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特許7576820有機廃棄物の油化処理装置及び油化処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】有機廃棄物の油化処理装置及び油化処理方法
(51)【国際特許分類】
   C10G 1/10 20060101AFI20241025BHJP
【FI】
C10G1/10
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020113125
(22)【出願日】2020-06-30
(65)【公開番号】P2022011771
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-06-26
(73)【特許権者】
【識別番号】510075387
【氏名又は名称】活水プラント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188765
【弁理士】
【氏名又は名称】赤座 泰輔
(74)【代理人】
【識別番号】100112900
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 路子
(74)【代理人】
【識別番号】100136995
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 千織
(74)【代理人】
【識別番号】100163164
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 敏之
(72)【発明者】
【氏名】飯田 克己
(72)【発明者】
【氏名】飯田 祐史
(72)【発明者】
【氏名】飯田 倫之
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-136672(JP,A)
【文献】特開2018-184517(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 1/10
C08J 11/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機廃棄物を収容して加熱される加熱容器と、該加熱容器を覆い該加熱容器を燃料の燃焼により加熱する燃焼室と、加熱されることによって該有機廃棄物から生じた廃棄物由来ガスを凝縮させる凝縮装置と、を備える油化処理装置であって、
該加熱容器は、円筒状をなし、容器本体が軸の方向が水平方向と略平行となるように配置され、該軸を中心に回動可能であるとともに、該容器本体の内周面側に該有機廃棄物を撹拌する撹拌羽根を備え、
該加熱容器の左右それぞれの底面の外面に回動軸を備え、該加熱容器内に該有機廃棄物から生じた該廃棄物由来ガスを吸入する吸入口を備え、該廃棄物由来ガスを導出する導出管が、該吸入口から一方の該回動軸の中を通り該凝縮装置に連結されていることを特徴とする油化処理装置。
【請求項2】
前記凝縮装置が、凝縮しない揮発油を排出する気体出口を備え、該揮発油を前記燃焼室に導風する導風装置を備えることを特徴とする請求項に記載の油化処理装置。
【請求項3】
前記導風装置が吸引能力を有するアスピレータを備え、該アスピレータの吸引口が前記凝縮装置の前記気体出口に接続されていることを特徴とする請求項に記載の油化処理装置。
【請求項4】
前記燃焼室を形成する側壁面に前記燃料を投入する燃料投入口が設けられ、該燃料を溜めて投入するホッパー容器が該側壁面の外側に沿って移動可能であるとともに該燃料投入口に対して離合可能に備えられ、該ホッパー容器の隣合う移動面上に該燃料投入口を遮蔽する遮蔽板が連結され、
該ホッパー容器が該燃料投入口に対して離れたとき、該燃料投入口を該遮蔽板が遮蔽することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の油化処理装置。
【請求項5】
