(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】電解コンデンサおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 9/048 20060101AFI20241025BHJP
H01G 4/30 20060101ALI20241025BHJP
H01G 9/00 20060101ALI20241025BHJP
H01G 9/008 20060101ALI20241025BHJP
H01G 9/012 20060101ALI20241025BHJP
H01G 9/08 20060101ALI20241025BHJP
【FI】
H01G9/048 F
H01G4/30 201P
H01G4/30 311Z
H01G9/00 290E
H01G9/008 303
H01G9/012 305
H01G9/08 C
(21)【出願番号】P 2023020949
(22)【出願日】2023-02-14
(62)【分割の表示】P 2019545621の分割
【原出願日】2018-09-27
【審査請求日】2023-02-15
(31)【優先権主張番号】P 2017189037
(32)【優先日】2017-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017189038
(32)【優先日】2017-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017189039
(32)【優先日】2017-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 慎也
(72)【発明者】
【氏名】梶村 将弘
【審査官】鈴木 駿平
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-094474(JP,A)
【文献】特開2017-098297(JP,A)
【文献】特開2003-086459(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/30
H01G 9/00-9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコンデンサ素子が積層された積層体を備える電解コンデンサであって、
前記コンデンサ素子は、
第1端部を含む第1部分および第2端部を含む第2部分を有する陽極箔と、
少なくとも前記第2部分の表面に形成された誘電体層と、
前記誘電体層の少なくとも一部を覆う陰極部と、を備え、
前記複数の前記コンデンサ素子は、前記第1部分が同じ向きで重なり合うように積層されており、
前記電解コンデンサは、さらに
前記積層体を封止する絶縁性の外装体と、
前記積層体に電気的に接続された
陽極側の外部電極
および陰極側の外部電極と、
前記複数のコンデンサ素子のうち、隣接する前記コンデンサ素子の間における前記第1部分側に配置されたスペーサと、を備え、
前記スペーサは、前記隣接する前記コンデンサ素子のそれぞれの前記第1部分に接触し、
前記隣接する前記コンデンサ素子のそれぞれの前記陰極部と前記スペーサとの間には、前記外装体の一部が介在し、
前記第1端部の端面と前記スペーサの端面とが、それぞれ前記外装体
の第1側面から露出し、前記
陽極側の外部電極と接触し
、
前記陰極側の外部電極は、前記外装体の前記第1側面とは反対側の第2側面に形成され、前記陰極部と電気的に接続している、電解コンデンサ。
【請求項2】
前記コンデンサ素子は、前記第1部分および前記第2部分にそれぞれ多孔質部を有し、
前記スペーサは、前記隣接する前記コンデンサ素子のそれぞれの前記第1部分の前記多孔質部に、前記多孔質部が圧縮された状態で接合されている、請求項1に記載の電解コンデンサ。
【請求項3】
前記スペーサは、導電性を有する、請求項1または2に記載の電解コンデンサ。
【請求項4】
前記コンデンサ素子は、前記第1部分と前記陰極部とを隔離する絶縁部材を備え、
前記絶縁部材は、前記第1端部側の端部Aおよび前記第2部分側の端部Bを有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の電解コンデンサ。
【請求項5】
前記絶縁部材および前記外装体は、互いに同一の樹脂を含む、請求項4に記載の電解コンデンサ。
【請求項6】
前記外装体はフィラーを含み、
前記絶縁部材はフィラーを含まない、請求項
4または5に記載の電解コンデンサ。
【請求項7】
前記陽極箔は、多孔質部を有し、
前記絶縁部材は、前記多孔質部の表面の凹凸を埋めるように形成されている、請求項4または5に記載の電解コンデンサ。
【請求項8】
前記複数の前記コンデンサ素子において、積層方向で隣り合う前記第1部分は離間しており、その間に前記外装体の一部が介在している、請求項1~7のいずれか1項に記載の電解コンデンサ。
【請求項9】
前記外部電極は、前記外装体から露出する前記第1端部の端面とともに前記外装体の表面の一部を覆う第1電極層と、前記第1電極層の表面に形成された第2電極層と、を有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の電解コンデンサ。
【請求項10】
前記第1電極層は、金属層であり、
前記第2電極層は、導電性樹脂層である、請求項9に記載の電解コンデンサ。
【請求項11】
電解コンデンサの製造方法であって、
前記電解コンデンサは、
複数のコンデンサ素子の積層体と、
前記積層体を封止する絶縁性の外装体と、
前記積層体に電気的に接続された
陽極側の外部電極
および陰極側の外部電極と、
前記複数のコンデンサ素子のうち、隣接する前記コンデンサ素子の間に配置されたスペーサと、を備え、
前記製造方法は、下記の第1工程および第2工程を含む、前記複数のコンデンサ素子を準備する工程と、
前記第1工程:一方の端部を含む第1部分と前記一方の端部とは反対側の他方の端部を含む第2部分とを備え、少なくとも前記第2部分の表面に誘電体層が形成された陽極箔を準備する工程、および
前記第2工程:前記誘電体層の少なくとも一部を覆う陰極部を形成して、コンデンサ素子を得る工程、
前記複数のコンデンサ素子を
、前記第1部分が同じ向きで重なり合うように、積層して前記積層体を得る積層工程と、
前記積層体を前記外装体で覆う第3工程と、
前記第3工程の後、前記一方の端部側において、前記第1部分の端面を形成して、前記外装体
の第1側面から露出させる第4工程と、
前記第1部分の端面を前記
陽極側の外部電極と接触させる第5工程と、
前記陰極側の外部電極を、前記外装体の前記第1側面とは反対側の第2側面に形成し、前記陰極部と電気的に接続させる第7工程と、
前記第3工程に先立って、前記積層工程において前記複数のコンデンサ素子が積層される際または前記積層体が形成された後に、前記スペーサを、前記隣接する前記コンデンサ素子の間における前記第1部分側に配置する第8工程と、
を含み、
前記第8工程において、前記スペーサを、前記隣接する前記コンデンサ素子のそれぞれの前記第1部分に接触するように配置し、
前記第3工程において、前記隣接する前記コンデンサ素子のそれぞれの前記陰極部と前記スペーサとの間に、前記外装体の一部が介在するように前記外装体の材料を充填し、
前記第4工程において、前記陽極箔および前記スペーサを前記外装体とともに部分的に除去して、前記第1部分の端面および前記スペーサの端面を前記外装体から露出させ、
