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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】インダクタ
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/29 20060101AFI20241025BHJP
   H01F 17/04 20060101ALI20241025BHJP
【FI】
H01F27/29 125
H01F17/04 F
H01F27/29 P
H01F27/29 U
H01F27/29 S
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020181492
(22)【出願日】2020-10-29
(65)【公開番号】P2022072183
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-09-19
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】大坪 睦泰
【審査官】井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-057722(JP,A)
【文献】特開2016-127189(JP,A)
【文献】特開2005-310812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/29
H01F 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性材料を含み、側面、前記側面に繋がる底面及び天面を有する磁心と、
前記磁心に埋設されたコイル埋設部、及び、前記コイル埋設部に繋がり前記側面から突出したコイル端部を有するコイル素子と、
前記コイル端部に電気的に接続される金属端子と、
を備え、
前記金属端子は、前記側面に沿って配される端子側部を有し、
前記端子側部は、前記側面に接する側部本体と、前記側部本体に繋がって前記側面から離れる方向に隆起した凸部と、を有し、
前記コイル端部は、前記側面から前記側部本体の外側まで延び、さらに前記側部本体に沿って前記底面側に向かって延伸し、
前記凸部は、前記側面に垂直な方向から見て前記コイル端部の周囲の少なくとも一部を囲み、前記コイル端部側および前記コイル端部と反対側の前記側部本体よりも前記側面から離れる方向に隆起しており、
前記コイル端部と前記端子側部とは、前記凸部に囲まれた領域において、はんだによって接続されている
インダクタ。
【請求項2】
前記凸部は、前記コイル端部に対して間隔を空けて配置され、
前記凸部と前記コイル端部との間には、前記はんだが埋め込まれている
請求項1に記載のインダクタ。
【請求項3】
前記凸部は、前記側面に垂直な方向から見て前記コイル端部の両脇に位置する第1凸部及び第2凸部と、前記コイル端部よりも前記底面側に位置し、前記第1凸部及び前記第2凸部を繋ぐ第3凸部と、を有し、
前記凸部に囲まれた領域は、前記第1凸部、前記第2凸部及び前記第3凸部によって囲まれている
請求項1又は2に記載のインダクタ。
【請求項4】
前記第1凸部と前記第2凸部との間隔は、前記天面側よりも前記底面側のほうが広い
請求項3に記載のインダクタ。
【請求項5】
前記コイル端部は、前記側面から前記側部本体にかぶさるように屈曲する屈曲部と、前記コイル端部の先端に位置する先端部と、を有し、
前記屈曲部の両脇に位置する前記第1凸部と前記第2凸部との間隔は、前記先端部の両脇に位置する前記第1凸部と前記第2凸部との間隔よりも狭い
請求項3に記載のインダクタ。
【請求項6】
前記第3凸部は、前記側部本体に対して傾斜する第1傾斜部及び第2傾斜部を有し、
前記第1傾斜部は、前記第2傾斜部よりも前記凸部に囲まれた領域側に設けられ、
前記第1傾斜部の傾斜角は、前記第2傾斜部の傾斜角よりも大きい、
請求項3~5のいずれか1項に記載のインダクタ。
【請求項7】
前記第1傾斜部の傾斜角は45°以上であり、前記第2傾斜部の傾斜角は40°以下である
請求項6に記載のインダクタ。
【請求項8】
前記磁心は、前記天面に設けられた切欠き部を有し、
前記金属端子は、さらに、前記端子側部に繋がり前記底面に沿って配される端子底部と、前記端子側部に繋がり前記切欠き部に係止される端子係止部と、を有している
