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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】集材作業に用いるクランプ装置
(51)【国際特許分類】
   B66F 19/00 20060101AFI20241025BHJP
   A01G 23/00 20060101ALI20241025BHJP
【FI】
B66F19/00 R
A01G23/00 551F
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020177142
(22)【出願日】2020-10-22
(65)【公開番号】P2021116189
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2023-10-11
(31)【優先権主張番号】P 2020007384
(32)【優先日】2020-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】516215970
【氏名又は名称】有限会社WEST
(74)【代理人】
【識別番号】100118393
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 康裕
(72)【発明者】
【氏名】大野 憲一
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-011514(JP,A)
【文献】特許第6507463(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0201005(US,A1)
【文献】特開平11-301980(JP,A)
【文献】実開昭55-125292(JP,U)
【文献】国際公開第1999/057056(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 19/00
A01G 23/00
B66D 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集材対象物に取り付けたロープと、
屈伸するアームを有する集材用作業車と、を用い、
前記アームの屈伸により前記ロープを引き寄せることで、前記集材対象物の集材を行う集材作業に用いるクランプ装置であって、
前記集材作業に用いるクランプ装置は、
挿通路を通る前記ロープの摩擦により前記挿通路を狭くする締付具と、
狭くなった前記挿通路を広げる締付解除手段と、
を備え
前記締付解除手段は、前記アームの屈伸により前記挿通路を広げることを特徴とする集材作業に用いるクランプ装置。
【請求項2】
前記ロープの摩擦により、前記締付具を回動させ若しくは前記締付具を摺動させることにより前記挿通路が狭くなり、
前記締付解除手段は、前記アームの屈伸により、前記締付具を逆回動若しくは逆摺動させて前記挿通路を広げる締付解除具からなることを特徴とする請求項1に記載の集材作業に用いるクランプ装置。
【請求項3】
前記挿通路が広がった前記締付具の状態を保持する保持部を設けることを特徴とする請求項1の集材作業に用いるクランプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集材作業に用いるクランプ装置であって、より詳しくは、集材対象物に取り付けたロープと、屈伸するアームを有する集材用作業車と、を用い、アームの屈伸によりロープを引き寄せることで、集材対象物の集材を行う集材作業に用いるクランプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、林業において、集材用作業車の近くに木材を集める際に、スイングヤーダを用いる程、木材と集材用作業車が離れていないような場合には、一般的には特許文献1の図7や特許文献2の図4に記されるようにブームとアームを有した集材用作業車のブームや回転体等に取り付けられたウインチを用いた方法で集められる。具体的には、ウインチからロープ(ここでは、金属のワイヤ、非金属のロープを総称して「ロープ」と記す。)を延ばし、アーム先端近傍に取り付けられた滑車にロープを通して木材に引っ掛けた後でウインチによりロープを巻き取っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-315226号公報
【文献】特開2003-73074号公報
