(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】超音波画像表示装置
(51)【国際特許分類】
A61B 8/00 20060101AFI20241025BHJP
【FI】
A61B8/00
(21)【出願番号】P 2020192987
(22)【出願日】2020-11-20
【審査請求日】2023-09-01
(31)【優先権主張番号】P 2019235150
(32)【優先日】2019-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000243364
【氏名又は名称】本多電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114605
【氏名又は名称】渥美 久彦
(72)【発明者】
【氏名】石黒 稔道
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-041410(JP,U)
【文献】特開2012-085875(JP,A)
【文献】特開2009-039354(JP,A)
【文献】特開平04-082540(JP,A)
【文献】国際公開第2019/064471(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 - 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に穿刺針を穿刺する際に前記被検体に対する超音波ビームの送受信を行うことにより、前記被検体の第1断面に対応する第1断面画像と、前記第1断面に直交する第2断面に対応する第2断面画像とを同一画面上に同時に表示する装置であって、
プローブ本体の外面上に、第1振動子を複数配列してなる第1断面画像取得用の第1リニア振動子アレイを長軸とし、第2振動子を複数配列してなる第2断面画像取得用の第2リニア振動子アレイを短軸として、前記両アレイがT字状をなすように直交配置され、前記第1リニア振動子アレイの
一方の端部の延長上に位置する前記第2リニア振動子アレイの領域を交差部位と定義したときに、前記交差部位を挟んで前記端部の反対側となる位置に、被検体に対する穿刺時に穿刺針を通過させるための穿刺ポイントが設定されている超音波プローブであって、
前記第1リニア振動子アレイは、前記第1振動子の配列方向に直交する幅方向に狭まり第1の焦点にて収束する超音波ビームを送信し、
前記第2リニア振動子アレイにおける少なくとも前記交差部位は、前記第2振動子の配列方向に直交する幅方向に狭まり前記第1の焦点よりも遠い位置にある第2の焦点にて収束する超音波ビーム、または、当該幅方向に収束しない超音波ビームを送信する
前記超音波プローブと、
前記第2断面画像の略中央部を通って垂直方向に延びる垂直ラインを表示する垂直ライン表示手段と、
前記第2断面画像において前記穿刺針の先端が見え始める深さ位置を事前に示す枠状のガイドマークを前記第2断面画像の前記垂直ライン上に表示するガイドマーク表示手段と、
を備えるとともに、
前記穿刺針の挿入直後には、前記第2リニア振動子アレイの前記交差部位から送信される超音波ビームのみによって前記穿刺針の先端が捉えられ、前記穿刺針をさらに深く挿入したときには、前記第1リニア振動子アレイ及び前記第2リニア振動子アレイの前記交差部位の両方から送信される超音波ビームによって前記穿刺針の先端がそれぞれ捉えられ、
前記穿刺針の先端の画像が、前記穿刺針の挿入方向に延びる短い線分となって前記ガイドマーク内に出現する
ことを特徴とする超音波画像表示装置。
【請求項2】
前記第1リニア振動子アレイは、前記被検体よりも軟質の材料により形成された断面凸レンズ形状の音響レンズを有し、
前記第2リニア振動子アレイは、前記被検体よりも硬質の材料により形成された断面凸レンズ形状の音響レンズを有するとともに、前記第2振動子の配列方向に直交する幅方向に収束せずに、前記幅方向に発散する超音波を送信する
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波画像表示装置。
【請求項3】
前記第1リニア振動子アレイは、前記被検体よりも軟質の材料により形成された断面凸レンズ形状の音響レンズを有し、
前記第2リニア振動子アレイは、前記被検体よりも軟質の材料により形成された断面凹レンズ形状の音響レンズを有するとともに、前記第2振動子の配列方向に直交する幅方向に収束せずに、前記幅方向に発散する超音波を送信する
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波画像表示装置。
【請求項4】
前記第1リニア振動子アレイは、前記被検体よりも軟質の材料により形成された断面凸レンズ形状の音響レンズを有し、
前記第2リニア振動子アレイは、前記被検体よりも軟質の材料により形成され、
前記第2リニア振動子アレイにおける少なくとも前記交差部位は、凹凸のないフラットな形状を呈しているとともに、前記第2振動子の配列方向に直交する幅方向に収束せずに、直進または前記幅方向に発散する超音波を送信する
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のリニア振動子アレイを直交配置した構造の超音波プローブを用い、超音波の送受信により直交2断面の超音波断面画像を同時に表示する超音波画像表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療現場では、一般的な注射、神経ブロック注射、採血、カテーテルの挿入など、生体組織(被検体)に対して穿刺する行為が広く行われている。神経ブロック注射やカテーテルの挿入などの処置を行う場合、被検体における目的の部位に対して正確に穿刺を行わないと、生体組織を損傷させてしまう可能性がある。このような背景の中、近年では、超音波プローブを用いて目的の部位及び穿刺針の様子を捉え、超音波断面画像でそれらを観察しながら穿刺を行うといった超音波ガイド技術が提案されている。
【0003】
従来、超音波ガイド技術を用いた装置では、通常の超音波プローブ(いわゆるシングルプレーン型プローブ)を用いて1つの断面画像を捉え、この断面画像を表示することで穿刺を行っていた。しかしながら、従来の装置では、横断面及び縦断面のいずれか一方しか確認することができず、被検体における目的の部位及び穿刺針の全貌を同時に捉えることができなかった。そのため、穿刺針が正確に穿刺されていないような場合でも、作業者がそれに気付きにくいという問題があった。従って、正確な穿刺を行うためには、細かいプローブ操作を繰り返しながら、少しずつ穿刺針の前進させるようにして穿刺を行わなければならず、操作が煩雑であった。
【0004】
そこで、本願発明者らは、目的の部位及び穿刺針の全貌を同時に捉えるべく、直交する2断面(横断面及び縦断面)で同時に観察をすることができる超音波プローブ(いわゆるバイプレーン型プローブ)を備えた超音波画像表示装置を過去に提案している(例えば、特許文献1等参照)。この種の超音波プローブは、縦断面用のリニア振動子アレイと横断面用のリニア振動子アレイとをT字状に配置してなるため、T型プローブとも呼ばれている。各々のリニア振動子アレイは、アレイ幅方向に収束して焦点を結ぶ超音波をそれぞれ送信する。そしてこの超音波プローブを用いれば、医師等の作業者は直交する2断面の超音波画像を観察することで、目的の部位及び穿刺針の全貌を同時に捉えることが可能になると考えられている。
【0005】