請求項1~7のいずれか1項に記載のインダクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、インダクタに関する。
【背景技術】
【0002】
電気エネルギーを磁気エネルギーとして蓄える受動素子であるインダクタは、電源電圧の昇降圧や直流電流の平滑化を目的として、例えばDC-DCコンバータ装置等に用いられる。例えば、回路基板上にリフロー方式で接合可能な表面実装型のインダクタも開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-249770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のインダクタでは、回路基板との接続信頼性に欠ける場合がある。本開示は、上記に鑑みて、より接続信頼性の高いインダクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係るインダクタは、磁性材料を含み、側面、前記側面に繋がる底面及び天面を有する磁心と、前記磁心に埋設されたコイル埋設部、及び、前記コイル埋設部に繋がり前記側面から突出したコイル端部を有するコイル素子と、前記コイル端部に電気的に接続される金属端子と、を備え、前記金属端子は、前記側面に沿って配される端子側部を有し、前記端子側部は、前記側面に接する側部本体と、前記側部本体に繋がって前記側面から離れる方向に隆起した凸部と、を有し、前記コイル端部は、前記側面から前記側部本体の外側まで延び、さらに前記側部本体に沿って前記底面側に向かって延伸し、前記凸部は、前記側面に垂直な方向から見て前記コイル端部の周囲の少なくとも一部を囲み、前記コイル端部側および前記コイル端部と反対側の前記側部本体よりも前記側面から離れる方向に隆起しており、前記コイル端部と前記端子側部とは、前記凸部に囲まれた領域において、はんだによって接続されている。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、より高い接続信頼性を有するインダクタを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、比較例に係るインダクタの断面図である。
図2図2は、実施の形態に係るインダクタの斜視図である。
図3図3は、図2に示すインダクタから、はんだを除いた状態を示す斜視図である。
図4図4は、図3示すインダクタから、磁心を除いた状態のコイル素子及び金属端子を示す斜視図である。
図5図5は、実施の形態に係るインダクタの正面図である。
図6図6は、実施の形態に係るインダクタが回路基板に実装された状態を示す正面図である。
図7図7は、実施の形態に係るインダクタの側面図である。
図8図8は、図7に示すインダクタから、はんだを除いた状態を示す側面図である。
図9A図9Aは、実施の形態に係るインダクタの平面図である。
図9B図9Bは、実施の形態に係るインダクタの平面図である。
図10図10は、実施の形態に係るインダクタの金属端子が備える凸部の一例を示す断面図である。
図11図11は、実施の形態に係るインダクタの製造方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(本開示に至る経緯)
前述したように、近年、多くの電子機器にインダクタが使用されている。特に、インダクタは、回路基板に実装されて使用されることがあり、回路基板上のランドへの実装を前提とした表面実装型のインダクタなども開発されている。
【0009】
例えば、図1は、比較例に係る表面実装型のインダクタ100xの断面図である。図1に示すインダクタ100xは、特許文献1のインダクタと類似しており、コイル素子20xと、コイル素子20xを囲む磁心10xと、コイル素子20xに接続された金属端子30xと、を備えている。コイル素子20xは、磁心10xに埋設された埋設部21xと、磁心10xの側面から外部へと突出して露出した端部22xと、を有する。コイル素子20xの端部22xは、磁心10xの側面に沿うように折れ曲がり、底面(紙面下側の辺に沿う面)に向かって延びている。
【0010】
金属端子30xは、コイル素子20xの端部22xの外側に重なるように、磁心10xの側面上に配置され、さらに、磁心10xの底面に沿うように折り曲げられている。金属端子30xと端部22xとは、図示しないはんだによって接合されている。ここで、端部22xと金属端子30xとは、磁心10xの底面に沿うように折り曲げる前に接合材によって接合され、接合の後に磁心10xの底面に沿うように折り曲げられている。
