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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】異常判定方法及び生産管理システム
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20241025BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023575234
(86)(22)【出願日】2023-01-13
(86)【国際出願番号】 JP2023000845
(87)【国際公開番号】W WO2023140196
(87)【国際公開日】2023-07-27
【審査請求日】2024-04-12
(31)【優先権主張番号】P 2022006386
(32)【優先日】2022-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】島崎 悠太
(72)【発明者】
【氏名】嶺岸 瞳
【審査官】程塚 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-185610(JP,A)
【文献】特開2005-32030(JP,A)
【文献】特開平10-175132(JP,A)
【文献】特開2007-72724(JP,A)
【文献】特開2020-161045(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
G06Q 50/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1工程に対応する第1生産装置、前記第1工程に続く第2工程に対応する第2生産装置、及び前記第2工程に続く第3工程に対応する第3生産装置を含む生産ラインを管理する生産管理システムにおける異常判定方法であって、
(i)前記第1生産装置における第1稼働時刻及び前記第1工程と前記第2工程との間の第1待ち時間を含む第1稼働状況データ、(ii)前記第2生産装置における第2稼働時刻、前記第1工程と前記第2工程との間の第2待ち時間及び前記第2工程と前記第3工程との間の第3待ち時間を含む第2稼働状況データ、並びに(iii)前記第3生産装置における第3稼働時刻及び前記第2工程と前記第3工程との間の第4待ち時間を含む第3稼働状況データの中の少なくとも(i)前記第1稼働状況データ及び(iii)前記第3稼働状況データを、ネットワークを介して取得し、
前記第1稼働時刻及び前記第3稼働時刻に基づき前記第2稼働状況データの未取得が判断された場合、前記第1稼働時刻及び前記第3稼働時刻に基づき前記第2稼働時刻に対応するダミー稼働時刻を予測し、前記第1待ち時間及び前記第4待ち時間に基づき前記第2工程におけるダミー待ち時間を予測し、前記ダミー稼働時刻及び前記ダミー待ち時間を含む前記第2稼働状況データに対応するダミー稼働状況データを生成し、
前記第1稼働状況データ、前記第3稼働状況データ及び前記ダミー稼働状況データに基づき、前記第1工程から前記第3工程までを含む生産工程全体の異常判定処理を行い、
前記異常判定処理の結果を表す判定結果情報を、前記生産管理システムに含まれる表示装置に表示するよう出力する、
異常判定方法。
【請求項2】
前記判定結果情報の出力の際、前記第2工程において前記ダミー稼働状況データを用いて前記異常判定処理を行った旨を出力する、
請求項1記載の異常判定方法。
【請求項3】
前記異常判定処理は、前記生産工程全体における全稼働時間における全待ち時間に基づき、前記生産工程全体における異常の有無を判定する処理である、
請求項1又は2記載の異常判定方法。
【請求項4】
前記異常判定処理は、前記生産工程全体の中の各工程において当該工程の稼働時間における当該待ち時間に基づき、当該工程における異常の有無を判定する処理である、
請求項1又は2記載の異常判定方法。
【請求項5】
前記異常判定処理の結果は、前記生産工程において異常がないことを含む、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の異常判定方法。
【請求項6】
前記生産ラインにおいて、前記第1生産装置、前記第2生産装置及び前記第3生産装置がベルトコンベアで連結されている、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の異常判定方法。
【請求項7】
第1工程に対応する第1生産装置、前記第1工程に続く第2工程に対応する第2生産装置、及び前記第2工程に続く第3工程に対応する第3生産装置を含む生産ラインを管理する生産管理システムであって、
(i)前記第1生産装置における第1稼働時刻及び前記第1工程と前記第2工程との間の第1待ち時間を含む第1稼働状況データ、(ii)前記第2生産装置における第2稼働時刻、前記第1工程と前記第2工程との間の第2待ち時間及び前記第2工程と前記第3工程との間の第3待ち時間を含む第2稼働状況データ、並びに(iii)前記第3生産装置における第3稼働時刻及び前記第2工程と前記第3工程との間の第4待ち時間を含む第3稼働状況データ、の中の少なくとも(i)前記第1稼働状況データ及び(iii)前記第3稼働状況データを、ネットワークを介して取得し、
前記第1稼働時刻及び前記第3稼働時刻に基づき前記第2稼働状況データの未取得が判断された場合、前記第1稼働時刻及び前記第3稼働時刻に基づき前記第2稼働時刻に対応するダミー稼働時刻を予測し、前記第1待ち時間及び前記第4待ち時間に基づき前記第2工程におけるダミー待ち時間を予測し、前記ダミー稼働時刻及び前記ダミー待ち時間を含む前記第2稼働状況データに対応するダミー稼働状況データを生成し、
前記第1稼働状況データ、前記第3稼働状況データ及び前記ダミー稼働状況データに基づき、前記第1工程から前記第3工程までを含む生産工程全体の異常判定処理を行い、
前記異常判定処理の結果を表す判定結果情報を、前記生産管理システムに含まれる表示装置に表示するよう出力する、
生産管理システム。
【請求項8】
第1工程に対応する第1生産装置、前記第1工程に続く第2工程に対応する第2生産装置、及び前記第2工程に続く第3工程に対応する第3生産装置を含む生産ラインを管理する生産管理システムにおける異常判定方法であって、
(i)前記第1生産装置における第1稼働時刻及び前記第1工程と前記第2工程との間の第1待ち時間を含む第1稼働状況データ、並びに(ii)前記第3生産装置における第3稼働時刻及び前記第2工程と前記第3工程との間の第4待ち時間を含む第3稼働状況データを、ネットワークを介して取得し、
前記第1稼働時刻及び前記第3稼働時刻に基づき前記第2生産装置におけるダミー稼働時刻を算出し、前記第1待ち時間及び前記第4待ち時間に基づき前記第2工程におけるダミー待ち時間を予測し、前記ダミー稼働時刻及び前記ダミー待ち時間を含むダミー稼働状況データを生成し、
前記第1稼働状況データ、前記第3稼働状況データ及び前記ダミー稼働状況データに基づき、前記第1工程から前記第3工程までを含む生産工程全体の異常判定処理を行い、
前記異常判定処理の結果を表す判定結果情報を、前記生産管理システムに含まれる表示装置に表示するよう出力する、
異常判定方法。
【請求項9】
前記判定結果情報の出力の際、前記第2工程において前記ダミー稼働状況データを用いて前記異常判定処理を行った旨を出力する、
請求項8記載の異常判定方法。
【請求項10】
第1工程に対応する第1生産装置、前記第1工程に続く第2工程に対応する第2生産装置、及び前記第2工程に続く第3工程に対応する第3生産装置を含む生産ラインを管理する生産管理システムであって、
(i)前記第1生産装置における第1稼働時刻及び前記第1工程と前記第2工程との間の第1待ち時間を含む第1稼働状況データ、並びに(ii)前記第3生産装置における第3稼働時刻及び前記第2工程と前記第3工程との間の第4待ち時間を含む第3稼働状況データを、ネットワークを介して取得し、
前記第1稼働時刻及び前記第3稼働時刻に基づき前記第2生産装置におけるダミー稼働時刻を算出し、前記第1待ち時間及び前記第4待ち時間に基づき前記第2工程におけるダミー待ち時間を予測し、前記ダミー稼働時刻及び前記ダミー待ち時間を含むダミー稼働状況データを生成し、
前記第1稼働状況データ、前記第3稼働状況データ及び前記ダミー稼働状況データに基づき、前記第1工程から前記第3工程までを含む生産工程全体の異常判定処理を行い、
前記異常判定処理の結果を表す判定結果情報を、前記生産管理システムに含まれる表示装置に表示するよう出力する、
生産管理システム。
【請求項11】
第1工程に対応する第1生産装置及び前記第1工程に続く末端の工程である第2工程に対応する第2生産装置を含む生産ラインを管理する生産管理システムにおける異常判定方法であって、
(i)前記第1生産装置における第1稼働時刻及び前記第1工程と前記第2工程との間の第1待ち時間を含む第1稼働状況データ、並びに(ii)前記第2生産装置における第2稼働時刻、前記第1工程と前記第2工程との間の第2待ち時間を含む第2稼働状況データ、の中の少なくとも前記第1稼働状況データを、ネットワークを介して取得し、
前記第1稼働時刻に基づき前記第2稼働状況データの未取得が判断された場合、前記第1稼働時刻に基づき前記第2稼働時刻に対応するダミー稼働時刻を予測し、前記第1待ち時間に基づき前記第2工程におけるダミー待ち時間を予測し、前記ダミー稼働時刻及び前記ダミー待ち時間を含む前記第2稼働状況データに対応するダミー稼働状況データを生成し、
前記第1稼働状況データ及び前記ダミー稼働状況データに基づき、前記第1工程及び前記第2工程を含む生産工程全体の異常判定処理を行い、
前記異常判定処理の結果を表す判定結果情報を、前記生産管理システムに含まれる表示装置に表示するよう出力する、
異常判定方法。
【請求項12】
前記判定結果情報の出力の際、前記第2工程において前記ダミー稼働状況データを用いて前記異常判定処理を行った旨を出力する、
請求項11記載の異常判定方法。
【請求項13】
先端の工程である第1工程に対応する第1生産装置及び前記第1工程に続く第2工程に対応する第2生産装置を含む生産ラインを管理する生産管理システムにおける異常判定方法であって、
(i)前記第1生産装置における第1稼働時刻及び前記第1工程と前記第2工程との間の第1待ち時間を含む第1稼働状況データ、並びに(ii)前記第2生産装置における第2稼働時刻、前記第1工程と前記第2工程との間の第2待ち時間を含む第2稼働状況データ、の中の少なくとも前記第2稼働状況データを、ネットワークを介して取得し、
前記第2稼働時刻に基づき前記第1稼働状況データの未取得が判断された場合、前記第2稼働時刻に基づき前記第1稼働時刻に対応するダミー稼働時刻を予測し、前記第2待ち時間に基づき前記第1工程におけるダミー待ち時間を予測し、前記ダミー稼働時刻及び前記ダミー待ち時間を含む前記第1稼働状況データに対応するダミー稼働状況データを生成し、