【文献】特開2018-11514号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】株式会社キトー、[online]、ワイヤーロープ専用固定器具キトークリップ、[令和2年1月7日検索]、インターネット〈https://www.kito.co.jp/products/lb/_id_61/〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の集材方法は、ウインチの力のみで木材を寄せることになるために、ウインチに大きな引張力が必要となる。このため、非常に高価なウインチが必要となる。そこで、本願の発明者は特許文献3に示されるようにアームの屈伸や回転力を利用して集材する方法を考えた。この方法では、ロープにクランプを設けて、アームが伸展するときはロープがクランプの挿通路で可動にされ、アームが屈曲するときはロープがクランプの挿通路で不動にされる。
【0006】
ところで、特許文献3の第1実施形態のクランプは、挿通路の可動/不動の切り替えをロープの遠隔操作で行うものである。従って、この設備と操作が必要となる。
【0007】
一方、特許文献3の第2実施形態のクランプは、逆止めのクランプであり、挿通路の可動/不動の設備や操作を不要とする。そこで、特許文献3の第2実施形態のクランプとは具体的な機構は異なるが、ロープの摩擦で回動する締付部によって、挿通路を可動/不動にする逆止めのクランプである点では共通する市販のクランプ(非特許文献1のクランプ)を用い、実際に検証を行った。
【0008】
その結果、クランプが、固定されたロープを不動方向に強く引っ張ったとき(アームが屈曲するとき)に、締付部がロープに強く食い込んでしまい、その後クランプを可動方向に所定の引張力で引っ張っても(アームを伸展するとき)締付部のロープへの食い込みによって、締付部が可動方向に回転せずに、ロープが固定されたままでクランプが動かなくなる、というようなことが生じた。
【0009】
本発明は、このような問題を生じ難くするため、集材対象物に取り付けたロープと、屈伸するアームを有する集材用作業車と、を用い、アームの屈伸によりロープを引き寄せることで、集材対象物の集材を行う集材作業に用いる最適なクランプ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の一つの態様に係る集材作業に用いるクランプ装置は、集材対象物に取り付けたロープと、屈伸するアームを有する集材用作業車と、を用い、前記アームの屈伸により前記ロープを引き寄せることで、前記集材対象物の集材を行う集材作業に用いるクランプ装置であって、前記集材作業に用いるクランプ装置は、挿通路を通る前記ロープの摩擦により前記挿通路を狭くする締付具と、狭くなった前記挿通路を広げる締付解除手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
これにより、締め付けで食い込んだロープの締め付けを解除することができるので、アームの伸展の際に、挿通路におけるロープの可動状態を確保することができる。従って、本発明のクランプ装置は、ロープを巻き取るウインチと、屈伸するアームを有して集材対象物を引き寄せる集材用作業車に用いるクランプ装置として非常に適する。
【0012】
なお、集材対象物は、林業の現場における木材であったり、被災地等における流木や廃材であったり等、アームの屈伸によりロープを引き寄せることで集材できるものであれば構わない。また、ロープを巻き取る際に用いるウインチは、モータ等の動力式の他、人力による手動式のウインチでも構わない。
【0013】
また、本発明の集材作業に用いるクランプ装置においては、前記締付解除手段は、前記アームの屈伸により前記挿通路を広げることが好ましい。これにより、アームの屈伸を利用して自動的に食い込んだロープを解除することができる。なお、締付解除手段については、このようなアームの屈伸を利用するのではなく、操作者が望むタイミングで挿通路を広げる可動式の構成を採用することもできる。
【0014】
また、本発明の集材作業に用いるクランプ装置においては、前記ロープの摩擦により、前記締付具を回動させ若しくは前記締付具を摺動させることにより前記挿通路が狭くなり、前記締付解除手段は、前記締付具を逆回動若しくは逆摺動させて前記挿通路を広げる締付解除具からなること好ましい。この場合、挿通路が締付具と滑車とで形成されるような回転式のクランプ、或いは、挿通路が締付具と当接具とで形成されるような摺動式のクランプの何れにおいても、挿通路が狭くなってロープが食い込む時とは逆方向に締付具を動かすので、確実にロープの食い込みを解除することができる。
【0015】
