のいずれか一項に記載の熱伝導性シリコーングリース組成物。
【0084】
[項15] 前記熱伝導性フィラー(B)は、中心粒径(D50)が0.01~10μmの熱伝導性フィラー(B1)と、中心粒径(D50)が10μmを超え80μm以下の熱伝導性フィラー(B2)と、中心粒径(D50)が80μmを超え150μm以下の熱伝導性フィラー(B3)を含む、項13または14に記載の熱伝導性シリコーングリース組成物。
【0085】
[項16] 前記熱伝導性フィラー(B)は、前記マトリックス樹脂100質量部に対して、好ましくは前記熱伝導性フィラー(B1)を100~1,000質量部、より好ましくは150~1,000質量部、さらに好ましくは300~850質量部含み、前記熱伝導性フィラー(B)は、前記マトリックス樹脂100質量部に対して前記熱伝導性フィラー(B2)を好ましくは100~500質量部、より好ましくは150~500質量部、さらに好ましくは200~450質量部含み、前記熱伝導性フィラー(B)は、前記マトリックス樹脂100質量部に対して前記熱伝導性フィラー(B3)を300~1,400質量部含んでいると好ましく、300~1,300質量部含んでいるとより好ましく、500~1,200質量部含んでいるとさらに好ましい、項15に記載の熱伝導性シリコーングリース組成物。
【0086】
[項17] 前記熱伝導性フィラー(B)は、球状凝集窒化ホウ素粒子を含む、項13に記載の熱伝導性シリコーングリース組成物。
【0087】
[項18] 前記球状凝集窒化ホウ素粒子は、中心粒径D50が10μm以上30μm以下の球状凝集窒化ホウ素粒子(B4)と、中心粒径D50がB1の2倍以上であり、かつ中心粒径D50が30μmを超え100μm以下の球状凝集窒化ホウ素粒子(B5)とを含む、項17に記載の熱伝導性シリコーングリース組成物。
【0088】
[項19] 前記第1及び第2の熱伝導性シリコーングリースの少なくとも一方は、熱伝導率が2.0W/m・K以上であるのが好ましく、3.0W/m・K以上がより好ましく、4.0W/m・K以上がさらに好ましく、20.0W/m・K以下であるのが好ましい、項1~18のいずれか一項に記載の熱伝導性シリコーングリース組成物。
【0089】
[項20] 前記第1及び第2の熱伝導性シリコーングリースは、それぞれ、23℃でのB型粘度計の絶対粘度が1000~20000Pa・sの範囲であるのが好ましく、より好ましくは1,500~18,000Pa・sであり、さらに好ましくは2,000~15,000Pa・sである、項1~19のいずれか一項に記載の熱伝導性シリコーングリース組成物。
【0090】
[項21] 前記第1及び第2の熱伝導性シリコーングリースは、それぞれ、30mLシリンジに充填し、吐出孔直径2.5mm、吐出圧力0.5MPaで9秒吐出させたときの吐出量が2~10gである項1~20のいずれか一項に記載の熱伝導性シリコーングリース組成物。
【0091】
[項22] 前記熱伝導性シリコーングリース組成物を、2枚のプレート間に1.0g配置し、厚さ1.0mmに圧縮保持し、前記2枚のプレートを垂直に保持してヒートショック試験機に設置し、-40℃と125℃で30分ずつ保持し、500サイクル経過させるヒートショック試験において、前記熱伝導性シリコーングリース組成物の落下が5mm以内である項1~21のいずれか一項に記載の熱伝導性シリコーングリース組成物。
【0092】
[項23] 項1~22のいずれか1項に記載の熱伝導性シリコーングリース組成物の製造方法であって、
前記第1の熱伝導性シリコーングリースと第2の熱伝導性シリコーングリースとをそれぞれディスペンサーに充填する工程、
前記ディスペンサーの吐出孔から前記第1および第2の熱伝導性シリコーングリースを交互に吐出させて塗布し、その際に、それぞれの熱伝導性シリコーングリースが接触しないよう塗布厚さに対して10%~90%の隙間を作って塗布する工程、
塗布された前記第1および第2の熱伝導性シリコーングリースを塗布厚さに対して10~90%の圧縮率で圧縮成形することで、前記第1および第2の熱伝導性シリコーングリースの接触部分において付加反応を生じさせてそれぞれ接合部を形成し、それらの結合部を介して前記第1および第2の熱伝導性シリコーングリースを接合させて熱伝導性シリコーングリース組成物を生じる工程を含む、熱伝導性シリコーングリース組成物の製造方法。
