(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】電動開閉体制御装置、電動開閉システム、プログラム
(51)【国際特許分類】
E06B 9/165 20060101AFI20241025BHJP
E06B 9/68 20060101ALI20241025BHJP
【FI】
E06B9/165
E06B9/68 A
(21)【出願番号】P 2021137456
(22)【出願日】2021-08-25
【審査請求日】2024-01-22
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】中原 雅之
(72)【発明者】
【氏名】山田 颯一郎
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-520961(JP,A)
【文献】特開2019-100012(JP,A)
【文献】実開昭60-058796(JP,U)
【文献】特開2021-110144(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 9/165
E06B 9/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスラットが組み合わされたシャッターカーテンを巻き取り可能な巻き取り軸に回転動力を出力する電動部と、
前記電動部の回転を制御する制御部とを備え、
前記シャッターカーテンにおける前記複数のスラットは、隣接した2つのスラット間に形成されるスリットが開閉可能なようにスライド可能であり、
前記電動部により前記シャッターカーテンが下降する場合、前記シャッターカーテンの下端部が下降不能になるまでの下降期間において各スリットは開いており、前記シャッターカーテンの下端部が下降不能になってからの閉鎖期間において下側のスリットから順に閉じていき、
前記閉鎖期間では、隣接した2つのスラットが接触するタイミングを含む第1期間と、前記第1期間以外の第2期間とが交互に発生し、
前記制御部は、前記第1期間における前記電動部の第1回転速度を、前記第2期間における前記電動部の第2回転速度よりも遅くする、
電動開閉体制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記下降期間における前記電動部を第3回転速度で回転させる、
請求項1に記載の電動開閉体制御装置。
【請求項3】
前記第3回転速度は前記第1回転速度よりも速い、
請求項2に記載の電動開閉体制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記電動部により前記シャッターカーテンが上昇する場合、前記電動部を第4回転速度で回転させる、
請求項1から3のいずれか1項に記載の電動開閉体制御装置。
【請求項5】
前記第4回転速度は前記第1回転速度よりも速い、
請求項4に記載の電動開閉体制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記シャッターカーテンが下降を開始してから前記シャッターカーテンへの荷重がしきい値を超えたときの前記電動部の回転角度を前記下降期間が終了する際の前記電動部の回転角度として設定する、
請求項1から5のいずれか1項に記載の電動開閉体制御装置。
【請求項7】
前記電動部はブラシレスモータであり、
前記制御部はベクトル制御によって前記電動部の回転を制御する、
請求項1から6のいずれか1項に記載の電動開閉体制御装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の電動開閉体制御装置と、
前記電動開閉体制御装置と接続される電動開閉体と、
を備える電動開閉システム。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか1項に記載の電動開閉体制御装置に実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、開閉体技術に関し、電動により電動開閉体を開閉する電動開閉体制御装置、電動開閉システム、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電動シャッター装置には、シャッターに人等を誤って引き込まない仕組みが必要になる。つまり、シャッターカーテンの作動が障害物などにより妨げられると、モータが過負荷に陥りうるので、モータに負荷がかかり過ぎる過負荷状態を検知する装置が求められる。例えば、シャッターカーテンの位置情報と、モータの負荷状態に関する電流情報とが関連づけて記憶され、運用状態において計測した電流値が、そのときの位置情報に対応した電流情報を逸脱した場合に、過負荷状態が検出される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
採風機能または採光機能を電動シャッターに追加するために、電動シャッターにスリットが設けられる。しかしながら、スリットを閉じる場合に騒音が発生する。そのため、静音性が求められる。
【0005】
本開示はこうした状況に鑑みなされたものであり、その目的は、スリットを備えた電動シャッターにおける静音性を向上する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の電動開閉体制御装置は、複数のスラットが組み合わされたシャッターカーテンを巻き取り可能な巻き取り軸に回転動力を出力する電動部と、電動部の回転を制御する制御部とを備える。シャッターカーテンにおける複数のスラットは、隣接した2つのスラット間に形成されるスリットが開閉可能なようにスライド可能であり、電動部によりシャッターカーテンが下降する場合、シャッターカーテンの下端部が下降不能になるまでの下降期間において各スリットは開いており、シャッターカーテンの下端部が下降不能になってからの閉鎖期間において下側のスリットから順に閉じていき、閉鎖期間では、隣接した2つのスラットが接触するタイミングを含む第1期間と、第1期間以外の第2期間とが交互に発生し、制御部は、第1期間における電動部の第1回転速度を、第2期間における電動部の第2回転速度よりも遅くする。
