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  • 特許-非水電解質二次電池の充電方法 図1
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  • 特許-非水電解質二次電池の充電方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池の充電方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/44 20060101AFI20241025BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20241025BHJP
   H02J 7/10 20060101ALI20241025BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20241025BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20241025BHJP
【FI】
H01M10/44 P
H01M10/48 P
H02J7/10 H
H02J7/10 B
H01M4/505
H01M4/525
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022503703
(86)(22)【出願日】2021-02-25
(86)【国際出願番号】 JP2021007145
(87)【国際公開番号】W WO2021172447
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2023-12-13
(31)【優先権主張番号】P 2020031458
(32)【優先日】2020-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】夏井 竜一
(72)【発明者】
【氏名】日比野 光宏
(72)【発明者】
【氏名】名倉 健祐
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/125649(WO,A1)
【文献】特開2000-261905(JP,A)
【文献】特開2018-136157(JP,A)
【文献】特開2017-11849(JP,A)
【文献】国際公開第2018/221423(WO,A1)
【文献】特開2012-89470(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/44
H01M 10/48
H01M 4/505
H01M 4/525
H02J 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム過剰型正極活物質を含む非水電解質二次電池の充電方法であって、
設定電圧V1以上の所定の電圧V2まで定電流充電した後に、所定の電圧V3まで定電流放電を行い、
V3<V1≦V2であり、
V1のときの電池容量C1、V2のときの電池容量C2、及び、V3のときの電池容量C3が、0.99C1≦C3<C2を満たす、充電方法。
【請求項2】
前記リチウム過剰型正極活物質が、一般式LiMnNiMe2-x-y-z(式中、1≦x≦1.2、0.4≦y≦0.8、0≦z≦0.4、0<b≦0.2、1.9≦a+b≦2.1、MeはCo、Ti、Al、Si、Sr、Nb、W、Mo、P、Ca、Mg、Sb、Na、B、V、Cr、Fe、Cu、Zn、Ge、Zr、Ru、K、及びBiから選択される少なくとも1種の元素)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物を含む、請求項1に記載の充電方法。
【請求項3】
V1がリチウム電極基準で4.4V以上である、請求項1又は2に記載の充電方法。
【請求項4】
V2がリチウム電極基準で4.9V以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の充電方法。
【請求項5】