前記ダミー稼働状況データ及び前記第2稼働状況データに基づき、前記第1工程及び前記第2工程を含む生産工程全体の異常判定処理を行い、
前記異常判定処理の結果を表す判定結果情報を、前記生産管理システムに含まれる表示装置に表示するよう出力する、
異常判定方法。
【請求項14】
前記判定結果情報の出力の際、前記第1工程において前記ダミー稼働状況データを用いて前記異常判定処理を行った旨を出力する、
請求項13記載の異常判定方法。
【請求項15】
請求項1から請求項6、請求項8、請求項9及び請求項11から請求項14のいずれか1項に記載の異常判定方法をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、異常判定方法及び生産管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
工場などの生産現場では、異常が発生した場合に速やかに対処するため、設備の稼働状況を適切に管理することが求められている。設備などの各種機器の状態を管理する際に機械学習(AI)を利用することが検討されている。機械学習を利用して状態を管理する場合、許容範囲を超える入力データが入力される、あるいは、そもそも入力データが入力されないと、異常を精度良く判定することができなくなる。
【0003】
これに対して、例えば、特許文献1には、許容範囲外のデータが入力された場合に、入力データを許容範囲に近づけるガード処理を行う状態判定装置が開示されている。また、特許文献2には、データの欠損が発生しないように2種類の通信方式でデータを転送する設備稼働監視装置の通信方式が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2021-55668号公報
【文献】特開2000-134680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された状態判定装置では、入力データが入力されないとガード処理を行うことができない。また、特許文献2に開示された通信方式では、データの欠損の可能性は低くできるかもしれないが、データの欠損が生じた場合には、異常の判定を行うことができない。
【0006】
そこで、本開示は、高い精度で異常を判定することができる異常判定方法及び生産管理システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る異常判定方法は、第1工程に対応する第1生産装置、前記第1工程に続く第2工程に対応する第2生産装置、及び前記第2工程に続く第3工程に対応する第3生産装置を含む生産ラインを管理する生産管理システムにおける異常判定方法であって、(i)前記第1生産装置における第1稼働時刻及び前記第1工程と前記第2工程との間の第1待ち時間を含む第1稼働状況データ、(ii)前記第2生産装置における第2稼働時刻、前記第1工程と前記第2工程との間の第2待ち時間及び前記第2工程と前記第3工程との間の第3待ち時間を含む第2稼働状況データ、並びに(iii)前記第3生産装置における第3稼働時刻及び前記第2工程と前記第3工程との間の第4待ち時間を含む第3稼働状況データの中の少なくとも(i)前記第1稼働状況データ及び(iii)前記第3稼働状況データを、ネットワークを介して取得し、前記第1稼働時刻及び前記第3稼働時刻に基づき前記第2稼働状況データの未取得が判断された場合、前記第1稼働時刻及び前記第3稼働時刻に基づき前記第2稼働時刻に対応するダミー稼働時刻を予測し、前記第1待ち時間及び前記第4待ち時間に基づき前記第2工程におけるダミー待ち時間を予測し、前記ダミー稼働時刻及び前記ダミー待ち時間を含む前記第2稼働状況データに対応するダミー稼働状況データを生成し、前記第1稼働状況データ、前記第3稼働状況データ及び前記ダミー稼働状況データに基づき、前記第1工程から前記第3工程までを含む生産工程全体の異常判定処理を行い、前記異常判定処理の結果を表す判定結果情報を、前記生産管理システムに含まれる表示装置に表示するよう出力する。
【0008】
本開示の別の一態様に係る異常判定方法は、第1工程に対応する第1生産装置、前記第1工程に続く第2工程に対応する第2生産装置、及び前記第2工程に続く第3工程に対応する第3生産装置を含む生産ラインを管理する生産管理システムにおける異常判定方法であって、(i)前記第1生産装置における第1稼働時刻及び前記第1工程と前記第2工程との間の第1待ち時間を含む第1稼働状況データ、並びに(ii)前記第3生産装置における第3稼働時刻及び前記第2工程と前記第3工程との間の第4待ち時間を含む第3稼働状況データを、ネットワークを介して取得し、前記第1稼働時刻及び前記第3稼働時刻に基づき前記第2生産装置におけるダミー稼働時刻を算出し、前記第1待ち時間及び前記第4待ち時間に基づき前記第2工程におけるダミー待ち時間を予測し、前記ダミー稼働時刻及び前記ダミー待ち時間を含むダミー稼働状況データを生成し、前記第1稼働状況データ、前記第3稼働状況データ及び前記ダミー稼働状況データに基づき、前記第1工程から前記第3工程までを含む生産工程全体の異常判定処理を行い、前記異常判定処理の結果を表す判定結果情報を、前記生産管理システムに含まれる表示装置に表示するよう出力する。
【0009】
本開示の別の一態様に係る異常判定方法は、第1工程に対応する第1生産装置及び前記第1工程に続く末端の工程である第2工程に対応する第2生産装置を含む生産ラインを管理する生産管理システムにおける異常判定方法であって、(i)前記第1生産装置における第1稼働時刻及び前記第1工程と前記第2工程との間の第1待ち時間を含む第1稼働状況データ、並びに(ii)前記第2生産装置における第2稼働時刻、前記第1工程と前記第2工程との間の第2待ち時間を含む第2稼働状況データ、の中の少なくとも前記第1稼働状況データを、ネットワークを介して取得し、前記第1稼働時刻に基づき前記第2稼働状況データの未取得が判断された場合、前記第1稼働時刻に基づき前記第2稼働時刻に対応するダミー稼働時刻を予測し、前記第1待ち時間に基づき前記第2工程におけるダミー待ち時間を予測し、前記ダミー稼働時刻及び前記ダミー待ち時間を含む前記第2稼働状況データに対応するダミー稼働状況データを生成し、前記第1稼働状況データ及び前記ダミー稼働状況データに基づき、前記第1工程及び前記第2工程を含む生産工程全体の異常判定処理を行い、前記異常判定処理の結果を表す判定結果情報を、前記生産管理システムに含まれる表示装置に表示するよう出力する。
【0010】
本開示の別の一態様に係る異常判定方法は、先端の工程である第1工程に対応する第1生産装置及び前記第1工程に続く第2工程に対応する第2生産装置を含む生産ラインを管理する生産管理システムにおける異常判定方法であって、(i)前記第1生産装置における第1稼働時刻及び前記第1工程と前記第2工程との間の第1待ち時間を含む第1稼働状況データ、並びに(ii)前記第2生産装置における第2稼働時刻、前記第1工程と前記第2工程との間の第2待ち時間を含む第2稼働状況データ、の中の少なくとも前記第2稼働状況データを、ネットワークを介して取得し、前記第2稼働時刻に基づき前記第1稼働状況データの未取得が判断された場合、前記第2稼働時刻に基づき前記第1稼働時刻に対応するダミー稼働時刻を予測し、前記第2待ち時間に基づき前記第1工程におけるダミー待ち時間を予測し、前記ダミー稼働時刻及び前記ダミー待ち時間を含む前記第1稼働状況データに対応するダミー稼働状況データを生成し、前記ダミー稼働状況データ及び前記第2稼働状況データに基づき、前記第1工程及び前記第2工程を含む生産工程全体の異常判定処理を行い、前記異常判定処理の結果を表す判定結果情報を、前記生産管理システムに含まれる表示装置に表示するよう出力する。
【0011】
本開示の一態様に係る生産管理システムは、第1工程に対応する第1生産装置、前記第1工程に続く第2工程に対応する第2生産装置、及び前記第2工程に続く第3工程に対応する第3生産装置を含む生産ラインを管理する生産管理システムであって、(i)前記第1生産装置における第1稼働時刻及び前記第1工程と前記第2工程との間の第1待ち時間を含む第1稼働状況データ、(ii)前記第2生産装置における第2稼働時刻、前記第1工程と前記第2工程との間の第2待ち時間及び前記第2工程と前記第3工程との間の第3待ち時間を含む第2稼働状況データ、並びに(iii)前記第3生産装置における第3稼働時刻及び前記第2工程と前記第3工程との間の第4待ち時間を含む第3稼働状況データ、の中の少なくとも(i)前記第1稼働状況データ及び(iii)前記第3稼働状況データを、ネットワークを介して取得し、前記第1稼働時刻及び前記第3稼働時刻に基づき前記第2稼働状況データの未取得が判断された場合、前記第1稼働時刻及び前記第3稼働時刻に基づき前記第2稼働時刻に対応するダミー稼働時刻を予測し、前記第1待ち時間及び前記第4待ち時間に基づき前記第2工程におけるダミー待ち時間を予測し、前記ダミー稼働時刻及び前記ダミー待ち時間を含む前記第2稼働状況データに対応するダミー稼働状況データを生成し、前記第1稼働状況データ、前記第3稼働状況データ及び前記ダミー稼働状況データに基づき、前記第1工程から前記第3工程までを含む生産工程全体の異常判定処理を行い、前記異常判定処理の結果を表す判定結果情報を、前記生産管理システムに含まれる表示装置に表示するよう出力する。
【0012】
本開示の別の一態様に係る生産管理システムは、第1工程に対応する第1生産装置、前記第1工程に続く第2工程に対応する第2生産装置、及び前記第2工程に続く第3工程に対応する第3生産装置を含む生産ラインを管理する生産管理システムであって、(i)前記第1生産装置における第1稼働時刻及び前記第1工程と前記第2工程との間の第1待ち時間を含む第1稼働状況データ、並びに(ii)前記第3生産装置における第3稼働時刻及び前記第2工程と前記第3工程との間の第4待ち時間を含む第3稼働状況データを、ネットワークを介して取得し、前記第1稼働時刻及び前記第3稼働時刻に基づき前記第2生産装置におけるダミー稼働時刻を算出し、前記第1待ち時間及び前記第4待ち時間に基づき前記第2工程におけるダミー待ち時間を予測し、前記ダミー稼働時刻及び前記ダミー待ち時間を含むダミー稼働状況データを生成し、前記第1稼働状況データ、前記第3稼働状況データ及び前記ダミー稼働状況データに基づき、前記第1工程から前記第3工程までを含む生産工程全体の異常判定処理を行い、前記異常判定処理の結果を表す判定結果情報を、前記生産管理システムに含まれる表示装置に表示するよう出力する。
【0013】
