(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】電解コンデンサおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 9/012 20060101AFI20241025BHJP
H01G 9/00 20060101ALI20241025BHJP
H01G 9/08 20060101ALI20241025BHJP
【FI】
H01G9/012 301
H01G9/00 290L
H01G9/00 290E
H01G9/08 C
H01G9/00 290K
(21)【出願番号】P 2020216045
(22)【出願日】2020-12-25
【審査請求日】2023-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮本 文也
(72)【発明者】
【氏名】太平 雅彦
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/038316(WO,A1)
【文献】実開平04-004734(JP,U)
【文献】特開2019-067923(JP,A)
【文献】実開昭59-140433(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/012
H01G 9/00
H01G 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極部および陰極部を備えるコンデンサ素子と、
前記陽極部と電気的に接続する陽極端子と、
前記陰極部と電気的に接続する陰極端子と、
前記陽極端子の一部、および、前記陰極端子の一部を露出させた状態で、前記コンデンサ素子を覆う外装体と、を備え、
前記コンデンサ素子は、第1主面と、前記第1主面と一辺を共有する第2主面と、前記第1主面と一辺を共有し、且つ前記第2主面と反対側に位置する第3主面と、を有し、
前記陰極端子は、前記コンデンサ素子が搭載される、前記第1主面と対向する搭載部と、前記搭載部から屈曲して、前記第1主面に交差する方向に延在する側壁部と、を有し、
前記外装体は、樹脂注入痕を有し、
前記樹脂注入痕は、前記側壁部と対向する位置にある、電解コンデンサ。
【請求項2】
前記側壁部を複数有し、
前記樹脂注入痕を複数有し、
複数の前記樹脂注入痕のそれぞれが、前記複数の側壁部のいずれか1つと対向する位置にある、請求項1に記載の電解コンデンサ。
【請求項3】
前記側壁部を複数有し、
前記側壁部の少なくとも1つが前記第2主面に沿って延在している、請求項1または請求項2に記載の電解コンデンサ。
【請求項4】
前記側壁部の少なくとも1つが前記第3主面に沿って延在している、請求項3に記載の電解コンデンサ。
【請求項5】
前記第2主面に沿って延在する少なくとも1つの前記側壁部が、前記第3主面に沿って延在する少なくとも1つの前記側壁部と、前記コンデンサ素子を挟んで対向している、請求項4に記載の電解コンデンサ。
【請求項6】
前記側壁部の少なくとも1つが、前記第2主面および前記第3主面と連結し、前記第1主面と交差する第4主面に沿って延在している、請求項1~5のいずれか1項に記載の電解コンデンサ。
【請求項7】
前記側壁部を複数有し、
前記第2主面に沿って延在する側壁部の少なくとも1つと、前記第4主面に沿って延在する側壁部の少なくとも1つとが、前記第2主面と前記第4主面とを連結する角部において、近接または連続している、請求項6に記載の電解コンデンサ。
【請求項8】
前記第2主面に沿って延在する前記側壁部の前記第1主面に平行な方向の延在長さは、前記コンデンサ素子を前記第1主面に垂直な方向から見たときの前記コンデンサ素子の長辺の寸法の5%~90%である、請求項3~7のいずれか1項に記載の電解コンデンサ。
【請求項9】
前記側壁部に垂直な方向から見て、前記樹脂注入痕と前記側壁部とが重なる重なり部分の面積は、前記側壁部に垂直な方向から見た前記樹脂注入痕の投影面積の50%以上である、請求項1~8のいずれか1項に記載の電解コンデンサ。
【請求項10】
陽極部および陰極部を備えるコンデンサ素子を準備する工程と、
陽極端子および陰極端子を準備する工程と、
前記コンデンサ素子の前記陽極部を前記陽極端子と接続し、前記コンデンサ素子の前記陰極部を前記陰極端子と接続する工程と、
前記陽極端子の一部、および、前記陰極端子の一部が露出するように、射出成型により前記コンデンサ素子を外装体で封止する工程と、を有し、
前記陰極端子は、前記コンデンサ素子が搭載される搭載部と、前記搭載部から屈曲して、前記搭載部の主面に交差する方向に延在する側壁部と、を有し、
前記外装体で封止する工程において、外装樹脂を金型に流し入れるゲートを、前記コンデンサ素子の前記側壁部と対向させる、電解コンデンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解コンデンサおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電解コンデンサは、等価直列抵抗(ESR)が小さく、周波数特性が優れているため、様々な電子機器に搭載されている。電解コンデンサは、通常、陽極部および陰極部を備えるコンデンサ素子と、陽極部と電気的に接続する陽極端子(陽極リード端子)と、陰極部と電気的に接続する陰極端子(陰極リード端子)とを備える。コンデンサ素子は、通常、外装樹脂により封止されている。
【0003】
特許文献1は、リードフレームの一方または両面にコンデンサ素子を積層し、得られた積層体を樹脂封止してなるコンデンサチップにおいて、積層体上部から封止樹脂上面までの距離および積層体下部から封止樹脂下面までの距離を一定の範囲内とすることを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2007/069670号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
外装樹脂によるコンデンサ素子の封止は、通常、トランスファーモールド工法などの射出成型により行われる。その場合、金型には、金型内に樹脂を注入するための注入口(「ゲート」とも呼ばれる)が設けられる。成型後の外装体には、注入口に起因する突起部分が形成される。この部分は製造工程で切断され、除去されるが、外装体の外表面には、ゲート切断による痕が残る。
【0006】