【0007】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本開示の表現を方法、装置、システム、コンピュータプログラム、またはコンピュータプログラムを記録した記録媒体などの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、スリットを備えた電動シャッターにおける静音性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1(a)-(b)は、実施例に係るシャッターシステムの構造を示す図である。
【
図2】
図1(a)-(b)のシャッターシステムの内部構造を示す図である。
【
図3】
図1(a)-(b)のシャッターシステムの構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4(a)-(b)は、
図1(a)-(b)のシャッターシステムの動作概要を示す図である。
【
図5】
図5(a)-(d)は、
図1(a)-(b)のシャッターシステムの動作概要を示す図である。
【
図6】
図3の第2検出部においてなされる2軸変換の概要を示す図である。
【
図7】
図3の電流制御部における回転角度と電流値との関係を示す図である。
【
図8】
図3の電流制御部における制御内容を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の実施例を具体的に説明する前に、本実施例の概要を説明する。実施例は、住宅等の施設の開口部に設置されるシャッターシステムに関する。シャッターシステムは電動シャッターであり、電動シャッターはシャッター動作を自動化する。電動シャッターは、一般的に、シャッターカーテンが開状態でユーザが「閉」ボタンを一度押すと、シャッターカーテンのスラットが最下部に到達するまで閉動作を続ける。開閉の電動化を実現する電動シャッターに加えて、採風・採光機能を備えた高機能な電動シャッターも開発されている。採風・採光機能は、風・光を取り入れる機能である。例えば、電動シャッターのスラットがスライド可能に構成され、隣接した2つのスラットの間隔が広がることによって隣接した2つのスラットの間にスリットが形成される。
【0011】
電動シャッターの構成の複雑化を抑制するために、シャッターカーテンの開閉のためのモータと、スリットの開閉のためのモータが共通化される。その際、スリットの開閉状態にかかわらず、一定速度で開閉動作がなされる。スラットが金属製である場合、スリットを閉じる動作においてスラット同士が衝突することにより、衝撃音が発生して音が響く。電動シャッターは、タイマー機能で深夜・早朝に開閉することが多く、音が響きやすい環境下での衝撃音は周辺住居にも響く可能性がある。また、シャッターの電動化による利点として、動作音が静かになるという効果があるが、高機能シャッターはこの衝撃音があるため、静音化と相反する。
【0012】
本実施例に係る電動シャッターは、スラットが接触する際に発生する衝撃音を下げるために、モータ回転速度を一時的に低下させる。具体的に説明すると、スラットが接触するタイミングでは、シャッターの開閉速度を一時的に遅くする。これ以外のタイミングでは、シャッターを通常速度で開閉する。そのため、静音性が実現されるとともに、一時的に開閉速度を遅くしても合計の開閉時間への影響が低減される。
【0013】
以下では、(1)基本構造、(2)スリット付構造の順に説明する。
(1)基本構造
基本構造は、本実施例に係るシャッターシステム1000のうち、スリットに関する構造を省略した構造に相当する。
図1(a)-(b)は、シャッターシステム1000の構造を示す。
図1(a)は、施設を屋外から見た場合の構成を示し、
図1(b)は、施設を屋内から見た場合の構成を示す。シャッターシステム1000は、ガイドレール20、シャッターカーテン30、シャッターケース40、通信線200、コントローラ300を含み、シャッターカーテン30は、スラット32を含む。ここで、ガイドレール20、シャッターカーテン30、シャッターケース40はシャッターに含まれる。
【0014】
図1(a)に示されるように、開閉体であるシャッターは、住宅やビル等の施設において内外を仕切る外壁に形成された開口部10に設置される。開口部10は、施設において内外を連通する空間である。2つのガイドレール20は、上下方向に延びる形状を有するとともに、開口部10の左右方向の両側に互いに離間して、開口部10に設置されたサッシ等の枠材と外壁とに固定される。各ガイドレール20は、横断面略コ字状の内部構造を有する中空状の部材であり、2つのガイドレール20は、コ字状の開口が対向するように固定される。
【0015】
シャッターカーテン30は、ガイドレール20の長手方向に沿って上下に移動し、開口部10を開閉する。具体的には、シャッターカーテン30の左右方向両端部がガイドレール20に挿入されることによって、シャッターカーテン30の左右方向両端部は、ガイドレール20によって上下方向に移動可能である。シャッターカーテン30は、複数のスラット32の組合せによって構成される。各スラット32は、開口部10の左右方向に沿って延在する板状の部材であって、例えば、スチール、ステンレス、アルミニウム等により形成される。各スラット32の上端部と下端部にカール部(図示せず)が設けられており、隣接する2つのスラット32のうち、上側のスラット32の下端部のカール部と、下側のスラット32の上端部のカール部とは、回転自在に連結される。複数のスラット32が組み合わされたシャッターカーテン30の構造のさらなる詳細は後述する。
【0016】
