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特許7576805低温半田、低温半田の製造方法、および低温半田被覆リード線
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】低温半田、低温半田の製造方法、および低温半田被覆リード線
(51)【国際特許分類】
   B23K 35/26 20060101AFI20241025BHJP
   C22C 1/02 20060101ALI20241025BHJP
   C22C 12/00 20060101ALI20241025BHJP
   C22C 28/00 20060101ALI20241025BHJP
【FI】
B23K35/26 310A
B23K35/26 310D
C22C1/02 503N
C22C12/00
C22C28/00 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022553794
(86)(22)【出願日】2021-09-15
(86)【国際出願番号】 JP2021033865
(87)【国際公開番号】W WO2022070910
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】P 2020166977
(32)【優先日】2020-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020219193
(32)【優先日】2020-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】506198827
【氏名又は名称】アートビーム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】306030563
【氏名又は名称】岡田 守弘
(74)【代理人】
【識別番号】100089141
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 守弘
(72)【発明者】
【氏名】岡田 守弘
(72)【発明者】
【氏名】新井 卓
(72)【発明者】
【氏名】新井 傑也
(72)【発明者】
【氏名】新井 寛昭
(72)【発明者】
【氏名】菅原 ミエ子
(72)【発明者】
【氏名】小林 賢一
(72)【発明者】
【氏名】小宮 秀利
(72)【発明者】
【氏名】松井 正五
(72)【発明者】
【氏名】錦織 潤
(72)【発明者】
【氏名】森 尚久
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼田 遼
【審査官】山本 佳
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/019966(WO,A1)
【文献】特開2016-026884(JP,A)
【文献】特開2013-248664(JP,A)
【文献】特開2000-141079(JP,A)
【文献】特表2019-527145(JP,A)
【文献】特開2010-167472(JP,A)
【文献】特開2005-296983(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 12/00
C22C 13/00
C22C 13/02
C22C 28/00
C22C 30/04
B23K 35/26
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
SnとInとの合金からなる低温半田において、
SnとInとの合金である母材、および被半田付け対象への密着性を与える材料であるAl、被半田付け対象の酸化物除去および密着性を与える材料であるPまたはCuPからなる主材を、合計0.73wt%未満、0.01wt%以上を含み、かつAl、Pはそれぞれ0.05wt%以下を除き、密着力を増強したことを特徴とする、Al、P、および任意にCuを含み、残部がSnおよびInである低温半田。
【請求項2】
太陽電池基板、液晶基板の電極に、リード線の半田付けに用いることを特徴とする請求項1に記載の低温半田。