コンデンサ素子のゲート近傍の部分は、液状の樹脂と衝突し、応力を受ける部分であるので、誘電体被膜や固体電解質層が破損し易い。結果、漏れ電流の増大などの電解コンデンサの信頼性の低下を招くことがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面は、陽極部および陰極部を備えるコンデンサ素子と、前記陽極部と電気的に接続する陽極端子と、前記陰極部と電気的に接続する陰極端子と、前記陽極端子の一部、および、前記陰極端子の一部を露出させた状態で、前記コンデンサ素子を覆う外装体と、を備え、コンデンサ素子は、第1主面と、前記第1主面と一辺を共有する第2主面と、前記第1主面と一辺を共有し、且つ前記第2主面と反対側に位置する第3主面と、を有し、前記陰極端子は、前記コンデンサ素子が搭載される、前記第1主面と対向する搭載部と、前記搭載部から屈曲して、前記第1主面に交差する方向に延在する側壁部と、を有し、前記外装体は、樹脂注入痕を有し、前記樹脂注入痕は、前記側壁部と対向する位置にある、電解コンデンサに関する。
【0008】
本発明の他の一局面は、陽極部および陰極部を備えるコンデンサ素子を準備する工程と、陽極端子および陰極端子を準備する工程と、前記コンデンサ素子の前記陽極部を前記陽極端子と接続し、前記コンデンサ素子の前記陰極部を前記陰極端子と接続する工程と、前記陽極端子の一部、および、前記陰極端子の一部が露出するように、射出成型により前記コンデンサ素子を外装体で封止する工程と、を有し、前記陰極端子は、前記コンデンサ素子が搭載される搭載部と、前記搭載部から屈曲して、前記搭載部の主面に交差する方向に延在する側壁部と、を有し、前記外装体で封止する工程において、外装樹脂を金型に流し入れるゲートを、前記コンデンサ素子の前記側壁部と対向させる、電解コンデンサの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、漏れ電流の増加が抑制され、電解コンデンサの信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電解コンデンサの構成を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図1において、陰極端子の一部を抜き出して示す斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るコンデンサ素子の断面模式図である。
【
図4A】本発明の一実施形態に係る電解コンデンサに用いられる陰極端子の他の例を示す斜視図である。
【
図4B】本発明の一実施形態に係る電解コンデンサに用いられる陰極端子の他の例を示す斜視図である。
【
図4C】本発明の一実施形態に係る電解コンデンサに用いられる陰極端子の他の例を示す斜視図である。
【
図4D】本発明の一実施形態に係る電解コンデンサに用いられる陰極端子の他の例を示す斜視図である。
【
図5A】本発明の一実施形態に係る電解コンデンサに用いられる陰極端子の他の例を示す斜視図である。
【
図5B】本発明の一実施形態に係る電解コンデンサに用いられる陰極端子の他の例を示す斜視図である。
【
図6A】本発明の一実施形態に係る電解コンデンサに用いられる陰極端子の他の例を示す斜視図である。
【
図6B】本発明の一実施形態に係る電解コンデンサに用いられる陰極端子の他の例を示す斜視図である。
【
図6C】本発明の一実施形態に係る電解コンデンサに用いられる陰極端子の他の例を示す斜視図である。
【
図7A】本発明の一実施形態に係る電解コンデンサの構造の他の例を模式的に示す断面図である。
【
図7B】本発明の一実施形態に係る電解コンデンサの構造の他の例を模式的に示す断面図である。
【
図8A】本発明の一実施形態に係る電解コンデンサの構造の他の例を模式的に示す断面図である。
【
図8B】本発明の一実施形態に係る電解コンデンサの構造の他の例を模式的に示す断面図である。
【
図8C】本発明の一実施形態に係る電解コンデンサの構造の他の例を模式的に示す断面図である。
【
図8D】本発明の一実施形態に係る電解コンデンサの構造の他の例を模式的に示す断面図である。
【
図9A】本発明の一実施形態に係る電解コンデンサの構造の他の例を模式的に示す断面図である。
【
図9B】本発明の一実施形態に係る電解コンデンサの構造の他の例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態に係る電解コンデンサは、陽極部および陰極部を備えるコンデンサ素子と、陽極部と電気的に接続する陽極端子と、陰極部と電気的に接続する陰極端子と、外装体と、を備える。外装体は、陽極端子および陰極端子の一部を露出させた状態で、コンデンサ素子を覆っている。コンデンサ素子は、第1主面と、第1主面と一辺を共有する第2主面と、第1主面と一辺を共有し、且つ第2主面と反対側に位置する第3主面と、を有している。陰極端子は、コンデンサ素子が搭載される、第1主面と対向する搭載部と、搭載部から屈曲して、搭載部の主面に交差する方向に延在する側壁部と、を有する。外装体は、樹脂注入痕を有する。
【0012】
陰極部は、例えば、略直方体の形状を有する陽極部(陽極体)を、誘電体層を介して覆うように形成される。この場合、陽極部と同様、陰極部も略直方体の外表面を有するように形成され得る。コンデンサ素子の第1主面~第3主面は、この略直方体の陰極部の外表面であり得る。この場合、陰極部の外表面は、第1主面~第3主面に交差し、前記第2主面および第3主面と連結する第4主面、第1主面と反対側の第5主面を有し得る。これらの第1主面~第5主面、および、第4主面と反対側の第6主面が、コンデンサ素子の主面を構成し得る。これらの主面のコンデンサ素子の形状から観念される概念的な面であり、平坦である必要はない。これらの主面は必ずしも平面である必要はなく、曲面形状を有していたり、若干の凹凸を有していたり、および/または、複数の屈曲した平面により形成されていたりしてもよい。また、隣接する主面同士がなす角は、それぞれ、直角であってもよく、鋭角または鈍角でもよい。つまり、ある主面が他の主面に対して傾斜していてもよい。
【0013】
第1主面が下になるようにコンデンサ素子を陰極端子の搭載部の主面(搭載面)に載置した状態で、コンデンサ素子が外装体で封止される。このとき、第1主面と交差する4つの主面のいずれかに沿うように、陰極端子の一部が搭載部から屈曲して、側壁部が形成され得る。
【0014】