シャッターケース40は、開口部10およびガイドレール20の上方に設けられる縦断面略矩形状の収容体である。シャッターケース40は内部に収納空間を有するとともに、シャッターケース40の下面に設けられた貫通孔を介して収納空間は外部につながる。収納空間には、貫通孔を介してシャッターカーテン30を巻き取ったり、あるいは繰り出したりするための巻き取り機構が設けられる。ここで、「巻き取り」とは、シャッターカーテン30がガイドレール20に沿って上昇し、開口部10が開放されることであり、「繰り出し」とは、シャッターカーテン30がガイドレール20に沿って降下し、開口部10が閉鎖されることである。
【0017】
図1(b)に示されるように、開口部10を囲むようにサッシ12が取り付けられる。
図1(a)のシャッターケース40に接続された通信線200は、サッシ12の内部に埋没されて屋内まで延びる。屋内の壁面にはコントローラ300が設置され、コントローラ300に通信線200が接続される。このように通信線200は、屋外に設置された電動化ユニット100と、屋内に設置されたコントローラ300とを接続する。
【0018】
図2は、シャッターシステム1000の内部構造を示す。シャッターシステム1000は、シャッターカーテン30、シャッターケース40、巻き取り軸60を含む。シャッターカーテン30は、スラット32、ねじ34を含み、シャッターケース40は、ブラケット42と総称される第1ブラケット42a、第2ブラケット42b、支持軸44と総称される第1支持軸44a、第2支持軸44bを含む。巻き取り軸60は、回転枠62と総称される第1回転枠62a、第2回転枠62b、従動輪64、巻き取りばね66、固定部72、電動化ユニット80を含み、電動化ユニット80は、本体82、駆動輪84を含み、本体82は、モータ86、制御部88、減速機90、通信線200を含む。電動化ユニット80は、電動開閉体制御装置とも呼ばれる。
【0019】
ここでは、シャッターケース40の内部構造を示すためにシャッターケース40が透明にして示される。シャッターケース40には、
図1(a)のガイドレール20の左右の方向に延びる筒状の支柱である巻き取り軸60が配置される。巻き取り軸60には複数の固定部72が設けられており、複数のねじ34を使用して複数の固定部72にシャッターカーテン30が固定される。そのため、巻き取り軸60は、シャッターカーテン30を巻き取り可能な軸であるといえる。
【0020】
シャッターケース40の収納空間の左側端部と右側端部には、巻き取り軸60を左右から挟むように、ブラケット42と総称される第1ブラケット42aと第2ブラケット42bが設けられる。具体的には、巻き取り軸60の左側には第1ブラケット42aが配置され、巻き取り軸60の右側には第2ブラケット42bが配置される。第1ブラケット42aは、巻き取り軸60の左側端部を回転可能に支持する支持部であり、第2ブラケット42bは、巻き取り軸60の右側端部を回転可能に支持する支持部である。巻き取り軸60の左側端部を「第1端部」と呼ぶ場合、巻き取り軸60の右側端部は「第2端部」と呼ばれる。
【0021】
第1ブラケット42aの右側面には、右側に向かって突出する第1支持軸44aが設けられる。第1支持軸44aは筒形状を有し、第1支持軸44aの側面には第1回転枠62aが嵌合される。第1回転枠62aは、巻き取り軸60の左側端部に配置されるとともに、第1支持軸44aの側面を囲む形状を有する。このような構造により、第1ブラケット42aに固定された第1支持軸44aを中心にして、第1回転枠62aが回転する。第2ブラケット42bの左側面には、左側に向かって突出する第2支持軸44bが設けられる。第2支持軸44bは筒形状を有し、第2支持軸44bの側面には第2回転枠62bが嵌合される。第2回転枠62bは、巻き取り軸60の右側端部に配置されるとともに、第2支持軸44bの側面を囲む形状を有する。このような構造により、第2ブラケット42bに固定された第2支持軸44bを中心にして、第2回転枠62bが回転する。さらに、第1回転枠62aと第2回転枠62bの回転によって巻き取り軸60も回転する。
【0022】
巻き取り軸60の内部の右側領域には、保持部(図示せず)が配置され、保持部に電動化ユニット80が取り付けられる。電動化ユニット80は、巻き取り軸60に回転動力を出力する電動装置である。電動化ユニット80は、筒形状を有する本体82と、本体82の左側に配置される駆動輪84を含む。このような駆動輪84は、電動化ユニット80において巻き取り軸60の中央側を向いているともいえる。本体82の内部にはモータ86、制御部88、減速機90が搭載されており、モータ86の回転によって減速機90と駆動輪84も回転する。制御部88はモータ86の回転を制御する。特に、制御部88は、電動化ユニット80のモータ86を回転させるための電流の値を制御する。
【0023】
巻き取り軸60の内部において、保持部の左側の領域、つまり電動化ユニット80に対して巻き取り軸60の中央側の領域には、従動輪64が設けられる。従動輪64は、駆動輪84の左側に配置されており、駆動輪84と組み合わされた場合に駆動輪84の回転によって回転する。また、従動輪64の回転によって巻き取り軸60も回転する。その結果、巻き取り軸60は、電動化ユニット80からの回転動力により回転するといえる。一方、駆動輪84と従動輪64とが組み合わされていない場合、巻き取り軸60は、電動化ユニット80からの回転動力ではなく、手動の回転動力により回転する。手動による巻き取り軸60の回転については説明を省略する。
【0024】
ここで、保持部は、本体82の側面の一部分、例えば、本体82の側面のうち、下側を含む部分を保持する。また、保持部の右側端部は第2支持軸44bに接続される。この接続により保持部は第2ブラケット42bに固定されるので、巻き取り軸60が回転する場合であっても、保持部に保持される本体82は回転しない。
【0025】
さらに詳細に説明すると、電動化ユニット80の本体82では、制御部88による制御によってモータ86が回転する。減速機90は、モータ86の回転動力のトルクを増幅させる。減速機90には公知の技術が使用されればよいが、例えば、太陽歯車を中心として、複数の遊星歯車が自転しつつ公転する構造を有する。減速機90の回転により駆動輪84が回転すると、駆動輪84と組み合わされた従動輪64も回転し、巻き取り軸60が回転する。