【0011】
このため、端部22xと金属端子30xとを折り曲げた後では、外側の金属端子30xによって接合の状態を視覚的に確認することができなくなる。したがって、例えば、接合材の不足や、これに起因して、折り曲げ加工時に接合部分にクラックが生じたり、接合部分が外れたりする等の接合状態の異常を発見できなくなる場合がある。
【0012】
また、比較例に示すインダクタ100xでは、インダクタ100xを回路基板に実装する際に、端部22xと金属端子30xとを接続するはんだが溶けて流れ落ち、金属端子30xと回路基板とを接続する実装用のはんだと混ざり、実装用のはんだの品質を変えてしまう場合がある。そのため、インダクタ100xの接続信頼性が低下するという問題がある。
【0013】
本開示は、接続信頼性の高いインダクタを実現するため、以下に示す構成を有している。以下、実施の形態について、図面を参照しながらより具体的に説明する。
【0014】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置、接続形態、ステップ及びステップの順序等は一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0015】
また、各図には、互いに直交する3方向を意味するX軸、Y軸、及びZ軸を示し、必要に応じてこれらの軸及び当該軸に沿う軸方向を説明のために用いる。なお、各軸は、説明のために付されたものであり、インダクタが使用される方向及び姿勢を限定するものではない。
【0016】
(実施の形態)
[構成]
実施の形態に係るインダクタの構成について、図2図10を参照して説明する。インダクタは、コイル素子に流れる電気エネルギーを磁気エネルギーとして蓄える受動素子である。
【0017】
図2は、実施の形態に係るインダクタ100の斜視図である。図3は、図2に示すインダクタ100から、はんだ40を除いた状態を示す斜視図である。図4は、図3示すインダクタ100から、磁心10を除いた状態のコイル素子20及び金属端子30を示す図である。図5は、インダクタ100の正面図である。図6は、インダクタ100が回路基板51に実装された状態を示す正面図である。図7は、インダクタ100の側面図である。図8は、図7に示すインダクタ100から、はんだ40を除いた状態を示す側面図である。図9A及び図9Bは、インダクタ100の平面図である。
【0018】
なお、図5図9Bにおいて、正面図とはX軸のプラス側からマイナス側を見た図であり、側面図とはY軸のマイナス側からプラス側を見た図であり、平面図とはZ軸のプラス側からマイナス側を見た図である。図5の一部には、図7に示すインダクタ100のV-V線における断面図も示されている。また、図9Aの一部には、図7に示すインダクタ100のIXA-IXA線における断面図も示され、図9Bの一部には、図7に示すインダクタ100のIXB-IXB線における断面図も示さている。
【0019】
これらの図に示すように、インダクタ100は、磁心10と、磁心10によって一部が覆われているコイル素子20と、コイル素子20に電気的に接続される複数の金属端子30と、を備える。コイル素子20は、磁心10に埋設されたコイル埋設部21と、コイル埋設部21の両端に繋がり、磁心10の外側に突出した複数のコイル端部22と、を有している。金属端子30は、端子側部32と、端子底部33と、端子係止部34と、を有している。端子側部32は、側部本体32aと、凸部32bとを有している。
【0020】
図2及び図3に示すインダクタ100は、一例として、直方体状の圧粉磁心であり、磁心10の形状によって、およその外形が決定されている。なお、磁心10は、成形によって任意の形状に形成できる。つまり、磁心10の成形時における形状によって、任意の形状のインダクタ100を実現できる。本実施の形態のインダクタ100は、X軸方向の寸法が4mm以上12mm以下、Y軸方向の寸法が4mm以上12mm以下、Z軸方向の寸法が2mm以上8mm以下である磁心10によって構成される。
【0021】
磁心10は、インダクタ100の外殻部分であり、コイル素子20の一部を覆っている。磁心10は、例えば、金属磁性体粉末及び樹脂材料等からなる圧粉磁心である。なお、磁心10は、磁性材料を用いて形成されていればよく、フェライトなどが用いられてもよく、その他であってもよい。金属磁性体粉末には、Fe-Si-Al系、Fe-Si系、Fe-Si-Cr系、又はFe-Si-Cr-B系等、所定の元素組成を有する粒子状材料が用いられる。また、樹脂材料には、シリコーン等、金属磁性体粉末の粒子間を絶縁しつつ、これを結着することで一定の形状を保持可能な材料が選択される。
