(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】インサータ
(51)【国際特許分類】
A61F 2/46 20060101AFI20241025BHJP
A61F 2/44 20060101ALI20241025BHJP
【FI】
A61F2/46
A61F2/44
(21)【出願番号】P 2020149481
(22)【出願日】2020-09-04
【審査請求日】2023-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】591043879
【氏名又は名称】株式会社木下技研
(74)【代理人】
【識別番号】100135220
【氏名又は名称】石田 祥二
(72)【発明者】
【氏名】木下 恵介
【審査官】寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0076557(US,A1)
【文献】特表2019-510572(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0177275(US,A1)
【文献】特表2005-538821(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/46
A61F 2/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向一方側である遠位側にインプラントを着脱可能なガイド部材と、
所定方向に進退可能に前記ガイド部材に設けられるスライダ本体と、前記スライダ本体の遠位側に設けられ且つそれらの間に前記インプラントが位置するように互いに対向して配置される一対のスライダ板とを有するスライダ部材と、
前記スライダ本体を前記ガイド部材に対して進退させる進退機構とを備え、
前記進退機構は、前記スライダ本体の側方に配置される操作部材を有し、前記操作部材を回転させることによって前記スライダ本体を進退させ、
前記ガイド部材は、前記スライダ本体が進退可能に設けられるガイド本体と、前記ガイド本体を所定方向に挿通され且つ遠位側に取付
部を有しているシャフト部材
と、前記インプラントの挿入位置を規定するストッパ部とを有し、
前記取付部は、前記インプラントを螺合させることによって前記インプラントを装着することができ、
前記ストッパ部は、前記取付部に対して軸線方向に相対変位可能に配置されている、インサータ。
【請求項2】
前記進退機構は、ラックアンドピニオン機構であって、前記操作部材を回転させることによってピニオンギアが回転して、前記ガイド部材に対して前記スライダ本体が進退するようになっている、請求項1に記載のインサータ。
【請求項3】
所定方向一方側である遠位側にインプラントを着脱可能なガイド部材と、
所定方向に進退可能に前記ガイド部材に設けられるスライダ本体と、前記スライダ本体の遠位側に設けられ且つそれらの間に前記インプラントが位置するように互いに対向して配置される一対のスライダ板とを有するスライダ部材と、
前記スライダ本体を前記ガイド部材に対して進退させる進退機構と、
把持可能な把持部材と、を備え、
前記進退機構は、前記スライダ本体の側方に配置される操作部材を有し、前記操作部材を回転させることによって前記スライダ本体を進退させ、
前記操作部材は、回転させるための操作部を有し、
前記把持部材は、前記スライダ本体に対し前記操作部の反対側に位置し且つ延在するように前記ガイド部材に設けられている、インサータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術部位にインプラントを挿入するためのインサータに関する。
【背景技術】
【0002】
脊椎等の手術部位にインプラントを挿入する手術器具としてインサータがある。そして、インサータとして、例えば特許文献1のようなインサータが知られている。即ち、特許文献1のインサータは、駆動軸の遠位端部にインプラントホルダが設けられている。また、駆動軸は、それ自体を回転させると、一対のトングの間においてインプラントホルダを進退させることができる。そして、駆動軸を回転させることによって、インプラントを手術部位に挿入することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のインサータでは、前述の通り、駆動軸を回転させてインプラントを進退させるように構成されており、インサータ自体が遠位及び近位方向において長尺に形成されている。また駆動軸を回転させるべくノブが駆動軸の近位端に設けられている。それ故、インサータの全長が長くなり、またノブがハンドルから離れた位置に配置される。これにより、インプラントを押し進めるべくノブを回すとインサータがぶれてしまうことがある。