C3がSOC90%以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の充電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は非水電解質二次電池の充電方法に関し、特にリチウム過剰型正極活物質を含む非水電解質二次電池の充電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従前から、リチウムイオン電池等の二次電池用の正極活物質として、リチウム遷移金属複合酸化物が広く使用されており、高容量の二次電池向けとして、リチウムを多く含有したリチウム過剰型正極活物質が注目されている。特許文献1には、リチウム過剰型正極活物質を含む電池の膨れを抑制しつつ、良好な放電容量と初期充電時間の短縮を実現するために、定電流充電後に定電圧充電する充電方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-61874号公報
【発明の概要】
【0004】
リチウム過剰型正極活物質を含む正極では、遷移金属だけではなく酸素等のアニオンのレドックスも利用するため、表面近傍には不安定な酸素(O)が存在することがある。一定以上の高い電圧まで充電後には、この傾向が顕著であり、正極や電解質が劣化しやすい。二次電池は充放電を繰り返して使用されるので、充電毎に高電位で保持されると電池が劣化し、耐久性が悪化する。特許文献1に開示された充電方法は、電池の耐久性の点で未だ改善の余地がある。
【0005】
本開示の一態様である充電方法は、リチウム過剰型正極活物質を含む非水電解質二次電池の充電方法である。設定電圧V1以上の所定の電圧V2まで定電流充電した後に、所定の電圧V3まで定電流放電を行い、V3<V1≦V2であり、V1のときの電池容量C1、V2のときの電池容量C2、及び、V3のときの電池容量C3が、0.99C1≦C3<C2を満たすことを特徴とする。
【0006】
本開示の一態様である充電方法によれば、非水電解質二次電池において高容量と高耐久性を両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態の一例における二次電池と放電充放電制御装置との構成ブロック図である。
図2図2は、実施形態の一例である充電方法を示す図である。
図3図3は、実施形態の他の一例である充電方法を示す図である。
図4図4は、図2に示す充電方法の処理フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
まず、本実施形態の基本原理について説明する。従前から、二次電池を充電する際には、定電流充電を行い設定電圧に到達した時点で充電を停止する方法が行われている。しかし、設定電圧がリチウム電極基準で4Vを超えるような高電圧の状態までリチウム過剰型正極活物質を含む正極を用いた二次電池に当該方法で充電すると、不安定な酸素(O)が発生して正極や電解質を劣化させるため、充放電の繰り返しにより電池容量が低下してしまう。本発明者らは、かかる課題について鋭意検討した結果、リチウム過剰型正極活物質を含む二次電池の充放電において、電池容量(mAh/g)に対する電圧(V)のヒステリシス特性が他のNCA(Ni-Co-Al)系正極活物質等に比較して大きいことに注目し、高容量と高耐久性を両立することができる、以下に示す態様の充電方法を想到するに至った。
【0009】
本開示の一態様である充電方法は、リチウム過剰型正極活物質を含む非水電解質二次電池の充電方法である。設定電圧V1以上の所定の電圧V2まで定電流充電した後に、所定の電圧V3まで定電流放電を行い、V3<V1≦V2であり、V1のときの電池容量C1、V2のときの電池容量C2、及び、V3のときの電池容量C3が、0.99C1≦C3<C2を満たすことを特徴とする。
【0010】
次に、本実施形態の構成について説明する。図1は、実施形態の一例における二次電池10と放電充放電制御装置12との構成ブロック図である。
【0011】
二次電池10は、正極と負極との間の非水電解質を介してリチウムイオンが移動することにより充放電が行われるリチウムイオン二次電池であって、正極活物質を含む正極合剤層を有する正極と、負極活物質を含む負極合剤層を有する負極とを含む。二次電池10の外形は特に限定されないが、例えば円筒形、角形、コイン形等であってもよく、金属層及び樹脂層を含むラミネートシートで構成された電池ケースであってもよい。
【0012】
二次電池10に含まれる正極は、例えば金属箔等の正極集電体と、正極集電体上に形成された正極合剤層とで構成される。正極集電体には、アルミニウムなどの正極の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。正極合剤層は、例えば、正極活物質、結着剤、導電剤等を含む。正極は、例えば、正極活物質、結着剤、導電剤等を含む正極合剤スラリーを正極集電体上に塗布、乾燥して正極合剤層を形成した後、この正極合剤層を圧延することにより作製できる。