【0026】
図1(a)のようにシャッターカーテン30が開口部10を閉鎖した全閉状態から、巻き取り軸60が巻き取りの方向に回転すると、シャッターカーテン30は、巻き取り軸60の外周面に沿って巻き取られながら開口部10を開放する。この回転が継続すると、シャッターカーテン30は、1周目の回転において巻き取られたシャッターカーテン30上に積層されながら巻き取られ、開口部10の全域を開放する。また、シャッターカーテン30が開口部10を開放した全開状態から、巻き取り軸60が繰り出しの方向に回転すると、巻き取り軸60の外周面に積層されたシャッターカーテン30が順次繰り出される。この回転が継続すると、シャッターカーテン30は開口部10の全域を閉鎖する。
【0027】
図3は、シャッターシステム1000の構成を示すブロック図である。シャッターシステム1000は、電動化ユニット80、通信線200、コントローラ300を含む。電動化ユニット80は、モータ86、制御部88を含み、制御部88は、第1接続部410、第1有線通信部412、位置制御部414、第1検出部416、速度制御部418、微分部420、電流制御部422、第2検出部424、記憶部454を含む。コントローラ300は、操作部310、操作制御部312、第2有線通信部314、第2接続部316を含む。
【0028】
コントローラ300の操作部310は、複数のボタンを有するユーザインターフェイスであり、ユーザの操作を受けつける。コントローラ300の表面には、開ボタン、停止ボタン、閉ボタンが設けられる。開ボタン、停止ボタン、閉ボタンは例えば平面スイッチで構成される。開ボタンは、開口部10を開放するようにシャッターカーテン30を移動させるための指示(以下、「開放指示」という)を受けつけるボタンである。停止ボタンは、移動しているシャッターカーテン30を停止させるための指示(以下、「停止指示」という)を受けつけるボタンである。閉ボタンは、開口部10を閉鎖するようにシャッターカーテン30を移動させるための指示(以下、「閉鎖指示」という)を受けつけるボタンである。開ボタン、停止ボタン、閉ボタンのうちの1つが押し下げられることによって、開放指示、停止指示、閉鎖指示のうちの1つに応じた操作信号が操作部310から操作制御部312に出力される。
【0029】
操作制御部312は、操作部310から操作信号を受けつける。操作制御部312は、操作信号において示された開放指示、停止指示、閉鎖指示のうちの1つが含まれた指示信号を生成する。第2有線通信部314は、操作制御部312から指示信号を受けつけ、第2接続部316、通信線200を介して指示信号を電動化ユニット80に送信する。
【0030】
第2接続部316は、コントローラ300に通信線200を接続するためのインターフェイスである。また、電動化ユニット80の第1接続部410も通信線200を接続するためのインターフェイスである。第2接続部316に通信線200が接続されるとともに、第1接続部410に通信線200が接続されることによって、通信線200は、コントローラ300と電動化ユニット80とを接続する。このような接続によって、コントローラ300から電動化ユニット80に向かって、通信線200は、指示信号を伝送する。コントローラ300は屋内に設置され、電動化ユニット80は屋外に設置されるので、屋内から屋外に指示信号が送信される。
【0031】
第1有線通信部412は、第2接続部316、通信線200、第1接続部410を介して、第2有線通信部314からの指示信号を受信する。第1有線通信部412は、指示信号に含まれた開放指示、停止指示、閉鎖指示のうちの1つを位置制御部414に出力する。位置制御部414は、開放指示、停止指示、閉鎖指示のうちの1つを第1有線通信部412から受けつける。
【0032】
位置制御部414は、受けつけた開放指示、停止指示、閉鎖指示のうちの1つに応じて、シャッターカーテン30の位置(下端の位置)の目標値を更新する。例えば、位置制御部414は、開放指示を受けつけている場合に、これまでの目標値を高くするように更新する。また、位置制御部414は、第1検出部416からシャッターカーテン30の位置の帰還値を受けつける。第1検出部416における位置の帰還値の検出方法については後述する。ここで、シャッターカーテン30の位置は、モータ86の回転の角度として示されてもよいが、以下では説明を明瞭にするために角度も位置に含める。位置制御部414は、目標値と帰還値の少なくとも1つが上限位置あるいは下限位置に達するまで、あるいは停止指示があるまでは非ゼロの一定速度で動作させるための速度の目標値を出力する。
【0033】
微分部420は、第1検出部416からシャッターカーテン30の位置の帰還値を受けつけ、位置の帰還値を微分することによって、速度の帰還値を導出する。微分部420は速度の帰還値を速度制御部418に出力する。速度制御部418は、位置制御部414から速度の目標値を受けつけ、微分部420から速度の帰還値を受けつける。速度制御部418は、速度の目標値から速度の帰還値を減じることによって速度偏差を導出してから、比例・積分制御等の速度ループ処理を行ってトルク(電流)の目標値を導出する。
【0034】
電流制御部422は、速度制御部418からトルク(電流)の目標値を受けつける。また、電流制御部422からモータ86に出力される電流の大きさ、つまり電動化ユニット80のモータ86に供給される総電流の値は第2検出部424において検出され、電流制御部422は、検出された電流の帰還値を受けつける。第2検出部424は例えばシャント抵抗により構成される。電流制御部422は、電流の帰還値がトルク(電流)の目標値に近づくように、モータ86に出力すべき電流の大きさを決定する。これは、モータ86を回転させるための電流を制御することに相当し、この決定には公知の技術が使用されればよい。つまり、速度制御部418と電流制御部422は、第1検出部416において検出した位置の変化、つまり速度に応じて、モータ86を回転させるための電流の値を決定する。
【0035】