【0022】
磁心10は、例えば直方体状の形状であり、底面13、底面13に繋がる4つの側面、及び、4つの側面に繋がり底面13に背向する天面14を有している。4つの側面は、X軸方向に互いに背向する2つの側面11と、Y軸方向に互いに背向する2つの側面12とによって構成されている。4つの側面11、12のそれぞれは、底面13に直交する平坦面を有している。なお、側面11と側面12とが交差し、かつ、天面14側(Z軸方向プラス側)の角部には、側面11、側面12、及び天面14のいずれの面からも磁心10の内部に向けて凹となる切欠き部15が設けられている。切欠き部15は、2つの側面11及び2つの側面12の組み合わせのそれぞれに対応して、4つ形成されている。
【0023】
図4に示すように、コイル素子20は、コイル埋設部21と、コイル埋設部21に接続された複数のコイル端部22と、を有している。本実施の形態のコイル素子20は、1つのコイル埋設部21と、2つのコイル端部22と、によって構成されている。コイル素子20は、アルミニウム、銅、銀、及び金等の金属材料、ならびに金属と他の物質とから成る合金等から選択された材料によって実現される。コイル埋設部21及びコイル端部22は、同じ材料からなる1つの部材を加工して形成された、各々の部位に対して付された呼称である。
【0024】
コイル埋設部21は、磁心10によって覆われる部位である。コイル埋設部21は、長尺状の材料が巻回されており、コイルとして機能する。コイル埋設部21の巻回数には時に限定はなく、例えば、0.5ターン10ターン、又は100ターン等、インダクタ100に要求される性能、及び、磁心10の大きさなどの制約に合わせ、適宜選択される。コイル埋設部21は、例えば、銅線が曲げられることで形成される。コイル埋設部21を構成する銅線の断面は、直径0.16~1.40mmなどの円形であり、横断面のアスペクト比は、1:1である。
【0025】
コイル埋設部21は、巻回された巻回軸がZ軸方向に沿うように配置されている。コイル埋設部21は、巻回によって形成された曲線部分と、曲線部分及びコイル端部22を接続する直線部分とを有している。コイル埋設部21の直線部分は、磁心10の側面12に向かってY軸方向に延び、側面12においてコイル端部22に接続されている。
【0026】
図5に示すコイル端部22は、磁心10に覆われず、磁心10の側面12から露出する部位である。コイル端部22は、平板状に展伸され、折り曲げられた形状を有している。具体的には、コイル端部22は、側面12から金属端子30の側部本体32aの外側に延び、さらに側部本体32aに沿って磁心10の底面13側に向かって延伸している。なお、コイル端部22は、底面13に到達するよりも以前に途切れている。コイル端部22の厚みは、例えば0.1mm~0.3mmである。本実施の形態におけるコイル端部22の厚みは、0.2mmである。
【0027】
コイル端部22は、磁心10の側面12から突出した屈曲部22aと、屈曲部22aに繋がるストレート部22bとを有している。屈曲部22aは、側面12に接する部分を根元とし、側面12から側部本体32aにかぶさるように底面13側に屈曲している。ストレート部22bは、側部本体32aよりも外側に位置し、側部本体32aに沿って延びている。ストレート部22bは、はんだ40によって金属端子30と接続される。また、コイル端部22は、ストレート部22bの先端に位置する先端部22cを有している。
【0028】
金属端子30は、はんだ40を介してコイル端部22に接続される。金属端子30は、端子側部32と、端子底部33と、端子係止部34と、を有している。端子側部32は、磁心10の側面12に沿って配される部位であり、端子底部33は、端子側部32に繋がり磁心10の底面13に沿って配される部位であり、端子係止部34は、端子側部32に繋がり切欠き部15に係止される部位である。
【0029】
金属端子30は、アルミニウム、銅、銀、及び金等の金属材料、ならびに金属と他の物質とから成る合金等から選択された材料によって実現される。金属端子30は、2つのコイル端部22のそれぞれに対応して、インダクタ100のY軸方向における両側のそれぞれに1つずつ設けられる。ここでは、2つの金属端子30のうちの一方について説明するが、2つの金属端子30は、他方についても同様の説明が適用される同一構成である。端子側部32、端子底部33及び端子係止部34は、同じ材料からなる1つの部材を加工して形成された、各々の部位に対して付された呼称である。