また、より簡単に目的の部位に対して確実に穿刺を行いたいというニーズに鑑み、本願発明者らは、補助器具の一種である穿刺ガイド用アタッチメントを有する超音波プローブを過去に提案している(例えば、特許文献2等参照)。通常、生体組織において穿刺針の先端が最初に通過するポイント(穿刺ポイント)は、アレイ同士が交差する部位の近傍に設定されている。そしてこの穿刺ガイド用アタッチメントを使用すると、穿刺針が所定の角度で案内されながら縦断面に沿って穿刺ポイントを通過できるようになっている。なお、特許文献2の超音波プローブを備えた超音波画像表示装置では、横断面において穿刺針の先端が見え始める深さ位置を事前に示すために、枠状のガイドマークが表示される。それゆえ、ガイドマーク内に円形の像が出現したことをもって、医師等の作業者は、穿刺ポイントを通過した直後の穿刺針の先端位置を把握することができる。このとき、穿刺ポイント通過直後の穿刺針の先端は、まず横断面用のリニア振動子アレイからの超音波ビームのみによって捉えられる。穿刺針をさらに深く挿入すると、横断面用及び縦断面用のリニア振動子アレイからの超音波ビームの両方によって捉えられるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5292581号公報
【文献】特許第6019369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記従来の超音波プローブでは、2つの超音波ビームを各々収束させてスライス幅を狭くすることにより、シャープな断面画像を得るようにしている。しかし、横断面用のリニア振動子アレイからの超音波ビームのスライス幅が狭いと、超音波ビームによって捉えられる穿刺針の長さが小さくなり、横断面の断面画像において穿刺針を円形の小さな点としてしか認識できなくなる。それゆえ、穿刺針の先端が横断面画像の中心にあるか否か(即ち、穿刺針の挿入位置が正しいか否か)の確認はできても、穿刺針の挿入方向が正しいか否かの確認ができなかった。従って、例えば穿刺ガイド用アタッチメントなしのフリーの状態で穿刺するときに、穿刺針を縦断面上にてその方向に沿って正確に挿入することが困難であった。
【0008】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、穿刺直後の穿刺針の挿入位置及び挿入方向を把握することができる超音波プローブを用いた場合に、挿入位置及び挿入方向が感覚的にわかりやすい態様で、穿刺直後の穿刺針を表示することができる超音波画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、被検体に穿刺針を穿刺する際に前記被検体に対する超音波ビームの送受信を行うことにより、前記被検体の第1断面に対応する第1断面画像と、前記第1断面に直交する第2断面に対応する第2断面画像とを同一画面上に同時に表示する装置であって、プローブ本体の外面上に、第1振動子を複数配列してなる第1断面画像取得用の第1リニア振動子アレイを長軸とし、第2振動子を複数配列してなる第2断面画像取得用の第2リニア振動子アレイを短軸として、前記両アレイがT字状をなすように直交配置され、前記第1リニア振動子アレイの一方の端部の延長上に位置する前記第2リニア振動子アレイの領域を交差部位と定義したときに、前記交差部位を挟んで前記端部の反対側となる位置に、被検体に対する穿刺時に穿刺針を通過させるための穿刺ポイントが設定されている超音波プローブであって、前記第1リニア振動子アレイは、前記第1振動子の配列方向に直交する幅方向に狭まり第1の焦点にて収束する超音波ビームを送信し、前記第2リニア振動子アレイにおける少なくとも前記交差部位は、前記第2振動子の配列方向に直交する幅方向に狭まり前記第1の焦点よりも遠い位置にある第2の焦点にて収束する超音波ビーム、または、当該幅方向に収束しない超音波ビームを送信する前記超音波プローブと、前記第2断面画像の略中央部を通って垂直方向に延びる垂直ラインを表示する垂直ライン表示手段と、前記第2断面画像において前記穿刺針の先端が見え始める深さ位置を事前に示す枠状のガイドマークを前記第2断面画像の前記垂直ライン上に表示するガイドマーク表示手段と、を備えるとともに、前記穿刺針の挿入直後には、前記第2リニア振動子アレイの前記交差部位から送信される超音波ビームのみによって前記穿刺針の先端が捉えられ、前記穿刺針をさらに深く挿入したときには、前記第1リニア振動子アレイ及び前記第2リニア振動子アレイの前記交差部位の両方から送信される超音波ビームによって前記穿刺針の先端がそれぞれ捉えられ、前記穿刺針の先端の画像が、前記穿刺針の挿入方向に延びる短い線分となって前記ガイドマーク内に出現することを特徴とする超音波画像表示装置をその要旨とする。
【0010】
従って、請求項1に記載の発明によると、穿刺ポイントの近傍に位置する交差部位からの超音波ビームのスライス幅が広くなる結果、当該超音波ビームによって捉えられる穿刺針の長さが大きくなる。よって、第2断面の断面画像において、穿刺針を針の挿入方向に延びる短い線分として認識することが可能になる。従って、穿刺直後の穿刺針の挿入位置ばかりでなく挿入方向についても把握することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記第1リニア振動子アレイは、前記被検体よりも軟質の材料により形成された断面凸レンズ形状の音響レンズを有し、前記第2リニア振動子アレイは、前記被検体よりも硬質の材料により形成された断面凸レンズ形状の音響レンズを有するとともに、前記第2振動子の配列方向に直交する幅方向に収束せずに、前記幅方向に発散する超音波を送信することをその要旨とする。
【0012】
従って、請求項2に記載の発明によると、第1リニア振動子アレイから発せられる超音波ビームは、被検体よりも軟質の材料により形成された断面凸レンズ形状の音響レンズを通過することで、第1の焦点にて収束する。それに対し、第2リニア振動子アレイから発せられる超音波ビームは、被検体よりも硬質の材料により形成された断面凸レンズ形状の音響レンズを通過しても、第2振動子の配列方向に直交する幅方向に収束せずに、前記幅方向に発散する。それゆえ、穿刺ポイントの近傍に位置する交差部位からの超音波ビームのスライス幅が広くなり、当該超音波ビームによって捉えられる穿刺針の長さが大きくなる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1において、前記第1リニア振動子アレイは、前記被検体よりも軟質の材料により形成された断面凸レンズ形状の音響レンズを有し、前記第2リニア振動子アレイは、前記被検体よりも軟質の材料により形成された断面凹レンズ形状の音響レンズを有するとともに、前記第2振動子の配列方向に直交する幅方向に収束せずに、前記幅方向に発散する超音波を送信することをその要旨とする。
【0014】
従って、請求項3に記載の発明によると、第1リニア振動子アレイから発せられる超音波ビームは、被検体よりも軟質の材料により形成された断面凸レンズ形状の音響レンズを通過することで、第1の焦点にて収束する。それに対し、第2リニア振動子アレイから発せられる超音波ビームは、被検体よりも軟質の材料により形成された断面凹レンズ形状の音響レンズを通過することで、第2振動子の配列方向に直交する幅方向に収束せずに、前記幅方向に発散する。それゆえ、穿刺ポイントの近傍に位置する交差部位からの超音波ビームのスライス幅が広くなり、当該超音波ビームによって捉えられる穿刺針の長さが大きくなる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1において、前記第1リニア振動子アレイは、前記被検体よりも軟質の材料により形成された断面凸レンズ形状の音響レンズを有し、前記第2リニア振動子アレイは、前記被検体よりも軟質の材料により形成され、前記第2リニア振動子アレイにおける少なくとも前記交差部位は、凹凸のないフラットな形状を呈しているとともに、前記第2振動子の配列方向に直交する幅方向に収束せずに、直進または前記幅方向に発散する超音波を送信することをその要旨とする。
【0016】