【0005】
そこで本発明は、全長が長くなることを抑制できるインサータを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のインサータは、所定方向一方側である遠位側にインプラントを着脱可能なガイド部材と、所定方向に進退可能に前記ガイド部材に設けられるスライダ本体と、前記スライダ本体の遠位側に設けられ且つそれらの間に前記インプラントが位置するように互いに対向して配置される一対のスライダ板とを有するスライダ部材と、前記スライダ本体を前記ガイド部材に対して進退させる進退機構とを備え、前記進退機構は、前記スライダ本体の側方に配置される操作部材を有し、前記操作部材を回転させることによって前記スライダ本体を進退させるものである。
【0007】
本発明に従えば、操作部を回してスライダ本体を後退させることによって、インプラントが一対のスライダ板の間から押し出して手術部位に挿入することができる。このような機能を有するインサータにおいて操作部材がスライダ本体の側方に配置されているので、インサータの全長が長くなることを抑制できる。また、操作する部位とスライダ本体との距離が近いので、スライダ本体を進退させる際にインサータがぶれることを抑制することができる。
【0008】
上記発明において、前記進退機構は、ラックアンドピニオン機構であって、前記操作部材を回転させることによってピニオンギアが回転して、前記ガイド部材に対して前記スライダ本体が進退するようになっていることが好ましい。
【0009】
上記構成に従えば、従来のようにねじ機構によって進退させる場合に比べて一回転あたりに進退量を大きくすることができる。これにより、インプラントを素早く動かして挿入することができる。
【0010】
上記発明において、前記ガイド部材は、前記スライダ本体が進退可能に設けられるガイド本体と、前記ガイド本体を所定方向に挿通され且つ遠位側に取付部を有しているシャフト部材を有し、前記取付部は、前記インプラントを螺合させることによって前記インプラントを装着することができることが好ましい。
【0011】
上記構成に従えば、シャフト部材を回すだけでインプラントを取り外すことができるので、インプラントの取り外し作業が容易である。
【0012】
上記発明において、前記ガイド部材は、インプラントの挿入位置を規定するストッパ部を有し、前記ストッパ部は、前記取付部に対して相対変位可能に配置されていることが好ましい。
【0013】
上記構成に従えば、取付部に対してストッパ部を相対変位させることによって、インプラントの挿入位置を容易に調整することができる。
【0014】
上記発明において、把持可能な把持部材を更に備え、前記操作部材は、回転させるための操作部有し、前記把持部材は、前記スライダ本体に対し操作部の反対側に位置するようにガイド部材に設けられていることが好ましい。
【0015】
上記構成に従えば、把持部材と操作部材とがスライダ本体に対して互いに反対側に配置される。それ故、施術者は左右両手のうち一方の手で把持部材を把持し、また他方の手で操作部材を回すことができる。これにより、安定した姿勢でインサータを保持し、またスライダ本体を進退させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、インサータの全長が長くなることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態であるインサータを示す斜視図である。
【
図4】
図2のインサータを切断線IV-IVで切断した見た断面図である。
【
図5】
図1のインサータにおいて、スライダ本体を動かした状態を示す平面図であって、(a)はスライダ本体が最も前進している状態を示し、(b)は(a)の状態からスライダ本体が少し後退した状態を示し、(c)はスライダ本体が後退してスペーサが押し出されている状態を示している。