また、電解コンデンサは、粗面化された箔を陽極部に用いたコンデンサ素子を複数積層させたものであってもよい。その場合、コンデンサ素子の積層体が、陰極端子の搭載面に載置され、積層体が外装体で封止される。搭載面は、コンデンサ素子の箔の主面に平行であり、積層体の積層方向に垂直な方向を法線方向とする側面を構成するコンデンサ素子の陰極部の外表面に沿うように、陰極端子の一部が搭載部から屈曲して、側壁部が形成され得る。コンデンサ素子の積層体の箔の一方の主面の側の陰極部の外表面が第1主面であり、他方の主面の側の陰極部の外表面が第5主面であり得る。第2~第4主面は、陰極部で覆われた、コンデンサ素子の積層体の積層方向に垂直な方向を法線方向とする面であり得る。
【0015】
コンデンサ素子は、その第1主面が陰極端子の搭載部の主面(搭載面)に重なるように載置され、陽極端子の一部および陰極端子の一部を露出させた状態で、外装樹脂により封止されている。
【0016】
外装体の表面には、射出成型により外装樹脂を注入した際の痕(以降において「樹脂注入痕」と称する)が残されている。樹脂注入痕は、凸状または凹状の湾曲面として、外装体の表面に現れる。
【0017】
本実施形態の電解コンデンサでは、樹脂注入痕は、陰極端子の側壁部と対向する位置にある。この場合、電解コンデンサの射出成型の際には、液状の外装樹脂は側壁部に当たるように注入口から注入され、コンデンサ素子に直接衝突することがない。このため、射出成型時に誘電体被膜が損傷することが抑制され、漏れ電流の増大が抑制される。結果、電解コンデンサの信頼性が向上する。
【0018】
側壁部は複数有していてもよい。樹脂注入痕は複数有していてもよい。複数の樹脂注入痕を有する場合、複数の樹脂注入痕の少なくとも1つが、側壁部のいずれか1つと対向する位置にあればよい。しかしながら、複数の樹脂注入痕を有する場合、複数の樹脂注入痕のそれぞれが、側壁部のいずれか一つと対向する位置にあることが好ましい。
【0019】
樹脂注入痕と側壁部とが対向するとは、外装体の外表面を側壁部が形成する平面に投影したとき、樹脂注入痕の投影部分が側壁部と重複部分を有することをいう。樹脂注入痕の投影面積の50%以上が側壁部と重なってもよい。樹脂注入痕の投影面積の80%以上または90%以上が側壁部と重なることが好ましい。
【0020】
陰極端子の搭載部に、コンデンサ素子の第1主面が陰極端子の搭載部の主面(搭載面)に重なるようにして、コンデンサ素子が搭載される。搭載部は、陰極端子の平板状の部分である。搭載部から、陰極端子が屈曲しながら延びて、側壁部および外部電極との接続部を構成する。側壁部は、第1主面に交差する第2主面、第3主面、第4主面、および/または、第6主面に沿って延在するように形成される。側壁部(複数の場合、その少なくとも1つ)は、第2主面に沿って延在するように形成される。第2主面および第3主面は、コンデンサ素子を第1主面に垂直な方向から見たとき、長方形の長辺に対応する面であってもよく、長方形の短辺に対応する面であってもよい。
【0021】
複数の側壁部を有する場合、側壁部の少なくとも1つが第2主面に沿って延在するとともに、側壁部の他の少なくとも1つが第3主面に沿って延在していてもよい。その場合、第2主面に沿って延在する少なくとも1つの側壁部が、第3主面に沿って延在する側壁部の少なくとも1つと、コンデンサ素子を挟んで対向してもよい。
【0022】
複数の側壁部を有する場合、側壁部の少なくとも1つが第2主面に沿って延在するとともに、側壁部の他の少なくとも1つが第4主面(および/または、第6主面)に沿って延在していてもよい。その場合、第2主面に沿って延在する側壁部の少なくとも1つと、第4主面に沿って延在する側壁部の少なくとも1つとが、第2主面と第4主面とを連結する角部において、近接または連続していてもよい。すなわち、コンデンサ素子の角部を囲むように側壁部が形成されていてもよい。角部を囲む側壁部は、搭載部から屈曲して第2主面に沿って延びる側壁部と、搭載部から屈曲して第4主面に沿って延びる側壁部とが、近接することにより形成されてもよいし、搭載部から屈曲して第2主面(または、第4主面)に沿って延びる側壁部が、角部の位置においてさらに第4主面(または、第2主面)に沿う方向に屈曲することにより形成されてもよい。
【0023】
側壁部は、樹脂注入時にコンデンサ素子に加わる応力を低減するほか、コンデンサ素子を陰極端子の搭載面に載置する際の位置決めを容易にする効果を奏し得る。載置時において、側壁部がコンデンサ素子の主面と接触するように位置決めすることが好ましい。側壁部とコンデンサ素子の主面との接触は、導電性樹脂を介した接触であってもよい。
【0024】
第2主面に沿って延在する側壁部の第1主面に平行な方向の延在長さは、コンデンサ素子の第1主面と第2主面との交線に平行な方向の寸法(または、第4主面と第6主面との間の距離)、および、第2主面と第3主面間との間の距離(または、コンデンサ素子の第1主面と第4主面との交線に平行な方向の寸法)のうち長い方の長さの5%~90%であってもよい。すなわち、延在長さは、コンデンサ素子を第1主面に垂直な方向から見たときのコンデンサ素子の長辺の寸法の5%~90%であってもよい。延在長さが長辺寸法の5%以上であると、樹脂注入時にコンデンサ素子に加わる応力が側壁部により低減され易く、誘電体被膜および固体電解質層の損傷の抑制効果が得られる。よって、漏れ電流の増大が抑制され、電解コンデンサの信頼性の向上効果を得ることができる。また、延在長さを90%以下とすることで、側壁部が金型内で樹脂の回り込みを妨げることが抑制され、樹脂封止を確実に行うことができる。なお、第2主面以外の他の主面(第3主面、第4主面、および第6主面)に沿って延在する側壁部の第1主面に平行な方向の延在長さについても同様であり、長辺寸法の5%~90%であってもよい。
【0025】
電解コンデンサにおいて、2つのコンデンサ素子またはコンデンサ素子の積層体が、陰極端子の搭載部の両面に1つずつ搭載されてもよい。この場合、側壁部の少なくとも1つが一方のコンデンサ素子に向かって搭載部の主面に交差する方向に延在し、側壁部の他の少なくとも1つが他方のコンデンサ素子に向かって、搭載部の主面に交差する方向に延在してもよい。すなわち、2つの側壁部が、互いに反対方向を搭載部の主面に交差する方向に延在してもよい。
【0026】