【0013】
正極活物質としては、リチウム過剰型正極活物質が用いられる。リチウム過剰型正極活物質は、一般式LiMnNiMe2-x-y-z(式中、1≦x≦1.2、0.4≦y≦0.8、0≦z≦0.4、0<b≦0.2、1.9≦a+b≦2.1、MeはCo、Ti、Al、Si、Sr、Nb、W、Mo、P、Ca、Mg、Sb、Na、B、V、Cr、Fe、Cu、Zn、Ge、Zr、Ru、K、及びBiから選択される少なくとも1種の元素)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物を含んでもよい。リチウム過剰型正極活物質を含む二次電池10は、充放電における電池容量に対する電圧のヒステリシス特性が他のNCA(Ni-Co-Al)系正極活物質等に比較して大きいので、後述する本開示の一態様である充電方法を用いれば、高容量と高耐久性を両立することができる。
【0014】
導電剤は、例えば、カーボンブラック(CB)、アセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック、黒鉛等のカーボン系粒子などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。結着剤は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のフッ素系樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
二次電池10に含まれる負極は、例えば金属箔等の負極集電体と、負極集電体上に形成された負極合剤層とを備える。負極集電体には、銅などの負極の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。負極合剤層は、例えば、負極活物質、増粘材、結着材等を含む。負極は、例えば、負極活物質、増粘材、結着材等を含む負極合剤スラリーを負極集電体上に塗布、乾燥して負極合剤層を形成した後、この負極合剤層を圧延することにより作製できる。
【0016】
負極活物質としては、リチウムイオンの吸蔵・放出が可能な材料であれば特に限定されないが、例えば、黒鉛、難黒鉛性炭素、易黒鉛性炭素、繊維状炭素、コークス、カーボンブラックなどの炭素材料を用いてもよい。また、負極活物質としては、例えば、シリコン、スズ及びこれらを主とする合金や酸化物などの非炭素材料を用いてもよい。
【0017】
結着剤としては、例えば、正極の場合と同様にPTFE等を用いてもよく、スチレン-ブタジエン共重合体(SBR)又はこの変性体等を用いてもよい。増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)又はこの変性体(Na塩などの塩も含む)等を用いてもよい。
【0018】
二次電池10に含まれる非水電解質は、非水溶媒と、電解質塩とを含む。非水溶媒(有機溶媒)としては、例えば、カーボネート類、ラクトン類、エーテル類、ケトン類、エステル類等を用いることができ、これらの溶媒は2種以上を混合して用いることができる。電解質塩としては、例えば、LiPF、LiBF、LiCFSO等及びこれらの混合物を用いることができる。非水溶媒に対する電解質塩の溶解量は、例えば、0.5~2.0mol/Lとすることができる。
【0019】
図1において、放電充放電制御装置12は、二次電池10の電圧、電池容量等を計測しつつ、二次電池10の充電及び放電を制御する。放電充放電制御装置12は、プロセッサ及びメモリを備え、機能ブロックとして計測部120と、記録部122と、制御部124とを含む。
【0020】
計測部120は、二次電池10の電圧及び電池容量を計測する。計測部120は、充電開始からの時間を計測してもよい。
【0021】
記録部122は、計測部120が計測した二次電池10の電圧と電池容量を記録する。記録部122は、充電開始からの時間を記録してもよい。
【0022】
制御部124は、二次電池10の充電及び放電を制御する。制御部124は、計測部120で計測した二次電池10の電圧が所定の電圧に達した時に、定電流充電を停止して定電流放電を開始する。その後、制御部124は、所定の電圧に達した時に、定電流放電を停止する。
【0023】
次に、具体的な充電方法について説明する。図2は実施形態の一例である充電方法を示す図である。
【0024】
充電前の二次電池10は、一定の電圧及び一定の電池容量を有したP0の状態にある。定電流充電を開始すると、二次電池10は、P0の状態から電池容量が増加し、電圧が上昇し、P1の状態に達する。P1の状態において、電圧は設定電圧V1で、電池容量はC1である。設定電圧V1近傍は、高電圧により不安定な酸素(O)が発生しやすい状態である。