前記第5工程において、前記第1部分の端面と前記スペーサの端面とを前記外部電極に接触させる、電解コンデンサの製造方法。
【請求項12】
前記第1工程は、前記第1部分および前記第2部分にそれぞれ多孔質部を形成する工程と、少なくとも前記第2部分の前記多孔質部の表面に前記誘電体層を形成する工程とを含み、
前記第8工程では、前記スペーサは、前記隣接する前記コンデンサ素子のそれぞれの前記第1部分の前記多孔質部に、前記多孔質部が圧縮された状態で接合されている、請求項11に記載の電解コンデンサの製造方法。
【請求項13】
前記スペーサは、導電性を有する、請求項11または12に記載の電解コンデンサの製造方法。
【請求項14】
前記外部電極は、第1電極層および第2電極層を備え、
前記第5工程は、前記外装体から露出する前記第1部分の端面および前記スペーサの端面とともに前記外装体の露出面の少なくとも一部を前記第1電極層で覆う工程と、前記第1電極層の表面に前記第2電極層を形成する工程と、を含む、請求項11~13のいずれか1項に記載の電解コンデンサの製造方法。
【請求項15】
前記第1電極層は、金属層であり、
前記第2電極層は、導電性樹脂層である、請求項14に記載の電解コンデンサの製造方法。
【請求項16】
前記第1工程の後、前記第2工程の前に、前記陽極箔上の一部に前記第1部分と前記陰極部とを隔離する絶縁部材を配置する第6工程を備える、
請求項11~15のいずれか1項に記載の電解コンデンサの製造方法。
【請求項17】
前記陽極箔は、多孔質部を有し、
前記第6工程は、前記多孔質部の表面の一部に液状樹脂を含浸させて、前記絶縁部材を形成する工程を含む、請求項16に記載の電解コンデンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解コンデンサおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電解コンデンサは、コンデンサ素子と、コンデンサ素子を封止する外装体と、コンデンサ素子の陽極側と電気的に接続された外部電極とを備える。コンデンサ素子は、第1端部を含む第1部分(陽極引出部とも言う)および第2端部を含む第2部分(陰極形成部とも言う)を有する陽極箔と、陽極箔の少なくとも第2部分の表面に形成された誘電体層と、誘電体層の少なくとも一部を覆う陰極部とを備える。
【0003】
特許文献1では、外装体から陽極体の一部が露出しており、その露出部がメッキ層で被覆され、メッキ層を介して導電性弾性体と接続された固体電解コンデンサが提案されている。
【0004】
特許文献2では、陽極箔の外装体から露出した部分に拡散層が形成され、この拡散層上に下地電極を形成することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-319522号公報
【文献】特開2009-76872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、外装体は、樹脂を含み、射出成形などの成形技術を用いて形成される。しかし、外装体が、陽極引出部と十分に密着せずに形成されることがある。外装体と陽極引出部との密着性が低いと、第1端部と外装体との境界より陽極引出部と外装体との界面を通じて、電解コンデンサ内部に空気(具体的には、酸素および水分)が侵入することがある。
【0007】
電解コンデンサ内部へ空気が侵入すると、電解コンデンサの信頼性が低下することがある。例えば、電解コンデンサ内部に侵入した空気が陰極部と接触し、陰極部に含まれる固体電解質層が劣化し、等価直列抵抗(ESR)が増大することがある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一局面は、第1端部を含む第1部分、および第2端部を含む第2部分を有する陽極箔と、
少なくとも前記第2部分の表面に形成された誘電体層と、
前記誘電体層の少なくとも一部を覆う陰極部と、
を有する少なくとも1つのコンデンサ素子と、
前記コンデンサ素子を封止する外装体と、
外部電極と、を備え、
少なくとも前記第2部分の表面(より具体的には、表層)は多孔質部を有し、
少なくとも前記第1端部の端面は、前記外部電極と接触している、電解コンデンサに関する。
【0009】
本発明の他の局面は、一方の端部を含む第1部分と前記一方の端部とは反対側の他方の端部を含む第2部分とを備え、少なくとも前記第2部分の表面に誘電体層が形成された陽極箔を準備する第1工程と、
前記誘電体層の少なくとも一部を覆う陰極部を形成して、コンデンサ素子を得る第2工程と、
少なくとも1つの前記コンデンサ素子を外装体で覆う第3工程と、
前記第3工程の後、前記一方の端部側において、前記第1部分の端面を形成して、前記外装体から露出させる第4工程と、
前記第1部分の端面を外部電極と接触させる第5工程と、
を含む、電解コンデンサの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電解コンデンサの信頼性を高めることができる。
【0011】
本発明の新規な特徴を添付の請求の範囲に記述するが、本発明は、構成および内容の両方に関し、本発明の他の目的および特徴と併せ、図面を照合した以下の詳細な説明によりさらによく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る電解コンデンサを模式的に示す断面図である。
【
図2】本発明の第2実施形態に係る電解コンデンサを模式的に示す断面図である。
【
図3】本発明の第3実施形態に係る電解コンデンサを模式的に示す断面図である。
【
図4】本発明の第2実施形態に係る電解コンデンサの製造方法における第3工程で作製された中間体を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[電解コンデンサ]
本発明の一局面に係る電解コンデンサは、少なくとも1つのコンデンサ素子と、コンデンサ素子を封止する外装体と、外部電極とを備える。コンデンサ素子は、第1端部を含む第1部分(または陽極引出部)、および第2端部を含む第2部分(または陰極形成部)を有する陽極箔と、少なくとも第2部分の表面に形成された誘電体層と、誘電体層の少なくとも一部を覆う陰極部とを備える。少なくとも第2部分の表面(より具体的には、表層)は多孔質部を有する。第1端部の少なくとも一部(例えば、端面の少なくとも一部)は、外装体で覆われず、外部電極と接触している。
【0014】
なお、外装体から露出した少なくとも第1端部の端面が外部電極と電気的に接続されることで、外部電極は、コンデンサ素子の陽極側と電気的に接続されている。より具体的には、少なくとも第1端部の端面が外部電極と接触することで、外部電極と電気的に接続される。少なくとも第1端部の端面は、外部電極と接合されていてもよい。
【0015】
上記局面によれば、第1端部を除いて第1部分が外装体で覆われているため、外装体と第1部分との密着性が向上する。よって、外装体と第1部分との界面を通じた電解コンデンサ内部への空気(より具体的には、酸素および水分)の侵入、および当該空気の侵入による電解コンデンサの信頼性の低下が、抑制される。
【0016】
陰極部は、通常、誘電体層の少なくとも一部を覆う固体電解質層と、固体電解質層の少なくとも一部を覆う陰極引出層とを備える。本明細書では、陽極箔上に固体電解質層が形成されている陽極箔の部分を第2部分とし、陽極箔上に固体電解質層が形成されていない陽極箔の部分を第1部分とする。なお、固体電解質層は、誘電体層を介して、陽極箔上に形成される。
