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特許7576760蓄電パックの認証方法、蓄電パック、充電装置、電動移動体、及び電動移動体の制御装置
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  • 特許-蓄電パックの認証方法、蓄電パック、充電装置、電動移動体、及び電動移動体の制御装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】蓄電パックの認証方法、蓄電パック、充電装置、電動移動体、及び電動移動体の制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20241025BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20241025BHJP
   B60L 53/65 20190101ALI20241025BHJP
   B60L 53/66 20190101ALI20241025BHJP
   B60L 53/80 20190101ALI20241025BHJP
   B60L 58/18 20190101ALI20241025BHJP
   H01M 10/42 20060101ALI20241025BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20241025BHJP
【FI】
H02J7/00 P
B60L50/60
B60L53/65
B60L53/66
B60L53/80
B60L58/18
H01M10/42 P
H01M10/48 P
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021573041
(86)(22)【出願日】2020-12-28
(86)【国際出願番号】 JP2020049227
(87)【国際公開番号】W WO2021149468
(87)【国際公開日】2021-07-29
【審査請求日】2023-10-11
(31)【優先権主張番号】P 2020009035
(32)【優先日】2020-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【弁理士】
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】濱本 克昭
(72)【発明者】
【氏名】倉貫 正明
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 綾佑
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-181246(JP,A)
【文献】国際公開第2018/174233(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/181702(WO,A1)
【文献】特開2017-123768(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
B60L 50/60
B60L 53/65
B60L 53/66
B60L 53/80
B60L 58/18
H01M 10/42
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動移動体から第1蓄電パックが脱着されるとき、前記電動移動体の制御部が、前記第1蓄電パックに保持されている識別情報と同じ識別情報を含む信号を、近距離無線通信で送信するステップと、
充電装置の制御部が、前記近距離無線通信で送信された信号を受信し、かつ前記充電装置の第1充電スロットに、前記電動移動体から脱着された第1蓄電パックが装着されると、前記電動移動体から受信した識別情報を、前記第1蓄電パックと交換すべき、第2充電スロットに装着されている第2蓄電パックの制御部に有線経由で送信するステップと、
前記第2充電スロットから脱着された前記第2蓄電パックが前記電動移動体に装着されると、前記第2蓄電パックの制御部が、前記充電装置から受信した識別情報を含む信号を、前記近距離無線通信で送信するステップと、
前記電動移動体の制御部が、前記近距離無線通信で送信された信号を受信した場合、受信した信号に含まれる識別情報が、前記第1蓄電パックに保持されていた識別情報と一致するか否か照合し、一致した場合、前記電動移動体に装着された前記第2蓄電パックと、前記近距離無線通信の通信相手が同一であると認証するステップと、
を有することを特徴とする蓄電パックの認証方法。
【請求項2】
前記第2充電スロットから脱着された前記第2蓄電パックが前記電動移動体に装着された後、前記第2蓄電パックの制御部が、前記充電装置から受信した識別情報を含む信号を送信する前に、前記電動移動体の制御部が、前記電動移動体に装着された前記第2蓄電パックの制御部に有線経由で、前記第1蓄電パックに保持されていた識別情報を送信するステップと、
前記第2蓄電パックの制御部が、前記充電装置から受信した識別情報と、前記電動移動体から受信した識別情報とを照合し、照合結果を有線経由で前記電動移動体の制御部に送信するステップと、
をさらに有し、
前記第2蓄電パックの制御部は、前記照合結果が不一致の場合、前記充電装置から受信した識別情報を含む信号、前記近距離無線通信で送信することを保留することを特徴とする請求項1に記載の蓄電パックの認証方法。
【請求項3】
前記充電装置の制御部が、前記電動移動体の制御部から識別情報を受信し、かつ前記充電装置の第1充電スロットに、前記電動移動体から脱着された第1蓄電パックが装着されると、前記第1蓄電パックの制御部に有線経由で別の識別情報を送信するステップと、
前記第1蓄電パックの制御部が、前記充電装置から受信した前記別の識別情報を含む信号を、前記近距離無線通信で送信するステップと、
前記充電装置の制御部が、前記近距離無線通信で送信された信号を受信した場合、受信した信号に含まれる識別情報が、前記有線経由で送信した前記別の識別情報と一致するか否か照合し、一致した場合、前記第1充電スロットに装着された前記第1蓄電パックと、前記近距離無線通信の通信相手が同一であると認証するステップと、
をさらに有することを特徴とする請求項1または2に記載の蓄電パックの認証方法。
【請求項4】
前記近距離無線通信は、BLE(Bluetooth (登録商標) Low Energy)であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の蓄電パックの認証方法。
【請求項5】
電動移動体に給電するための蓄電部と、
前記電動移動体の制御部、及び充電装置の制御部と通信可能な制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記電動移動体から脱着されて、前記充電装置の充電スロットに本蓄電パックが装着された後、前記充電装置の制御部が前記電動移動体の制御部から受信した識別情報を、本蓄電パックの充電完了後に、前記充電装置の制御部から有線経由で受信し、
前記充電スロットから脱着されて、本蓄電パックが前記電動移動体に装着されると、前記充電装置から受信した識別情報を含む信号を、近距離無線通信で送信し、
前記近距離無線通信で送信された信号は、前記電動移動体の制御部において、前記電動移動体に装着された蓄電パックと、前記近距離無線通信の通信相手が同一であるか否か認証するために使用される、
ことを特徴とする蓄電パック。
【請求項6】
前記制御部は、
本蓄電パックが前記電動移動体に装着された後、前記充電装置から受信した識別情報を含む信号を前記近距離無線通信で送信する前に、前記電動移動体の制御部から有線経由で識別情報を受信し、
前記充電装置から受信した識別情報と、前記電動移動体から受信した識別情報とを照合し、照合結果を有線経由で前記電動移動体に送信するとともに、前記照合結果が不一致の場合、前記充電装置から受信した識別情報を含む信号を、前記近距離無線通信で送信することを保留する、
ことを特徴とする請求項5に記載の蓄電パック。
【請求項7】
複数の充電スロットと、
蓄電パックの制御部、及び電動移動体の制御部と通信可能な制御部と、を備え、
前記制御部は、
第1充電スロットに、前記電動移動体から脱着された第1蓄電パックが装着されると、前記電動移動体の制御部から、前記第1蓄電パックが保持している識別情報を近距離無線通信で受信し、
前記電動移動体から受信した識別情報を、前記第1蓄電パックと交換すべき、第2充電スロットに装着されている第2蓄電パックの制御部に有線経由で送信し、
前記第1充電スロットに装着されている前記第1蓄電パックの制御部に、別の識別情報を有線経由で送信し、
近距離無線通信で送信された信号を受信した場合、受信した信号に含まれる識別情報が、前記有線経由で送信した前記別の識別情報と一致するか否か照合し、一致した場合、前記第1充電スロットに装着された前記第1蓄電パックと、前記近距離無線通信の通信相手が同一であると認証する、
ことを特徴とする充電装置。
【請求項8】
モータと、
蓄電パックの制御部、及び充電装置の制御部と通信可能な制御部と、を備え、
前記制御部は、
本電動移動体から第1蓄電パックが脱着されるとき、前記第1蓄電パックに保持されている識別情報と同じ識別情報を含む信号を、近距離無線通信で送信し、