また、本開示の一態様は、上記異常判定方法をコンピュータに実行させるプログラムとして実現することができる。あるいは、本開示の一態様は、当該プログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体として実現することもできる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、高い精度で異常を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、実施の形態に係る生産管理システムの構成を示す図である。
図2図2は、実施の形態に係る生産管理システムの機能構成を示すブロック図である。
図3図3は、生産ログデータの一例を示す図である。
図4図4は、実施の形態に係る生産管理システムの動作を示すシーケンス図である。
図5図5は、実施の形態に係る生産管理システムの動作を示すフローチャートである。
図6図6は、ダミー稼働状況データの生成処理を示すフローチャートである。
図7図7は、一の生産ラインの生産モデルである学習済みの確率分布と異常度との関係を示す図である。
図8図8は、異常の要因特定処理を示すフローチャートである。
図9図9は、機械学習による学習モデルの生成処理を示すフローチャートである。
図10図10は、中間の工程の稼働状況データが欠損した場合に生成されるダミー稼働状況データの例を示す図である。
図11図11は、ダミー稼働状況データの生成処理に関わる入力データと出力データとを示す図である。
図12図12は、先端の工程の稼働状況データが欠損した場合に生成されるダミー稼働状況データの例を示す図である。
図13図13は、末端の工程の稼働状況データが欠損した場合に生成されるダミー稼働状況データの例を示す図である。
図14図14は、取得予定にない稼働状況データの代わりに生成されるダミー稼働状況データの例を示す図である。
図15図15は、実施の形態に係る生産管理システムによる判定結果の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(本開示の概要)
本開示の一態様に係る異常判定方法は、第1工程に対応する第1生産装置、前記第1工程に続く第2工程に対応する第2生産装置、及び前記第2工程に続く第3工程に対応する第3生産装置を含む生産ラインを管理する生産管理システムにおける異常判定方法であって、(i)前記第1生産装置における第1稼働時刻及び前記第1工程と前記第2工程との間の第1待ち時間を含む第1稼働状況データ、(ii)前記第2生産装置における第2稼働時刻、前記第1工程と前記第2工程との間の第2待ち時間及び前記第2工程と前記第3工程との間の第3待ち時間を含む第2稼働状況データ、並びに(iii)前記第3生産装置における第3稼働時刻及び前記第2工程と前記第3工程との間の第4待ち時間を含む第3稼働状況データの中の少なくとも(i)前記第1稼働状況データ及び(iii)前記第3稼働状況データを、ネットワークを介して取得し、前記第1稼働時刻及び前記第3稼働時刻に基づき前記第2稼働状況データの未取得が判断された場合、前記第1稼働時刻及び前記第3稼働時刻に基づき前記第2稼働時刻に対応するダミー稼働時刻を予測し、前記第1待ち時間及び前記第4待ち時間に基づき前記第2工程におけるダミー待ち時間を予測し、前記ダミー稼働時刻及び前記ダミー待ち時間を含む前記第2稼働状況データに対応するダミー稼働状況データを生成し、前記第1稼働状況データ、前記第3稼働状況データ及び前記ダミー稼働状況データに基づき、前記第1工程から前記第3工程までを含む生産工程全体の異常判定処理を行い、前記異常判定処理の結果を表す判定結果情報を、前記生産管理システムに含まれる表示装置に表示するよう出力する。
【0017】
上記のように、第1生産装置、第2生産装置及び第3生産装置を含む生産ラインにおいて、いずれかの生産装置が不調になると、全体の稼働が低下し、生産量が減少する。個々の工程について異常判定処理を行い、工程毎に要因を判定すると、判定時間が長大となり、大量のメモリが必要になる。
【0018】
一方、第1生産装置、第2生産装置、及び第3生産装置が連結された生産ラインの場合、第1工程、第2工程、及び第3工程を含む生産工程の全体に対して異常判定処理を行うことにより、異常が発生した工程を特定することは可能である。また、処理量も減るので、より短期間で判定することができる。
【0019】
しかし、第1工程に対応する第1稼働状況データ、第2工程に対応する第2稼働データ、及び第3工程に対応する第3稼働状況データがあるとした場合、いずれかのデータが欠損すると、生産工程の全体に対する異常判定処理自体ができなくなる。このようなデータの欠損は、例えば、第1稼働状況データ、第2稼働状況データ、及び第3稼働状況データを通信するネットワークの状況により生じ得る。
【0020】
そこで、本開示の一態様に係る異常判定方法では、上述したとおり、データ欠損を判断した場合には、対応するダミー稼働状況データを生成する。これにより、データの欠損が生じた場合であっても、生産工程の全体に対する異常判定処理を継続することができる。
【0021】
ダミー稼働状況データは、データ欠損が生じた工程の前後の工程の稼働状況データに基づき生成される。例えば、データ欠損が生じた工程における稼働時間当たりの待ち時間(すなわち、停止時間)を、前後の工程の稼働状況データに基づき推定している。
【0022】
これにより、ネットワーク状況などにより、いずれかの工程に対応する稼働状況データ欠損が生じた場合であっても、生産工程の全体に対する異常判定処理を継続し、精度を損なわずに短時間で異常を判定することができる。
【0023】
また、例えば、前記判定結果情報の出力の際、前記第2工程において前記ダミー稼働状況データを用いて前記異常判定処理を行った旨を出力してもよい。
【0024】
これにより、ダミー稼働状況データを用いて異常判定処理を行った旨を通知することで、データ転送に不具合が生じていたことが分かり、改善につなげることができる。
【0025】
また、例えば、前記異常判定処理は、前記生産工程全体における全稼働時間における全待ち時間に基づき、前記生産工程全体における異常の有無を判定する処理であってもよい。
【0026】
これにより、生産工程全体の異常を精度良く判定することができる。
【0027】
また、例えば、前記異常判定処理は、前記生産工程全体の中の各工程において当該工程の稼働時間における当該待ち時間に基づき、当該工程における異常の有無を判定する処理であってもよい。
【0028】
これにより、各工程の異常を精度良く判定することができ、精度良く異常の要因を特定することができる。
【0029】
また、例えば、前記異常判定処理の結果は、前記生産工程において異常がないことを含んでもよい。
【0030】
これにより、異常の有無を明確にすることができる。
【0031】
また、例えば、前記生産ラインにおいて、前記第1生産装置、前記第2生産装置及び前記第3生産装置がベルトコンベアで連結されていてもよい。
【0032】
また、本開示の一態様に係る生産管理システムは、第1工程に対応する第1生産装置、前記第1工程に続く第2工程に対応する第2生産装置、及び前記第2工程に続く第3工程に対応する第3生産装置を含む生産ラインを管理する生産管理システムであって、(i)前記第1生産装置における第1稼働時刻及び前記第1工程と前記第2工程との間の第1待ち時間を含む第1稼働状況データ、(ii)前記第2生産装置における第2稼働時刻、前記第1工程と前記第2工程との間の第2待ち時間及び前記第2工程と前記第3工程との間の第3待ち時間を含む第2稼働状況データ、並びに(iii)前記第3生産装置における第3稼働時刻及び前記第2工程と前記第3工程との間の第4待ち時間を含む第3稼働状況データ、の中の少なくとも(i)前記第1稼働状況データ及び(iii)前記第3稼働状況データを、ネットワークを介して取得し、前記第1稼働時刻及び前記第3稼働時刻に基づき前記第2稼働状況データの未取得が判断された場合、前記第1稼働時刻及び前記第3稼働時刻に基づき前記第2稼働時刻に対応するダミー稼働時刻を予測し、前記第1待ち時間及び前記第4待ち時間に基づき前記第2工程におけるダミー待ち時間を予測し、前記ダミー稼働時刻及び前記ダミー待ち時間を含む前記第2稼働状況データに対応するダミー稼働状況データを生成し、前記第1稼働状況データ、前記第3稼働状況データ及び前記ダミー稼働状況データに基づき、前記第1工程から前記第3工程までを含む生産工程全体の異常判定処理を行い、前記異常判定処理の結果を表す判定結果情報を、前記生産管理システムに含まれる表示装置に表示するよう出力する。
【0033】
これにより、上述した異常判定方法と同様の効果を得ることができる。すなわち、いずれかの工程に対応する稼働状況データ欠損が生じた場合であっても、生産工程の全体に対する異常判定処理を継続し、精度を損なわず短時間で異常を判定することができる。
【0034】
また、本開示の別の一態様に係る異常判定方法は、第1工程に対応する第1生産装置、前記第1工程に続く第2工程に対応する第2生産装置、及び前記第2工程に続く第3工程に対応する第3生産装置を含む生産ラインを管理する生産管理システムにおける異常判定方法であって、(i)前記第1生産装置における第1稼働時刻及び前記第1工程と前記第2工程との間の第1待ち時間を含む第1稼働状況データ、並びに(ii)前記第3生産装置における第3稼働時刻及び前記第2工程と前記第3工程との間の第4待ち時間を含む第3稼働状況データを、ネットワークを介して取得し、前記第1稼働時刻及び前記第3稼働時刻に基づき前記第2生産装置におけるダミー稼働時刻を算出し、前記第1待ち時間及び前記第4待ち時間に基づき前記第2工程におけるダミー待ち時間を予測し、前記ダミー稼働時刻及び前記ダミー待ち時間を含むダミー稼働状況データを生成し、前記第1稼働状況データ、前記第3稼働状況データ及び前記ダミー稼働状況データに基づき、前記第1工程から前記第3工程までを含む生産工程全体の異常判定処理を行い、前記異常判定処理の結果を表す判定結果情報を、前記生産管理システムに含まれる表示装置に表示するよう出力する。
【0035】
これにより、データ欠損の場合だけでなく、データを取得する予定がない場合であっても、取得されないデータの代わりにダミーデータを生成することができる。よって、生産工程の全体に対する異常判定処理を行うことができ、精度を損なわずに短時間で異常を判定することができる。
【0036】
また、例えば、前記判定結果情報の出力の際、前記第2工程において前記ダミー稼働状況データを用いて前記異常判定処理を行った旨を出力してもよい。
【0037】
これにより、ダミー稼働状況データを用いて異常判定処理を行った旨を通知することで、データ転送に不具合が生じていたことが分かり、改善につなげることができる。
【0038】