【0017】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態では、第2部分の表面(より具体的には、表層)は多孔質部を有するが、第1部分の表面(より具体的には、表層)は多孔質部を有さない。多孔質部は、例えば、陽極箔の粗面化により形成される。そのため、第2部分は、より具体的には、芯部と、芯部の表面に形成された多孔質部(粗面部)とを有する。
【0018】
第1実施形態では、第1部分は、表面に多孔質部が形成されていない状態で、第1端部を除いて外装体で覆われている。そのため、外装体と第1部分との密着性が向上する。よって、外装体と第1部分との界面を通じた電解コンデンサ内部への空気の侵入、および当該空気の侵入による電解コンデンサの信頼性の低下が、抑制される。
【0019】
また、第1部分の表面に多孔質部が形成されていないため、第1端部の外装体から露出する部分より多孔質部の孔を通じた電解コンデンサ内部への空気の侵入、および当該空気の侵入による電解コンデンサの信頼性の低下が、抑制される。
【0020】
さらに、第1端部の外装体から露出する部分(より具体的には、少なくとも第1端部の端面)は多孔質部を含まない。よって、第1端部と外部電極との間で抵抗が小さくかつ安定した接続状態が得られ、電解コンデンサのESRを低減することができる。
【0021】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る電解コンデンサでは、コンデンサ素子は、さらに、第1部分と陰極部とを隔離する絶縁部材を備える。
【0022】
絶縁部材は、第1端部側の端部Aと、第2部分側の端部Bとを有する。つまり、絶縁部材は、第1部分上に配置され、第1部分は絶縁部材を介して外装体で覆われている。外装体と第1部分との間に絶縁部材を介在させることで、外装体と第1部分との間の密着性が向上する。
【0023】
第1端部の端面と端部Aの端面は、外装体から露出している。つまり、第1端部および端部Aは、それぞれ外装体で覆われない面一の端面を有しており、外装体から露出する第1端部の端面と、外装体の表面との間に、外装体から露出する端部Aの端面が介在している。これにより、第1端部と外装体との境界に隙間が形成されることが抑制される。なお、ここでいう面一とは、第1端部の端面および端部Aの端面の少なくとも一方が、外装体よりも僅かに突出している場合を含む。
【0024】
以上のことから、第1端部と外装体との境界より第1部分と外装体との界面を通じた電解コンデンサ内部への空気(具体的には、酸素および水分)の侵入、および当該空気の侵入による電解コンデンサの信頼性の低下が、抑制される。
【0025】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態に係る電解コンデンサは、複数のコンデンサ素子が積層された積層体を備える。積層体は、隣接するコンデンサ素子の間における第1部分側に配置されたスペーサを備える。第1端部の端面とスペーサの端面とは、それぞれ外装体から露出し、外部電極と接触している。
【0026】
スペーサを用いることにより、コンデンサ素子を積層してコンデンサ素子積層体を形成する際に、隣接する第1部分の間に空間を確実に確保できる。これにより、外装体を形成する際に、樹脂等で第1部分の間の空間を隙間なく充填することが容易となり、第1部分と外装体との密着性を高めることができる。
【0027】
また、第1部分の表面に多孔質部(多孔体)が形成されている場合、多孔質部と外装体の密着性が十分でないことがある。その場合、多孔質部と外装体との接触部分を通じて電解コンデンサ内部に空気(具体的には、酸素および水分)が侵入し得る。しかしながら、多孔質部の表面をスペーサで塞ぎ、外装体と多孔質部とが接触する面積を減らすことによって、多孔質部と外装体との接触部分を通じた電解コンデンサ内部への空気の侵入、および当該空気の侵入による電解コンデンサの信頼性の低下が、抑制される。結果、電解コンデンサの経時的なESRの増加を抑制することができる。
【0028】
また、スペーサを外部電極と親和性の高い材料とすることで、コンデンサ素子積層体と外部電極との接続性を高め、外部電極をコンデンサ素子積層体に密着させることができる。これにより、外部電極が外装体から剥がれるのを抑制し、外部電極と第1部分の接続の信頼性を高められる。
【0029】
また、スペーサを介し、外部電極と第1部分が密着されることから、第1部分と外部電極との間で抵抗が小さくかつ安定した接続状態が得られ、電解コンデンサの初期ESRを低減することができる。
【0030】
スペーサは、導電性の材料が好ましく、金属材料であることがより好ましい。スペーサを導電性の材料とすることで、外部電極とスペーサが電気的に接続されるので、電解コンデンサのESRをより一層低減することができる。
【0031】
隣接した第1部分とスペーサは溶接により、電気的に接続させることができる。溶接によって、第1部分の表面に多孔質部が形成されている場合であっても、電解コンデンサのESRを低減することが可能である。溶接の方法として、例えば、抵抗溶接、レーザー溶接、超音波溶接などが挙げられる。さらに、溶接により第1部分とスペーサの物理的な接続(密着性)も強固となり、電解コンデンサのESRをより一層低減することができる。
【0032】
陽極箔は、少なくとも第2部分の表面がエッチングなどにより粗面化されている。このため、第2部分は、芯部と、芯部の表面に形成された多孔質部とを有する。第1部分の表面がエッチングなどにより粗面化され、第1部分の表面が多孔質部(多孔体)となっていてもよい。その場合、第1部分の多孔質部(多孔体部分)を圧縮した状態でスペーサと接合させることができる。第1部分の多孔質部を予め圧縮し、多孔質部の孔をつぶしておくことで、外装体から露出する第1端部より多孔質部を介した電解コンデンサ内部への空気の侵入、および当該空気の侵入による電解コンデンサの信頼性の低下が、より一層抑制される。
【0033】
以下、各実施形態を含め上記局面に係る電解コンデンサの構成要素についてより詳細に説明する。
(陽極箔)
陽極箔は、弁作用金属、弁作用金属を含む合金、および弁作用金属を含む化合物(金属間化合物など)などを含むことができる。これらの材料は一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて使用できる。弁作用金属としては、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタンなどを用いることができる。
【0034】
通常、表面積を増やすため、陽極箔の少なくとも第2部分の表面には、多孔質部が形成されている。多孔質部は、陽極箔の少なくとも第2部分の表面をエッチングなどにより粗面化することにより形成してもよい。第1部分の表面に所定のマスキング部材を配置した後、エッチング処理などの粗面化処理を行うことも可能である。一方で、陽極箔の表面の全面をエッチング処理などにより粗面化処理することも可能である。前者の場合、第1部分の表面には多孔質部を有さず、第2部分の表面に多孔質部を有する陽極箔が得られる。後者の場合、第2部分の表面に加え、第1部分の表面にも多孔質部が形成される。エッチング処理としては、公知の手法を用いればよく、例えば、電解エッチングが挙げられる。マスキング部材は、特に限定されず、樹脂などの絶縁体であってもよく、導電性材料を含む導電体であってもよい。
【0035】
(誘電体層)