従って、請求項4に記載の発明によると、第1リニア振動子アレイから発せられる超音波ビームは、被検体よりも軟質の材料により形成された断面凸レンズ形状の音響レンズを通過することで、第1の焦点にて収束する。それに対し、第2リニア振動子アレイにおける少なくとも交差部位から発せられる超音波ビームは、凹凸のないフラットな形状の前記交差部位を通過しても、第2振動子の配列方向に直交する幅方向に収束せずに、直進または前記幅方向に発散する。それゆえ、穿刺ポイントの近傍に位置する交差部位からの超音波ビームのスライス幅が広くなり、当該超音波ビームによって捉えられる穿刺針の長さが大きくなる。
【0017】
上記した請求項1等に記載の発明は、被検体に穿刺針を穿刺する際に前記被検体に対する超音波の送受信を行うことにより、前記被検体の第1断面に対応する第1断面画像と、前記第1断面に直交する第2断面に対応する第2断面画像とを同一画面上に同時に表示する装置であって、請求項1乃至4のいずれか1項の超音波プローブと、前記第2断面画像の略中央部を通って垂直方向に延びる垂直ラインを表示する垂直ライン表示手段とを備える。
【0018】
従って、穿刺ポイントにて穿刺を行ったときには、スライス幅が広くなった超音波ビームによって穿刺針が捉えられ、その捉えられた穿刺針の先端の画像が垂直ラインの付近に出現する。このときの穿刺針の先端は、針の挿入方向に延びる短い線分の画像として現れる。よって、垂直方向に延びる垂直ラインを基準としてそれと穿刺針先端の画像とを比較することが可能となり、挿入位置及び挿入方向が感覚的にわかりやすくなる。そのため、穿刺針を縦断面上にてその方向に沿って正確に挿入することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
以上詳述したように、請求項1~4に記載の発明によると、穿刺直後の穿刺針の挿入位置及び挿入方向を把握することができる。
【0020】
またこの場合に、挿入位置及び挿入方向が感覚的にわかりやすい態様で、穿刺直後の穿刺針を表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明を具体化した第1実施形態の超音波画像表示装置(血管撮影装置)を示す全体概略図。
【
図2】第1実施形態の血管撮影装置の電気的構成を示すブロック図。
【
図3】第1実施形態における超音波プローブのプローブ本体を示す斜視図。
【
図4】第1実施形態の超音波プローブが有する第1リニア振動子アレイ及び第2リニア振動子アレイを示す概略斜視図。
【
図5】(a)は第1実施形態の超音波プローブが有する第1リニア振動子アレイ及び第2リニア振動子アレイの概略平面図、(b)は(a)のA1-A1線断面図、(c)は(a)のA2-A2線断面図、(d)は(a)のA3-A3線断面図。
【
図6】(a)は
図5(a)のA1-A1線の断面において超音波の進行方向を説明するための概略図、(b)は
図5(a)のA3-A3線の断面において超音波の進行方向を説明するための概略図。
【
図7】第1実施形態において、超音波プローブの使用方法を説明するための概略図。
【
図8】第1実施形態において、穿刺針の挿入前の第1断面画像及び第2断面画像を示す説明図。
【
図9】第1実施形態において、穿刺針の挿入後の第1断面画像及び第2断面画像を示す説明図。
【
図10】(a)は従来技術の超音波プローブを使用した場合の穿刺時において、枠状のガイドマーク内に現れる穿刺針の画像を示す概略図、(b)及び(c)は第1実施形態の超音波プローブを使用した場合の穿刺時において、枠状のガイドマーク内に現れる穿刺針の画像を示す概略図。
【
図11】(a)は第2実施形態の超音波プローブが有する第1リニア振動子アレイ及び第2リニア振動子アレイの概略平面図、(b)は(a)のB1-B1線断面図、(c)は(a)のB2-B2線断面図、(d)は(a)のB3-B3線断面図。
【
図12】(a)は第3実施形態の超音波プローブが有する第1リニア振動子アレイ及び第2リニア振動子アレイの概略平面図、(b)は(a)のC1-C1線断面図、(c)は(a)のC2-C2線断面図、(d)は(a)のC3-C3線断面図。
【
図13】(a)は
図12(a)のC1-C1線の断面において超音波の進行方向を説明するための概略図、(b)は
図12(a)のC3-C3線の断面において超音波の進行方向を説明するための概略図。
【
図14】(a)は別の実施形態の超音波プローブが有する第1リニア振動子アレイ及び第2リニア振動子アレイの概略平面図、(b)は(a)のD1-D1線断面図、(c)は(a)のD2-D2線断面図、(d)は(a)のD3-D3線断面図。
【
図15】(a)は別の実施形態の超音波プローブが有する第1リニア振動子アレイ及び第2リニア振動子アレイの概略平面図、(b)は(a)のE1-E1線断面図、(c)は(a)のE2-E2線断面図、(d)は(a)のE3-E3線断面図。
【
図16】(a)は
図15(a)のE1-E1線の断面において超音波の進行方向を説明するための概略図、(b)は
図15(a)のE3-E3線の断面において超音波の進行方向を説明するための概略図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1実施形態]
以下、本発明を超音波画像表示装置としての血管撮影装置に具体化した一実施形態を
図1~
図9に基づき詳細に説明する。
【0023】
図1は、本実施形態の血管撮影装置1を示す全体概略図であり、
図2は、その血管撮影装置1の電気的構成を示すブロック図である。
【0024】
図1及び
図2に示されるように、本実施形態の血管撮影装置1は、装置本体2と、その装置本体2に接続される超音波プローブ3とを備えている。この血管撮影装置1は、例えば生体組織4(被検体)内の静脈82にカテーテルなどの穿刺針6を挿入する際に使用される。この血管撮影装置1は、静脈82の横断面を示す第2断面画像8(短軸像)と静脈82の縦断面を示す第1断面画像9(長軸像)とを同一の画面10上に同時に表示する(
図8~
図9参照)。
【0025】
図1~
図3に示されるように、超音波プローブ3は、信号ケーブル11と、信号ケーブル11の先端に接続されるプローブ本体12と、プローブ本体12に対して着脱可能に固定される穿刺ガイド用アタッチメント14(穿刺ガイド機構)と、信号ケーブル11の基端に設けられるプローブ側コネクタ15とを備える。装置本体2にはコネクタ16が設けられ、そのコネクタ16に超音波プローブ3のプローブ側コネクタ15が接続されている。
【0026】
図2、
図3、
図4、
図5に示されるように、この超音波プローブ3は、直交する2断面(横断面及び縦断面)で同時に観察が可能であることから、バイプレーン型プローブと称されている。プローブ本体12の底面となる振動子設置面20は生体組織4との接触面であり、超音波の送受信を行うための送受信面となる。この振動子設置面20上には、第1リニア振動子アレイ91と第2リニア振動子アレイ92とが配置されている。第1リニア振動子アレイ91は、縦断面画像(第1断面画像9)を取得するための振動子アレイであって、第1振動子91aを複数配列することによって構成されている。
図2に示されるように、第1リニア振動子アレイ91は長軸方向Yに延びており、振動子設置面20におけるプローブ本体12の中心線L0上に位置している。第2リニア振動子アレイ92は、横断面画像(第2断面画像8)を取得するための振動子アレイであって、第2振動子92aを複数配列することによって構成されている。
図2に示されるように、第2リニア振動子アレイ92は短軸方向Xに延びており、具体的には第1リニア振動子アレイ91の一方の端部93にて第1リニア振動子アレイ91と直交するように配置されている。この超音波プローブ3は、第1リニア振動子アレイ91と第2リニア振動子アレイ92とが略T字状をなすように配置されていることから、T型プローブとも称される。
【0027】