また、本発明の集材作業に用いるクランプ装置においては、前記挿通路が広がった前記締付部の状態を保持する保持部を設けることが好ましい。これにより、アームを伸展させる際に挿通路が広がった状態を維持することができるので、ロープを繰り出すときにクランプの挿通路が広いままで摩擦が少なくなり、アームを円滑に伸展させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】Aは本発明の第1実施形態に係るクランプ装置のクランプがロープを締め付けている状態を示す図2BのIA~IA断面図であり、Bはクランプ装置がロープを締め付けから解放している状態を示す断面図であり、Cは保持部が締付具の解放を保持していない状態を示す断面図であり、Dは保持部が締付具の解放を保持している状態を示す断面図である。
図2】Aは第1実施形態のクランプが取付金具に取り付けられたクランプ装置を示す正面図であり、BはAの右側面図、また、止め輪の動作を示すCのIIB~IIB部分断面図であり、CはBの平面図である。
図3】A~Cは第1実施形態に係るクランプの試作品の撮像であり、Aは図1Aに対応する組立の撮像であり、Bは図1Bに対応する組立の撮像であり、CはAの分解の撮像である。
図4】Aは第1実施形態のクランプ装置において、ロープが伸展された状態で、これからロープを木材まで伸ばそうとするステップ1の状態を示す図であり、Bはロープの屈伸で木材が引っ張り始めるときから引っ張り終わるときのステップ2の状態を示す図である。
図5】Aは第1実施形態のクランプ装置の使用例を示す図であり、撓んだロープをウインチで巻き取るステップ3の状態を示す図であり、Bは図4Aから、アームを伸展させてクランプが木材方向に繰り出されるステップ4を示す図である。
図6】第2実施形態のクランプ装置の使用例を示す図であり、A、Bは第1実施形態の図4のA、Bに対応する図である。
図7】Aは本発明の第1実施形態や第2実施形態に使用されるクランプの第1変形例の方法を示す図であり、Bは第2変形例の方法を示す図であり、Cは第3変形例の方法を示す図であり、Dは第4変形例の方法を示す図である。
図8】Aは本発明の第3実施形態に係るクランプ装置の要部を示す正面図であり、BはAの底面図である。
図9】Aは第3実施形態のクランプ装置において、アームが伸展された状態で、これからロープを木材まで伸ばそうとする状態を示す図であり、Bはアームの屈伸で木材が引っ張り始めるときから引っ張り終わるときの状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施形態及び図面を参照にして本発明を実施するための形態を説明するが、以下に示す実施形態は、本発明をここに記載したものに限定することを意図するものではなく、本発明は発明請求の範囲に示した技術思想を逸脱することなく種々の変更を行ったものにも均しく適用し得るものである。なお、この明細書における説明のために用いられた各図面においては、各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に縮尺を異ならせて表示しており、必ずしも実際の寸法に比例して表示されているものではない。
【0018】
[第1実施形態]
本願の第1実施形態のクランプ装置100は、図4図5に示すように、アーム56の屈曲力で木材Wを引き寄せ、弛んだロープ(ここでは、金属のワイヤ、非金属のロープを総称して「ロープ」と記す。)61をウインチ6で巻き取り、アーム56を伸展させて再度アーム56の屈曲力で木材Wを引き寄せることを繰り返す集材作業車5のアーム56に装着される。
【0019】
図1、2を用いて、第1実施形態のクランプ装置100の要部の構成を説明する。図1A図1Bは締付具11の締め付け/解放を示す図であり、図1C図1Dは保持部4の保持/解放を示す図である。図2A図2Cはクランプ1が取付金具2に取り付けられたクランプ装置100を示す図である。
クランプ装置100は、金属製であり、クランプ1、取付金具2、締付解除具3と保持部4からなる。
【0020】
図1図2に示すように、クランプ1は、締付具11と、滑車部12と、締付具11と滑車部12を回動可能に連結する第1軸13と、クランプ1を取付金具2に回動可能に連結する第2軸14と、からなる。そして、締付具11と滑車部12の間がロープ61の挿通路1aとなる。なお、図3は、クランプ1の実際の撮像である。ただし、後述の滑車部12のフレーム板122の構造は図1、2と異なり、また、後述の保持部4は備わっていない。
【0021】
[滑車部12]
滑車部12は、滑車121と、2つのフレーム板122と、2つのフレーム板122の間で滑車121を回動可能に軸支する第3軸123と、2つのフレーム板122を連結する第4軸124と、からなる。
【0022】
第3軸123は、第3ナットN3で螺着され、第4軸124は、第4ナットN4で螺着される。そして、2つのフレーム板122には、締付具11と滑車部12を連結するための第1取付孔1221が、設けられている。
