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特許7576835自己免疫疾患および癌を治療するための可溶性インターロイキン7受容体(sIL7R)調節療法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】自己免疫疾患および癌を治療するための可溶性インターロイキン7受容体(sIL7R)調節療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 48/00 20060101AFI20241025BHJP
   A61K 31/122 20060101ALI20241025BHJP
   A61K 31/133 20060101ALI20241025BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20241025BHJP
   A61K 31/52 20060101ALI20241025BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20241025BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20241025BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20241025BHJP
   A61K 38/19 20060101ALI20241025BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241025BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20241025BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20241025BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20241025BHJP
   A61P 17/04 20060101ALI20241025BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20241025BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20241025BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20241025BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20241025BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241025BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20241025BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20241025BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20241025BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20241025BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20241025BHJP
【FI】
A61K48/00
A61K31/122
A61K31/133
A61K31/337
A61K31/52
A61K31/573
A61K31/7088
A61K35/76
A61K38/19
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61K39/395 U
A61P1/04
A61P1/16
A61P3/10
A61P17/04
A61P19/00
A61P19/02
A61P25/00
A61P29/00
A61P29/00 101
A61P35/00
A61P37/02
A61P37/08
C12N15/113 140Z
C12N15/63 Z ZNA
C12N15/86 Z
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2020550763
(86)(22)【出願日】2019-03-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-12
(86)【国際出願番号】 US2019023719
(87)【国際公開番号】W WO2019183570
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2022-03-22
(31)【優先権主張番号】62/646,716
(32)【優先日】2018-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506140479
【氏名又は名称】ボード・オブ・リージェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・テキサス・システム
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア-ブランコ,マリアーノ,エー.
(72)【発明者】
【氏名】ガラルザ-ムノス,ガッディエル
(72)【発明者】
【氏名】ブラッドリック,シェルトン,エス.
【審査官】愛清 哲
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0035778(US,A1)
【文献】国際公開第2017/141109(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第104131095(CN,A)
【文献】Nucleic Acids Research,2016年,Vol.44, No.14,pp.6549-6563
【文献】Proc.Natl.Acad.Sci.USA,2013年,Vol.110, No.19,E1761-1770
【文献】Cell,2017年,Vol.169,pp.72-84
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 48/00
A61K 31/00-31/80
A61K 35/00-35/768
A61K 38/00-38/58
A61K 39/00-39/44
A61P 1/00- 1/18
A61P 3/00- 3/14
A61P 17/00-17/18
A61P 19/00-19/10
A61P 25/00-25/36
A61P 29/00-29/02
A61P 35/00-35/04
A61P 37/00-37/08
C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要としている対象において高レベルのインターロイキン7受容体の可溶性アイソフォーム(sIL7R)を伴う疾患または状態を治療する方法において使用するための組成物であって、エクソン6のスプライシングに影響を与えるインターロイキン7受容体(IL7R)プレmRNAの配列に特異的に結合するオリゴヌクレオチドを含み、
前記オリゴヌクレオチドが、IL7RプレmRNA中のエクソン6の含有を増やしかつIL7Rの可溶性アイソフォーム(sIL7R)の発現を減らし、
前記オリゴヌクレオチドが、配列番号1~13のうちのいずれか単独もしくはいずれかの組み合わせ、またはそのいずれかの部分、に対して相補的である
組成物。
【請求項2】
前記オリゴヌクレオチドが、スプライス調節アンチセンスオリゴヌクレオチド(SM-ASO)である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記オリゴヌクレオチドが、エクソン内スプライシング抑制配列(ESS)および/またはイントロン内スプライシング抑制配列(ISS)からなる群の少なくとも1つにおいてIL7RプレmRNA中の配列に特異的に結合し、それによりIL7RプレmRNA中のエクソン6の含有を高め、かつsIL7Rの発現を減らす、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記オリゴヌクレオチド中の少なくとも1つまたは複数のヌクレオチドが、1つまたは複数のホスホロチオエート、ジチオリン酸、リン酸ジエステル、メチルホスホネート、ホスホラミデート、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホロアリデート、モルホリノ、アミデートカルバメート、カルボキシメチル、アセトアミデート、ポリアミド、スルホネート、スルホンアミド、スルファメート、ホルムアセタール、チオホルムアセタール、および/またはアルキルシリル置換体;完全に修飾された糖ホスフェート骨格、ロックド核酸骨格、ペプチド骨格、ホスホトリエステル骨格、ホスホラミデート骨格、シロキサン骨格、カルボキシメチルエステル骨格、アセトアミデート骨格、カルバメート骨格、チオエーテル骨格、架橋メチレンホスホネート骨格、ホスホロチオエート骨格、メチルホスホネート骨格、アルキルホスホネート骨格、ホスフェートエステル骨格、メチルホスホロチオエート骨格、アルキルホスホノチオエート骨格、ホスホロジチオエート骨格、カーボネート骨格、ホスフェートトリエステル骨格、カルボキシメチルエステル骨格、メチルホスホロチオエート骨格、ホスホロジチオエート骨格、p-エトキシ結合を有する骨格などの、部分的にまたは完全に改変された骨格;2’-O-メチル(2’-O-メチルヌクレオチド)、2’-O-メチルオキシエトキシ(2’-O-MOE)、2’-O-アルキル修飾糖部分、または二環式糖部分などの糖修飾;ヌクレオチド模倣物質、ペプチド核酸(PNA)、モルホリノ核酸、シクロヘキセニル核酸、アンヒドロヘキシトール核酸、グリコール核酸、トレオース核酸、およびロックド核酸(LNA)、ならびに前述のいずれかの2つ以上の任意の組み合わせ:から選択される、(1)リボースまたは他の糖単位、(2)塩基、または(3)骨格、の修飾または置換を含む非天然に起こる改変を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記オリゴヌクレオチド中の少なくとも1つまたは複数のヌクレオチドが、前記ヌクレオチド塩基に対する非天然に起こる改変を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、薬学的に許容可能な賦形剤、塩、または担体をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記疾患または状態が、次記の少なくとも1つから選択される自己免疫障害である、請求項1に記載の組成物:多発性硬化症、I型糖尿病、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、アトピー性皮膚炎、強直性脊椎炎、原発性胆汁性肝硬変、または潰瘍性大腸炎およびクローン病などの炎症性大腸炎症候群、または疾患または状態のない正常な対象に比べてsIL7Rが上昇される任意の他の状態。
【請求項8】
前記疾患または状態が、炎症性疾患または状態である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記オリゴヌクレオチドが、IL7Rエクソン5~エクソン7境界を標的化することによりエクソン6を欠くIL7R mRNAの分解を高める、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記方法が、前記SM-ASOと、ミトキサトロン、インターフェロンベータ1a、PEG-インターフェロンベータ1a、アザチオプリン、フィンゴリモド、ナタリズマブ、メチルプレドニゾロン、またはオクレリズマブのうちの少なくとも1種から選択される、自己免疫疾患または炎症性疾患である疾患または状態を治療するために有効な1種または複数の活性薬剤と、の併用療法をさらに含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項11】
前記方法が、患者から細胞を取得するステップおよびエクソン6のスプライシングに影響を与える前記インターロイキン7受容体(IL7R)プレmRNAの配列に特異的に結合するオリゴヌクレオチドを一時的にまたは永久的に発現するようにその細胞を改変するステップをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
それを必要としている対象において高レベルのインターロイキン7受容体の可溶性アイソフォーム(sIL7R)を伴う疾患または状態を治療する方法において使用するための組成物であって、エクソン6のスプライシングに影響を与えるインターロイキン7受容体(IL7R)プレmRNAの配列に特異的に結合するオリゴヌクレオチドを発現するベクターを含み、
前記オリゴヌクレオチドが、IL7RプレmRNA中のエクソン6の含有を増やしかつIL7Rの可溶性アイソフォーム(sIL7R)の発現を減らし、
前記オリゴヌクレオチドが、配列番号1~13のうちのいずれか単独もしくはいずれかの組み合わせ、またはそのいずれかの部分、に対して相補的である、
組成物。
【請求項13】
エクソン6のスプライシングに影響を与えるインターロイキン7受容体(IL7R)のプレmRNA中の配列に特異的に結合するスプライス調節アンチセンスオリゴヌクレオチド(SM-ASO)であるオリゴヌクレオチドを含む組成物であって、
前記SM-ASOが、IL7RプレmRNA中のエクソン6の含有を増やしかつIL7Rの可溶性アイソフォーム(sIL7R)の発現を減らし、
前記オリゴヌクレオチドが、配列番号1~13のうちのいずれか単独もしくはいずれかの組み合わせ、またはそのいずれかの部分、に対して相補的である
組成物。
【請求項14】