【0093】
[項24] 前記塗布する工程が、前記第1および第2の熱伝導性シリコーングリースを交互に円柱状に吐出させて塗布することにより行われる項23に記載の熱伝導性シリコーングリースの製造方法。
【0094】
[項25] 前記円柱状が、直径0.5~3.0mm、長さ50~1000mmの円柱状である項24に記載の熱伝導性シリコーングリースの製造方法。
【0095】
[項26] 前記塗布する工程が、前記第1および第2の熱伝導性シリコーングリースを交互にドット状に吐出させて塗布することにより行われる項23に記載の熱伝導性シリコーングリース組成物の製造方法。
【0096】
[項27] 前記ドット状が、直径0.5~30mmのドット状である項26に記載の熱伝導性シリコーングリース組成物の製造方法。
【0097】
[項28] 前記圧縮成形は、80~150℃の範囲の温度、5~60分の間、行う項23~27のいずれか一項に記載の熱伝導性シリコーングリース組成物の製造方法。
【0098】
[項29] 前記熱伝導性シリコーングリース組成物の製造方法は、発熱部品に前記熱伝導性シリコーングリース組成物を実装する際に実施する項23~28のいずれか一項に記載の熱伝導性シリコーングリース組成物の製造方法。
【0099】
[項30] 項1~22のいずれか一項の前記熱伝導性シリコーングリース組成物がシート状に成形された熱伝導性シート。
【0100】
[項31] 項1~22のいずれか一項の熱伝導性シリコーングリース成物をシート状に成形し、次いで硬化すること、を含む熱伝導性シートの製造方法。
【0101】
[項32] 前記シート状に成形することは、コンパウンド状の前記熱伝導性シリコーングリース組成物をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに挟み圧延することで行うのが好ましく、前記硬化は、80~150℃で10~120分間加熱することで行うのが好ましい、項31に記載の熱伝導性シートの製造方法。
【0102】
[項33] 発熱体と放熱体の間に項30の熱伝導性シートを介在させる、熱伝導性シートの使用。
【0103】
[実施例]
以下実施例を用いて説明する。本発明は実施例に限定されるものではない。まず測定方法から説明する。
【0104】
<熱伝導率>
熱伝導性シリコーングリースの熱伝導率は、ホットディスク(ISO 22007-2:2008準拠)により測定した。この熱伝導率測定装置19は
図4Aに示すように、ポリイミドフィルム製センサ17を2個の試料18a,18bで挟み、センサ17に定電力をかけ、一定発熱させてセンサ17の温度上昇値から熱特性を解析する。
図4Bに示すように、センサ17の先端20は直径7mmであり、電極の2重スパイラル構造となっており、下部に印加電流用電極21と抵抗値用電極(温度測定用電極)22が配置されている。熱伝導率は以下の式(数1)で算出する。
【0105】
【0106】
<落下試験>
図5A-Dに示す落下試験により測定した。
タテ40 mm、ヨコ100mm、厚さ5mmのアルミプレート24と、タテ40mm、ヨコ100mm、厚さ5mmのガラスプレート23の間に1.0gの熱伝導性シリコーングリース26を塗付し(
図5A)、スペーサー25を介在させて厚さ1.0mmとなるように圧縮挟持した(
図5B)。27は厚さ1.0mmまで圧縮された熱伝導性シリコーングリースである。次に、アルミプレート24とガラスプレート23の隙間が垂直になるようにヒートサイクル試験機に設置した(
図5C)。28は試験前の試験片である。この状態で、-40℃と125℃で30分ずつ保持するヒートサイクル試験を行った。500サイクル経過した段階で試験片を取り出し、熱伝導性シリコーングリース27が落下していないか観察した。29は試験後の試験片(
図5D)、30は落下距離である。熱伝導性シリコーングリース組成物の落下試験は、「熱伝導性シリコーングリース」を「熱伝導性シリコーングリース組成物」に変更した以外は、前記と同様にして行った。
