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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】インラインpHセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/30 20060101AFI20241025BHJP
   G01N 27/36 20060101ALI20241025BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20241025BHJP
【FI】
G01N27/30 315B
G01N27/36 Z
G01N27/416 353Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021091435
(22)【出願日】2021-05-31
(65)【公開番号】P2022183911
(43)【公開日】2022-12-13
【審査請求日】2024-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】吉田 大哲
(72)【発明者】
【氏名】名木野 俊文
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭50-124385(JP,U)
【文献】特開2004-279298(JP,A)
【文献】実開昭63-156062(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26-27/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
pHに応答するガラス電極部と、
前記ガラス電極部との相対電位を測定する比較電極部と、
被検液が流れる主配管部と、
前記ガラス電極部と前記主配管部とに接続された流体導入部と、
を有し、
前記ガラス電極部は、
前記流体導入部に接続されている第一圧力伝達部と、
第一貯蓄部と、
前記第一貯蓄部の内部と外部とを電気的に接続する第一電極およびガラス膜部と、
を備えており、
前記第一貯蓄部の内部は電解質溶液で充填され、内部圧力を前記第一圧力伝達部によって調整することで、前記ガラス膜部を隔てた前記第一貯蓄部と前記主配管部との圧力差を制御し、
前記比較電極部は、
前記流体導入部に接続されている第二圧力伝達部と、
第二貯蓄部と、
前記第二貯蓄部の内部と外部とを電気的に接続する第二電極および液絡部と、
を備えており、
前記第二貯蓄部の内部は緩衝溶液で充填され、内部圧力を前記第二圧力伝達部によって調整し、前記液絡部を隔てた前記第二貯蓄部と前記主配管部との圧力差を制御する、pHセンサ。
【請求項2】
前記第二貯蓄部、前記流体導入部のいずれか一方、もしくはその両方が前記液絡部の垂直方向に対して上側に構成される、請求項1に記載のpHセンサ。
【請求項3】
前記第一圧力伝達部と前記流体導入部とを接続する第一接続部、前記第二圧力伝達部と前記流体導入部とを接続する第二接続部、前記流体導入部と前記主配管部とを接続する第三接続部、前記主配管部と前記ガラス膜部とを接続する第四接続部、および前記主配管部と前記液絡部とを接続する第五接続部、のいずれかを備え、それぞれが脱着可能である、請求項1又は2に記載のpHセンサ。
【請求項4】
前記ガラス膜部の厚さが0.3mm以上、2.0mm以下である、請求項1から3のいずれか一項に記載のpHセンサ。
【請求項5】
前記液絡部は、孔径0.1μm以上、50μm以下の多孔質材料を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載のpHセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管および流路内のpH測定に用いられるインラインpHセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