前記ホッパー容器の燃料入口に、該燃料入口を開閉可能な蓋が備えられていることを特徴とする請求項4に記載の油化処理装置。
【請求項6】
前記燃料投入口が設けられた前記側壁面の上側が前記燃焼室の内方向に傾斜していることを特徴とする請求項4又は5に記載の油化処理装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の油化処理装置を用いた油化処理方法であって、前記燃料がバイオマス燃料であることを特徴とする油化処理方法。
【請求項8】
前記バイオマス燃料が建築廃木材粉砕物又は木材加工廃棄物であることを特徴とする請求項7に記載の油化処理方法。
【請求項9】
請求項1~6のいずれかに記載の油化処理装置を用いた油化処理方法であって、前記有機廃棄物が廃プラスチックであることを特徴とする油化処理方法。
【請求項10】
請求項に記載の油化処理装置を用いた油化処理方法であって、前記アスピレータの吸引力により、前記加熱容器内を負圧にした状態で行なうことを特徴とする油化処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機廃棄物を熱分解し、有機廃棄物から熱分解された炭化水素油成分を回収する油化処理装置及び油化処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機廃棄物として使用済みプラスチックを熱分解し、プラスチックから熱分解された炭化水素油成分を回収する油化処理装置として、プラスチックを熱分解させる気化容器と、気化容器を加熱する加熱手段と、気化したプラスチックを冷却して凝縮させる凝縮器と、を備え、炭化水素油を生成する油化処理装置が、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開WO2017/048049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載された油化処理装置は、加熱手段が気化容器の底壁部を加熱するため、加熱される有機廃棄物としてのプラスチックに加熱ムラが生じ、有機廃棄物を熱分解させる効率が良くないという課題があった。
【0005】
本発明は、上記にかんがみて、効率良く有機廃棄物を熱分解させることができる油化処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る油化処理装置は、有機廃棄物を収容して加熱される加熱容器と、該加熱容器を覆い該加熱容器を燃料の燃焼により加熱する燃焼室と、加熱されることによって該有機廃棄物から生じた廃棄物由来ガスを凝縮させる凝縮装置と、を備える油化処理装置であって、
該加熱容器が、該有機廃棄物を撹拌する撹拌羽根を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の油化処理装置によれば、加熱容器に収容された有機廃棄物は、加熱容器を覆う燃焼室によって加熱され、有機廃棄物から廃棄物由来ガスが発生する。廃棄物由来ガスは、凝縮装置で凝縮され、液体の再生油として回収され、再利用することができる。有機廃棄物を収容して加熱される加熱容器は、有機廃棄物を撹拌可能な撹拌羽根を備えている。このため、有機廃棄物を加熱容器中で加熱する際に、有機廃棄物を加熱しながら撹拌することができる。つまり、加熱される有機廃棄物に加熱ムラが生じることを抑制し、有機廃棄物を熱分解させる効率を良いものとすることができる。
【0008】
ここで、上記油化処理装置において、前記加熱容器は、円筒状をなし、容器本体が軸の方向が水平方向と略平行となるように配置され、該軸を中心に回動可能であるとともに、該容器本体の内周面側に撹拌羽根を備える構成とすることができる。
【0009】
これによれば、有機廃棄物を収容して加熱される加熱容器は、軸の方向が水平方向と略平行となるように配置され、軸を中心に回動可能であり、容器本体の内周面側に、有機廃棄物を撹拌可能な撹拌羽根を備えている。加熱容器は、有機廃棄物を加熱しながら撹拌することができるため、加熱される有機廃棄物に加熱ムラが生じることを抑制し、有機廃棄物を熱分解させる効率を良いものとすることができる。