前記充電装置の第1充電スロットに前記第1蓄電パックが装着された後、前記第1蓄電パックと交換すべき、前記充電装置の第2充電スロットから脱着された第2蓄電パックが本電動移動体に装着されたとき、前記近距離無線通信で信号を受信した場合、受信した信号に含まれる識別情報が、前記第1蓄電パックに保持されていた識別情報と一致するか否か照合し、一致した場合、本電動移動体に装着された前記第2蓄電パックと、前記近距離無線通信の通信相手が同一であると認証する、
ことを特徴とする電動移動体。
【請求項9】
前記制御部は、
前記第2蓄電パックが本電動移動体に装着されると、前記第2蓄電パックの制御部に有線経由で、前記第1蓄電パックに保持されていた識別情報を送信し、
前記第2蓄電パックの制御部が、前記充電装置から受信した識別情報と本電動移動体から受信した識別情報とを照合した照合結果を、前記第2蓄電パックの制御部から有線経由で受信する、
請求項8に記載の電動移動体。
【請求項10】
電動移動体の制御装置であって、
前記電動移動体から第1蓄電パックが脱着されるとき、前記第1蓄電パックに保持されている識別情報と同じ識別情報を含む信号を、近距離無線通信で送信し、
充電装置の第1充電スロットに前記第1蓄電パックが装着された後、前記第1蓄電パックと交換すべき、前記充電装置の第2充電スロットから脱着された第2蓄電パックが前記電動移動体に装着されたとき、前記近距離無線通信で信号を受信した場合、受信した信号に含まれる識別情報が、前記第1蓄電パックに保持されていた識別情報と一致するか否か照合し、一致した場合、前記電動移動体に装着された前記第2蓄電パックと、前記近距離無線通信の通信相手が同一であると認証する、
ことを特徴とする電動移動体の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動移動体に着脱自在な蓄電パックの認証方法、蓄電パック、充電装置、電動移動体、及び電動移動体の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電動バイク(電動スクータ)や電動自転車が普及してきている。通常、電動バイクや電動自転車では、着脱自在な可搬型の電池パックが使用される。バイク(スクータ)の動力源として電池を使用する場合、ガソリン等の液体燃料を使用する場合より、エネルギ補給にかかる時間が長くなる(給油時間より充電時間のほうが長くなる)。
【0003】
そこで、電池パックの残容量が少なくなった場合、最寄りの充電スタンドにて、予め充電された電池パックと、当該残容量が少なくなった電池パックとを交換することにより、エネルギ補給にかかる時間を短縮する仕組みを構築することが考えられる。
【0004】
ところで、蓄電装置を搭載した車両と、外部の給電装置を充電ケーブルで接続した際、無線通信を利用して、車両と給電装置との間の接続確認を行う手法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-125186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の手法では、蓄電装置が車両内に固定されていることを前提としており、車両外に取外されることは想定されていない。これに対して、電池パックの交換を伴う上記の仕組みでは、電池パックと無線通信可能な範囲に、複数の車両または複数の充電器が存在する状況が発生し得る。
【0007】
このような状況下では、ある車両の制御部が、近隣の別の車両に装着された電池パックを誤って制御する可能性がある。また、充電器の制御部が、ある充電スロットに装着された制御すべき電池パックを制御せずに、別の充電スロットに装着された制御すべきでない電池パックを誤って制御する可能性がある。このような場合、充電システム全体の安全、安心が担保できなくなる。
【0008】
本開示はこうした状況に鑑みなされたものであり、その目的は、無線通信を用いて蓄電パックを制御する電動移動体または充電装置が、装着された蓄電パックを正しく識別するための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の蓄電パックの認証方法は、電動移動体から第1蓄電パックが脱着されるとき、前記電動移動体の制御部が、前記第1蓄電パックに保持されている識別情報と同じ識別情報を含む信号を、近距離無線通信で送信するステップと、前記充電装置の制御部が、前記近距離無線通信で送信された信号を受信し、かつ前記充電装置の第1充電スロットに、前記電動移動体から脱着された第1蓄電パックが装着されると、前記電動移動体から受信した識別情報を、前記第1蓄電パックと交換すべき、第2充電スロットに装着されている第2蓄電パックの制御部に有線経由で送信するステップと、前記第2充電スロットから脱着された前記第2蓄電パックが前記電動移動体に装着されると、前記第2蓄電パックの制御部が、前記充電装置から受信した識別情報を含む信号を、前記近距離無線通信で送信するステップと、前記電動移動体の制御部が、前記近距離無線通信で送信された信号を受信した場合、受信した信号に含まれる識別情報が、前記第1蓄電パックに保持されていた識別情報と一致するか否か照合し、一致した場合、前記電動移動体に装着された前記第2蓄電パックと、前記近距離無線通信の通信相手が同一であると認証するステップと、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、無線通信を用いて蓄電パックを制御する電動移動体または充電装置が、装着された蓄電パックを正しく識別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態に係る、交換式の電池パックを用いた車両システムの概念図である。
図2】実施の形態に係る充電装置の構成例を示す図である。
図3】実施の形態に係る車両の構成例を示す図である。
図4】実施の形態に係る、車両に搭載された電池パックと車両制御部のシステム構成例を示す図である。
図5】車両の装着スロットに装着された電池パックを車両制御部が認証する処理の基本概念を示す図である。
図6】車両の装着スロットに装着された電池パックを交換する際の、交換後の電池パックへのID付与の流れを概略的に示す図である。
図7】車両の装着スロットに装着された電池パックを交換する際の、詳細な処理の流れを示すシーケンス図である(その1)。
図8】車両の装着スロットに装着された電池パックを交換する際の、詳細な処理の流れを示すシーケンス図である(その2)。
図9図8に示した処理の変形例に係る処理の流れを示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、実施の形態に係る、交換式の電池パック10を用いた車両システム1の概念図である。当該車両システム1では、複数の電池パック10、少なくとも一つの充電装置20、複数の車両30が使用される。本実施の形態では、車両30として電動バイク(電動スクータ)を想定する。
【0013】
電池パック10は、着脱自在な可搬式・交換式の電池パックであり、車両30の装着スロットにも、充電装置20の充電スロットにも装着することができる。電池パック10は、充電装置20の充電スロットに装着された状態で充電される。充電済みとなった電池パック10は、ユーザ(通常、車両30の運転者)により取出され、車両30の装着スロットに装着される。車両30の装着スロットに装着された電池パック10は、車両30の走行時に放電し、放電に伴い残容量が低下する。残容量が低下した電池パック10は、ユーザにより取出され、充電装置20の充電スロットに装着される。ユーザは、充電装置20の別の充電スロットから充電済みの電池パック10を取出し、車両30の装着スロットに装着する。この作業により、残容量が低下した電池パック10が、充電済みの電池パック10に交換される。これにより、ユーザは電池パック10が充電される間、待つ必要がなく、短時間で車両30の走行を再開させることができる。
【0014】
この方式では電池パック10の着脱が頻繁に発生するため、車両30の装着スロットのコネクタ部分、又は充電装置20の充電スロットのコネクタ部分と接触する電池パック10のコネクタ部分の劣化が進行しやすくなる。この対策として本実施の形態では、車両30又は充電装置20と、電池パック10間の制御信号の授受を無線通信で行う。これにより、コネクタから通信線用の端子をなくすことができる。コネクタには電力線用の端子が設けられていれば足りる。本実施の形態では、制御信号の授受にコネクタを介した有線通信を使用しないため、コネクタ不良により制御信号が遮断されることを防止することができる。
【0015】
車両30と電池パック10間の無線通信、充電装置20と電池パック10間の無線通信、及び車両30と充電装置20間の無線通信には、近距離無線通信を使用する。近距離無線通信としてBluetooth(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)、赤外線通信などを使用することができる。以下、本実施の形態では近距離無線通信として、BLE(Bluetooth (登録商標) Low Energy)を使用することを想定する。
【0016】
BLEは、Bluetooth(登録商標)の拡張規格の一つであり、2.4GHz帯を使用した低消費電力な近距離無線通信規格である。BLEは、ボタン電池一つで数年間駆動可能な程度に低消費電力であるため、電池駆動に適しており、電池パック10の残容量に与える影響をほぼ無視して考えることができる。また、BLE通信用のモジュールは市場に数多く出荷されているため、低コストで入手することができる。また、BLEはスマートフォンとの親和性が高く、スマートフォンと連携した様々なサービスを提供することができる。
