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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】異常検知システム
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/28 20060101AFI20241025BHJP
   G01M 3/24 20060101ALI20241025BHJP
【FI】
G01M3/28 A
G01M3/24 F
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2022011397
(22)【出願日】2022-01-28
(65)【公開番号】P2023110150
(43)【公開日】2023-08-09
【審査請求日】2024-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永原 英知
(72)【発明者】
【氏名】藤井 裕史
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 真人
(72)【発明者】
【氏名】中林 裕治
(72)【発明者】
【氏名】名和 基之
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-131170(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0347157(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0026561(KR,A)
【文献】特開2014-157071(JP,A)
【文献】特開2019-052888(JP,A)
【文献】特開平05-087669(JP,A)
【文献】特表2020-515850(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/28
G01M 3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水が流れる配管で接続された複数の水道メータと、前記水道メータと通信を行うセンター装置とからなり、
前記水道メータは、
水の流量を計測する流量計測部と、
前記流量計測部が配置された計測流路と、
前記計測流路に付加された超音波送受信器と、
他の水道メータから送信された超音波を前記超音波送受信器で受信して得られた信号を処理して超音波の伝搬波形を求める超音波信号処理部と、
前記センター装置、若しくは他の水道メータと通信を行う通信部と、を備え、
前記センター装置は、
前記水道メータの前記通信部と通信を行い、前記流量計測部で計測された水の流量と、前記超音波信号処理部で求めた前記伝搬波形を取得するセンター通信部と、
センター通信部で取得した前記水の流量と前記伝搬波形に基づく処理を行うセンター処理部を備え、
前記センター処理部は、漏水検査の対象地区の複数の前記水道メータの流量が所定の閾値以下であって、かつ、前記対象地区に流入する流量が所定の閾値以下の時に、前記超音波信号処理部で前記配管において異常がない時に取得した伝搬波形W1と今回取得した伝搬波形W2とを比較することで、前記配管における漏水の有無、或いは、異物の混入等の異常を検知することを特徴とする異常検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家庭用水道等の水供給系統に関し、超音波を用いた漏水などの異常検知システムの構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
家庭用水道等の水供給系統に関し、漏水を検知するシステムが要請されている。従来、水道系統の漏水監視システムとして、超音波流量計を用いたシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。図7は、特許文献1に記載された漏水監視システムの概略構成図である。
【0003】
図7において、漏水監視システム101は、第1の超音波流量計102、及び住居に設置された第2の超音波流量計103および第2の超音波流量計104を有しており、第1の超音波流量計102は、配水管105を経由した後、分岐点X以降は給水管106を経由して第2の超音波流量計103に接続されており、また、給水管107を経由して第2の超音波流量計104に接続されている。
【0004】