【0010】
また、上記油化処理装置において、円筒状の前記加熱容器のそれぞれの底面の外面に回動軸を備え、該加熱容器内に前記有機廃棄物から生じた前記廃棄物由来ガスを吸入する吸入口を備え、該廃棄物由来ガスを導出する導出管が、該吸入口から一方の該回動軸の中を通り前記凝縮装置に連結されている構成とすることができる。
【0011】
これによれば、ガスを導出する導出管が回動軸の中を通り凝縮装置に連結されるため、加熱容器を回動させたまま廃棄物由来ガスを凝縮装置に導出することができる。
【0012】
また、上記油化処理装置において、前記加熱容器は、円筒状をなし、容器本体が軸の方向が水平方向と略平行となるように固定され、該容器本体を貫通し該軸の方向を中心に回動可能な回動軸を備え、
該回動軸は、該容器本体の内部に、該回動軸から該容器本体の半径方向に延設された複数の撹拌羽根を備える構成とすることができる。
【0013】
これによれば、有機廃棄物を収容して加熱される加熱容器は、軸の方向が水平方向と略平行となるように固定され、軸の方向を中心に回動可能な撹拌羽根を備える回動軸(ミキサー羽根)を備えている。このため、有機廃棄物を加熱容器中で加熱する際に、ミキサー羽根を回動させることにより、有機廃棄物を撹拌しながら加熱することができる。このため、加熱される有機廃棄物に加熱ムラが生じることを抑制し、有機廃棄物を熱分解させる効率を良いものとすることができる。
【0014】
また、上記油化処理装置において、前記凝縮装置が、凝縮しない揮発油を排出する気体出口を備え、該揮発油を前記燃焼室に導風する導風装置を備える構成とすることができる。
【0015】
これによれば、凝縮装置が凝縮させることができなかった揮発油を燃焼室に導風し、揮発油を分解又は燃焼させることができる。
【0016】
また、上記油化処理装置において、前記導風装置が吸引能力を有するアスピレータを備え、該アスピレータの吸引口が前記凝縮装置の前記気体出口に接続されている構成とすることができる。
【0017】
これによれば、アスピレータの吸引力により、凝縮装置を介して加熱容器内を負圧にすることができ、有機廃棄物の酸化を抑制した油化処理を行なうことができる。
【0018】
また、本発明に係る油化処理装置は、有機廃棄物を収容して加熱される加熱容器と、該加熱容器を覆い該加熱容器を燃料の燃焼により加熱する燃焼室と、加熱されることによって該有機廃棄物から生じた廃棄物由来ガスを凝縮させる凝縮装置と、を備える油化処理装置であって、
該燃焼室を形成する側壁面に該燃料を投入する燃料投入口が設けられ、該燃料を溜めて投入するホッパー容器が該側壁面の外側に沿って移動可能であるとともに該燃料投入口に対して離合可能に備えられ、該ホッパー容器の隣合う移動面上に該燃料投入口を遮蔽する遮蔽板が連結され、
該ホッパー容器が該燃料投入口に対して離れたとき、該燃料投入口を該遮蔽板が遮蔽することを特徴とする。
【0019】
本発明の油化処理装置によれば、加熱容器を燃料の燃焼により加熱する燃焼室の燃料投入口に、離合可能なホッパー容器が備えられている。燃料投入口にホッパー容器が合わさった際には、ホッパー容器が燃焼室に燃料を投入し、燃料投入口からホッパー容器が離れた際には、遮蔽板が燃料投入口を遮蔽する。つまり、燃料投入口から熱が逃げることを抑制し、有機廃棄物を熱分解させる効率を良いものとすることができる。
【0020】
また、上記油化処理装置において、前記ホッパー容器の燃料入口に、該燃料入口を開閉可能な蓋が備えられている構成とすることができる。
【0021】
これによれば、燃焼室に燃料を投入する際に、燃料入口を蓋で閉じることにより、燃焼室の熱が外に逃げることを抑制することができ、有機廃棄物を熱分解させる効率を良いものとすることができる。
【0022】
また、上記油化処理装置において、前記燃料投入口が設けられた前記側壁面の上側が前記燃焼室の内方向に傾斜している構成とすることができる。
【0023】