前記SM-ASOが、エクソン内スプライシング抑制配列(ESS)および/またはイントロン内スプライシング抑制配列(ISS)からなる群の少なくとも1つにおいてIL7RプレmRNA中の配列に特異的に結合し、それによりIL7RプレmRNA中のエクソン6の含有を高め、かつsIL7Rの発現を減らす、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記SM-ASO中の少なくとも1つまたは複数のヌクレオチドが、1つまたは複数のホスホロチオエート、ジチオリン酸、リン酸ジエステル、メチルホスホネート、ホスホラミデート、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホロアリデート、モルホリノ、アミデートカルバメート、カルボキシメチル、アセトアミデート、ポリアミド、スルホネート、スルホンアミド、スルファメート、ホルムアセタール、チオホルムアセタール、および/またはアルキルシリル置換体;完全に修飾された糖ホスフェート骨格、ロックド核酸骨格、ペプチド骨格、ホスホトリエステル骨格、ホスホラミデート骨格、シロキサン骨格、カルボキシメチルエステル骨格、アセトアミデート骨格、カルバメート骨格、チオエーテル骨格、架橋メチレンホスホネート骨格、ホスホロチオエート骨格、メチルホスホネート骨格、アルキルホスホネート骨格、ホスフェートエステル骨格、メチルホスホロチオエート骨格、アルキルホスホノチオエート骨格、ホスホロジチオエート骨格、カーボネート骨格、ホスフェートトリエステル骨格、カルボキシメチルエステル骨格、メチルホスホロチオエート骨格、ホスホロジチオエート骨格、p-エトキシ結合を有する骨格などの、部分的にまたは完全に改変された骨格;2’-O-メチル(2’-O-メチルヌクレオチド)、2’-O-メチルオキシエトキシ(2’-O-MOE)、2’-O-アルキル修飾糖部分、または二環式糖部分などの糖修飾;ヌクレオチド模倣物質、ペプチド核酸(PNA)、モルホリノ核酸、シクロヘキセニル核酸、アンヒドロヘキシトール核酸、グリコール核酸、トレオース核酸、およびロックド核酸(LNA)、ならびに前述のいずれかの2つ以上の任意の組み合わせ:から選択される、(1)リボースまたは他の糖単位、(2)塩基、または(3)骨格、の修飾または置換を含む非天然に起こる改変を含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
前記SM-ASO中の少なくとも1つまたは複数のヌクレオチドが、前記ヌクレオチド塩基に対する非天然に起こる改変を含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項17】
前記組成物が、薬学的に許容可能な賦形剤、塩、または担体をさらに含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項18】
次記の少なくとも1つから選択される自己免疫障害の治療に適している、請求項13に記載の組成物:多発性硬化症、I型糖尿病、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、アトピー性皮膚炎、強直性脊椎炎、原発性胆汁性肝硬変、または潰瘍性大腸炎およびクローン病などの炎症性大腸炎症候群、またはsIL7Rが上昇される任意の他の状態。
【請求項19】
前記オリゴヌクレオチドが、IL7Rエクソン5~エクソン7境界を標的化することによりエクソン6を欠くIL7R mRNAの分解を高める、請求項13に記載の組成物。
【請求項20】
エクソン6のスプライシングに影響を与えるインターロイキン7受容体(IL7R)のプレmRNA中の配列に特異的に結合するスプライス調節アンチセンスオリゴヌクレオチド(SM-ASO)であるオリゴヌクレオチドを発現するベクターを含む組成物であって、
前記SM-ASOが、IL7RプレmRNA中のエクソン6の含有を増やしかつIL7Rの可溶性アイソフォーム(sIL7R)の発現を減らし、
前記オリゴヌクレオチドが、配列番号1~13のうちのいずれか単独もしくはいずれかの組み合わせ、またはそのいずれかの部分、に対して相補的である、
組成物。
【請求項21】
インターロイキン7受容体(IL7R)プレmRNA中のエクソン6の含有を増やす方法において使用するための組成物であって、インターロイキン7受容体(IL7R)プレmRNA中の配列に特異的に結合しかつIL7RプレmRNA中のエクソン6の含有を増やしかつIL7Rの可溶性アイソフォーム(sIL7R)の発現を減らすスプライス調節アンチセンスオリゴヌクレオチド(SM-ASO)を含み、
前記SM-ASOが、配列番号1~13のうちのいずれか単独もしくはいずれかの組み合わせ、またはそのいずれかの部分、に対して相補的である
組成物。
【請求項22】
前記方法が、前記SM-ASOと、ミトキサトロン、インターフェロンベータ1a、PEG-インターフェロンベータ1a、アザチオプリン、フィンゴリモド、ナタリズマブ、メチルプレドニゾロン、またはオクレリズマブから選択される、自己免疫疾患または炎症性疾患を治療するために有効な1種または複数の活性薬剤と、の併用療法をさらに含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記SM-ASOが、エクソン内スプライシング抑制配列(ESS)および/またはイントロン内スプライシング抑制配列(ISS)からなる群の少なくとも1つにおいてIL7RプレmRNA中の配列に特異的に結合し、それによりIL7RプレmRNA中のエクソン6の含有を高め、かつsIL7Rの発現を減らす、請求項21に記載の組成物。
【請求項24】
インターロイキン7受容体(IL7R)プレmRNA中のエクソン6の含有を増やす方法において使用するための組成物であって、インターロイキン7受容体(IL7R)プレmRNA中の配列に特異的に結合しかつIL7RプレmRNA中のエクソン6の含有を増やしかつIL7Rの可溶性アイソフォーム(sIL7R)の発現を減らすスプライス調節アンチセンスオリゴヌクレオチド(SM-ASO)を発現するベクターを含み、
前記SM-ASOが、配列番号1~13のうちのいずれか単独もしくはいずれかの組み合わせ、またはそのいずれかの部分、に対して相補的である、
組成物。
【請求項25】
前記ベクターが、発現ベクターである、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記ベクターが、ウイルスベクターまたはプラスミドである、請求項24に記載の組成物。
【請求項27】
者を治療するための遺伝子治療における使用のための、請求項24に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
なし。
【0002】
連邦政府出資研究に関する声明
本発明は、NIHにより授与されたF32-NS087899による政府支援により実施された。米国政府は本発明に対し一定の権利を有する。
【0003】
発明の分野
本発明は一般に、自己免疫疾患(例えば、多発性硬化症)または癌を治療するために、可溶性IL7R(sIL7R)を、それぞれ、減らすまたは増やす新規療法に関する。
【背景技術】
【0004】
本発明の範囲を限定するものではないが、その背景は、一例として、多発性硬化症に関連して記述されている。
【0005】
多発性硬化症(MS)は、慢性自己免疫疾患であり、この疾患は、軸索脱髄、ニューロン死および進行性神経機能障害に繋がる中枢神経系(CNS)における神経ミエリン鞘に対する自己反応性免疫細胞媒介損傷を特徴とする。現在まで、この病気の治癒はなく、利用可能な治療は、多くの場合、免疫系を全体的に抑制することにより、疾患進行を遅らせることができるだけであり、重篤で死に至らせる可能性がある極めて多くの有害な副作用を引き起こす。この全体的免疫抑制は、現在の療法の主要な制約である。
【0006】
MSに繋がる免疫寛容の破綻は、環境因子と遺伝的要因の間の複雑な相互作用が原因であると考えられる。この観点に基づくと、個々の遺伝的背景が、自己反応性リンパ球の生存が可能な環境を生成し、これはその後、通常ウイルスまたは細菌感染症の形での環境刺激の存在により、活性化され得る。
【0007】
本発明者らおよび他の研究者は、インターロイキン7受容体(IL7R)遺伝子のエクソン6内のバリアントrs6897932(C/T、Cはリスクアレル)がMSリスクの増大に強く関連していることを以前に示した(Gregory et al.,2007;International Multiple Sclerosis Genetics et al.,2007;Lundmark et al.,2007)。さらに、本発明者らは、このバリアントのリスク「C」アレルは、エクソンのスキッピングを増大させ(Evsyukova et al.,2013;Gregory et al.,2007)、sIL7Rの発現上昇をもたらす(Hoe et al.,2010;Lundstrom et al.,2013)ことを示した。重要なことに、sIL7Rは実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)MSマウスモデルで疾患の臨床的進行および重症度を悪化させることが示され、これは、おそらくIL7サイトカインのバイオアベイラビリティおよび/または生物活性を増強することによると思われる(Lundstrom et al.,2013)。多発性硬化症、およびおそらく自己免疫性一般の病因におけるsIL7Rの役割をさらに裏付けて、高レベルのsIL7Rタンパク質またはRNAが、多発性硬化症(McKay et al.2008)、関節リウマチ(Badot et al.,2011)、1型糖尿病(Monti et al.,2013)、および全身性エリテマトーデス(Lauwerys et al.,2014)の患者で報告されている。全体として、これらのデータは、高いレベルのsIL7RをMSおよび自己免疫性の病因に結び付け、およびIL7Rエクソン6の位置選択的スプライシングをMSおよび自己免疫性のための新規治療標的として位置付ける。
【0008】
これらの文献は、sIL7Rの存在が多発性硬化症と関連することを教示し、また、動物試験は、sIL7RがMS様状態を悪化させることを示すが、sIL7Rの産生を標的にすることによるMSなどの自己免疫疾患を治療するための新規組成物および方法の必要性がまだ残されている。
【0009】
自己免疫疾患に対する多くの異なる病因が存在し、これらのそれぞれは、正確なまたは個別化された治療の標的であり得る。この発明で、本発明者らは、高レベルのsIL7Rが原因であるこのような病因の1つを扱い、それは、MS患者および高いsIL7Rにより引き起こされる他の自己免疫障害を有する多くの数の患者の60%に影響を及ぼす可能性がある。
【0010】
癌免疫療法は、急速に拡大している分野であり、これまで制御困難であった癌を有する患者にとって、かなり有望であるが、しかし、免疫療法の効果は、いくつかの癌および個体においては極めて低い応答率により制限されている。
【0011】
アンチセンスオリゴヌクレオチド療法は、標的配列に相補的な短いオリゴヌクレオチドを用いて、特定の疾患の原因である特定の遺伝子の遺伝子配列を標的にする。通常、標的配列のメッセンジャーRNA(mRNA)またはプレmRNAに結合する核酸の鎖が設計される(DNA、RNAまたは化学的類似体)。スプライス調節アンチセンスオリゴヌクレオチド(SM-ASO)の場合には、相補的な核酸は、得られるmRNAのエクソン含有量を調節するプレmRNA中の特異的配列に結合するように設計される。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、癌、糖尿病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、脊髄性筋萎縮症、毛細血管拡張性運動失調症、喘息、および関節炎などの疾患を標的にするために使用されてきた。いくつかのアンチセンスオリゴヌクレオチド薬物は、2~3例挙げると、サイトメガロウィルス網膜炎、ホモ接合家族性高コレステロール血症、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、および脊髄性筋萎縮症の治療用として米国食品医薬品局(FDA)により承認されている。後者の2つは、SM-ASOである。しかし、それぞれの場合で、オリゴヌクレオチド標的配列は、当該疾患の根底にある特定の病因に合わせて調整される必要がある。
【発明の概要】
【0012】
一実施形態では、本発明は、それを必要としている対象での、高レベルのインターロイキン7受容体の可溶性アイソフォーム(sIL7R)を伴う疾患または状態の治療の方法を含み、方法は、エクソン6のスプライシングに影響を与えるインターロイキン7受容体(IL7R)プレmRNAの配列に特異的に結合するオリゴヌクレオチドを含む組成物の有効量を投与することを含み、このオリゴヌクレオチドは、IL7RプレmRNA中のエクソン6の含有を増やし、かつIL7Rの可溶性アイソフォーム(sIL7R)の発現を減らす。一態様では、オリゴヌクレオチドは、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)またはスプライス調節アンチセンスオリゴヌクレオチド(SM-ASO)である。別の態様では、組成物中のオリゴヌクレオチドは、エクソン内スプライシング抑制配列(ESS)および/またはイントロン内スプライシング抑制配列(ISS)からなる群の少なくとも1つにおいてIL7RプレmRNA中の配列に特異的に結合し、それによりIL7RプレmRNA中のエクソン6の含有を高め、かつsIL7Rの発現を減らす。別の態様では、組成物中のオリゴヌクレオチドは、イントロン-エクソンスプライス部位、ブランチポイント配列、および/またはポリピリミジントラクトで、IL7RプレmRNA上の配列に特異的に結合する。別の態様では、オリゴヌクレオチド中の少なくとも1つまたは複数のヌクレオチドは、下記から選択される、(1)リボースまたは他の糖単位、(2)塩基、または(3)骨格の修飾または置換を含む非天然の改変を含む:1つまたは複数のホスホロチオエート、ジチオリン酸、リン酸ジエステル、メチルホスホネート、ホスホラミデート、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホロアリデート(phosphoroaridate)、モルホリノ、アミデートカルバメート(amidate carbamate)、カルボキシメチル、アセトアミデート、ポリアミド、スルホネート、スルホンアミド、スルファメート、ホルムアセタール、チオホルムアセタール、および/またはアルキルシリル置換体;完全修飾糖ホスフェート骨格、ロックド核酸骨格、ペプチド骨格、ホスホトリエステル骨格、ホスホラミデート骨格、シロキサン骨格、カルボキシメチルエステル骨格、アセトアミデート骨格、カルバメート骨格、チオエーテル骨格、架橋メチレンホスホネート骨格、ホスホロチオエート骨格、メチルホスホネート骨格、アルキルホスホネート骨格、ホスフェートエステル骨格、メチルホスホロチオエート骨格、アルキルホスホノチオエート骨格、ホスホロジチオエート骨格、カーボネート骨格、ホスフェートトリエステル骨格、カルボキシメチルエステル骨格、メチルホスホロチオエート骨格、ホスホロジチオエート骨格、p-エトキシ結合を有する骨格などの部分的または完全改変骨格;2’-O-メチル(2’-O-メチルヌクレオチド)、2’-O-メチルオキシエトキシ(2’-O-MOE)、2’-O-アルキル修飾糖部分、または二環式糖部分などの糖修飾;ヌクレオチド模倣物質、ペプチド核酸(PNA)、モルホリノ核酸、シクロヘキセニル核酸、アンヒドロヘキシトール核酸、グリコール核酸、トレオース核酸、およびロックド核酸(LNA)、ならびに前述のいずれかの2つ以上の組み合わせ。別の態様では、オリゴヌクレオチド中の少なくとも1つまたは複数のヌクレオチドは、ヌクレオチド塩基に対する非天然改変を含む。別の態様では、オリゴヌクレオチドは、表1の配列(配列番号1~13)のいずれか、またはその一部から、単独でまたは組み合わせで、またはIL7R RNA内の全標的配列に対して少なくとも、70、75、80、84、85、88、92、93、94、95、または96%の同一性を有する配列から、選択される。別の態様では、オリゴヌクレオチドは、表1の配列(配列番号1~13)のいずれかを、全体でまたは部分的に標的にする。別の態様では、組成物は、薬学的に許容可能な賦形剤、塩、または担体をさらに含む。別の態様では、疾患または状態は次記の少なくとも1つから選択される自己免疫障害である:多発性硬化症、I型糖尿病、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、アトピー性皮膚炎、強直性脊椎炎、原発性胆汁性肝硬変、または潰瘍性大腸炎、クローン病などの炎症性大腸炎症候群、または疾患または状態のない正常な対象に比べてsIL7Rが上昇している任意の他の状態。別の実施形態では、疾患または状態は、炎症性疾患または状態である。別の態様では、オリゴヌクレオチドは、例えば、sIL7R RNAの安定性を低下させる(例えば、分解を増やす)ASO、siRNA、shRNAを用いて、および/またはsIL7R RNAの翻訳を減らすASOを用いて、IL7Rエクソン5~エクソン7境界を標的化することにより、エクソン6を欠くIL7R mRNAの分解を強化する。別の態様では、方法は、SM-ASOと、自己免疫疾患の治療に有効な1種または複数の活性薬剤、例えば、限定されないが、ミトキサトロン(mitoxatrone)、インターフェロンベータ1a、PEG-インターフェロンベータ1a、アザチオプリン、フィンゴリモド、ナタリズマブ、メチルプレドニゾロン、またはオクレリズマブなどとの併用療法をさらに含む。別の態様では、方法は、患者から細胞を取得し、エクソン6のスプライシングに影響を与えるインターロイキン7受容体(IL7R)プレmRNAの配列に特異的に結合するオリゴヌクレオチドを一時的にまたは永久的に発現するようにその細胞を改変するステップをさらに含む。別の態様では、方法は、遺伝子治療で使用するために、エクソン6のスプライシングに影響を与えるインターロイキン7受容体(IL7R)プレmRNAの配列に特異的に結合するオリゴヌクレオチドを発現するベクターを生成し、そのベクターで患者を治療することをさらに含む。