第1の超音波流量計102は、1対の超音波受発信素子p1、とp2を有しており、これらの受発信動作に基づく伝搬時間により、配水管105を流れる水の流量Q0が計測される。
【0005】
また、第2の超音波流量計103、および第2の超音波流量計104もそれぞれ1対の超音波受発信素子a1、a2、およびb1、b2を有しており、これらの受発信動作に基づく伝搬時間により、給水管106、107のそれぞれを流れる水の流量Qa、Qbを計測する構成となっている。
【0006】
このような構成で、Q0とQa+Qbとの値の差を調べることにより、配水管105、給水管106、107における漏水の有無を検知することができる。
【0007】
本システムでは、その流量差を得るにあたり、それぞれの超音波流量計が得た流量情報を、超音波受発信素子を用いて伝送する仕組みとなっている。
【0008】
例えば、第1の超音波流量計102が得た情報を超音波受発信素子p1から送り、それを第2の超音波流量計103の超音波受発信素子a1で受ける構成となっている。また、同様に、第2の超音波流量計a103が得た情報を超音波受発信素子a1から送り、それを第2の超音波流量計a103の超音波受発信素子b1で受ける構成となっている。これにより、無線を利用しなくとも、流量情報を送ることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2002-131170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記従来の構成では、漏水の有無を検知するために、各住居に設けられた超音波流量計(超音波流量計103,104)以外に、給水管106、107が分岐する前の配水管105に超音波流量計(上記例では、超音波流量計102)を設ける必要があった。
【0011】
また、異なる超音波流量計間での超音波の送受信はあるものの、情報の伝送機能のみで、漏水判定にまでは及ばないという課題を有するものであった。
【0012】
本発明は、前記従来の課題を解決するものであり、別個に超音波流量計を設けることなく、住居に設置される水道メータに漏水検知用のセンサを付加することで漏水の有無や異物の混入等が検知可能な異常検知システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記従来の課題を解決するために、本発明の異常検知システムは、水が流れる配管で接続された複数の水道メータと、前記水道メータと通信を行うセンター装置とからなり、前記水道メータは、水の流量を計測する流量計測部と、前記流量計測部が配置された計測流路と、前記計測流路に付加された超音波送受信器と、他の水道メータから送信された超音波を前記超音波送受信器で受信して得られた信号を処理して超音波の伝搬波形を求める超音波信号処理部と、前記センター装置、若しくは他の水道メータと通信を行う通信部と、を備え、前記センター装置は、前記水道メータの前記通信部と通信を行い、前記流量計測部で計測された水の流量と、前記超音波信号処理部で求めた前記伝搬波形を取得するセンター通信部と、センター通信部で取得した前記水の流量と前記伝搬波形に基づく処理を行うセンター処理部を備え、前記センター処理部は、漏水検査の対象地区の複数の前記水道メータの流量が所定の閾値以下であって、かつ、前記対象地区に流入する流量が所定の閾値以下の時に、前記超音波信号処理部で前記配管において異常がない時に取得した伝搬波形W1と今回取得した伝搬波形W2とを比較することで、前記配管における水の漏洩の有無、或いは、異物の混入等の異常を検知することができるものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の異常検知システムによると、配管で接続された隣接する2つの水道メータ間で,それぞれの水道メータに異常検知用のセンサとして付加した超音波送受信器を利用して、水道メータ間での超音波伝搬波形を測定し、漏れがない場合との伝搬波形比較により漏水の有無を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態1における給水ネットワークの概略構成図
図2】本発明の実施の形態1における水道メータの概略構成図
図3】本発明の実施の形態1における漏水検知システムの構成図
図4】本発明の実施の形態1における隣接水道メータ間の超音波信号送受信の説明図
図5】本発明の実施の形態1における正常時と異常時の超音波伝搬波形図
図6】本発明の実施の形態1における検査手順の説明図