【請求項3】
前記密着力を増強したとして、半田付けする対象である、金属については合金化、酸化物を焼成して形成した無機材については焼結、およびセルロース/樹脂材については表面の凹凸の隙間に入って固化して固着する密着力の1つ以上を増強したことを特徴とした請求項1に記載の低温半田。
【請求項4】
請求項3において、前記金属はアルミニウム、銅、鉄、ステンレス、シリコンであり、前記無機材はガラス、セラミックであり、前記セルロース/樹脂は紙、木材、樹脂フィルム、樹脂ファイバー、カーボンファイバーであることを特徴とする低温半田。
【請求項5】
前記半田付けは、超音波半田付けであることを特徴とする請求項4に記載の低温半田。
【請求項6】
請求項1から請求項5に記載の低温半田を、線材、リボンの表面に溶融塗布したことを特徴とする低温半田被覆リード線。
【請求項7】
SnとInとの合金からなる低温半田の製造方法において、
SnとInとの合金である母材、および被半田付け対象への密着性を与える材料であるAl、被半田付け対象の酸化物除去および密着性を与える材料であるPまたはCuPからなる主材を、合計0.73wt%未満、0.01wt%以上、ただしAl、Pはそれぞれ0.05wt%以下を除く、混入するステップと、
前記混入した材料を溶融して合金化するステップと、
を有し、密着力を増強したことを特徴とする、Al、P、および任意にCuを含み、残部がSnおよびInである低温半田の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池基板や液晶基板等に用いる樹脂フィルムに使う低温半田、低温半田の製造方法、および低温半田被覆リード線に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽電池基板や液晶基板等の電極へのリード線の半田付けは錫鉛半田が強度の強いこと、価格が安いことなどの理由により多く用いられている。
【0003】
また、アルミなどの電極の場合には、十分な半田付け強度が得られないために銀ペーストを塗布・焼結してこの上にリード線を錫鉛半田で半田付けしていた。
【0004】
また、最近は、公害等の観点から鉛フリー半田の要望が強くなっている。
【0005】
更に、柔軟性のあるPET等の樹脂フィルム上に太陽電池を形成し、これの電極(アルミ電極、銅電極等)にリード線を低温半田付けする要望が生じている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の鉛フリー半田は、錫鉛半田に比較し、強度が要求強度に少し不足したり、価格が高くて代替えに至っていないという問題があった。
【0007】
また、樹脂フィルム上に形成した太陽電池等では、半田付け温度が高すぎるという問題が発生した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鉛フリー半田の一種であるSnと、Bi、In、あるいはBiとInとの合金からなる低温半田について、Al.P.Sb、In(母材がInを含むときは除く)などの1つ以上を合計最大3wt%。好ましくは1wt%ないし1.5wt%以下の微量を混入して溶融・合金化した低温半田は樹脂フィルム等の電極(アルミ、銅等)に極めて強固に半田付け可能であることを発見した。
【0009】
そのため、本発明らは、Snと、Bi、In、あるいはBiとInとの合金からなる低温半田において、Snと、Bi、In、あるいはBiとInとの合金である母材に、Al、P、Sb、In(母材にInが含まれる場合を除く)のうちの1つ以上からなる主材を、合計最大3wt%以下、好ましくは1.0ないし1.5wt%以下、0.01wt%以上を混入して溶融・合金化し、密着力を増強するようにしている。
【0010】
この際、溶融・合金化した後の低温半田の溶融温度は、母材の溶融温度と同じあるいは低いようにしている。
【0011】
また、Al、P、Sb、Inのうちの1つ以上を含有する合金からなる副材を、必要に応じて母材に混入して溶融・合金化するようにしている。
【0012】
また、副材の合金として、CuとPとの合金とするようにしている。
【0013】