【
図6】
図3のインサータにおいて、ストッパ部が動かされた状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施形態のインサータ1について前述する図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明で用いる方向の概念は、説明する上で便宜上使用するものであって、発明の構成の向き等をその方向に限定するものではない。また、以下に説明するインサータ1は、本発明の一実施形態に過ぎない。従って、本発明は実施形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除、変更が可能である。
【0019】
<インサータ>
脊椎手術の際、椎間板が除去される場合がある。その際、除去された椎間板の代わりに椎体の間にインプラント、例えば椎体間スペーサ(以下、「スペーサ」という)2が挿入される(後述する
図4参照)。そして、スペーサ2を椎体の間に入れる際には、
図1乃至3に示すようなインサータ1が用いられる。インサータ1は、手術部位である隣接する2つの椎体の間を離間する。そして、インサータ1は、離間した2つの椎体の間にスペーサ2を挿入する。このような機能を有するインサータ1は、
図1に示すようにガイド部材11と、スライダ部材12と、進退機構13と、操作部材14と、把持部材15とを備えている。
【0020】
ガイド部材11は、
図2及び
図3でも示すように、所定方向である第1方向に延在する部材である。そして、ガイド部材11は、第1方向一方側である遠位側にスペーサ2を着脱することができる(
図4参照)。更に詳細に説明すると、ガイド部材11は、ガイド本体21と、シャフト部材22とを有している。ガイド本体21は、後述するスライダ本体23を進退可能に案内する。より詳細に説明すると、ガイド本体21は、
図4に示すようにガイドシャフト31と、ストッパ32とを有している。
【0021】
ガイドシャフト31は、第1方向に延在する筒状の部材であり、その断面矩形状に形成されている。また、ガイドシャフト31には、
図4に示すように第2方向一方側の面に貫通溝31a及びねじ部31bが形成されている。ここで、第2方向は、第1方向に直交する方向である。貫通溝31aは、第1方向に延在し且つガイドシャフト31の内孔31dまで貫通している。ねじ部31bは、貫通溝31aの近位側に形成されている。また、ねじ部31bは、その一部分が第2方向一方側の面から第2方向一方側に突出しており、第2方向に延在するねじ孔31eを有している。更に、ガイドシャフト31には、第3方向一方側の側面にねじ部31bの近位側にゲージ31cが形成されている(
図3参照)。なお、第3方向は、第1方向及び第2方向に直交する方向である。
【0022】
ストッパ32は、第1方向に延在する部材であり、ストッパ本体部41と、ストッパ部42と、ストッパ操作部43とを有している。ストッパ本体部41は、第1方向に延在する板状の部材である。即ち、ストッパ本体部41は、第2方向に厚みを有する板状の部材である。更に詳細に説明すると、ストッパ本体部41は、遠位側に位置する幅狭部分41aと、近位側に位置する幅広部分41bとを有している。そして、ストッパ本体部41は、幅広部分41bの遠位端部における第2方向他方側の面に幅狭部分41aの近位端部を重ね合わせるようにして構成されている。また、幅広部分41bの近位側部分には、取付溝41cが形成されている。取付溝41cは、幅広部分41bを第2方向に貫通している。そして、取付溝41cには、ガイドシャフト31のねじ部31bの突出部分が挿通されている。更にねじ部31bには、止めねじ44が螺合されている。そして、ストッパ本体部41は、止めねじ44によって挟持されてガイドシャフト31に固定されている。即ち、ストッパ32は、止めねじ44によってガイドシャフト31に固定されている。また、取付溝41cは、第1方向に延在しており、止めねじ44を緩めることによってストッパ32を第1方向にスライドさせることができる。
【0023】