図7】従来の漏水監視システムの概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0016】
第1の発明は、水が流れる配管で接続された複数の水道メータと、前記水道メータと通信を行うセンター装置とからなり、前記水道メータは、水の流量を計測する流量計測部と、前記流量計測部が配置された計測流路と、前記計測流路に付加された超音波送受信器と、他の水道メータから送信された超音波を前記超音波送受信器で受信して得られた信号を処理して超音波の伝搬波形を求める超音波信号処理部と、前記センター装置、若しくは他の水道メータと通信を行う通信部と、を備え、前記センター装置は、前記水道メータの前記通信部と通信を行い、前記流量計測部で計測された水の流量と、前記超音波信号処理部で求めた前記伝搬波形を取得するセンター通信部と、センター通信部で取得した前記水の流量と前記伝搬波形に基づく処理を行うセンター処理部を備え、前記センター処理部は、漏水検査の対象地区の複数の前記水道メータの流量が所定の閾値以下であって、かつ、前
記対象地区に流入する流量が所定の閾値以下の時に、前記超音波信号処理部で前記配管において異常がない時に取得した伝搬波形W1と今回取得した伝搬波形W2とを比較することで、前記配管における水の漏洩の有無、或いは、異物の混入等の異常を検知する異常検知システムである。
【0017】
以下、図面を参照しながら実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。
【0018】
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0019】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における給水ネットワークの概略構成図である。図1において、一点鎖線で囲った部分が給水ネットワーク60であり、給水場51から本管52、分岐部53、共通配管54、引込み管55を介して個別の各戸56(A,B、C、D)に給水が行われる。各戸56には、それぞれに、水道メータ(図示せず)が備えられている。説明の都合上、各戸56(A,B、C、D)がある地区を漏水検査の対象地区57とする。また、図1に示すように、各戸56は、共通配管54の末端Eを含んだ地区である。
【0020】
センター装置20に配置されているセンター処理部58は、センター通信部59により、この対象地区57の各戸56それぞれにある水道メータ(図示せず)の通信部(図示せず)とのやりとりを通じて指示を与える。なお、センター装置20は、給水場51に併設されても良いし、設置場所は特に限定されない。
【0021】
図2は、実施の形態1における異常検知システムに用いる水道メータ1の概略構成図を示す。
【0022】
以下、本実施の形態では、配管における異常として、漏水を例にして説明する。
【0023】
統括制御部2は、流量計測処理部3、超音波信号処理部4を制御する。計測流路5は、水道メータ1の内部に設けられた水の通路であり、流れは白抜き矢印fで示した方向に流れる。計測流路5の上流側には超音波送受信器6が配置されており、下流側には流量計測部7が配置されている。流量計測部7は、羽根車式、超音波式等、周知の流量計測方法を利用するものであり、特に限定されない。
【0024】
また、計測流路5には、超音波送受信器6から発信された超音波を90°方向に反射する為の超音波反射体8が配置されている。また、通信部9は、外部との通信を行うことで、各種データの送受信を行う。破線pは、超音波の伝搬経路を示す。なお、超音波送受信器6は、計測流路5の外壁面に図示しない固定部材で固定されている。
【0025】
上記構成において、まず、水の流量を計測する場合、統括制御部2は、流量計測処理部3を動作させ、流量計測部7を用いて流量を計測する。例えば、流量計測部7が羽根車式であれば、羽根車の回転数を検知して流量を計測する。
【0026】
図3は、実施の形態1における漏水検知システムの配管系統図を示す。図3において、水道メータ1A、1B、1C、1Dは、共通配管13の上流側から下流側に向かってそれぞれ、引込み管14A,14B,14C,14Dを介して接続されている。
【0027】
本実施の形態では、一例として共通配管13に4つの水道メータ(水道メータ1A、1B、1C、1D)が接続される構成で説明するが、水道メータの数はこれに限定されない。
【0028】