また、母材に、主材としてAl、CuP、必要に応じてInを、合計最大3wt%以下、好ましくは1.0ないし1.5wt%以下、0.1wt%以上を混入して溶融・合金化するようにしている。
【0014】
また、母材、主材、副材をまとめてあるいは複数に分けて混合して溶融・合金化するようにしている。
【0015】
また、太陽電池基板、液晶基板(樹脂フィルム)の電極に、リード線の半田付けに用いるようにしている。
【0016】
また、上記低温半田を、線材、リボンの表面に溶融塗布するようにしている。
【0017】
また、溶融塗布は、超音波を印加した状態で溶融塗布するようにしている。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、上述したように、Snと、Bi、In、あるいはBiとInとの合金からなる低温半田について、Al.P.Sb、In(母材がInを含むときは除く)などの1つ以上を合計最大3wt%。好ましくは1wt%ないし1.5wt%以下の微量を混入して溶融・合金化した低温半田は樹脂フィルム等の電極(アルミ、銅等)に極めて強固に半田付け可能であり、特に、SnとBiとの低温半田は非常に安く製造することが可能となった。
【0019】
また、溶融・合金化した後の低温半田の溶融温度は、母材の溶融温度と同じあるいは低くなり、混入による溶融温度の上昇を無くすことができた。
【0020】
また、Al,P,Sb,In(母材にInが含まれる場合は除く)等の1つ以上を混入して溶融・合金化し低温半田を製造することにより、半田付け対象に対する密着強度を大幅に増強することができた。
【実施例1】
【0021】
図1は本発明の低温半田製造説明図を示す。
【0022】
図1の(a)はフローチャートを示し、図1の(b)は材料例を示す。
【0023】
図1の(a)において、S1は、母材、主材を準備する。これは、図1の(b)の材料例に示す下記の材料を準備する。
【0024】
・母材:Sn42 Bi58
・主材:Al、GuP、In
ここで、母材は、本発明の低温半田を形成する合金の基本となる材料(母材)であって、例えばSnが42wt%。Biが58wt%(熔融温度139℃)を1つとして用いた。Sn,Biの重量比は合金を作成できる範囲で任意、例えばBiが3から58wt%、残りをSnとすればよい。いずれの割合にするかは溶融温度(Biが多いほど低温になり、58wt%のときに熔融温度139℃)などを実験して所望の値となるように適宜、割合を選択すればよい。尚、他の低温半田、Sn-In系,Sn-Bi-In系についても同様に図5とその説明に記載したように適宜、割合を選択すればよい。
【0025】
また、主材は、半田付けの際に、被半田付け対象の表面の酸化膜除去、密着性。濡れ性、流動性、粘性などの半田付けに影響を与える材料であって、本発明では主材の総量が最大3wt%以下、好ましくは1ないし1.5wt%以下、0.01wt%以上にする材料である。ここでは、Al(被半田付け対象の密着性)、P(またはCuP、被半田付け対象の酸化膜除去、密着性),In(濡れ性、流動性)、Sb(密着性)の1つ以上を混合して溶融・合金化する対象の材料である。また、主材は、総量が最大3wt%以下、好ましくは1ないし1.5wt%以下、0.01wt%以上の微量と相まって母材の溶融温度よりも、母材に主材を混合して溶融・合金化した後の低温半田の溶融温度は等しいあるいは若干低い(例えば1ないし3℃程度低い)。これは、主材の総量が母材に対して最大3wt%以下、好ましくは1ないし1.5wt%以下の微量であることで、母材の骨格内に入り、再骨格構成されるものと推測される。
【0026】
S2は、母材に対して、主材を混合する。これは、S1で準備した母材に、主材を混合する。
【0027】
S3は、母材、主材が溶融して合金化する。これは、S2で母材に主材を混合して加熱して溶融し、良く攪拌して合金化させる。この際、主材が空気中の酸素で酸化されてしまい合金化が困難な場合などの場合には、必要に応じて不活性ガス(例えば窒素ガス)を坩堝内に吹き込んだり、あるいは更に不活性ガスを満たした溶融炉や真空溶融炉を用いる。
【0028】
S4は、低温半田材料が完成する。
【0029】