【0017】
一般的なクラス2のデバイスを使用した場合、BLEの電波到達範囲は約10mになる。したがって、BLEの通信圏内に、複数の車両30、複数の電池パック10、及び充電装置20が存在する状態が発生し得る。充電装置20には複数の充電スロットが設けられているため、充電装置20は、複数の充電スロットに装着された複数の電池パック10とそれぞれ無線通信する必要がある。即ち、充電装置20と複数の電池パック10との間で、1:Nのネットワークが構成されることになる。車両30に複数の装着スロットが設けられる場合も同様に、車両30は、複数の装着スロットに装着された複数の電池パック10とそれぞれ無線通信する必要がある。即ち、車両30と複数の電池パック10との間で、1:Nのネットワークが構成されることになる。
【0018】
したがって、充電装置20の特定の充電スロットに装着された電池パック10と、充電装置20の特定の通信相手の電池パック10が同一であることを担保する仕組みが必要となる。同様に、車両30の特定の装着スロットに装着された電池パック10と、車両30の特定の通信相手の電池パック10が同一であることを担保する仕組みが必要となる。本実施の形態では、識別情報(ID)を用いて、物理的に接続された電池パック10と、無線通信で接続された電池パック10との同一性を確認する。この識別情報(ID)は、テンポラルな識別情報でよい。なお、当該識別情報(ID)に、各装置に固有の識別情報を含めてもよい。
【0019】
図2は、実施の形態に係る充電装置20の構成例を示す図である。充電装置20は、充電台21、制御部22、表示部27、操作部28、及び充電部29を備える。制御部22は、処理部23、アンテナ25、及び無線通信部26を少なくとも含む。
【0020】
充電台21は、複数の電池パック10を装着するための複数の充電スロットSLc1-SLc8を有する。図2に示す例では充電スロットの数が8であるが、充電スロットの数は2以上であればよく、例えば4でもよい。
【0021】
各充電スロットSLc1-SLc8は、正極端子及び負極端子を含むコネクタを有し、電池パック10が装着されると、電池パック10のコネクタに含まれる正極端子及び負極端子とそれぞれ導通する。各充電スロットSLc1-SLc8のコネクタに含まれる負極端子部分、及び電池パック10のコネクタに含まれる負極端子部分は、それぞれベタGNDで構成されてもよい。その場合、電池パック10のコネクタに含まれるピンを、正極端子ピンの一本にすることができ、不具合が発生しやすいコネクタの突起部分を減らすことができる。
【0022】
充電台21に装着された各電池パック10の処理部13(図4参照)は、近距離無線通信および電力線を利用して、制御部22内の処理部23と制御信号を送受信する。両者の間の御部信号の具体的な送受信方法は後述する。
【0023】
各充電スロットSLc1-SLc8の正極端子及び負極端子は、充電部29の正極端子及び負極端子にそれぞれ接続される。充電部29は商用電力系統2に接続され、充電台21に装着された電池パック10を充電することができる。充電部29は、商用電力系統2から供給される交流電力を全波整流し、フィルタで平滑化することにより直流電力を生成する。
【0024】
充電部29の正極端子及び負極端子と、各充電スロットSLc1-SLc8の正極端子及び負極端子との間には、図示しないリレーがそれぞれ設けられる。処理部23は、当該リレーのオン(クローズ)/オフ(オープン)を制御することにより、各充電スロットSLc1-SLc8の導通/遮断を制御する。
【0025】
なお、充電部29の正極端子及び負極端子と、各充電スロットSLc1-SLc8の正極端子及び負極端子との間には、図示しないDC/DCコンバータがそれぞれ設けられてもよい。その場合、処理部23は、当該DC/DCコンバータを制御することにより、各電池パック10の充電電圧または充電電流を制御することができる。例えば、定電流(CC)充電または定電圧(CV)充電を行うことができる。なお、当該DC/DCコンバータは、電池パック10内に設けられていてもよい。なお、電池パック10内にAC/DCコンバータが搭載されている場合、充電部29から交流電力で電池パック10を充電することもできる。
【0026】
処理部23は例えば、マイクロコンピュータで構成される。無線通信部26は近距離無線通信処理を実行する。本実施の形態では、無線通信部26はBLEモジュールで構成され、アンテナ25はBLEモジュールに内蔵されるチップアンテナ、またはパターンアンテナで構成される。無線通信部26は、近距離無線通信で受信したデータを処理部23に出力するとともに、処理部23から入力されるデータを近距離無線通信で送信する。
【0027】
処理部23は、充電台21に装着されている電池パック10から電池の状態情報を取得することができる。電池の状態情報として、電池パック10内の複数のセルE1-En(図4参照)の電圧、電流、温度、SOC(State Of Charge)、SOH(State Of Health)の少なくとも一つの情報を取得することができる。
【0028】
表示部27はディスプレイを備え、ディスプレイに、充電装置20を使用するユーザ(通常、車両30の運転者)へのガイダンスを表示する。操作部28は、タッチパネル等のユーザインタフェースであり、ユーザの操作を受け付ける。なお、充電装置20はスピーカ(不図示)をさらに含み、スピーカからユーザへの音声ガイダンスを出力してもよい。
【0029】
図3は、実施の形態に係る車両30の構成例を示す図である。車両30は、電池装着部31、車両制御部32、メータパネル39、インバータ310、モータ311、及びタイヤ312を備える。車両制御部32は、処理部33、アンテナ35、及び無線通信部36を少なくとも含む。
【0030】
電池装着部31は、少なくとも一つの電池パック10を装着するための、少なくとも一つの装着スロットSLa1-SLa2を有する。図3に示す例では装着スロットの数が2であるが、装着スロットの数は1でもよいし、3以上でもよい。
【0031】
各装着スロットSLa1-SLa2は、正極端子及び負極端子を含むコネクタを有し、電池パック10が装着されると、電池パック10のコネクタに含まれる正極端子及び負極端子とそれぞれ導通する。各装着スロットSLa1-SLa2のコネクタに含まれる負極端子部分は、ベタGNDで構成されてもよい。
【0032】
電池装着部31に装着された各電池パック10の処理部13(図4参照)は、近距離無線通信および電力線を利用して、車両制御部32内の処理部33と制御信号を送受信する。両者の間の御部信号の具体的な送受信方法は後述する。
【0033】
複数の装着スロットSLa1-SLa2の複数の正極端子は正側の電力バスにそれぞれ接続され、複数の負極端子は負側の電力バスにそれぞれ接続される。したがって、複数の装着スロットSLa1-SLa2に装着された複数の電池パック10は、電気的に並列接続された関係になる。よって、電池装着部31に装着される電池パック10の数が増えるほど、容量が増加する。なお、複数の装着スロットSLa1-SLa2に装着された複数の電池パック10を電気的に直列接続してもよい。その場合、出力電圧を高くすることができる。
【0034】
電池装着部31の正極端子及び負極端子は、メインリレーRYmを介してインバータ310の正極端子及び負極端子と接続される。メインリレーRYmは、車両30と電池パック10間のコンタクタとして機能する。処理部33は、メインリレーRYmのオン/オフを制御することにより、車両30と電池パック10間の導通/遮断を制御する。
【0035】
インバータ310は力行時、電池装着部31に装着されている電池パック10から供給される直流電力を交流電力に変換してモータ311に供給する。回生時、モータ311から供給される交流電力を直流電力に変換して、電池装着部31に装着されている電池パック10に供給する。モータ311は三相交流モータであり、力行時、インバータ310から供給される交流電力に応じて回転する。回生時、減速による回転エネルギーを交流電力に変換してインバータ310に供給する。モータ311の回転軸は、後輪のタイヤ312の回転軸に連結される。なお、モータ311の回転軸とタイヤ312の回転軸との間に、変速機が設けられてもよい。
【0036】
車両制御部32は車両30全体を制御する車両ECU(Electronic Control Unit)である。車両制御部32の処理部33は、マイクロコンピュータで構成される。無線通信部36は近距離無線通信処理を実行する。本実施の形態では、無線通信部36はBLEモジュールで構成され、アンテナ35はBLEモジュールに内蔵されるチップアンテナ、またはパターンアンテナで構成される。無線通信部36は、近距離無線通信で受信したデータを処理部33に出力するとともに、処理部33から入力されるデータを近距離無線通信で送信する。
【0037】
処理部33は、電池装着部31に装着されている電池パック10から電池の状態情報を取得することができる。電池の状態情報として、電池パック10内の複数のセルE1-En(図4参照)の電圧、電流、温度、SOC、SOHの少なくとも一つの情報を取得することができる。また処理部33は、車両30の速度を取得することができる。