電流制御部422から出力される電流の値に応じた速度でモータ86が回転する。モータ86は、巻き取り軸60に回転動力を出力する。モータ86が3相ブラシレスモータである場合、電流制御部422からは3相の直流電流が出力される。
【0036】
このような構成により、制御部88は、制御信号が開放指示に相当する場合、巻き取り軸60が巻き取りの方向に回転するようにモータ86を回転させ、制御信号が閉鎖指示に相当する場合、巻き取り軸60が繰り出しの方向に回転するようにモータ86を回転させる。巻き取り方向におけるモータ86の回転方向と、繰り出しの方向におけるモータ86の回転方向とは逆方向である。一方、制御部88は、制御信号が停止指示に相当する場合、モータ86の回転を停止させる。モータ86は制御部88に応じて回転し、開口部10を開閉するシャッターカーテン30、巻き取り軸60等に動力を供給する。
【0037】
モータ86の回転方向に応じてシャッターカーテン30が開閉される場合に、シャッターカーテン30の位置は第1検出部416で検出される。第1検出部416は、例えば、モータ86の側部に設けられ、モータ86の回転数を機械的にカウントして開閉位置あるいは上下限位置を検出するカウンタ式リミットスイッチにより構成される。また、第1検出部416は、モータ86に設けられたエンコーダによりパルスをカウントすることによって、シャッターカーテン30の開閉位置あるいは上下限位置を検出する構成であってもよい。また、第1検出部416は、モータ86の電流検出回路で構成され、モータ86に加わる負荷変動に対応した電流値変化から開閉位置あるいは上下限位置を検出する構成であってもよい。さらに、第1検出部416は、ガイドレール20の上下に設けられてシャッターカーテン30の開閉位置あるいは上下限位置を直接検出する機械的あるいは電気的なリミットスイッチであってもよい。第1検出部416において検出された位置は、位置制御部414、微分部420に出力される。
【0038】
(2)スリット付構造
以下では、これまで説明したシャッターシステム1000に付加されるスリットの構造を説明する。
図4(a)-(b)は、シャッターシステム1000の動作概要を示す。
図4(a)は、
図2の巻き取り軸60、シャッターカーテン30を側面から見た場合の構造を示す。
図4(a)に示す巻き取り軸60の回転角度において、巻き取り軸60から下側に向かって複数のスラット32が垂れ下がるとともに、一番下のスラット32(以下、「第1スラット32a」ともいう)の下端部は下面14に到達していない。
【0039】
隣接した2つのスラット32の間にはスライド部材36が配置される。スライド部材36は、スラット32を上下方向にスライドさせる部材であり、隣接した2つのスライド部材36の間にスリット38が開いたり、閉じたりする。
図4(a)のように下端部が下面14に到達していない状態では、スラット32に加わる重力により、隣接した2つのスライドのうちの下側のスラット32が下側に向かって移動する。その結果、露出しているすべてのスラット32の間のスリット38が開けられる。
【0040】
図4(b)に示す巻き取り軸60の回転角度において、巻き取り軸60から下側に向かって複数のスラット32が垂れ下がるとともに、第1スラット32aの下端部が下面14に到達している。モータ86の回転によって、第1スラット32aの上側のスラット32(以下、「第2スラット32b」ともいう)が下側に向かって移動する。その結果、第1スラット32aと第2スラット32bとの間のスリット38が閉じられる。一方、第2スラット32bの上側のスラット32(以下、「第3スラット32c」ともいう)は、下側に向かって移動していないので、第2スラット32bと第3スラット32cとの間のスリット38は開かれる。また、スライド部材36は、シャッターカーテン30が巻き取り軸60に巻き取られる場合、スラット32ととともに巻き取り軸60に沿って曲がる。
【0041】
図5(a)-(d)は、シャッターシステム1000の動作概要を示す。
図5(a)は、
図4(a)と同様に、第1スラット32aが下面14に到達していない状態におけるシャッターシステム1000の構造を示す。シャッターカーテン30における複数のスラット32は、下側から順に第1スラット32a、第2スラット32b、第3スラット32c、・・・のように示される。ここでも、隣接したスラット32の間のスリット38はすべて開けられる。
【0042】
図5(b)は、
図5(a)よりもシャッターカーテン30を繰り出すことによって、第1スラット32aが下面14に到達した状態におけるシャッターシステム1000の構造を示す。ここでも、隣接したスラット32の間のスリット38はすべて開けられる。
【0043】
図5(c)は、
図5(b)からシャッターカーテン30がさらに繰り出された状態におけるシャッターシステム1000の構造を示す。シャッターカーテン30の繰り出しによって、下側のスラット32から順に下側に向かってスライドする。例えば、第2スラット32bが下側に向かって移動することによって第1スラット32aと第2スラット32bとが接触し、第3スラット32cが下側に向かって移動することによって第2スラット32bと第3スラット32cとが接触する。さらに、第4スラット32dと第5スラット32eも同様に下側に向かって移動することによって、第3スラット32cと第4スラット32dとが接触し、第4スラット32dと第5スラット32eとが接触する。その結果、これらのスラット32の間のスリット38は閉じられる。一方、第6スラット32fは下側に向かって移動しないので、第5スラット32eと第6スラット32fとは離間する。そのため、第5スラット32eと第6スラット32fとの間のスリット38は開けられる。
【0044】
図5(d)は、
図5(c)からシャッターカーテン30がさらに繰り出された状態におけるシャッターシステム1000の構造を示す。すべてのスラット32が下側に向かって移動するので、隣接したスラット32がすべて接触する。その結果、すべてのスラット32の間のスリット38は閉じられる。これまでは、シャッターカーテン30が繰り出される場合の動作を説明したが、シャッターカーテン30が巻き取られる場合は、シャッターシステム1000は、