また、センター装置20は、水道メータ1A、1B、1C、1Dと通信を行うことで、計測された流量等の検針データを受信したり、水道メータに対して各種の指示を行う機能を有している。なお、各水道メータとの通信方法は、セルラー通信や特定小電力無線通信、あるいは、中継局を介したネットワークなど、特に限定されない。
【0029】
図4は、実施の形態1における隣接する水道メータ間での超音波信号送受信を説明する図である。なお、図3図4において、図2と同じ機能のものは、同じ番号で示し、数字の後に付与した記号A,B,C,Dは、各水道メータ1A、1B、1C、1Dとの対応を表している。
【0030】
図4は、漏水検知の原理を説明するための図で、図3に示した配管系統図の水道メータ1A、1Bの間での動作を説明する為、水道メータ1A、1Bと、これらを接続している引込み管14A、14B、および共通配管13の部分を抜き出した図であるが、引込み管14A、14Bと共通配管13は、漏水検知の原理説明を分かり易く行う都合上、図3を少し変形して示している。
【0031】
次に、異常検知システム21の動作を図2図4により説明する。なお、漏水検知の原理を説明する為、センター装置20からの指示は省略しているが、水道メータ1Aと水道メータ1Bにおける漏水検知の動作は、センター装置20からの指示に基づいている。
【0032】
図2において、流量計測を行う場合、統括制御部2は、流量計測処理部3により、流量計測動作を開始する。
【0033】
ここで用いる流量計測部7は、先にも述べたように、既存の流量計である。例えば、羽根車式流量計であれば、羽根車の回転数を検知することにより流量の計測が行われる。そのための計測処理が流量計測処理部3により実施され、流量Qを計測することができる。
【0034】
まず、図4を用いて、異常検知システムの漏水検知動作を説明する。
【0035】
上記の流量計測動作は、水道メータ1A、および水道メータ1Bにおいて、それぞれ別個に行われるものであるが、漏水検知動作では、引込み管14A、14B、および共通配管13を介して隣接配置されている水道メータ1Aと水道メータ1Bとの間での超音波の送受信の連携動作が行われる。
【0036】
隣接する水道メータ1A、1B間で、超音波の伝搬を計測する場合、まず、水道メータ1Aの統括制御部2Aは、通信部9Aを動作させる。また、水道メータ1Bの統括制御部2Bは、通信部9Bを動作させる。これらの連携動作により、水道メータ1A、1B間でそれぞれが有する時計(図示せず)の時刻を一致させる。
【0037】
次に、水道メータ1Aの統括制御部2Aは、超音波信号処理部4Aを動作させて超音波信号を送信し、同時刻に、水道メータ1Bの統括制御部2Bは、超音波信号処理部4Bを動作させて伝搬波形の計測を開始する。
【0038】
そして、水道メータ1Aの超音波送受信器6Aより発射された超音波は、超音波反射体8Aで反射し、引込み管14Aの方向へ伝搬する。その後、この超音波は、引込み管14
Aや、配管がつながっている共通配管13,引込み管14Bの流体部分を経由し、配管が接続されている様々な方向に向かうが、そのうちの一部は、水道メータ1Bの超音波反射体8Bで反射し超音波送受信器6Bで受信される。この様にして到達した伝搬波形は、水道メータ1Bの超音波信号処理部4Bにより計測される。
【0039】
先に述べたように、水道メータ1A、1Bの時計の時刻は一致しているので、送信開始と伝搬波形の計測開始を同じ時刻に開始することで、水道メータ1Aの超音波送受信器6Aから発せられて、水道メータ1Bの超音波送受信器6Bで受信される波形を確実にとらえることができる。
【0040】
今、図3の共通配管13に接続されているすべての水道メータ1A,1B,1C,1Dの流量がゼロの場合、すなわち、共通配管13に流れが無い場合で、漏水が無い場合に、上記のようにして、水道メータ1Aから発せられた送信波形と、水道メータ1Bで得られた伝搬波形を模擬的に示したのが図5(a)である。この場合は、超音波伝搬経路pにおいて、漏水が無い場合であり、伝搬波形は送信波形に類似した整った波形を示す。このような条件の波形を伝搬波形W1と呼ぶことにする。
【0041】
次に、超音波伝搬経路pのどこかで漏水が発生しているときの水道メータ1Bでの伝搬波形を模擬的に示したのが図5(b)である。漏水が発生しているときは、その近傍で管内を流れる流体に流速変動や、乱れが生じるため、伝搬波形は、図5(b)に示す様に変動を伴うものとなる。
【0042】