【0030】
端子係止部34は、端子側部32が延びるXZ平面に交差する方向に突出している。端子係止部34は、金属端子30がXZ平面内において移動することを抑制する機能を有する。端子係止部34は、端子側部32から磁心10側に向かって突出し、上記した磁心10の切欠き部15に係止される。端子係止部34は、金属端子30に対して2つ設けられており、それぞれ1つの切欠き部15に係止される。このように、端子係止部34が、切欠き部15に係止されることにより、金属端子30は、端子底部33と端子係止部34とで磁心10を挟み込んだ状態で、磁心10に固定される。
【0031】
図6に示すように、インダクタ100が回路基板51に実装される際、金属端子30は、実装用のはんだ52によって回路基板51上のランドに接続される。端子側部32の側面には、実装用のはんだ52によるフィレットが形成される。本実施の形態では、インダクタ100で使用されるはんだ40が、実装用のはんだ52に接触することを抑制するため、端子側部32等が以下に示す構成を有している。
【0032】
図5に示すように、端子側部32は、磁心10の側面12に沿って配されている。端子側部32は、磁心10の側面12に接する側部本体32aと、側部本体32aに繋がって側面12から離れる方向に隆起した凸部32bと、を有している。
【0033】
側部本体32aは、平板状であり、コイル端部22のストレート部22bよりも磁心10側に設けられている。言い換えると、側部本体32aは、コイル端部22に覆われた領域において、磁心10の側面12とコイル端部22のストレート部22bとの間にある。
【0034】
図7及び図8に示すように、凸部32bは、磁心10の側面12に垂直な方向(すなわちY軸方向)から見て、コイル端部22の周囲の少なくとも一部に沿って配置され、コイル端部22の周囲の少なくとも一部を囲むように形成されている。コイル端部22と端子側部32とは、凸部32bに囲まれた領域A1において、はんだ40によって接続されている。具体的には、凸部32bは、コイル端部22に対して間隔(ギャップ)を空けて配置され(図8参照)、凸部32bとコイル端部22のストレート部22bとの間には、はんだ40が埋め込まれている。凸部32bは、上記領域A1にはんだ40を溜め込むための堰でもある。
【0035】
コイル端部22の屈曲部22aの高さ位置付近では、図9Aに示すように、凸部32bの横断面の外形は、台形状である。なお、それに限られず、凸部32bの横断面の外形は、三角形状又は矩形状であってもよい。コイル端部22の先端部22cの高さ位置付近では、図9Bに示すように、凸部32bの横断面の外形は、三角形状である。なお、それに限られず、凸部32bの横断面の外形は、台形状又は矩形状であってもよい。凸部32bの高さは、例えば、0.1mm以上0.6mm以下である。本実施の形態では、凸部32bの高さは、0.2mmであり、コイル端部22の厚みと同じである。なお、コイル端部22の厚みは、凸部32bの高さより大きくてもよい。
【0036】
図7及び図8に示すように、凸部32bは、第1凸部p1、第2凸部p2及び第3凸部p3を有している。第1凸部p1及び第2凸部p2は、磁心10の側面12に垂直な方向から見て、コイル端部22のストレート部22bの両脇に位置し、コイル端部22が延伸する方向に沿っている。第3凸部p3は、コイル端部22よりも底面13側に位置し、第1凸部p1及び第2凸部p2の底面13側の端を繋いでいる。第3凸部p3は、X軸を含む水平面に対して平行である。すなわちコイル端部22は、第1凸部p1と第2凸部p2との間に位置し、かつ、第3凸部p3よりも天面14側に位置している。このように凸部32bに囲まれた領域A1は、第1凸部p1、第2凸部p2及び第3凸部p3によって、天面14側を除く三方を囲まれることで形成されており、コイル端部22の周囲の一部を囲んでいる。
【0037】
また、第1凸部p1及び第2凸部p2のそれぞれは、磁心10の底面13側に向かって段状の形状を有している。磁心10の底面13側における第1凸部p1と第2凸部p2との間隔i2は、磁心10の天面14側における第1凸部p1と第2凸部p2との間隔i1よりも広くなっている。言い変えると、コイル端部22の屈曲部22aの両脇に位置する第1凸部p1と第2凸部p2との間隔i1は、先端部22cの両脇に位置する第1凸部p1と第2凸部p2との間隔i2よりも狭くなっている。なお、間隔i1は、コイル端部22の幅よりも広い。第1凸部p1及び第2凸部p2は、段状の形状に限られず、テーパ状の形状を含んでいてもよい。