判定基準
A:グリースの落下が5mm以内
B:5mmを超えた場合
【0107】
<熱伝導性シリコーングリースの絶対粘度>
熱伝導性シリコーングリースの絶対粘度はB型粘度計(ブルックフィールド社製HBDV2T)で測定した。スピンドルはT-Eスピンドルを使用し、回転速度5rpm、23℃における絶対粘度を測定した。
【0108】
<吐出試験>
武蔵エンジニアリング社製30mLシリンジPSY-30Fに熱伝導性シリコーングリースを充填し、吐出圧力0.5MPaで9秒吐出させたときの吐出量を測定した。
【0109】
1.マトリックス樹脂
(1)オルガノポリシロキサン(A成分)、硬化反応触媒、架橋剤
(A)成分として、市販の2液型付加反応硬化型シリコーン液を使用した。一方の液(A液)には、オルガノポリシロキサン(ベースポリマー成分、A成分、40℃における動粘度450mm2/s)と白金族系金属触媒(硬化反応触媒)が含まれており、架橋剤は含まれていない。他方の液(B液)には、オルガノポリシロキサン(ベースポリマー成分、A成分、40℃における動粘度450mm2/s)とオルガノハイドロジェンポリシロキサン(架橋剤)が含まれ、白金族系金属触媒(硬化反応触媒)は含まれていない。実施例の(i)液はA液を、実施例の(ii)液はB液を含む。実施例中のA液とB液の比率は、質量比でA:B=100:100である。
(2)非反応性シリコーンオイル(D成分)
非反応性シリコーンオイルとしてジメチルポリシロキサン(ブルックリンフィールド型回転粘度計 SP No.2を使用し、25℃における動粘度:110mm2/s)を使用した。
(3)アルコキシシラン(C成分)
(C)成分としてデシルトリメトキシシランを使用した。
【0110】
2.熱伝導性粒子(B成分)
(B)成分として表1に記載の熱伝導性粒子を使用した。平均粒子径は、レーザー回折光散乱法による粒度分布測定において、体積基準による累積粒度分布のD50(メジアン径)である。この測定器としては、例えば堀場製作所社製のレーザー回折/散乱式粒子分布測定装置LA-950S2がある。表中のμmの前の数値は各粒子の平均粒子径である。
・不定形アルミナ(D50=0.3μm)(
図6):オクチルトリメトキシシランで表面処理されている。
・不定形アルミナ(D50=2.3μm)(
図7):デシルトリメトキシシランで表面処理されている。
・球状アルミナ(D50=105μm)(
図9):表面処理は無し。
・窒化アルミニウム(D50=15μm)(
図8):表面処理は無し。
・球状凝集窒化ホウ素(D50=25μm)(
図10):表面処理は無し。
・球状凝集窒化ホウ素(D50=60μm)(
図11):表面処理は無し。
【0111】
[実施例1]
(a)
図1Bに示す熱伝導性シリコーングリース組成物
各材料について前記表1に示す量を計量し、それらを混合装置に入れて均一混合し、2種類の熱伝導性シリコーングリース(i)液(第1の熱伝導性シリコーングリース)と(ii)液(第2の熱伝導性シリコーングリース)を調製した。この熱伝導性シリコーングリースの(i)液と(ii)液を武蔵エンジニアリング社製30mLシリンジPSY-30Fにそれぞれ充填し、吐出圧力0.3MPaで
図1Aに示すように板の上へ交互に吐出した。吐出された熱伝導性シリコーングリース(i)液および(ii)液は平均直径3mm、平均長さ15mmの円柱状である。塗布厚さに対して20%の隙間を設けた。
【0112】
図1Aに示すように吐出された円柱状の熱伝導性シリコーングリース(i)液および(ii)液を、スペーサーを介在させて厚さ1.0mmとなるように圧縮し、その後、温度100℃のオーブンに10分間放置することで圧縮成形した。円柱状体の圧縮率は66%にした。得られた熱伝導性シリコーングリース組成物の厚みは1mmであった。
【0113】
(b)
図2Bに示す熱伝導性シリコーングリース組成物
各材料について前記表1に示す量を計量し、それらを混合装置に入れて均一混合し、2種類の熱伝導性シリコーングリース(i)液(第1の熱伝導性シリコーングリース)と(ii)液(第2の熱伝導性シリコーングリース)を調製した。この熱伝導性シリコーングリースの(i)液と(ii)液を武蔵エンジニアリング社製30mLシリンジPSY-30Fにそれぞれ充填し、吐出圧力0.3MPaで