図5(d)、
図5(c)、
図5(b)、
図5(a)の順に遷移すればよい。
【0045】
このようなシャッターシステム1000の繰り出しにおいて
図5(b)から
図5(c)に遷移する場合、接触する2つのスラット32間において衝撃音が発生しうる。例えば、第1スラット32aと第2スラット32bとの間で衝撃音が発生すると、これに続いて第2スラット32bと第3スラット32cとの間で衝撃音が発生する。さらに、これに続いて、第3スラット32cと第4スラット32dとの間で衝撃音が発生すると、第4スラット32dと第5スラット32eとの間で衝撃音が発生する。本実施例において、隣接する2つのスラット32が接触する場合において、衝撃音の発生を抑制するために、以下の処理を実行する。
【0046】
以下では、このようなシャッターカーテン30に対するシャッターシステム1000の動作を(2-1)初期設定、(2-2)通常動作の順に説明する。
(2-1)初期設定
コントローラ300に対する操作により、電動化ユニット80のモータ86が回転することによってシャッターカーテン30の開閉動作がなされる。その際、第1検出部416は、シャッターカーテン30の位置、つまりモータ86の回転の角度(以下、「回転角度」という)を検出し、第2検出部424は、モータ86を回転させるための電流値を検出する。回転角度は、例えばカウンタの値で示され、電流値は、例えば3相の電流のトルク成分である。
【0047】
第2検出部424での処理をさらに具体的に説明すると、第2検出部424は、モータ86に流れる電流値のトルク成分を検出する。モータ86が3相ブラシレスモータである場合、3相ブラシレスモータに出力される3相の直流電流は、u相、v相、w相と示される。また、各相の電流ベクトルの合成ベクトルが周期的に角度を変化することによって、3相ブラシレスモータは回転する。第2検出部424は、u相、v相、w相の電流ベクトルを受けつけ、これらに対してq軸、d軸への2軸変換を実行する。このような変換には公知の行列演算が実行されればよいので、ここでは説明を省略する。
【0048】
図6は、第2検出部424においてなされる2軸変換の概要を示す。互い直交したu相、v相、w相が示されるとともに、互いに直交したd軸とq軸が示される。ここで、d軸は励磁成分を示しq軸はトルク成分を示す。合成ベクトルは、2軸変換により、d軸方向の励磁ベクトルとq軸方向のトルクベクトルの組合せに変換される。これは、3相ブラシレスモータにおける3相の電流を、励磁成分とトルク成分との組合せに変換することに相当する。励磁成分とトルク成分のうち、トルク成分は外力による負荷に比例する特性がある。つまり、トルク成分には、合計荷重のトルクの変化が反映される。
図3に戻る。第1検出部416は、回転角度を電流制御部422に出力し、第2検出部424は、電流値の情報を電流制御部422に出力する。
【0049】
図7は、電流制御部422における回転角度と電流値との関係を示す。前述のごとく、回転角度は第1検出部416から受けつけられ、電流値は第2検出部424から受けつけられる。横軸が回転角度を示し、縦軸が電流値(トルク電流)を示す。横軸を右側に向かうと回転角度が増加し、回転角度が増加するほどシャッターカーテン30が下降する。回転角度が「A1」より小さい場合に、回転角度が減少するとともに電流値が増加する。この増加は、シャッターカーテン30が上限位置に到達するとき、摩擦による反力が増加するためである。そのため、回転角度が「A1」の状態は、シャッターカーテン30が開口部10を全て開放した状態(以下、「完全開放状態」という)である。
【0050】
回転角度が「A2」より大きい場合に、回転角度が増加するとともに電流値が増加し、回転角度が「A3」より大きい場合に、回転角度が増加するとともに電流値がさらに増加する。これらの増加は、シャッターカーテン30が下限位置に到達するとき、摩擦による反力が増加するためである。特に、回転角度が「A2」の状態は、
図5(b)のごとく、シャッターカーテン30が開口部10を全て閉鎖しているが、全てのスリット38が開放している状態(以下、「中間閉鎖状態」という)である。
【0051】
回転角度が「A1」と「A2」との間において、スラット32の重量、巻き取りばね66の荷重のバランスが取れているので、電流値は一定範囲で変動する。これは、シャッターカーテン30が開口部10を一部閉鎖し、かつ全てのスリット38が開放している状態である。
【0052】
回転角度が「A3」の状態は、
図5(d)のごとく、シャッターカーテン30が開口部10を全て閉鎖し、全てのスリット38が閉鎖している状態(以下、「完全閉鎖状態」という)である。回転角度が「A2」から「A3」に向かうと、スリット38が閉じ始めるので、スラット32の重量が減少する。一方、モータ86の回転に伴って、巻き取りばね66の荷重が増加する。その結果、巻き取りばね66の荷重に偏重した荷重バランスになるので、電流値は回転角度の増加に比例して増加する。
【0053】
シャッターカーテン30が下降する場合の回転角度が「A1」から「A2」の間、つまり完全開放状態から中間閉鎖状態に遷移する間は、「下降期間」と呼ばれる。下降期間は、モータ86によりシャッターカーテン30が下降する場合に、シャッターカーテン30の下端部が下降不能になるまでの期間であり、かつ各スリット38が開いている期間であるといえる。また、シャッターカーテン30が下降する場合の回転角度が「A2」から「A3」の間、つまり中間閉鎖状態から完全閉鎖状態に遷移する間は、「閉鎖期間」と呼ばれる。閉鎖期間は、シャッターカーテン30の下端部が下降不能になってから、下側のスリット38から順に閉じていく期間であるといえる。さらに、シャッターカーテン30が上昇する場合の回転角度「A3」から「A1」の間、つまり完全閉鎖状態から中間閉鎖状態を介して完全開放状態に遷移する間は、「上昇期間」と呼ばれる。
【0054】
図8は、電流制御部422における制御内容を示す。横軸が回転角度を示し、縦軸がモータ86の回転速度を示す。横軸は、