誘電体層は、例えば、陽極箔の少なくとも第2部分の表面の弁作用金属を、化成処理などにより陽極酸化することで形成される。誘電体層は弁作用金属の酸化物を含む。例えば、弁作用金属としてアルミニウムを用いた場合の誘電体層は酸化アルミニウムを含む。誘電体層は、少なくとも多孔質部が形成されている第2部分の表面(多孔質部の孔の内壁面を含む)に沿って形成される。なお、誘電体層の形成方法はこれに限定されず、第2部分の表面に、誘電体として機能する絶縁性の層を形成できればよい。誘電体層は、第1部分の表面(例えば、第1部分の表面の多孔質部上)にも形成されてもよい。
【0036】
(陰極部)
陰極部は、誘電体層の少なくとも一部を覆う固体電解質層と、固体電解質層の少なくとも一部を覆う陰極引出層とを備える。以下、固体電解質層および陰極引出層について説明する。
【0037】
(固体電解質層)
固体電解質層は、例えば、導電性高分子を含む。導電性高分子としては、例えば、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリンおよびこれらの誘導体などを用いることができる。固体電解質層は、例えば、原料モノマーを誘電体層上で化学重合および/または電解重合することにより、形成することができる。あるいは、導電性高分子が溶解した溶液、または、導電性高分子が分散した分散液を、誘電体層に塗布することにより、形成することができる。固体電解質層は、マンガン化合物を含んでもよい。
【0038】
(陰極引出層)
陰極引出層は、カーボン層および銀ペースト層を備える。カーボン層は、導電性を有していればよく、例えば、黒鉛などの導電性炭素材料を用いて構成することができる。カーボン層は、例えば、カーボンペーストを固体電解質層の表面の少なくとも一部に塗布して形成される。銀ペースト層には、例えば、銀粉末とバインダ樹脂(エポキシ樹脂など)とを含む組成物を用いることができる。銀ペースト層は、例えば、銀ペーストをカーボン層の表面に塗布して形成される。なお、陰極引出層の構成は、これに限られず、集電機能を有する構成であればよい。
【0039】
(絶縁部材)
コンデンサ素子に含まれる絶縁部材は、第1部分と陰極部とを隔離するものであり、分離層とも呼ばれる。絶縁部材は、第1部分および外装体と密着している。これにより、上記の電解コンデンサ内部への空気の侵入が抑制される。絶縁部材は、第1部分の上に誘電体層を介して配置されてもよい。
絶縁部材は、例えば、樹脂を含み、後述の外装体について例示するものを用いることができる。
【0040】
第1部分と密着する絶縁部材は、例えば、シート状の絶縁部材(樹脂テープなど)を、第1部分に貼り付けることにより得られる。表面に多孔質部を有する陽極箔を用いる場合では、第1部分の多孔質部を圧縮して平坦化してから、絶縁部材を第1部分に密着させてもよい。シート状の絶縁部材は、第1部分に貼り付ける側の表面に粘着層を有することが好ましい。
【0041】
また、液状樹脂を第1部分に塗布または含浸させて、第1部分と密着する絶縁部材を形成してもよい。液状樹脂を用いた方法では、絶縁部材は、第1部分の多孔質部の表面の凹凸を埋めるように形成される。多孔質部の表面の凹部に液状樹脂が容易に入り込み、凹部内にも絶縁部材を容易に形成することができる。液状樹脂としては、後述の第3工程で例示する硬化性樹脂組成物などを用いることができる。
【0042】
絶縁部材の端部Aから端部Bまでの長さ(
図2に示す長さL)が、0.5mm以上3mm以下であることが好ましい。絶縁部材の端部Aから端部Bまでの長さが0.5mm以上である場合、第1部分と陰極部とをより安定して隔離することができる。この場合、第1部分および外装体に絶縁部材を十分に密着させることができる。このため、絶縁部材および第1部分の一部を切り離す際に、絶縁部材が外装体および第1部分から剥離することが抑制される。また、絶縁部材の端部Aから端部Bまでの長さが3mm以下である場合、陽極箔に占める第2部分の割合を十分に大きくして、高容量化することができる。
【0043】
(外装体)
外装体は、例えば、硬化性樹脂組成物の硬化物を含むことが好ましく、熱可塑性樹脂もしくはそれを含む組成物を含んでもよい。
【0044】
外装体は、例えば、射出成形などの成形技術を用いて形成することができる。外装体は、例えば、所定の金型を用いて、硬化性樹脂組成物または熱可塑性樹脂(組成物)を、コンデンサ素子を覆うように所定の箇所に充填して形成することができる。
【0045】
硬化性樹脂組成物は、硬化性樹脂に加え、フィラー、硬化剤、重合開始剤、および/または触媒などを含んでもよい。硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂が例示される。硬化剤、重合開始剤、触媒などは、硬化性樹脂の種類に応じて適宜選択される。
【0046】
硬化性樹脂組成物および熱可塑性樹脂(組成物)としては、後述の第3工程で例示するものを用いることができる。
【0047】
絶縁部材と外装体との間の密着性の観点から、絶縁部材および外装体は、それぞれ樹脂を含むことが好ましい。外装体は、弁作用金属を含む第1部分や弁作用金属の酸化物を含む誘電体層と比べて、樹脂を含む絶縁部材と密着し易い。
【0048】
絶縁部材および外装体は、互いに同一の樹脂を含むことがより好ましい。この場合、絶縁部材と外装体との間の密着性がさらに向上し、それにより電解コンデンサ内部への空気の侵入がさらに抑制される。絶縁部材および外装体に含まれる互いに同一の樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂が挙げられる。
【0049】
外装体の強度などを高める観点から、外装体はフィラーを含むことが好ましい。
一方、絶縁部材は、外装体よりも粒径が小さいフィラーを含むことが好ましく、フィラーを含まないことがより好ましい。第1部分に液状樹脂を含浸させて絶縁部材を形成する場合、液状樹脂は、外装体よりも粒径が小さいフィラーを含むことが好ましく、フィラーを含まないことがより好ましい。この場合、第1部分の多孔質部の表面の凹部の深部にまで、液状樹脂を含浸させ易く、絶縁部材を形成し易い。また、複数のコンデンサ素子を積層可能なように、厚みの小さい絶縁部材を形成し易い。
【0050】
(外部電極)
外部電極(陽極側の外部電極)は、少なくとも第1端部の端面と接触していればよい。外部電極は、絶縁部材の端部Aと接触(物理的に接触)していてもよい。コンデンサ素子積層体がスペーサを備える場合には、外部電極は、スペーサの端面と接触していてもよい。
【0051】
コンデンサ素子が絶縁部材を備える場合、第1部分の第1端部と絶縁部材の端部Aとが、それぞれ外装体で覆われない面一の端面を有するため、外部電極を、第1端部と接合するとともに、端部Aと接触させ易く、端部Aと密着させることもできる。絶縁部材の端部Aが外部電極と密着している場合、外装体と第1端部との境界から電解コンデンサ内部への空気の侵入が、さらに抑制される。
【0052】
例えば、電解めっき法や無電解めっき法を用いて、端部Aの端面に金属を付着させることにより、端部Aと密着する外部電極が形成される。また、物理蒸着法、化学蒸着法、コールドスプレー法などを用いて、ガス化したまたは固体状態の金属粒子を端部Aの端面に衝突させることにより、端部Aと密着する外部電極を形成してもよい。溶射法を用いて、溶融状態の金属粒子を端部Aの端面に衝突させることにより、端部Aと密着する外部電極を形成してもよい。この場合、溶融した金属粒子が端部Aの端面に付着して端部Aが溶融することにより、端部Aを外部電極に溶着させることができる。
【0053】