これによれば、燃料投入口を遮蔽板が遮蔽する際に、燃料投入口に遮蔽板の質量が圧し掛かるため、燃料投入口をより遮蔽することができる。
【0024】
ここで、上記油化処理装置を用いた油化処理方法であって、前記燃料がバイオマス燃料であるものとすることができる。
【0025】
これによれば、バイオマス燃料が二酸化炭素総排出量を抑制することができる燃料であるため、環境破壊を抑制しつつ油化処理方法を行なうことができる。
【0026】
また、上記油化処理装置を用いた油化処理方法であって、前記アスピレータの吸引力により、前記加熱容器内を負圧にした状態で行なうものとすることができる。
【0027】
これによれば、加熱容器内の有機廃棄物の酸化を抑制した油化処理方法(乾留油化処理方法)を行なうことができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の油化処理装置によれば、加熱される有機廃棄物に加熱ムラが生じることを抑制し、有機廃棄物を熱分解させる効率を良いものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の第一実施形態の油化処理装置の正面図である。
図2】同右側面図である。
図3】第二実施形態の油化処理装置の正面図である。
図4】同右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(第一実施形態)
以下、本発明の油化処理装置の第一実施形態について説明する。図1及び図2に示すように、第一実施形態の油化処理装置は、有機廃棄物としての廃プラスチックWPを収容して加熱される加熱容器1と、加熱容器1を覆い加熱容器1をバイオマス燃料BFの燃焼により加熱する燃焼室6と、加熱されることによって廃プラスチックWPの熱分解から生じた廃棄物由来ガスWGを凝縮させる凝縮装置5と、を備える。なお、本明細書において、油化処理装置の向きは、図1及び図2に示すように、燃焼室6の燃料投入口63を有する側を前とし、点火バーナ62を有する側を後とする。上下左右は、油化処理装置を前側から見た際の上下左右とし、図示で使用する、FRは前、REは後、UPは上、DOは下、LEは左、RIは右を示す。
【0031】
図1に示すように、加熱容器1は、円筒状をなし、容器本体11が回動軸12,13の方向を水平方向とするように配置され、回動軸12,13を中心に回動可能に構成されている。容器本体11が回動することによって、廃プラスチックWPは、容器本体11の中を転動しながら、加熱される。このため、廃プラスチックWPに加わる熱が一部の廃プラスチックWPに集中することがなく、廃プラスチックWPは、加熱ムラを生じることが抑制され、熱分解の効率が良いものとなる。また、加熱容器1は、容器本体11の内周面側に撹拌羽根14を備えているため、廃プラスチックWPを容易に転動させることができ、加熱ムラを生じることがより抑制され、熱分解の効率がより良いものとなる。容器本体11の左側の底面11aには、廃プラスチックWPを搬入し、熱分解後の炭化した廃プラスチックWP搬出する、開閉口15が2つ備えられている。
【0032】
加熱容器1は、油化処理装置に備えられた回動装置3によって、回動される。回動装置3は、油化処理装置の基台37の左右にそれぞれ備えられた軸受31,32が、加熱容器1の容器本体11の左右それぞれの底面11aの外面に取り付けられた回動軸12,13を軸支し、基台37の右側に備えられたモータ35がチェーンリング33,34とチェーン36を介して回動軸13つまり加熱容器1を回動させる構成になっている。加熱容器1の回動は、モータ35の出力の調整により、1~20rpmに調整可能としている。
【0033】
加熱容器1は、収容された廃プラスチックWPを加熱して熱分解させる容器である。加熱容器1は、熱源となる燃焼室6とは熱の伝導以外は物理的に隔離されている。このため、加熱される廃プラスチックWPは、酸化・燃焼されることなく、熱分解され、廃棄物由来ガスWGを発生させる。
【0034】