【0013】
別の実施形態では、本発明は、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)またはスプライス調節アンチセンスオリゴヌクレオチド(SM-ASO)であるオリゴヌクレオチドを含む組成物を含み、このオリゴヌクレオチドは、エクソン6のスプライシングに影響を与えるインターロイキン7受容体(IL7R)のプレmRNA中の配列に特異的に結合し、SM-ASOはIL7RプレmRNA中のエクソン6の含有を増やし、IL7Rの可溶性アイソフォーム(sIL7R)の発現を減らす。一態様では、組成物中のオリゴヌクレオチドは、エクソン内スプライシング抑制配列(ESS)および/またはイントロン内スプライシング抑制配列(ISS)からなる群の少なくとも1つにおいてIL7RプレmRNA中の配列に特異的に結合し、それによりIL7RプレmRNA中のエクソン6の含有を高め、sIL7Rの発現を減らす。別の態様では、組成物中のオリゴヌクレオチドは、イントロン-エクソンスプライス部位、ブランチポイント配列、および/またはポリピリミジントラクトで、IL7RプレmRNA上の配列に特異的に結合する。別の態様では、オリゴヌクレオチド中の少なくとも1つまたは複数のヌクレオチドは、下記から選択される、(1)リボースまたは他の糖単位、(2)塩基、または(3)骨格の修飾または置換を含む非天然の改変を含む:1つまたは複数のホスホロチオエート、ジチオリン酸、リン酸ジエステル、メチルホスホネート、ホスホラミデート、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホロアリデート(phosphoroaridate)、モルホリノ、アミデートカルバメート(amidate carbamate)、カルボキシメチル、アセトアミデート、ポリアミド、スルホネート、スルホンアミド、スルファメート、ホルムアセタール、チオホルムアセタール、および/またはアルキルシリル置換体;完全修飾糖ホスフェート骨格、ロックド核酸骨格、ペプチド骨格、ホスホトリエステル骨格、ホスホラミデート骨格、シロキサン骨格、カルボキシメチルエステル骨格、アセトアミデート骨格、カルバメート骨格、チオエーテル骨格、架橋メチレンホスホネート骨格、ホスホロチオエート骨格、メチルホスホネート骨格、アルキルホスホネート骨格、ホスフェートエステル骨格、メチルホスホロチオエート骨格、アルキルホスホノチオエート骨格、ホスホロジチオエート骨格、カーボネート骨格、ホスフェートトリエステル骨格、カルボキシメチルエステル骨格、メチルホスホロチオエート骨格、ホスホロジチオエート骨格、p-エトキシ結合を有する骨格などの部分的または完全改変骨格;2’-O-メチル(2’-O-メチルヌクレオチド)、2’-O-メチルオキシエトキシ(2’-O-MOE)、2’-O-アルキル修飾糖部分、または二環式糖部分などの糖修飾;ヌクレオチド模倣物質、ペプチド核酸(PNA)、モルホリノ核酸、シクロヘキセニル核酸、アンヒドロヘキシトール核酸、グリコール核酸、トレオース核酸、およびロックド核酸(LNA)、ならびに前述のいずれかの2つ以上の任意の組み合わせ。別の態様では、オリゴヌクレオチド中の少なくとも1つまたは複数のヌクレオチドは、ヌクレオチド塩基に対する非天然改変を含む。別の態様では、オリゴヌクレオチドは、表1の配列(配列番号1~13)のいずれか、またはその一部から、単独でまたは組み合わせで、またはIL7R RNA内の全標的配列に対して少なくとも、70、75、80、84、85、88、92、93、94、95、または96%の同一性を有する配列から、選択される。別の態様では、オリゴヌクレオチドは、表1の配列(配列番号1~13)のいずれかを、全体でまたは部分的に標的にする。別の態様では、組成物は、薬学的に許容可能な賦形剤、塩、または担体をさらに含む。別の態様では、組成物は、次記の少なくとも1つから選択される自己免疫障害の治療に適している:多発性硬化症、I型糖尿病、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、アトピー性皮膚炎、強直性脊椎炎、原発性胆汁性肝硬変、または潰瘍性大腸炎およびクローン病などの炎症性大腸炎症候群、またはsIL7Rが上昇している任意の他の状態。別の態様では、オリゴヌクレオチドは、例えば、sIL7R RNAの安定性を低下させる(例えば、分解を増やす)ASO、siRNA、shRNAを用いて、および/またはsIL7R RNAの翻訳を減らすASOを用いて、IL7Rエクソン5~エクソン7境界を標的化することにより、エクソン6を欠くIL7R mRNAの分解を強化する。
【0014】
さらに別の実施形態では、本発明は、インターロイキン7受容体(IL7R)プレmRNAのエクソン6の含有を増やす方法を含み、方法は、エクソン6のスプライシングに影響を与えるインターロイキン7受容体(IL7R)プレmRNAの配列に特異的に結合するスプライス調節アンチセンスオリゴヌクレオチド(SM-ASO)に接触させることを含み、SM-ASOはIL7RプレmRNA中のエクソン6の含有を増やし、IL7Rの可溶性アイソフォーム(sIL7R)の発現を減らす。一態様では、組成物中のSM-ASOは、エクソン内スプライシング抑制配列(ESS)および/またはイントロン内スプライシング抑制配列(ISS)からなる群の少なくとも1つにおいてIL7RプレmRNA中の配列に特異的に結合し、それによりIL7RプレmRNA中のエクソン6の含有を高め、sIL7Rの発現を減らす。別の態様では、組成物中のSM-ASOは、イントロン-エクソンスプライス部位、ブランチポイント配列、および/またはポリピリミジントラクトで、IL7RプレmRNA上の配列に特異的に結合する。別の態様では、SM-ASO中の少なくとも1つまたは複数のヌクレオチドは、下記から選択される、(1)リボースまたは他の糖単位、(2)塩基、または(3)骨格の修飾または置換を含む非天然の改変を含む:1つまたは複数のホスホロチオエート、ジチオリン酸、リン酸ジエステル、メチルホスホネート、ホスホラミデート、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホロアリデート(phosphoroaridate)、モルホリノ、アミデートカルバメート(amidate carbamate)、カルボキシメチル、アセトアミデート、ポリアミド、スルホネート、スルホンアミド、スルファメート、ホルムアセタール、チオホルムアセタール、および/またはアルキルシリル置換体;完全修飾糖ホスフェート骨格、ロックド核酸骨格、ペプチド骨格、ホスホトリエステル骨格、ホスホラミデート骨格、シロキサン骨格、カルボキシメチルエステル骨格、アセトアミデート骨格、カルバメート骨格、チオエーテル骨格、架橋メチレンホスホネート骨格、ホスホロチオエート骨格、メチルホスホネート骨格、アルキルホスホネート骨格、ホスフェートエステル骨格、メチルホスホロチオエート骨格、アルキルホスホノチオエート骨格、ホスホロジチオエート骨格、カーボネート骨格、ホスフェートトリエステル骨格、カルボキシメチルエステル骨格、メチルホスホロチオエート骨格、ホスホロジチオエート骨格、p-エトキシ結合を有する骨格などの部分的または完全改変骨格;2’-O-メチル(2’-O-メチルヌクレオチド)、2’-O-メチルオキシエトキシ(2’-O-MOE)、2’-O-アルキル修飾糖部分、または二環式糖部分などの糖修飾;ヌクレオチド模倣物質、ペプチド核酸(PNA)、モルホリノ核酸、シクロヘキセニル核酸、アンヒドロヘキシトール核酸、グリコール核酸、トレオース核酸、およびロックド核酸(LNA)、ならびに前述のいずれかの2つ以上の任意の組み合わせ。別の態様では、SM-ASO中の少なくとも1つまたは複数のヌクレオチドは、ヌクレオチド塩基に対する非天然改変を含む。別の態様では、SM-ASOは、例えば、sIL7R RNAの安定性を低下させる(例えば、分解を増やす)ASO、siRNA、shRNAを用いて、および/またはsIL7R RNAの翻訳を減らすASOを用いて、IL7Rエクソン5~エクソン7境界を標的化することにより、エクソン6を欠くIL7R mRNAの分解を強化する。別の態様では、SM-ASOは、エクソン6を欠くIL7R mRNAの翻訳を阻止する。別の態様では、SM-ASOは、表1の配列(配列番号1~13)のいずれか、またはその一部から、単独でまたは組み合わせで、またはIL7R RNA内の全標的配列に対して少なくとも、70、75、80、84、85、88、92、93、94、95、または96%の同一性を有する配列から、選択される。別の態様では、オリゴヌクレオチドは、表1の配列(配列番号1~13)のいずれかを、全体でまたは部分的に標的にする。別の態様では、組成物は、薬学的に許容可能な賦形剤、塩、または担体をさらに含む。別の態様では、自己免疫障害は、次記の少なくとも1つから選択される:多発性硬化症、I型糖尿病、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、アトピー性皮膚炎、強直性脊椎炎、原発性胆汁性肝硬変、または潰瘍性大腸炎およびクローン病などの炎症性大腸炎症候群、またはsIL7Rが上昇しているなんらかの状態。別の態様では、方法は、患者から細胞を取得し、エクソン6のスプライシングに影響を与えるインターロイキン7受容体(IL7R)プレmRNAの配列に特異的に結合するオリゴヌクレオチドを一時的にまたは永久的に発現するようにその細胞を改変するステップをさらに含む。別の態様では、方法は、遺伝子治療で使用するために、エクソン6のスプライシングに影響を与えるインターロイキン7受容体(IL7R)プレmRNAの配列に特異的に結合するオリゴヌクレオチドを発現するベクターを生成し、そのベクターで患者を治療することをさらに含む。
【0015】
別の実施形態では、本発明は、インターロイキン7受容体(IL7R)プレmRNA中のエクソン6の含有を増やすための組成物を含み、方法は、エクソン6のスプライシングに影響を与えるインターロイキン7受容体(IL7R)プレmRNA中の配列に特異的に結合するスプライス調節アンチセンスオリゴヌクレオチド(SM-ASO)に接触させることを含み、SM-ASOはIL7RプレmRNA中のエクソン6の含有を増やし、IL7Rの可溶性アイソフォーム(sIL7R)の発現を減らす。一態様では、方法は、組成物は、SM-ASOの、限定されないがミトキサトロン(mitoxatrone)、インターフェロンベータ1a、PEG-インターフェロンベータ1a、アザチオプリン、フィンゴリモド、ナタリズマブ、メチルプレドニゾロン、またはオクレリズマブから選択される自己免疫疾患の治療に有効な1種または複数の活性薬剤との併用療法をさらに含む。
【0016】
別の実施形態では、本発明は、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)またはスプライス調節アンチセンスオリゴヌクレオチド(SM-ASO)であるオリゴヌクレオチドを含む核酸を発現するベクターを含み、このオリゴヌクレオチドは、エクソン6のスプライシングに影響を与えるインターロイキン7受容体(IL7R)プレmRNA中の配列に特異的に結合し、SM-ASOはIL7RプレmRNA中のエクソン6の含有を増やし、IL7Rの可溶性アイソフォーム(sIL7R)の発現を減らす。一態様では、ベクターはウイルスベクターまたはプラスミドである。
【0017】
別の実施形態では、本発明は、エクソン6を欠くIL7R RNAの抑制または分解を強化するインターロイキン7受容体(IL7R)プレmRNA中の配列に特異的に結合する、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、スプライス調節アンチセンスオリゴヌクレオチド(SM-ASO)、翻訳阻止アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、shRNAまたはmiRNAを含む核酸を発現するベクターを含み、核酸はIL7Rの可溶性アイソフォーム(sIL7R)の発現を減らす。一態様では、ベクターはウイルスベクターまたはプラスミドである。
【0018】
別の実施形態では、本発明は、それを必要としている対象の多発性硬化症を治療する方法を含み、方法は、エクソン6のスプライシングに影響を与えるインターロイキン7受容体(IL7R)プレmRNAの配列に特異的に結合するスプライス調節アンチセンスオリゴヌクレオチド(SM-ASO)を含む有効量の組成物を投与することを含み、SM-ASOは、IL7RプレmRNA中のエクソン6の含有を増やし、薬学的に許容可能な賦形剤中のIL7Rの可溶性アイソフォーム(sIL7R)の発現を減らす。一態様では、方法は、SM-ASOと、多発性硬化症の治療に有効な1種または複数の活性薬剤との併用療法をさらに含む。別の態様では、多発性硬化症の治療のための1種または複数の薬剤は、限定されないが、ミトキサトロン(mitoxatrone)、インターフェロンベータ1a、PEG-インターフェロンベータ1a、アザチオプリン、フィンゴリモド、ナタリズマブ、メチルプレドニゾロン、またはオクレリズマブから選択される。
【0019】