【0023】
[第1軸13の着脱]
図2Cに示すように、第1軸13の先端にはスリット131が切られている。そして、スリット131と直角方向に延在するシャフト132が、スリット131内に設けられている。そして、長円孔1331をシャフト132に嵌入することで遊動可能になっている止め輪133が、シャフト132に設けられている。
【0024】
そして、この止め輪133がシャフト132を軸として回動し、止め輪133が第1軸13と同じ方向に延在する状態になると、第1軸13は、滑車部12のフレーム板122の第1取付孔1221と、締付具11の第2取付孔111と、を貫通することができる。
【0025】
また、図2Bに示すように、止め輪133の直線部133aの幅は、下方から上方に向けて次第に広くなっている。このため、図2Bに示すように、止め輪133を滑車部12と締付具11に貫通させた後に、止め輪133を90度回転させて(図2Bの円弧の矢印(1)参照)、止め輪133の直線部133aがスリット131の底面131aに密着した状態で、止め輪133を下方に摺動させると(図2Bの円弧の矢印(2)参照)、止め輪133の摺動は途中で止まる。この止め輪133によって第1軸13は、フレーム板122から抜けなくなる。また、この逆の操作が行われれば、第1軸13は、フレーム板122と締付具11から抜ける。
【0026】
このように、締付具11と滑車部12は、止め輪133の操作によって着脱自由となっている。従って、クランプ装置100は、組み立てられたクランプ1の挿通路1aにロープ61の先端を通さなくても、止め輪133の着脱操作によって、木材に取り付けられたままのロープ61であっても、挿通路1aにロープ61を挿入することができる。
【0027】
[締付具11の締付/解放]
図1A図1Bに示すように、締付具11は略勾玉の形状をしている。締付具11には、下方に滑車部12と連結するための第2取付孔111、上方に取付金具2と連結するための第3取付孔112が、設けられている。そして、ロープ61と当接する締付具11の第1当接面11aと滑車121の第2当接面121aの間が、ロープ61の挿通路1aとなる。
【0028】
ここで、締付具11の第1当接面11aの円弧の中心O1は、第2取付孔111の中心O2から(図1Aで示す)左方に変位している。このために、図1Aに示す挿通路1aの幅がロープ61の直径と同じ状態から、図1Bのように、締付具11が第2取付孔111を中心に左回転すると、挿通路1aの幅がロープ61の直径よりも広くなる。
【0029】
このようなクランプ1の機構により、挿通路1aに挿入されたロープ61は、図1Aで左方に移動可能であるが、右方には摩擦によって締付具11が右回転しようとするので(挿通路1aの幅が狭くなろうとするので)移動不可能である。
【0030】
なお、強い張力がロープ61に掛かってロープ61が締付具11と滑車121の間に食い込んでしまうと、ロープ61が左方に移動できなくなるが、外力によって締付具11を左回転させれば挿通路1aの幅が広がってロープ61の食い込み(ロック)を解放(ロック解放)させることができる。
【0031】
[取付金具2/締付解除具3]
図2に示すように、取付金具2にクランプ1が第2軸14と第2ナットN2で回動可能に螺着される。そして、クランプ1が取り付けられた取付金具2は図示せぬネジで集材用作業車5のアーム56に固着される(図4図5参照)。
【0032】
図2に示すように、取付金具2には延在する舌片の締付解除具3が設けられている。アーム56が屈伸するアーム56の角度によって、締付解除具3の先端である押圧部31が締付具11から離間したり(図4A参照)、締付具11を図2Aで左回転方向に押圧したり(図4B参照)する。この締付解除具3の押圧により、締付具11と滑車121の間に食い込んだロープ61を解放させることができる。このように、締付解除具3は、狭くなった挿通路1aを広げる締付解除手段として機能している。
【0033】
[保持部4の構成]
第1実施形態のクランプ装置100は、締付具11を挿通路1aの幅がロープ61の直径よりも広い状態の角度に一時的に保持するための保持部4を備えている。図1C図1Dに示すように、保持部4は、フレーム板122に取り付けられる取付具41と、取付具41内を摺動する玉42と、締付具11に設けられて玉42が掛入する(はまり込む)溝43と、玉42を押圧する玉押圧具44と、玉42への押圧力を玉押圧具44に掛けるコイルスプリング45と、コイルスプリング45の押圧力を調整する保持力調整ネジ46と、からなる。そして、フレーム板122に取り付けられた取付具41内の球42は、コイルスプリング45の押圧力によって締付具11側に押圧されている。