ストッパ部42は、ストッパ本体部41の遠位端部に設けられている。ストッパ部42は、椎体等の手術部位に当てることができる。そして、ストッパ部42が手術部位に当たることによってインサータ1の挿入が止められる。即ち、ストッパ部42は、スペーサ2を所望の挿入位置にて止めることができる。このような機能を有するストッパ部42は、第1方向に見て断面矩形の枠状に形成されている。更に詳細に説明すると、ストッパ部42には、第1方向に直交するように切断した断面において一対の挿入孔42aと内孔42bとが形成されている。一対の挿入孔42aは、内孔42bの第3方向の両側に夫々形成されている。即ち、一対の挿入孔42aと内孔42bとは、第3方向に並んでいる。また、一対の挿入孔42aは、第1方向に直交するように切断した断面において第2方向に縦長に形成され且つ第1方向に延在している。また、ストッパ部42の内孔42bは、断面矩形状に形成されている。ストッパ部42の内孔42bは、ガイドシャフト31の遠位端部の外形と略一致しており、内孔42bには、ガイドシャフト31の遠位端部が第1方向にスライド可能に挿通されている。
【0024】
ストッパ操作部43は、ストッパ本体部41の近位端部に設けられている。ストッパ操作部43は、ストッパ32を第1方向にスライド操作するためのものである。更に詳細に説明すると、ストッパ操作部43は、ストッパ本体部41の近位端部から第2方向一方側に立ち上がるように形成されている。また、ストッパ操作部43は、ガイドシャフト31のゲージ31cに対応する位置に配置されている(
図2参照)。そして、ゲージ31cに対するストッパ操作部43の位置によってストッパ部42の位置が確認することができる。
【0025】
シャフト部材22は、第1方向に延在する円柱状の部材である。シャフト部材22は、ガイドシャフト31の内孔31dに挿通されている。また、シャフト部材22は、その遠位端部及び近位端部がガイドシャフト31から突き出ている。そして、シャフト部材22は、遠位端部に取付部22aを有し、また近位端部に回転把持部22bを有している。
【0026】
取付部22aは、スペーサ2を取り付けることができる。更に詳細に説明すると、取付部22aは、雄ねじであってスペーサ2の雌ねじ部に螺合することができる。また、回転把持部22bは、第1方向から見て円形状に形成されている。回転把持部22bは、その外周面を把持して回転させることができる。回転把持部22bが回転することによって取付部22aが回り、スペーサ2に螺合させることができる。これにより、スペーサ2をシャフト部材22の取付部22aに装着することができる。また、取付部22aの第1方向他方側には、ストッパ部42が配置され、ストッパ部42は、取付部22aに対して相対変位できるようになっている。
【0027】
スライダ部材12は、第1方向に進退可能にガイド部材11に設けられている。また、スライダ部材12は、その先端部分が開閉可能に構成されている。そして、スライダ部材12は、その先端部分を閉じた状態で手術部位の間、即ち2つの椎体の間に入れることができる。また、スライダ部材12の先端部分は、ガイド部材11に対して後退させることによって開くことができ、開くことによって椎体の間を押し広げて離間させることができる。そして、スライダ部材12は、更に後退させることによってスペーサ2を突き出させることができる。これにより、椎体の間にスペーサ2を差し込ませることができる。このような機能を有するスライダ部材12は、
図1に示すようにスライダ本体23と、一対のスライダ板24,24とを有している。
【0028】
スライダ本体23は、第1方向に進退可能にガイド部材11に設けられている。更に詳細に説明すると、スライダ本体23は、
図1乃至4に示すように第1方向に延在する筒状に形成されている。スライダ本体23には、第1方向に延在するスライダ孔23aが形成されている。そして、スライダ孔23aには、ガイドシャフト31が挿通されており、スライダ本体23は、ガイドシャフト31に対して第1方向にスライドすることができる。また、スライダ本体23は、第1方向に見た断面が大略C字状に形成されている。即ち、スライダ本体23には、第2方向一方側の面にスライダ溝23bが形成されている。スライダ溝23bには、ストッパ本体部41の幅狭部分41aが嵌まり込んでいる。そして、スライダ本体23は、幅狭部分41aに案内されて第1方向にスライドする。また、スライダ本体23は、その近位側部分が残余部分より第2方向に高さを有している(即ち、残余部分に対して第2方向他方側に突き出ている)。そして、スライダ本体23の近位側部分には、第3方向に貫通する挿通孔23cが形成されている。挿通孔23cは、スライダ本体23においてスライダ孔23aより第2方向他方側に位置し、且つスライダ孔23aに連通している。また、スライダ本体23の遠位側部分は、第1方向に見て大略I形に形成されている。即ち、スライダ本体23の遠位側部分の外周面には、