別の実施形態では、本発明は、それを必要としている対象の癌の治療方法を含み、方法は、エクソン6のスプライシングに影響を与えるインターロイキン7受容体(IL7R)プレmRNAの配列に特異的に結合するオリゴヌクレオチドを含む組成物の有効量を投与することを含み、オリゴヌクレオチドは、IL7RプレmRNA中のエクソン6の含有を減らし、IL7Rの可溶性アイソフォーム(sIL7R)の発現を増やす。一態様では、オリゴヌクレオチドは、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)またはスプライス調節アンチセンスオリゴヌクレオチド(SM-ASO)である。別の態様では、組成物中のオリゴヌクレオチドは、エクソン内スプライシング促進配列(ESE)および/またはイントロン内スプライシング促進配列(ISE)からなる群の少なくとも1つのIL7RプレmRNA中の配列に特異的に結合し、それによりエクソン6の含有を減らし、sIL7Rの発現を増やす。別の態様では、組成物中のオリゴヌクレオチドは、イントロン-エクソンスプライス部位、ブランチポイント配列、および/またはポリピリミジントラクトで、IL7RプレmRNA上の配列に特異的に結合する。別の態様では、オリゴヌクレオチド中の少なくとも1つまたは複数のヌクレオチドは、下記から選択される、(1)リボースまたは他の糖単位、(2)塩基、または(3)骨格の修飾または置換を含む非天然改変を含む:1つまたは複数のホスホロチオエート、ジチオリン酸、リン酸ジエステル、メチルホスホネート、ホスホラミデート、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホロアリデート(phosphoroaridate)、モルホリノ、アミデートカルバメート(amidate carbamate)、カルボキシメチル、アセトアミデート、ポリアミド、スルホネート、スルホンアミド、スルファメート、ホルムアセタール、チオホルムアセタール、および/またはアルキルシリル置換体;完全修飾糖ホスフェート骨格、ロックド核酸骨格、ペプチド骨格、ホスホトリエステル骨格、ホスホラミデート骨格、シロキサン骨格、カルボキシメチルエステル骨格、アセトアミデート骨格、カルバメート骨格、チオエーテル骨格、架橋メチレンホスホネート骨格、ホスホロチオエート骨格、メチルホスホネート骨格、アルキルホスホネート骨格、ホスフェートエステル骨格、メチルホスホロチオエート骨格、アルキルホスホノチオエート骨格、ホスホロジチオエート骨格、カーボネート骨格、ホスフェートトリエステル骨格、カルボキシメチルエステル骨格、メチルホスホロチオエート骨格、ホスホロジチオエート骨格、p-エトキシ結合を有する骨格などの部分的または完全改変骨格;2’-O-メチル(2’-O-メチルヌクレオチド)、2’-O-メチルオキシエトキシ(2’-O-MOE)、2’-O-アルキル修飾糖部分、または二環式糖部分などの糖修飾;ヌクレオチド模倣物質、ペプチド核酸(PNA)、モルホリノ核酸、シクロヘキセニル核酸、アンヒドロヘキシトール核酸、グリコール核酸、トレオース核酸、およびロックド核酸(LNA)、ならびに前述のいずれかの2つ以上の組み合わせ。別の態様では、オリゴヌクレオチド中の少なくとも1つまたは複数のヌクレオチドは、ヌクレオチド塩基に対する非天然の改変を含む。別の態様では、オリゴヌクレオチドは、表2の配列(配列番号14~50)のいずれか、またはその一部から、単独でまたは組み合わせて、またはIL7R RNA内の全標的配列に対して少なくとも、70、75、80、84、85、88、92、93、94、95、または96%の同一性を有する配列から、選択される。別の態様では、オリゴヌクレオチドは、表2の配列(配列番号14~50)のいずれかまたはその一部を標的にする。別の態様では、組成物は、薬学的に許容可能な賦形剤、塩、または担体をさらに含む。別の態様では、癌は、従来の免疫療法に対し低い応答を示す(例えば、肝細胞癌)。別の態様では、方法は、SM-ASOの、癌の治療に有効な1種または複数の活性薬剤、例えば、限定されないが免疫チェックポイント抑制剤(例えば、ニボルバム)、治療抗体(例えば、ハーセプチン)、従来の化学療法剤(例えば、タキソール)、または放射線治療などとの併用療法をさらに含む。別の態様では、方法は、患者から細胞を取得し、エクソン6のスプライシングに影響を与えるインターロイキン7受容体(IL7R)プレmRNAの配列に特異的に結合するオリゴヌクレオチドを一時的にまたは永久的に発現するようにその細胞を改変するステップをさらに含む。別の態様では、方法は、遺伝子治療で使用するために、エクソン6のスプライシングに影響を与えるインターロイキン7受容体(IL7R)プレmRNAの配列に特異的に結合するオリゴヌクレオチドを発現するベクターを生成し、そのベクターで患者を治療することをさらに含む。
【0020】
別の実施形態では、本発明は、エクソン6のスプライシングに影響を与えるインターロイキン7受容体(IL7R)のプレmRNA中の配列に特異的に結合する、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)またはスプライス調節アンチセンスオリゴヌクレオチド(SM-ASO)であるオリゴヌクレオチドを含む組成物を含み、SM-ASOはIL7RプレmRNA中のエクソン6の含有を減らし、IL7Rの可溶性アイソフォーム(sIL7R)の発現を増やす。別の態様では、組成物中のオリゴヌクレオチドは、エクソン内スプライシング促進配列(ESE)および/またはイントロン内スプライシング促進配列(ISE)からなる群の少なくとも1つにおいてIL7RプレmRNA中の配列に特異的に結合し、それにより、エクソン6の含有を減らし、sIL7Rの発現を増やす。別の態様では、組成物中のオリゴヌクレオチドは、イントロン-エクソンスプライス部位、ブランチポイント配列、および/またはポリピリミジントラクトで、IL7RプレmRNA上の配列に特異的に結合する。別の態様では、オリゴヌクレオチド中の少なくとも1つまたは複数のヌクレオチドは、下記から選択される、(1)リボースまたは他の糖単位、(2)塩基、または(3)骨格の修飾または置換を含む非天然の改変を含む:1つまたは複数のホスホロチオエート、ジチオリン酸、リン酸ジエステル、メチルホスホネート、ホスホラミデート、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホロアリデート(phosphoroaridate)、モルホリノ、アミデートカルバメート(amidate carbamate)、カルボキシメチル、アセトアミデート、ポリアミド、スルホネート、スルホンアミド、スルファメート、ホルムアセタール、チオホルムアセタール、および/またはアルキルシリル置換体;完全修飾糖ホスフェート骨格、ロックド核酸骨格、ペプチド骨格、ホスホトリエステル骨格、ホスホラミデート骨格、シロキサン骨格、カルボキシメチルエステル骨格、アセトアミデート骨格、カルバメート骨格、チオエーテル骨格、架橋メチレンホスホネート骨格、ホスホロチオエート骨格、メチルホスホネート骨格、アルキルホスホネート骨格、ホスフェートエステル骨格、メチルホスホロチオエート骨格、アルキルホスホノチオエート骨格、ホスホロジチオエート骨格、カーボネート骨格、ホスフェートトリエステル骨格、カルボキシメチルエステル骨格、メチルホスホロチオエート骨格、ホスホロジチオエート骨格、p-エトキシ結合を有する骨格などの部分的または完全改変骨格;2’-O-メチル(2’-O-メチルヌクレオチド)、2’-O-メチルオキシエトキシ(2’-O-MOE)、2’-O-アルキル修飾糖部分、または二環式糖部分などの糖修飾;ヌクレオチド模倣物質、ペプチド核酸(PNA)、モルホリノ核酸、シクロヘキセニル核酸、アンヒドロヘキシトール核酸、グリコール核酸、トレオース核酸、およびロックド核酸(LNA)、ならびに前述のいずれかの2つ以上の任意の組み合わせ。別の態様では、オリゴヌクレオチド中の少なくとも1つまたは複数のヌクレオチドは、ヌクレオチド塩基に対する非天然の改変を含む。別の態様では、オリゴヌクレオチドは、表2の配列(配列番号14~50)のいずれか、またはその一部から、単独でまたは組み合わせて、またはIL7R RNA内の全標的配列に対して少なくとも、70、75、80、84、85、88、92、93、94、95、または96%の同一性を有する配列から、選択される。別の態様では、オリゴヌクレオチドは、表2の配列(配列番号14~50)のいずれかを、全体でまたは部分的に標的にする。別の態様では、組成物は、薬学的に許容可能な賦形剤、塩、または担体をさらに含む。別の態様では、組成物は、癌の治療のための投与に適する。
【0021】
さらに別の実施形態では、本発明は、インターロイキン7受容体(IL7R)プレmRNA中のエクソン6の含有を減らす方法を含み、方法は、エクソン6のスプライシングに影響を与えるインターロイキン7受容体(IL7R)プレmRNAの配列に特異的に結合するスプライス調節アンチセンスオリゴヌクレオチド(SM-ASO)に接触させることを含み、SM-ASOはIL7RプレmRNA中のエクソン6の含有を減らし、IL7Rの可溶性アイソフォーム(sIL7R)の発現を増やす。別の態様では、組成物中のオリゴヌクレオチドは、エクソン内スプライシング促進配列(ESE)および/またはイントロン内スプライシング促進配列(ISE)からなる群の少なくとも1つにおけるIL7RプレmRNA中の配列に特異的に結合し、それによりエクソン6の含有を減らし、sIL7Rの発現を増やす。別の態様では、組成物中のSM-ASOは、イントロン-エクソンスプライス部位、ブランチポイント配列、および/またはポリピリミジントラクトで、IL7RプレmRNA上の配列に特異的に結合する。別の態様では、SM-ASO中の少なくとも1つまたは複数のヌクレオチドは、下記から選択される、(1)リボースまたは他の糖単位、(2)塩基、または(3)骨格の修飾または置換を含む非天然の改変を含む:1つまたは複数のホスホロチオエート、ジチオリン酸、リン酸ジエステル、メチルホスホネート、ホスホラミデート、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホロアリデート(phosphoroaridate)、モルホリノ、アミデートカルバメート(amidate carbamate)、カルボキシメチル、アセトアミデート、ポリアミド、スルホネート、スルホンアミド、スルファメート、ホルムアセタール、チオホルムアセタール、および/またはアルキルシリル置換体;完全修飾糖ホスフェート骨格、ロックド核酸骨格、ペプチド骨格、ホスホトリエステル骨格、ホスホラミデート骨格、シロキサン骨格、カルボキシメチルエステル骨格、アセトアミデート骨格、カルバメート骨格、チオエーテル骨格、架橋メチレンホスホネート骨格、ホスホロチオエート骨格、メチルホスホネート骨格、アルキルホスホネート骨格、ホスフェートエステル骨格、メチルホスホロチオエート骨格、アルキルホスホノチオエート骨格、ホスホロジチオエート骨格、カーボネート骨格、ホスフェートトリエステル骨格、カルボキシメチルエステル骨格、メチルホスホロチオエート骨格、ホスホロジチオエート骨格、p-エトキシ結合を有する骨格などの部分的または完全改変骨格;2’-O-メチル(2’-O-メチルヌクレオチド)、2’-O-メチルオキシエトキシ(2’-O-MOE)、2’-O-アルキル修飾糖部分、または二環式糖部分などの糖修飾;ヌクレオチド模倣物質、ペプチド核酸(PNA)、モルホリノ核酸、シクロヘキセニル核酸、アンヒドロヘキシトール核酸、グリコール核酸、トレオース核酸、およびロックド核酸(LNA)、ならびに前述のいずれかの2つ以上の任意の組み合わせ。別の態様では、SM-ASO中の少なくとも1つまたは複数のヌクレオチドは、ヌクレオチド塩基に対する非天然の改変を含む。別の態様では、SM-ASOは、IL7Rエクソン5~エクソン7境界を標的化することにより、エクソン6を欠くIL7R mRNAの安定性を高める。別の態様では、SM-ASOは、エクソン6を欠くIL7R mRNAの翻訳を強化する。別の態様では、SM-ASOは、表2の配列のいずれか、またはその一部から、単独でまたは組み合わせて、またはIL7R RNA内の全標的配列に対して少なくとも、70、75、80、84、85、88、92、93、94、95、または96%の同一性を有する配列から、選択される。別の態様では、オリゴヌクレオチドは、表2の配列のいずれかを、全体でまたは部分的に標的にする。別の態様では、組成物は、薬学的に許容可能な賦形剤、塩、または担体をさらに含む。別の態様では、障害は癌の一種である。別の態様では、方法は、患者から細胞を取得し、エクソン6のスプライシングに影響を与えるインターロイキン7受容体(IL7R)プレmRNAの配列に特異的に結合するオリゴヌクレオチドを一時的にまたは永久的に発現するようにその細胞を改変するステップをさらに含む。別の態様では、方法は、遺伝子治療で使用するために、エクソン6のスプライシングに影響を与えるインターロイキン7受容体(IL7R)プレmRNAの配列に特異的に結合するオリゴヌクレオチドを発現するベクターを生成し、そのベクターで患者を治療することをさらに含む。
【0022】
別の実施形態では、本発明は、インターロイキン7受容体(IL7R)プレmRNA中のエクソン6の含有を増やす組成物を含み、方法は、エクソン6のスプライシングに影響を与えるインターロイキン7受容体(IL7R)プレmRNA中の配列に特異的に結合するスプライス調節アンチセンスオリゴヌクレオチド(SM-ASO)に接触させることを含み、SM-ASOは、IL7RプレmRNA中のエクソン6の含有を減らし、IL7Rの可溶性アイソフォーム(sIL7R)の発現を増やす。一態様では、組成物は、SM-ASOの、癌の治療に有効な1種または複数の活性薬剤、例えば、限定されないが、免疫チェックポイント抑制剤(例えば、ニボルバム)、治療抗体(例えば、ハーセプチン)、従来の化学療法剤(例えば、タキソール)、または放射線治療などとの併用療法をさらに含む。
【0023】
別の実施形態では、本発明は、エクソン6のスプライシングに影響を与えるインターロイキン7受容体(IL7R)プレmRNA中の配列に特異的に結合する、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)またはスプライス調節アンチセンスオリゴヌクレオチド(SM-ASO)であるオリゴヌクレオチドを含む核酸を発現するベクターを含み、SM-ASOは、IL7RプレmRNA中のエクソン6の含有を減らし、IL7Rの可溶性アイソフォーム(sIL7R)の発現を増やす。一態様では、ベクターはウイルスベクターまたはプラスミドである。
この発明の特徴および利点をより完全に理解するために、以降で、添付図面に加えて、本発明の詳細な説明に言及がなされる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1A図1A~1Cは、スプライス調節アンチセンスオリゴヌクレオチド(SM-ASO)のスクリーニングのためのGFP-IL7R蛍光スプライシングレポーターの検証を示す。
図1B】同上。
図1C】同上。
図2A図2A~2Eは、エクソン6中の配列に相補的なIL7Rスプライス調節アンチセンスオリゴヌクレオチド(SM-ASO)の標的化スクリーニングを示す。
図2B】同上。
図2C】同上。