【0034】
締付具11の角度が図1Aの状態では、球42と締付具11の溝43の位置がずれるので、球42が締付具11の溝43にはまり込まずに締付具11は容易に回転することができる。
【0035】
締付具11の角度が図1Bの角度になると、すなわち、挿通路1aの幅がロープ61の直径よりも広い所定の角度になると、球42と締付具11の溝43の位置が一致する。このため、球42が締付具11の溝43にはまり込むことになり、締付具11は、所定の回転力でなければ回転しなくなる。
このような機構により、保持部4は締付具11を挿通路1aの幅がロープ61の直径よりも広い状態の角度に設定された力で保持することができる。
【0036】
[使用例]
次に、図4図5を用いて第1実施形態のクランプ装置100の使用例について説明する。図4A図4B図5A図5Bはそれぞれ使用例のステップ1~ステップ4を示す図である。第1実施形態の集材用作業車5は、ゴムクローラ51aで走行する走行体51と、走行体51に軸支され旋回可能な旋回体52と、旋回体52に軸支され油圧式のブームシリンダ53によって屈曲可能なブーム54と、ブーム54に軸支され油圧式のアームシリンダ55によって屈曲可能なアーム56と、アタッチメントとしてアーム56に軸支され油圧式のグラップルシリンダ57で屈曲可能グラップル58と、旋回体52にロープ61が巻かれたウインチ6を備えている。なお、本願に使用される集材用作業車5は、グラップルに限定するものではなく、バケットなどでもよい。
【0037】
図4Aのステップ1では、アーム56が木材W側に向けて伸展されており、クランプ1が回動自在に取り付けられている取付金具2が、アーム56に取り付けられている。ウインチ6から繰り出されたロープ61は締付具11と滑車121の間の挿通路1aを通っており、ロープ61の先端は垂れ下がっている。
【0038】
ステップ1では、締付解除手段である締付解除具3の押圧部31は締付具11から離間しているが、保持部4の玉42が、滑車121やロープ61の自重による離脱力に耐えて、締付具11の溝43にはまり込んだままとなっている。従って、挿通路1aの幅は、ロープ61の直径よりも広い。このために、クランプ装置100は、ウインチ6から木材W側に向けてロープ61を繰り出すことができる。ステップ1の垂れ下がったロープ61の先端は、木材W側に向けて繰り出されて木材Wに接続される。
【0039】
そして、アーム56が屈曲を始めると、アーム56の動きの衝撃により、それまで耐えていた離脱力が大きくなって保持部4の玉42が締付具11の溝43から外れる。なお、アーム56の動きの衝撃で保持部4の玉42が溝43から外れなければ、グラップル58やアーム56を更に上下させて振動を加えても構わない。
【0040】
これにより、図4Bの右方の拡大図(あるいは図2A)に示すように、挿通路1aの幅が狭くなる。そしてアーム56が図4Bで左方に動くと、ロープ61が締付具11と滑車121の間に食い込んで、アーム56が屈曲すると木材Wが引き寄せられる。
【0041】
そして、アーム56が所定の角度まで屈曲すると、屈曲の途中で図4Bの左方の拡大図に示すように、締付解除具3が締付具11を押圧する。そのためクランプ装置100は、締付具11と滑車121の間に食い込んだロープ61を解放させる。また、保持部4の球42が締付具11の溝43にはまり込むため、挿通路1aの幅がロープ61の直径よりも広い状態に保持される。これがステップ2である。
【0042】
図5Aのステップ3では、ステップ2で弛んだロープ61をウインチ6で巻き取る。このウインチ6は木材Wを引き寄せる力は不要なので、弱い力の安価なウインチ6でもよい。
【0043】
図5Bのステップ4では、ステップ3のアーム56が木材W側に向けて伸展される。このとき、保持部4では滑車121やロープ61の自重による離脱力に耐えて、締付具11の溝43に玉42がはまり込んだままとなっている。このためアーム56が、円滑に伸展される。この後はステップ2~ステップ4を繰り返して、次第に木材Wが引き寄せられる。
【0044】
このように、保持部4の保持力はステップ4でアーム56が木材W側に向けて伸展されるときは保持を維持して、ステップ2の、アーム56が屈曲を始めるときは保持を解放する。
【0045】
なお、この保持力の調整は、保持部4の保持力調整ネジ46によって行うことができる。また、もしアーム56が屈曲を始める際に、アーム56の動きにより滑車121やロープ61の自重に衝撃が加わっても保持が解放されなかったときは、グラップル58やアーム56を上下させて振動を加えることで、保持を開放することもできる。
【0046】