外部電極は、外装体から露出する第1端部の端面とともに外装体の表面の一部を覆う第1電極層と、第1電極層の表面に形成された第2電極層と、を備えることが好ましい。外装体から露出する第1端部の表面とともに外装体の表面の一部を第1電極層で覆うことにより、第1端部の自然酸化皮膜の形成が抑制される。第1端部の自然酸化皮膜の形成抑制の観点から、外装体は、第1端部の外装体からの露出面の周りを囲むように第1電極層で覆われていることが好ましい。外装体で覆われない第1端部の端面、ならびに端部Aの端面および/またはスペーサの端面とともに、外装体の表面の一部を第1電極層で覆うことにより、第1端部の自然酸化皮膜の形成が抑制される。
【0054】
第1電極層は、金属層であることが好ましい。金属層は、例えば、めっき層である。金属層は、例えば、ニッケル、銅、亜鉛、錫、銀、および金よりなる群から選択される少なくとも1種を含む。第1電極層の形成には、例えば、電解めっき法、無電解めっき法、スパッタリング法、真空蒸着法、化学蒸着(CVD)法、コールドスプレー法、溶射法などの成膜技術を用いてもよい。上記方法により少なくとも第1端部の端面と外装体の一部とに密着する第1電極層を容易に形成することができる。第1端部の端面とともに、絶縁部材の端部Aの端面および/またはスペーサの端面が外装体から露出している場合にも、上記方法によれば、これらの端面および外装体の表面の一部に密着する第1電極層を容易に形成することができる。
【0055】
第1電極層を第2電極層で覆うと、第1電極層の酸化劣化が抑制される。第2電極層には、例えば、導電性樹脂(組成物)、および/または第1電極層で例示した材料を用いることができる。第1電極層との密着性の観点から、第2電極層は、導電性樹脂層であることが好ましい。導電性樹脂層は、例えば、樹脂および樹脂中に分散している導電材を含む。樹脂は、例えば、硬化性樹脂組成物の硬化物または熱可塑性樹脂(組成物)を含む。導電材としては、例えば、銀、銅などの金属材料や、カーボンなどの導電性の無機材料を用いることができる。また、第2電極層は、上記の第1電極層で例示する金属層でもよい。第2電極層の形成には、上記の第1電極層で例示する方法(成膜技術など)を用いてもよい。
【0056】
(スペーサ)
スペーサの材料としては、例えば、銅、鉄、ニッケルなどの金属、またはこれらを含む合金材料を用いることができる。
スペーサは、複数のコンデンサ素子を積層し、コンデンサ素子積層体を形成する際、またはコンデンサ素子積層体を形成した後に、複数の第1部分の間に挟まれるように設けられる。スペーサを第1部分(または多孔質部)と密着させた後、上記の樹脂組成物を隣接する第1部分の間の隙間に充填して、外装体を形成することができる。
【0057】
以下、上記局面に係る電解コンデンサの一例を、図面を参照しながら説明する。しかし、本発明の上記局面に係る電解コンデンサは、これらに限定されるものではない。
【0058】
図1は、本発明の第1実施形態に係る電解コンデンサの構造を模式的に示す断面図である。
図1に示すように、電解コンデンサ11は、複数のコンデンサ素子10を備える。コンデンサ素子10は、第1端部1aを含む第1部分1と、第2端部2aを含む第2部分2とを有する陽極箔3を備える。
図1では、第2部分は、表面に多孔質部5を有する。より具体的には、第2部分2は、芯部4と、粗面化(エッチングなど)などにより芯部4の表面に形成された多孔質部(多孔体)5とを有する。一方、第1部分は、表面に多孔質部を有さない。
【0059】
コンデンサ素子10は、陽極箔3の第2部分2の表面に形成された誘電体層(図示しない)を備える。誘電体層は、多孔質部5の表面に沿って形成されている。誘電体層の少なくとも一部は、多孔質部5の孔の内壁面を覆い、その内壁面に沿って形成されている。
【0060】
コンデンサ素子10は、誘電体層の少なくとも一部を覆う陰極部6を備える。陰極部6は、誘電体層の少なくとも一部を覆う固体電解質層7と、固体電解質層7の少なくとも一部を覆う陰極引出層とを備える。誘電体層の表面は、陽極箔3の表面の形状に応じた凹凸形状が形成されている。固体電解質層7は、このような誘電体層の凹凸を埋めるように形成されていることが好ましい。陰極引出層は、固体電解質層7の少なくとも一部を覆うカーボン層8と、カーボン層8を覆う銀ペースト層9とを備える。
【0061】
なお、陽極箔3上に誘電体層(多孔質部5)を介して固体電解質層7が形成されている陽極箔3の部分が第2部分2であり、陽極箔3上に誘電体層(多孔質部5)を介して固体電解質層7が形成されていない陽極箔3の部分が第1部分1である。
【0062】
陽極箔3の陰極部6と対向しない領域のうち、陰極部6に隣接する部分には、陽極箔3の表面を覆うように絶縁性の分離層(または絶縁部材)12が形成され、陰極部6と第2部分2との接触が規制されている。分離層12は、例えば、絶縁性の樹脂層である。
【0063】
複数のコンデンサ素子10は、複数の陽極箔3が互いに同じ向きで重なり合うように積層されている。第1部分1が積層された陽極積層部および陰極部6が積層された陰極積層部が形成されている。複数のコンデンサ素子10において、積層方向で互いに隣り合う陰極部6は、導電性を有する接着層13を介して電気的に接続されている。接着層13の形成には、例えば、導電性接着剤が用いられる。接着層13は、例えば、銀を含む。
【0064】
電解コンデンサ11は、複数のコンデンサ素子10を封止するとともに複数の第1端部1aを露出させた外装体14を備える。外装体14は、ほぼ直方体の外形を有し、電解コンデンサ11もほぼ直方体の外形を有する。外装体14は、第1側面14aおよび第1側面14aと反対側の第2側面14bを有する。複数の第1端部1aは、それぞれ、外装体14の第1側面14aより露出するとともに、第1側面14aと面一の端面を有する。
【0065】
複数のコンデンサ素子10において、積層方向で互いに隣り合う第1部分1は離間しており、その間に外装体14の一部が介在していることが好ましい。この場合、第1端部1aを除いて複数の第1部分1は、それぞれ外装体14で覆われており、外装体14は、複数の第1部分1にそれぞれ密着して形成されている。また、複数の第1端部1aがそれぞれ独立して外装体14の第1側面14aから露出している。よって、積層方向で互いに隣り合う第1部分の間を介して電解コンデンサ内部へ空気が侵入することが抑制される。
【0066】
また、複数の第1部分1の表面に多孔質部は形成されていないため、外装体14と、各第1部分2との密着性が向上する。よって、外装体と第1部分との界面を通じた空気の侵入が抑制される。さらに、外装体より露出する第1端部より多孔質部の孔を通じた空気の侵入も抑制される。
【0067】
電解コンデンサ11は、外装体14から露出する複数の第1端部1aと電気的に接続された陽極側の外部電極15を備える。外装体14から露出する複数の第1端部1aを、それぞれ陽極側の外部電極15と電気的に接続するため、複数の第1部分を束ねる必要がなく、複数の第1部分に関して、それらを束ねるための長さを確保する必要がない。よって、複数の第1部分を束ねる場合と比べて、陽極箔に占める第1部分の割合を小さくして高容量化することができる。
【0068】
陽極側の外部電極15は、外装体14から露出する複数の第1端部1aの端面とともに外装体14の第1側面14aを覆う陽極側の第1電極層15aと、陽極側の第1電極層15aの表面に形成された陽極側の第2電極層15bとを有する。
【0069】