図2D】同上。
図2E】同上。
図3A図3A~3Eは、IL7Rイントロン5および6中のSM-ASOウォークスクリーン(walk screen)ターゲティング配列を示す。
図3B】同上。
図3C】同上。
図3D】同上。
図3E】同上。
図4A図4A~4Dは、IL7Rタンパク質アイソフォームの発現に対する選択SM-ASOの効果を示す。
図4B】同上。
図4C】同上。
図4D】同上。
図5A図5A~5Dは、IL7Rエクソン6スプライシングの調節時にsIL7Rを減らすリードSM-ASOの用量反応効果を示す。
図5B】同上。
図5C】同上。
図5D】同上。
図6A図6A~6Dは、IL7Rエクソン6スプライシングの調節時にsIL7Rを増やすリードSM-ASOの用量反応効果を示す。
図6B】同上。
図6C】同上。
図6D】同上。
図7A図7A~7Bは、MSにおけるIL7Rエクソン6の排除を増やしかつsIL7Rレベルを高める遺伝子異常の影響の、IL7R-005による訂正を示す。
図7B】同上。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の種々の実施形態の形成および使用が以下で詳細に考察されるが、本発明は、多種多様の具体的状況で実施できる多くの適用可能な発明概念を提供することを理解されたい。本明細書で考察される具体的実施形態は、本発明を形成し、使用するための具体的な例に過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【0026】
本発明の理解を容易にするために、多くの用語を以下で定義する。本明細書で定義される用語は、本発明に関連する領域の当業者により、一般的に理解されている意味を有する。「a」、「an」、及び「the」等の用語は、1つの実体のみを指すことを意図するものではなく、具体例を例示のために用いることができる一般分類を含む。本明細書の用語は、本発明の特定の実施形態を記述するために使用されるが、それらの使用法は、特許請求の範囲で概説する場合を除いて、本発明を限定するものではない。
【0027】
本発明は、自己免疫疾患(例えば、多発性硬化症)または癌を治療するために、可溶性IL7R(sIL7R)を、それぞれ、減らすまたは増やす新規組成物および方法に関する。本発明はSM-ASOを使用して、インターロイキン7受容体(IL7R)プレmRNAの選択的スプライシングを制御し、sIL7Rの発現を防止もしくは減少させる、または逆にsIL7Rの発現を増やす。例えば、自己反応性を高めるsIL7Rの能力を考慮して、sIL7Rレベルの増大は現在用いられる免疫療法(例えば、免疫チェックポイント阻害剤)に対する応答を高めることが、本明細書で実証される。
【0028】
特に断らなければ、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は通常、本発明が属する当業者により一般に理解されているものと同じ意味を有する。一般に、本明細書で使われる命名法および細胞培養、分子遺伝学、有機化学、有機合成、核酸化学および核酸ハイブリダイゼーションでの実験室手順は、当該技術分野において既知であり、一般に使用されているものである。さらに、標準的技術を核酸およびペプチド合成に使用できる。このような技術および手順は通常、当該技術分野において既知であり種々の一般的参考文献(例えば、Sambrook and Russell,2012,Molecular Cloning,A Laboratory Approach,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,and Ausubel et al.,2012,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,NY;関連する部分は、参照により本明細書に組み込まれる)由来の従来の方法に従って実施される。
【0029】
従来の表記法を本明細書で用いて、ポリヌクレオチド配列を記述し、例えば、コード配列になるものなどの配列に関して、一本鎖ポリヌクレオチド配列の左側末端は、5’-末端であり、逆側は、3’-末端(右側末端)であり;二本鎖ポリヌクレオチド配列の左側は、5’-方向と呼ばれ、逆側は、3’-方向(右側方向)と呼ばれる。発生期のRNA転写物に対するヌクレオチドの5’から3’への付加の方向は、転写方向と呼ばれる。mRNAと同じ配列を有するDNA鎖は、「コード鎖」と呼ばれる。DNAまたはRNA上の基準点に対し5’に位置するDNAまたはRNA鎖上の配列は、「上流配列」と呼ばれ、DNAまたはRNA上の基準点に対し3’であるDNAまたはRNA鎖上の配列は、「下流配列」と呼ばれる。
【0030】
本明細書で使用される場合、「アンチセンス」という用語は、ワトソン・クリック塩基対によりRNA中の標的配列にハイブリッド形成して、標的配列、通常はmRNAまたはプレmRNAと、RNA:オリゴヌクレオチドヘテロ二本鎖を形成する配列を有するオリゴヌクレオチドを指す。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的配列に対して正確な配列相補性または近似の相補性を有し得る。これらのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、mRNAの翻訳を阻止または抑制し、mRNAのスプライスバリアントを産生するmRNAのプロセッシングを調節し、および/または所与のmRNAまたはmRNAのバリアントの特異的分解を促進し得る。1つの非限定的例はまた、RNアーゼH依存性分解であり得る。アンチセンス配列がRNA分子のコード部分にのみ相補性であることは必ずしも必須ではない。アンチセンス配列は、タンパク質をコードするRNA分子のノンコーディング領域(例えば、イントロン、非翻訳領域)上で特定される調節配列に相補的であってもよく、この調節配列はコード配列の発現を制御する。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、典型的には約5~約100ヌクレオチド長、より典型的には約7~約50ヌクレオチド長、さらにより典型的には約10~約30ヌクレオチド長である。
【0031】
本明細書で使用される場合、「核酸」または「核酸分子」という用語は、直鎖または環状形態に関係なく、一本鎖または二本差のいずれかの、任意のDNAまたはRNA分子を指す。本発明の核酸に関して、用語の「単離核酸」は、DNAまたはRNAに適用される場合、それが由来する生物の天然のゲノムまたは遺伝子産物中の隣接配列から分離されているDNAまたはRNA分子を指す。例えば、「単離核酸」は、プラスミドまたはウイルスベクターなどのベクター中に挿入される、または原核生物または真核細胞または宿主生物のゲノムDNA中に組み込まれるDNA分子を含み得る。
【0032】
本明細書で使用される場合、「特異的にハイブリッド形成する」または「実質的に相補的な」という用語は、当該技術分野において通常使用される所定の条件下でハイブリダイゼーションを可能にするのに十分に相補的な2つのヌクレオチド分子間の結合を指す。低い、中位のまたは中間的なおよび高いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件の例は、例えば、Sambrook and Russell,2012,Molecular Cloning,A Laboratory Approach,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,またはAusubel et al.,2012,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,NY、を活用して、当業者には周知であり、これらの文献の関連部分は参照により本明細書に組み込まれる。
【0033】
本明細書で使用される場合、表現の「化学修飾オリゴヌクレオチド」は、Wan and Seth,“The Medicinal Chemistry of Therapeutic Oligonucleotides”,J.Med.Chem.2016,59,21,9645-9667(関連部分は本明細書に組み込まれる)により教示されるものなどの修飾または置換を含むセンスまたはアンチセンスであり得る短い核酸(DNAまたはRNA)を指し、これらは、(1)リボースまたは他の糖単位、(2)塩基、または(3)骨格の改変を含み得、これらは、天然では、当技術分野において既知の、ホスフェートで構成される。改変またはヌクレオチド類似体の非限定的例としては、限定されないが、1つまたは複数のホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、リン酸ジエステル、メチルホスホネート、ホスホラミデート、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホロアリデート、モルホリノ、アミデートカルバメート、カルボキシメチル、アセトアミデート、ポリアミド、スルホネート、スルホンアミド、スルファメート、ホルムアセタール、チオホルムアセタール、および/またはアルキルシリル置換を含むホスフェート修飾を有するヌクレオチド(例えば、Hunziker and Leumann(1995)Nucleic Acid Analogues:Synthesis and Properties,in Modern Synthetic Methods,VCH,331-417;Mesmaeker et al.(1994)Novel Backbone Replacements for Oligonucleotides,in Carbohydrate Modifications in Antisense Research,ACS,24-39を参照);修飾糖を有するヌクレオチド(例えば、米国特許出願公開第2005/0118605号を参照)および2’-O-メチル(2’-O-メチルヌクレオチド)および2’-O-メチルオキシエトキシ(2’-O-MOE)、2’-O-アルキル修飾糖部分、または二環式糖部分などの糖修飾;および限定されないが、ペプチド核酸(PNA)、モルホリノ核酸、シクロヘキセニル核酸、アンヒドロヘキシトール核酸、グリコール核酸、トレオース核酸、およびロックド核酸(LNA)などのヌクレオチド模倣物質、ならびに、完全修飾糖ホスフェート骨格、ロックド核酸骨格、ペプチド骨格、ホスホトリエステル骨格、ホスホラミデート骨格、シロキサン骨格、カルボキシメチルエステル骨格、アセトアミデート骨格、カルバメート骨格、チオエーテル骨格、架橋メチレンホスホネート骨格、ホスホロチオエート骨格、メチルホスホネート骨格、アルキルホスホネート骨格、ホスフェートエステル骨格、アルキルホスホノチオエート骨格、ホスホロジチオエート骨格、カーボネート骨格、ホスフェートトリエステル骨格、カルボキシメチルエステル骨格、メチルホスホロチオエート骨格、ホスホロジチオエート骨格、p-エトキシ結合を有する骨格などの部分的または完全改変骨格;ならびに前述のいずれかの2つ以上の任意の組み合わせが挙げられる(例えば、米国特許第5,886,165号;同第6,140,482号;同第5,693,773号;同第5,856,462号;同第5,973,136号;同第5,929,226号;同第6,194,598号;同第6,172,209号;同第6,175,004号;同第6,166,197号;同第6,166,188号;同第6,160,152号;同第6,160,109号;同第6,153,737号;同第6,147,200号;同第6,146,829号;同第6,127,533号;および同第6,124,445号を参照)。
【0034】
本明細書で使用される場合、「発現カセット」という用語は、転写、プロセッシングおよび、任意選択で、コード配列の翻訳またはスプライシングに必要なプロモーター/調節配列に動作可能に連結されたコード配列を含む核酸分子を指す。
【0035】
sIL7Rを減らすIL7R SM-ASOは、自己免疫疾患および/または炎症性疾患などの疾患または障害の治療に使用できる。sIL7Rを増やすIL7R SM-ASOは、癌免疫療法用途に使用できる。sIL7Rメッセージまたはタンパク質の発現の増大または減少に関わらず、本発明は、遺伝子治療およびエクスビボ適用と共に使用できる。例えば、オリゴヌクレオチドは、細胞がその対象または別の対象から単離され、その細胞がsIL7Rの発現を調節するオリゴヌクレオチドを発現するように改変され、その後その細胞をその対象に戻し得る方法で使用できる。本発明は、プラスミドまたはウイルスベクターなどの、種々の既知の送達および発現方法と共に使用できる。また、本発明は、全ての細胞の改変方法、例えば、一時的または永久的に関わらず、または調節可能なプロモーターの制御下で、遺伝子編集、核酸(任意の天然の、合成のまたは改変された核酸)、タンパク質(完全長タンパク質またはペプチド)の送達と共に使用できる。オリゴヌクレオチドまたはこれを発現するベクターは、例えば、トランスフェクション、電気穿孔、担体媒介、ウイルス、などの既知の方法を介して送達できる。
【0036】
本明細書で使用される場合、「プロモーター/調節配列」という用語は、プロモーター/調節配列に動作可能に連結された遺伝子産物の発現に必要とされる核酸配列を指す。いくつかの事例では、プロモーター/調節配列は、コアプロモーター配列であり得、他の事例では、この配列はまた、エンハンサー配列および遺伝子産物の発現に必要とされる他の調節エレメントを含み得る。プロモーター/調節配列は、例えば、構成的におよび/または誘導的に遺伝子産物の発現を促進する配列であり得る。本明細書で使用される場合、「誘導性プロモーター」という用語は、遺伝子産物をコードまたは指定するポリヌクレオチドと作動可能に連結される場合、実質的にプロモーターに対応する誘導因子が存在する場合にのみ遺伝子産物を産生させる、ヌクレオチド配列を指す。
【0037】
本明細書で使用される場合、「パーセント類似性」、「パーセント同一性」および「パーセント相同性」という用語は、2つの特定の配列の間での比較に言及する場合、特定の配列に沿って同じであるパーセンテージまたは塩基を特定する。類似性、同一性または相同性のパーセンテージは、例えば、University of Wisconsin GCGソフトウェアプログラムまたは同等品を用いて計算できる。
【0038】
本明細書で使用される場合、「レプリコン」という用語は、主にそれ自身の制御下で複製できる、任意の遺伝要素、例えば、プラスミド、コスミド、バクミド、ファージまたはウイルスを指す。レプリコンは、RNAまたはDNAであってよく、一本鎖または二本鎖であってよい。
【0039】
本明細書で使用される場合、「ベクター」という用語は、別の遺伝子配列または要素(DNAまたはRNA)が結合され得るプラスミド、コスミド、バクミド、ファージまたはウイルスなどの遺伝要素を指す。ベクターは、結合された配列またはエレメントの複製をもたらすようなレプリコンであり得る。「発現ベクター」は、宿主細胞または生物中の、オリゴヌクレオチドなどの核酸、またはポリペプチドをコードする核酸配列の発現を促進するベクターである。
【0040】