以上によって、母材、主材を準備してこれらを混合し、溶融・合金化することにより、本願発明に係る低温半田(Sn-Bi系、Sn-In系、Sn-Bi-In系の低温半田)を製造することが可能となる。以下順次詳細に説明する。
【0030】
図2は、本発明の低温半田材料製造装置の説明図を示す。
【0031】
図2において、半田材料1は、既述した図1のS1で準備した母材、主材であって、ここでは、金属の破片(粗粉砕したもの)である。
【0032】
半田材料投入皿2は、半田材料1を載せて溶融炉3に投入するものである。
【0033】
溶融炉3は、ヒーター4などで加熱し、内部に半田材料1を投入し、母材、主材を溶融し、攪拌して合金化するためのものである。溶融炉3は、通常は大気中で内部に投入した母材、主材を溶融し、攪拌して合金化する。この際、必要に応じて不活性ガス(窒素ガスなど)を吹き込んだりして空気中の酸素による酸化を低減したり、更に必要に応じて密閉して不活性ガスを充満(あるいは真空排気)する。
【0034】
以上のようにして、図1のS1で準備した母材、主材を混合して溶融炉3で溶融し、攪拌して合金化し、本願発明の低温半田(Sn-Bi系、Sn-In系、Sn-Bi-In系の低温半田)を製造することが可能となる。
【0035】
図3は、本発明のリード線の低温半田付け説明図を示す。
【0036】
図3の(a)はフローチャートを示し、図3の(b)は基板/リード線の例を示す。
【0037】
図3の(a)において、S11は、超音波で低温半田を基板パターンの予備半田を行う。これは、例えば太陽電池の基板(PET板0.1mmt等)に、これから半田付けしようとする部分(パターン)に、本願発明の低温半田(図1のS4で製造した低温半田)を超音波半田コテのコテ先に供給して溶融し、かつ超音波を印加して基板上の当該パターン部分に半田付け(超音波予備半田付けという)を予め行う。
【0038】
S12は、リード線を超音波ありの半田付け、又は超音波なしの半田付けする。これは、S11で例えば太陽電池の基板(PET板)の電極(例えばアルミニウム箔)の上に超音波予備半田付けした部分(パターン)に、リード線を沿わせてその上から超音波を印加しつつあるいは超音波を印加することなく、本願発明の低温半田を溶融してリード線を半田付けする。尚、低温半田がリード線に予め予備半田付けされているときは半田の供給は不要である。
【0039】
以上によって、半田付け対象の部分(例えば太陽電池の基板(PET板)の電極部分(アルミ部分))に、超音波を用いて本願発明の低温半田の予備半田を行い(S11)、予備半田を行った部分(パターン)の上に本願発明の低温半田を用いてリード線を超音波半田付け、あるいは超音波なし半田付けする(S12)ことにより、従来の半田付け不可の太陽電池の基板の電極部分(アルミ箔部分)等に、超音波有り予備半田付けしてその上にリード線を超音波有半田あるいは超音波なし半田することが可能である。
【0040】
尚、超音波半田付けは、10W以下、通常は1から3W程度で超音波半田付けを行っている。強いと太陽電池の基板の上に形成された膜(例えば窒化膜)や基板の表面の結晶を損傷したりするので、強くすることはしない。
【0041】
図3の(b)は、基板/リード線例を示す。
【0042】
図3の(b)において、基板は、PETなどの耐熱性のある樹脂基板(例えば0.1mm厚程度の柔軟性のある樹脂基板)であって、通常のハンダ付けでは半田付けが極めて困難な基板の例である。これら基板の電極(アルミ電極、銅電極など)となる部分(パターン)について、本願発明の密着性を持たせた低温半田を超音波予備半田付けする。そして、この予備半田付けした部分(パターン)に、リード線を超音波半田付け、あるいは超音波なし半田付けすることにより、リード線を基板(アルミ電極、銅電極)に半田付けすることが可能となる。
【0043】
また、リード線は、基板の上の電極の部分(パターン)に、本願発明の密着性を持たせた低温半田を用いて半田付けするリード線であって、ワイヤー(円形の銅線に本願発明の低温半田を半田メッキ(超音波半田メッキ)したワイヤー、少し楕円に潰しておくと半田付けしやすい)、リボン(銅の薄い板を1mm程度幅にカットしたリボンに、本発明の低温半田を予め半田メッキ(超音波半田メッキ)しておく)等である。