従って、水道メータ1Bが設置された直後など、漏水が無いと判断される時期に、超音波信号処理部4Bは、水道メータ1A,1B,1C,1Dとの通信により、それぞれの流量がゼロとなったことを受信したタイミングで超音波信号処理部4Aと連携して伝搬波形W1を計測し、保存しておき、その後、定期的に伝搬波形(W2とする)を計測する。センター装置20のセンター処理部では、これら伝搬波形W1とW2とを比較分析することにより超音波伝搬経路pにおける漏水の発生を検知することができる。すなわち、図2における引込み管14A、共通配管13、引込み管14Bの経路における漏水を検知することができる。次に、図3を用いて、対象地区57の漏水の有無を調べる方法を述べる。
【0043】
図3において、共通配管13から、水道メータ1A~1Dそれぞれへの引込み管14A~14Dへの分岐点をP1~P4とする。そして、水道メータ1Aから1Bへの配管経路をLab、水道メータ1Bから1Cへの配管経路をLbc、水道メータ1Cから1Dへの配管経路をLcdとする。
【0044】
また、引込み管14A~14Dを流れる流量をそれぞれ、q1~q4とする。そして、共通配管13の分岐点P1に流れ込む流量をQ1とする。つまり、Q1は、水道メータ1A~1Dの流量の総和となる。以降、分岐点P2,P3,P4に流れ込む流量を、それぞれQ2~Q4とする。なお、引込み管14Dは共通配管54の末端Eに位置する為、q4=Q4である。
【0045】
また、引込み管14A~14Dの配管断面積をそれぞれ、s1~s4とする。共通配管13の断面積を区間P1―P2,P2-P3,P3-P4に対して、それぞれ、S2~S4とする。
【0046】
まず、図4で一例として説明したLabの経路における漏水検知を図3において考える。
【0047】
このLabの経路は、引込み管14A、共通配管13のP1―P2部分(これをL1と
する)、および引込み管14Bより構成されている。これらの配管を流れる流量は、上記により、それぞれ、q1、Q2、q2である。また、それらの断面積は、それぞれ、s1,S2,s2である。
【0048】
漏水検査をするときに、これらの流量が、すべてゼロであれば都合が良いのであるが、実際は、必ずしもゼロであるとは限らない。そこで、多少流れがあっても判断が可能となるような条件を考えることにする。
【0049】
今回用いる漏水判定は伝搬波形の比較に基づくものである。
【0050】
実際に漏水判定をするときに、もし、漏水による流れ以外に、配管内に流れがあるとすると、それは判定を妨げる要因となり得る。したがって、このときの流速Uと予め定めた流速Usとの比m(=U/Us)を用いて、誤差の指標とすることを考える。ここでは、この比率の事を流速比率と称することとする。その値に対して閾値rを定めることにより、誤差のレベルを定めることができる。
【0051】
例えば、閾値rの値として、流速Usの1%とする等である。この閾値rの値は、漏水判定をどの程度で行うかということと関係することになる。つまり、判定レベルを上げようとすると、閾値rの値を小さくすればよい。
【0052】
配管経路Labにおいて具体的に述べると以下のようになる。引込み管14A、共通配管13のL1、および引込み管14Bにおける流速を、それぞれv1,V2、v2とすると、それぞれの値は、それぞれの流量q1、Q2、q2をそれらの断面積s1,S2,s2で除することにより求められる。これらの値を流速Usで除した値をm1,M2,m2とすると、これらが流速比率となる。この値を閾値rと比較することにより漏水判定を行える状況にあるかどうかの判定をすることができる。
【0053】
この様に、流速比率で誤差レベルを設定することにより、多少の流れがあっても、配管経路Labにおいて計測された伝搬波形と、漏水が無い場合の伝搬波形との比較に基づき漏水の有無を判定することができる。
【0054】
上記では、閾値として流速比率を用いたが、配管断面積は、それぞれの場所で一定の値ゆえ、それぞれの流体の流速は、流体の流量に置換えて考えてもよい。すなわち、実際は、閾値としての流速比率を流量計で計測した流量q1、Q2、q2で考えることができる。つまり、誤差のレベルは、各流路におけるそれぞれの流量を予め設定された流量の閾値(qt、Qt)と比較することで判定することができる。
【0055】
以上、図3の配管経路Labにおける動作を示したが、同様の事を配管経路Lbc、Lcdに対して行うことにより、対象地区57における漏水の有無とその漏水が、どの経路で生じているかの場所特定をすることが可能となる。
【0056】
そして、誤差のレベルは、引込み管の流量qi(i=1~4)、共通配管の流量Qi(i=1~3)で判断することができる。
【0057】