電解コンデンサ11は、陰極部6と電気的に接続された陰極側の外部電極16とを備える。より具体的には、外装体14は、複数の陰極部6の第2端部2a側の端部6aおよび複数の接着層13の第2端部2a側の端部13aをそれぞれ露出させている。陰極側の外部電極16は、外装体14から露出する複数の陰極部6の端部6aおよび複数の接着層13の端部13aと電気的に接続されている。複数の端部6aおよび端部13aは、それぞれ、外装体14の第2側面14bより露出するとともに、第2側面14bと面一の端面を有する。
【0070】
陰極側の外部電極16は、外装体14からそれぞれ露出する複数の陰極部6の端部6aおよび接着層13の端部13aの端面とともに外装体14の第2側面14bを覆う陰極側の第1電極層16aと、陰極側の第1電極層16aの表面に形成された陰極側の第2電極層16bとを有する。
【0071】
図2は、本発明の第2実施形態に係る電解コンデンサの構造を模式的に示す断面図である。
図2に示すように、電解コンデンサ11は、複数のコンデンサ素子10を備える。コンデンサ素子10は、第1端部1aを含む第1部分1と、第2端部2aを含む第2部分2とを有する陽極箔3を備える。陽極箔3(第1部分1および第2部分2)は、芯部4と、芯部4の表面に形成された多孔質5とを有する。
【0072】
コンデンサ素子10は、陽極箔3(第1部分1および第2部分2)の表面に形成された誘電体層(図示しない)を備える。誘電体層は、多孔質部5の表面を覆っており、多孔質部5の表面に形成された凹凸に沿って形成されている。つまり、誘電体層の表面は、多孔質部5の表面の形状に応じた凹凸形状を有する。絶縁部材12は、第1端部1a側の端部Aおよび第2部分2側の端部Bを有する。第1端部1aおよび端部Aは、互いに面一の端面を有する。
【0073】
コンデンサ素子10は、第2部分2の表面に形成された誘電体層の少なくとも一部を覆う陰極部6を備える。陰極部6は、第2部分2の表面に形成された誘電体層の少なくとも一部を覆う固体電解質層7と、固体電解質層7の少なくとも一部を覆う陰極引出層とを備える。陰極引出層は、固体電解質層7の少なくとも一部を覆うカーボン層8と、カーボン層8を覆う銀ペースト層9とを備える。
【0074】
第1部分1の上に誘電体層を介して分離層(絶縁部材)12が配置され、陰極部6と第1部分1との接触が規制されている。絶縁部材12は、第1部分1の表面の凹凸を埋めるように形成されていることが好ましい。
【0075】
複数のコンデンサ素子10は、
図1の場合と同様に、積層されており、陽極積層部および陰極積層部が形成されている。接着層13も
図1の説明を参照できる。
【0076】
複数のコンデンサ素子10は、
図1の場合と同様に外装体14により封止されている。外装体14については、
図1の説明を参照できる。ただし、
図2では、複数の第1端部1aとともに複数の端部Aが外装体14から露出している。複数の端部Aは、外装体14の第1側面14aより露出するとともに、第1側面14aと面一の端面を有する。
【0077】
複数のコンデンサ素子10において、積層方向で互いに隣り合う絶縁部材12は離間しており、その間に外装体14の一部が介在している。複数の絶縁部材の厚みを大きくして、複数の絶縁部材を直接重ね合わせてコンデンサ素子を積層する場合、互いに隣り合う絶縁部材の界面から空気が侵入することがある。一方、互いに隣り合う絶縁部材12の間に外装体14の一部が介在している場合、互いに隣り合う絶縁部材12は、それぞれ外装体14で覆われており、外装体14は、互いに隣り合う絶縁部材12にそれぞれ密着して形成されている。よって、上記のような空気の侵入は抑制される。
【0078】
電解コンデンサ11では、外装体14から露出する複数の第1端部1aの端面は、それぞれ陽極側の外部電極15と接合されている。これにより、複数の第1部分1は、それぞれ陽極側の外部電極15と電気的に接続されている。そのため、
図1の場合と同様に、高容量化することができる。
【0079】
陽極側の外部電極15は、
図1と同様に、陽極側の第1電極層15aと、陽極側の第2電極層15bとを有する。ただし、外装体14からは端部Aの端面も露出しているため、第1電極層15aは、複数の第1端部1aおよび第1側面14aとともに、端部Aの端面を覆っている。
陰極側の外部電極16は、
図1の場合と同じである。
【0080】
図3は、本発明の第3実施形態に係る電解コンデンサの構造を模式的に示す断面図である。
図3では、陽極箔3の第1部分1の表面にもエッチングなどの粗面化処理により多孔質部5が形成されている。また、電解コンデンサ11は、隣接するコンデンサ素子10の間における第1部分1側に配置された複数のスペーサ17を備える。外部電極15は、さらに、スペーサ17の端面17aを覆っている。これら以外は、
図1の説明を参照できる。
【0081】
図3では、スペーサ17によって、積層方向で互いに隣り合う電解コンデンサ11の第1部分1は離隔される。スペーサ17は、外装体14の第1側面14aより露出するとともに、第1側面14aと面一の端面17aを有する。
【0082】
電解コンデンサ11をその積層方向から見たときのスペーサ17の配置レイアウトについて、スペーサ17は、第1部分1の少なくとも一部の領域上に形成されていればよい。また、電解コンデンサ11をその積層方向から見たとき、スペーサ17の大きさ、形状、および配置箇所は、スペーサ17ごとに異なっていてよい。スペーサ17によって、コンデンサ素子10を積層する際には隣接する第1部分1の間に空間を確実に確保できる。外装体14の形成時に、当該空間に外装体14を隙間なく充填することによって、第1部分(および、多孔質部)と外装体との密着性を高めることができる。
【0083】
複数の第1部分を束ねて直接重ね合わせる場合、互いに隣り合う第1部分の隙間から空気が侵入し易い。一方、互いに隣り合う第1部分の間に外装体を介在させている場合、第1端部を除いて複数の第1部分は、それぞれ外装体で覆われており、外装体は、複数の第1部分にそれぞれ密着して形成されている。また、複数の第1端部がそれぞれ独立して外装体の第1側面から露出している。これにより、複数の第1部分を束ねて重ね合わせる場合と比較して、空気の侵入を抑制することができる。
【0084】
[電解コンデンサの製造方法]
本発明の上記局面に係る電解コンデンサは、陽極箔を準備する第1工程と、コンデンサ素子を得る第2工程と、コンデンサ素子を外装体で覆う第3工程と、第1部分の端面を形成して外装体から露出させる第4工程と、第1部分の端面を外部電極と接触させる第5工程と、を含む製造方法により製造できる。製造方法は、さらに、陽極箔上の一部に分離層(絶縁部材)を配置する第6工程を含んでもよい。また、陰極部を陰極側の外部電極と接触させる第7工程を含んでもよい。電解コンデンサが複数のコンデンサ素子を備える場合、隣接するコンデンサ素子の間における第1部分側に複数のスペーサを配置する第8工程を含んでもよい。
以下、本発明の実施形態に係る電解コンデンサの製造方法の各工程について説明する。
【0085】
(第1工程)
第1工程では、表面に誘電体層が形成された陽極箔を準備する。より具体的には、一方の端部を含む第1部分と一方の端部とは反対側の他方の端部を含む第2部分とを備え、少なくとも第2部分の表面に誘電体層が形成された陽極箔が準備される。第1工程は、例えば、陽極箔の表面に多孔質部を形成する工程と、多孔質部の表面に誘電体層を形成する工程とを含む。より具体的には、第1工程で用いられる陽極箔は、除去予定端部(上記一方の端部)を含む第1部分と、第2端部(上記他方の端部)を含む第2部分とを有する。少なくとも第2部分の表面には、多孔質部を形成することが好ましい。