図3に示すように第3方向の両側面に装着溝23dが夫々形成されている。
【0029】
一対のスライダ板24,24は、第1方向に延びる板状の部材であり、一対のスライダ板24,24の間にスペーサ2が位置するように互いに対向して配置される。より詳細に説明すると、一対のスライダ板24,24は、その主面同士が互いに対向するように配置されている。また、一対のスライダ板24,24は、その近位端部をスライダ本体23の装着溝23dに挿入して固定されている。そして、一対のスライダ板24,24は、スライダ本体23から第1方向一方側に延在している。即ち、一対のスライダ板24,24の各々は、スライダ本体23からストッパ部42の一対の挿入孔42aの各々を通り、ストッパ部42の第1方向一方側に突出している。更に、一対のスライダ板24,24は、その遠位側部分が遠位端に進むにつれて互いに近づくように第2方向に傾斜しており、遠位端部が当接している。即ち、一対のスライダ板24,24は、遠位端部が閉じており、椎体の間に入り込むことができる。他方、一対のスライダ板24,24の遠位側部分は、可撓性を有している。例えば、一対のスライダ板24,24は、中間部分から遠位端にかけて残余部分より薄肉形成されており、撓むことができる。それ故、スライダ本体23を第1方向他方側にスライドさせることによって、一対のスライダ板24,24がストッパ部42又はスペーサ2によって第2方向外側に押し広げられる。これにより、一対のスライダ板24,24が開き、スペーサ2を一対のスライダ板24,24の第1方向一方側に押し出すことができる。また、スライダ本体23が第1方向一方側にスライドすることによってスペーサ2を一対のスライダ板24,24の間に引っ込め、一対のスライダ板24,24を閉じることができる。
【0030】
進退機構13は、スライダ本体23をガイド部材11に対して進退させることができる。更に詳細に説明すると、進退機構13は、ラックアンドピニオン機構であって、ピニオンギア26を回転させることによってガイド部材11に対してスライダ本体23を進退させる。より詳細に説明すると、進退機構13は、ラックギア25と、ピニオンギア26とを有している。ラックギア25は、板状の歯車であって、ガイドシャフト31の第2方向他方側の面に一体的に形成されている。更に詳細にすると、ラックギア25は、ガイドシャフト31の中間部分において第1方向に延在している。また、ピニオンギア26は、スライダ本体23の挿通孔23cに回転可能に配置され、ラックギア25に歯合している。それ故、ピニオンギア26を回転させると、ピニオンギア26がラックギア25上を第1方向一方側及び他方側に移動する。そうすると、ピニオンギア26を収容するスライダ本体23もまたガイドシャフト31に対して第1方向に進退する。即ち、ピニオンギア26を回転させることによって、スライダ本体23をガイド部材11に対して第1方向に進退させることができる。
【0031】
操作部材14は、スライダ本体23の挿通孔23cに挿通され、その中間部分にピニオンギア26に一体的に回転するように取り付けられている。更に詳細に説明すると、操作部材14は、ノブシャフト27と、ギアノブ28とを有している。ノブシャフト27は、大略角柱状に形成されている。そしてノブシャフト27は、挿通孔23cに挿通されている。また、ノブシャフト27には、一体的に回転するようにピニオンギア26が設けられている。また、ノブシャフト27の両端部は、挿通孔23cから突出している。
【0032】