図2Aに示すように吐出した。
図2Aは平均直径3mmのドット状(球状体)である。塗布厚さに対して20%の隙間を設けた。
【0114】
図2Aに示すように吐出されたドット状(球状体)の熱伝導性シリコーングリース(i)液および(ii)液を、スペーサーを介在させて厚さ1.0mmとなるように圧縮し、その後、温度100℃のオーブンに10分間放置することで圧縮成形した。ドット状(球状体)体の圧縮率は66%にした。得られた熱伝導性シリコーングリース組成物の厚みは1mmであった。
【0115】
[実施例2]
(a)
図1Bに示す熱伝導性シリコーングリース組成物
各材料の量を前記表1に示す量に変更した以外は、実施例1(a)と同様にして、熱伝導性シリコーングリース組成物を製造した。
(b)
図2Bに示す熱伝導性シリコーングリース組成物
各材料の量を前記表1に示す量に変更した以外は、実施例1(b)と同様にして、熱伝導性シリコーングリース組成物を製造した。
【0116】
[比較例1~2]
各材料について前記表1に示す量を計量し、それらを混合装置に入れて均一混合し熱伝導性シリコーングリースを調製した。
【0117】
以上の条件と結果を表1にまとめて示す。表1において、各材料の量を、マトリックス樹脂を100質量部(100g)とした場合の量(質量部)で記載している。
【0118】
【0119】
以上の結果から次のことがわかる。
(1)実施例1及び実施例2の結果から、第1の熱伝導性シリコーングリース(i液)および第2の熱伝導性シリコーングリース(ii液)それぞれの落下試験はいずれも評価Bであったが、
図1Bおよび
図2Bに示す熱伝導性シリコーングリース組成物は、落下試験は評価Aとなった。これは、第1および第2の熱伝導性シリコーングリースの接合部が硬化していることにより、第1および第2の熱伝導性シリコーングリースに浸み出し成分が閉じ込められるからであると推測される。
(2)実施例1及び2の結果から、第1の熱伝導性シリコーングリース(i液)および第2の熱伝導性シリコーングリース(ii液)の吐出性は良好であった。これは、第1および第2の熱伝導性シリコーングリースはディスペンサー内で硬化が進行することはないので、長期間保存できることを意味する。
(3)比較例1は落下試験は評価Bであった。この結果は、比較例1において非反応性シリコーンオイルがマトリックス樹脂の主成分であるため、マトリックス樹脂の硬化による浸み出し成分の閉じ込めは期待できないためと推測される。
【0120】
本発明の熱伝導性シリコーングリース組成物は、電気・電子部品等の発熱部と放熱体の間に介在させる放熱シート:TIM(Thermal Interface Material)として好適である。
【符号の説明】
【0121】
1 円柱状配列体
2a,2b,7a,7b 第1の熱伝導性シリコーングリース
3a,3b,8a,8b 第2の熱伝導性シリコーングリース
4,10 成形体
5a,5b,5c,9a,9b,9c 接合部
6 ドット状配列体
11a、11b 熱伝導性シート
12 ヒートスプレッダ
13 電子部品
14 配線基板
15 ヒートシンク
16 放熱構造体
17 センサ
18a,18b 試料
19 熱伝導率測定装置
20 センサ先端
21 印加電流用電極
22 抵抗値用電極(温度測定用電極)
23 ガラスプレート
24 アルミプレート
25 スペーサー
26 熱伝導性シリコーングリース
27 圧縮された熱伝導性シリコーングリース
28 試験前の試験片
29 試験後の試験片
30 落下距離
【要約】
第1の熱伝導性シリコーングリースと第2の熱伝導性シリコーングリースとそれらの接合部を含む、熱伝導性シリコーングリース組成物10であり、第1の熱伝導性シリコーングリース7a,7bは硬化反応触媒を含有しかつ架橋剤を含まず、第2の熱伝導性シリコーングリース8a,8bは硬化反応触媒を含まずかつ架橋剤を含み、前記第1及び第2の熱伝導性シリコーングリースは相対する少なくとも1つの面で前記接合部を介して接合されており、接合部9a,9b,9cが硬化しており、接合部以外は未硬化状態である。