より詳細に説明すると、第1リニア振動子アレイ91における複数の第1振動子91aは、縦断面に対応した長軸方向Yに沿って直線的に配列されている。また、第2リニア振動子アレイ92における複数の第2振動子92aは、横断面に対応した短軸方向Xに沿って直線的に配列されている。本実施形態において、第2リニア振動子アレイ92に属する第2振動子92aの素子数は、例えば48個であり、第1リニア振動子アレイ91に属する第1振動子91aの素子数は、それよりも多い数(例えば80個)である。従って、第1リニア振動子アレイ9の配列方向の長さは、第2リニア振動子アレイ92よりも長くなっている。
【0028】
本実施形態の超音波プローブ3において、略T字状に配置された第1リニア振動子アレイ91及び第2リニア振動子アレイ92における超音波の走査は、例えば、短軸方向Xの第2リニア振動子アレイ92の一端の第2振動子92aから開始される。そして、短軸方向Xの第2リニア振動子アレイ92の他端の第2振動子92aに向けて、1素子ずつ順番に超音波の走査が行われる。具体的には、上記方向に向けて1素子ずつ順番に例えば5MHzの超音波が発信される。次いで、短軸方向Xの第2リニア振動子アレイ92のほぼ中央に位置する長軸方向Yの第1リニア振動子アレイ91の一端の第1振動子91aから他端の第1振動子91aに向けて1素子ずつ順番に超音波の走査が行われる。
【0029】
プローブ本体12において、長軸方向Yに延びる第1リニア振動子アレイ91の延長線(振動子設置面20におけるプローブ本体12の中心線L0)上かつ振動子設置面20の端縁部(
図2では下側、
図3では左側の端縁部)には、位置決め部31が設けられている。位置決め部31は、生体組織4に対する穿刺針6の挿入位置を決める際に、穿刺針6の先端71側を当接させて案内するための凹部である。この位置決め部31は、穿刺時に穿刺針6を通過させるための位置である穿刺ポイントP1であり、第2リニア振動子アレイ92において第1リニア振動子アレイ91の端部の延長上の領域である交差部位K1の近傍に設定されている(
図5(a)等を参照)。
【0030】
生体組織4が接触するプローブ本体12の振動子設置面20において、短軸方向Xの両端部には、生体組織4の観察部位の圧迫を回避するための凸条部32が長軸方向Yに沿って設けられている(
図3参照)。プローブ本体12の振動子設置面20にて一対の凸条部32を離間して設けることで、振動子設置面20側における一対の凸条部32間の領域があまり強く圧迫されなくなる。よって、観察部位にある静脈82が押し潰されることが防止され、静脈82への穿刺を確実に行うことが可能となる。
【0031】
図4、
図5、
図6に示されるように、第1リニア振動子アレイ91及び第2リニア振動子アレイ92における超音波放射面の側には、それぞれ音響整合層90を介して音響レンズ29、30が配設されている。また、第1リニア振動子アレイ91及び第2リニア振動子アレイ92における超音波放射面の反対側には、後方への超音波の伝播を防止するための図示しないバッキング材が配設されている。本実施形態の第1リニア振動子アレイ91は、生体組織4と接触する外面が膨らむように湾曲した断面凸レンズ形状の音響レンズ29を有している。また、本実施形態の第2リニア振動子アレイ92は、上記音響レンズ29と同じ曲率で湾曲した断面凸レンズ形状の音響レンズ30を有している。ただし、これら2つの音響レンズ29、30は材質が異なっている。即ち、第1リニア振動子アレイ91用の音響レンズ29は生体組織4よりも軟質の合成樹脂材料を用いて形成されているのに対し、第2リニア振動子アレイ92用の音響レンズ30は生体組織4よりも硬質の合成樹脂材料を用いて形成されている。換言すると、第1リニア振動子アレイ91用の音響レンズ29は生体組織4よりも音速が速い材料を用いて形成されているのに対し、第2リニア振動子アレイ92用の音響レンズ30は生体組織4よりも音速が遅い材料を用いて形成されている。本実施形態の場合、具体的には音響レンズ29はシリコーン樹脂を用いて形成され、それよりも硬い音響レンズ30はポリイミド系樹脂を用いて形成されている。なお、音響レンズ29は上記のシリコーン樹脂以外の比較的軟質な合成樹脂を用いて形成されることができる。また、音響レンズ30は上記のポリイミド系樹脂以外にも、例えばアクリル系樹脂やポリスチレン系樹脂などの比較的硬質な合成樹脂を用いて形成されることができる。
【0032】
図6(a)は
図5(a)のA1-A1線の断面において超音波の進行方向を説明するための概略図である。
図6(b)は
図5(a)のA3-A3線の断面において超音波の進行方向を説明するための概略図である。これらの図には下向きの矢印が描かれている。これらの矢印は各部分における音速を表しており、長いものほど音速が速いことを示している。
【0033】
生体組織4よりも音速が速い材料からなる音響レンズ29を有する第1リニア振動子アレイ91の場合、音響レンズ29の幅方向中心部を通過して生体組織4を進行する超音波よりも、音響レンズ29の幅方向端部を通過して生体組織4を進行する超音波のほうが、同一時間内により遠くまで到達する(
図6(a)参照)。その結果、第1リニア振動子アレイ91の発した超音波は、第1振動子91aの配列方向全域にわたって、第1振動子91aの幅方向に狭まり、第1の焦点F1にて収束するようになっている。
【0034】
これに対し、生体組織4よりも音速が遅い材料からなる音響レンズ30を有する第2リニア振動子アレイ92の場合、音響レンズ30の幅方向中心部を通過して生体組織4を進行する超音波のほうが、音響レンズ30の幅方向端部を通過して生体組織4を進行する超音波よりも、同一時間内により遠くまで到達する(
図6(b)参照)。その結果、第2リニア振動子アレイ92の発した超音波は、交差部位K1を含む第2振動子92aの配列方向全域にわたって、第2振動子92aの幅方向に収束しないで発散するようになっている。
【0035】
図1、
図2に示されるように、穿刺ガイド用アタッチメント14は、穿刺針6を案内するためのガイド溝33が形成された穿刺針ガイド部34と、穿刺針6の挿入角度を多段階的に調整可能な角度調整機構35と、プローブ本体12の側面下部に嵌め込んで固定する固定部36とを備える。穿刺ガイド用アタッチメント14は、第1断面画像8が示す横断面の中央部に穿刺針6が位置した状態で、第2断面画像9が示す縦断面に沿って穿刺針6が所定の角度で生体組織4に挿入されるように、穿刺針6を案内する。本実施形態の穿刺ガイド用アタッチメント14は、可撓性を有する樹脂材料を用いて形成された樹脂成型部品である。
【0036】
プローブ本体12の下部は、先端側に配置される第1リニア振動子アレイ91が横方向に出っ張ったハンマーヘッド型の外形形状(略T字形状)を有する(
図2及び
図3参照)。穿刺ガイド用アタッチメント14において、固定部36は、そのハンマーヘッド型の外形形状に沿って環状に形成されている。固定部36の内周側には、例えば係合凹部(図示略)が形成されており、プローブ本体12に形成された係合凸部(図示略)に係合凹部が係合することによって、穿刺ガイド用アタッチメント14がプローブ本体12に固定されている。
【0037】
穿刺ガイド用アタッチメント14において、固定部36の一端に角度調整機構35が設けられ、角度調整機構35に穿刺針ガイド部34が着脱可能に装着されている。穿刺針ガイド部34は、振動子設置面20から上方に離間した位置にて突出している。角度調整機構35は、プローブ本体12の位置決め部31を中心とした周方向に穿刺針ガイド部34を多段階的に移動させるとともに各位置にて固定可能に設けられた調整機構である。この角度調整機構35には、例えば3段階の切り替え位置が設けられている。
【0038】