【0038】
図10は、インダクタ100の金属端子30が備える凸部32bの一例を示す断面図である。
【0039】
図10に示すように、凸部32bの第3凸部p3は、側部本体32aに対して傾斜する第1傾斜部s1及び第2傾斜部s2を有している。第1傾斜部s1は、第2傾斜部s2よりも凸部32bに囲まれた領域A1側に設けられている。第2傾斜部s2は、第1傾斜部s1よりも磁心10の底面13側に設けられている。第1傾斜部s1の傾斜角α1は、第2傾斜部s2の傾斜角α2よりも大きい。例えば、第1傾斜部s1の傾斜角α1は45°以上90°以下であり、第2傾斜部s2の傾斜角α2は0°よりも大きく40°以下である。本実施の形態では、傾斜角α1は50°であり、傾斜角α2は30°である。なお、図10において、第3凸部p3の第1傾斜部s1及び第2傾斜部s2が交差する稜線部分は丸みを有しているが、それに限られず、稜線部分は所定幅の平坦面を有していてもよい。
【0040】
このように本実施の形態のインダクタ100では、コイル素子20のコイル端部22と金属端子30の端子側部32とが、凸部32bに囲まれた領域A1において、はんだ40によって接続されている。そのため、インダクタ100を回路基板51に実装する際に、はんだ40が、凸部32bに囲まれた領域A1から流れ落ちることを抑制できる。これにより、はんだ40が実装用のはんだ52に混ざることを抑制でき、インダクタ100の接続信頼性を高めることができる。
【0041】
なお、本実施の形態のインダクタ100は、磁心10と金属端子30との間に接着性を有する樹脂を介在したものであってもよい。これによれば、上記した効果と同様の効果に加えて、磁心10と金属端子30との物理的接続性を向上することができるので、電気的及び物理的により安定した、接続信頼性の高いインダクタ100を実現することができる。
【0042】
[製造方法]
次に、上記したインダクタ100の製造方法について図11を参照して説明する。
【0043】
図11は、実施の形態に係るインダクタの製造方法を示す図である。
【0044】
インダクタ100の製造方法では、はじめに、加圧成型による磁心10の成形が行われる(ステップS101)。この加圧成型は、コイル埋設部21の巻回及びコイル端部22の展伸がなされたコイル素子20を内包させるようにして、圧粉磁心を圧縮成形することで実行される。加圧成型時の加圧力は、例えば5ton/cmであり、熱硬化温度は、例えば185℃である。加圧成型後において、磁心10に覆われず露出したコイル端部22は、磁心10の側面12に対して垂直に突出している。コイル端部22には、必要に応じて、はんだめっき等が施される。
【0045】
次に、2つの側面12のそれぞれに対応するように金属端子30が配置される(ステップS102)。具体的には、金属端子30の端子係止部34が磁心10の切欠き部15に係止されることで、金属端子30が磁心10に固定される。なおこのとき、金属端子30の側部本体32aがコイル端部22の下側(底面13側)に位置するように、金属端子30が配置される。また、天面14に垂直な方向から見て(Z軸方向から見て)、第1凸部p1と第2凸部p2との間に、コイル端部22が位置するように、金属端子30が配置される。
【0046】
次に、側面12から突出したコイル端部22が、成形工具によって側部本体32aに沿うように折り曲げられる(ステップS103)。これにより、コイル端部22のストレート部22bが、凸部32bに囲まれた領域A1に配置される。
【0047】
次に、凸部32bに囲まれた領域A1に、はんだ材料が供給される。はんだ材料は、冷却されることによって、凝固した状態のはんだ40となる。これにより、コイル端部22のストレート部22bと金属端子30とが電気的及び機械的に接続される(ステップS104)。これらステップS101~S104の工程によって、インダクタ100が作製される。
【0048】
なお、本実施の形態のインダクタ100の製造方法において、磁心10と金属端子30との間に未硬化状態の接着性を有する樹脂を介在させる工程、及び、この接着性の樹脂を硬化させる工程を含んでいてもよい。これによれば、上記した効果と同様の効果に加えて、磁心10と金属端子30との物理的接続性を向上することができるので、電気的及び物理的により安定した、接続信頼性の高いインダクタ100を実現することができる。