【0038】
メータパネル39は、車両30の状態情報を表示する。例えば、車両30の速度、電池パック10の残容量(SOC)を表示する。運転者は、メータパネル39に表示された電池パック10の残容量(SOC)を見て、電池パック10の交換の必要性を判断することができる。
【0039】
図4は、実施の形態に係る、車両30に搭載された電池パック10と車両制御部32のシステム構成例を示す図である。図4に示す例は、2つの電池パック10a、10bが、車両30の電池装着部31に装着されている状態である(図3参照)。
【0040】
電池パック10は、電池モジュール11及び電池制御部12を含む。電池モジュール11は、電池パック10の正極端子Tpと負極端子Tmを内部で繋ぐ電力線上に接続される。電池パック10の正極端子TpはスロットリレーRYsを介して正側の電力バスに接続され、電池パック10の負極端子Tmは負側の電力バスに接続される。正側の電力バス及び負側の電力バスは、メインリレーRYmを介してインバータ310に接続される(図3参照)。
【0041】
電池モジュール11は、直列接続された複数のセルE1-Enを含む。なお電池モジュール11は、複数の電池モジュールが直列または直並列接続されて構成されていてもよい。セルには、リチウムイオン電池セル、ニッケル水素電池セル、鉛電池セル等を用いることができる。以下、本明細書ではリチウムイオン電池セル(公称電圧:3.6-3.7V)を使用する例を想定する。セルE1-Enの直列数は、モータ311の駆動電圧に応じて決定される。
【0042】
電池パック10の正極端子Tpと電池モジュール11との間のノードN1から、通信用経路が分岐される。当該ノードN1と電池モジュール11との間に、電力リレーRYpが挿入される。電池パック10の正極端子Tpと負極端子Tmを内部で繋ぐ電力線上に電流センサ17が設置される。電流センサ17は、電力リレーRYpより負極端子Tm側の位置に設置される。電流センサ17は、電池モジュール11に流れる電流を計測し、計測した電流値を電池制御部12の処理部13に出力する。電流センサ17は例えば、シャント抵抗、差動アンプ及びA/D変速器の組み合わせで構成することができる。なお、シャント抵抗の代わりにホール素子を使用してもよい。
【0043】
電池制御部12は、処理部13、電圧計測部14、アンテナ15、及び無線通信部16を含む。電圧計測部14と、直列接続された複数のセルE1-Enの各ノードとの間は複数の電圧計測線で接続される。電圧計測部14は、隣接する2本の電圧計測線間の電圧をそれぞれ計測することにより、各セルE1-Enの電圧を計測する。電圧計測部14は、計測した各セルE1-Enの電圧値を処理部13に送信する。
【0044】
電圧計測部14は処理部13に対して高圧であるため、電圧計測部14と処理部13間は絶縁された状態で、通信線で接続される。電圧計測部14は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)または汎用のアナログフロントエンドICで構成することができる。電圧計測部14はマルチプレクサ及びA/D変換器を含む。マルチプレクサは、隣接する2本の電圧計測線間の電圧を上から順番にA/D変換器に出力する。A/D変換器は、マルチプレクサから入力されるアナログ電圧をデジタル値に変換する。
【0045】
図4には示してないが、複数のセルE1-Enの近傍に少なくとも一つの温度センサが設置される。温度センサは、複数のセルE1-Enの温度を計測し、計測した温度値を処理部13に出力する。温度センサは例えば、サーミスタ、分圧抵抗、及びA/D変速器の組み合わせで構成することができる。
【0046】
なお、処理部13内にA/D変換器が搭載されており、処理部13にアナログ入力ポートが設置されている場合、電流センサ17及び温度センサの出力値をアナログ値のまま処理部13に入力することができる。
【0047】
嵌合検出部18は、電池パック10のコネクタと車両30の電池装着部31のコネクタの嵌合状態を検出する。例えば、電池パック10側のコネクタがメス型コネクタで構成され、車両30の電池装着部31側のコネクタがオス型コネクタで構成されてもよい。嵌合検出部18は、両者の接続状態に応じた起動信号を処理部13に出力する。当該起動信号は2値信号で規定され、両者が接続された状態でオン信号が出力され、両者が分離された状態でオフ信号が出力される。嵌合検出部18は例えば、リードスイッチにより構成することができる。この場合、嵌合検出部18は、両者の接続の有無を磁気的に判定する。なお、両者の接続の有無を機構的に検知するセンサを使用してもよい。
【0048】
無線通信部16は近距離無線通信処理を実行する。本実施の形態では、無線通信部16はBLEモジュールで構成され、アンテナ15はBLEモジュールに内蔵されるチップアンテナ、またはパターンアンテナで構成される。無線通信部16は、近距離無線通信で受信したデータを処理部13に出力するとともに、処理部13から入力されるデータを近距離無線通信で送信する。
【0049】
電池パック10の正極端子Tpと電池モジュール11との間のノードN1と、処理部13が通信用経路で接続される。当該通信用経路上に、ヒューズF1、抵抗R1、及びパック側通信リレーRYcが直列に接続される。ヒューズF1は、電力線から処理部13に過電流が流入することを阻止するための保護素子である。
【0050】
処理部13はマイクロコンピュータで構成される。処理部13は、嵌合検出部18から入力される起動信号がオンになると起動し、オフになるとシャットダウンする。なお、シャットダウンの代わりに、スタンバイ状態またはスリープ状態に移行してもよい。
【0051】
処理部13は、パック側通信リレーRYcのオン/オフを制御することにより、ノードN1と処理部13間の通信用経路の導通/遮断を制御する。処理部13は、電圧計測部14、電流センサ17及び温度センサにより計測された複数のセルE1-Enの電圧値、電流値、及び温度値をもとに複数のセルE1-Enの状態を管理する。例えば、過電圧、過小電圧、過電流、高温異常、又は低温異常が発生した場合、処理部13は電力リレーRYpをオフして、複数のセルE1-Enを保護する。
【0052】
処理部13は、複数のセルE1-EnのそれぞれのSOC及びSOHを推定することができる。処理部13は、OCV(Open Circuit Voltage)法、又は電流積算法によりSOCを推定することができる。SOHは、初期の満充電容量に対する現在の満充電容量の比率で規定され、数値が低いほど(0%に近いほど)劣化が進行していることを示す。SOHは、完全充放電による容量計測により求めてもよいし、保存劣化とサイクル劣化を合算することにより求めてもよい。保存劣化はSOC、温度、及び保存劣化速度をもとに推定することができる。サイクル劣化は、使用するSOC範囲、温度、電流レート、及びサイクル劣化速度をもとに推定することができる。保存劣化速度およびサイクル劣化速度は、予め実験やシミュレーションにより導出することができる。SOC、温度、SOC範囲、及び電流レートは計測により求めることができる。
【0053】
またSOHは、セルの内部抵抗との相関関係をもとに推定することもできる。内部抵抗は、セルに所定の電流を所定時間流した際に発生する電圧降下を、当該電流値で割ることにより推定することができる。内部抵抗は温度が上がるほど低下する関係にあり、SOHが低下するほど増加する関係にある。
【0054】
図4に示すシステム構成例では、車両制御部32は、処理部33、リレー制御部34、アンテナ35、無線通信部36、及びパック検出部37を含む。リレー制御部34は、処理部33からの指示に応じて、メインリレーRYm、第1スロットリレーRYsa、第2スロットリレーRYsbのそれぞれのオン/オフを制御する。
【0055】
第1電池パック10aの正極端子Tpと第1スロットリレーRYsaとの間のノードNaと、車両制御部32の処理部33が通信用経路で接続される。当該通信用経路上に、ヒューズF2a及び第1車両側通信リレーRYcaが直列に接続される。処理部33は、第1車両側通信リレーRYcaのオン/オフを制御することにより、ノードNaと処理部33間の通信用経路の導通/遮断を制御する。
【0056】
同様に、第2電池パック10bの正極端子Tpと第2スロットリレーRYsbとの間のノードNbと、車両制御部32の処理部33が通信用経路で接続される。当該通信用経路上に、ヒューズF2b及び第2車両側通信リレーRYcbが直列に接続される。処理部33は、第2車両側通信リレーRYcbのオン/オフを制御することにより、ノードNbと処理部33間の通信用経路の導通/遮断を制御する。
【0057】
なお、車両30の電池装着部31に3以上の装着スロットが設けられる場合、スロットリレーRYs、及び当該通信用経路(ヒューズF2及び車両側通信リレーRYc)が、それぞれ3以上並列に設けられる。
【0058】
第1嵌合検出部38aは、電池装着部31の第1装着スロットSLa1のコネクタと、第1電池パック10aのコネクタの嵌合状態を検出し、嵌合の有無を示す検出信号をパック検出部37に出力する。同様に、第2嵌合検出部38bは、電池装着部31の第2装着スロットSLa2のコネクタと、第2電池パック10bのコネクタの嵌合状態を検出し、嵌合の有無を示す検出信号をパック検出部37に出力する。第1嵌合検出部38a及び第2嵌合検出部38bは、電池パック10側のコネクタとの接続の有無を磁気的な方法で検出してもよいし、機構的な方法で検出してもよい。