穿刺針ガイド部34のガイド溝33は、振動子設置面20からの投影視にて、プローブ本体12の中心線L0上に存在するとともに、その中心線L0に沿って延びるように形成されている。穿刺針ガイド部34は、第1リニア振動子アレイ91における第1振動子91aの配列方向と平行な方向に延設されかつ基端部が互いに連結された2本の棒状部材40により構成され、上方から見た形状が略U字状となるよう形成されている。そして、穿刺針ガイド部34において2本の棒状部材40間に設けられた隙間がガイド溝33となっている。穿刺ガイド用アタッチメント14をプローブ本体12に装着した状態では、プローブ本体12の中心線L0上にガイド溝33が配置される。ガイド溝33には、穿刺針6を導入するための開口41と、導入した穿刺針6を当接させる底部42とが設けられている。さらに、穿刺針ガイド部34のガイド溝33には、開口41の側に行くに従って徐々に溝幅が広くなるよう形成された穿刺針導入部43が設けられている。
【0039】
そして、ガイド溝33の底部42とプローブ本体12の位置決め部31との組み合わせにより穿刺針6の挿入角度が決定される。つまり、プローブ本体12の位置決め部31に穿刺針6の先端71を当接させるとともに、ガイド溝33の底部42に穿刺針6の側面を当接させることによって、生体組織4に対する穿刺針6の挿入角度が決定される。また、穿刺ガイド用アタッチメント14において、角度調整機構35を操作し、穿刺針ガイド部34を移動させてガイド溝33の底部42の位置を変更することにより、底部42と位置決め部31とにより決定される穿刺針6の挿入角度が多段階的に調整されるようになっている。
【0040】
次に、
図2に基づいて血管撮影装置1における電気的な構成について詳述する。
【0041】
図2に示されるように、血管撮影装置1の装置本体2は、コントローラ50、パルス発生回路51、送信回路52、受信回路53、信号処理部54、画像処理部55、メモリ56、記憶装置57、入力装置58、表示装置59等を備える。コントローラ50は、周知の中央処理装置(CPU)を含んで構成されたコンピュータであり、メモリ56を利用して制御プログラムを実行し、装置全体を統括的に制御する。
【0042】
パルス発生回路51は、コントローラ50からの制御信号に応答して動作し、所定周期のパルス信号を生成して出力する。送信回路52は、超音波プローブ3における各リニア振動子アレイ91、92の第1振動子91a及び第2振動子92aの素子数に対応した複数の遅延回路(図示略)を含む。送信回路52は、パルス発生回路51から出力されるパルス信号に基づいて、各リニア振動子アレイ91、92の振動子91a、92aに応じて遅延させた駆動パルスを出力する。各駆動パルスの遅延時間は、超音波プローブ3から出力される超音波が所定の照射点で焦点を結ぶように設定されている。
【0043】
受信回路53は、図示しない信号増幅回路、遅延回路、整相加算回路を含む。この受信回路53では、超音波プローブ3における各リニア振動子アレイ91、92の振動子91a、92aで受信された各反射波信号(エコー信号)が増幅される。さらに受信回路53では、受信指向性を考慮した遅延時間が各反射波信号に付加された後、整相加算される。この加算によって、第1振動子91a及び第2振動子92aの受信信号の位相差が調整される。
【0044】
信号処理部54は、図示しない対数変換回路、包絡線検波回路、A/D変換回路などから構成されており、受信回路53からの反射波信号データに基づいて、信号強度を輝度の明るさで表現したデータ(Bモードデータ)を生成する。対数変換回路は反射波信号を対数変換し、包絡線検波回路は対数変換回路の出力信号の包絡線を検波する。また、A/D変換回路は、包絡線検波回路から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換する。
【0045】
画像処理部55は、信号処理部54が生成したBモードデータに基づいて所定の画像処理を行い、Bモードの超音波画像を生成する。具体的には、画像処理部55は、反射波信号の振幅(信号強度)に応じた輝度の画像データを生成する。生成された画像のデータは、逐次メモリ56に記憶される。なおここでは、生体組織4の横断面を示す第2断面画像8及び生体組織4の縦断面を示す第1断面画像9の画像データが生成され、メモリ56に記憶される。そして、メモリ56に記憶された1フレーム分の画像データに基づいて、生体組織4の第2断面画像8及び第1断面画像9が白黒の濃淡で表示装置59に表示される。
【0046】
入力装置58は、キーボード61やトラックボール62などで構成されており、ユーザからの要求や指示等の入力に用いられる。表示装置59は、例えば、LCDやCRTなどのディスプレイであり、生体組織4の第1断面画像9及び第2断面画像8や、各種設定の入力画面を表示するために用いられる。
【0047】
本実施形態の表示装置59の画面10には、
図8~
図10に示すように、第1断面画像9及び第2断面画像8が左右に並べて同時に表示される。第2断面画像8の中央部には画面垂直方向に沿って直線的に延びる仮想直線L2が存在するものとした場合、その仮想直線L2に対応する位置には、穿刺針6の進む方向を示す第1のガイドライン65(垂直ライン)が実際に表示される。また、第1断面画像9上には、穿刺針6の挿入角度での進路を示す第2のガイドライン66が、画面左上から右下の方向に向かって直線的に延びるように表示される。第1断面画像8上及び第2断面画像9上の各ガイドライン65,66は、本実施形態では同じ線種(例えば破線)及び線色(例えば黄色)で表示される。
【0048】
さらに、第1断面画像9上及び第2断面画像8上には、穿刺針6の先端71が見え始める深さ位置を作業者に事前に示す位置表示部が表示される。本実施形態では、位置表示部として、水平ライン67及びガイドマーク68が表示される。本実施形態のガイドマーク68は、第2断面画像8上におけるガイドライン65と水平ライン67との交差位置において、枠内に断面画像を表示した四角形の枠状のマークである。このガイドマーク68は、穿刺針6の先端71に対応した画像の直径に相当する部分の寸法よりも大きなサイズ(例えば1.5倍~3倍程度大きなサイズ)を有している。なお、本実施形態においてコントローラ50は、表示装置59にガイドマーク68を表示させるガイドマーク表示手段として機能する。
【0049】
水平ライン67は、プローブ本体12における振動子設置面20に対して水平なラインである。水平ライン67は、ガイドライン65,66と異なる線種(例えば一点鎖線)及び異なる線色(例えば緑色)で表示される。一方、ガイドマーク68は、ガイドライン65,66と同じ線種(例えば点線)及び線色(例えば黄色)で表示される。なお、上記の各ガイドライン65,66、水平ライン67及びガイドマーク68の画像データはメモリ56内に格納されており、コントローラ50はこれら画像データを読み出して表示装置59に表示させるようになっている。
【0050】
記憶装置57は、磁気ディスク装置や光ディスク装置などであり、制御プログラム及び各種のデータを記録媒体に格納している。コントローラ50は、入力装置58による指示に従い、プログラムやデータを記憶装置57からメモリ56へ転送し、それを逐次実行する。なお、コントローラ50が実行するプログラムとしては、メモリカード、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、DVD、光ディスクなどの記憶媒体に記憶されたプログラムや、通信媒体を介してダウンロードしたプログラムでもよく、その実行時には記憶装置57にインストールして利用する。
【0051】
次に、本実施形態の血管撮影装置1を用いてカテーテルの穿刺針6を生体組織4の静脈82に挿入する際の操作例について説明する。
【0052】