pH測定をする際、pHに応じて電位が変化するガラス電極と、その相対電位を測定するための比較電極とを被検液に接触させ、その電位差を測定することによって被検液のpHを測定する。比較電極では被検液と電極との電気的な接触を保つために、比較電極の内部の緩衝溶液が液絡部から被検液にわずかに流出することが理想的である。
【0003】
配管内の流体のpHを測定する方法として、配管から流体を少量ずつ抜き取り、pHを測定する方法が考えられるが、配管内の流量で流体の化学反応や生産性を制御している場合、配管からの流体の抜き取りは好ましくない。特に、マイクロフロー合成と呼ばれる合成手法においては、少量の流体抜き取りであっても、合成プロセスへの悪影響が懸念される。
【0004】
従来の配管中の流体の連続pH測定を行う方法として、特許文献1に示すようなpHセンサがある。特許文献1には、流体を利用して比較電極内の緩衝溶液に圧力を印加することで、比較電極内の緩衝溶液を被検液に安定して流出させる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-279298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の構成では、流路幅や流速などに起因する圧力損失によって、流路内の圧力が大きくなる場合がある。また、水熱合成等の手法を用いるために流路内の圧力を意図的に上昇させる場合、ガラス電極を構成しているガラス膜部が割れてしまうため、流路内部でpH測定を実施出来ないという課題を有している。
【0007】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、内部の圧力が高い流路内のpHの連続測定を可能とするインラインpHセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係るインラインpHセンサは、pHに応答するガラス電極部と、ガラス電極部との相対電位を測定する比較電極部と、被検液が流れる主配管部と、ガラス電極部と主配管部とに接続された流体導入部と、を有し、ガラス電極部は、流体導入部に接続されている第一圧力伝達部と、第一貯蓄部と、第一貯蓄部の内部と外部とを電気的に接続する第一電極およびガラス膜部と、を備えており、第一貯蓄部の内部は電解質溶液で充填され、内部圧力を第一圧力伝達部によって調整することで、ガラス膜部を隔てた第一貯蓄部と主配管部との圧力差を制御し、比較電極部は、流体導入部に接続されている第二圧力伝達部と、第二貯蓄部と、第二貯蓄部の内部と外部とを電気的に接続する第二電極および液絡部と、を備えており、第二貯蓄部の内部は緩衝溶液で充填され、内部圧力を第二圧力伝達部によって調整し、液絡部を隔てた第二貯蓄部と主配管部との圧力差を制御する。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明に係るインラインpHセンサによれば、主配管部の内部の圧力に応じて、第一貯蓄部内部の圧力を変化させ、ガラス膜部を隔てた第一貯蓄部と主配管部との圧力差を小さくできる。これにより、ガラス膜部の破損を防ぎ、主配管部の内部に圧力が印加されている場合における被検液の連続pH測定を実施することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1に係るインラインpHセンサの断面構造を示す模式的構造断面図である。
図2】実施例におけるpH測定結果を示した図である。
図3】比較例1-2におけるpH測定結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