このようにクランプ装置100は、屈伸するアーム56を有して木材Wを引き寄せる集材用作業車5のアーム56に装着されるクランプ装置100であって、アーム56が屈曲の途中から、締付具11を図1Aで時計方向に回動させて挿通路1aを広げる締付解除手段である締付解除具3の押圧部31を備えている。これにより、屈曲を始めるときに摩擦により反時計方向に回動した締付具11の締め付けで食い込んだロープ61を、アーム56の屈曲の途中で解除することができるので、屈曲後、アーム56を伸展させるときにクランプ1が動かないという問題が生じない。
【0047】
また、クランプ装置100は、挿通路1aが広がった締付部11の角度の状態を保持する保持部4を設けているので、ロープ61を繰り出すときにクランプ装置100の挿通路1aが広いままとなるので、挿通路1aでのロープ61の摩擦が少なくなり、アーム56を円滑に伸展させることができる。
【0048】
また、例えば斜面から木材Wを引き上げる作業のような場合に、図5Bのようにアーム56を伸展させる際、もし保持部4による挿通路1aの隙間が無ければ、木材Wが坂を落ちる方向に動いたときに、ロープ61が動いて食い込みが生じことがある。このような食い込みが生じると、アーム56を所定の位置まで伸展させることができなくなってしまう。しかしながら、本願はアーム56が伸展するときは挿通路1aの広がりを保持する保持部4を備えているので、このような食い込みの発生を抑え、アーム56を所定の位置まで円滑に伸展させることができる。
【0049】
なお、本実施形態では保持部4の溝43以外の部品(取付具41、玉42、玉押圧具44、コイルスプリング45、保持力調整ネジ46)をフレーム板122に設けたが、取付金具2に設けてもよい。
【0050】
また本実施形態のクランプ1は、滑車12を備えた構成となっているので、アーム56が伸展するときにより円滑となる。しかしながら、クランプ1は、滑車12以外を備える構成でもよく、例えば、非特許文献1のような滑車無しのものでもよい。
【0051】
[第2実施形態]
次に、図6を用いて、第2実施形態のクランプ装置100Aを説明する。図6A図6Bは第2実施形態のクランプ装置100Aの使用例を示す図であり、それぞれ第1実施形態の図4A図4Bに対応する図である。第2実施形態のクランプ装置100Aにおいては、第1実施形態のクランプ装置100と構成が同一の部分については同一の参照符号を付与してその詳細な説明は省略し、構成が異なる同一名の部分については参照符号に添え字「A」を付す。
【0052】
第1実施形態で、締付解除具3が締付具11を押圧して締付具11と滑車121の間に食い込んだロープ61を解放させるタイミングは種々の状況によって変わる可能性がある。例えば、作業用作業車5が傾斜した坂に停車しているときは、その傾斜角の違いによって、滑車121やロープ61の自重による締付具11と滑車121の角度が変わる。また、ロープ61が締付具11と滑車121の間に食い込んだ状態で木材Wを引き寄せるときはクランプ1が傾斜するが、木材Wの位置やクランプ1の高さの違いなどによって、このクランプの傾斜角が異なる。このために、第2実施形態のクランプ装置100Aの締付解除具3Aは、締付具11と滑車121の間に食い込んだロープ61を解放させるタイミングを調整できるように、押圧部31Aを移動できる締付調整ネジ32を備えている(図6参照)。
【0053】
このように、クランプ1の形式が第1、第2実施形態のように、締付具11が回転することで挿通路1aが狭くなり、ロープ61が挟持される回転式クランプであれば、締付解除手段として締付解除具3を用い、締付具11を逆方向に回転させる方法で食い込みを解放させることができる。そして、本発明のクランプ装置は、この逆回転の方法を第1、第2実施形態の方法に限定するものではない。
【0054】
[変形例]
図7A図7Dは、第1、第2実施形態以外の逆回転の方法を例示する変形例である。図7Aは第1変形例であり、図示するように、締付具11’を押し易いようにするための舌片113を設けている。そして、この舌片113を押すことで締付具11’を逆回転させている。図7Bは第2変形例であり、図示するように、締付具11と滑車121を連結する第1軸13を引くことで、食い込みの摩擦力で締付具11を逆方向に回転させている。このように、締付解除手段による食い込みの解除は、締付具11を押すだけでなく、引く構成で実現してよい。
【0055】
また、図7Cは第3変形例であり、図示するように、締付解除手段による食い込みの解除は、食い込んだロープ61を引くことで、締付具11を逆方向に回転させる方法でもよい。ロープ61を引く方法としては、例えばウインチ6のラチェットで繰り出しを阻止した状態で、アーム56を少しだけ送る方法がある。
【0056】