【0044】
図4は、本発明の低温半田付け説明図を示す。
【0045】
図4の(a)は予備半田付け例を示し、図4の(b)はリボン、又はワイヤーの半田付け例を示す。
【0046】
図4の(a)において、基板(例:PET板0.1mmt)11は、ここでは、太陽電池の基板の例であって、該基板11の例えば裏面の全面にアルミニウム膜(箔)12を形成したものである。
【0047】
アルミニウム膜(箔)12は、太陽電池の基板である図示の基板(PET板)11の裏面の全面にアルミ箔(膜)を形成(接着、蒸着等)した電極(アルミニウム電極)である。
【0048】
超音波半田コテ先端13は、図示外の超音波発生器から超音波を印加しつつ加熱する半田コテ先端である。
【0049】
低温半田14は、本発明の低温半田(図1のS4で製造された低温半田)である。
【0050】
次に、半田付け動作を説明する。
【0051】
(1)基板11を予備加熱台の上に搬送して真空吸着して固定し、予備加熱する(例えば130℃程度に予備加熱する)。
【0052】
(2)アルミニウム膜(箔)12の上に形成する電極のパターン(短冊状のパターン)の開始点から終了点に向けて、図示の超音波半田コテ先端13に低温半田14を自動供給して溶融しつつ超音波を印加して当該アルミニウム膜(箔)12の上を擦らない程度に近接させた状態で一定速度で移動させ、アルミニウム膜(箔)12の上に短冊状の予備半田パターンを形成する。
【0053】
以上によって、本願発明の低温半田14をアルミニウム膜(箔)12の上に所定パターンの予備半田パターンを低温半田付けすることが可能となる。
【0054】
図4の(b)は、リボン又はワイヤーの低温ハンダ付け例を示す。
【0055】
図4の(b)において、超音波半田コテ先端13ー1は、図示外の超音波発生器から超音波を印加しつつあるいは超音波を印加しないで、加熱される半田コテ先端である。
【0056】
低温半田付きリボン又はワイヤー15は、リボンまたはワイヤーに本願発明の低温半田を予め予備半田付けしたものである。尚、ワイヤー15は楕円形に少し変形させた方が半田付け性が良好である。
【0057】
次に、リボン又はワイヤーの予備半田パターン部分への半田付け動作を説明する。
【0058】
(1)図4の(a)と同様に、基板11を予備加熱する。
【0059】
(2)低温半田付きリボン又はワイヤー14を基板11の上(裏面)のアルミニウム膜(箔)12の部分に形成した予備半田パターン部分に、沿わせて配置した低温半田付きリボン又はワイヤー15について、上から超音波有又は超音波なしの半田コテ先端13ー1で軽く押さえつつ図示の右方向に一定速度で移動させ、低温半田付きリボン又はワイヤー15の半田を溶融して予備半田パターン部分に半田付けする。
【0060】
以上によって、本願発明の低温半田14を予め予備半田したリボン又はワイヤー15を、アルミニウム膜(箔)12の上の予備半田パターンの部分に半田付けすることが可能となる。
【0061】
尚、本発明の超音波有りの半田付けや超音波無しの半田付けの良否は、リボン又はワイヤーを半田付け対象部分に超音波有りの半田付けあるいは超音波無しの半田付けを行い、リボン又はワイヤーを引っ張って基板等が割れる力(曲がる力,約2~5Kg程度)より
も僅かに弱い力で引っ張り、基板等から剥がれないときに良、剥がれたときに不良と判定する。
【0062】
図5は、本発明の低温半田の組成例を示す。
【0063】
図5において、母材、主材は、図1で説明した母材、主材の区別である。
【0064】
組成例は、母材、主材の組成例である。
【0065】
wt%例は、母材、主材の組成のwt%の例である。
【0066】
wt%範囲は、母材、主材の組成のwt%の範囲例である。
【0067】
図5に図示の下記のように組成、wt%例、wt%範囲になる。
【0068】
母材 主材 備考(融点例)
組成例 Sn-Bi合金 Al P Sb In 融点:例139℃ (Inは母材に含まれる場合は除く)
Sn-In合金 融点:例120℃
SnBi-In合金 融点:例90℃
wt%例 Sn Bi In Al CuP8 Sb In
42 58 -- 0.5 0.5 0.5 0.5