【0059】
パック検出部37は、複数の嵌合検出部38a,38bから入力される複数の検出信号に応じた起動信号を処理部33に出力する。パック検出部37は、複数の検出信号の少なくとも一つが接続状態を示す場合、接続状態のスロット番号を含む起動信号を出力する。パック検出部37は、複数の検出信号の全てが非接続状態を示す場合、起動信号をオフ状態に制御する。
【0060】
処理部33は、イグニッションオンの状態において、パック検出部37から入力される起動信号が、少なくとも一つの電池パック10が装着されていることを示す場合、起動し、起動信号がオフになるとシャットダウンする。なお、シャットダウンの代わりに、スタンバイ状態またはスリープ状態に移行してもよい。
【0061】
以上に説明したシステム構成例において、車両制御部32の処理部33は、近距離無線通信を使用して、電池制御部12の処理部13と制御信号の授受を行うことができる。
【0062】
また、車両制御部32の処理部33は、有線経路を介して、電池制御部12の処理部13と制御信号の授受を行うことができる。第1電池パック10aの処理部13と有線経由で通信する場合、車両制御部32の処理部33は、第1スロットリレーRYsaをオフ、第1車両側通信リレーRYcaをオンする。第1電池パック10aの処理部13は、第1電池パック10a内の電力リレーRYpをオフ、パック側通信リレーRYcをオンする。この状態では、車両制御部32の処理部33と第1電池パック10aの処理部13間の有線経路が、車両30及び電池パック10の高電圧部と絶縁された状態で導通する。したがって、車両制御部32の処理部33と第1電池パック10aの処理部13間で、処理部の動作電圧に応じた電圧(例えば、5V以下の電圧)でシリアル通信することができる。
【0063】
同様に第2電池パック10bの処理部13と有線経由で通信する場合、車両制御部32の処理部33は、第2スロットリレーRYsbをオフ、第2車両側通信リレーRYcbをオンする。第2電池パック10bの処理部13は、第2電池パック10b内の電力リレーRYpをオフ、パック側通信リレーRYcをオンする。この状態では、車両制御部32の処理部33と第2電池パック10bの処理部13間の有線経路が、車両30及び電池パック10の高電圧部と絶縁された状態で導通する。
【0064】
なお図2には示していないが、図4に示した車両制御部32と同様の構成が、充電装置20の制御部22にも設けられる。充電装置20の処理部23は、近距離無線通信を使用して、電池制御部12の処理部13と制御信号の授受を行うことができる。また、充電装置20の処理部23は有線経路を介して、電池制御部12の処理部13と制御信号の授受を行うことができる。
【0065】
図5は、車両30の装着スロットSLaに装着された電池パック10を車両制御部32が認証する処理の基本概念を示す図である。車両制御部32は基本的に、電池パック10から送信された近距離無線通信の電波を探索することにより、電池パック10を識別する。具体的には車両制御部32は、装着スロットSLaに電池パック10が装着されると、有線経由でID1を送信する。電池パック10の電池制御部12は、車両制御部32から有線経由でID1を受信すると、ID1を含む信号を近距離無線通信で送信する。
【0066】
車両制御部32は、近距離無線通信の信号を受信すると、受信信号に含まれるIDと、先に有線経由で送信したID1を照合する。両者が一致した場合、車両制御部32は、装着スロットSLaに装着された電池パック10と、近距離無線通信の通信相手が同一であると認証する。両者が一致しない場合、車両制御部32は、装着スロットSLaに装着された電池パック10と、近距離無線通信の通信相手が同一でないと判定し、通信相手の電池パック10を認証しない。例えば、ID2を含む信号を受信した場合、有線経由で送信したID1と一致しないため、ID2を含む信号の送信先の電池パック10を認証しない。
【0067】
なお、車両制御部32が近距離無線通信でIDを送信し、送信したIDと、有線経由で電池パック10の電池制御部12から有線経由で受信したIDを照合することにより、装着スロットSLaに装着された電池パック10と、近距離無線通信の通信相手の同一性を判断してもよい。
【0068】
以上の説明では、車両30の装着スロットSLaに装着された電池パック10を車両制御部32が認証する処理の基本概念を示したが、充電装置20の充電スロットSLcに装着された電池パック10を、充電装置20の制御部22が認証する場合も同様である。
【0069】
図6は、車両30の装着スロットSLに装着された電池パック10を交換する際の、交換後の電池パック10へのID付与の流れを概略的に示す図である。状態1では、充電装置20の第1充電スロットSLc1は空きスロットで、第2充電スロットSLc2に充電済みの第2電池パック10bが装着されている。また車両30の第1装着スロットSLa1には、残容量が少なくなった第1電池パック10aが装着されている。第1電池パック10aには、車両制御部32により認証された車両IDが含まれている。当該車両IDにより、車両30側から見た、物理的な接続相手としての第1電池パック10aと、無線通信の接続相手としての第1電池パック10aとの同一性が担保されている。
【0070】
状態2では、ユーザ(通常、車両30の運転者)により、車両30の第1装着スロットSLa1から第1電池パック10aが脱着され、脱着された第1電池パック10aが充電装置20の第1充電スロットSLc1に装着される。第1電池パック10aがレンタルされている場合、第1電池パック10aを充電装置20に返却する作業になる。第1電池パック10aが第1装着スロットSLa1から脱着されると、車両制御部32は、第1電池パック10aに付与していた車両IDを充電装置20の制御部22に送信する。
【0071】
状態3では、充電装置20の制御部22は、車両制御部32から受信した車両IDを、第2電池パック10bの電池制御部12に送信し、当該車両IDを第2電池パック10bの電池制御部12に書込む。
【0072】
状態4では、ユーザにより、充電装置20の第2充電スロットSLc2から第2電池パック10bが脱着され、脱着された第2電池パック10bが車両30の第1装着スロットSLa1に装着される。この作業により、車両30の第1装着スロットSLa1に装着されていた電池パック10が物理的に交換されたことになる。第2電池パック10bは既に車両IDを保有しているため、車両30側から見た、物理的な接続相手としての第2電池パック10bと、無線通信の接続相手としての第2電池パック10bとの同一性が担保される。
【0073】
図7は、車両30の装着スロットSLaに装着された電池パック10を交換する際の、詳細な処理の流れを示すシーケンス図である(その1)。図8は、車両30の装着スロットSLaに装着された電池パック10を交換する際の、詳細な処理の流れを示すシーケンス図である(その2)。以下に示すシーケンス図内の横線において、細点線は無線通信を示し、細実線は有線通信を示し、太点線は電池パックの物理的な移動を示し、太実線は電池パックに対する充放電を示す。
【0074】
充電装置20の第1充電スロットSLc1は空きスロットで、第2充電スロットSLc2に第2電池パック10bが装着されている。第2電池パック10bには、充電装置20の制御部22により認証された充電ID1が含まれている。当該充電ID1により、充電装置20側から見た、物理的な接続相手としての第2電池パック10bと、無線通信の接続相手としての第2電池パック10bとの同一性が担保されている。
【0075】
充電装置20は、第2充電スロットSLc2に装着された第2電池パック10bを充電している。即ち、充電部29から第2充電スロットSLc2に装着された第2電池パック10bに充電電流が流れている。第2電池パック10bのSOCが上限値に到達すると充電が終了する。当該上限値は、満充電容量に対応するSOCであってもよいし、満充電容量より低いSOC(例えば、90%)であってもよい。
【0076】
車両30の第1装着スロットSLa1には、第1電池パック10aが装着されている。第1電池パック10aには、車両制御部32により認証された車両IDが含まれている。当該車両IDにより、車両30側から見た、物理的な接続相手としての第1電池パック10aと、無線通信の接続相手としての第1電池パック10aとの同一性が担保されている。車両30の走行中、第1電池パック10aからインバータ310を介してモータ311に放電電流が流れている。第1電池パック10aのSOCは、車両30の走行に伴い低下していく。
【0077】
ユーザ(通常、車両30の運転者)によりイグニッションオフ操作がされると、車両制御部32は、当該イグニッションオフ操作を受け付ける(P4a)。車両制御部32は、イグニッションオフ操作を受け付けると、近距離無線通信で第1電池パック10aの電池制御部12にシャットダウン指示を送信する。第1電池パック10aの電池制御部12は、車両制御部32からシャットダウン指示を受信するとシャットダウンする(P4b)。
【0078】
車両制御部32は、近距離無線通信のマスタモードからスレーブモードに遷移する(P4c)。車両制御部32と、第1装着スロットSLa1に装着された第1電池パック10aの電池制御部12間の近距離無線通信では、車両制御部32がマスタ機、第1電池パック10aの電池制御部12がスレーブ機となる。一方、車両制御部32と、充電装置20の制御部22間の近距離無線通信では、車両制御部32がスレーブ機、充電装置20の制御部22がマスタ機となる。車両制御部32は、充電装置20の制御部22と近距離無線通信で接続するに先立ち、マスタモードからスレーブモードに遷移する。