操作部であるギアノブ28は、操作部材14を回転させるための部材である、即ちピニオンギア26を回転させるための部材である。ギアノブ28は、ノブシャフト27の一端部に設けられている。本実施形態において、ギアノブ28は、ノブシャフト27の第3方向一方側の端部に設けられ、また把持可能に形成されている。本実施形態において、ギアノブ28は、ノブシャフト27に対して半径方向一方及び他方に夫々伸びており、例えば3つの指を掛けることで回すことができる。そして、ギアノブ28を回すことにピニオンギア26を回転させ、スライダ本体23を第1方向に進退させることができる。例えば、ギアノブ28を時計方向に回すことによって、スライダ本体23を前進(即ち、第1方向一方側に移動)させることができる。また、ギアノブ28を反時計方向に回すことによって、スライダ本体23を後退(即ち、第1方向一方側に移動)させることができる。
【0033】
把持部材15は、いわゆるハンドルであり、
図1及び2に示すように把持可能に構成されている。把持部材15は、ガイド部材11に設けられ、スライダ本体23に対しギアノブ28の反対側に位置している。更に詳細に説明すると、把持部材15は、ガイド部材11の近位側部分において第3方向他方側の側面に設けられている。より詳細に説明すると、把持部材15は、ガイドシャフト31においてラックギア25より更に近位側に設けられている。また、把持部材15は、ガイドシャフト31から第3方向他方側に延在しており、把持することができる。
【0034】
<インサータの操作>
以下、インサータ1の操作について
図5(a)~(b)を参照しながら説明する。まず、インサータ1を使用する際、インサータ1では、シャフト部材22の取付部22aにスペーサ2が取り付けられる。即ち、ギアノブ28が回されてスライダ本体23を後退させて一対のスライダ板24,24が開かれる。そして、取付部22aが一対のスライダ板24,24の間から突き出る。次に、取付部22aにスペーサ2の雌ねじ部を宛がって回転把持部22bを回す。これにより、取付部22aがスペーサ2の雌ねじ部に螺合され、インサータ1にスペーサ2が取り付けられる。その後、ギアノブ28を回すことによってスライダ本体23が前進し、一対のスライダ板24,24の間にスペーサ2が収められる。そして、
図5(a)に示すようにスペーサ2が一対のスライダ板24,24の間に収まり、一対のスライダ板24,24が閉じるまでスライダ本体23が前進させられる。
【0035】
次に、椎間板が除去された2つの椎体の間にインサータ1を用いてスペーサ2を挿入する作業について説明する。椎間板が除去されると、施術者はインサータ1の先端部分、即ち一対のスライダ板24,24の遠位端部を閉じた状態で2つの椎体の間に挿入する。この際、一対のスライダ板24,24の各々は、その主面の反対の面が2つの椎体の各々に当接するように2つの椎体の間に挿入される。この際、施術者の手で押し込んだり回転把持部22bをハンマー等の器具によって打撃したりすることによって、2つの椎体の間に一対のスライダ板24,24の遠位端部が挿入される。挿入後、施術者は、
図5(b)に示すようにギアノブ28を半時計回りに回転させてスライダ本体23を後退させる。そうすると、スペーサ2が一対のスライダ板24,24の間をそれらの遠位端へと進む。そして、更にギアノブ28を半時計回りに回転させると、スペーサ2(又はストッパ部42)によって一対のスライダ板24,24の遠位側部分が押し広げられ、一対のスライダ板24,24が開く。そうすると、2つの椎体の間が押し広げられて離間させられる。更にギアノブ28を半時計回りに回転させると、スペーサ2が一対のスライダ板24,24の間から突き出ている。この状態からギアノブ28を更に半時計回りに回転させると、ガイド部材11が2つの椎体に向かって進行する。これにより、スペーサ2が2つの椎体の間で押し進められ、2つの椎体の間にスペーサ2が挿入される。その後、ギアノブ28を更に半時計回りに回転させると、やがてストッパ部42が2つの椎体に当たり、ガイド部材11の進行が止まる。これによりストッパ部42が2つの椎体の間において所望の挿入位置に配置されたことが確認される。そして、スペーサ2からインサータ1を外すべく回転把持部22bが回される。これにより、取付部22aがスペーサ2の雌ねじ部から外れ、インサータ1をスペーサ2から外すことができる。
【0036】
このように操作されるインサータ1では、操作部材14がスライダ本体23の側方、即ち第2方向一方側に配置されているので、インサータ1の全長を短くすることができる。そして、ギアノブ28とスライダ本体23の距離が近いので、スライダ本体23を進退させる際にインサータ1がぶれることを抑制することができる。
【0037】