以下、本発明の一実施形態に係る電解コンデンサについて、図面を参照しながら説明する。本実施形態では、陽極部が粗面化された弁作用金属の箔である場合を例示するが、これに限定されるものではない。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態に係る電解コンデンサ100を模式的に示す断面図であり、コンデンサ素子と陽極端子および陰極端子の状態を模式的に示している。
図2は、
図1における陰極端子を抜き出して示す斜視図である。
図3は、電解コンデンサに用いられるコンデンサ素子10の断面模式図である。
【0028】
電解コンデンサ100は、コンデンサ素子10と、外装体11と、陽極端子13と、陰極端子14と、を備える。外装体11は、陽極端子13および陰極端子14の一部を露出させた状態で、コンデンサ素子10を覆っている。
【0029】
コンデンサ素子10は、陽極部である陽極体3と、陰極部6とを備え、陽極部が陽極端子13と電気的に接続され、陰極部が陰極端子14と電気的に接続されている。陽極体3は、例えば箔(陽極箔)である。陽極体3は、表面に多孔質部5を有し、多孔質部5の少なくとも一部の表面に誘電体層(図示しない)が形成されている。陰極部6は、誘電体層の少なくとも一部を覆っている。
【0030】
コンデンサ素子10は、一方の端部1aにおいて陰極部6で覆われることなく、陽極体3が露出している一方で、他方の端部2aは陰極部6で覆われている。以下において、陽極体3の陰極部で覆われていない部分を第1部分1と称し、陽極体3の陰極部で覆われた部分を第2部分2と称する。第1部分1の端部が第1端部1aであり、第2部分2の端部が第2端部2aである。誘電体層は、少なくとも第2部分2に形成された多孔質部5の表面に形成される。なお、陽極体3の第1部分1は、陽極引出部とも呼ばれる。陽極体3の第2部分2は、陰極形成部とも呼ばれる。第1部分1は、陽極端子13と電気的に接続される。
【0031】
第2部分2は、芯部4と、粗面化(エッチングなど)などにより芯部4の表面に形成された多孔質部(多孔体)5とを有する。一方、第1部分1では、表面に多孔質部5を有していてもよく、有していなくてもよい。誘電体層は、多孔質部5の表面に沿って形成されている。誘電体層の少なくとも一部は、多孔質部5の孔の内壁面を覆い、その内壁面に沿って形成されている。
【0032】
陰極部6は、誘電体層の少なくとも一部を覆う固体電解質層7と、固体電解質層7の少なくとも一部を覆う陰極引出層とを備える。誘電体層の表面は、陽極体3の表面の形状に応じた凹凸形状が形成されている。固体電解質層7は、このような誘電体層の凹凸を埋めるように形成され得る。陰極引出層は、例えば、固体電解質層7の少なくとも一部を覆うカーボン層8と、カーボン層8を覆う銀ペースト層9とを備える。
【0033】
なお、陽極体3上に誘電体層(多孔質部5)を介して固体電解質層7が形成されている陽極体3の部分が第2部分2であり、陽極体3上に誘電体層(多孔質部5)を介して固体電解質層7が形成されていない陽極体3の部分が第1部分1である。
【0034】
複数のコンデンサ素子10を陰極部6同士が重なるように積層し、陽極体3の第1部分1のそれぞれを陽極端子13と電気的に接続して、電解コンデンサを得てもよい。コンデンサ素子またはその積層体の外径は略直方体であり、コンデンサ素子またはその積層体の外表面(陰極部6の外表面)は、第1主面S1と、第1主面S1と一辺を共有する第2主面S2と、第1主面S1と一辺を共有し、且つ第2主面S2と反対側に位置する第3主面S3(不図示)と、第1主面~第3主面に交差する第4主面S4と、第1主面と反対側の第5主面S5と、を有する。第4主面S4と反対側の第6主面S6において、陽極体3の第1部分1が突出する。
【0035】
コンデンサ素子10を第1主面S1に垂直な方向から見たとき、陰極部6の外形は長辺L
1および短辺L
2を有する長方形である(L
1>L
2)。
図1の例では、コンデンサ素子の第1主面S1と第2主面S2との交線に平行な方向の寸法(あるいは、第4主面S4と第6主面S6との間の距離と言い換えてもよい)が長辺L
1と等しく、第2主面S2と第3主面S3との間の距離(あるいは、コンデンサ素子の第1主面S1と第4主面S4との交線に平行な方向の寸法と言い換えてもよい)が短辺L
2と等しい。
【0036】
陽極端子13は、陰極部6の第1主面S1に沿う方向に延びて、陽極体3の第1部分1と接触している。陽極端子13の外装体11からの露出部分は、陰極端子14の第2陰極端子部14bと反対側において、第6主面S6に略平行な方向(第4主面S4に略平行な方向)に屈曲して延びた後、第5主面S5に沿う方向に屈曲して延びて、外装体11に沿って延びている。
【0037】
通常、陽極端子13および陰極端子14(第2陰極端子部14b)の露出部が設けられる、第5主面S5の側の外装体の外表面が、電解コンデンサの底面である。陽極端子13および第2陰極端子部14bは、それぞれ外部電極と電気的に接続され、電解コンデンサが電気的に接続される。
【0038】
陽極体3は、弁作用金属の焼結体であってもよい。その場合、陽極部は、弁作用金属の焼結体である陽極体3と、陽極体3の一面から延出して陽極端子13と電気的に接続する陽極ワイヤと、を有する。陽極体3は、例えば、金属粒子を焼結して得られる多孔質焼結体である。金属粒子として、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)などの弁作用金属の粒子が用いられる。2種以上の金属粒子を混合して用いてもよい。金属粒子は、2種以上の金属からなる合金であってもよい。例えば、弁作用金属と、ケイ素、バナジウム、ホウ素等とを含む合金を用いることができる。また、弁作用金属と窒素等の典型元素とを含む化合物を用いてもよい。この場合、陽極体3の表面には、誘電体層が形成され、誘電体層の少なくとも一部を覆う固体電解質層7が形成される。陽極体3の外形は、通常、略長方体であり、これに対応して、陰極部6で覆われたコンデンサ素子の外形も略直方体となる。この場合、第1主面S1~第6主面S6は、略直方体の外形を有する陰極部6の外表面であり、第6主面S6において、陽極ワイヤが陽極体3から突出する。
【0039】
陰極端子14は、第1陰極端子部(搭載部)14aと、第2陰極端子部(リード部)14bと、第3陰極端子部(側壁部)14cと、を有する。
【0040】
第1陰極端子部14aは、陰極部6の第1主面S1と対向している。第1陰極端子部14aは、第1陰極端子部14aと第1主面S1との間に介在する導電性接着材を介して、陰極部6と電気的に接続される。第1陰極端子部14aは、第2陰極端子部14bおよび第3陰極端子部14cと連続している。