【0049】
[効果等]
以上説明したように、本実施の形態に係るインダクタ100は、磁性材料を含み、側面12、側面12に繋がる底面13及び天面14を有する磁心10と、磁心10に埋設されたコイル埋設部21、及び、コイル埋設部21に繋がり側面12から突出したコイル端部22を有するコイル素子20と、コイル端部22に電気的に接続される金属端子30と、を備える。金属端子30は、側面12に沿って配される端子側部32を有している。端子側部32は、側面12に接する側部本体32aと、側部本体32aに繋がって側面12から離れる方向に隆起した凸部32bと、を有している。コイル端部22は、側面12から側部本体32aの外側まで延び、さらに側部本体32aに沿って底面13側に向かって延伸している。凸部32bは、側面12に垂直な方向から見てコイル端部22の周囲の少なくとも一部を囲んでいる。コイル端部22と端子側部32とは、凸部32bに囲まれた領域A1において、はんだ40によって接続されている。
【0050】
このように実施の形態に係るインダクタ100では、コイル素子20のコイル端部22と金属端子30の端子側部32とが、凸部32bに囲まれた領域A1において、はんだ40によって接続されている。そのため、例えば、インダクタ100を回路基板51に実装する際に、はんだ40が、凸部32bに囲まれた領域A1から流れ落ちることを抑制できる。これにより、はんだ40が実装用のはんだ52に混ざることを抑制でき、インダクタ100の接続信頼性を高めることができる。
【0051】
また、凸部32bは、コイル端部22に対して間隔を空けて配置され、凸部32bとコイル端部22との間には、はんだ40が埋め込まれていてもよい。
【0052】
このように、凸部32bとコイル端部22との間に、はんだ40が埋め込まれていることで、インダクタ100を回路基板51に実装する際に、はんだ40が、凸部32bに囲まれた領域A1から流れ落ちることを抑制できる。これにより、はんだ40が実装用のはんだ52に混ざることを抑制でき、インダクタ100の接続信頼性を高めることができる。また、凸部32bとコイル端部22との間に、はんだ40が埋め込まれていることで、端子側部32とコイル端部22とがはんだ40によって接続されているか否かを、側面12に垂直な方向から確認することが可能となる。これにより、インダクタ100の接続信頼性をさらに高めることができる。
【0053】
また、凸部32bは、側面12に垂直な方向から見てコイル端部22の両脇に位置する第1凸部p1及び第2凸部p2と、コイル端部22よりも底面13側に位置し、第1凸部p1及び第2凸部p2を繋ぐ第3凸部p3と、を有し、凸部32bに囲まれた領域A1は、第1凸部p1、第2凸部p2及び第3凸部p3によって囲まれていてもよい。
【0054】
このように、凸部32bに囲まれた領域A1が、上記の第1凸部p1、第2凸部p2及び第3凸部p3によって囲まれていることで、インダクタ100を回路基板51に実装する際に、はんだ40が、上記領域A1から流れ落ちることを抑制できる。これにより、はんだ40が実装用のはんだ52に混ざることを抑制でき、インダクタ100の接続信頼性を高めることができる。
【0055】
また、第1凸部p1と第2凸部p2との間隔は、天面14側よりも底面13側のほうが広くてもよい。
【0056】
これによれば、凸部32bに囲まれた領域A1の底面13側において、はんだ40の溜め込み量を増やすことができる。これにより、はんだ40を用いてコイル端部22と端子側部32とを確実に接続することができ、インダクタ100の接続信頼性を高めることができる。また、はんだ40の溜め込み量を増やすことができるので、インダクタ100を回路基板51に実装する際に、はんだ40が、上記領域A1から流れ落ちることを抑制できる。これにより、はんだ40が実装用のはんだ52に混ざることを抑制でき、インダクタ100の接続信頼性を高めることができる。
【0057】
また、コイル端部22は、側面12から側部本体32aにかぶさるように屈曲する屈曲部22aと、コイル端部22の先端に位置する先端部22cと、を有し、屈曲部22aの両脇に位置する第1凸部p1と第2凸部p2との間隔i1は、先端部22cの両脇に位置する第1凸部p1と第2凸部p2との間隔i2よりも狭くてもよい。
【0058】