52 -- 48 0.5 0.5 0.5 0.5
A A/2 A 0.5 0.5 0.5 0.5
wt%範囲 0.1 微量 0.1 0.1
| |(P) | |
1.0 0.1 1.0 1.0
総量:最大3wt%、好ましく1.0-1.5wt%以下
ここで、組成例として、試作では母材は図示のSn42wt%、Bi58wt%を用いた。また、組成範囲は、低温半田合金(Sn-Bi系、Sn-In系、Sn-Bi-In系半田合金)が作成可能な範囲で安定であればよく、例えばSn-Bi系半田合金は、Bi3wt%から58wt%、残りをSnとしたものでよく、作成した低温半田合金(母材)の溶融温度などを実測して実験で適宜選択すればよい。
【0069】
主材として、Al.P(またはCuP8),In,Bi、Sbなどがあるが、Pは試作ではP(赤リン)と、CuP8合金(Pが8wt%、残余がCuの合金、Pのwt%はCuP8の8%となるリン化銅)とを用いた。Pの場合には約0.1wt%(またはCuP8の場合には約P=0.16wt%)で飽和、更に添加すると粘性が大幅に増大してしまう。このため、流動性、濡れ性などを確保する通常の使用には、Pの飽和以下の添加を行うことが望ましい(Pの添加量は他の材料に比して10分の1程度(好ましくは0.1wt%から0.01wt%程度)でよい)。同様に、他の主材にもその傾向があるので必要に応じて実験で最適な添加量を決めればよい。
【0070】
また、主材の総量は最大3wt%以下、好ましくは1ないし1.5wt%以下、0.1wt%以上が望ましい。この範囲内の主材の添加では、母材の熔融温度とほぼ同じあるいはほんの少し低い程度である。
【0071】
図6は、本発明の低温半田の試作例を示す。図示は、多数を試作したうち、既述した図4の半田付けに使用可能なものの例を示す。使用不可のものは省略した。
【0072】
図6において、本発明の低温半田(図1のS4で製造した低温半田)の母材は、
・Sn52/In48(融点:120℃)
・Sn42/Bi58(融点:139℃)
・Sn48/Bi52(融点: )
・Sn40/In40/Bi20(融点:90℃)
の4種類を用いた。
【0073】
主材は、Al、CuP8、In(各0.5wt%)の金属の材料を用いた。CuP8はPが8wt%で残余がCuのリン化銅を用いた。
【0074】
サンプルNoは、試作したサンプルの番号である。
【0075】
以上の試作サンプルについて、既述した図5の超音波有半田付け、超音波無半田付けし、良好なもののみを記載した。半田付け不可のものは省略した。結果を図7に示す。
【0076】
図7は、本発明の低温半田の半田付け例を示す。ここで、図7中の
・超音波は、超音波ありの半田付け、超音波なしの半田付けの区別である。
【0077】
・半田付け対象物は、本発明の図7の低温半田のサンプルを用いて半田付けする対象の材料であって、Ai板(0.1mmt),Cu板(0.1mmt)、Cu線(0.3から0.4mmφ)/リボン(100μmt、50μmt、30μmt)、Siウエハー(0.2mmt)の区別である。
【0078】
・◎は、本発明の低温半田の半田付け対象物への密着優良(0.4mmφの錫メッキ線を半田付けして引っ張ったときにSiウエハーが割れる力(引っ張り強度約1から5kg程度)よりも僅かに弱い力)を表す。
【0079】
・△は、本発明の低温半田の半田付け対象への密着弱(0.4mmφの錫メッキ線を半田付けして引っ張ったときに少し力を加えるとはがれる状態)を表す。
【0080】
以上の図7の実験から、「超音波有り」の場合には、Al板、Cu板、Cu線/リボン、Siウェハーに対して十分な半田付け強度が得られることが判明した。
【0081】
また、「超音波なし」の場合には、引っ張ると剥がれてしまった。半田付け対象物の表面をきれいにすると、かなり強い密着力が得られる場合もあり、そうでない場合もあり、不安定であった。
【0082】
図8は、本発明の低温半田の半田付け例(金属ー金属)を示す。
図8の(a)は半田付け例を示す。ここでは、半田条件は図示のように、
・半田融点:約138℃
・プロセス最高温度:180℃以下
【0083】