本明細書で使用される場合、用語の「作動可能に連結された」は、別の核酸配列との機能的関連に置かれる核酸配列を指す。作動可能に連結され得る核酸配列の例としては、限定されないが、プロモーター、転写ターミネーター、転写促進因子または活性化因子および転写されかつ、必要に応じ翻訳される場合、タンパク質、リボザイムまたはRNA分子などの機能的生成物を産生する、異種遺伝子が挙げられる。
【0041】
本明細書で使用される場合、「オリゴヌクレオチド」という用語は、通常、遺伝子のコード配列より短い長さを有する一本鎖または二本鎖の核酸鎖を指し、例えば、オリゴヌクレオチドは通常、少なくとも4~6、最大約200塩基または塩基対長であり、最も典型的なオリゴヌクレオチドは、8~20、10~25、12~30、または約30、35、40、または50塩基または塩基対長である。本発明の具体的例では、オリゴヌクレオチドは、インターロイキン7受容体(IL7R)遺伝子のプレmRNA中のエクソン6の含有を調節する配列を有する核酸鎖であり、2つ以上、好ましくは5つ以上のリボまたはデオキシリボヌクレオチドからなる核酸分子として定義される。オリゴヌクレオチドの正確なサイズは、各種要因にならびにオリゴヌクレオチドの特定用途および使用に依存し、本明細書の教示に従って過度な実験をすることなく当業者に既知であるように、および、例えば、Sambrook and Russell,2012,Molecular Cloning,A Laboratory Approach,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,またはAusubel et al.,2012,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,NY、で教示されるように、変動し得る。これらの文献の関連部分は参照により本明細書に組み込まれる。
【0042】
本明細書で使用される場合、「mRNAのスプライスバリアントまたはアイソフォーム」という用語は、バリアントmRNAを意味し、これは欠陥がある、または病原性である可能性があり、かつタンパク質をコードするRNAの選択的スプライシングの結果であり得る。欠陥があるまたは病態をもたらすmRNAのスプライスバリアントを産生するスプライシングイベントは、本発明では、スプライシング異常と呼ばれる。このようなスプライシング異常の一例は、より短いタンパク質、可溶性IL7R(sIL7R)の発現を引き起こすIL7Rのエクソン6の排除である。sIL7Rは、細胞から分泌され、例えば、血流または体液中でのその存在をもたらす。本発明は、最終成熟またはプロセッシングされたmRNA中のIL7Rエクソン6の含有または排除を制御するIL7RプレmRNA内のエレメント(すなわち、配列)、またはsIL7R mRNA内の、その翻訳または安定性を制御する配列を標的にする。
【0043】
本明細書で使用される場合、「タンパク質のスプライスバリアントまたはアイソフォーム」という用語は、バリアントタンパク質を意味し、これは、欠陥がある、または病原性である可能性があり、タンパク質をコードするRNAの選択的スプライシングの結果であり得る。あるいは、分解を増やすバリアントについて論ずる場合、これらのスプライスバリアントは、タンパク質産生を減らすまたはなくするであろう。欠陥があるまたは病態をもたらすタンパク質のスプライスバリアントを産生するスプライシングイベントは、本発明では、スプライシング異常と呼ばれる。このようなスプライシング異常の一例は、より短いタンパク質、可溶性IL7R(sIL7R)の発現を引き起こすIL7Rのエクソン6の排除である。sIL7Rは、細胞から分泌され、例えば、血流または体液中のその存在をもたらす。本発明は、最終成熟またはプロセッシングされたmRNA中のIL7Rエクソン6の含有または排除を制御するIL7RプレmRNA内のエレメント(すなわち、配列)、またはsIL7R mRNA内の、その翻訳または安定性を制御する配列を標的にする。
【0044】
本明細書で使用される場合、「治療」という用語は、疾患または障害もしくは1つまたは複数のその症状の発症を元に戻す、緩和する、遅らせる、進行を抑制する、および/または防止することを意味し、この用語は、例えば、自己免疫疾患または障害の対象での病状またはその発症に対し適用される。いくつかの実施形態では、治療は、1つまたは複数の症状が発生した後で適用され得る。他の実施形態では、治療は、症状の非存在下で投与され得る。例えば、治療は、症状の前に(例えば、症状の経過および/または1つまたは複数の他の感受性因子を考慮して)、または症状が回復した後で、例えば、その再発を防止するまたは遅らせるために、投与され得る。1つのこのような非限定的例は、再発寛解型MSである。
【0045】
本明細書で使用される場合、「有効量」および「薬学的有効量」という用語は、所望の生物学的結果を得るための薬剤の十分な量を指す。好ましくは、薬剤の十分な量は、毒性副作用を誘導しない。sIL7Rを減らすIL7R SM-ASOを使用する本発明は、自己免疫疾患または障害の兆候、症状、または原因の低減もしくは緩和をもたらすはずである。設計としては、本発明は、宿主の免疫応答の低下を引き起こすとは予測されず、従って、広範な免疫抑制に関連する副作用はほとんどないかまたは少ない。任意の個別の場合での適切な有効量は、通常の実験を用いて当業者により決定され得る。sIL7Rを増やすIL7R SM-ASOを使用する本発明は、癌の兆候、症状、または原因の低減もしくは緩和をもたらすはずである。設計としては、本発明は、宿主の免疫応答の増強を引き起こすと予測され、従って、現在の免疫療法を強化すると予測される。任意の個別の場合での適切な有効量は、通常の実験を用いて当業者により決定され得る。
【0046】
本発明は、動物およびさらに限定すればヒトに使用するための米国薬局方またはその他の一般に認められている薬局方にリストされている、通常は連邦政府または州政府の規制当局による承認を示す、1種または複数の「薬学的に許容可能な」薬剤、担体、緩衝液、塩、または他の薬剤と共に提供され得る。オリゴヌクレオチドと共に使用するための典型的薬学的に許容可能な製剤は、限定されないが、塩化カルシウム二水和物(米国薬局方(USP))、塩化マグネシウム6水和物USP、塩化カリウムUSP、塩化ナトリウムUSPなどの塩を含み、さらに、リン酸ナトリウム二塩基性無水物USP、リン酸ナトリウム一塩基性二水和物USP、および水USPなどの緩衝液を含んでもよい。通常、生成物のpHは、塩酸または水酸化ナトリウムを用いて、pH約6.8、6.9、7.0、7.1、または7.2に変更されてよい。
【0047】
本発明は、治療の有効性を実証するために使用される1種または複数の診断検査と組み合わせて提供され得る。
【0048】
本明細書で使用される場合、「担体」という用語は、例えば、希釈剤、保存剤、可溶化剤、乳化剤、アジュバント、賦形剤、助剤またはビークルを指し、これらと共に、本発明の活性薬剤が投与される。このような医薬キャリアは、石油、動物、植物、または人工起源のもの、例えば、ピーナッツオイル、大豆油、鉱物油、ゴマ油などを含む無菌の液体、例えば、水および油などであってよい。水または生理食塩水および水性デキストロースならびにグリセリン溶液を、担体として用い得る。適切な医薬担体は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences、2012」に記載されている。
【0049】
一実施形態では、本発明は、限定されないが、多発性硬化症(MS)を含む、自己免疫障害を治療するための、新規組成物および方法に関する。MSは、成人早期の最もよくある神経疾患であり、中枢神経系での脱髄および神経損傷を引き起こす自己免疫性機序により媒介され、進行性神経機能障害をもたらす。現在まで、この病気の治癒はなく、現在の利用可能な治療は、多くの場合免疫系を抑制することにより、将来の免疫学的な攻撃を防ぐことに重点が置かれている。この免疫抑制手法は、極めて多くの有害な副作用を引き起こし、その中で、特に、癌および重篤で致死であり得る感染症のリスクの増大を引き起こす。従って、本発明者らは、MS発生を抑えるために、有害免疫抑制副作用がなく、効果的で、耐容性良好な治療法の開発に対する未充足の明確なニーズを満たす新規治療法を開発した。
【0050】
本発明はまた、癌を治療するための新規組成物および方法にも関する。癌は、米国における死亡の2番目の原因であり、多くの病因により媒介される。現在まで、多くの癌は治療され得ないが、しかし、最近では、癌細胞の免疫認識および死滅に基づく治療法が新しい希望をもたらした。残念なことに、免疫療法を受けている多くの患者は、十分に応答せず、いくつかの癌型(例えば、肝細胞癌)は応答率が低い。従って、本発明者らは、従来の免疫療法の強化に対する、未充足の明確なニーズを満たすために新規治療法を開発した。
【0051】
本発明者らは、特定のMS病因を矯正するために、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)および/またはスプライス調節アンチセンスオリゴヌクレオチド(SM-ASO)などの、標的化アンチセンスオリゴヌクレオチドを開発した。SM-ASOは、異常RNAスプライシングにより引き起こされる障害を治療するための新規で有用な治療手段であることが実証された。2種のこのようなSM-ASOが、脊髄性筋萎縮症(スピンラザ、Biogen)およびデュシェンヌ型筋ジストロフィー(Exondys 51、Sarepta Therapeutics)の治療用として、最近FDAによる認可を受けた。
【0052】
新規標的療法薬は、インターロイキン7受容体(IL7R)RNAの異常スプライシングを矯正し、選択的エクソン6の排除は、高レベルの病原性可溶型IL7R(sIL7R)をもたらす。次に示すいくつかの証拠が、IL7Rエクソン6の選択的スプライシングのMSおよび他の自己免疫疾患の病因における役割に直接に結びつき、強くその役割を裏付ける:(1)このエクソンの排除を増やす遺伝子バリアントは、MSリスクの増大と強く関連する(Galarza-Munoz et al.,2017;Gregory et al.,2007);(2)sIL7Rは、MSの実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)マウスモデルにおいて疾患の重症度および進行を悪化させる(Lundstrom et al.,2013);および(3)sIL7Rは、MS、I型糖尿病、関節リウマチおよび全身性エリテマトーデスを含むいくつかの自己免疫疾患の患者中で上昇している(Badot et al.,2011;Badot et al.,2013;Lauwerys et al.,2014;McKay et al.,2008;Monti et al.,2013)。
【0053】
本発明者らは、いくつかのSM-ASO(表1)を開発し、その中でも特に、培養細胞中のIL7RプレmRNA中のエクソン6の含有を促進しかつIL7Rタンパク質アイソフォームの発現を矯正する、リードASO IL7R-005およびIL7R-006を開発した。この治療手法にとって極めて重要なのは、これらのSM-ASOが、膜結合型のIL7R(mIL7R)の発現に悪い影響を与えることなく、sIL7Rレベルを下げることである。自己免疫性を治療するために、本発明は、IL7RプレmRNA中のエクソン6の排除を促進する特定の配列をブロックするために使用され、それによりエクソン6の含有を促進しsIL7Rレベルを下げる。さらに、癌を治療するために、本発明は、IL7RプレmRNA中のエクソン6の含有を促進する特定の配列をブロックするために使用され、それによりエクソン6の含有を減らしsIL7Rレベルを高める。当業者なら、本発明のSM-ASOを、単独で、または他の治療法と組み合わせて使用できることを理解するであろう。さらに、単純な単一塩基変異により、SM-ASOは、ヒトIL7Rの、または異なる動物における、または多型を有するまたは標的化配列で変異が発生した場合の個体におけるIL7Rの、アレルバリアント中のエクソン6のスプライシングを制御するように適合させることができ、従って、バリアント配列に対するSM-ASOの相補性を調整できる。
【表1】
【0054】
多種多様なSM-ASO、例えば、多種多様のSM-ASOに対する塩基修飾または骨格修飾を含むものなどを、本発明で使用できる。SM-ASOの非限定的例は、天然核酸を含んでよいが、しかし、SM-ASOの結合効率を高める、SM-ASOの安定性(例えば、半減期)を高める、その発現を増大させる、その発現、分布または局在化場所を制御する、などの骨格または塩基の修飾(化学修飾オリゴヌクレオチド)も含んでよい。
【0055】
MSなどの自己免疫疾患に対する現在の治療は、自己免疫疾患患者がその症状を管理するのを支援してきたが、重篤で致死であり得る、薬物がもたらす各種の有害副作用を考慮すると、これらの薬物は理想とはほど遠い。効果的で、しかもより安全なMS薬物の開発は、多数の原因がMSの病態形成をもたらす、この疾患の複雑な性質により妨げられてきた。全てのこれらの病因が結果的にミエリンに対する免疫寛容の破綻になることを考慮して、この分野は、これまで、多様な機序を介して免疫反応を漸減させる治療法を開発することを重視してきた。例えば、ナタリズマブは、血液脳関門を通過する白血球の移動およびそれらの炎症部位への動員を遮断するように設計されている。別の例は、オクレリズマブであり、これは、B細胞を枯渇させる。しかし、これらの機序の両方は(異なる作用を介するが)、最終的に免疫抑制をもたらす。効果的で、しかもより安全な薬物を患者に提供するために、免疫調節を介して所定の病因の結果を取り扱うのではなく、特定のMS病因の矯正を標的にする新規治療法(これは本発明者らが本明細書で免疫矯正として言及する)を開発することが必須である。
【0056】
標準的な膜結合型インターロイキン7受容体(mIL7R)は、MSおよび多数の自己免疫障害における治療的介入の以前の候補であった。しかし、mIL7Rは、T細胞恒常性および正常な免疫機能にとって重要であり、ヒトおよびマウスの両方でIL7R機能の喪失は、重大な免疫不全を引き起こす(Maraskovsky et al.,1996;Peschon et al.,1994;Puel et al.,1998;Roifman et al.,2000)。従って、mIL7Rの発現および機能を抑制する新規MS治療法は、重大な免疫不全を生ずるであろう。本明細書で開発した治療的SM-ASOは、IL7Rエクソン6の異常スプライシングを矯正し、そうすることにより、それらはsIL7Rレベルを漸減させ、同時にmIL7R発現および/または機能に対する悪影響を防止する。従って、免疫抑制機序に依存する現在のMS治療薬とは異なり、sIL7Rを減らす本発明の治療的SM-ASO(表1)は、免疫抑制を回避する効果的でより安全なMS治療のための選択肢である。sIL7Rを減らす本発明のSM-ASO(表1)は、これらが免疫系を抑制することによりその結果に対処するのではなく、問題の根本を矯正する点で、現在の薬物より大きな改善を示す。
【0057】