【0041】
第2陰極端子部14bは、第1陰極端子部14aから屈曲しながら第1陰極端子部14aの外方に向かって延びている。第2陰極端子部14bの一部は外装体11から露出しており、露出部分は外装体の外表面に沿って延びて、外部電極との接続部分を形成している。すなわち、第2陰極端子部14bは、コンデンサ素子10を外部電極と電気的に接続するために第1陰極端子部14aから引き出される。
【0042】
第2陰極端子部14bは、第1陰極端子部14aの主面に交差する方向に屈曲した後、外装体11内で、再び第1陰極端子部14aの主面に平行な方向に屈曲している。第2陰極端子14bの外装体11からの露出部分は、第4主面S4に沿う方向に屈曲して延びた後、第5主面S5に沿う方向に屈曲して延びて、外装体11に沿って延びている。
【0043】
第3陰極端子部14cも、第2陰極端子14bと同様、第1陰極端子部14aから屈曲して第1陰極端子部14aの外方に向かって延びている。第3陰極端子部14cは、第1陰極端子部14aの主面(搭載面)に交差する方向に延在している。
図1の例では、第3陰極端子部14cは、第1主面S1に交差する第2主面S2に沿って延在している。ただし、第3陰極端子部14cの表面は、外装体11から露出することなく、外装体11(または、コンデンサ素子10)で塞がれている。第3陰極端子部14cは、射出成型の際に外装体11となる液状の樹脂を注入するときに、コンデンサ素子10に加わる応力を低減する役割を有する。
【0044】
図1において、射出成型における樹脂の注入口の位置がゲートGとして破線で示されている。第2主面S2に垂直な方向から見たとき、ゲートGは、第3陰極端子部14cと重なっている。この場合、射出成型の際にゲートGから注入される液状の樹脂は、第3陰極端子部14cに先ず衝突し、コンデンサ素子10に直接衝突することが抑制される。結果、射出成型の際にコンデンサ素子に加わる応力が低減され、誘電体被膜および固体電解質層の損傷が抑制される。結果、漏れ電流の増大が抑制され、電解コンデンサの信頼性が向上する。
【0045】
ゲートGに対応して、射出成型後の外装体の外表面には樹脂注入痕が現れる。樹脂注入痕は、凸状または凹状に湾曲した外表面を有する外装体の部分である。よって、樹脂注入痕は、第3陰極端子部14cと対向する位置にある。第3陰極端子部14cに垂直な方向(ここでは、第2主面S2に垂直な方向)から見たとき、第3陰極端子部14cと樹脂注入痕とが重なる。第3陰極端子部14cに垂直な方向から見たとき、樹脂注入痕の第3陰極端子部14cとの重なり部分は、第3陰極端子部14cに垂直な方向から見た樹脂注入痕の投影面積の50%以上であってもよく、80%以上または90%以上が好ましい。第3陰極端子部14cに垂直な方向から見たとき、樹脂注入痕の全部が、第3陰極端子部14cの輪郭よりも内側にあることが最も好ましい。
【0046】
射出成型の際にコンデンサ素子に加わる応力が低減される効果を得るとともに、金型内で樹脂が回り込み易くする観点から、第3陰極端子部14cの第1陰極端子部14aに平行な方向の延在長さXは、第1主面S1に垂直な方向から見たコンデンサ素子10の長辺寸法L1の5%~90%であってもよく、20%~80%であってもよい。
【0047】
射出成型の際、複数のゲートGから樹脂を注入してもよい。その場合、ゲートGのそれぞれに対応して、複数の第3陰極端子部14cが配置され得る。第3陰極端子部14cの数は、ゲートGの数以上であってもよい。第3陰極端子部14cの数は、樹脂注入痕の数以上であってもよい。第3陰極端子部14cの数がゲートGの数以上(樹脂注入痕の数以上)であると、射出成型で用いる金型の自由度を高め易い。第3陰極端子部14cの上記延在長さXが長い場合、1つの第3陰極端子部14cを、複数のゲートGと対向させることも可能である。複数の第3陰極端子部14cは、外装体の同じ主面に沿って延在するように配置されてもよいし、異なる主面に沿って延在するように配置されてもよい。複数の第3陰極端子部14cのうち2つが、外装体の互いに対向する主面に沿って延在するように1つずつ配置されてもよい。
【0048】
図2の例では、2つの第3陰極端子部14cが、コンデンサ素子の互いに対向する第2主面S2および第3主面S3に沿ってそれぞれが延在するように、配置される。2つの第3陰極端子部14cは、一方の第3陰極端子部14cの主面に垂直な方向(例えば、第2主面S2に垂直な方向)から見たとき、対向しないように配置される。しかしながら、金型におけるゲートGの配置を考慮して、2つの第3陰極端子部14cを、第3陰極端子部14cに垂直な方向から見て互いに対向するように配置してもよい。
【0049】
第3陰極端子部14cは、コンデンサ素子10の側面(第2主面S2~第4主面S4)と接触してもよく、接触していなくてもよい。第3陰極端子部14cは、コンデンサ素子10の側面と、導電性樹脂を介して接触していることが好ましい。
【0050】
図4~
図6に、本実施形態の電解コンデンサで用いられる陰極端子の他の例を示す。
図4Aは、
図2と同様、2つの第3陰極端子部14cを、コンデンサ素子の互いに対向する第2主面S2および第3主面S3に沿ってそれぞれが延在するように配置する場合の例である。しかしながら、
図2と異なり、2つの第3陰極端子部14cは、第3陰極端子部14cに垂直な方向から見て互いに対向している。
【0051】
図4Bは、2つの第3陰極端子部14cを、コンデンサ素子の第2主面S2に沿って延在するように配置する場合の例である。2つの第3陰極端子部14cは、第1陰極端子部14aの主面(搭載面)に交差する方向を、互いに反対方向に延在している。
【0052】
図4Cおよび
図4Dでは、4つの第3陰極端子部14cが、コンデンサ素子の互いに対向する第2主面S2および第3主面S3に沿って延在するように配置される。なお、第3主面S3に沿って延在するように配置される1つの第3陰極端子部14cは、第1陰極端子部14aで隠される位置にあり、表示されていない。第2主面S2または第3主面S3に沿って延在するように配置される2つの第3陰極端子部14cは、第1陰極端子部14aの主面(搭載面)に交差する方向を、互いに反対方向に延在している。
図4Cでは、第3陰極端子部14cに垂直な方向から見たとき、4つの第3陰極端子部14cが互いに対向しないように配置される。一方、