また、本開示の別の一態様に係る生産管理システムは、第1工程に対応する第1生産装置、前記第1工程に続く第2工程に対応する第2生産装置、及び前記第2工程に続く第3工程に対応する第3生産装置を含む生産ラインを管理する生産管理システムであって、(i)前記第1生産装置における第1稼働時刻及び前記第1工程と前記第2工程との間の第1待ち時間を含む第1稼働状況データ、並びに(ii)前記第3生産装置における第3稼働時刻及び前記第2工程と前記第3工程との間の第4待ち時間を含む第3稼働状況データを、ネットワークを介して取得し、前記第1稼働時刻及び前記第3稼働時刻に基づき前記第2生産装置におけるダミー稼働時刻を算出し、前記第1待ち時間及び前記第4待ち時間に基づき前記第2工程におけるダミー待ち時間を予測し、前記ダミー稼働時刻及び前記ダミー待ち時間を含むダミー稼働状況データを生成し、前記第1稼働状況データ、前記第3稼働状況データ及び前記ダミー稼働状況データに基づき、前記第1工程から前記第3工程までを含む生産工程全体の異常判定処理を行い、前記異常判定処理の結果を表す判定結果情報を、前記生産管理システムに含まれる表示装置に表示するよう出力する。
【0039】
これにより、上述した異常判定方法と同様の効果を得ることができる。すなわち、データ欠損の場合だけでなく、データを取得する予定がない場合であっても、生産工程の全体に対する異常判定処理を行い、精度を損なわずに短時間で異常を判定することができる。
【0040】
また、本開示の別の一態様に係る異常判定方法は、第1工程に対応する第1生産装置及び前記第1工程に続く末端の工程である第2工程に対応する第2生産装置を含む生産ラインを管理する生産管理システムにおける異常判定方法であって、(i)前記第1生産装置における第1稼働時刻及び前記第1工程と前記第2工程との間の第1待ち時間を含む第1稼働状況データ、並びに(ii)前記第2生産装置における第2稼働時刻、前記第1工程と前記第2工程との間の第2待ち時間を含む第2稼働状況データ、の中の少なくとも前記第1稼働状況データを、ネットワークを介して取得し、前記第1稼働時刻に基づき前記第2稼働状況データの未取得が判断された場合、前記第1稼働時刻に基づき前記第2稼働時刻に対応するダミー稼働時刻を予測し、前記第1待ち時間に基づき前記第2工程におけるダミー待ち時間を予測し、前記ダミー稼働時刻及び前記ダミー待ち時間を含む前記第2稼働状況データに対応するダミー稼働状況データを生成し、前記第1稼働状況データ及び前記ダミー稼働状況データに基づき、前記第1工程及び前記第2工程を含む生産工程全体の異常判定処理を行い、前記異常判定処理の結果を表す判定結果情報を、前記生産管理システムに含まれる表示装置に表示するよう出力する。
【0041】
これにより、全生産工程中の末端の工程に対応する稼働状況データ欠損が生じた場合であっても、生産工程の全体に対する異常判定処理を継続し、精度を損なわず短時間で異常を判定することができる。
【0042】
また、例えば、前記判定結果情報の出力の際、前記第2工程において前記ダミー稼働状況データを用いて前記異常判定処理を行った旨を出力してもよい。
【0043】
これにより、ダミー稼働状況データを用いて異常判定処理を行った旨を通知することで、データ転送に不具合が生じていたことが分かり、改善につなげることができる。
【0044】
また、本開示の別の一態様に係る異常判定方法は、先端の工程である第1工程に対応する第1生産装置及び前記第1工程に続く第2工程に対応する第2生産装置を含む生産ラインを管理する生産管理システムにおける異常判定方法であって、(i)前記第1生産装置における第1稼働時刻及び前記第1工程と前記第2工程との間の第1待ち時間を含む第1稼働状況データ、並びに(ii)前記第2生産装置における第2稼働時刻、前記第1工程と前記第2工程との間の第2待ち時間を含む第2稼働状況データ、の中の少なくとも前記第2稼働状況データを、ネットワークを介して取得し、前記第2稼働時刻に基づき前記第1稼働状況データの未取得が判断された場合、前記第2稼働時刻に基づき前記第1稼働時刻に対応するダミー稼働時刻を予測し、前記第2待ち時間に基づき前記第1工程におけるダミー待ち時間を予測し、前記ダミー稼働時刻及び前記ダミー待ち時間を含む前記第1稼働状況データに対応するダミー稼働状況データを生成し、前記ダミー稼働状況データ及び前記第2稼働状況データに基づき、前記第1工程及び前記第2工程を含む生産工程全体の異常判定処理を行い、前記異常判定処理の結果を表す判定結果情報を、前記生産管理システムに含まれる表示装置に表示するよう出力する。
【0045】
これにより、全生産工程中の先端の工程に対応する稼働状況データ欠損が生じた場合であっても、生産工程の全体に対する異常判定処理を継続し、精度を損なわず短時間で異常を判定することができる。
【0046】
また、例えば、前記判定結果情報の出力の際、前記第1工程において前記ダミー稼働状況データを用いて前記異常判定処理を行った旨を出力してもよい。
【0047】
これにより、ダミー稼働状況データを用いて異常判定処理を行った旨を通知することで、データ転送に不具合が生じていたことが分かり、改善につなげることができる。
【0048】
以下では、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0049】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0050】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、例えば、各図において縮尺などは必ずしも一致しない。また、各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0051】
(実施の形態)
[1.生産管理システムの概要]
まず、本実施の形態に係る生産管理システムの概要について、図1を用いて説明する。
【0052】
図1は、本実施の形態に係る生産管理システム1の構成を示す図である。図1に示される生産管理システム1は、複数の生産装置を含む生産ラインを管理するシステムである。本実施の形態では、生産管理システム1は、設備群10を管理する。以下ではまず、生産管理システム1による管理対象となる設備群10について説明する。
【0053】
なお、図1では、複数の生産ライン及び複数の設備を個々に区別するため、例えば、複数の生産ライン11a及び11bなど、複数の設備12a_1、12a_2及び12b_1などのように、各々に異なる符号を付している。以下の説明において生産ライン及び設備を区別する必要がない場合には、生産ライン11及び設備12として記載する。
【0054】
設備群10は、x個の生産ライン11を含んでいる。xは、1以上の自然数である。
【0055】
x個の生産ライン11はそれぞれ、n台の設備12を含んでいる。nは、2以上の自然数である。なお、一の生産ライン11が含む設備12の台数は、他の生産ライン11が含む設備12の台数と異なっていてもよい。x個の生産ライン11はそれぞれ、複数の生産物を生産する。一の生産物は、複数の工程が順次実施されることによって生産される。複数の工程は、例えば、部品実装、加工、組み立てなどであるが、特に限定されない。生産物は、生産ライン11に含まれるn台の設備12が、各設備に割り当てられた工程を順次実行することによって生産される。
【0056】
設備12は、生産装置の一例である。例えば、設備12は、部品実装機、組立装置、加工機械、搬送装置などである。図1に示される例では、n台の設備12がベルトコンベアで連結されている。生産物の仕掛品は、ベルトコンベアによってn台の設備12に順次搬送される。
【0057】
例えば、生産ライン11aに着目すると、設備12a_1は、先端の工程に対応する生産装置である。設備12a_nは、末端の工程に対応する生産装置である。設備12a_2から設備12a_n-1は、中間の工程に対応する生産装置である。設備12a_1から設備12a_nは、この順で工程を実行することにより、生産物を生産する。
【0058】
設備12には、1以上のセンサ(図示せず)が設けられている。センサは、設備12の稼働状況を表す値を測定する。例えば、センサは、イメージセンサ、赤外線センサ、流量センサ、電流計、圧力計などであるが、特に限定されない。センサは、測定結果を、対応する設備12の稼働状況データとして出力する。
【0059】
設備群10と生産管理システム1とは、ネットワークを介して通信可能に接続されている。通信は、有線通信又は無線通信であり、具体的な通信方式は特に限定されない。
【0060】
本実施の形態に係る生産管理システム1は、設備群10の各設備12のセンサが出力する稼働状況データを取得し、取得した稼働状況データに基づいて生産ライン11の異常を判定する。また、生産管理システム1は、生産ライン11の異常の要因を特定する。具体的には、生産管理システム1は、異常と判定した生産ライン11に含まれるn台の設備12のうち、異常の要因となった設備12及びその異常の種別を特定する。異常の判定及び異常の要因の特定は、機械学習により生成された学習モデルを用いて行われる。学習モデルは、生産ライン11毎に各設備12の稼働状況データが入力された場合に、異常の判定結果と、異常の場合にはその要因とを出力するモデルである。
【0061】
異常の判定には、稼働状況データが必要である。しかしながら、ネットワークの状況により、稼働状況データが欠損する場合がある。あるいは、センサが設置されていないなど、最初から稼働状況データを取得する予定がない場合もある。
【0062】
生産管理システム1は、欠損その他の要因で稼働状況データが取得されない場合に、当該稼働状況データのダミーデータを生成する。生産管理システム1は、ダミーデータを含む入力データを学習モデルに入力することで、異常の判定結果と、異常の場合にその要因とを得ることができる。このように、本実施の形態に係る生産管理システム1によれば、稼働状況データが取得されない場合であっても、生産ライン11の工程の全体に対する異常判定処理を継続し、精度を損なわずに短時間で異常を判定することができる。
【0063】
[2.生産管理システムの構成]
次に、生産管理システム1の具体的な構成について、図2を用いて説明する。
【0064】
図2は、本実施の形態に係る生産管理システム1の機能構成を示すブロック図である。図2に示されるように、生産管理システム1は、異常判定装置2と、取得部13と、を備える。異常判定装置2は、入力部20と、制御部30と、出力部40と、記憶部50と、を備える。
【0065】
取得部13は、各設備12の稼働状況データを、ネットワークを介して取得する。取得部13は、生産ライン11に含まれる全ての設備12の稼働状況データを取得しようとするが、一部の稼働状況データを取得できなくてもよい。
【0066】