さらに、sIL7Rの高められたレベル(自己免疫疾患を有さない対象の正常レベルのsIL7Rと比較した場合)は、I型糖尿病、関節リウマチおよび全身性エリテマトーデスなどの他の自己免疫疾患と関連しており、これらの疾患の患者は、上昇したレベルの循環sIL7Rを有することが示された(Badot et al.,2011;Badot et al.,2013;Lauwerys et al.,2014;Monti et al.,2013)。従って、治療的SM-ASOは、上昇したレベルのsIL7Rを有する多数の疾患または障害の治療に使用され得る。
【0058】
癌は、米国における死亡の2番目の主要な原因である。癌を編成する多くの病因があることを考慮すると、多くの癌に対する効果的治療法は不十分である。癌免疫療法は、以前には制御困難であった癌に対する新規治療法として身体の免疫系を使用する、急速に拡大している分野である。負の免疫調節因子CTLA-4(ヤーボイ、Bristol-Myers Squibb)ならびにPD-1(ペムブロリズマブ(キイトルーダ、Merck)およびニボルバム(オプジーボ、Bristol-Myers Squibb)を標的とする、モノクローナル抗体などの免疫チェックポイント抑制剤がFDA認可されている。それらの潜在能力の一例は、ニボルバムおよびイピリムマブの組み合わせで治療された、以前に未治療で、手術不能なまたは転移性黒色腫の患者での試験であり、この場合、50%の全体応答率が報告された(Larkin J,Chiarion-Sileni V,Gonzalez R,Grob JJ,Cowey CL,et al.2015.N Engl J Med 373:23-34)。
【0059】
最近の癌免疫療法は新しい希望をもたらしたが、残念なことに、免疫療法を受けている多くの患者は十分に応答せず、いくつかの癌型(例えば、肝細胞癌)は応答率が低い。例えば、ニボルバムは、キナーゼ抑制剤ソラフェニブに対し応答しなかった肝細胞癌の患者に対しFDA認可されているが、試験された154人の患者中の全体の応答率は、14.3%に過ぎず、完全応答は、3人の患者のみで観察された(NCT01658878)。期待が持てるものではあるが、これらのデータは、応答率を高めるという不可欠な必要性があることを示す。
【0060】
免疫療法の応答率を高めるニーズは、現在採用されている免疫チェックポイント遮断薬の成功を予見するマーカー(例えば、腫瘍細胞中のPD-L1発現および高いマイクロサテライト不安定性)の集中的探索を動機づけた。あまり開発されなかったが、同様に刺激的なのは、チェックポイント遮断と相乗作用を示し得る免疫調節促進剤(pro-immune modulator)の研究である。高レベルのsIL7Rは、サイトカインIL7のバイオアベイラビリティおよび/または生物活性を増強することにより免疫応答を強化し、T細胞の生存を高めると考えられる(Lundstrom et al.,2013)。これは、癌に対する免疫応答を高める潜在力を有する炎症促進性環境をもたらす。従って、本発明は、sIL7Rを高めるSM-ASO、例えば、リードSM-ASOであるIL7R-001およびIL7R-004など、および表2の追加のSM-ASOを、癌に対する新規免疫療法として使用する。
【表2】
【0061】
図1A~1Cは、スプライス調節アンチセンスオリゴヌクレオチド(SM-ASO)のスクリーニングのためのGFP-IL7R蛍光スプライシングレポーターの検証を示す。図1Aは、SM-ASO目標(赤)および対応するシススプライシングエレメント(青)の位置を示すGFP-IL7Rレポーターの概略図を示す。図1Bは、GFP-IL7Rレポーターからの転写物中のIL7Rエクソン6のスプライシング分析を示す。WT(C)または変異バージョンのレポーター(5’Mut、5’Cons、ΔESE2およびΔESS2)を安定に発現しているHeLa細胞を、対照(Ctrl)または実験の(IL7R-001およびIL7R-002)SM-ASOで遺伝子導入した。エクソン6スプライシングを、GFP-IL7Rレポーター(+E6=エクソン6含有;-E6=エクソン6排除)に特異的なプライマーを用いてRT-PCRで分析し、エクソン6含有パーセンテージを、次式で計算した:[含有/(含有+排除)]*100。図1Cは、GFP発現の分析を示す。GFP平均蛍光強度(MFI)を、フローサイトメトリーで定量化した。データは、対照SM-ASO(Ctrl)に正規化して示される。
【0062】
IL7Rエクソン6のスプライシングを調節するSM-ASOについてスクリーニングするこのレポーターシステムの実現可能性を評価するために、本発明者らは、エクソン6中の特定のシス作用性スプライシングエレメントをブロックする効果を、対応するエレメントの変異と比較した。例えば、SM-ASO IL7R-001は、エクソン6の5'-スプライス部位をブロックし、この5'-スプライス部位の機能を無効にする変異と等価のエクソンのほぼ完全な排除を押し進める。同様に、以前に特定したエクソン内スプライシング転写促進因子2(ESE2)のIL7R-002によるブロックは、この転写促進因子の変異(ΔESE2)と同等の効果をもたらす。IL7R-002は、IL7R RNAに対し低い親和性を有し、これは、ΔESE2に比べてわずかに低い大きさをおそらく説明する。所与のシススプライシングエレメントのSM-ASO媒介ブロックまたは変異が同等の効果をもたらしたという事実は、このレポーターシステムにおけるスプライシングの決定を制御するSM-ASOの能力を示す。より重要なことに、エクソン6スプライシングで観察された変化は、GFP発現において予測された変化をもたらし、それにより、このレポーターシステムにおけるスプライシング結果の読み出しとしての、GFP発現の使用の妥当性を確認する。
【0063】
図2A~2Eは、エクソン6内のシス作用性スプライシングエレメントに相補的なIL7R SM-ASOの標的化スクリーニングを示す。図2Aは、スクリーニングに使用されたGFP-IL7Rスプライシング蛍光レポーターの概略図を示す。イントロン5および6にまたがるIL7Rのゲノム配列を、GFPコード配列を割り込んでクローン化し、それによりGFP発現はIL7Rエクソン6のスプライシングにより決定される。図2Bおよび2Cは、GFP発現の分析を示す。蛍光レポーターを安定に発現しているHeLa細胞を、対照(ASO-Ctrl)または実験のモルホリノSM-ASO(IL7R-001~IL7R-005)で遺伝子導入し、GFP発現を、フローサイトメトリーにより定量化した。図2Bは、選択したSM-ASOに対するGFP平均蛍光強度(MFI)の代表的ヒストグラムを示し、図2Cは、対照ASO(ASO-ctrl)に正規化したGFP MFIの定量化を示す。赤色破線は、いずれかの方向での、GFP発現における1.5倍率変化の有効性カットオフを示す。図2Dは、GFP-IL7Rレポーターからの転写物中のIL7Rエクソン6のスプライシング分析を示す。IL7Rエクソン6のスプライシングを、GFP-IL7Rレポーター(+E6=エクソン6含有;-E6=エクソン6排除)に特異的なプライマーを用いてRT-PCRによりレポーターからの転写物で分析し、エクソン6含有パーセンテージを、次式で決定した:[含有/(含有+排除)]*100。赤色破線は、エクソン6含有パーセンテージの1.5倍率変化の有効性カットオフを示す。図2Eは、内在性IL7R遺伝子からの転写物中のIL7Rエクソン6のスプライシング分析を示す。IL7Rエクソン6のスプライシングを、内在性転写物に特異的なプライマーを用いて内在性IL7R遺伝子からの転写物中で分析し(FL=含有エクソン6;ΔE6=排除エクソン6)、エクソン6含有パーセンテージを、次式で決定した:[FL/(FL+ΔE6)]*100。全てのパネルで、統計的有意性を、実験のASO対対照を比較する両側スチューデントのt検定により評価した(*p<0.05、**p<0.005、***p<0.0005)。
【0064】
この標的化スクリーニングは、IL7Rエクソン6のいずれかの方向でのスプライシングを調節するいくつかのSM-ASOを明らかにした。例えば、5’スプライス部位(IL7R-001)または以前に特定したESE2(IL7R-002)のブロックは、ほとんど完全なエクソンの排除を誘導する。最も重要なことに、これは、ほぼ完全なエクソン含有を促進するエクソン内スプライシング抑制配列3(ESS3)をブロックする、IL7R-005を明らかにした。この1つのSM-ASOは、自己免疫疾患の治療に特に有用であることが明らかになった。加えて、本発明者らは、エクソン6排除を強化する4つのSM-ASO(IL7R-001、IL7R-002、IL7R-003およびIL7R-004)を明らかにした。これらは、癌免疫療法適用のための候補である。治療目的にとって重要なことは、全ての試験したSM-ASOは、GFP-IL7Rレポーターおよび内在性IL7R遺伝子の両方からの転写物中のエクソン6のスプライシングの類似の調節を誘導したことである。
【0065】
図3A~3Eは、IL7Rイントロン5および6中のSM-ASOウォークスクリーン(walk screen)ターゲティング配列を示す。図3Aは、SM-ASOウォークアプローチ(walk approach)の概略図を示す。一例として、本発明者らは、IL7Rエクソン6の近位にあるイントロン領域内の5nt毎の重複配列に相補的な15~25nt長のモルホリノSM-ASOを設計した。これらの領域は、IL7Rイントロン5の最後の209ntを含み、ブランチポイント配列、ポリピリミジントラクトおよび3’-スプライス部位などのコアスプライシングエレメントを含む最後の40ntを避け、IL7Rイントロン6の最初の169ntを含み、5’-スプライス部位を含む最初の15ntを避ける。対照(ASO-Ctrl)またはこれらのイントロン領域を標的とする実験的SM-ASO(例えば、IL7R-006~IL7R-065)を、図2Aに示すようにレポーターシステムを安定に発現しているHeLa細胞中に遺伝子導入した。IL7R-001およびIL7R-005をポジティブコントロールとして使用した。図3Bおよび3Cは、イントロン5(図3B)および6(図3C)を標的とするSM-ASOのGFP発現分析を示す。GFP平均蛍光強度(MFI)を、前に示したようにフローサイトメトリーで測定した。赤および青色の線は、それぞれ、GFP MFIの20%増加または減少のカットオフを示す。図3Dおよび3Eは、イントロン5(図3D)および6(図3E)を標的とする選択されたSM-ASOに対するGFP-IL7Rレポーターからの転写物中のIL7Rエクソン6のスプライシング分析を示す。レポーターからの転写物中のエクソン6含有のパーセンテージを、前述のように決定した。赤色破線は、対照(ASO-Ctrl)中のエクソン6含有のレベルを示す。全てのパネルで、統計的有意性を、実験のSM-ASO対対照を比較する両側スチューデントのt検定により評価した(*p<0.05、**p<0.005、***p<0.0005)。
この手法は、別のSM-ASOであるIL7R-006を明らかにした。これは、イントロン6内の配列をブロックすることにより高レベルのエクソン6含有を促進する。SM-ASO IL7R-006(UAAUAAAGAGGGUGAUUGUG)の標的配列内に、イントロン6の5’スプライス部位の近くにポリアデニル化シグナル(AAUAAA)が存在し、これは、発明者らが以前にエクソン6のスキッピングを促進することを見出したもので、おそらく、CPSF1により結合された場合に5’-スプライス部位をブロックすることによる(Evsyukova et al.,2013)。しかし、本発明のIL7R-006オリゴヌクレオチドは、追加のスプライシング調節配列を含む20nt配列をブロックし、これは、Evsyukova et al.,2013で報告された結果とは異なる。
【0066】
IL7R-006に加えて、本発明者らはまた、エクソン6含有を増やす追加の標的配列も明らかにした(表1に列挙される)。これらは、2つのSM-ASOのクラスター、クラスター1(イントロン5)およびクラスター2(イントロン6)、およびリードSM-ASOのIL7R-005およびIL7R-006より効率は低いが、エクソン6含有を増やす他のいくつかのSM-ASOを含む。本発明者らは現在、それらの効率を向上させるために新しく発見したSM-ASOに対する最終標的配列を精密化している。
【0067】
このスクリーニングはまた、エクソン6含有を減らすいくつかのSM-ASOを明らかにした(図3Bおよび3Cで増大したGFP発現として認められるように、および表2で列挙されるように)。後者は、癌免疫療法での治療的介入の候補である。重要なことに、この手法は、前臨床モデルで試験されるべき自己免疫性および癌のための新規SM-ASO標的を特定した。
【0068】
図4A~4Dは、IL7Rタンパク質アイソフォームの発現に及ぼす選択されたSM-ASOの効果を示す。HeLa細胞を、前述したようにEndo-Porter遺伝子導入システム(Gene Tools)を用いて、対照(ASO-Ctrl)または実験の(IL7R-001、IL7R-004、IL7R-005およびIL7R-006)モルホリノSM-ASOで遺伝子導入した。図4Aは、内在性IL7R遺伝子からの転写物中のエクソン6のスプライシング分析を示す。全RNAを細胞から単離し、エクソン6含有のパーセンテージを、前述のようにRT-PCRで決定した。図4Bは、可溶性IL7R(sIL7R)分泌物の定量化を示す。sIL7Rの分泌を、パネルAの細胞から収集した上清中でELISAにより定量した。データを、対照(ASO-Ctrl)に対し正規化した実験のSM-ASOの平均吸光度として示す。図4Cは、膜結合型IL7R(mIL7R)の細胞表面発現の定量化を示す。mIL7Rの細胞表面発現を、未処理細胞でIL7R染色を用いてフローサイトメトリーにより決定した。データを、対照に対し正規化したIL7R染色の平均蛍光強度(MFI)として示す。図4Dは、IL7Rタンパク質アイソフォーム発現の比率を示す。mIL7RのsIL7Rに対する比率(mIL7R/sIL7R)を、mIL7R細胞表面発現の値(図4C)をsIL7R分泌物の値(図4B)で除算することにより決定した。全てのパネルで、統計的有意性を、実験のSM-ASO対対照を比較する両側スチューデントのt検定により評価した(*p<0.05、**p<0.005、***p<0.0005)。
【0069】
これらの結果は、IL7Rエクソン6またはイントロン6中のSM-ASOターゲティング配列が、エクソン6スプライシングにおける所望の結果を誘導するのみでなく、さらに重要なことに、一定の比率のIL7Rタンパク質アイソフォーム(mIL7R/sIL7R)における所望の結果を誘導することを実証する。顕著なのは、IL7R-005およびIL7R-006が、mIL7R細胞表面発現への最小限の影響を有してsIL7Rレベルを減らすことである。後者は、mIL7R発現または活性の抑制が免疫抑制を引き起こすので、MSおよび自己免疫性の治療にとって極めて重要である。SM-ASOのIL7R-005およびIL7R-006は、第1の有効性評価項目を満たし、これは、IL7Rタンパク質アイソフォームを回復させる。重要なことに、これらのSM-ASOは、免疫抑制を防ぐ機序を介し、MSおよび他の自己免疫疾患用の安全で、しかも効果的な治療薬であると予測される。
【0070】