図4Dでは、第3陰極端子部14cに垂直な方向から見たとき、第2主面S2に沿って延在する第3陰極端子部14cが、第3主面S3に沿って延在する第3陰極端子部14cと対向するように配置される。
【0053】
図5Aおよび
図5Bは、6つの第3陰極端子部14cを、コンデンサ素子の互いに対向する第2主面S2および第3主面S3に沿って延在するように配置する場合の例である。第3陰極端子部14cのそれぞれは、第1陰極端子部14aの主面(搭載面)に交差する方向に延在している。ただし、第2主面S2または第3主面S3に沿って配置される3つの第3陰極端子部14cのうち、1つの第3陰極端子部14cは、残りの2つの第3陰極端子部14cと反対方向を延在している。
図5Aでは、第3陰極端子部14cに垂直な方向から見たとき、6つの第3陰極端子部14cが互いに対向しないように配置されている。一方、
図5Bでは、第3陰極端子部14cに垂直な方向から見たとき、第2主面S2に沿って延在する第3陰極端子部14cが、第3主面S3に沿って延在する第3陰極端子部14cと対向するように配置される。
【0054】
図6Aは、2つの第3陰極端子部14cを、第4主面S4に沿って延在するように配置する場合の例である。第2陰極端子部14bの両側において、2つの第3陰極端子部14cが、第1陰極端子部14aの主面(搭載面)に交差する方向を、互いに反対方向に延在している。
【0055】
図6Bおよび
図6Cでは、第2主面S2に沿って延在するように配置される1つの第3陰極端子部14cと、第4主面S4に沿って延在するように配置される1つの第3陰極端子部14cにより、コンデンサ素子の角部を囲むように側壁を形成している。この場合、コンデンサ素子の位置決めを精度よく行うことができるほか、射出成型に際して樹脂がコンデンサ素子の斜め方向から注入される場合においても、樹脂がコンデンサ素子と直接衝突することが抑制され、コンデンサ素子に加わる応力が低減される。結果、誘電体被膜および固体電解質層の損傷が抑制され、電解コンデンサの信頼性が向上する。
【0056】
角部を囲む側壁は、
図6Bに示すように、第2主面S2に沿って延在するように配置される1つの第3陰極端子部14cと、第4主面S4に沿って延在するように配置される1つの第3陰極端子部14cと、を接触させることにより形成してもよいし、
図6Cに示すように、第1陰極端子部14aから屈曲して第2主面S2(または、第4主面S4)に沿って延在するように配置される第3陰極端子部14cを、角部の位置でさらに第4主面S4(または、第2主面S2)に沿う方向に屈曲させることにより形成してもよい。
【0057】
図7~
図9は、本実施形態における電解コンデンサの構造の他の例を示す模式的な断面図である。各図において、第3陰極端子部(側壁部)14cの位置が示されている。また、射出成型における樹脂の注入口の位置がゲートGとして示されている。
【0058】
図7Aおよび
図7Bは、1つのコンデンサ素子を陽極端子および陰極端子に接続し、電解コンデンサを構成した例である。
図7Aでは、コンデンサ素子の下面側において、第1陰極端子部(搭載部)14aが陰極部6と電気的に接続されている。
図7Bでは、コンデンサ素子の上面側において、第1陰極端子部(搭載部)14aが陰極部6と電気的に接続されている。
【0059】
図8A~
図8Dは、複数のコンデンサ素子を積層した積層体を用いて電解コンデンサを構成した例である。複数のコンデンサ素子の陽極部(陽極引出部)が束ねられ、陽極部(陽極引出部)のそれぞれが陽極端子13と電気的に接続される。
図8Cに示すように、コンデンサ素子を積層した積層体を2つ用いて、電解コンデンサを構成してもよい。2つの積層体は、第1陰極端子部14aの一方の主面およびその反対側の主面にそれぞれ載置される。
【0060】
図8Dに示すように、複数のコンデンサ素子を積層する際に、隣接するコンデンサ素子間で積層位置をずらしてもよい。
図8Dでは、積層体内で、第1陰極端子部14aから遠いコンデンサ素子ほど陽極端子からの距離が遠い。この場合、ワイヤボンディングによる陽極端子13とコンデンサ素子との接続が容易になる。
【0061】
図9Aおよび
図9Bは、複数のコンデンサ素子を積層した積層体を用いて電解コンデンサを構成した例であり、複数のコンデンサ素子の陽極部の第1部分1(陽極引出部)のそれぞれの端面が外装体から露出し、端面において、複数の陽極部が陽極電極15と電気的に接続されている。
図9Aでは、外装体11の一方の主面において陽極部の第1部分1の端面が露出し、陽極電極15が第1部分1の露出面を含む外装体11の一方の主面を覆うことで、複数の陽極部が陽極電極15と電気的に接続されている。一方、外装体11の他方の主面において陰極部6の端面が露出し、陰極電極16が陰極部6の露出面を含む外装体11の他方の主面を覆うことで、陰極部6が陰極電極16と電気的に接続されている。陰極部6は、第1陰極端子部(搭載部)14aとも電気的に接続される。
【0062】
図9Bでは、陽極部の第1部分1の向きが反対の2種類のコンデンサ素子(第1および第2のコンデンサ素子)が交互に積層され、電解コンデンサが構成されている。外装体の一方の主面において第1のコンデンサ素子の陽極部の第1部分1(陽極引出部)の端面が露出し、陽極電極15aが第1のコンデンサ素子の陽極部の第1部分1の露出面を含む外装体11の一方の主面を覆うことで、複数の第1のコンデンサ素子の陽極部が陽極電極15aと電気的に接続されている。一方、外装体の他方の主面において第2のコンデンサ素子の陽極部の第1部分1(陽極引出部)の端面が露出し、陽極電極15bが第2のコンデンサ素子の陽極部の第1部分1の露出面を含む外装体11の他方の主面を覆うことで、複数の第2のコンデンサ素子の陽極部が陽極電極15bと電気的に接続されている。第1および第2のコンデンサ素子の陰極部6は、第1陰極端子部(搭載部)14aと電気的に接続される。
【0063】
図7および
図8の場合、コンデンサ素子の陽極部と陽極端子13との接続は、抵抗溶接、レーザ溶接、または、ワイヤボンディング等により行うことができる。抵抗溶接を行う場合、陽極端子13および/または陽極部の第1部分1(陽極引出部)に貫通孔が設けられ、貫通孔を介して抵抗溶接を行ってもよい。この場合、貫通孔の周りに電流が集中するとともに、陽極部の表面に形成されていた誘電体酸化皮膜が破壊される。一方で、溶融した金属材料が貫通孔内に留まるため、極めて容易に、かつ確実に抵抗溶接を行うことができる。また、溶接強度や信頼性に優れ、ESRが低減された電解コンデンサが得られる。