ここでは、医者などの作業者は、まず患者の処置部に適した穿刺針6の挿入角度を判断する。そして、作業者は、その挿入角度となるように角度調整機構35を操作して穿刺針ガイド部34の位置を設定した穿刺ガイド用アタッチメント14をプローブ本体12に装着する。その後、作業者は、位置情報入力手段としての入力装置58のキーボード61を操作し、角度調整機構35で設定している穿刺針6の挿入角度の設定位置に応じた位置情報を入力する。このとき、コントローラ50は、その位置情報をメモリ56に一旦記憶する。なお、作業者が穿刺ガイド用アタッチメント14をプローブ本体12に装着しないで穿刺を行ってもよく、本実施形態では主に穿刺ガイド用アタッチメント14なしで穿刺作業を行う場合を想定して説明する。
【0053】
さらに、作業者は、処置部となる生体組織4の表面(例えば、
図7に示すような静脈82がある前腕4aの表面)に、音響媒体(無菌ゲルや滅菌ゲル)を塗った後、その音響媒体を介してプローブ本体12の振動子設置面20を接触させる。この後、作業者は、入力装置58に設けられている走査開始ボタン(図示略)を操作する。すると、コントローラ50は、そのボタン操作を判断し、生体組織4の断面画像8,9を表示するための処理を開始する。
【0054】
この処理において、コントローラ50は、パルス発生回路51を動作させ、超音波プローブ3による超音波の送受信を開始させる。具体的には、コントローラ50から出力される制御信号に応答してパルス発生回路51が動作し、所定周期のパルス信号が送信回路52に供給される。そして、送信回路52では、パルス信号に基づいて、各リニア振動子アレイ91、92の振動子91a、92aに対応した遅延時間を有する駆動パルスが生成され、超音波プローブ3に供給される。これにより、超音波プローブ3の各リニア振動子アレイ91、92の振動子91a、92aが振動して超音波が生体組織4に向けて照射される。生体組織4内を伝搬する超音波の一部は、生体組織4における組織境界面(例えば血管壁)などで反射して超音波プローブ3で受信される。このとき、超音波プローブ3の各リニア振動子アレイ91、92の振動子91a、92aによって反射波が電気信号(反射波信号)に変換される。そして、その反射波信号は、受信回路53で増幅等された後、信号処理部54に入力される。
【0055】
信号処理部54では、対数変換、包絡線検波、A/D変換といった信号処理が行われ、デジタル信号に変換された反射波信号が画像処理部55に供給される。画像処理部55では、その反射波信号に基づいて、断面画像8,9の画像データを生成するための画像処理が行われる。そして、コントローラ50は、画像処理部55で生成された各画像データをメモリ56に一旦記憶する。
【0056】
コントローラ50は、メモリ56に記憶された各画像データを読み出し、第1断面画像9及び第2断面画像8を表示装置59に表示させるための表示データを生成する。また、挿入角度判定手段としてのコントローラ50は、メモリ56に記憶された位置情報を読み出し、その位置情報に基づいて穿刺針6の挿入角度を判断する。そして、ガイドライン表示手段としてのコントローラ50は、穿刺針6の挿入角度に応じたガイドライン65,66の表示データを生成する。さらに、位置表示手段としてのコントローラ50は、穿刺針6の挿入角度に基づいて、第1断面画像9と第2断面画像8とにおいて、穿刺針6の先端71が見え始める深さ位置を予測するとともに、作業者に対してその深さ位置を事前に示す位置表示部(水平ライン67及びガイドマーク68)の表示データを生成する。
【0057】
その後、コントローラ50は、生成した断面画像8,9の表示データ、ガイドライン65,66、水平ライン67及びガイドマーク68の表示データをそれぞれ表示装置59に出力する。この結果、
図8に示されるように、表示装置59の画面10に第1断面画像9及び第2断面画像8が左右に並べて同時に表示される。そして、これらの断面画像8,9上には、ガイドライン65,66、水平ライン67及びガイドマーク68が重畳されて表示される(ガイドマーク表示ステップ)。なお、本実施形態では、奥側に断面画像8,9が表示され、ガイドライン65、水平ライン67及びガイドマーク68はその手前側に重畳されるようになっている。また、ガイドライン66及び水平ライン67は、第1断面画像9の手前側に重畳されるようになっている。
【0058】
次いで作業者は、表示装置59に表示された第1断面画像9及び第2断面画像8を視認しながら、超音波プローブ3の位置を調整する。具体的には、まず、第2断面画像8(短軸像)上に静脈82の横断面が撮影されるとともに第2断面画像8上の第1のガイドライン65が静脈82の中心に位置するように、超音波プローブ3の第2リニア振動子アレイ92側を移動させる。さらに、第1断面画像9(長軸像)上に沿って静脈82の縦断面が撮影されるように、超音波プローブ3の第1リニア振動子アレイ91側を移動させて、静脈82が延びる方向(軸方向)とプローブ本体12の長軸方向Yとを一致させる。なおこのとき、超音波プローブ3の第2リニア振動子アレイ92側(短軸側)の位置をキープした状態で、後側となる第1リニア振動子アレイ91側(長軸側)を左右に振るようにして位置合わせを行うようにする。
【0059】
ここで作業者は、第1断面画像9上及び第2断面画像8上の水平ライン67及びガイドマーク68、第2断面画像8上の第2のガイドライン66に基づいて、穿刺針6の挿入角度が静脈82への穿刺に適した角度か否かを判断する。なお、
図8には穿刺針6を挿入する前の第1断面画像9及び第2断面画像8が示されている。第1断面画像9上及び第2断面画像8上において、静脈82への穿刺を行う処置部よりも水平ライン67及びガイドマーク68が上方に位置している。穿刺針6の挿入角度が静脈82への穿刺に適した角度であると判断した場合、作業者は、プローブ本体12の位置決め部31の位置に穿刺針6の先端71を斜め方向から当接させ、この状態で生体組織4(前腕4a)に対して穿刺針6を挿入する。
【0060】
図9には穿刺針6を挿入した後の第1断面画像9及び第2断面画像8が示されている。すると、第1断面画像9及び第2断面画像8に穿刺針6が表示されるようになる。ここではまず、穿刺針6が第2断面画像8におけるガイドマーク68の枠内に表示された後、第1断面画像9における第2のガイドライン66上に表示される。つまり、穿刺ポイントP1通過直後の穿刺針6の先端は、まず第2断面画像9用の第2リニア振動子アレイ92からの超音波ビームのみによって捉えられる。穿刺針6をさらに深く挿入すると、第1リニア振動子アレイ91及び第2リニア振動子アレイ92の両方からの超音波ビームによって捉えられるようになる。
【0061】
図10(a)は、従来技術の超音波プローブを使用した場合の穿刺時において、枠状のガイドマーク68内に現れる穿刺針6の画像を示したものである。従来技術の超音波プローブの場合、第1リニア振動子アレイ91と同様に第2リニア振動子アレイ92についても、超音波が第2振動子92aの幅方向に狭まり、第1の焦点F1にて収束する。従って、穿刺ポイントP1の近傍に位置する交差部位K1からの超音波ビームのスライス幅が狭くなっている。このため、当該超音波ビームによって捉えられる穿刺針6の長さが小さくなり、第2断面画像8(短軸像)のガイドマーク68内において、穿刺針6が円形の小さな点として表示される。この場合、作業者は穿刺針6の挿入方向が正しいか否かを把握することができない。
【0062】
一方、
図10(b)及び(c)は、本実施形態の超音波プローブ3を使用した場合の穿刺時において、枠状のガイドマーク68内に現れる穿刺針6の画像を示したものである。本実施形態の場合、穿刺ポイントP1の近傍に位置する交差部位K1からの超音波ビームのスライス幅が広くなっている。この結果、当該超音波ビームによって捉えられる穿刺針6の長さが大きくなる。よって、第2断面画像8(短軸像)のガイドマーク68内において、穿刺針6が針の挿入方向に延びる短い線分として表示される。従って、穿刺直後の穿刺針6の挿入位置ばかりでなく挿入方向についても把握することができる。ちなみに、