加えて、これらの分析は、エクソン6含有を減らすIL7R SM-ASO(IL7R-001およびIL7R-004)が、sIL7Rレベルを効果的に増やし、有望な癌免疫療法のための第1の有効性評価項目を満たすことを示す。これらのSM-ASOは、癌細胞を撃退および根絶する免疫系の力を強化すると予測される。
【0071】
図5A~5Dは、sIL7Rを減らすリードSM-ASOのIL7Rエクソン6スプライシングの用量反応調節を示す。蛍光レポーターを安定に発現しているHeLa細胞を、前述のように漸増濃度[0、1、5、および10μM]の対照(ASO-Ctrl=0μM)または実験の(IL7R-005およびIL7R-006)モルホリノSM-ASOで遺伝子導入した。図5Aおよび5Bは、GFP発現の分析を示す。GFP平均蛍光強度(MFI)を、前述のようにフローサイトメトリーで測定した。図5Aは、異なる濃度のIL7R-005のGFP MFIの代表的ヒストグラムを示し、図5Bは、SM-ASO濃度の関数として正規化GFP MFIを示す。図5Cおよび5Dは、レポーター(図5C)または内在性遺伝子(図5D)からの転写物中のIL7Rエクソン6のスプライシング分析を示す。レポーターまたは内在性遺伝子からの転写物中のエクソン6含有のパーセンテージを、前述のように決定し、SM-ASO濃度の関数として示す。全てのパネルで、統計的有意性を、実験濃度対対照を比較する両側スチューデントのt検定により評価した(*p<0.05、**p<0.005、***p<0.0005)。
【0072】
図6A~6Dは、sIL7Rを増やすリードSM-ASOのIL7Rエクソン6スプライシングの用量反応調節を示す。蛍光レポーターを安定に発現しているHeLa細胞を、前述のように漸増濃度[0、1、5、および10μM]の対照(ASO-Ctrl=0μM)または実験の(IL7R-001およびIL7R-004)モルホリノSM-ASOで遺伝子導入した。図6Aおよび6Bは、GFP発現の分析を示す。GFP平均蛍光強度(MFI)を、前述のようにフローサイトメトリーで測定した。図6Aは、異なる濃度のIL7R-001のGFP MFIの代表的ヒストグラムを示し、図6Bは、SM-ASO濃度の関数として正規化GFP MFIを示す。図6Cおよび6Dは、レポーター(図6C)または内在性遺伝子(図6D)からの転写物中のIL7Rエクソン6のスプライシング分析を示す。レポーターまたは内在性遺伝子からの転写物中のエクソン6含有のパーセンテージを、前述のように決定し、SM-ASO濃度の関数として示す。全てのパネルで、統計的有意性を、実験濃度対対照を比較する両側スチューデントのt検定により評価した(*p<0.05、**p<0.005、***p<0.0005)。
【0073】
図5A~5Dおよび6A~6Dの分析は、使用するSM-ASOの用量を操作することによりIL7Rエクソン6スプライシングが用量依存的に微調整可能であることを示し、細胞培養でのIL7Rスプライシング調節のための最小有効濃度を明らかにした。重要なことに、これらの結果は、非ヒト霊長類における前臨床試験およびヒトにおける臨床試験でのインビボ投与を推定するために使用され得る。この用量反応分析は、リードSM-ASOの用量応答性の例を示し、試験した濃度の範囲に我々の適用を限定するものではない。
【0074】
図7A~7Bは、MS関連SNP rs6897932に駆動されるIL7Rエクソン6の異常排除のIL7R-005による矯正を示す。IL7Rエクソン6中のMS関連バリアント rs6897932の保護「T」アレルまたはリスク「C」アレルのいずれかを含むGFP-IL7Rレポーターのバージョンを安定に発現するHeLa細胞を、対照SM-ASO(ASO-Ctrl)またはIL7R-005のいずれかで遺伝子導入した。図7Aは、rs68978932の代替アレル(CまたはT)を含むGFP-IL7Rレポーターからの転写物中のIL7Rエクソン6のスプライシング分析を示す。エクソン6含有のパーセンテージを、前述のようにRT-PCRで決定した。図7Bは、図7Aからの細胞中のGFP発現分析を示す。GFP平均蛍光強度(MFI)を、前述のようにフローサイトメトリーで測定し、対照SM-ASOで処理した「T」レポーターを発現している細胞に対し正規化して示す。全てのパネルで、統計的有意性を、実験のSM-ASO対対照を、または示したように、比較する両側スチューデントのt検定により評価した(*p<0.05、**p<0.005、***p<0.0005)。
【0075】
本発明者らおよび他の研究者による以前の調査は、IL7Rエクソン6中の遺伝子バリアントrs6897932(CまたはT)のリスク「C」アレルは、エクソン6の排除およびsIL7Rレベルを高めることによりMSリスクを増大させることを見出した(Gregory et al.,2007;Evsyukova et al.,2013;Hoe et al.,2010;Lundstrom et al.,2013)。上記分析は、自己免疫性の治療のためのリードSM-ASOであるIL7R-005が、rs6897932のリスク「C」アレルの効果を回復することを示し、これは、IL7R-005の治療能力を強く裏付ける。
【0076】
従って、本発明者らは、自己免疫性および癌における治療的介入のために、インターロイキン7受容体(IL7R)RNAのエクソン6の選択的スプライシングを制御するアンチセンスオリゴヌクレオチドを使用するための組成物および方法を記載した。これらのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、IL7R RNAに埋め込まれた特定のシグナルをブロックすることにより、IL7Rエクソン6のスプライシングを制御する。これらのシグナルは、IL7Rエクソン6のスプライシング結果を決定する特異的配列である。さらに、sIL7Rを減らすためにアンチセンスオリゴヌクレオチドによりブロックされるべきIL7R RNA中の特異的配列は、表1に列挙され、IL7Rエクソン6の含有を増やし、従ってsIL7R分泌を減らすこれらの配列の変種、これらの配列の任意の部分、またはこれらの配列に隣接する任意のヌクレオチドを含む。さらに、sIL7Rを増やすためにアンチセンスオリゴヌクレオチドによりブロックされるべきIL7R RNA中の追加のシグナルは、表2に列挙され、IL7Rエクソン6の含有を減らし、従ってsIL7R分泌を増やすこれらの配列の変種、これらの配列の任意の部分、またはこれらの配列に隣接する任意のヌクレオチドを含む。これらの配列のほんの少数のヌクレオチドをブロックすることは、エクソン6のスプライシングに影響を与えることができ、その理由は、排除/含有を推進する実際のエレメントは、標的化配列全体ではなく、通常、標的化配列内の4~8ntの配列であるためである。例えば、IL7R-005標的配列内の重要な配列は、最後の5ntのUGGUCであり、従って、この5ntだけまたはこの配列の少数のntをブロックするASOは、所望の効果をもたらすのに十分である可能性がある。しかし、機能的配列に対する標的化特異性および効率を最大化するために、オリゴヌクレオチドは多くの場合、より長い相補的配列にされる。最終的に、アンチセンスオリゴヌクレオチド中の1つまたは複数の塩基を置換して、塩基対を改変し、同時に、前記標的配列に対する高い親和性、選択性および効率的アンチセンス活性を維持することができることがよく知られている。SM-ASOの長さに応じた非限定的例は、15、20、または25ヌクレオチドを有するものであり、それらは、表1および2の配列のいずれか、またはその一部に対し、単独でまたは組み合わせて、全体でまたは部分的に、または自己免疫疾患、炎症性疾患または癌のそれぞれの治療のためのこれらの配列の任意の生物学的に活性な並べ換え配列、またはそれに相補的な配列に対し、70、75、80、84、85、87、88、90、92、93、94、95、または96パーセント同一性を有してよく、自己免疫性および/または炎症性疾患の治療のためにIL7Rエクソン6の含有を高めることにより可溶性IL7Rの発現を減らすための、または癌の治療のためにIL7Rエクソン6の含有を減らすことにより可溶性IL7Rの発現を高めるための、組成物として、およびそのための方法で使用するためである。5、10、15、20または25ヌクレオチドを有するSM-ASOの場合、ミスマッチは、例えば、1、2、3、4、5つ、またはそれを超えるミスマッチであり得る。
【表3】
【0077】
本明細書で考察されるいずれの実施形態も、本発明のいずれかの方法、キット、試薬、または組成物で実施でき、逆もまた同じであることが意図される。さらに、本発明の組成物を使って、本発明の方法を実現できる。
【0078】
本明細書で記載の特定の実施形態は、実例として示されており、本発明を限定するものではない。本発明の主要な特徴は、本発明の範囲から逸脱することなく種々の実施形態で採用できる。当業者は、本明細書に記載された特定の操作に対する多数の等価物を、ルーチン実験のみを用いて認識し、確認できるであろう。このような等価物は、本発明の範囲内にあると考えられ、特許請求の範囲により包含される。
【0079】
本明細書に記述した全ての刊行物および特許出願は、本発明が属する分野の当業者のレベルを示すものである。全ての刊行物および特許出願は、あたかもそれぞれの刊行物また特許出願が具体的かつ個々に、参照により組み込まれると示されるのと同程度に参照により本明細書に組み込まれる。
【0080】
特許請求の範囲および/または明細書中の用語の「含む(comprising)」と共に使用される場合、単語の「a」または「an」の使用は、「1つ」を意味してよいが、これはまた、「1つまたは複数」、「少なくとも1つ」、および「1つまたは2つ以上」の意味と一致する。特許請求の範囲中で用語の「または」の使用は、代替物のみまたは代替物が相互排他的であることを意味すると明示的に示されない限り、「および/または」の意味で使用されるが、本開示は、代替物および「および/または」のみを意味するという定義を支持する。本出願の全体を通して、用語の「約」は、値が、装置の誤差の固有の変動を含むことを示すために使用され、その方法は、その値、または試験対象中に存在するその変動を測定するために採用される。
【0081】
本明細書で使用されるように、単語「含む(comprising)」(および「含む(compriseおよびcomprises)」などの含むの任意の形態)、「有している(having)」(および「有する(haveおよびhas)などの有しているの任意の形態)、「含有している(including)」(および「含有する(includesおよびinclude)」などの含有しているの任意の形態)または「含んでいる(containing)」(および「含む(containsおよびcontain)」などの含んでいるの任意の形態)は包括的または開放型であり、追加の、列挙されていない要素または方法のステップを排除しない。本明細書で提供されるいずれかの組成物および方法のいくつかの実施形態では、「含む(comprising)」は、「から本質的になる(consisting essentially of)」または「からなる(consisting of)」で置換され得る。本明細書で使用される場合、表現の「から本質的になる(consisting essentially of)」は、指定された整数またはステップならびに請求発明の性質または機能に実質的に影響を与えないものを必要とする。本明細書で使用される場合、「なる(consisting)」という用語は、記述されている整数(例えば、特徴、エレメント、特性、性質、方法/工程のステップまたは制限)または整数群(特徴、エレメント、特性、性質、方法/工程のステップまたは制限の群)のみの存在を示す。
【0082】
本明細書で使用される場合、用語の「またはこれらの組み合わせ」は、その用語の前にあるリストされた項目の全ての並べ替えおよび組み合わせを指す。例えば、「A、B、C、またはこれらの組み合わせ」は、A、B、C、AB、AC、BC、またはABCの少なくとも1つ、および特定の状況において順番が重要な場合には、BA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BAC、またはCABも含むと意図される。この例で続けると、明示的に含まれるのは、BB、AAA、AB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABB、などの1つまたは複数の項目または用語の反復を含む組み合わせである。当業者なら、通常、特に文脈から別儀が明らかでない限り、任意の組み合わせにおける項目または用語の数に制限はないことは理解されよう。
【0083】
本明細書で使用される場合、「限定されない」、「約」、「実質的な」または「実質的に」などの近似の単語は、そのように修飾された場合、絶対または完全であるとは限らないが当業者が上記条件を存在するとして指定するのを保証するのに十分近いと見なされる得る条件を指す。記述が変わり得る程度は、どのくらい大きい変化を導入でき、それでも、当業者に、修飾された特徴を、必要とされる非修飾の特性および能力をまだ有すると認識させ得るかに依存するであろう。前段の考察を前提とするが、一般に、「約」などの接近単語により修飾されている本明細書の数値は、少なくとも±1、2、3、4、5、6、7、8、10、12または15%だけ示した値から変わってよい。
【0084】
本明細書で開示し、請求した全ての組成物および/または方法は、本開示を考慮して、過度な実験をすることなく作製および実施できる。本発明の組成物および方法は、好ましい実施形態の観点から説明されてきたが、本発明の概念、趣旨および範囲を逸脱することなく、本明細書で記載の組成物および/または方法、および方法のステップまたはステップの配列に、変更を適用し得る。当業者に明らかな全てのこのような類似の置換物および修飾物は、添付の特許請求の範囲により定められる本発明の趣旨、範囲および概念の範囲内であると見なされる。
【0085】
特許庁および本願で発行されるいずれかの特許の全ての読者の本明細書に添付の特許請求の範囲の解釈を支援するために、出願者らは、いずれの添付特許請求の範囲に対しても、35U.S.C.§112のパラグラフ6、またはAIA35U.S.C.§112パラグラフ(f)、または均等物を行使する意図がないことに留意されたい。理由は、それは、用語の「ための手段(means for)」または「ためのステップ(step for)」が明示的に使用されない限り、本件の出願日に存在しているためである。
【0086】
先行する請求項が、請求項の用語または要素に関して適切な先行する記載を提供する限りにおいて、請求項のそれぞれに対し、それぞれの従属請求項は、独立請求項から、およびそれぞれのおよび全ての請求項に対するそれぞれの先行する従属請求項からの両方に従属できる。
【0087】
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図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3A
図3BC
図3D
図3E
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
【配列表】
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