この例では、漏水判定の仕組みを分かり易く説明するために、対象地区57として、共通配管13の末端が含まれる地区を対象として説明したが、末端を含まない中間の地区であっても同様の考え方を適用することができる。
【0058】
また、共通配管13は、通常、断面積が一定であり、下流になるにしたがって、その流量は減少するため、共通配管13の流量の判定対象としては、対象地区57の上流端P1
、すなわちこの対象地区57に流入する流量の値を用いても差し支えない。
【0059】
図6は、本実施の形態における漏水検知システムの漏水検知動作を説明するためのフローチャートである。
【0060】
このフローチャートに示す処理は、図1に示すセンター処理部58で、センター通信部59を介して、各水道メータと連携して行われるものである。
【0061】
また、前記説明で行っていたW1とW2との波形比較は、センター処理部58に設けられた波形比較部(図示せず)で行うようにしたものである。
【0062】
図6において、ステップS1は計測の開始命令、ステップS2は、各水道メータの流量計測指示命令である。ステップS3は、各水道メータの流量計測サブルーチンである。ステップS4は、サブルーチンS3で得られた計測データの入手命令である。ステップS5は、計測データ入手命令S4で得られた計測データの処理命令である。ステップS6は、すべての水道メータの流量と、対象地区の入口流量が予め定められた閾値以下かどうかの判断命令である。
【0063】
ステップS7は、2つの水道メータ間での伝搬波形計測指示命令である。ステップS8は、各水道メータ間の伝搬波形の計測を行う伝搬波形計測サブルーチンである。ステップS9は、ステップS8で得られた伝搬波形の計測データの入手命令である。ステップS10は、計測データ入手命令S9で得られた伝搬波形の計測データの処理命令である。
【0064】
ステップS11は、漏水があるかどうかの判断命令である。ステップS12は、警報命令であり、ステップS13は終了命令である。ステップS14、ステップS15は、インターバル設定命令である。
【0065】
次に、図6を用いて、センター装置を含めたシステム全体としての漏水検知動作の動作シーケンスを説明する。
【0066】
なお、センター処理部58は、図3に示す様に、センター通信部59を介して、各水道メータ1A,1B、1C、1Dに付属している通信部9A,9B、9C、9Dとの情報交換により、様々な指示や、情報のやりとりを行うことを前提としており、センター装置20から水道メータ1A,1B、1C、1Dへの個々の指示は省略する。
【0067】
まず、開始命令(ステップS1)で計測動作が開始される。
【0068】
次に、流量計測指示命令(ステップS2)により、各水道メータ1A,1B、1C、1Dの流量計測サブルーチン(ステップS3)が実行され、各水道メータ1A,1B、1C、1Dの流量が計測される。次に、計測データの入手命令(ステップS4)では、センター通信部59を介して、各水道メータ1A,1B、1C、1Dの流量データがセンター処理部58に集められる。
【0069】
次に、計測データの処理命令(ステップS5)により、各引込み管の流量qi(i=1~4)、即ち、各水道メータ1A,1B、1C、1Dの流量データを基に共通配管13の各分岐点の流量Qi(i=1~3)が求められる。
【0070】
流量qi,Qiは、判断命令(ステップS6)により、許容される誤差のレベルに基づき予め定められた所定の閾値qt、Qtと比較されて、共に閾値以下の場合は、Yesが選択される。
【0071】
次に、2つの水道メータ間の伝搬波形計計測指示命令(ステップS7)が実行され、これにより各水道メータ1A,1B、1C、1Dの2つの水道メータ間の伝搬波形計測サブルーチン(ステップS8)が実行され、予め決められたシーケンスに従って、各水道メータ間の伝搬波形が計測される。
【0072】
このときの漏水検査のシーケンスは、一例として、下記の様な順序となる。
(1)水道メータ1Aと1B間(配管経路Lab)の伝搬波形(W2ab)を計測
(2)水道メータ1Bと1C間(配管経路Lbc)の伝搬波形(W2bc)を計測
(3)水道メータ1Cと1D間(配管経路Lcd)の伝搬波形(W2cd)を計測
次に、計測データ入手命令(ステップS9)では、これらのデータ(W2ab、W2bc、W2cd)がセンター処理部58に集められる。
【0073】
このデータは、処理命令(ステップS10)により、予め記録された、漏水が無い場合のそれぞれの伝搬波形(W1ab,W1bc,W1cd)と比較され、漏水の有無の判定が行われ、漏水がある場合は、その箇所の特定が行われる。