【0025】
V1は、リチウム電極基準で4.4V以上(以下、以下リチウム電極基準の電位をvsLiで表すことがある)であってもよい。これにより、電池容量C1が大きくなるので、大容量(C3)で、且つ、電圧を下げた(V3)状態の二次電池10を得ることができる。
【0026】
次に、設定電圧V1に達した後も設定電圧V1以上の所定の電圧V2まで定電流充電を行い、二次電池10はP2の状態に達する。P2の状態において、電池容量はC2である。
【0027】
V2は、リチウム電極基準で4.9V以下であってもよい。V2>4.9VvsLiでは、正極や電解液にダメージが残ってしまい、耐久性が劣化する場合がある。
【0028】
さらに、所定の電圧V3まで定電流放電を行い、二次電池10はP3の状態に達する。P3の状態において、電池容量はC3である。上記の関係から、V1、V2、及びV3は、V3<V1<V2を満たす。V3<V1から、P3の状態の二次電池10は、P1の状態の二次電池10よりも、不安定な酸素(O)の発生を抑制できる。二次電池10がP2の状態に至ってからできるだけ速やかに定電流放電を開始することが好ましく、P2の状態に保持する時間は、例えば、1分間以下としてもよく、30秒以下が好ましく、10秒以下がより好ましい。
【0029】
また、リチウム過剰型正極活物質を含む二次電池の充放電においては電池容量に対する電圧が比較的大きなヒステリシスを有することから、P3の状態の二次電池10の電池容量C3を、P1の状態の二次電池10における電池容量C1と略同等かそれ以上とすることができる。換言すれば、C1、C2、及びC3が0.99C1≦C3<C2を満たすようにすることができる。これにより、充電終了時(P3の状態)の二次電池10の電池容量を大きくしつつ、電圧を下げることができるので、電池の耐久性が向上する。
【0030】
C3は、SOC90%以上が好ましく、SOC95%以上がさらに好ましい。充電終了時(P3の状態)の二次電池10が満充電に近い方が、上記の効果が顕著となる。
【0031】
図3は実施形態の他の一例である充電方法を示す図である。
【0032】
充電前の二次電池10は、図2と同様に一定の電圧及び一定の電池容量を有したP0の状態にあり、定電流充電により、電圧が設定電圧V1で電池容量がC1のP1の状態に達する。設定電圧V1近傍は、高電圧により不安定な酸素(O)が発生しやすい状態である。図3に例示する方法においては、図2の場合と異なり、設定電圧V1からV2まで定電流充電せずに、所定の電圧V3まで定電流放電を行い、二次電池10はP3の状態に達する。即ち、V1、V2、及びV3は、V3<V1=V2を満たす。V3<V1から、P3の状態の二次電池10は、P1の状態の二次電池10よりも、不安定な酸素(O)の発生を抑制できる。ここで、4.4VvsLi≦V1(V2)≦4.9VvsLiであってもよい。
【0033】
また、図3に例示する方法においても図2の場合と同様に、C1、C2、及びC3が0.99C1(C2)≦C3<C1(C2)を満たすようにすることができる。これにより、充電終了時(P3の状態)の二次電池10の電池容量を大きくしつつ、電圧を下げることができるので、電池の耐久性が向上する。ここで、C3は、SOC90%以上が好ましく、SOC95%以上がさらに好ましい。
【0034】
図4は、図2に示す充電方法の処理フローチャートである。
【0035】
まず、計測部120で電圧及び電池容量を計測しながら、制御部124により二次電池10を設定電圧V1まで定電流充電する(S100)。また、二次電池10が電圧V1になった時の電池容量C1を記録部122に記録する(S102)。同時に充電開始からの時間t1を記録部122に記録してもよい。
【0036】
さらに、計測部120で電圧及び電池容量を計測しながら、制御部124により二次電池10を所定の電圧V2まで定電流充電する(S104)。また、二次電池10が電圧V2になった時の電池容量C2を記録部122に記録する(S106)。同時に充電開始からの時間t2を記録部122に記録してもよい。
【0037】
その後、計測部120で電圧及び電池容量を計測しながら、制御部124により二次電池10を所定の電圧V3まで定電流放電する(S108)。また、二次電池10が電圧V3になった時の電池容量C3を記録部122に記録する(S110)。同時に充電開始からの時間t3を記録部122に記録してもよい。
【0038】