また、インサータ1では、進退機構13としてラックアンドピニオン機構が用いられている。それ故、インサータ1では、従来のようにねじ機構によって進退させる場合に比べて一回転あたりに進退量を大きくすることができる。これにより、スペーサ2を素早く動かして挿入することができる。更に、本実施形態のインサータ1は、シャフト部材22を回すだけでスペーサ2を取り外すことができるので、スペーサ2の取り外し作業が容易である。
【0038】
更に、インサータ1では、把持部材15と操作部材14とがスライダ本体23に対して互いに反対側に配置されている。それ故、施術者は左右両手のうち一方の手で把持部材15を把持し、また他方の手で操作部材14を回すことができる。これにより、安定した姿勢でインサータ1を保持し、またスライダ本体23を進退させることができる。
【0039】
また、インサータ1では、一対のスライダ板24,24が一対の挿入孔42a、42aに挿通されている。それ故、2つの椎体の間に一対のスライダ板24,24の遠位部分を挿入する際、ギアノブ28を回転させることによって生じる推進力を一対のスライダ板24,24の遠位部分に効率よく伝達させることができる。これにより、一対のスライダ板24,24の遠位部分を2つの椎体の間により入りやすくすることができる。
【0040】
<ストッパ部の位置調整>
また、インサータ1では、
図6に示すようにストッパ部42が取付部22aに対して相対変位することができる。そして、相対変位させることによってストッパ部42の位置を調整することができる。即ち、前述の通り、ストッパ32は、止めねじ44を緩めてストッパ操作部43を押し引きすることによって第1方向にスライドすることができる(
図6の二点鎖線参照)。そして、ストッパ32をスライドすることによって取付部22aに対するストッパ部42の相対位置を調整することができる。これにより、2つの椎体の間におけるスペーサ2の挿入位置を調整することができる。また、インサータ1では、ストッパ部42の位置をストッパ操作部43及びゲージ31cによって確認することができる。それ故、挿入位置の確認及び調整を容易に行うことができる。
【0041】
<その他の実施形態>
本実施形態のインサータ1では、2つの椎体の間にスペーサ2を挿入するための器具に適用され場合について説明がされたが、必ずしもそのような器具に限定されない。インサータ1は、2つの椎体の間にスペーサ2を挿入する場合と同様に、手術部位を離間し、離間した部位にスペーサ2を挿入する手術器具であれば適用することができる。また、インサータ1によって2つの椎体の間にスペーサ2を挿入する方法は、前述する方法に限定されない。例えば、一対のスライダ板24,24を2つの椎体の間に挿入する際、ストッパ部42が2つの椎体に当たるまで、即ちスペーサ2が挿入位置に位置するまで挿入してもよい。この場合、挿入後にギアノブ28を回すことによって、前述する方法と同様にスペーサ2を一対のスライダ板24,24の間から突き出させることができる。
【0042】
また、本実施形態のインサータ1では、取付部22aが雄ねじで構成されているが、必ずしもこのように構成されている必要はない。例えば、スペーサ2を教示するような構成であってもよく、その構成は限定されない。また、スペーサ2も前述するような形状は、あくまで一例であり、前述する形状に限定されない。進退機構13もまた、ラックアンドピニオン機構に限定されず、インサータ1の側方から操作してスライダ本体23を進退できる機構であればよい。
【0043】
また、本実施形態のインサータ1は、2つの椎体の間に一対のスライダ板24,24の遠位端部を挿入する際に回転把持部22bをハンマー等によって打撃する場合、以下のように構成されてもよい。即ち、インサータ1では、ガイド部材11に対してスライダ部材12が動かないように、ガイド部材11又はスライダ部材12に規制部材が設けられてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 インサータ
2 スペーサ(インプラント)
11 ガイド部材
12 スライダ部材
14 操作部材
15 把持部材
21 ガイド本体
22 シャフト部材
22a 取付部
23 スライダ本体
24 スライダ板
25 ラックギア
26 ピニオンギア
31 ガイドシャフト
32 ストッパ
42 ストッパ部