【0079】
車両制御部32はビーコン端末(ペリフェラル端末)となって、近距離無線通信のアドバタイズを実行する(P4d)。具体的には電池制御部12は、第1電池パック10aに付与していた車両IDと、車両30を特定するための車両情報(例えば、車種情報や車両ナンバー)を含むアドバタイズパケットをビーコンパケットとして、一定の時間間隔で送出する。アドバタイズパケットは、自己の存在を、セントラル端末としての充電装置20の制御部22に通知するための信号として機能する。
【0080】
充電装置20の制御部22はアドバタイズパケットを受信すると、充電装置20の制御部22は、車両制御部32との接続処理を開始する(P4e)。まず、充電装置20の制御部22は、車両制御部32に接続要請を送信する。次に、充電装置20の制御部22は表示部27に、車両制御部32から受信した車両情報(例えば、車種情報や車両ナンバー)を表示させ、ユーザに自己の車両情報を選択するように指示する(P4f)。ユーザが充電装置20の操作部28に対して、自己の車両情報を選択する操作を行うと、充電装置20の制御部22は当該操作を受け付ける。これにより、充電装置20の制御部22と車両制御部32間のペアリングが完了する。
【0081】
ユーザにより、車両30の第1装着スロットSLa1から第1電池パック10aが脱着され、第1電池パック10aが充電装置20の第1充電スロットSLc1に装着されると、第1電池パック10aの嵌合検出部18が第1充電スロットSLc1との嵌合を検出し(P4g)、第1電池パック10aの電池制御部12が起動する(P4i)。充電装置20の制御部22は、第1充電スロットSLc1に電池パック10が装着されたことを検出する(P4h)。
【0082】
充電装置20の制御部22は有線経由で、第1充電スロットSLc1に装着されている第1電池パック10aの電池制御部12に充電ID2を送信して、第1電池パック10aの電池制御部12に充電ID2を書込む(P4j)。第1電池パック10aの電池制御部12は充電ID2を受信すると、電池制御部12がビーコン端末となって、近距離無線通信のアドバタイズを実行する(P4k)。具体的には電池制御部12は、有線経由で受信した充電ID2を含むアドバタイズパケットをビーコンパケットとして、一定の時間間隔で送出する。アドバタイズパケットは、自己の存在を、セントラル端末としての充電装置20の制御部22又は車両30の車両制御部32に通知するための信号として機能する。
【0083】
充電装置20の制御部22はアドバタイズパケットを受信すると、受信したアドバタイズパケットに含まれる充電IDと、先に有線経由で送信した充電IDとを照合する(P4l)。図7に示す例では、受信したアドバタイズパケットに含まれる充電IDが、充電ID2であれば照合成功となり、充電ID2でなければ照合失敗となる。照合失敗の場合、充電装置20の制御部22はアドバタイズパケットのスキャンを継続する。照合成功の場合、充電装置20の制御部22は、第1電池パック10aの電池制御部12との接続処理を開始する(P4m)。
【0084】
まず、充電装置20の制御部22は、第1電池パック10aの電池制御部12に接続要請を送信する。次に、充電装置20の制御部22と第1電池パック10aの電池制御部12間で暗号化パラメータ(例えば、暗号鍵の桁数、暗号化レベル)を交換する。第1電池パック10aの電池制御部12は、交換した暗号化パラメータをもとに、通信データの暗号化に使用する暗号鍵を生成する(P4n)。充電装置20の制御部22は、交換した暗号化パラメータをもとに、通信データの暗号化に使用する暗号鍵を生成する(P4o)。最後に、充電装置20の制御部22と第1電池パック10aの電池制御部12間で、生成した暗号鍵を交換する。これにより、充電装置20の制御部22と第1電池パック10aの電池制御部12間のペアリングが完了する(P4p)。両者のペアリング完了に伴い、第1電池パック10aの充電装置20への返却処理が完了する。
【0085】
充電装置20の制御部22は、第1電池パック10aの交換対象とする別の電池パック10を選別する(P4q)。具体的には充電装置20の制御部22は、充電台21の複数の充電スロットSLcに装着されている充電済みの電池パック10の中から一つを選別する。図7に示す例では、第2充電スロットSLc2に装着されている充電済みの第2電池パック10bを選別する。
【0086】
充電装置20の制御部22は、選別した第2電池パック10bの電池制御部12に有線経由で、車両制御部32から受信した車両IDを送信して、第2電池パック10bの電池制御部12に車両IDを書込む(P4r)。
【0087】
充電装置20の制御部22は、選別した第2電池パック10bの電池制御部12に近距離無線通信でシャットダウン指示を送信して、第2電池パック10bの電池制御部12との接続解除処理を実行する(P4s)。第2電池パック10bの電池制御部12は、充電装置20の制御部22からシャットダウン指示を受信するとシャットダウンする(P4t)。第2電池パック10bの電池制御部12はシャットダウンの直前に、シャットダウン完了通知を充電装置20の制御部22に送信する。
【0088】
充電装置20の制御部22は、第2電池パック10bの電池制御部12からシャットダウン完了通知を受信すると、車両30のユーザに、第2充電スロットSLc2に装着された第2電池パック10bを取外すよう指示する(P4u)。例えば、充電装置20の制御部22は表示部27に、第2充電スロットSLc2に装着された第2電池パック10bを取外すよう指示するメッセージを表示させる。その際、充電装置20の制御部22はスピーカ(不図示)からユーザへ、音声ガイダンスを出力してもよい。また、第2充電スロットSLc2のランプ(不図示)のみを点灯または点滅させてもよい。また、第2充電スロットSLc2のランプ(不図示)のみを他の充電スロットのランプと異なる色で点灯させてもよい。
【0089】
ユーザにより、第2充電スロットSLc2から第2電池パック10bが取外され、第2電池パック10bが車両30の第1装着スロットSLa1に装着されると、第2電池パック10bの嵌合検出部18が第1装着スロットSLa1との嵌合を検出し(P4v)、第2電池パック10bの電池制御部12が起動する(P4x)。車両30の嵌合検出部38が第1装着スロットSLa1に電池パック10が装着されたことを検出すると(P4w)、車両制御部32が起動する(P4y)。
【0090】
充電装置20の制御部22は、第1充電スロットSLc1に装着された第1電池パック10aの充電制御を開始する(P4z)。具体的には充電装置20の制御部22は、近距離無線通信で、第1電池パック10aの電池制御部12に充電指示を送信するとともに、第2スロットリレーRYsbをオンする。第1電池パック10aの電池制御部12は当該充電指示を受信すると、電力リレーRYpをオンする。これにより、充電装置20の充電部29から第1充電スロットSLc1に装着された第1電池パック10aに充電電流が流れる。
【0091】
第2電池パック10bの電池制御部12はビーコン端末となって、近距離無線通信のアドバタイズを実行する(P4C)。具体的には電池制御部12は、充電装置20の制御部22により書込まれた車両IDを含むアドバタイズパケットをビーコンパケットとして、一定の時間間隔で送出する。
【0092】
車両制御部32はアドバタイズパケットを受信すると、受信したアドバタイズパケットに含まれる車両IDと、第1電池パック10aに付与していた車両IDとを照合する(P4D)。車両IDの照合が失敗した場合、車両制御部32はアドバタイズパケットのスキャンを継続する。車両IDの照合が成功した場合、車両制御部32は、第2電池パック10bの電池制御部12との接続処理を開始する(P4E)。
【0093】
まず、車両制御部32は、第2電池パック10bの電池制御部12に接続要請を送信する。次に、車両制御部32と第2電池パック10bの電池制御部12間で暗号化パラメータを交換する。第2電池パック10bの電池制御部12は、交換した暗号化パラメータをもとに、通信データの暗号化に使用する暗号鍵を生成する(P4F)。車両制御部32は、交換した暗号化パラメータをもとに、通信データの暗号化に使用する暗号鍵を生成する(P4G)。最後に、車両制御部32と第2電池パック10bの電池制御部12間で、生成した暗号鍵を交換する。これにより、車両制御部32と第2電池パック10bの電池制御部12間のペアリングが完了する(P4H)。ペアリング完了後、車両制御部32は、第2電池パック10bの電池制御部12に近距離無線通信でシャットダウン指示を送信する。第2電池パック10bの電池制御部12は、車両制御部32からシャットダウン指示を受信するとシャットダウンする(P4I)。
【0094】
図9は、図8に示した処理の変形例に係る処理の流れを示すシーケンス図である。図9に示す変形例では、第1装着スロットSLa1に装着された電池パック10の車両制御部32による認証処理の信頼性を高める仕組みが導入されている。以下、図8に示した処理との相違点を説明する。
【0095】