第1の態様に係るpHセンサは、に係るインラインpHセンサは、pHに応答するガラス電極部と、ガラス電極部との相対電位を測定する比較電極部と、被検液が流れる主配管部と、ガラス電極部と主配管部とに接続された流体導入部と、を有し、ガラス電極部は、流体導入部に接続されている第一圧力伝達部と、第一貯蓄部と、第一貯蓄部の内部と外部とを電気的に接続する第一電極およびガラス膜部と、を備えており、第一貯蓄部の内部は電解質溶液で充填され、内部圧力を第一圧力伝達部によって調整することで、ガラス膜部を隔てた第一貯蓄部と主配管部との圧力差を制御し、比較電極部は、流体導入部に接続されている第二圧力伝達部と、第二貯蓄部と、第二貯蓄部の内部と外部とを電気的に接続する第二電極および液絡部と、を備えており、第二貯蓄部の内部は緩衝溶液で充填され、内部圧力を第二圧力伝達部によって調整し、液絡部を隔てた第二貯蓄部と主配管部との圧力差を制御する。
【0012】
第2の態様に係るpHセンサは、上記第1の態様において、第二貯蓄部、流体導入部のいずれか一方、もしくはその両方が液絡部の垂直方向に対して上側に構成されてもよい。
【0013】
第3の態様に係るpHセンサは、上記第1又は第2の態様において、第一圧力伝達部1aと流体導入部とを接続する第一接続部、第二圧力伝達部と流体導入部とを接続する第二接続部、流体導入部と主配管部とを接続する第三接続部、主配管部とガラス膜部とを接続する第四接続部、および主配管部と液絡部とを接続する第五接続部、のいずれかを備え、それぞれが脱着可能であってもよい。
【0014】
第4の態様に係るpHセンサは、上記第1から第3のいずれかの態様において、ガラス膜部の厚さが0.3mm以上、2.0mm以下であってもよい。
【0015】
第5の態様に係るpHセンサは、上記第1から第4のいずれかの態様において、液絡部2dが孔径0.1μm以上、50μm以下の多孔質材料を有してもよい。
【0016】
以下、実施の形態に係るインラインpHセンサについて、添付図面を参照しながら説明する。
【0017】
(実施の形態1)
実施の形態1に係るインラインpHセンサ10の模式的断面図を図1に示す。このインラインpHセンサ10は、pHに応答するガラス電極部1と、ガラス電極部1との相対電位を測定する比較電極部2と、被検液が流れる主配管部3と、ガラス電極部1と主配管部3とに接続された流体導入部4と、を有する。ガラス電極部1と比較電極部2とが主配管部3に接続され、流体導入部4がガラス電極部1と主配管部3に接続されて構成されている。
【0018】
また、ガラス電極部1は、ガラス膜部1d、第一電極1c、第一貯蓄部1b、および第一圧力伝達部1aを備える。ガラス膜部1dを隔てて第一貯蓄部1bの一部が主配管部3と接続し、第一圧力伝達部1aを隔てて第一貯蓄部1bの一部と流体導入部4が接続され、第一電極1cが第一貯蓄部1bの内部と外部を導通させるように構成されている。また、第一貯蓄部1b内部には電解質溶液1eが充填されている。
【0019】
また、比較電極部2は、被検液のpHに依存せずに一定の電位を示すものであればよい。圧力が印加されている主配管部3の内部の被検液のpHをより安定に測定するため、比較電極部2は、液絡部2d、第二貯蓄部2b、第二電極2cおよび第二圧力伝達部2aを備える。液絡部2dを隔てて第二貯蓄部2bの一部が主配管部3と接続し、第二圧力伝達部2aを隔てて第二貯蓄部2bの一部と流体導入部4が接続され、第二電極2cが第二貯蓄部2bの内部と外部を導通させるように構成されている。また、第二貯蓄部2b内部には緩衝溶液2eが充填されている。
【0020】
このインラインpHセンサ10によれば、主配管部3の内部の圧力に応じて、第一貯蓄部1b内部の圧力を変化させ、ガラス膜部1dを隔てた第一貯蓄部1bと主配管部3との圧力差を小さくできる。これにより、ガラス膜部1dの破損を防ぎ、主配管部3の内部に圧力が印加されている場合における被検液の連続pH測定を実施することが可能となる。
【0021】
以下に、このインラインpHセンサ10を構成する各部材について説明する。
【0022】
<ガラス膜部>
ガラス膜部1dは、ガラス膜部1dの電位が被検液の水素イオン濃度に対して変化する特性を有していればよく、例えば、リチウムイオンやナトリウムイオンなどの金属イオンを有するガラスで構成される。ガラス膜部1dの厚みは、ガラス膜部1dの取り付けを容易にする観点から0.3mm以上が好ましく、また、ガラス膜部1dの電位をより高感度で測定する観点からガラス膜部1dの厚みは2mm以下である事が好ましい。
【0023】