【0086】
陽極箔の表面の多孔質部を形成する際には、陽極箔の表面に凹凸を形成できればよく、例えば、陽極箔の表面をエッチング(例えば、電解エッチング)などにより粗面化することにより行ってもよい。
【0087】
誘電体層は、陽極箔を化成処理により形成すればよい。化成処理は、例えば、陽極箔を化成液中に浸漬することにより、陽極箔の表面に化成液を含浸させ、陽極箔をアノードとして、化成液中に浸漬したカソードとの間に電圧を印加することにより行うことができる。陽極箔の表面に多孔質部を有する場合、誘電体層は、多孔質部の表面の凹凸形状に沿って形成される。
【0088】
(第6工程)
絶縁部材(または分離層)を備える電解コンデンサを製造する場合、絶縁部材を配置する第6工程は、第1工程の後、第2工程の前に行われる。第6工程では、陽極箔上の一部に絶縁部材を配置する。より具体的には、第6工程では、陽極箔の第1部分の上に誘電体層を介して絶縁部材を配置する。絶縁部材は、除去予定端部側の端部Cおよび第2部分側の端部Bを有する。絶縁部材は、第1部分と後工程で形成される陰極部とを隔離するように配置される。
【0089】
第6工程では、シート状の絶縁部材(樹脂テープなど)を、陽極箔の一部(例えば、第1部分)に貼り付けてもよい。表面に多孔質部が形成された陽極箔を用いる場合でも、第1部分の表面の凹凸を圧縮し平坦化することで、絶縁部材を第1部分に強固に密着させることができる。シート状の絶縁部材は、第1部分に貼り付ける側の表面に粘着層を有することが好ましい。
【0090】
上記以外に、第6工程では、液状樹脂を陽極箔の一部(例えば、第1部分)に塗布または含浸させて絶縁部材を形成してもよい。例えば、液状樹脂を塗布または含浸させた後、硬化させればよい。この場合、第1部分に密着する絶縁部材を容易に形成することができる。液状樹脂としては、第3工程(外装体の形成)で例示する硬化性樹脂組成物、樹脂を溶媒に溶解させた樹脂溶液などを用いることができる。
【0091】
陽極箔の表面に多孔質部が形成されている場合、陽極箔の多孔質部の表面の一部(例えば、第1部分の表面)に液状樹脂を塗布または含浸させることが好ましい。この場合、第1部分の多孔質部の表面の凹凸を埋めるように絶縁部材を容易に形成することができる。多孔質部の表面の凹部に液状樹脂が容易に入り込み、凹部内にも絶縁部材を容易に形成することができる。これにより、陽極箔の表面の多孔質部が絶縁部材で保護されるため、第4工程で陽極箔を外装体とともに部分的に除去する際に、陽極箔の多孔質部の崩壊が抑制される。陽極箔の多孔質部の表面と絶縁部材とが強固に密着しているため、第4工程で陽極箔を外装体とともに部分的に除去する際に、絶縁部材が陽極箔の多孔質部の表面から剥離することが抑制される。
【0092】
(第2工程)
第2工程では、陽極箔上に陰極部を形成してコンデンサ素子を得る。第6工程で絶縁部材を設ける場合には、第2工程で、陽極箔上の絶縁部材が配置されていない部分に陰極部を形成し、コンデンサ素子を得る。より具体的には、第2工程では、陽極箔の第2部分の表面に形成された誘電体層の少なくとも一部を陰極部で覆う。
【0093】
陰極部を形成する工程は、例えば、誘電体の少なくとも一部を覆う固体電解質を形成する工程と、固体電解質層の少なくとも一部を覆う陰極引出層を形成する工程と、を含む。
【0094】
固体電解質層は、例えば、原料モノマーを誘電体層上で化学重合および/または電解重合することにより、形成することができる。また、固体電解質層は、導電性高分子を含む処理液を付着させた後、乾燥させて形成してもよい。処理液は、さらにドーパントなどの他の成分を含んでもよい。導電性高分子には、例えば、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)が用いられる。ドーパントには、例えば、ポリスチレンスルホン酸(PSS)が用いられる。処理液は、導電性高分子の分散液または溶液である。分散媒(溶媒)としては、例えば、水、有機溶媒、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0095】
陰極引出層は、例えば、固体電解質層上に、カーボン層と銀ペースト層とを順次積層することにより、形成することができる。
【0096】
(第3工程)
第3工程では、コンデンサ素子を外装体で覆う。外装体は射出成形などを用いて形成することができる。外装体は、例えば、所定の金型を用いて、硬化性樹脂組成物または熱可塑性樹脂(組成物)を、コンデンサ素子を覆うように所定の箇所に充填して形成することができる。
【0097】
硬化性樹脂組成物は、硬化性樹脂に加え、フィラー、硬化剤、重合開始剤、および/または触媒などを含んでもよい。硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリウレタン、ジアリルフタレート、不飽和ポリエステルなどが挙げられる。熱可塑性樹脂としては、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などが挙げられる。熱可塑性樹脂およびフィラーを含む熱可塑性樹脂組成物を用いてもよい。
【0098】
フィラーとしては、例えば、絶縁性の粒子および/または繊維などが好ましい。フィラーを構成する絶縁性材料としては、例えば、シリカ、アルミナなどの絶縁性の化合物(酸化物など)、ガラス、鉱物材料(タルク、マイカ、クレーなど)などが挙げられる。外装体は、これらのフィラーを一種含んでもよく、二種以上組み合わせて含んでもよい。
【0099】
(第4工程)
第4工程では、第3工程の後、一方の端部(または除去予定端部)側において、第1部分の端面を形成して、外装体から露出させる。より具体的には、陽極箔の一方の端部側において、少なくとも陽極箔を外装体とともに部分的に除去して、少なくとも陽極箔の第1端部(具体的には、第1端部の端面)を形成し、外装体から露出させる。第1端部を外装体から露出させる方法としては、例えば、コンデンサ素子を外装体で覆った後、外装体から第1端部が露出するように、外装体の表面を研磨したり、外装体の一部を切り離したりする方法が挙げられる。また、第1部分の一部を外装体の一部とともに切り離してもよい。この場合、多孔質部を含まず、かつ、自然酸化皮膜が形成されていない表面を有する第1端部を、外装体より容易に露出させることができ、第1部分と外部電極との間において抵抗が小さく信頼性の高い接続状態が得られる。
【0100】
第4工程では、陽極箔の一方の端部側において、陽極箔およびスペーサを外装体とともに部分的に除去して、第1端部の端面およびスペーサの端面を外装体から露出させてもよい。この場合、陽極箔およびスペーサにそれぞれ外装体から露出する面一の端面が形成される。これにより、外装体の表面と面一の陽極箔の端面およびスペーサの端面を、それぞれ外装体から容易に露出させることができる。陽極箔およびスペーサの部分的な除去は、好ましくは、第1部分側のスペーサの端部を第3端部、第2部分側のスペーサの端部を第4端部としたとき、第3端部と第4端部の間の位置で外装体を切断することにより行うとよい。外装体の切断方法としては、ダイシングが好ましい。これにより、切断面には第1部分の第1端部の露出端面と、スペーサの露出端面が現れる。
【0101】
第4工程では、陽極箔の一方の端部側において、陽極箔および絶縁部材を外装体とともに部分的に除去して、第1端部の端面および絶縁部材の端面を外装体から露出させてもよい。この場合、陽極箔および絶縁部材にそれぞれ外装体から露出する面一の端面が形成される。これにより、外装体の表面と面一の陽極箔の端面および絶縁部材の端面を、それぞれ、外装体から容易に露出させることができる。