【0074】
判断命令(ステップS11)では、処理命令(ステップS10)の結果、漏水がある場合は、Yesを選択し、警報命令(ステップS12)により漏水警報を発して終了命令(ステップS13)により終了する。漏水が無い場合には、Noの側が選択され、予め定められたインターバル命令(ステップS14)の後、また、同様の動作が繰り返され、漏水の監視が継続される。
【0075】
また、先の判断命令(ステップS6)で、条件が満たされなかった場合は、Noを選択し、インターバル設定命令(ステップS15)の後、再度、流量計測指示命令(ステップS2)以降の動作が繰返される。
【0076】
なお、上記の説明において閾値と比較する流量の値(q、Q)は、いずれも、漏れがある場合は、漏れの量だけ小さい値になるが、これは、判断としては安全側になる。つまり、漏洩があるにも関わらず、漏洩判定をしない側を選択すると、危険側になるのであるが、いずれの場合も、漏洩判定をする側を選択することになるので、安全側となるものである。
【0077】
以上、述べたように、本実施の形態によると、水が流れる共通配管13で接続された複数の水道メータ間において、一方から送信した超音波を他方で受けたときの伝搬波形W2を計測し、伝搬波形W2と2つの水道メータ間における水の漏洩がない時の超音波の伝搬波形W1と比較することで、2つの水道メータ間の超音波伝搬経路における水の漏洩の有無を検知することが可能な異常検知システムを構築することができる。
【0078】
また、センター処理部58は、漏水検査の対象地区57の各水道メータ1A~1Cの流量が所定の閾値以下であって、かつ、対象地区57に流入する流量が所定の閾値以下の時に、水道メータ1A~1Cの隣接する2つの水道メータ間の伝搬波形をすべて計測し、計測された伝搬波形と、漏水がない時の伝搬波形とを比較することで漏水の有無判定を行うことができる。
【0079】
上記の説明では、超音波送受信器を流量計よりも上流側に配置したが、これは、流量計が羽根車式の様に、その部品構成が超音波伝搬を妨げるような場合であって、そのような恐れのない流量計であれば、超音波送受信器は、流量計の下流側であっても差し支えないものである。
【0080】
なお、ここに示した例では、水道メータ1Aから超音波を発射して、水道メータ1Bに到達する伝搬波形の計測を行ったが、逆に水道メータ1Bから発射して、水道メータ1Aに到達する伝搬波形の計測を行っても、同様の効果が発揮されるものである。
【0081】
また、上記実施例では、水道メータ1Aと水道メータ1B間で判定したが、水道メータ1A、1B、1C、1Dの内の任意の2つを選択することで、同様の漏水検知を行うことができる。
【0082】
また、水道メータ間の時計の時刻の調整は互いの通信に限らず、センター装置20との通信でセンター装置20が有する時計の時刻に合わせるなど、特に限定はされない。
【0083】
また、本実施の形態では、水道メータとは独立して設けたセンター装置で異常検知を行う構成として説明したが、対象地区に設置された水道メータの1つにセンター装置20のセンター処理部58とセンター通信部59の機能を設けてもよい。
【0084】
また、流量計として、超音波を用いた原理で計測するものを用いれば、流量計測に使用する超音波送受信器を、漏水検知用の超音波送受信器と兼用することができ、効率的な水道メータの構成とすることができる。
【0085】
なお、この事例では、漏水を例に説明したが、伝搬波形に影響を及ぼす異常な状態、例えば、気泡の混入や、異物の混入などがあれば、これも同様に検知することができる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
以上のように、本発明の異常検知システムは、隣接する水道メータ間での超音波伝搬波形の変化に基づき漏水の有無判定をすることができるため、家庭用水道配管系や、温冷水利用の暖冷房水配管系などへの幅広い応用が可能となる。
【符号の説明】
【0087】
1、1A~1D 水道メータ
2、2A、2B 統括制御部
3、3A、3B 流量計測処理部
4、4A、4B 超音波信号処理部
5 計測流路
6、6A~6D 超音波送受信器
7、7A~7D 流量計
9、9A~9D 通信部
13、54 共通配管(配管)
14、14A~14D 引込み管(配管)
20 センター装置
21 異常検知システム
58 センター処理部
59 センター通信部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7