図2に示すように、廃プラスチックWPから発生した廃棄物由来ガスWGは、加熱容器1内に設置された導出管4の吸入口42から吸入され、凝縮装置5に移送され、冷却される。廃棄物由来ガスWGのうち、凝縮装置5で冷却され液化した油滴ODは、再生油として回収され再利用することができる。また、廃棄物由来ガスWGのうち、凝縮装置5で冷却されても凝縮しない揮発油VOは、導風装置7のアスピレータ72によって減圧吸引されて、最終的には、燃焼室6に移送され、分解又は燃焼される。
【0035】
導出管4は、加熱容器1から廃棄物由来ガスWGを凝縮装置5に移送する配管であり、凝縮装置5の下流に設けられた導風装置7のアスピレータ72の吸引能力によって、加熱容器1から廃棄物由来ガスWGが吸引され、凝縮装置5に移送される。図1に示すように、導出管4は、加熱容器1内の右上側に、廃棄物由来ガスWGを吸引する吸入口42を設け、吸入口42内に、異物を除去するストレーナ42aを備え、吸入口42から配管41が加熱容器1の右の回動軸13の中を通り、図2に示す如く、凝縮装置5の導入口52に接続される。回動軸13の中の配管41は、図示しないベアリングによって加熱容器1の回動を阻害しないように構成されている。配管41には、廃棄物由来ガスWGの温度を測定する温度計43が設けられている。
【0036】
凝縮装置5は、導出管4によって導出された廃棄物由来ガスWGを冷却器としてのラジエータ51によって冷却し、冷却され液化した油滴ODを再生油として回収する装置である。凝縮装置5のラジエータ51は、導入口52から導入された廃棄物由来ガスWGを冷却し、冷却され液化した油滴ODが液体出口53から回収槽55へ流出され、冷却されても凝縮しない揮発油VOが気体出口54から燃焼室6に移送する導風装置7へ送られ、液体と気体とが分離される。液体出口53は、ラジエータ51の下方に設けられ、下方に溜まった油滴ODを排出する。気体出口54は、ラジエータ51の液体出口53より上側に設けられ、上側に残留する揮発油VOを排出する。ラジエータ51は、冷却水が冷却水入口51aから流入しラジエータ51の内部を循環しながらラジエータ51を冷却し、冷却水出口51bから排出される。ラジエータ51には、上方の気体(揮発油VO)の圧力を測定する圧力計44が設けられている。
【0037】
導風装置7は、廃棄物由来ガスWGのうち、凝縮装置5で冷却されても凝縮しなかった揮発油VOを、燃焼室6に移送する装置である。揮発油VOは、燃焼室6に移送されることによって、燃焼室6の高熱に晒され、分解又は燃焼される。導風装置7は、アスピレータ72の吸引能力によって凝縮装置5内の揮発油VOを吸引し、さらには、凝縮装置5と導出管4を介して連通する加熱容器1内を減圧させる。アスピレータ72は、送風機71の送風力により吸引力を発揮し、凝縮装置5内の揮発油VOを吸引し、送風機71の送風と共に揮発油VOを燃焼室6に導風する。
【0038】
加熱容器1を加熱する燃焼室6は、図1に示すように、加熱容器1をその左右両端部を除いて覆い、燃焼室本体61内でバイオマス燃料BFを燃焼させることによって、加熱容器1を加熱する。燃焼室6の前方には、燃料としてのバイオマス燃料BFが投入される燃料投入口63が設けられ、後述する投入機8によってバイオマス燃料BFが投入される。図2に示すように、燃料投入口63が設けられた燃焼室本体61の前側の側壁面は、上側が燃焼室6の内側に傾斜し、その傾斜角αは25°としている。これにより、後述する投入機8の遮蔽板82が燃料投入口63を遮蔽する際に、燃料投入口63に遮蔽板82の質量が圧し掛かるため、燃料投入口63を熱から遮蔽することができる。燃焼室6の後方には、バイオマス燃料BFに着火を行う点火バーナ62を備え、送風機71の送風と共に、凝縮装置5から吸引した揮発油VOを燃焼室6に移送する導風口73を備えている。燃焼室6の下側には、バイオマス燃料BFを下から支えて空気の循環を良くする火格子64が設けられ、燃焼したバイオマス燃料BFの燃えカスを燃焼室6の外に排出する灰排出口66が設けられている。燃焼室6の上側には、煙を排出する排気口65が設けられている。
【0039】