また、図7Dは第4変形例であり、図示するように、締付解除手段による食い込みの解除は、滑車121を回転させることで、締付具11を逆方向に回転させる方法でもよい。この滑車121を回転させる方法として、例えば、滑車121’とその第3軸123’にキー溝1211、1231を設け、このキー溝1211、1231にキー125を差し込んで、滑車121’と第3軸123’を固着する。そして、第3軸123’を回転させることにより、滑車121’を回転させる。
【0057】
[第3実施形態]
次に、図8を用いて、第3実施形態のクランプ装置100Bの主要な構成を説明する。第3実施形態のクランプ装置100Bにおいては、第1実施形態のクランプ装置100と構成が異なる同一名の部分については参照符号に添え字「B」を付す。
【0058】
図8A図8Bに示すように、クランプ装置100Bは、クランプ1B、取付金具2B、締付解除具3B、ロープガイド7と、からなる。そして、クランプ1Bは、金属製であり、シャーシ15と、締付具11Bと、締付具11Bを摺動させるための第5軸16と、ガイド17と、当接具18と、からなる。この時、締付具11と当接具18の間がロープ61の挿通路1aBとなる。そして、本実施形態のクランプ1Bは、締付具11Bが摺動することで挿通路1aBが狭くなり、ロープ61が挟持される摺動式クランプとなっている。
【0059】
シャーシ15は平板である。また、締付具11Bは、楔形の平板である。そして、締付具11Bは、楔を形成する一方の面がロープ61に当接する第3当接面11Baとなり、他方の面が第1摺動面11Bbとなっている。そして、締付具11Bは、シャーシ15に設けられた長孔151に沿って、楔形の長手方向に、摺動可能に保持されている。
【0060】
この締付具11Bの摺動可能な保持は、第5軸16とガイド17によって行われる。具体的には、第5軸16が締付具11Bの長孔151に嵌入しており、ガイド17はシャーシ15にネジ止めされるとともに、長孔151と平行な第2摺動面17aを備えている。このため、締付具11Bの第1摺動面11Bbは、ガイド17の第2摺動面17aに沿って摺動するとともに、長孔151に沿って摺動することになる。
【0061】
また、シャーシ15にネジ止めされた平板の当接具18は、ロープ61に当接する第4当接面18aを備えている。そして、第4当接面18aと締付具11Bの第1当接面11Baの間で挿通路1aBが形成される。
【0062】
図8Aにおいて、ガイド17と当接具18は、シャーシ15に固定されており、締付具11Bは左右方向に摺動可能となっている。したがって、締付具11Bが右方に摺動すれば挿通路1aBが狭くなり、左方に摺動すれば挿通路1aBが広くなる。締付具11Bの第3当接面11Baには先端が図8Aで左方(楔が広がる方向)に寄った歯11Bcが形成されている。このため、締付具11Bに対してロープ61が右方(楔が狭くなる方向)に動くと大きな摩擦抵抗になる。
【0063】
このようなクランプ1Bの構成により、挿通路1aBのロープ61は図8Aで左方へは移動可能であり、ロープ61が右方に動くと締付具11Bが右方に動いて挿通路1aBが狭くなるので、移動できなくなる。つまり、クランプ1Bは、ロープ61に右方の強い力が掛かるとロープ61が締付具11Bと当接具18の間に食い込む構成となっている。
【0064】
取付金具2Bと締付解除具3Bは、集材用作業車5のアーム56側に固着される。図8に示すように、取付金具2Bは、両端が曲げられたコの字形の板金であり、一方の曲げ部が延在してアーム56にネジ止めされる。他方の曲げ部は補強である。
【0065】
締付解除手段である締付解除具3Bは、共にL字状に曲げられた表押圧部33と裏押圧部34とからなり、図8Bに示すように、取付金具2Bにネジ止めされている。この表押圧部33の一端には、延在して直角に曲げられた取付部21が形成される。そして、クランプ1Bのシャーシ15が、この取付部21に第6軸211によって回動可能に軸支されている。また、取付金具2Bには、第6軸211で回動するクランプ1Bが当たらないように、表押圧部33と裏押圧部34との間に切欠き22が形成されている。なお、本実施形態では取付部21は、表押圧部33に形成されているが、取付金具2Bに形成されていてもよい。
【0066】
図8Aの2点鎖線で示すように、表押圧部33は、第5軸16の右方に位置し、第6軸211によって回動するクランプ1Bにより(図8Bのように長く伸びる)第5軸16を押圧する。また、裏押圧部34も表押圧部33と同時に(図8Bのように長く伸びる)第5軸16を押圧する。
【0067】