これによれば、例えば、屈曲部22aの両脇に位置する第1凸部p1及び第2凸部p2を用いてコイル端部22の位置を制限した状態で、コイル端部22を整形することができる。そのため、コイル端部22を確実に凸部32bに囲まれた領域A1に配置することが可能となる。これにより、はんだ40を用いてコイル端部22と端子側部32とを確実に接続することができ、インダクタ100の接続信頼性を高めることができる。
【0059】
また、第3凸部p3は、側部本体32aに対して傾斜する第1傾斜部s1及び第2傾斜部s2を有し、第1傾斜部s1は、第2傾斜部s2よりも凸部32bに囲まれた領域A1側に設けられ、第1傾斜部s1の傾斜角α1は、第2傾斜部s2の傾斜角α2よりも大きくてもよい。
【0060】
このように、第3凸部p3が、傾斜角の大きい第1傾斜部s1を有することで、インダクタ100を回路基板51に実装する際に、はんだ40が、第3凸部p3から下に流れ落ちることを抑制できる。これにより、インダクタ100の接続信頼性を高めることができる。また、第3凸部p3が、第2傾斜部s2を有することで、実装用のはんだ52が這い上がって、はんだ40に混ざることを抑制できる。これにより、インダクタ100の接続信頼性を高めることができる。
【0061】
また、第1傾斜部s1の傾斜角は45°以上であり、第2傾斜部s2の傾斜角は40°以下であってもよい。
【0062】
これによれば、インダクタ100を回路基板51に実装する際に、はんだ40が、第3凸部p3から下に流れ落ちることを抑制し、また、実装用のはんだ52が這い上がって、はんだ40に混ざることを抑制できる。これにより、インダクタ100の接続信頼性を高めることができる。
【0063】
また、磁心10は、天面14に設けられた切欠き部15を有し、金属端子30は、さらに、端子側部32に繋がり底面13に沿って配される端子底部33と、端子側部32に繋がり切欠き部15に係止される端子係止部34と、を有していてもよい。
【0064】
このように、切欠き部15に端子係止部34が係止されることで、磁心10に対する金属端子30の相対移動が抑制される。はんだ40が供給される前に、磁心10と金属端子30との相対位置が安定されるため、より適切な位置関係で、はんだ40による接合が行える。また、はんだ40が供給された後においても、磁心10に対して、金属端子30のぐらつきなどの位置関係の変化が生じにくくなる。つまり、磁心10に金属端子30の一部が嵌め込まれることで、固定されているコイル素子20と金属端子30との位置関係も変化しにくくなり、コイル素子20と金属端子30との接続安定性が向上される。
【0065】
また、例えば、磁心10の中腹に設けられた陥入部に金属端子30から突出する突起部を挿入して同様の効果を奏する構成に比べ、磁心10内の磁束を遮る領域が縮小されるので、磁気特性の劣化を抑制できる点で優れている。また、端子係止部34は、インダクタ100が実装される回路基板51から、磁心10がZ軸方向プラス側に向かって脱落することを抑制するので、実装後の使用時におけるインダクタ100の耐震性能の向上にも寄与している。
【0066】
(その他の実施の形態等)
以上、本開示の実施の形態等に係るインダクタ等について説明したが、本開示は、この実施の形態に限定されるものではない。
【0067】
例えば、上記したインダクタを用いた電気製品又は電気回路についても、本開示に含まれる。電気製品としては、上述したインダクタを備えた電源装置や、当該電源装置を備える各種機器等が挙げられる。
【0068】
また、本開示は、この実施の形態に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、一つ又は複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本開示に係るインダクタは、各種装置及び機器等に用いられるインダクタとして有用である。
【符号の説明】
【0070】
10 磁心
11、12 側面
13 底面
14 天面
15 切欠き部
20 コイル素子
21 コイル埋設部
22 コイル端部
22a 屈曲部
22b ストレート部
22c 先端部
30 金属端子
32 端子側部
32a 側部本体
32b 凸部
33 端子底部
34 端子係止部
40 はんだ
100 インダクタ
A1 凸部に囲まれた領域
i1、i2 間隔
p1 第1凸部
p2 第2凸部
p3 第3凸部
s1 第1傾斜部
s2 第2傾斜部
α1、α2 傾斜角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11