稼働状況データは、各設備12における生産個数と、各生産に対応する稼働時刻とを含む。設備12における生産個数とは、設備12の稼働時間中に設備12が生産した生産物の個数である。言い換えると、生産個数は、設備12が出力する生産物の出力個数である。
【0067】
ここでの生産物は、設備12が生産ライン11の末端の設備である場合を除いて、中間生産物、すなわち、仕掛品である。末端の設備12による生産物は、生産ライン11の最終生産物である。以下では、中間生産物及び最終生産物の区別をせずに、“生産物”として説明を行う。また、先端の設備12に入力される材料も便宜上、生産物と呼ぶ場合がある。設備12における生産個数は、出力個数だけでなく、設備12に入力される生産物の入力個数を含んでもよい。
【0068】
各生産に対応する稼働時刻は、設備12による一の生産物に対する工程の開始時刻及び終了時刻を含む。あるいは、各生産に対応する稼働時刻は、ロット単位での工程の開始時刻及び終了時刻を含んでもよい。
【0069】
稼働状況データは、設備12及び生産物に関わる他の情報を含んでもよい。例えば、稼働状況データは、生産ライン11の識別情報、設備12若しくは工程の識別情報、ロットの識別情報、生産物の品種情報を含んでもよい。
【0070】
また、稼働状況データには、設備12の停止に関わる情報を含んでもよい。「停止」には、「チョコ停」と称される短期間の設備の待機(一時的な停止)、故障による停止、及び保守作業のための計画的な停止などが含まれる。停止に関わる情報は、停止発生時刻、停止終了時刻、及び停止要因などを含む。停止発生時刻及び停止終了時刻は、稼働時刻の一例とみなすこともできる。
【0071】
停止に関わる情報は、前工程待ち時間及び後工程待ち時間の少なくとも一方を含んでもよい。なお、前工程待ち時間は、直前の工程と現工程と間の、現工程を行う設備の待ち時間である。後工程待ち時間は、現工程と直後の工程との間の、現工程を行う設備の待ち時間である。各待ち時間は、例えば、停止終了時刻と停止発生時刻との差分として算出することもできる。このため、稼働状況データが待ち時間を含むことは、稼働状況データが停止発生時刻及び停止終了時刻を含むことと同義とみなすことができる。
【0072】
取得部13は、各設備12に設けられたセンサとネットワークを介して通信する通信インタフェースである。あるいは、取得部13は、各設備12に設けられたセンサ自体であってもよい。
【0073】
入力部20は、管理者などのユーザからの操作入力を受け付ける。入力部20は、例えば、キーボード、マウスなどの各種入力装置である。操作入力は、例えば、異常判定の開始の指示、機械学習の開始の指示、判定結果の表示の指示などである。操作入力は、異常判定処理を行う対象となる生産ライン11の指定、及び、異常判定処理の対象期間の指定などを含んでもよい。
【0074】
制御部30は、異常判定方法の主たる処理を行う処理部である。制御部30は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサ、プログラムが格納された不揮発性メモリ、プログラムを実行するための一時的な記憶領域である揮発性メモリ、及び入出力ポートなどを含んでいる。制御部30は、1台のコンピュータ機器であってもよく、ネットワークを介して接続された複数台のコンピュータ機器であってもよい。制御部30が実行する処理は、例えば、クラウドコンピューティングによって行われてもよい。
【0075】
図2に示されるように、制御部30は、要求部31と、欠損判定部32と、計算部33と、異常検出部34と、評価部35と、出力処理部36と、を含む。
【0076】
要求部31は、記憶部50に対して稼働状況データの送信を要求する。例えば、要求部31は、入力部20が受け付けた異常判定処理の対象となる生産ライン11及び対象期間に基づいて、異常判定処理に用いる稼働状況データの送信を要求する。また、要求部31は、欠損判定部32に対して、記憶部50から送信された稼働状況データの未取得の判定処理の実行を要求する。
【0077】
欠損判定部32は、記憶部50から送信される稼働状況データの未取得を判定する。具体的には、欠損判定部32は、直前の工程の稼働状況データに含まれる稼働時刻と、直後の工程の稼働状況データに含まれる稼働時刻と、の少なくとも一方に基づいて、所定の工程の稼働状況データの欠損の有無を判定する。欠損判定部32は、欠損の判定結果と、記憶部50から送信された稼働状況データと、を計算部33に出力する。
【0078】
計算部33は、所定の工程の稼働状況データの未取得が判断された場合、すなわち、欠損判定部32によって当該工程の稼働状況データが欠損していると判定された場合に、当該工程のダミー稼働状況データを生成する。以下では、稼働状況データが未取得の工程を、「欠損工程」と記載する。また、欠損工程の直前の工程を「直前工程」と記載し、欠損工程の直後の工程を「直後工程」と記載する。直前工程、欠損工程及び直後工程はそれぞれ、第1工程、第2工程、第3工程の一例であり、他の工程を挟まずにこの順で連続して行われる。
【0079】
具体的には、計算部33は、直前工程の稼働状況データ及び直後工程の稼働状況データの少なくとも一方に基づいて、欠損工程の設備における生産予定個数に対応するダミー稼働時刻を予測し、生産予定個数及びダミー稼働時刻を含むダミー稼働状況データを生成する。ダミー稼働時刻は、欠損工程の稼働時刻に対応する予測値である。例えば、計算部33は、直前工程の稼働時刻及び直後工程の稼働時刻の少なくとも一方に基づき、欠損工程の稼働時刻に対応するダミー稼働時刻を予測する。
【0080】
なお、ダミー稼働状況データは、生産予定個数の代わりに、又は、生産予定個数に加えて、ダミー待ち時間を含んでもよい。ダミー待ち時間は、欠損工程における待ち時間の予測値である。この場合、計算部33は、直前工程を行う設備における直前工程と欠損工程との間の待ち時間、及び、直後工程を行う設備における欠損工程と直後工程との間の待ち時間、の少なくとも一方に基づき、欠損工程におけるダミー待ち時間を予測する。
【0081】
計算部33は、記憶部50に記憶されたモデルデータ52及び係数データ53を利用して、ダミー稼働状況データを生成する。ダミー稼働状況データの具体的な生成例については、後で説明する。
【0082】
また、計算部33は、機械学習を実行することにより、学習モデルを生成してもよい。生成した学習モデルは、記憶部50にモデルデータ52として記憶される。また、計算部33は、機械学習を実行することにより、ダミー稼働状況データの生成用の係数を算出してもよい。算出した係数は、記憶部50に係数データ53として記憶される。
【0083】
異常検出部34は、各工程の稼働状況データとダミー稼働状況データとに基づき、生産工程全体の異常判定処理を行う。複数の生産ライン11が設けられている場合には、異常判定処理は、生産ライン11毎に行われる。つまり、異常検出部34は、対象となる生産ライン11について、先端の工程から末端の工程までの全ての工程を含む生産工程全体の異常判定処理を行う。具体的には、異常判定処理は、生産工程全体における全稼働時間における全生産個数に基づき、生産工程全体における異常の有無を判定する処理を含む。また、異常判定処理は、生産工程全体の中の各工程において当該工程の稼働時間における当該生産個数に基づき、当該工程における異常の有無を判定する処理を含んでもよい。
【0084】
なお、異常判定処理は、生産個数を利用する処理に加えて、又は、生産個数を利用する処理の代わりに、生産工程全体における全稼働時間における全待ち時間に基づき、生産工程全体における異常の有無を判定する処理を含んでもよい。また、異常判定処理は、生産工程全体の中の各工程において当該工程の稼働時間における当該待ち時間に基づき、当該工程における異常の有無を判定する処理を含んでもよい。
【0085】
評価部35は、異常判定処理の結果を評価することで、異常の要因特定処理を行う。具体的には、評価部35は、異常と判定された生産ライン11を特定する。評価部35は、さらに、異常と判定された生産ライン11に含まれる全設備のうち、異常な設備とその要因とを特定する。
【0086】
評価部35は、さらに、ダミー稼働状況データを評価してもよい。具体的には、評価部35は、ダミー稼働状況データの確からしさを評価する。ダミー稼働状況データが実際の稼働状況を表す確からしさが高い程、異常判定処理の結果の精度も高くなる。
【0087】
出力処理部36は、異常判定処理の結果を表す判定結果情報を出力部40に出力する。異常判定処理の結果は、異常があったことだけでなく、異常がないことを含んでもよい。出力処理部36は、さらに、評価部35による評価結果を出力部40に出力してもよい。例えば、出力処理部36は、判定結果情報の出力の際、ダミー稼働状況データを用いて異常判定処理を行った旨を出力してもよい。
【0088】
出力部40は、異常判定処理の結果を表す判定結果情報を出力する。具体的には、出力部40は、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイなどの表示部を含む。表示部は、判定結果情報を表示する。出力部40による表示例については、後で説明する。出力部40は、表示部に加えて、又は、表示部の代わりに、音声出力部を含んでもよい。
【0089】
記憶部50は、生産管理システム1が行う処理に必要な情報及びデータを記憶する。記憶部50は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)などの不揮発性記憶装置である。記憶部50は、ネットワークを介して接続された複数の記憶装置であってもよい。
【0090】
図2に示されるように、記憶部50は、生産ログデータ51と、モデルデータ52と、係数データ53と、を記憶する。
【0091】
生産ログデータ51は、稼働状況データの集合である。図3は、生産ログデータ51の一例を示す図である。図3に示すように、生産ログデータ51は、最上段に記載された複数の項目(属性とも呼ばれる)の情報を含んでいる。具体的には、複数の項目は、生産ライン、工程、ロット開始時刻、ロット終了時刻、稼働時間、ロット番号、入力個数、出力個数、品種情報、停止発生時刻、停止終了時刻、及び停止要因を含んでいる。複数の属性は、工程の代わりに、対応する設備名を含んでもよい。なお、生産ログデータ51に含まれる項目の個数及び種類は、特に限定されない。
【0092】
図3に示される各行のデータ(レコードとも呼ばれる)は、1回の停止に対応している。例えば、1行目から3行目のレコードは、「Line1」の生産ライン11の「工程A」の稼働状況を表すデータである。ロット番号「L001」のロットに対する生産の開始時刻が「12:00」であり、当該ロットに対する終了時刻が「15:30」である。稼働時間は、「210」分である。なお、この稼働時間は、ロット終了時刻とロット開始時刻との差分で算出されてもよい。「工程A」を行う設備に対する入力個数が「100」個であり、当該設備からの出力個数、すなわち、生産個数が「100」個である。入力個数と出力個数とが等しいので、生産不良を起こすことなく、全ての生産が行われたことが分かる。生産品の品種は、「Type 01」である。