図7における閉鎖期間だけを対象にする。回転角度が増加するにしたがって、「C2」、「C4」、「C6」において隣接した2つのスラット32の接触が生じる。例えば、回転角度「C2」において第1スラット32aと第2スラット32bとの接触が生じ、回転角度「C4」において第2スラット32bと第3スラット32cとの接触が生じ、回転角度「C6」において第3スラット32cと第4スラット32dとの接触が生じる。
【0055】
ここでは、2つのスラット32の接触が生じる回転角度と、当該回転角度から所定の角度だけ前の回転角度との間は「第1期間」と定義される。例えば、回転角度「C1」から「C2」の間、回転角度「C3」から「C4」の間、回転角度「C5」から「C6」の間のそれぞれが「第1期間」である。第1期間は、隣接した2つのスラット32が接触するタイミングを含む期間であるといえる。また、閉鎖期間における第1期間以外の期間は「第2期間」と定義される。例えば、回転角度「C2」から「C3」の間、回転角度「C4」から「C5」の間のそれぞれが「第2期間」である。つまり、閉鎖期間では、第1期間と第2期間とが交互に発生する。回転速度については後述し、
図3に戻る。
【0056】
初期設定においては、完全開放状態、中間閉鎖状態、完全閉鎖状態のそれぞれにおける回転角度の値が
図3の記憶部454に記憶される。例えば、完全開放状態、中間閉鎖状態、完全閉鎖状態のそれぞれを確認した設定者が、所定のインターフェースを利用して、それらのときの回転角度の値を記憶部454に記憶させる。また、完全開放状態、中間閉鎖状態、完全閉鎖状態のそれぞれにおける電流値に対応するしきい値を予め設定しており、第2検出部424からの電流値が各しきい値を超えたときの回転角度の値が記憶部454に記憶されてもよい。これは、シャッターカーテン30が下降を開始してからシャッターカーテン30への荷重がしきい値を超えたときのモータ86の回転角度を下降期間が終了する際のモータ86の回転角度として設定することに相当する。
【0057】
初期設定において、第1期間と第2期間のそれぞれにおける始点と終点に対する回転角度の値が
図3の記憶部454に記憶される。第1期間と第2期間のそれぞれにおける始点と終点に対する回転角度の値の記憶は、完全開放状態、中間閉鎖状態、完全閉鎖状態のそれぞれにおける回転角度の値の記憶と同様になされればよいので、ここでは説明を省略する。
【0058】
記憶部454は、閉鎖期間の第1期間におけるモータ86の回転速度(以下、「第1回転速度」という)の値、閉鎖期間の第2期間におけるモータ86の回転速度(以下、「第2回転速度」という)の値を記憶する。また、記憶部454は、下降期間におけるモータ86の回転速度(以下、「第3回転速度」という)の値、上昇期間におけるモータ86の回転速度(以下、「第4回転速度」という)の値を記憶する。ここで、第1回転速度は、第2回転速度、第3回転速度、第4回転速度よりも遅くされる。第2回転速度、第3回転速度、第4回転速度は異なっていてもよいし、同一であってもよい。第1回転速度から第4回転速度は予め定められていればよい。
【0059】
(2-2)通常動作
コントローラ300に対する操作により、電動化ユニット80のモータ86が回転することによってシャッターカーテン30の開閉動作がなされる。その際、第1検出部416は、モータ86の回転角度を検出し、第2検出部424は、電流値を検出する。第1検出部416は、回転角度を電流制御部422に出力し、第2検出部424は、電流値の情報を電流制御部422に出力する。
【0060】
ここでは、説明を明瞭にするために、シャッターカーテン30が完全開放状態、中間閉鎖状態、完全閉鎖状態の順に下降する場合を想定する。電流制御部422は、第1検出部416から受けつけた回転角度と、回転角度の変化をもとに、シャッターカーテン30が完全開放状態から中間閉鎖状態に向かって下降していること、つまり下降期間であることを特定する。電流制御部422は、記憶部454から下降期間に対応した第3回転速度の値を取得する。電流制御部422は、モータ86が第3回転速度になるように、第2検出部424からの電流値を調節してモータ86に出力する。その結果、下降期間において、モータ86が第3回転速度で回転する。
【0061】
電流制御部422は、第1検出部416から受けつけた回転角度と、回転角度の変化をもとに、シャッターカーテン30が中間閉鎖状態から完全閉鎖状態に遷移していること、つまり閉鎖期間であることを特定する。これに続いて、電流制御部422は、第1検出部416から受けつけた回転角度をもとに、第1期間であるか、あるいは第2期間であるかを特定する。電流制御部422は、第1期間であると特定した場合、記憶部454から第1期間に対応した第1回転速度の値を取得する。電流制御部422は、モータ86が第1回転速度になるように、第2検出部424からの電流値を調節してモータ86に出力する。その結果、第1期間において、モータ86が第1回転速度で回転する。一方、電流制御部422は、第2期間であると特定した場合、記憶部454から第2期間に対応した第2回転速度の値を取得する。電流制御部422は、モータ86が第2回転速度になるように、第2検出部424からの電流値を調節してモータ86に出力する。その結果、第2期間において、モータ86が第2回転速度で回転する。
【0062】
前述のごとく、第1期間と第2期間とが交互に発生するので、モータ86の回転速度は、第1回転速度と第2回転速度との間で切りかえられる。特に、隣接した2つのスラット32が接触するタイミングにおいて、第1回転速度よりも遅い第2回転速度にされているので、衝撃音の発生が抑制される。また、第2期間において、第1回転速度よりも速い第2回転速度にされているので、中間閉鎖状態から完全閉鎖状態への期間の延長が抑制される。さらに、下降期間において、第1回転速度よりも速い第3回転速度にされているので、完全開放状態から中間閉鎖状態への期間が維持される。
【0063】