とした。使用した低温半田は、Sn42wt%、Bi58wt%に、Al,CuP,Inを各0.5wt%添加したものである(以下図8から図13は本低温半田を使用した例を用いて説明する)。尚、他のSn-In合金、SN-Bi合金の低温半田も同様である。
【0084】
図8の(a)において、図示のように、PETペースフィルムに、Co-PET接着材を用いて図示のように、アルミ箔を接着したシートを図示の寸法に切断する。そして、図示のように、アルミ箔の面が上下に部分的に重なるようにし、当該重なる部分に本発明の低温半田(Sn-Bi低温半田)が半田付けされるように半田付けする。
【0085】
半田付け方法は、例えば上側と、下側のアルミ箔の部分に低温半田で予備半田付けする。尚、超音波を印加した半田付け(超音波半田付け)すると確実に半田付けできる。
そして、予備半田した上側のアルミ箔の上の予備半田部分と、下側のアルミ箔の予備半田部分を図示のように重ね、全体を上から半田コテ先で抑え、低温半田を熔融して半田付けする。この際、超音波半田付けすると確実に半田付けできる。
【0086】
以上のようにして、図8の(a)のように、PETペースフィルム面に接着されたアルミ箔を相互に低温半田付けすることができた。超音波無し半田付けでもできるが、確実には超音波半田付けした方が望ましい。
【0087】
図8の(b)は、半田付け写真例を示す。これらの写真は、PET面に、細長いアルミ箔を横向きに置いて、その中央部分の図示の”はんだつけ部分”のみを超音波低温半田付けした写真例を示す。図示の”はんだ付け部分”でアルミ箔が強くPET面に半田付けされた。
【0088】
次に、図9を用いて図8のPETフィルム貼り合わせ例について詳細に説明する。
図9は、本発明のPETフィルム貼り合わせ例を示す。
図9の(a)はフローチャートを示し、図9の(b)はその説明図を示す。
【0089】
図9の(a)において、S21は、スポンジへフィルムを固定する。これは、右側の(b-1)に示すように、耐熱性のスポンジに、フィルム(例えばPETフィルム)を固定する(例えば粘着剤を塗布した耐熱性のポリイミドテープで固定する)。
【0090】
S22は、コテ先にはんだを多めに付ける。これは、右側の(b-2)に示すように、コテ先に本発明の低温半田を多めに付ける。
S23は、コテ先がフィルムに当たらないように超音波ではんだ付けする。
【0091】
S24は、片方のフィルムを裏返して、もう片方のはんだ面を重ねる。これは、右側の(b-3)に示すように、予備半田したフィルム面が重なるように重ねる。
【0092】
S25は、銅板をはんだ付け面積サイズカットする。
S26は、銅板をアイロンのようにコテ先で押さえる、
S27は、溶けたハンダが端からあふれるものを確認し、完成する。これらS26,S27は、右側の(b-4)に示すように、熱伝導性良好な銅板の上からコテ先(超音波有り)で押さえる付けると予備半田した接合面の低温半田が溶けて端からあふれる程度にする。これにより、コテ先を直接にフィルムにあてると当該フィルムが熔融したり、やわらかくなって収縮したりなどすること無く、アイロンをかけたように綺麗に超音波低温半田付けできた。
【0093】
図9の(c)は、半田付け条件例を示す。既述した図9の(a),(b)の半田付け条件例を示す。ここでは、下記の条件に設定した。
・コテ先温度 :175℃±5℃
・スライダック設定値:14
・敷材 :ポロンスポンジ
・超音波出力 :10W
【0094】
図9の(d)は、半田付けの断面図を示す。これは、図9の(a)の銅板の代わりに、ポリイミドテープを介してPET面に接合されたアルミ箔(Al)(超音波予備半田付け済)を、相互に超音波低温半田付けした場合の断面模式図を示す。この場合、半田付けする部分のみを囲むように、粘着材塗布したポリイミドテープを貼り付けておくと、不要な部分に低温半田つけされるのを防止できる。
【0095】
図10は、本発明の低温半田の敷材実験例を示す。これは、既述した図8図9の条件のもとで、超音波有り、超音波なしで半田付けしたときの例を示す。本願の低温半田付けでは、例えば下記のような結果が得られた。
【0096】
No.材質 備考(桂城、硬さ、表面状態など)
・3 SUS板 予備加熱すれば、低温半田付け可
(超音波半田付け、以下同様)
・4 カッティングボード 予備加熱なしで低温半田付け可