図10(b)では、表示された短い線分が、第2断面画像8の上下方向に沿って延びている。よって、穿刺針6が正しい方向に挿入されていると把握できるため、作業者はそのまま穿刺針6を同じ方向に推し進めればよい。これに対し、
図10(c)では、表示された短い線分が、第2断面画像8の上下方向よりもいくぶん傾いた方向に沿って延びている。よって、穿刺針6が正しい方向に挿入されていないと把握できるため、作業者は挿入方向を見直す必要がある。即ち、
図10(b)の方向に延びた線分となるように挿入方向を修正した後、穿刺針6を推し進めればよい。
【0063】
そして作業者は、上記の要領で静脈82の血管壁に穿刺針6の先端71が到達したと判断したら、次いでその血管壁を穿刺針6の先端71で貫通させ、静脈82内に穿刺針6の先端71を挿入する。作業者は、第2断面画像8に基づいて穿刺針6の先端71が静脈82内に到達したことを確認した後、穿刺針6の穿刺動作を止める。
【0064】
その後、作業者は、入力装置58に設けられている走査終了ボタン(図示略)を操作する。コントローラ50は、そのボタン操作を判断し、生体組織4の断面画像8,9を表示するための処理を終了する。さらに、作業者は、穿刺針6の穿刺状態を維持したまま(穿刺ルートを残したまま)、ガイド溝33に沿ってプローブ本体12を移動させる。そして、作業者は、ガイド溝33の開口41を通して超音波プローブ3を穿刺針6から取り外す。この後、作業者は、カテーテル操作を行い、静脈82内にカテーテルを挿入して所定の治療を行う。
【0065】
従って、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0066】
(1)本実施形態の超音波プローブ3において、第1リニア振動子アレイ91は、生体組織4よりも軟質の材料により形成された断面凸レンズ形状の音響レンズ29を有している。一方、第2リニア振動子アレイ92は、生体組織4よりも硬質の材料により形成された断面凸レンズ形状の音響レンズ30を有している。従って、第1リニア振動子アレイ91から発せられる超音波ビームは、上記音響レンズ29を通過することで、第1の焦点F1にて収束する。それに対し、第2リニア振動子アレイ92から発せられる超音波ビームは、上記音響レンズ30を通過しても収束せずに発散する。それゆえ、穿刺ポイントP1の近傍に位置する交差部位K1からの超音波ビームのスライス幅が広くなり、当該超音波ビームによって捉えられる穿刺針6の長さが大きくなる。よって、第2断面画像8において、穿刺針6を針の挿入方向に延びる短い線分として認識することが可能になる。従って、穿刺直後の穿刺針6の挿入位置ばかりでなく挿入方向についても把握することができる。なお、この超音波プローブ3は、音響レンズ29、30がともに断面凸レンズ形状であるため、皮膚等に沿って動かす際に引っ掛かりにくく、動きがスムーズである。よって、従来と使用感が変わらないという利点がある。
【0067】
(2)本実施形態の血管撮影装置1は、上記の超音波プローブ3と、第2断面画像8の略中央部を通って垂直方向に延びる垂直ライン(第1のガイドライン65)を表示する垂直ライン表示手段とを備えたものとなっている。従って、穿刺ポイントP1にて穿刺を行ったときには、スライス幅が広くなった超音波ビームによって穿刺針6が捉えられ、その捉えられた穿刺針6の先端の画像が第1のガイドライン65の付近に出現する。このときの穿刺針6の先端は、針の挿入方向に延びる短い線分の画像として現れる。よって、第1のガイドライン65を基準としてそれと穿刺針6の先端の画像とを比較することが可能となり、挿入位置及び挿入方向が感覚的にわかりやすくなる。そのため、穿刺針6を縦断面上にてその方向に沿って正確に挿入することが可能となる。また、この血管撮影装置1は、第2断面画像8において穿刺針6の先端が見え始める深さ位置を事前に示す枠状のガイドマーク68を第2断面画像8上に表示するガイドマーク表示手段を備えたものとなっている。そしてこの装置1の場合、第2断面画像8上にガイドマーク68が表示されるので、そのガイドマーク68を視認することにより、穿刺を行う前に穿刺針6の先端が見え始める位置を容易にかつ正確に予見することができる。穿刺ポイントP1にて穿刺を行ったときには、スライス幅が広くなった超音波ビームによって穿刺針6が捉えられ、その捉えられた穿刺針6の先端の画像がガイドマーク68内に出現する。このときの穿刺針6の先端は、針の挿入方向に延びる短い線分の画像として現れる。よって、挿入位置及び挿入方向が感覚的にわかりやすい態様で、穿刺直後の穿刺針6を画面上に表示することができる。そのため、穿刺針6を縦断面上にてその方向に沿って正確に挿入することが可能となる。また、穿刺ガイド用アタッチメントなしのフリーの状態で穿刺するときに、穿刺針を縦断面上にてその方向に沿って正確にかつ容易に挿入することが可能となる。
【0068】
[第2の実施形態]
次に第2実施形態の超音波プローブ3Aについて説明する。
図11(a)はこの超音波プローブ3Aが有する第1リニア振動子アレイ91及び第2リニア振動子アレイ92の概略平面図、(b)は(a)のB1-B1線断面図、(c)は(a)のB2-B2線断面図、(d)は(a)のB3-B3線断面図である。ここでは第1実施形態の超音波プローブ3と相違する点について詳細に説明し、共通している点については説明を省略する。
【0069】
上記第1実施形態の超音波プローブ3では、第1リニア振動子アレイ91が有する音響レンズ29と、第2リニア振動子アレイ92が有する音響レンズ30とで、使用している材料の硬さが異なっていた。これに対し、本実施形態の超音波プローブ3Aでは、音響レンズ29、30Aに使用する材料は同種の合成樹脂材料(具体的には、生体組織4よりも軟質のシリコーン樹脂)であって、硬さも等しいものとされている。その代わりにこの超音波プローブ3Aでは、第1リニア振動子アレイ91側の音響レンズ29が断面凸レンズ形状であるのに対し、第2リニア振動子アレイ92側の音響レンズ30Aが断面凹レンズ形状となっている。
【0070】
本実施形態ではこのような構成を採用した結果、第1リニア振動子アレイ91から発せられる超音波ビームは、上記の断面凸レンズ形状の音響レンズ29を通過することで、第1の焦点F1にて収束する。それに対し、第2リニア振動子アレイ92から発せられる超音波ビームは、上記の断面凹レンズ形状の音響レンズ30Aを通過することで、収束せずに発散する。それゆえ、穿刺ポイントP1の近傍に位置する交差部位K1からの超音波ビームのスライス幅が広くなり、当該超音波ビームによって捉えられる穿刺針6の長さが大きくなる。よって、
図10(b)、(c)にて示したように、第2断面画像8において、穿刺針6を針の挿入方向に延びる短い線分として認識することが可能になる。従って、穿刺直後の穿刺針6の挿入位置ばかりでなく挿入方向についても把握することができる。なお、この超音波プローブ3Aは、音響レンズ29、30Aに用いる材料が一種類で足りるという利点がある。このため、例えば2つの音響レンズ29、30Aを別々に作製することも一体的に作製することも可能となる。
【0071】
[第3の実施形態]
次に第3実施形態の超音波プローブ3Bについて説明する。
図12(a)はこの超音波プローブ3Bが有する第1リニア振動子アレイ91及び第2リニア振動子アレイ92の概略平面図、(b)は(a)のC1-C1線断面図、(c)は(a)のC2-C2線断面図、(d)は(a)のC3-C3線断面図である。ここでは第1実施形態の超音波プローブ3と相違する点について詳細に説明し、共通している点については説明を省略する。
【0072】