上記の工程によって、P3の状態の二次電池10が得られる。P3の状態の二次電池10が使用(放電)され、初期のP0の状態に戻った後には、上記の工程を再度行うことで、P3の状態の二次電池10を得ることができる。この時、計測部120による電圧及び電池容量の計測に代えて、記録部122に記録したt1、t2、及びt3を用いて、二次電池10の充電を行ってもよい。
【0039】
図3に示す充電方法についても、図4と同様のフローチャートで処理することができる。
【0040】
<実施例>
以下、実施例により本開示をさらに説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0041】
<実施例1>
[正極の作製]
一般式Li1.1166Mn0.556Ni0.2781.940.06で表される組成を有する正極活物質と、アセチレンブラックと、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを、92:5:3の質量比で混合し、分散媒としてN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を用いて、正極合剤スラリーを調製した。次に、この正極合剤スラリーをアルミニウム箔からなる正極芯体の表面に塗布し、塗膜を乾燥、圧縮した後、所定の電極サイズに切断し、正極芯体上に正極合剤層が形成された正極を作製した。
【0042】
[非水電解質の調製]
フルオロエチレンカーボネート(FEC)と、3,3,3-トリフルオロプロピオン酸メチル(FMP)とを、1:3の質量比で混合した混合溶媒に、LiPFを1mol/Lの濃度で溶解して、非水電解質を調製した。
【0043】
[試験セルの作製]
上記正極及びLi金属製の対極にリード線をそれぞれ取り付け、ポリオレフィン製のセパレータを介して正極と対極を対向配置することにより、電極体を作製した。この電極体及び上記非水電解質を、アルミニウムラミネートフィルムで構成された外装体内に封入して、試験セルを作製した。試験セルに、25℃の温度環境下、0.5Itの定電流で、電池電圧が3.0VvsLi(V0)になるまで定電流充電を行い、この状態を初期状態とした。
【0044】
[サイクル試験後のエネルギー密度維持率の評価]
上記の初期状態の試験セルについて、下記サイクル試験を行なった。サイクル試験の1サイクル目の放電容量と、25サイクル目の放電容量を求め、下記式により、容量維持率を算出し、容量維持率に放電時の平均電圧Vaveを掛けてエネルギー密度維持率を算出した。
【0045】
容量維持率(%)=(25サイクル目放電容量÷1サイクル目放電容量)×100
エネルギー密度維持率(%)=容量維持率×平均電圧Vave
<サイクル試験>
まず、初期状態の試験セルに、25℃の温度環境下、電池電圧が設定電圧4.7VvsLi(V1)以上の4.75VvsLi(V2)になるまで定電流充電を行い、さらに、0.5Itの定電流で、電池電圧が4.5VvsLiになるまで定電流放電を行った。その後、1Itの定電流で電池電圧が3.0VvsLi(V0)になるまで定電流放電を行った。この充放電サイクルを25サイクル繰り返した。
【0046】
<実施例2~4>
V1、V2及びV3を表1のように変更したこと以外は、実施例1と同様にして試験セルの評価を行った。
【0047】
<比較例1>
電池電圧が設定電圧4.7VvsLi(V1)になるまで定電流充電を行った。その後、1Itの定電流で電池電圧が3.0VvsLi(V0)になるまで定電流放電を行った。この充放電サイクルを25サイクル繰り返した。
【0048】
<比較例2>
V1を4.6VvsLiに変更したこと以外は、比較例1と同様にして試験セルの評価を行った。
【0049】
表1に、実施例及び比較例の試験セルのエネルギー密度維持率の結果をまとめた。また、実施例1及び2のエネルギー密度維持率を比較例1のエネルギー密度維持率を100として相対値で示し、実施例3及び4のエネルギー密度維持率を比較例2のエネルギー密度維持率を100として相対値で示した。表1には、実施例及び比較例のP1、P2、及びP3の状態の試験セルにおける電圧(V1、V2、V3)と電池容量(C1、C2、C3)も併せて示す。
【0050】
【表1】
【0051】
実施例1及び2の試験セルは、比較例1の試験セルに比べて、エネルギー密度維持率が高くなり、実施例3及び4の試験セルは、比較例2の試験セルに比べて、エネルギー密度維持率が高くなった。
【符号の説明】
【0052】
10 二次電池
12 放電充放電制御装置
120 計測部
122 記録部
124 制御部
図1
図2
図3
図4