<第一貯蓄部>
第一貯蓄部1bとしてはガラス膜部1dよりも電気抵抗が大きい材質であり、また主配管部3に印加されている圧力と同等の耐圧性を有するものであればよく、耐圧ガラスやPEEK樹脂などを用いることが出来る。また、ガラス膜部1dの電位を測定するため、内部には塩化カリウム水溶液や塩化ナトリウム水溶液等の電解質溶液1eを充填して用いることができる。
【0024】
<第一電極>
第一電極1cは、ガラス膜部1dの電位を測定できるものであればよい。電位の安定性などの観点から、第一貯蓄部1b内部の電解質の種類に応じて、銀/塩化銀電極やカロメル電極を用いることが好ましい。
【0025】
<第一圧力伝達部>
第一圧力伝達部1aは、流体導入部4を通じて主配管部3の圧力を第一貯蓄部1bの内部に伝達出来ればよい。また、圧力センサ等によって圧力を検知し、その圧力をフィードバックして第一貯蓄部1bに圧力を印加してもよい。なお、圧力応答性や過剰な圧力印加によってガラス膜部1dが破損するのを防止する観点から、ダイヤフラム膜やピストン、もしくはシリンジのガスケット部を用いることにより第一貯蓄部1bに直接圧力を伝達することが好ましい。
【0026】
<液絡部>
液絡部2dは、第二貯蓄部2bに蓄えられている緩衝溶液2eが液絡部2dを通過して主配管部3へ流出し、被検液と第二電極2cが電気的に接続されればよく、セラミックスやステンレスの多孔質物質を用いることが可能である。多孔質材料の孔径が大きすぎる場合、第二貯蓄部2b内部の緩衝溶液2eが主配管部3に過剰流出し、被検液を緩衝溶液2eで汚染してしまうため、被検液の正確なpHを測定することが不能となる。一方で多孔質材料の孔径が小さすぎる場合、十分に第二貯蓄部2b内部の緩衝溶液2eが主配管部3へ流出せず、第二電極2cと被検液の電気的な接続が出来ないため、被検液の実際のpHと測定したpHに差異が生じてしまう。よって多孔質材料の孔径は0.1μm以上、50μm以下であることが好ましい。
【0027】
<第二電極>
第二電極2cは、導電性のものであれば良く、電位の安定性の観点から、第二貯蓄部2b内の緩衝溶液2eの種類に応じて銀/塩化銀電極やカロメル電極などを用いることが好ましい。
【0028】
<第二貯蓄部>
第二貯蓄部2bは、主配管部3に印加されている圧力と同等の耐圧性を有するものであれば良く、耐圧ガラスやPEEK樹脂などを用いる事が可能である。また、内部は緩衝溶液2eで満たされており、第二電極2cや被検液の種類に応じて塩化カリウム水溶液や塩化ナトリウム水溶液を用いることが可能である。また、被検液が液絡部2dを通じて主配管部3から第二貯蓄部2bに逆流するのを防ぎ、緩衝溶液2eを安定して主配管部3に流出させる観点から、第二貯蓄部2bが前記液絡部2dの垂直方向に対して上側に構成されていることが好ましい。
【0029】
<第二圧力伝達部>
第二圧力伝達部2aは、流体導入部4を通じて主配管部3の圧力を第二貯蓄部2bの内部に伝達出来ればよく、圧力センサ等によって圧力を検知し、その圧力をフィードバックして第二貯蓄部2bに圧力を印加してもよいが、圧力応答性や過剰な圧力印加によって液絡部2dが破損するのを防止する観点から、ダイヤフラム膜やピストン、もしくはシリンジのガスケット部を用いることにより第二貯蓄部2bに直接圧力を伝達することが好ましい。
【0030】
<主配管部>
主配管部3は、被検液を導入することが出来ればよく、円筒状の配管や矩形状の溝を加工したプレートを密着させて流路を形成させたものを用いることが出来る。
【0031】
<流体導入部>
流体導入部4は、主配管部3の被検液の圧力を第一圧力伝達部1aに伝達できればよく、円筒状の配管や矩形状の溝を加工したプレートを密着させて流路を形成したものなどを用いることが出来る。流体導入部4の流路断面積が小さ過ぎる場合、気泡や被検液に含まれる粒子や異物等により、流体導入部4の流路が閉塞し、主配管部3の被検液の圧力を第一圧力伝達部1aに伝達出来なくなる。また、逆に流体導入部4の流路断面積が大きすぎると、内部容積が大きくなり、pH測定に必要な被検液の量が増え、また主配管部の被検液が変化した際に、流体導入部4に残留する溶液によって被検液の汚染のリスクが高くなる。このため、流体導入部4の流路断面積は、0.01mm以上、100mm以下であることが好ましい。また、被検液が液絡部2dを通じて主配管部3から第二貯蓄部2bに逆流するのを防ぎ、第二貯蓄部2b内部の緩衝溶液2eを安定して主配管部3に流出させる観点から、流体導入部4は、前記液絡部2dの垂直方向に対して上側に構成されていることが好ましい。