【0064】
以下、本実施形態に係る電解コンデンサの各構成要素について、詳細に説明する。
【0065】
(陽極体3)
陽極体は、弁作用金属、弁作用金属を含む合金、および弁作用金属を含む化合物(金属間化合物など)などを含むことができる。これらの材料は一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて使用できる。弁作用金属としては、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタンなどを用いることができる。陽極体は、弁作用金属、弁作用金属を含む合金、または弁作用金属を含む化合物の箔であってもよく、弁作用金属、弁作用金属を含む合金、または弁作用金属を含む化合物の多孔質焼結体であってもよい。
【0066】
陽極体に金属箔を用いる場合、通常、表面積を増やすため、陽極箔の少なくとも第2部分の表面には、多孔質部が形成される。第2部分は、芯部と、芯部の表面に形成された多孔質部とを有する。多孔質部は、陽極箔の少なくとも第2部分の表面をエッチングなどにより粗面化することにより形成してもよい。第1部分の表面に所定のマスキング部材を配置した後、エッチング処理などの粗面化処理を行うことも可能である。一方で、陽極箔の表面の全面をエッチング処理などにより粗面化処理することも可能である。前者の場合、第1部分の表面には多孔質部を有さず、第2部分の表面に多孔質部を有する陽極箔が得られる。後者の場合、第2部分の表面に加え、第1部分の表面にも多孔質部が形成される。エッチング処理としては、公知の手法を用いればよく、例えば、電解エッチングが挙げられる。マスキング部材は、特に限定されないが、樹脂などの絶縁体が好ましい。マスキング部材は、固体電解質層の形成前に取り除かれるが、導電性材料を含む導電体であってもよい。
【0067】
陽極箔の表面の全面を粗面化処理する場合、第1部分の表面に多孔質部を有する。このため、多孔質部と外装体の密着性が十分でなく、多孔質部と外装体との接触部分を通じて電解コンデンサ内部に空気(具体的には、酸素および水分)が侵入する場合がある。これを抑制するため、多孔質に形成された第1部分を予め圧縮し、多孔質部の孔をつぶしておいてもよい。これにより、外装体から露出する第1端部より多孔質部を介した電解コンデンサ内部への空気の侵入、および当該空気の侵入による電解コンデンサの信頼性の低下を抑制できる。
【0068】
(陰極部)
陰極部は、誘電体層の少なくとも一部を覆う固体電解質層と、固体電解質層の少なくとも一部を覆う陰極引出層とを備える。
【0069】
(固体電解質層7)
固体電解質層は、例えば、導電性高分子を含む。導電性高分子としては、例えば、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリアセン、ポリチオフェンビニレン、ポリフルオレン、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルフェノール、ポリピリジン、あるいは、これらの高分子の誘導体などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。また、導電性高分子は、2種以上のモノマーの共重合体でもよい。これらのうちでは、導電性に優れる点で、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロールなどが好ましい。なかでも、撥水性に優れる点で、ポリピロールが好ましい。
【0070】
上記導電性高分子を含む固体電解質層は、例えば、原料モノマーを誘電体層上で化学重合および/または電解重合することにより、形成される。あるいは、上記導電性高分子が溶解した溶液、または、導電性高分子が分散した分散液を、誘電体層に塗布することにより形成される。固体電解質層は、1層または2層以上の固体電解質層から構成されている。固体電解質層7が2層以上から構成されている場合、各層に用いられる導電性高分子の組成や形成方法(重合方法)等は異なっていてもよい。固体電解質層は、マンガン化合物を含んでもよい。
【0071】
(陰極引出層)
陰極引出層は、例えば、カーボン層8および銀ペースト層9を備える。カーボン層は、導電性を有していればよく、例えば、黒鉛などの導電性炭素材料を用いて構成することができる。カーボン層は、例えば、カーボンペーストを固体電解質層の表面の少なくとも一部に塗布して形成される。銀ペースト層には、例えば、銀粉末とバインダ樹脂(エポキシ樹脂など)とを含む組成物を用いることができる。銀ペースト層は、例えば、銀ペーストをカーボン層の表面に塗布して形成される。なお、陰極引出層の構成は、これに限られず、集電機能を有する構成であればよい。
【0072】
(陽極端子)
陽極端子13の材質は、電気化学的および化学的に安定であり、導電性を有するものであれば特に限定されず、金属であっても非金属であってもよい。その形状は、例えば、長尺かつ平板状である。陽極端子の厚み(陽極端子の主面間の距離)は、低背化の観点から、25μm以上200μm以下が好ましく、25μm以上100μm以下がより好ましい。
【0073】
陽極端子13は、導電性接着材やはんだにより、陽極ワイヤ(または、陽極体3として箔を用いる場合、陽極引出部)に接合されてもよいし、抵抗溶接、レーザ溶接またはワイヤボンディングにより、陽極ワイヤ(または陽極引出部)に接合されてもよい。導電性接着材は、例えば後述する熱硬化性樹脂と炭素粒子や金属粒子との混合物である。
【0074】
(陰極端子)
陰極端子14の第1陰極端子部(搭載部)14aは、陰極部6と電気的に接続している。陰極端子14の材質も、電気化学的および化学的に安定であり、導電性を有するものであれば、特に限定されず、金属であっても非金属であってもよい。その形状も特に限定されず、例えば、長尺かつ平板状である。陰極端子の厚みは、低背化の観点から、25以上200μm以下が好ましく、25以上100μm以下がより好ましい。第1陰極端子部14aは、例えば、導電性接着材12を介して、陰極部6に接着される。第1陰極端子部14aに加えて、第3陰極端子部(側壁部)14cを、導電性接着材12を介して、陰極部6に接着してもよい。
【0075】
<外装体>