・5 MDF 同上
・6 コルクボード 同上
・7 アクリル板 同上
・9 EPDMスポンジゴム 同上
・10 NRスポンジゴム 同上
・11 ボロンスポンジ 同上
・12 NRゴムシート 予備加熱すれば、低温半田付け可
【0097】
以上のようなセルロース/樹脂材についても、本発明の低温半田で半田付け可能である
ことが判明した(必要に応じて超音波半田付け、予備加熱(熔融温度より10度程度低い温度)して半田付けする)。
【0098】
図10の(b)は、図10の(a)の敷材の写真例を示す。
図11は、本発明の低温半田の接合テスト結果例を示す。ここで、実験結果は、下記を表す。
*1:接合可否:0.2mmφワイヤーを接合して300g以上の密着力を〇と判定し
た。
*2:US無表示は、超音波無しでも密着可
*3:29のPETはプロプスカイト用のNo.1候補である。
【0099】
図11の図中に示す金属(1 銀、2 銅、3 アルミニウムなど)は、超音波有り、超音波無しで低温半田付け可能であった。
また、図11の図中に示す酸化物を焼成して形成した無機材(7 アルミナ、8 チタン酸バリウム、10 炭化ケイ素、11 窒化ケイ素、12 蛍石、13 石英、14 セラミック(陶器)など)は、、超音波有り、超音波無しで低温半田付け可能であった。
【0100】
また、図11の図中に示すセルロース/樹脂類(16 ポリエチレン、17 ポリプロ
ピレン、・・・、29 PETなど)は、、超音波有りで低温半田付け可能であった。この他に、既述した図10に示す、4 カッティングボード、6 コルクボードなどが超音波半田付け可能であった。
【0101】
図12は、本発明の超音波出力の敷材実験例(予備加熱なし)を示す。
図12の(a)は、実験条件例を示す。ここでは、下記の実験条件で実験した。
・コテ先温度:180±5℃
・スライダック設定値(V):14
・サンボンダ表示温度(℃):180±5
・敷材 :ボロンスポンジ
【0102】
図12の(b)は、超音波出力の実験結果例を示す。ここで、横方向の項目は下記をそれぞれ表す。
・超音波出力(W)は、コテ先に印加する超音波電力Wを示す。
・半田付け性は、作業性、はんだの乗りの良さなどを示す。
・曲げ時の密着は、フィルムを曲げた際のはがれ方で判断した。
・フィルム影響は、はんだコテを当てた時のダメージの入り方を示す。
【0103】
以上のうち超音波出力(W)を1,2,3・・・・10まで変化させたときの、他の3項目について実験したところ、図12の(b)に示す実験結果が得られた。
この実験結果から、超音波出力約7W以上(好ましくは10W程度)で3つの項目につ
いて良好な結果(超音波半田付け結果)が得られることが判明した。
【0104】
図13は、本発明の低温半田の温度サイクルテスト例を示す。これは、温度サイクルテストの337.8Hにおける中間結果を示す。この中間結果の時点では、超音波半田付け、超音波無し半田付けのいずれも、実験開始時と中間結果時とでは密着性に変化は認められなかった。
【図面の簡単な説明】
【0105】
図1】本発明の低温半田製造説明図である。
図2】本発明の低温半田材料製造装置の説明図である。
図3】本発明のリード線の低温半田付け説明図である。
図4】本発明の低温半田付け説明図である。
図5】本発明の低温半田の組成例である。
図6】本発明の低温半田の試作例である。
図7】本発明の低温半田の半田付け例である。
図8】本発明の低温半田の半田付け例(金属ー金属)である。
図9】本発明のPETフィルム貼り合わせ例である。
図10】本発明の低温半田の敷材実験例である。
図11】本発明の低温半田の接合テスト結果例である。
図12】本発明の超音波出力の敷材実験例(予備加熱なし)である。
図13】本発明の低温半田の温度サイクルテスト例である。
【符号の説明】
【0106】
1:半田材料
2:半田材料投入皿
3:溶融炉
4:ヒーター
11:基板(例:PET板0.1mmt)
12:アルミニウム膜(箔)
13、13ー1:超音波半田コテ先端
14:低温半田
15:低温半田付きリボン又はワイヤー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13