【0032】
<第一接続部~第五接続部>
前記第一圧力伝達部1aと前記流体導入部4とを接続する第一接続部5、前記第二圧力伝達部2aと前記流体導入部4とを接続する第二接続部6、前記流体導入部4と前記主配管部3とを接続する第三接続部7、前記主配管部3と前記ガラス膜部1dとを接続する第四接続部8、および前記主配管部3と前記液絡部2dとを接続する第五接続部9は、pH測定開始時に前記流体導入部4、前記第一圧力伝達部1aおよび前記第二圧力伝達部2aへの被検液の導入を容易にし、安定したpH測定を可能にする観点から、それぞれが脱着可能であることが好ましい。
【0033】
(インラインpH測定の原理)
次に、実施の形態における、圧力が印加された主配管部内の被検液のインラインpH測定の原理を説明する。
【0034】
ガラス電極部1において、主配管部3に存在する被検液が、流体導入部4を通じて第一圧力伝達部1aに導入される。導入された被検液によって、第一圧力伝達部1aの圧力が主配管部3の圧力に応じて変化し、その圧力を第一圧力伝達部1aが第一貯蓄部1b内部に伝達することによって、第一貯蓄部1b内部と主配管部3内部との圧力差が小さくなる。よって、第一貯蓄部1bと主配管部3とを隔てるガラス膜部1dに印加される圧力差が小さくなるため、第一貯蓄部1b内部と主配管部3内部の圧力差によってガラス膜部1dが破損しにくくなり、圧力が印加されている被検液のインラインpH測定を可能とする。
【0035】
比較電極部2において、主配管部3に存在する被検液が流体導入部4を通じて第二圧力伝達部2aに導入される。導入された被検液によって、第二圧力伝達部2aの圧力が主配管部3の圧力に応じて変化し、その圧力を第二圧力伝達部2aが第二貯蓄部2b内部に伝達することによって、第二貯蓄部2b内の緩衝溶液2eが液絡部2dを通じて主配管部3に安定して流出する。また、主配管部3から被検液が液絡部2dを通じて第二貯蓄部2bに流入することを防ぐことができ、被検液のインラインpH測定を可能とする。
【0036】
また、第二貯蓄部2bと流体導入部4のどちらか一方、もしくはその両方が液絡部2dの垂直方向に対して上側に構成される。これにより、流体導入部4内の被検液や第二貯蓄部2b内の緩衝溶液2eの重量によって液絡部2dの第二貯蓄部2b側に印加される圧力が大きくなる。これにより、第二貯蓄部2b内の緩衝溶液2eが液絡部2dを通じて主配管部3により安定して流出することで、被検液のより安定したインラインpH測定を可能とする。
【実施例
【0037】
以下、実施例について詳述する。
【0038】
(実施例1)
以下の製造方法によって、インラインpHセンサを製造した。
【0039】
<インラインpHセンサの製造方法>
第一圧力伝達部1aに外径がΦ30mm、厚みが10mmで表面がPTFEでコーティングされたシリンジのガスケット部材を用いた。
第一貯蓄部1bには内径がΦ30mm、厚みが3mmの円筒状となるように加工したホウケイ酸ガラスを用い、内部の電解質溶液1eとして塩化カリウム水溶液(3.33mol/L)を用いた。
第一電極1c部には銀/塩化銀電極を用いて、第一貯蓄部1b内部と外部を電気的に接続し、ガラス膜部1dの電圧を測定できるようにした。
【0040】
ガラス膜部1dにLiO 28atm%、CsO 3atm%、La 4atm%、SiO 65atm%で構成された組成のガラスを用いた。また、ガラス膜部1dは、第一貯蓄部1b内と主配管部3間の電気抵抗を小さくするために、厚さを0.5mmとなるように加工した。
第二圧力伝達部2aに外径がΦ30mm、厚みが10mmで表面がPTFEでコーティングされたシリンジのガスケット部材を用いた。