投入機8は、燃焼室6の燃料投入口63にバイオマス燃料BFを投入するホッパー容器81と、ホッパー容器81の上側に連結され燃料投入口63を遮蔽可能な遮蔽板82と、ホッパー容器81と遮蔽板82とを上下方向に移動可能にするリフト装置83と、から構成される。リフト装置83は、図示しない油圧シリンダによって上下方向に移動可能としている。ホッパー容器81の開口には、バイオマス燃料BF投入時に燃焼室6からの熱を隔離する蓋81aが設けられている。図2に示す如く、ホッパー容器81が燃料投入口63の下側に配置されたとき、燃料投入口63は、ホッパー容器81の上側に連結された遮蔽板82によって遮蔽される。このとき、蓋81aを開放し、ホッパー容器81にバイオマス燃料BFを充填することができる。リフト装置83によって、ホッパー容器81が燃料投入口63に併合する位置まで上昇したとき(図示せず)、ホッパー容器81に充填されたバイオマス燃料BFが燃料投入口63から燃焼室6に投入される。このとき、ホッパー容器81は蓋81aで閉塞されているため、燃焼室6内の熱が燃焼室6外に漏れるのを抑制される。ホッパー容器81へのバイオマス燃料BFの充填と、ホッパー容器81を上昇させてのバイオマス燃料BFの燃焼室6への投入と、を繰り返すことにより、投入機8は、バイオマス燃料BFの投入を繰り返すことができる。
【0040】
油化処理装置は、燃料にバイオマス燃料BFを使用することによって、環境破壊を抑制しつつ油化処理を行なうことができる。バイオマス燃料BFは、その原材料の成長過程において二酸化炭素を吸収しているため、二酸化炭素総排出量を抑制することができるためである。
【0041】
次に、第一実施形態の油化処理装置の動作について説明する。加熱容器1の容器本体11に収容された廃プラスチックWPは、開閉口15から加熱容器1に搬入され、加熱容器1の回動と容器本体11の内周面の撹拌羽根14によって撹拌されながら、燃焼室6のバイオマス燃料BFの燃焼によって加熱される。廃プラスチックWPは、撹拌されることにより、加熱ムラが抑制され、均等に加熱され、加熱の熱効率に優れるものとなる。廃プラスチックWPは、導出管4の下流に備えられた導風装置7のアスピレータ72の吸引力によって容器本体11内が減圧され、その状態で加熱されるため、酸化が抑制された状態で熱分解が進行する。廃プラスチックWPは、熱分解により廃棄物由来ガスWGを発生する。廃プラスチックWPから発生した廃棄物由来ガスWGは、酸化が抑制されているため、劣化(酸化)が少ないものとなる。
【0042】
廃プラスチックWPから発生した廃棄物由来ガスWGは、導風装置7のアスピレータ72の吸引によって、導出管4を経て、凝縮装置5に導入される。凝縮装置5に導入された廃棄物由来ガスWGは、ラジエータ51で冷却され、凝縮し、油滴ODとなる。油滴ODは、再生油として回収され、再利用することができる。廃棄物由来ガスWGのうち、ラジエータ51で冷却されても凝縮しなかった揮発油VOは、導風装置7のアスピレータ72によって吸引され、送風機71からの送風と共に、燃焼室6に移送され、分解又は燃焼される。
【0043】
廃プラスチックWPは、酸化が抑制されて廃棄物由来ガスWGを排出して、炭化し、開閉口15から搬出される。炭化した廃プラスチックWPは、炭(カーボン)を多く含み、燃料や土壌改良剤などとして使用することができるものとなる。
【0044】
燃焼室6では、バイオマス燃料BFを燃焼させ、加熱容器1を加熱する。燃焼開始時は、燃焼室6の後方に備えられた点火バーナ62を用いて、着火が行われる。燃焼が安定すると、点火バーナ62は消され、導風装置7の送風機71の送風によって空気が燃焼室6内に移送され、バイオマス燃料BFの燃焼が継続される。燃焼によって、廃プラスチックWPから廃棄物由来ガスWGが発生し、廃棄物由来ガスWGのうちの凝縮しなかった揮発油VOが導風装置7のアスピレータ72によって吸引され、送風機71からの送風と共に、燃焼室6に移送され、分解又は燃焼される。
【0045】