外装体11は、陽極端子13と陰極端子14とを電気的に絶縁するために設けられており、絶縁性の材料から構成されている。外装体11は、例えば、熱硬化性樹脂の硬化物を含む。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、ポリイミド、不飽和ポリエステル等が挙げられる。
【0076】
≪電解コンデンサの製造方法≫
本実施形態に係る電解コンデンサは、陽極部および陰極部を備えるコンデンサ素子を準備する工程と、陽極端子および陰極端子を準備する工程と、コンデンサ素子の陽極部を陽極端子と接続し、コンデンサ素子の陰極部を陰極端子と接続する工程と、陽極端子の一部、および、陰極端子の一部が露出するように、射出成型によりコンデンサ素子を外装体で封止する工程と、を有する。陰極端子は、コンデンサ素子が搭載される搭載部と、搭載部から屈曲して、搭載部の主面に交差する方向に延在する側壁部と、を有する。外装体で封止する工程では、外装樹脂を金型に流し入れるゲートを、コンデンサ素子の側壁部と対向させる。
【0077】
以下に、
図1に示す電解コンデンサ100の製造を例として、本実施形態に係る電解コンデンサの製造方法の一例を説明する。
【0078】
(1)準備工程
第1に、陽極部および陰極部を備えるコンデンサ素子10を準備する。
先ず、表面に誘電体層が形成された陽極体を準備する。より具体的には、一方の端部を含む第1部分と一方の端部とは反対側の他方の端部を含む第2部分とを備え、少なくとも第2部分の表面に誘電体層が形成された陽極体が準備される。
【0079】
陽極体の少なくとも第2部分の表面には、多孔質部が形成される。多孔質部を形成する際には、陽極体の表面に凹凸を形成できればよく、例えば、陽極箔の表面をエッチング(例えば、電解エッチング)などにより粗面化することにより行ってもよい。
【0080】
誘電体層は、陽極体を化成処理により形成すればよい。化成処理は、例えば、陽極体を化成液中に浸漬することにより、陽極体の表面に化成液を含浸させ、陽極体をアノードとして、化成液中に浸漬したカソードとの間に電圧を印加することにより行うことができる。陽極体の表面に多孔質部を有する場合、誘電体層は、多孔質部の表面の凹凸形状に沿って形成される。
【0081】
続いて、固体電解質層7を形成する。本実施形態では、導電性高分子を含む固体電解質層7の形成工程を説明する。
導電性高分子を含む固体電解質層7は、例えば、誘電体層が形成された陽極体3に、モノマーやオリゴマーを含浸させ、その後、化学重合や電解重合によりモノマーやオリゴマーを重合させる方法、あるいは、誘電体層が形成された陽極体3に、導電性高分子の溶液または分散液を含浸し、乾燥させることにより、誘電体層上の少なくとも一部に形成される。
【0082】
最後に、固体電解質層7の表面に、カーボンペーストおよび銀ペーストを順次、塗布することにより、カーボン層8と銀ペースト層9とで構成される陰極引出層を形成する。陰極引出層の構成は、これに限られず、集電機能を有する構成であればよい。
以上の方法により、コンデンサ素子10が準備される。
【0083】
第2に、陽極端子13および陰極端子14を準備する。
1枚の導電性の板材を、陽極端子および陰極端子の外形に沿った形状に打ち抜き、屈曲させる。これにより、第1陰極端子部(搭載部)14a、第2陰極端子部(リード部)14b、および第3陰極端子部(側壁部)14cを有する陰極端子14を得る。
【0084】
(2)リードフレーム接合工程
陰極部6(銀ペースト層9)の所定の位置に導電性接着材を塗布する。
陽極端子13と陰極端子14とを所定の位置に配置して、陽極体3の第1部分が陽極端子13と接触し、陰極部6が第1陰極端子部14aと接触するように、コンデンサ素子10を載置する。このとき、コンデンサ素子10は、第3陰極端子部14cに挟まれる空間に位置決めされ得る。
【0085】
次に、陽極体3の第1部分と陽極端子との接触部を、レーザ溶接や抵抗溶接などにより接合する。このとき、陰極端子14(第1陰極端子部14a)の少なくとも一部を、導電性接着材を介して陰極引出層に接着する。加えて、第3陰極端子部14cの少なくとも一部を、導電性接着材を介して陰極引出層に接着してもよい。接着の際、導電性接着材の一部が第3陰極端子部14cと陰極引出層との間に存在するようにしてもよい。導電性接着材12の塗布量を多くすることで、導電性接着材の一部は第1陰極端子部14aと陰極層5の間の空間から溢れ、溢れた分を第3陰極端子部14cと陰極引出層との間に介在させることができる。
【0086】
(3)封止工程
陽極端子13および陰極端子14が接続されたコンデンサ素子10を金型に収容し、例えばトランスファー成型法等により、外装樹脂(外装体11の材料。例えば、未硬化の熱硬化性樹脂およびフィラー)を金型に流し入れ、コンデンサ素子10を封止する。成型の条件は特に限定されず、使用される熱硬化性樹脂の硬化温度等を考慮して、適宜、時間および温度条件を設定すればよい。このとき、液状の外装樹脂は、第3陰極端子部14cと衝突し、コンデンサ素子10と直接衝突しないように、金型に設けられた樹脂注入口(ゲート)が、コンデンサ素子の側壁部と対向した状態で、樹脂注入口から流し入れられる。
【0087】
このとき、陽極端子13の一部および陰極端子14の第2陰極端子部14bの一部を金型から露出させる。これにより、陽極端子13の一部および第2陰極リード部14bの一部が、外装体11から露出する。
【0088】
次に、外装体から露出した陽極端子13、および第2陰極端子部14bの一部を、外装体の外表面に沿って屈曲させる。この工程により、第2陰極端子部14bは、第1主面S1に沿う方向から第4主面S4に沿う方向に屈曲され、さらに第4主面に沿う方向から第5主面に沿う方向に屈曲される。
【0089】
以上の方法により、電解コンデンサ100が製造される。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明に係る電解コンデンサは、漏れ電流が少なく、信頼性に優れるため、様々な用途に利用できる。
【符号の説明】
【0091】
100:電解コンデンサ
10:コンデンサ素子
1:第1部分(陽極引出部)
1a:第1端部
2:第2部分(陰極形成部)
2a:第2端部
3:陽極体
4:芯部
5:多孔質部
6:陰極部
7:固体電解質層
8:カーボン層
9:銀ペースト層
11:外装体
13:陽極端子
14:陰極端子
14a:第1陰極端子部(搭載部)
14b:第2陰極端子部(リード部)
14c:第3陰極端子部(側壁部)
15、15a、15b:陽極電極
16:陰極電極