第二貯蓄部2bに内径がΦ30mm、厚みが3mmの円筒状となるように加工したホウケイ酸ガラスを用い、内部の緩衝溶液2eに塩化カリウム水溶液(3.33mol/L)を用いた。
【0041】
第二電極2cに銀/塩化銀電極を用いて、第二貯蓄部2b内部と外部を電気的に接続し、比較電極の電圧を測定できるようにした。
【0042】
液絡部2dには孔径が3μm、厚みが2mmのセラミックスラインフィルターを用い、主配管部と第二貯蓄部2bの間に接続した。
主配管部3に内径がΦ1mm、外径がΦ1/16“のPTFEチューブを用いた。
流体導入部4には内径がΦ1mm、外径がΦ1/16“のPTFEチューブを用いた。
第一接続部5、第二接続部6、第三接続部7、第四接続部8、及び第五接続部9はオリフィス径が1mmのSUS製ユニオンを用い、10-32UNFフィッティングで接続可能とした。
【0043】
<測定方法>
リン酸塩標準液(pH:6.86)及びフタル酸塩標準液(pH:4.01)を主配管部にそれぞれ順に流し、第一電極1cと第二電極2cの電位差を事前に校正した後に、純水を流して主配管部3を洗浄した。主配管部3の上流側にプランジャーポンプを、下流側に背圧弁をそれぞれ接続し、主配管部3に流量と圧力がそれぞれ5ml/min、1MPaとなるようにフタル酸塩標準液を流通させ、流通させている60秒間のpHを測定した。その結果を図2に示す。この図2によれば、被検液のpHがおおよそ4.01と測定されたことが分かる。
【0044】
図2の結果より、本実施例1のインラインpHセンサによれば、主配管部3の内部の圧力に応じて、第一貯蓄部1b内部の圧力を変化させ、前記ガラス膜部1dを隔てた第一貯蓄部1bと主配管部3との圧力差を小さくすることにより、ガラス膜部1dの破損を防ぎ、主配管部3内部に圧力が印加されている場合における被検液の連続pH測定を実施することが可能となることが明らかとなった。
【0045】
(比較例1-1)
第一接続部5をプラグで封止したこと以外は、実施例と同様にフタル酸塩標準液のpHを測定した。その結果、下流側の背圧弁で主配管部3に1MPaの圧力を印加するとガラス膜部1dが破損してpH測定が不能となった。
【0046】
以上の結果より、ガラス膜部1dを隔てた第一貯蓄部1bと主配管部3との圧力差を制御しなければ、圧力が印加されている流路内の被検液のpH測定を実施することは出来ないことが明らかとなった。
【0047】
(比較例1-2)
第二接続部6をプラグで封止したこと以外は、実施例と同様にフタル酸塩標準液のpHを測定した。その結果を図3に示す。この図3によれば、被検液のpHがおおよそ3.80~4.00の範囲内でばらついていることが分かる。
【0048】
図2図3の結果を比較することにより、液絡部2dを隔てた第二貯蓄部2bと主配管部3との圧力差を制御しなければ、緩衝溶液2eが主配管部3に適切に流出せず、圧力が印加されている流路内の被検液の安定したpH測定を実施することが出来ないことが明らかとなった。
【0049】
なお、本開示においては、前述した様々な実施の形態及び/又は実施例のうちの任意の実施の形態及び/又は実施例を適宜組み合わせることを含むものであり、それぞれの実施の形態及び/又は実施例が有する効果を奏することができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明に係るインラインpHセンサによれば、流路内の圧力が印加されている溶液の連続pH測定が可能となる。また、各部材の内部容量を小さくすることにより、マイクロフロー合成と呼ばれる合成手法等の微小流体の連続pH測定が出来る可能性がある。
【符号の説明】
【0051】
1 ガラス電極部
1a 第一圧力伝達部
1b 第一貯蓄部
1c 第一電極
1d ガラス膜部
1e 電解質溶液
2 比較電極部
2a 第二圧力伝達部
2b 第二貯蓄部
2c 第二電極
2d 液絡部
2e 緩衝溶液
3 主配管部
4 流体導入部
5 第一接続部
6 第二接続部
7 第三接続部
8 第四接続部
9 第五接続部
10 インラインpHセンサ
図1
図2
図3