次に、シャッターカーテン30が完全閉鎖状態、中間閉鎖状態、完全開放状態の順に上昇する場合を想定する。電流制御部422は、第1検出部416から受けつけた回転角度の変化をもとに、シャッターカーテン30が完全閉鎖状態、中間閉鎖状態、完全開放状態の順に遷移していること、つまり上昇期間であることを特定する。電流制御部422は、記憶部454から上昇期間に対応した第4回転速度の値を取得する。電流制御部422は、モータ86が第4回転速度になるように、第2検出部424からの電流値を調節してモータ86に出力する。その結果、上昇期間において、モータ86が第4回転速度で回転する。
【0064】
本開示における装置、システム、または方法の主体は、コンピュータを備えている。このコンピュータがプログラムを実行することによって、本開示における装置、システム、または方法の主体の機能が実現される。コンピュータは、プログラムにしたがって動作するプロセッサを主なハードウェア構成として備える。プロセッサは、プログラムを実行することによって機能を実現することができれば、その種類は問わない。プロセッサは、半導体集積回路(IC)、またはLSI(Large Scale Integration)を含む1つまたは複数の電子回路で構成される。複数の電子回路は、1つのチップに集積されてもよいし、複数のチップに設けられてもよい。複数のチップは1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に備えられていてもよい。プログラムは、コンピュータが読み取り可能なROM、光ディスク、ハードディスクドライブなどの非一時的記録媒体に記録される。プログラムは、記録媒体に予め格納されていてもよいし、インターネット等を含む広域通信網を介して記録媒体に供給されてもよい。
【0065】
本実施例によれば、シャッターカーテン30の下降時に、シャッターカーテン30の下端部が下降不能になってからの閉鎖期間において、隣接した2つのスラット32が接触するタイミングを含む第1期間での第1回転速度を、第1期間以外の第2回転速度よりも遅くするので、静音性を向上できる。また、第2期間において、第1期間での第1回転速度よりも速い第2回転速度を使用するので、シャッターカーテン30の下降に要する期間が長くなることを抑制できる。また、シャッターカーテン30の下端部が下降不能になるまでの下降期間において、第1回転速度よりも速い第3回転速度を使用するので、シャッターカーテン30の下降に要する期間が長くなることを抑制できる。
【0066】
また、シャッターカーテン30が上昇する場合に、第1回転速度よりも速い第4回転速度を使用するので、シャッターカーテン30の上昇に要する期間を維持できる。また、シャッターカーテン30が下降を開始してから荷重がしきい値を超えたときの回転角度を下降期間が終了する際の回転角度として設定するので、回転角度を正確に設定できる。また、ベクトル制御によってモータ86の回転を制御するので、制御の精度を向上できる。
【0067】
本開示の一態様の概要は、次の通りである。本開示のある態様の電動開閉体制御装置(80)は、複数のスラット(32)が組み合わされたシャッターカーテン(30)を巻き取り可能な巻き取り軸に回転動力を出力する電動部(86)と、電動部(86)の回転を制御する制御部(88)とを備える。シャッターカーテン(30)における複数のスラット(32)は、隣接した2つのスラット(32)間に形成されるスリットが開閉可能なようにスライド可能であり、電動部(86)によりシャッターカーテン(30)が下降する場合、シャッターカーテン(30)の下端部が下降不能になるまでの下降期間において各スリットは開いており、シャッターカーテン(30)の下端部が下降不能になってからの閉鎖期間において下側のスリットから順に閉じていき、閉鎖期間では、隣接した2つのスラット(32)が接触するタイミングを含む第1期間と、第1期間以外の第2期間とが交互に発生し、制御部(88)は、第1期間における電動部(86)の第1回転速度を、第2期間における電動部(86)の第2回転速度よりも遅くする。
【0068】
制御部(88)は、下降期間における電動部(86)を第3回転速度で回転させる。
【0069】
第3回転速度は第1回転速度よりも速い。
【0070】
制御部(88)は、電動部(86)によりシャッターカーテン(30)が上昇する場合、電動部(86)を第4回転速度で回転させる。
【0071】
第4回転速度は第1回転速度よりも速い。
【0072】
制御部(88)は、シャッターカーテン(30)が下降を開始してからシャッターカーテン(30)への荷重がしきい値を超えたときの電動部(86)の回転角度を下降期間が終了する際の電動部(86)の回転角度として設定する。
【0073】
電動部(86)はブラシレスモータであり、制御部(88)はベクトル制御によって電動部(86)の回転を制御する。
【0074】
電動開閉体制御装置(80)と、電動開閉体制御装置(80)と接続される電動開閉体と、を備えてもよい。
【0075】
以上、本開示を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素あるいは各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0076】
10 開口部、 12 サッシ、 14 下面、 20 ガイドレール、 30 シャッターカーテン、 32 スラット、 34 ねじ、 36 スライド部材、 38 スリット、 40 シャッターケース、 42 ブラケット、 44 支持軸、 60 巻き取り軸、 62 回転枠、 64 従動輪、 66 巻き取りばね、 72 固定部、 80 電動化ユニット(電動開閉体制御装置)、 82 本体、 84 駆動輪、 86 モータ(電動部)、 88 制御部、 90 減速機、 200 通信線、 300 コントローラ、 310 操作部、 312 操作制御部、 314 第2有線通信部、 316 第2接続部、 410 第1接続部、 412 第1有線通信部、 414 位置制御部、 416 第1検出部、 418 速度制御部、 420 微分部、 422 電流制御部、 424 第2検出部、 454 記憶部、 1000 シャッターシステム。