【0093】
1行目のレコードは、「Line1」の生産ライン11の「工程A」の稼働時間中に、停止要因「Stop a」によって、「12:10」に停止し、「12:12」に停止が終了して生産を再開していることを示している。同様に、2行目のレコードは、停止要因「Stop b」によって、「12:16」に停止し、「12:20」に停止が終了して生産を再開していることを示している。3行目のレコードは、停止要因「後待ち」によって、「12:37」に停止し、「12:40」に停止が終了して生産を再開していることを示している。このように、「Line1」の生産ライン11の「工程A」の稼働時間中には、3回の停止が発生している。なお、「後待ち」とは、対象の工程の直後の工程の処理を待つための停止を意味している。「前待ち」とは、対象の工程の直前の工程の処理を待つための停止を意味している。
【0094】
稼働状況データは、同一の生産ライン11の同一の工程のレコードに相当する。例えば、1行目から3行目のレコードをまとめて1つの稼働状況データを構成している。あるいは、稼働状況データは、1つのレコードとみなしてもよい。
【0095】
モデルデータ52は、機械学習によって生成された1以上の学習モデルを含んでいる。学習モデルは、異常判定処理に用いられる生産モデルである。生産モデルは、例えば、生産工程全体の全稼働時間における生産個数の確率分布の種類及びパラメータの値で表される。確率分布の種類は、正規分布、対数正規分布、0過剰指数分布、ガンマ分布などである。確率分布のパラメータ種別は、確率分布の種類によって決まっている。例えば、正規分布の場合は、平均μ及び標準偏差σである。パラメータの値は、過去の生産実績、すなわち、過去の稼働状況データに基づいて生成される。
【0096】
1以上の学習モデルは、各設備の稼働時間における生産個数の確率分布の種類及びパラメータの値で表される設備別の生産モデルを含んでもよい。また、1以上の学習モデルは、各設備の稼働時間における停止要因毎の停止時間の確率分布の種類及びパラメータの値で表される要因別の生産モデルを含んでもよい。設備別の生産モデル及び要因別の生産モデルの少なくとも一方を利用して、異常が発生した設備の特定、及び、その異常の要因を行うことができる。
【0097】
また、1以上の学習モデルは、生産工程全体の全稼働時間における全待ち時間の確率分布の種類及びパラメータの値で表される生産モデルを含んでもよい。当該生産モデルは、生産個数に基づく生産モデルの代わりに異常判定処理に使用することができる。また、1以上の学習モデルは、各設備の稼働時間における待ち時間の確率分布の種類及びパラメータの値で表される設備別の生産モデルを含んでもよい。
【0098】
学習モデルのパラメータは、ベイズ推定に基づいて求めることができる。例えば、マルコフ連鎖モンテカルロシミュレーション(MCMC)などのサンプリング法、又は、VB-EM(Variational Bayesian - Expectation Maximization)アルゴリズムなどの変分推定によって求めることができる。
【0099】
学習モデルの生成時の入力データは、各工程の稼働状況データである。具体的には、各工程の生産個数、稼働時間、要因毎の停止時間(待ち時間)、設備名及び品種などが入力データとして利用される。学習モデルの生成に利用した入力データの種別は、ダミー稼働状況データが含むべきデータの種別である。言い換えると、ダミー稼働状況データは、学習モデルの生成に利用していない種別のデータを含んでいなくてもよい。
【0100】
係数データ53は、ダミー稼働データの生成用の係数を含んでいる。具体的には、係数データ53は、ダミー待ち時間の算出用の係数を含んでいる。係数は、欠損工程の直前工程及び直後工程の少なくとも一方と欠損工程とのタクト差に基づく補正係数である。つまり、当該係数を利用することにより、工程間のタクト差を考慮してダミー待ち時間を精度良く算出することができる。
【0101】
係数は、機械学習によって算出されるが、これに限定されない。係数は、回帰的に算出されてもよい。また、係数データ53は、ダミー稼働時刻及び生産予定個数の算出用の係数を含んでもよい。
【0102】
[3.生産管理システムの動作(異常判定方法)]
次に、生産管理システム1の動作、すなわち、異常判定方法について、図面を用いて説明する。
【0103】
図4は、本実施の形態に係る生産管理システム1の動作を示すシーケンス図である。図5は、本実施の形態に係る生産管理システム1の動作を示すフローチャートである。
【0104】
図4及び図5に示されるように、まず、取得部13が設備群10から稼働状況データを取得して、記憶部50に保存する(S11)。稼働状況データは、設備群10に含まれる全ての設備12から取得されて記憶部50に蓄積される。
【0105】
次に、記憶部50は、所定期間分の稼働状況データを制御部30に送信する(S12)。所定期間は、異常判定処理の対象期間であり、入力部20が受け付けた操作入力に基づいて決定される。例えば、所定期間は、1ロットの生産を行った期間、1時間又は1日などである。入力部20が受け付けた操作入力が特定の生産ライン11の指示である場合には、記憶部50は、当該生産ライン11に含まれる全ての設備12の稼働状況データを送信する。
【0106】
次に、制御部30の欠損判定部32が、送信された所定期間分の稼働状況データが揃っているか否かを判定する(S13)。未取得の稼働状況データがある場合(S13でNo)、制御部30の計算部33は、ダミー稼働状況データを生成する(S14)。
【0107】
図6は、ダミー稼働状況データの生成処理(S14)を示すフローチャートである。
【0108】
図6に示されるように、計算部33は、稼働状況データが得られていない欠損工程を特定する(S141)。
【0109】
次に、計算部33は、欠損工程の前後工程の稼働状況データを取得する(S142)。このとき、欠損工程が全生産工程中の中間の工程である場合には、計算部33は、直前工程の稼働状況データと、直後工程の稼働状況データと、を取得する。
【0110】
欠損工程が全生産工程中の先端の工程である場合には、計算部33は、直前工程が存在しないため、直後工程の稼働状況データを取得する。計算部33は、直前工程の稼働状況データの代わりに、対象の生産ライン11の生産計画における生産個数及び生産開始時刻などの各々の初期値を取得してもよい。
【0111】
また、欠損工程が全生産工程中の末端の工程である場合には、計算部33は、直後工程が存在しないため、直前工程の稼働状況データを取得する。計算部33は、直後工程の稼働状況データの代わりに、対象の生産ライン11の生産実績に基づいて生産個数及び生産終了時刻などの各々の最終値を取得してもよい。
【0112】
次に、計算部33は、記憶部50からダミー稼働状況データの生成用の係数を取得する(S143)。
【0113】
次に、計算部33は、取得した稼働状況データ及び係数に基づき、ダミー稼働状況データを生成する(S144)。例えば、計算部33は、生産予定個数及びダミー稼働時刻を予測し、予測した生産予定個数及びダミー稼働時刻を含むダミー稼働状況データを生成する。生産予定個数は、例えば、直前工程の生産個数(すなわち、出力個数)である。あるいは、生産予定個数は、直後工程の入力個数であってもよい。ダミー稼働時刻は、直前工程の稼働時刻と直後工程の稼働時刻との平均値である。また、計算部33は、ダミー待ち時間を予測してもよい。ダミー待ち時間の予測には、ステップS143で取得した係数を利用することができる。
【0114】
以上の工程を経て、生産管理システム1は、欠損工程に対応するダミー稼働状況データを生成する。
【0115】
図5に戻り、稼働状況データが揃っている場合(S13でYes)、又は、ダミー稼働状況データを生成した後、異常検出部34は、モデルデータ52を取得する(S15)。具体的には、異常検出部34は、異常判定処理の対象となる生産ライン11の生産モデルを取得する。また、異常検出部34は、異常判定処理の対象となる生産ライン11に含まれる全ての設備12の設備別の生産モデル及び要因別の生産モデルを取得する。
【0116】
次に、異常検出部34は、異常判定処理を行う(S16)。具体的には、異常検出部34は、ダミー稼働状況データを含む稼働状況データから得られる全稼働時間における全生産個数に基づき、異常度を算出する。なお、異常検出部34は、ダミー稼働状況データを含む稼働状況データから得られる全稼働時間における全待ち個数に基づき、異常度を算出してもよい。
【0117】
図7は、一の生産ラインの生産モデルである学習済みの確率分布と異常度との関係を示す図である。横軸は、例えば、生産タクトである。生産タクトは、全稼働時間÷全生産個数、または、(全稼働時間-全待ち時間)÷全生産個数で表される。
【0118】
図7の破線で示される実測値は、全工程の稼働状況データに基づいて得られる生産タクトの値である。稼働状況データが未取得の場合には、ステップS14で生成したダミー稼働状況データを用いる。図7の斜線の網掛けが付された領域が、確率分布において実測値より右側の領域の面積であり、上側確率、すなわち、異常度に相当する。上側確率が閾値より小さい場合に、生産ライン11が異常と判定する。
【0119】
図5に戻り、異常と判定された場合(S16で“異常”)、評価部35は、要因特定処理を行う(S17)。
【0120】
図8は、異常の要因特定処理を示すフローチャートである。図8に示されるように、評価部35は、異常と判定された生産ライン11を特定する(S171)。次に、評価部35は、特定した生産ライン11の中で、異常の工程とその要因を特定する(S172)。具体的には、評価部35は、設備別及び要因別の複数の生産モデルの各々に対して、異常判定処理と同様に、実績値に基づく上側確率を算出する。上側確率が閾値より小さい場合に、当該生産モデルに対応する設備及び要因を異常工程及びその要因として特定することができる。
【0121】
図5に戻り、異常と判定されなかった場合(S16で“正常”)、又は、要因特定処理が終了した後、制御部30は、異常判定処理の結果及び/又は要因特定処理の結果を記憶部50に記録する(S18)。次に、制御部30の出力処理部36は、各結果を表す判定結果情報を出力部40に出力する(S19)。出力部40では、例えば、判定結果情報を表す結果表示画像を生成して表示する。
【0122】