【0102】
より具体的には、第4工程では、陽極箔の一方の端部側において、第1部分および絶縁部材を外装体とともに部分的に除去する。コンデンサ素子から一方の端部を含む第1部分および端部Cを含む絶縁部材の一部を除去することにより、第1部分および絶縁部材にそれぞれ外装体から露出する面一の端面を有する第1端部および端部Aを形成する。第1端部および端部Aの端面は、それぞれ、外装体の露出面と面一である。
【0103】
絶縁部材を、第1部分および外装体と密着させて配置することができるため、一方の端部側を除去する際に、絶縁部材が、第1部分から剥離したり、ずれたりすることが、抑制される。
【0104】
陽極箔および絶縁部材の端部に合わせて外装体のみを除去することも考えられる。ただし、この場合、外装体の露出面と面一となるように、陽極箔の端面および絶縁部材の端面を外装体から露出させることは難しい。
【0105】
第4工程により、自然酸化皮膜が形成されていない陽極箔(第1端部)の端面を、外装体から容易に露出させることができ、陽極箔(より具体的には、第1部分)と外部電極との間において抵抗が小さく信頼性の高い接続状態が得られる。
【0106】
第4工程では、絶縁部材の外装体から露出する側の端部Aから陰極部側の端部Bまでの長さが、0.5mm以上3mm以下となるように、コンデンサ素子から陽極箔(より具体的には、第1部分)および絶縁部材の一部を除去することが好ましい。
【0107】
ここで、第4工程の一例を、
図4を参照しながら説明する。
図4は、第3工程で作製された中間体(外装体で覆われたコンデンサ素子)の一例を模式的に示す断面図である。
コンデンサ素子30は、除去予定端部21aを含む第1部分21および第2端部2aを含む第2部分2を有する陽極箔23と、除去予定端部21aを含む第1部分21の上に配置された絶縁部材32とを備える。絶縁部材32は、除去予定端部21a側の端部Cおよび第2部分2側の端部Bを有する。上記以外、コンデンサ素子30は、
図2に示すコンデンサ素子10と同様の構成を有する。外装体34は、第1部分21の除去予定端部21aおよび絶縁部材32の端部Cを覆っている。陽極側の外部電極および陰極側の外部電極は、配置されていない。上記以外、中間体31は、
図2に示す電解コンデンサ11と同様の構成を有する。
【0108】
第3工程で
図4に示す中間体31を作製する場合、第4工程では、
図4に示す破線Xに沿って、第1部分21および絶縁部材32を外装体34とともに部分的に除去して、コンデンサ素子30から除去予定端部21aを含む第1部分21および端部Cを含む絶縁部材32の一部を切り離す。このようにして、
図2に示す、第1側面14aを有する外装体14と、外装体14から露出する第1端部1aを含む第1部分1と、外装体14から露出する端部Aを含む絶縁部材12とを形成することができる。第1端部1aおよび端部Aは、それぞれ、外装体の第1側面14aと面一の端面を有する。
【0109】
(第5工程)
第5工程では、外装体から露出する陽極箔(第1端部)の端面を、陽極側の外部電極と接触させる。第1端部の端面と外部電極との接触は、両者間で電気的な接続が得られればよく、接合などにより行ってもよい。第1端部の端面と外部電極との接触には、電解めっき法、無電解めっき法、物理蒸着法、化学蒸着法、コールドスプレー法、および/または溶射法を用いることが好ましい。この場合、外装電極を、第1端部と密着させることができる。第4工程において、陽極箔とともにスペーサおよび/または絶縁部材とを部分的に除去した場合、外部電極は、第1端部とともに、スペーサの端部および/または絶縁部材の端部Aと密着させることができる。第4工程で、外装体から露出する面一の端面を有する第1部分の第1端部とスペーサの端部および/または絶縁部材の端部Aとが形成されるため、外部電極を、第1端部と接合するとともに、スペーサの端部および/または絶縁部材の端部Aと密着させ易い。
【0110】
陽極側の外部電極は、陽極側の第1電極層および第2電極層を備えることが好ましい。第5工程は、少なくとも外装体から露出する陽極箔の端面とともに外装体の露出面の少なくとも一部を陽極側の第1電極層で覆う工程と、陽極側の第1電極層の表面に陽極側の第2電極層を形成する工程と、を含むことが好ましい。陽極側の第1電極層および第2電極層には、上記で例示したものを用いることができる。陽極箔の端面および外装体の露出面を第1電極層で覆う工程では、陽極箔の端面および外装体の露出面の少なくとも一部とともに、外装体から露出する絶縁部材の端部Aの端面および/またはスペーサの端面を第1電極層で覆ってもよい。
【0111】
(第7工程)
さらに、陰極部を陰極側の外部電極と接触させる第7工程を行ってもよい。陰極側の外部電極には、陽極側の外部電極で例示するものを用いることができる。
図1~3に示す構造の電解コンデンサを作製する場合、外装体から露出する複数の陰極部の第2端部側の端部および複数の接着層の第2端部側の端部を、陰極側の外部電極と電気的に接続するように接触させればよく、例えば、接合させてもよい。この場合、第3工程で、複数の陰極部の第2端部側の端部および接着層の第2端部側の端部が露出するように、外装体を形成すればよい。
【0112】
(第8工程)
スペーサを備える電解コンデンサを製造する場合、第8工程において、コンデンサ素子積層体の隣接するコンデンサ素子間の第1部分側にスペーサを配置する。第8工程は、第3工程に先立って行うことができる。より具体的には、スペーサは、複数のコンデンサ素子を積層し、コンデンサ素子積層体を形成する際、またはコンデンサ素子積層体を形成した後に、複数の第1部分の間に挟まれるように設けられる。
【0113】
本発明を現時点での好ましい実施態様に関して説明したが、そのような開示を限定的に解釈してはならない。種々の変形および改変は、上記開示を読むことによって本発明に属する技術分野における当業者には間違いなく明らかになるであろう。したがって、添付の請求の範囲は、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく、すべての変形および改変を包含する、と解釈されるべきものである。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明に係る電解コンデンサは、高湿雰囲気に曝された場合でも、優れた封止性が求められる様々な用途に利用できる。
【符号の説明】
【0115】
1:第1部分(陽極引出部)、1a:第1端部、2:第2部分(陰極形成部)、2a:第2端部、3:陽極箔、4:芯部、5:多孔質部、6:陰極部、6a:陰極部の第2端部側の端部、7:固体電解質層、8:カーボン層、9:銀ペースト層、10:コンデンサ素子、11:電解コンデンサ、12:分離層(絶縁部材)、13:接着層、13a:接着層の第2端部側の端部、14:外装体、14a:外装体の第1側面、14b:外装体の第2側面、15:陽極側の外部電極、15a:陽極側の第1電極層、15b:陽極側の第2電極層、16:陰極側の外部電極、16a:陰極側の第1電極層、16b:陰極側の第2電極層、17:スペーサ、17a:スペーサの露出端面、21:中間体の第1部分、21a:除去予定端部、23:中間体の陽極箔、30:中間体のコンデンサ素子、31:中間体、32:中間体の絶縁部材、34:中間体の外装体、A:絶縁部材の第1端部側の端部、B:絶縁部材の第1部分側の端部、C:絶縁部材の除去予定端部側の端部