処理P4xにおいて第2電池パック10bの電池制御部12が起動し、処理P4yにおいて車両制御部32が起動すると、車両制御部32は有線経由で第2電池パック10bの電池制御部12に、第1電池パック10aに付与していた車両IDを送信して、第2電池パック10bの電池制御部12に当該車両IDを書込む(P4A)。
【0096】
第2電池パック10bの電池制御部12は有線経由で車両制御部32から車両IDを受信すると、車両制御部32から受信した車両IDと、充電装置20の制御部22から書込まれた車両IDとを照合する(P4B)。第2電池パック10bの電池制御部12は、照合結果を有線経由で車両制御部32に送信する。照合失敗の場合、第2電池パック10bの電池制御部12は、スタンバイモードに移行する。車両制御部32はメータパネル39に、誤った電池パック10が第1装着スロットSLa1に装着されたことを警告表示する。ユーザは当該警告表示を見た後、誤って装着した電池パック10を充電装置20に返却し、正しい電池パック10を充電装置20から取出して第1装着スロットSLa1に装着する。新たな電池パック10が第1装着スロットSLa1に装着されると、処理P4v及び処理P4wに戻る。
【0097】
変形例では車両制御部32から有線経由で電池パック10の電池制御部12に車両IDを送信する処理が追加されるため、車両制御部32と、隣接する車両30に装着された電池パック10の電池制御部12が誤ってペアリングされてしまうことを防止することができる。
【0098】
以上説明したように本実施の形態では、車両30に装着されていた電池パック10が脱着されて充電装置20に返却されると、車両30から充電装置20に車両IDが送信され、充電装置20が車両30から受信した車両IDを、交換用の電池パック10に書込む。これにより、交換用の電池パック10が車両30に装着されたとき、車両30は、装着された電池パック10を、車両IDを使用して正しく識別することができる。ある車両30の車両制御部32が、近隣の別の車両30に装着された電池パック10を誤って制御するといった誤作動がなくなり、充電装置20と交換式の電池パック10を用いた車両システム1全体の安全、安心を担保することができる。ユーザは、充電装置20に装着された電池パック10を取出して、車両30に装着するだけで、安全に車両30を走行させることができる。
【0099】
また、充電装置20に返却された電池パック10に付与していた車両IDを、充電装置20を経由して、交換用の電池パック10に書込んで再利用するため、交換用の電池パック10を使用可能な車両30を、返却された電池パック10が装着されていた車両30に限定することができる。したがって、違法に取得された電池パック10(例えば、盗品の電池パック10)の使用を不可にすることができる。
【0100】
車両30又は充電装置20と、電池パック10間の制御信号の授受を近距離無線通信で行うことにより、電池パック10のコネクタに含まれるピンを減らすことができる。これにより、車両30又は充電装置20と、電池パック10間の機構的な接続不良を減らすことができる。また、電池パック10の電池制御部12で使用されるファームウェアのアップデートを無線通信経由で行うことができ、ファームウェアのアップデートが容易になる。
【0101】
以上、本開示を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0102】
上述の実施の形態において、車両制御部32から車両IDを充電装置20の制御部22に直接送信するのではなく、車両制御部32から、ユーザのスマートフォン又はスマートキーを介して車両IDを充電装置20の制御部22に送信してもよい。この場合、車両制御部32から、ユーザのスマートフォン又はスマートキーに近距離無線通信で車両IDを送信し、ユーザのスマートフォン又はスマートキーから充電装置20の制御部22に近距離無線通信で車両IDを送信する。これにより、車両30と充電装置20間の距離が、近距離無線通信の電波到達距離より離れている場合であっても、車両30から充電装置20に車両IDを渡すことができる。なお、ユーザのスマートフォン又はスマートキーと、充電装置20の制御部22との間は、13.56MHz帯を使用したNFC(Near Field Communication)で無線接続されてもよい。この場合、充電装置20における上記の車両選択操作を省略することができる。
【0103】
また上述の実施の形態において、電池パック10を交換する際、車両制御部32は充電装置20の制御部22に近距離無線通信で電池パック10の使用履歴情報を送信してもよい。この場合、充電装置20の制御部22は、車両30から収集した電池パック10の使用履歴情報を分析することにより、電池パック10の不具合の発生を予測することができる。
【0104】
また上述の実施の形態では、リチウムイオン電池セル、ニッケル水素電池セル、鉛電池セル等を含む電池モジュール11を内蔵する電池パック10を使用する例を説明した。この点、電気二重層キャパシタセル、リチウムイオンキャパシタセル等を含むキャパシタモジュールを内蔵するキャパシタパックを使用してもよい。本明細書では、電池パックとキャパシタパックを総称して蓄電パックと呼ぶ。また上述の実施の形態における各リレーを適宜、半導体スイッチに置き換えてもよい。
【0105】
また上述の実施の形態では、交換式の電池パック10を電源とする車両30として、電動バイク(電動スクータ)を想定した。この点、車両30は電動自転車であってもよい。また、車両30は四輪の電気自動車(EV)であってもよい。電気自動車にはフル規格の電気自動車だけでなく、ゴルフカートや、ショッピングモールやエンタテイメント施設などで使用されるランドカーなどの低速の電気自動車も含まれる。
【0106】
交換式の電池パック10を電源とする電動移動体は、車両30に限定されるものではない。例えば、当該電動移動体には電動船舶も含まれる。例えば、水上バスや水上タクシーの電源を交換式の電池パック10としてもよい。また、当該電動移動体には電車も含まれる。例えば、非電化路線で使用される気動車の代わりに、交換式の電池パック10を搭載した電車を使用することができる。当該電動移動体には電動の飛行体も含まれる。電動の飛行体には、マルチコプタ(ドローン)が含まれる。当該マルチコプタには、いわゆる空飛ぶ車も含まれる。いずれの電動移動体でも、エネルギ補給の時間を短縮することができる。
【0107】
なお、実施の形態は、以下の項目によって特定されてもよい。
【0108】
[項目1]
電動移動体(30)から第1蓄電パック(10a)が脱着されるとき、前記電動移動体(30)の制御部(32)が、前記第1蓄電パック(10a)に保持されている識別情報と同じ識別情報を含む信号を、近距離無線通信で送信するステップと、
充電装置(20)の制御部(22)が、前記近距離無線通信で送信された信号を受信し、かつ前記充電装置(20)の第1充電スロット(SLc1)に、前記電動移動体(30)から脱着された第1蓄電パック(10a)が装着されると、前記電動移動体(30)から受信した識別情報を、前記第1蓄電パック(10a)と交換すべき、第2充電スロット(SLc2)に装着されている第2蓄電パック(10b)の制御部(12)に有線経由で送信するステップと、
前記第2充電スロット(SLc2)から脱着された前記第2蓄電パック(10b)が前記電動移動体(30)に装着されると、前記第2蓄電パック(10b)の制御部(12)が、前記充電装置(20)から受信した識別情報を含む信号を、前記近距離無線通信で送信するステップと、
前記電動移動体(30)の制御部(32)が、前記近距離無線通信で送信された信号を受信した場合、受信した信号に含まれる識別情報が、前記第1蓄電パック(10a)に保持されていた識別情報と一致するか否か照合し、一致した場合、前記電動移動体(30)に装着された前記第2蓄電パック(10b)と、前記近距離無線通信の通信相手が同一であると認証するステップと、
を有することを特徴とする蓄電パック(10)の認証方法。
これによれば、電動移動体(30)の制御部(32)が、装着された第2蓄電パック(10b)と、近距離無線通信の通信相手が同一であるか否かを正確に認証することができる。
[項目2]
前記第2充電スロット(SLc2)から脱着された前記第2蓄電パック(10b)が前記電動移動体(30)に装着された後、前記第2蓄電パック(10b)の制御部(12)が、前記充電装置(20)から受信した識別情報を含む信号を送信する前に、前記電動移動体(30)の制御部(32)が、前記電動移動体(30)に装着された前記第2蓄電パック(10b)の制御部(12)に有線経由で、前記第1蓄電パック(10a)に保持されていた識別情報を送信するステップと、
前記第2蓄電パック(10b)の制御部(12)が、前記充電装置(20)から受信した識別情報と、前記電動移動体(30)から受信した識別情報とを照合し、照合結果を有線経由で前記電動移動体(30)の制御部(32)に送信するステップと、
をさらに有し、
前記第2蓄電パック(10b)の制御部(12)は、前記照合結果が不一致の場合、前記充電装置(20)から受信した識別情報を含む信号を、前記近距離無線通信で送信することを保留することを特徴とする項目1に記載の蓄電パック(10)の認証方法。
これによれば、電動移動体(30)の制御部(32)が、装着された第2蓄電パック(10b)と、近距離無線通信の通信相手が同一であるか否かを、より確実に認証することができる。
[項目3]