上記実施形態1の超音波プローブ3では、第1リニア振動子アレイ91は、第1振動子91aの配列方向全域にわたって断面凸レンズ形状の音響レンズ29によって覆われていた。この点については、本実施形態の第1リニア振動子アレイ91についても同様である。また、上記実施形態1の超音波プローブ3では、第2リニア振動子アレイ92は、第2振動子92aの配列方向全域にわたって断面凸レンズ形状の音響レンズ30によって覆われていた。これに対し、本実施形態の第2リニア振動子アレイ92は、断面凸レンズ形状の音響レンズ30Bによって、第2振動子92aの配列方向全域にわたって覆われているのではなく、部分的に覆われている。つまり、本実施形態の音響レンズ30Bは、中程の部位(即ち交差部位K1)を露出させるような状態で2つに分断されている。それゆえ、音響レンズ30Bが存在していない交差部位K1については、表面が凹凸のないフラットな形状を呈した平坦部94となっている。
【0073】
図13(a)は
図12(a)のC1-C1線の断面において超音波の進行方向を説明するための概略図である。この図に示されるように、第1リニア振動子アレイ91の発した超音波は、第1振動子91aの配列方向全域にわたって、第1振動子91aの幅方向に狭まり、第1の焦点F1にて収束するようになっている。なお、第2リニア振動子アレイ92において交差部位K1を除く部位の発した超音波においても同様のことがいえる。
図13(b)は
図12(a)のC3-C3線の断面において超音波の進行方向を説明するための概略図である。この図に示されるように、第2リニア振動子アレイ92における交差部位K1の発した超音波は、第2振動子92aの幅方向に収束しないで直進するようになっている。それゆえ、穿刺ポイントP1の近傍に位置する交差部位K1からの超音波ビームのスライス幅が広くなり、当該超音波ビームによって捉えられる穿刺針6の長さが大きくなる。よって、
図10(b)、(c)にて示したように、第2断面画像8において、穿刺針6を針の挿入方向に延びる短い線分として認識することが可能になる。従って、穿刺直後の穿刺針6の挿入位置ばかりでなく挿入方向についても把握することができる。なお、この超音波プローブ3Bについても、音響レンズ29、30Bに用いる材料が一種類で足りるという利点がある。このため、例えば2つの音響レンズ29、30Bを別々に作製することも一体的に作製することも可能となる。
【0074】
なお、本発明の実施の形態は以下のように変更してもよい。
【0075】
・上記第3実施形態では、第2リニア振動子アレイ92は、第2振動子92aの配列方向における中程の部位(即ち交差部位K1)のみが露出しており、それ以外の部位は断面凸レンズ形状の音響レンズ30Bにより覆われていた。これに対し、例えば
図14(a)~(d)に示す別の実施形態の超音波プローブ3Cのようにしてもよい。即ち、この実施形態では第2リニア振動子アレイ92上に音響レンズは全く存在しておらず、音響整合層90が全体的に露出した状態となっている。このため、交差部位K1を含む第2リニア振動子アレイ92の全域について、表面が凹凸のないフラットな形状の平坦部94となっている。つまり、第2リニア振動子アレイ92を覆うべき断面凸レンズ形状の音響レンズは、一部分のみを省略してもよいほか、全部を省略してもよい。この構成によると、第1実施形態等と比較して音響レンズを設ける面積が少なくて済むため、低コスト化につながるという利点がある。
【0076】
・上記第3実施形態では、第2リニア振動子アレイ92は、第2振動子92aの配列方向における中程の部位(即ち交差部位K1)において断面凸レンズ形状の音響レンズ30Bを省略した。これに対し、例えば断面凸レンズ形状の音響レンズ30を全域にわたって設けるとともに、交差部位K1についてのみ凹凸のないフラットな形状になるように種々の加工を施してもよい。例えば、交差部位K1における合成樹脂を平らになるように研磨、溶解等することにより平坦部94を形成してもよく、あるいは交差部位K1上にさらに合成樹脂を塗布、貼付等することにより平坦部94を形成してもよい。
【0077】
・例えば、
図15(a)~(d)に示す別の実施形態の超音波プローブ3Dのようにしてもよい。この超音波プローブ3Dでは、音響レンズ29、30Cに使用する材料は同種の合成樹脂材料(具体的には、生体組織4よりも軟質のシリコーン樹脂)であって、硬さも等しいものとされている。また、第1リニア振動子アレイ91側の音響レンズ29及び第2リニア振動子アレイ92側の音響レンズ30Cがともに断面凸レンズ形状となっている。ただし、
図15(c)、(d)に示す音響レンズ30Cの曲率のほうが、
図15(b)に示す音響レンズ29の曲率よりも小さい値に設定されている。従って、
図16(a)に示されるように、第1リニア振動子アレイ91の発した超音波は、第1振動子91aの配列方向全域にわたって、第1振動子91aの幅方向に狭まり、第1の焦点F1にて収束する。
図16(b)に示されるように、第2リニア振動子アレイ92の発した超音波は、第2振動子92aの配列方向全域にわたって、第2振動子92aの幅方向に狭まるものの、第1の焦点F1よりも遠い位置にある第2の焦点F2にて収束するようになっている。それゆえ、穿刺ポイントP1の近傍に位置する交差部位K1からの超音波ビームのスライス幅が広くなり、当該超音波ビームによって捉えられる穿刺針6の長さが大きくなる。
【0078】
・上記第1実施形態では、第1リニア振動子アレイ91及び第2リニア振動子アレイ92と音響レンズ29、30との間に音響整合層90を配置したが、音響整合層90は必須ではなく省略されてもよい。
【0079】
・上記第1実施形態の血管撮影装置1において、水平ライン67及びガイドマーク68について、表示または非表示に設定する選択機能を設けてもよい。具体的には、コントローラ50は、表示装置59の設定画面において、水平ライン67及びガイドマーク68を表示または非表示に設定するための選択ボタンを表示させるようにすればよい。そして、コントローラ50は、作業者のボタン操作に基づいて、第1断面画像9上及び第2断面画像8上に水平ライン67及びガイドマーク68を表示したり、消去したりする。例えば、血管撮影装置1の操作に慣れた熟練の作業者は、各断面画像8,9に表示されているガイドライン65,66の位置に基づいて、穿刺針6の先端71が見え始める位置を予測することができる。このため、熟練の作業者が血管撮影装置1を使用する場合には、水平ライン67及びガイドマーク68を表示させない状態で穿刺針6の穿刺を行ってもよい。また、血管撮影装置1の操作に慣れていない作業者が使用する場合には、水平ライン67及びガイドマーク68を表示させることにより、穿刺針6の穿刺を安心して確実に行うことが可能となる。
【0080】
・上記第1実施形態において、位置表示部としてのガイドマーク68は、四角形の枠状であったが、三角形や円形の枠状としてもよい。また、ガイドマーク68は枠状のマークに限定されるものではなく、位置を認識できるマークであれば、例えば十字形状のマークや点状のマーク等であってもよい。あるいは、ガイドマーク68の表示を行わないようにしてもよい。
【0081】
・上記各実施形態の血管撮影装置1では、静脈82等の断面画像8,9を表示してカテーテルを用いた治療を行うものであったが、採血などの他の処置を行う場合に血管撮影装置1を用いてもよい。また、血管撮影装置1に限定されるものではなく、血管以外に神経などの断面画像を表示して神経ブロック注射などの他の処置を行う超音波画像表示装置に本発明を具体化してもよい。
【符号の説明】
【0082】
1…超音波画像表示装置としての血管撮影装置
3、3A、3B、3C、3D…超音波プローブ
4…被検体としての生体組織
6…穿刺針
8…第2断面画像
9…第1断面画像
12…プローブ本体
20…底面としての振動子設置面
29、30、30A、30B、30C…音響レンズ
50…ガイドマーク表示手段、垂直ライン表示手段としてのコントローラ
65…垂直ラインとしての第1のガイドライン
68…ガイドマーク
71…穿刺針の先端
91…第1振動子
91a…第1リニア振動子アレイ
93…(第1リニア振動子アレイの)端部
92a…第2振動子
92…第2リニア振動子アレイ
F1…第1の焦点
F2…第2の焦点
K1…交差部位
P1…穿刺ポイント