バイオマス燃料BFは、リフト装置83を用いて、バイオマス燃料BFが充填されたホッパー容器81を、燃料投入口63に併合する位置まで上昇させることによって、燃料投入口63から燃焼室6に投入される。このとき、ホッパー容器81は蓋81aで閉塞されているため、燃焼室6内の熱が燃焼室6外に漏れるのを抑制する。リフト装置83を用いて、ホッパー容器81を下降させることにより、ホッパー容器81は、燃料投入口63から隔離され、ホッパー容器81にバイオマス燃料BFを充填させることができる。このとき、燃料投入口63は、遮蔽板82によって遮蔽され、燃焼室6の熱を外に漏らすことを抑制することができる。ホッパー容器81へのバイオマス燃料BFの充填と、ホッパー容器81を上昇させてのバイオマス燃料BFの燃焼室6への投入と、を繰り返すことにより、投入機8は、バイオマス燃料BFの燃焼室6への投入を繰り返すことができる。
【0046】
(第二実施形態)
次に、本発明の第二実施形態について説明する。第二実施形態の油化処理装置は、第一実施形態の油化処理装置と比較して、加熱容器101の構成が異なり、加熱容器101が回動することなく燃焼室6に固定され、加熱容器101内に、廃プラスチックWPを撹拌するミキサー102が設置されている。その他については第一実施形態の油化処理装置と同じである。なお、第二実施形態において、第一実施形態と共通する要素については、同じ符号を用いてその説明を省略する。
【0047】
図3及び図4に示すように、第二実施形態の油化処理装置の加熱容器101は、円筒状をなし、容器本体111が軸方向を水平方向とするように固定される。加熱容器101内に、軸方向を中心に回動可能な回動軸121を備え、回動軸121は、容器本体111を貫通し、容器本体111の左右両方向(軸方向の両方向)に突出し、基台37の左右にそれぞれ設けられた軸受31,32に回動可能に軸支される。回動軸121は、容器本体111の内側に、半径方向に延設された複数の撹拌羽根122を備え、回動軸121と複数の撹拌羽根122が廃プラスチックWPを撹拌するミキサー102を形成する。ミキサー102は、基台37の右側に備えられたモータ35がチェーンリング33,34とチェーン36を介して回動軸121つまりミキサー102を回動させる構成になっている。ミキサー102の回動は、モータ35の出力の調整により、1~20rpmに調整可能としている。
【0048】
加熱容器101の容器本体111に収容された廃プラスチックWPは、ミキサー102の撹拌羽根122によって撹拌されながら、燃焼室6のバイオマス燃料BFの燃焼によって加熱される。廃プラスチックWPは、撹拌羽根122によって撹拌されることにより、加熱ムラが抑制され、均等に加熱され、加熱の熱効率に優れるものとなる。
【実施例
【0049】
(実施例1)
実施例1では、第一実施形態の油化処理装置である下記の構成の油化処理装置Aを用いた。
【0050】
加熱容器1 φ500mm(外径500mm)×L900mm 容量160L
回動装置3 0.75kWのモータ35を用いて加熱容器1の回転数を5rpmに調整
ラジエータ51(凝縮装置5) 25A(内径25mm)×L300mm×12本
ラジエータ51冷却水ポンプ 40L/min
アスピレータ72(導風装置7) 65A(エアー入口)×50A(吸引口)×50A(出口)
送風機71(導風装置7) 6m3/min
廃プラスチックWP及びバイオマス燃料BFには、以下のものを使用した。
【0051】
廃プラスチックWP 使用済みポリエチレン容器粉砕物10kg及び廃タイヤ(自動車用)粉砕物10kgの混合物
バイオマス燃料BF 建築廃木材粉砕物400L(約160kg)
実施例1では、廃プラスチックWPを加熱容器1に投入し、2時間かけてバイオマス燃料BFを燃焼させたところ、油滴OD(再生油)として灯油・軽油クラスの油8Lが得られた。加熱容器1には、残留物として、最大10mm程度の炭を主成分とする粒子が3kg、廃タイヤに含まれるスチールワイヤ1.5kgが得られた。
【0052】
(実施例2)
実施例2では、第二実施形態の油化処理装置である下記の構成の油化処理装置Bを用いた。
【0053】