以上のように、本実施の形態に係る生産管理システム1では、稼働状況データが得られない場合であっても、ダミー稼働状況データを生成して異常判定処理に利用する。異常判定処理は、機械学習により生成された学習モデルを利用するため、従来は、データの不足により実行できない。これに対して、本実施の形態によれば、データ不足により実行できなかった異常判定処理を実行することができ、判定結果を得ることができる。
【0123】
[4.学習モデルの生成処理]
次に、機械学習による学習モデルの生成処理について、図9を用いて説明する。図9は、機械学習による学習モデルの生成処理を示すフローチャートである。
【0124】
図9に示されるように、まず、記憶部50は、所定期間分の稼働状況データを制御部30に送信する(S21)。ここでの所定期間は、例えば、図5のステップS12の所定期間よりも長い期間であり、例えば、1日、1週間、1ヶ月、数ヶ月、半年又は1年などの長期間である。
【0125】
制御部30の欠損判定部32は、記憶部50から送信された稼働状況データに欠損があるか否かを判定する(S22)。欠損があると判定した場合(S22でYes)、制御部30の計算部33は、欠損に関わる稼働状況データを除去する(S23)。例えば、図1の生産ライン11bの設備12b_3で所定のロットに関わる生産を行ったときの稼働状況データが欠損している場合を想定する。この場合、当該生産に関わる稼働状況データ、具体的には、生産ライン11bの他の設備12の稼働状況データを除去する。なお、「除去」とは、学習モデルの生成に利用しないことを意味する。学習モデルの生成には、全行程の稼働状況データが揃っているもののみを利用する。
【0126】
欠損がないと判定した場合(S22でNo)、又は、データの除去が終了した後、計算部33は、学習モデルとダミー稼働状況データの生成用の係数とを機械学習により生成する(S24)。次に、計算部33は、生成した学習モデル及び係数を記憶部50に記録する(S25)。
【0127】
なお、図9に示される学習処理は、制御部30以外の処理部によって行われてもよい。すなわち、生産管理システム1は、他のコンピュータ機器で生成された学習モデル及び係数を利用してもよい。
【0128】
[5.具体例]
続いて、ダミー稼働状況データの具体的な生成例を複数説明する。
【0129】
[5-1.第1例]
まず、欠損工程が中間の工程である場合の例を、図10を用いて説明する。図10は、中間の工程の稼働状況データが欠損した場合に生成されるダミー稼働状況データの例を示す図である。
【0130】
本例では、1つの生産ライン11が設備A、設備B、設備C及び設備Dの4つで構成されている場合を想定する。設備A、設備B、設備C及び設備Dはこの順で、ベルトコンベアで連結されている。設備Aは、先端の工程Aを実行する。設備Bは、中間の工程Bを実行する。設備Cは、中間の工程Cを実行する。設備Dは、末端の工程Dを実行する。設備A、設備B、設備C及び設備Dの各々の稼働状況データを、データA、データB、データC及びデータDとする。
【0131】
図10に示されるように、データAからDはそれぞれ、稼働時刻と、稼働時間と、稼働時間中の合計の停止時間と、生産個数と、を含んでいる。また、データAからDはそれぞれ、停止に関わる詳細な時刻情報を含んでいる。
【0132】
稼働時刻は、例えば、ロットの生産開始時刻及び生産終了時刻を含んでいる。稼働時間は、ロットの生産終了時刻と生産開始時刻との差分である。合計の停止時間は、稼働時間中に発生した停止毎の停止時間(すなわち、待ち時間)の合計である。例えば、データAは、「Stop a」、「Stop b」及び「後待ち」の3つの要因の各々の停止開始時刻と停止終了時刻とを含んでいる。なお、図10では、3つの要因のみを示しているが、より多くの停止が発生しており、これらの停止の合計が「45分」となる。生産個数は、設備Aが生産した生産物の個数、すなわち、出力個数である。
【0133】
図10に示される例では、データBが欠損により取得できていない。この場合、制御部30の計算部33は、直前工程のデータA及び直後工程のデータCに基づいて、欠損工程のダミーデータBを生成する。
【0134】
図11は、ダミー稼働状況データの生成処理に関わる入力データと出力データとを示す図である。入力データは、直前工程のデータAと直後工程のデータCとである。出力データは、欠損工程のダミーデータBである。
【0135】
直前工程のデータAの稼働時間、停止時間及び生産数をそれぞれ、Ta、Da、Paとする。直後工程のデータCの稼働時間、停止時間及び生産個数をそれぞれ、Tc、Dc、Pcとする。図10の例を適用すると、Ta=210分、Da=45分、Pa=100個であり、Tc=211分、Dc=45分、Pc=95個である。なお、停止時間Da及びDcについては、停止毎の停止時間であってもよい。
【0136】
計算部33は、関数f(Ta,Tc)、fs(Da,Dc)及びfp(Pa)を用いて、稼働時間、停止時間及び生産個数の各々の予測値を算出する。各関数は、例えば制御部30が備える記憶部(図示せず)または記憶部50に記憶されている。
【0137】
関数f(Ta,Tc)は、ダミーデータBの稼働時間Tbを算出するための関数である。具体的には、f(Ta,Tc)は、以下の式(1)で表される。
【0138】
(1) Tb=f(Ta,Tc)=Ave(Ta,Tc)
【0139】
Ave( )は、括弧内の値の平均値を返す関数である。つまり、ダミーデータBの稼働時間Tbは、TaとTcとの平均値である。図10の例を適用すれば、稼働時間Tb=210.5分になる。図10では、小数点以下の表示が省略されている。
【0140】
関数fs(Da,Dc)は、ダミーデータBの停止時間Dbを算出するための関数である。具体的には、fs(Da,Dc)は、以下の式(2)で表される。
【0141】
(2) Db=fs(Da,Dc)=min(Da,Dc)×α
【0142】
min( )は、括弧内の値の最小値を返す関数である。また、αは、係数データ53に含まれる係数である。αは、工程Aと工程Bとのタクト差、及び、工程Bと工程Cとのタクト差に基づいて定まる値であり、例えば0.9以上1.1以下の範囲であるが、これに限定されない。
【0143】
ここで、Da及びDcとして停止毎の停止時間を利用することにより、停止毎の詳細なダミー停止時間を算出することができる。具体的には、Daとして後工程待ち時間を利用し、Dbとして前工程待ち時間を利用する。直前工程Aの後工程待ち時間Da及び直後工程Cの前工程待ち時間Dcはそれぞれ、欠損工程Bの停止に起因する待ち時間である可能性が高い。したがって、直前工程Aの後工程待ち時間Da及び直後工程Cの前工程待ち時間Dcを利用することにより、ダミーデータBの待ち時間Dbを精度良く算出することができる。例えば、図10に示される例を参照すれば、ダミーデータBの1つ目の待ち時間(Dummy1)は、データCの前工程待ち時間である12:10から12:12に基づいて算出されたものである。
【0144】
関数fp(Pa)は、ダミーデータBの生産個数の予測値、すなわち、生産予定個数Pbを算出するための関数である。具体的には、fp(Pa)は、以下の式(3)で表される。
【0145】
(3) Pb=fp(Pa)=Pa
【0146】
つまり、ダミーデータBの生産予定個数Pbは、直前工程Aの生産個数Paに等しいとみなす。直前工程Aで生産された生産物の全てを、欠損工程Bで処理したとみなすことができるためである。
【0147】
以上のように、データBが欠損した場合には、ダミーデータBが生成される。ダミーデータBは、データBが含むデータと同種のデータを含んでいる。このため、データBの代わりにダミーデータBを異常判定処理に利用することができる。
【0148】
なお、ダミーデータBが含むデータの種別は、データBが含むデータの種別と全てが一致していなくてもよい。ダミーデータBは、学習モデルの生成時に利用した種類のデータのみを含んでいればよい。例えば、学習モデルの生成時に生産個数を利用しない場合には、ダミーデータBは、生産個数を含んでいなくてもよい。同様に、学習モデルの生成時に待ち時間(停止時間)を利用しない場合には、ダミーデータBは、待ち時間を含んでいなくてもよい。
【0149】
また、上述した式(1)から(3)は一例にすぎず、上述した例に限定されない。例えば、生産予定個数Pbは、直後工程Cの生産個数Pcであってもよい。あるいは、生産予定個数Pbは、PaとPcとの平均値であってもよい。
【0150】
[5-2.第2例]
次に、欠損工程が先端の工程である場合の例を、図12を用いて説明する。図12は、先端の工程の稼働状況データが欠損した場合に生成されるダミー稼働状況データの例を示す図である。なお、以下の説明では、第1例との相違点を中心に説明を行い、共通点の説明を省略又は簡略化する。
【0151】
図12に示される例では、先端の工程のデータAが欠損により取得できていない。この場合、制御部30の計算部33は、欠損工程の直前のデータがないため、直後工程のデータBに基づいて欠損工程のダミーデータAを生成する。
【0152】
具体的には、稼働時間、停止時間及び生産個数の各々の予測値を算出するための関数は、直後工程のデータBの稼働時間Tb、停止時間Db及び生産個数Pbを変数として、f(Tb)、fs(Db)及びfp(Pb)として表すことができる。この場合、欠損工程のダミーデータAの稼働時間Ta、停止時間Da及び生産個数Paは、以下の式(4)から(6)で表すことができる。
【0153】
(4) Ta=f(Tb)=Tb
(5) Da=fs(Db)=Db×β
(6) Pa=fp(Pb)=Pb
【0154】
式(5)のβは、式(2)のαと同様に、機械学習などによって生成される係数である。また、第1例の場合と同様に、停止時間Daについては、停止毎に算出することができる。上記式(4)から(6)を利用することで、図12に示されるように、計算部33は、ダミーデータAを生成することができる。
【0155】
なお、上述した式(4)から(6)は一例にすぎず、上述した例に限定されない。例えば、直後工程のデータBだけでなく、生産計画に基づく初期値を利用してもよい。例えば、生産予定個数Paは、生産計画で定められた生産予定個数であってもよい。
【0156】
[5-3.第3例]
次に、欠損工程が末端の工程である場合の例を、図13を用いて説明する。図13は、末端の工程の稼働状況データが欠損した場合に生成されるダミー稼働状況データの例を示す図である。なお、以下の説明では、第1例との相違点を中心に説明を行い、共通点の説明を省略又は簡略化する。
【0157】
図13に示される例では、末端の工程のデータDが欠損により取得できていない。この場合、制御部30の計算部33は、欠損工程の直後のデータがないため、直前工程のデータCに基づいて欠損工程のダミーデータDを生成する。
【0158】