前記充電装置(20)の制御部(22)が、前記電動移動体(30)の制御部(32)から識別情報を受信し、かつ前記充電装置(20)の第1充電スロット(SLc1)に、前記電動移動体(30)から脱着された第1蓄電パック(10a)が装着されると、前記第1蓄電パック(10a)の制御部(12)に有線経由で別の識別情報を送信するステップと、
前記第1蓄電パック(10a)の制御部(12)が、前記充電装置(20)から受信した前記別の識別情報を含む信号を、前記近距離無線通信で送信するステップと、
前記充電装置(20)の制御部(22)が、前記近距離無線通信で送信された信号を受信した場合、受信した信号に含まれる識別情報が、前記有線経由で送信した前記別の識別情報と一致するか否か照合し、一致した場合、前記第1充電スロット(SLc1)に装着された前記第1蓄電パック(10a)と、前記近距離無線通信の通信相手が同一であると認証するステップと、
をさらに有することを特徴とする項目1または2に記載の蓄電パック(10)の認証方法。
これによれば、充電装置(20)の制御部(22)が、第1充電スロット(SLc1)に装着された第1蓄電パック(10a)と、近距離無線通信の通信相手が同一であるか否かを正確に認証することができる。
[項目4]
前記近距離無線通信は、BLE(Bluetooth (登録商標) Low Energy)であることを特徴とする項目1から3のいずれか1項に記載の蓄電パック(10)の認証方法。
これによれば、低消費電力で近距離無線通信を行うことができる。
[項目5]
電動移動体(30)に給電するための蓄電部(11)と、
前記電動移動体(30)の制御部(32)、及び充電装置(20)の制御部(22)と通信可能な制御部(12)と、を備え、
前記制御部(12)は、
前記電動移動体(30)から脱着されて、前記充電装置(20)の充電スロット(SLc1)に本蓄電パック(10)が装着された後、前記充電装置(20)の制御部(22)が前記電動移動体(30)の制御部(32)から受信した識別情報を、本蓄電パック(10)の充電完了後に、前記充電装置(20)の制御部(22)から有線経由で受信し、
前記充電スロット(SLc1)から脱着されて、本蓄電パック(10)が前記電動移動体(30)に装着されると、前記充電装置(20)から受信した識別情報を含む信号を、近距離無線通信で送信し、
前記近距離無線通信で送信された信号は、前記電動移動体(30)の制御部(32)において、前記電動移動体(30)に装着された蓄電パック(10)と、前記近距離無線通信の通信相手が同一であるか否か認証するために使用される、
ことを特徴とする蓄電パック(10)。
これによれば、電動移動体(30)の制御部(32)が、装着された蓄電パック(10)と、近距離無線通信の通信相手が同一であるか否かを正確に認証することができる。
[項目6]
前記制御部(12)は、
本蓄電パック(10)が前記電動移動体(30)に装着された後、前記充電装置(20)から受信した識別情報を含む信号を前記近距離無線通信で送信する前に、前記電動移動体(30)の制御部(32)から有線経由で識別情報を受信し、
前記充電装置(20)から受信した識別情報と、前記電動移動体(30)から受信した識別情報とを照合し、照合結果を有線経由で前記電動移動体(30)に送信するとともに、前記照合結果が不一致の場合、前記充電装置(20)から受信した識別情報を含む信号を、前記近距離無線通信で送信することを保留する、
ことを特徴とする項目5に記載の蓄電パック(10)。
これによれば、電動移動体(30)の制御部(32)が、装着された蓄電パック(10)と、近距離無線通信の通信相手が同一であるか否かを、より確実に認証することができる。
[項目7]
複数の充電スロット(SLc1、SLc2)と、
蓄電パック(10)の制御部(12)、及び電動移動体(30)の制御部(32)と通信可能な制御部(22)と、を備え、
前記制御部(22)は、
第1充電スロット(SLc1)に、前記電動移動体(30)から脱着された第1蓄電パック(10a)が装着されると、前記電動移動体(30)の制御部(32)から、前記第1蓄電パック(10a)が保持している識別情報を近距離無線通信で受信し、
前記電動移動体(30)から受信した識別情報を、前記第1蓄電パック(10a)と交換すべき、第2充電スロット(SLc2)に装着されている第2蓄電パック(10b)の制御部(12)に有線経由で送信し、
前記第1充電スロット(SLc1)に装着されている前記第1蓄電パック(10a)の制御部(12)に、別の識別情報を有線経由で送信し、
近距離無線通信で送信された信号を受信した場合、受信した信号に含まれる識別情報が、前記有線経由で送信した前記別の識別情報と一致するか否か照合し、一致した場合、前記第1充電スロット(SLc1)に装着された前記第1蓄電パック(10a)と、前記近距離無線通信の通信相手が同一であると認証する、
ことを特徴とする充電装置(20)。
これによれば、充電装置(20)の制御部(22)が、第1充電スロット(SLc1)に装着された第1蓄電パック(10a)と、近距離無線通信の通信相手が同一であるか否かを正確に認証することができる。
[項目8]
モータ(311)と、
蓄電パック(10)の制御部(12)、及び充電装置(20)の制御部(22)と通信可能な制御部(32)と、を備え、
前記制御部(32)は、
本電動移動体(30)から第1蓄電パック(10a)が脱着されるとき、前記第1蓄電パック(10a)に保持されている識別情報と同じ識別情報を含む信号を、近距離無線通信で送信し、
前記充電装置(20)の第1充電スロット(SLc1)に前記第1蓄電パック(10a)が装着された後、前記第1蓄電パック(10a)と交換すべき、前記充電装置(20)の第2充電スロット(SLc2)から脱着された第2蓄電パック(10b)が本電動移動体(30)に装着されたとき、前記近距離無線通信で信号を受信した場合、受信した信号に含まれる識別情報が、前記第1蓄電パック(10a)に保持されていた識別情報と一致するか否か照合し、一致した場合、本電動移動体(30)に装着された前記第2蓄電パック(10b)と、前記近距離無線通信の通信相手が同一であると認証する、
ことを特徴とする電動移動体(30)。
これによれば、電動移動体(30)の制御部(32)が、装着された第2蓄電パック(10b)と、近距離無線通信の通信相手が同一であるか否かを正確に認証することができる。
[項目9]
前記制御部(32)は、
前記第2蓄電パック(10b)が本電動移動体(30)に装着されると、前記第2蓄電パック(10b)の制御部(12)に有線経由で、前記第1蓄電パック(10a)に保持されていた識別情報を送信し、
前記第2蓄電パック(10b)の制御部(12)が、前記充電装置(20)から受信した識別情報と本電動移動体(30)から受信した識別情報とを照合した照合結果を、前記第2蓄電パック(10b)の制御部(12)から有線経由で受信する、
項目8に記載の電動移動体(30)。
これによれば、電動移動体(30)の制御部(32)が、装着された第2蓄電パック(10b)と、近距離無線通信の通信相手が同一であるか否かを、より確実に認証することができる。
[項目10]
電動移動体(30)の制御装置(32)であって、
前記電動移動体(30)から第1蓄電パック(10a)が脱着されるとき、前記第1蓄電パック(10a)に保持されている識別情報と同じ識別情報を含む信号を、近距離無線通信で送信し、
充電装置(20)の第1充電スロット(SLc1)に前記第1蓄電パック(10a)が装着された後、前記第1蓄電パック(10a)と交換すべき、前記充電装置(20)の第2充電スロット(SLc2)から脱着された第2蓄電パック(10b)が前記電動移動体(30)に装着されたとき、前記近距離無線通信で信号を受信した場合、受信した信号に含まれる識別情報が、前記第1蓄電パック(10a)に保持されていた識別情報と一致するか否か照合し、一致した場合、前記電動移動体(30)に装着された前記第2蓄電パック(10b)と、前記近距離無線通信の通信相手が同一であると認証する、
ことを特徴とする電動移動体(30)の制御装置(32)。
これによれば、電動移動体(30)の制御部(32)が、装着された第2蓄電パック(10b)と、近距離無線通信の通信相手が同一であるか否かを正確に認証することができる。
【符号の説明】
【0109】
1 車両システム、 2 商用電力系統、 10 電池パック、 11 電池モジュール、 E1-En セル、 12 電池制御部、 13 処理部、 14 電圧計測部、 15 アンテナ、 16 無線通信部、 17 電流センサ、 18 嵌合検出部、 20 充電装置、 21 充電台、 SLc 充電スロット、 22 制御部、 23 処理部、 25 アンテナ、 26 無線通信部、 27 表示部、 28 操作部、 29 充電部、 30 車両、 31 電池装着部、 SLa 装着スロット、 32 車両制御部、 33 処理部、 34 リレー制御部、 35 アンテナ、 36 無線通信部、 37 パック検出部、 38 嵌合検出部、 39 メータパネル、 310 インバータ、 311 モータ、 312 タイヤ、 RYm メインリレー、 RYsa 第1スロットリレー、 RYsb 第2スロットリレー、 RYp 電力リレー、 RYc パック側通信リレー、 RYca 第1車両側通信リレー、 RYcb 第2車両側通信リレー、 F2 ヒューズ、 R2 抵抗、 Tp 正極端子、 Tm 負極
端子。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9