加熱容器101 φ500mm(外径500mm)×L900mm 容量160L
ミキサー102 左右方向に3枚の撹拌羽根122を回動軸121の周方向90°毎に4列配列
回動装置3 0.75kWのモータ35を用いてミキサー102の回転数を5rpmに調整
ラジエータ51(凝縮装置5) 25A(内径25mm)×L300mm×12本
ラジエータ51冷却水ポンプ 40L/min
アスピレータ72(導風装置7) 65A(エアー入口)×50A(吸引口)×50A(出口)
送風機71(導風装置7) 6m3/min
廃プラスチックWP及びバイオマス燃料BFには、以下のものを使用した。
【0054】
廃プラスチックWP 自動車シュレッダーダスト20kg
バイオマス燃料BF 木材加工廃棄物400L(約160kg)
実施例2では、廃プラスチックWPを加熱容器101に投入し、2時間かけてバイオマス燃料BFを燃焼させたところ、油滴OD(再生油)として灯油・軽油クラスの油10Lが得られた。加熱容器1には、残留物として、最大10mm程度の炭を主成分とする粒子が5kg得られた。
【0055】
(その他実施形態)
実施形態の油化処理装置は、以下のような形態であっても実施することができる。
【0056】
実施形態の油化処理装置の投入機8には、ホッパー容器81と遮蔽板82とを上下方向に移動可能にするリフト装置83を用いたが、リフト装置として、左右方向に移動可能なリフト装置を用いることもできる。この場合、ホッパー容器81と遮蔽板82は、左右に連結される。
【0057】
実施形態の油化処理装置の燃料投入口63が設けられた燃焼室本体61の前側の側壁面は、上側が燃焼室6の内側に傾斜し、その傾斜角αは25°としているが、傾斜角αは5~40°であれば、燃料投入口63に遮蔽板82の質量が圧し掛かるため、燃料投入口63からの熱を遮蔽することができる。より好ましくは、傾斜角αは10~35°であり、さらに好ましくは、20~30°である。
【0058】
実施形態の油化処理装置ではバイオマス燃料BFとして建築廃木材粉砕物及び木材加工廃棄物を使用したが、バイオマス燃料BFとして食用油廃棄物、穀物油なども使用することができる。また、加熱容器1を加熱する燃料は、バイオマス燃料BFに限定さるものではなく、汎用の燃料(都市ガス、プロパンガスなど)であっても使用することができる。
【0059】
実施形態の油化処理装置では廃プラスチックWP(有機廃棄物)として、使用済みポリエチレン容器粉砕物、廃タイヤ粉砕物及び自動車シュレッダーダストを使用したが、廃プラスチックWPは特に限定されることなく使用することができるものであり、資源ごみとして回収されるプラスチックや医療廃棄物に含まれるプラスチックなどを有効に使用することができる。
【0060】
実施形態の油化処理装置では有機廃棄物として、使用済みポリエチレン容器粉砕物、廃タイヤ粉砕物及び自動車シュレッダーダストを使用したが、有機廃棄物として木材などの木質を使用することもできる。この場合、再生油として木酢液を回収することができる。
【符号の説明】
【0061】
1…加熱容器、3…回動装置、4…導出管、5…凝縮装置、6…燃焼室、7…導風装置、8…投入機、11…容器本体、11a…底面、12…回動軸、13…回動軸、14…撹拌羽根、15…開閉口、31…軸受、32…軸受、33…チェーンリング、34…チェーンリング、35…モータ、36…チェーン、37…基台、41…配管、42…吸入口、42a…ストレーナ、43…温度計、44…圧力計、51…ラジエータ、51a…冷却水入口、51b…冷却水出口、52…導入口、53…液体出口、54…気体出口、55…回収槽、61…燃焼室本体、62…点火バーナ、63…燃料投入口、64…火格子、65…排気口、66…灰排出口、71…送風機、72…アスピレータ、73…導風口、81…ホッパー容器、81a…蓋、82…遮蔽板、83…リフト装置、101…加熱容器、102…ミキサー、111…容器本体、121…回動軸、122…撹拌羽根、BF…バイオマス燃料、OD…油滴、VO…揮発油、WG…廃棄物由来ガス、WP…廃プラスチック、α…傾斜角。
図1
図2
図3
図4