具体的には、稼働時間、停止時間及び生産個数の各々の予測値を算出するための関数は、直前工程のデータCの稼働時間Tc、停止時間Dc及び生産個数Pcを変数として、f(Tc)、fs(Dc)及びfp(Pc)として表すことができる。この場合、欠損工程のダミーデータDの稼働時間Td、停止時間Dd及び生産個数Pdは、以下の式(7)から(9)で表すことができる。
【0159】
(7) Td=f(Tc)=Tc
(8) Dd=fs(Dc)=Dc×γ
(9) Pd=fp(Pc)=Pc
【0160】
式(8)のγは、式(2)のαと同様に、機械学習などによって生成される係数である。また、第1例の場合と同様に、停止時間Ddについては、停止毎に算出することができる。上記式(7)から(9)を利用することで、図13に示されるように、計算部33は、ダミーデータDを生成することができる。
【0161】
なお、上述した式(7)から(9)は一例にすぎず、上述した例に限定されない。例えば、直前工程のデータCだけでなく、最終的な生産結果に基づく最終値を利用してもよい。例えば、生産予定個数Pdは、生産ライン11で実際に生産された個数であってもよい。
【0162】
[5-4.第4例]
上述した第1例から第3例は、いずれも本来取得されるはずの稼働状況データが欠損した場合である。これに対して、設備の問題など何らかの原因で最初から稼働状況データが取得予定にない場合もある。この場合においても、ダミー稼働状況データを生成することができる。
【0163】
図14は、取得予定にない稼働状況データの代わりに生成されるダミー稼働状況データの例を示す図である。なお、以下の説明では、第1例との相違点を中心に説明を行い、共通点の説明を省略又は簡略化する。
【0164】
図14に示される例では、未取得の稼働状況データが本来取得されるはずのデータであるか、最初から取得される予定にないデータであるかの違いがあるだけで、稼働状況データが得られていないという点では、第1例と同じである。したがって、第1例と同様に、式(1)から(3)に基づいてダミーデータBを生成することができる。
【0165】
第4例の場合は、稼働状況データの欠損(未取得)の判定処理(図5のステップS13)を省略することができる。取得予定にない稼働状況データの設備が判明しているため、当該設備のダミー稼働状況データを生成するように予め設定しておくことができる。
【0166】
なお、第4例では、中間の工程のデータが取得予定にない場合を説明したが、先端の工程または末端の工程のデータが取得予定にない場合は、第2例または第3例と同様の処理を行うことで、ダミー稼働状況データを生成することができる。
【0167】
[6.表示例]
続いて、生産管理システム1による判定結果の表示例について、図15を用いて説明する。図15は、本実施の形態に係る生産管理システム1による判定結果の表示例を示す図である。
【0168】
図15では、3つの生産ライン1~3の異常判定処理の結果を表する表示画面60が示されている。各生産ラインは、4つの設備A~Dをこの順で含んでいる。
【0169】
表示画面60は、生産ラインの構成を示す模式図61を含んでいる。また、模式図61の上段には、稼働状況データが取得できたか否かを示すアイコン62が表示される。また、模式図61の下段には、異常の要因を示すテキスト63が表示される。テキスト63は、異常の設備(工程)が存在しない場合には表示されない。異常の設備には、破線の枠64が表示されている。これにより、異常の設備を強調して分かりやすく表示することができる。また、模式図61の右側には、生産ラインの異常判定結果を時系列で示すグラフ65と、異常の発生の有無を表すアイコン66とが表示されている。
【0170】
図15に示される表示例では、生産ライン1では、稼働状況データの欠損もなく、異常も発生しなかったことが分かる。一方で、生産ライン2では、設備Bで稼働状況データの欠損が発生したが、生産自体は異常なく終えたことが分かる。アイコン62によって稼働状況データの欠損が発生したことが分かるので、稼働状況データの取得に関するネットワークの点検などの実行をユーザに促すことができる。
【0171】
また、生産ライン3では、設備Bで稼働状況データの欠損が発生しただけでなく、生産にも異常が発生し、その異常の要因が設備Bで発生した要因「停止B」であることが分かる。異常の発生が表示されることで、メンテナンス作業の実行をユーザに促すことができる。また、異常の要因が表示されることにより、メンテナンス作業の具体的な対象設備及び作業内容の提示も可能になる。したがって、メンテナンス作業の作業効率が高まり、設備の停止時間も短くなって生産効率を高めることができる。
【0172】
なお、図15に示される表示例は、一例にすぎず、特に限定されない。模式図61が表示されずに、生産ライン毎に異常か正常(異常でない)かを示すアイコン66のみが表示されていてもよい。また、稼働状況データの取得状況を示すアイコン62、異常の要因を示すテキスト63、及び、異常の設備を表す枠64が表示されなくてもよい。枠64の代わりに、異常の設備を太線で描く、あるいは、点滅表示するなどを行ってもよい。
【0173】
(他の実施の形態)
以上、1つ又は複数の態様に係る異常判定方法及び生産管理システムについて、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、これらの実施の形態に限定されるものではない。本開示の主旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したもの、及び、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本開示の範囲内に含まれる。
【0174】
例えば、上記の実施の形態では、設備における生産個数を利用して異常判定処理を行う場合と、設備における待ち時間を利用して異常判定処理を行う場合との2つの場合を説明したが、2つの場合の両方が行われてもよく、一方のみが行われてもよい。両方が行われる場合には、少なくとも一方で異常と判定された場合には、異常と判定することができる。
【0175】
一方のみが行われる場合には、稼働状況データに含まれる情報を減らし、データ量を削減することができる。例えば、設備の生産個数を利用する場合には、稼働状況データは、待ち時間を含んでいなくてもよい。また、設備の待ち時間を利用する場合には、稼働状況データは、生産個数を含んでいなくてもよい。
【0176】
また、上記実施の形態で説明した装置間の通信方法については特に限定されるものではない。装置間で無線通信が行われる場合、無線通信の方式(通信規格)は、例えば、ZigBee(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、又は、無線LAN(Local Area Network)などの近距離無線通信である。あるいは、無線通信の方式(通信規格)は、インターネットなどの広域通信ネットワークを介した通信でもよい。また、装置間においては、無線通信に代えて、有線通信が行われてもよい。有線通信は、具体的には、電力線搬送通信(PLC:Power Line Communication)又は有線LANを用いた通信などである。
【0177】
また、上記実施の形態において、特定の処理部が実行する処理を別の処理部が実行してもよい。また、複数の処理の順序が変更されてもよく、あるいは、複数の処理が並行して実行されてもよい。また、生産管理システムが備える構成要素の複数の装置への振り分けは、一例である。例えば、一の装置が備える構成要素を他の装置が備えてもよい。また、生産管理システムは、単一の装置として実現されてもよい。
【0178】
例えば、上記実施の形態において説明した処理は、単一の装置(システム)を用いて集中処理することによって実現してもよく、又は、複数の装置を用いて分散処理することによって実現してもよい。また、上記プログラムを実行するプロセッサは、単数であってもよく、複数であってもよい。すなわち、集中処理を行ってもよく、又は分散処理を行ってもよい。
【0179】
また、上記実施の形態において、制御部などの構成要素の全部又は一部は、専用のハードウェアで構成されてもよく、あるいは、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPU又はプロセッサなどのプログラム実行部が、HDD又は半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0180】
また、制御部などの構成要素は、1つ又は複数の電子回路で構成されてもよい。1つ又は複数の電子回路は、それぞれ、汎用的な回路でもよいし、専用の回路でもよい。
【0181】
1つ又は複数の電子回路には、例えば、半導体装置、IC(Integrated Circuit)又はLSI(Large Scale Integration)などが含まれてもよい。IC又はLSIは、1つのチップに集積されてもよく、複数のチップに集積されてもよい。ここでは、IC又はLSIと呼んでいるが、集積の度合いによって呼び方が変わり、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又は、ULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれるかもしれない。また、LSIの製造後にプログラムされるFPGA(Field Programmable Gate Array)も同じ目的で使うことができる。
【0182】
また、本開示の全般的又は具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路又はコンピュータプログラムで実現されてもよい。あるいは、当該コンピュータプログラムが記憶された光学ディスク、HDD若しくは半導体メモリなどのコンピュータ読み取り可能な非一時的記録媒体で実現されてもよい。また、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【0183】
また、上記の各実施の形態は、請求の範囲又はその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0184】
本開示は、例えば、工場などの生産現場における管理システム及び異常判定装置などに利用することができる。
【符号の説明】
【0185】
1 生産管理システム
2 異常判定装置
10 設備群
11 生産ライン
12 設備
13 取得部
20 入力部
30 制御部
31 要求部
32 欠損判定部
33 計算部
34 異常検出部
35 評価部
36 出力処理部
40 出力部
50 記憶部
51 生産ログデータ
52 モデルデータ
53 係数データ
60 表示画面
61 模式図
62、66 アイコン
63 テキスト
64 枠
65 グラフ
図1
図2
図3
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