これにより、締付解除具3Bである表押圧部33と裏押圧部34が、クランプ1Bの回動によって、締付具11Bを図8Aで左方に押圧することができる。つまり、クランプ装置100Bは取付金具2Bで集材用作業車5のアーム56に取り付けられているため、アーム56の屈伸に応じて、締付解除具である締付解除具3Bが、締付具11Bを食い込みの解除方向、つまり挿通路1aBを広げる方向に押圧することになる。
【0068】
ロープガイド7は、2つのローラ71と、それぞれのローラ71を回動可能に軸支する第7軸72と、ロープ61の外れを防止する長円形の通路板73と、からなる。そして、ロープガイド7を図8に示すように、シャーシ15のロープ61の繰り出しが可能な側(図8Aで左側)に設けておくことでロープ61の通路が2つのローラ71の範囲に規制される。
【0069】
なお、本実施形態のクランプ1Bの説明においては、1枚のシャーシ15の表面にガイド17や当接具18等が固定された状態で図示するとともに説明を行っているが、2枚のシャーシ15を用いてシャーシ間でガイド17や当接具18等を挟んで固定等したクランプの構成でも構わない。
【0070】
[使用例]
図9A図9Bは第3実施形態のクランプ装置100Bの使用例を示し、第1実施形態の使用例を示した図4A図4Bと同様な動作である。
図8Aのステップ1では、アーム56が木材W側に向けて伸展されており、クランプ1Bが取付部21と取付金具2Bを介して回動自在にアーム56に取り付けられている。ウインチ6から繰り出されたロープ61は、締付具11Bと当接具18の間の挿通路1aBを通っており、ロープ61の先端は垂れ下がっている。
【0071】
ステップ1では締付解除具3Bの表押圧部33と裏押圧部34は、締付具11Bの第5軸16から離間している。そして、クランプ装置100Bは、ウインチ6から木材W側に向けてロープ61を繰り出すことができる。ステップ1の垂れ下がったロープ61の先端は、木材W側に向けて繰り出されて木材Wに取り付けられる。なお、クランプ装置100Bは、ロープ61の木材Wへの取り付けの際、後述する図9Bにおける左方の拡大図の状態でロープ61を繰り出しても構わない。
【0072】
そして、アーム56が屈曲を始めると、図9Bの右方の拡大図に示すように、挿通路1aBの幅が狭くなり、アーム56が図9Bで左方に動くとロープ61が締付具11Bと当接具18の間に食い込んで、アーム56が屈曲すると木材Wが引き寄せられる。
【0073】
そして、アーム56が所定の角度まで屈曲すると、屈曲の途中で図9Bの左方の拡大図に示すように、締付解除手段である締付解除具3Bが締付具11Bの第5軸16を押圧する。そのためクランプ装置100Bは、締付具11Bと当接具18の間に食い込んだロープ61を解放させる。つまり、締付解除手段によって狭くなっていた挿通路1aBが、広がることになる。
【0074】
このように、本発明は摺動式クランプを用いたクランプ装置100Bにも適用することができる。なお、本実施形態では当接具18の第5軸16を押圧して食い込みを解除させたが、本発明はこの方法に限定するものではない。例えば、第1、第2実施形態の変形例のように、アームの屈伸力を利用して、当接具18を引く方法でもよく、また当接具18やガイド17を移動させて挿通路1aBを広げる方法でもよく、ロープ61をウインチ6側に引く方法でもよい。
【0075】
また、本実施形態のクランプ装置100Bは、締付具11Bが摺動することで挿通路1aBが狭くなり、ロープ61が挟持される摺動式クランプとなっている。この摺動式であるクランプ1Bの場合、ロープ61は第3当接面11Baと第4当接面18aに当接するため当接面積が大きくなる。従って、当接面積が第1実施形態の回動式の当接面積に比べてはるかに大きいので、ロープ61への損傷が小さくなることから、本実施形態は非金属製のロープ61に非常に適している。
【0076】
なお、上述の実施形態はアーム56の屈伸力を利用して食い込みを解除させるものであった。しかしながら、集材作業に用いるクランプ装置は、アーム56の屈伸力ではなく、可動式で食い込みを解除させる構成でも構わない。具体的には、クランプ装置は、締付解除手段である締付解除具をプランジャー(DCソレノイド)やモータ等を使用した電気的な構成としてもよい。また、ロープやリンクなどを使用した機構的な構成としてもよい。このように手動により締付解除手段を操作できれば、操作者が要望するタイミングで、狭くなった挿通路を広げることができる。
【符号の説明】
【0077】
100、100A、100B:クランプ装置
1、1B:クランプ
1a、1aB:挿通路
11、11B:締付具
12:滑車部
2、2B:取付金具
3、3A、3B:締付解除具
31:押圧部
4:保持部
5:集材用作業車
56:アーム
61:ロープ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9