(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】給湯器
(51)【国際特許分類】
F24H 15/184 20220101AFI20241025BHJP
F24H 1/14 20220101ALI20241025BHJP
F24H 15/108 20220101ALI20241025BHJP
F24H 15/36 20220101ALI20241025BHJP
F24H 15/421 20220101ALI20241025BHJP
【FI】
F24H15/184
F24H1/14 B
F24H15/108
F24H15/36
F24H15/421
(21)【出願番号】P 2021042746
(22)【出願日】2021-03-16
【審査請求日】2023-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000112015
【氏名又は名称】株式会社パロマ
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】花井 悠哉
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-250559(JP,A)
【文献】特開平10-294974(JP,A)
【文献】特開2010-181111(JP,A)
【文献】特開平02-217740(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/00-15/493
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーナと、熱交換器と、前記熱交換器に接続される給水管と、前記熱交換器に接続される出湯管と、出湯温度を設定可能な操作手段と、前記操作手段により設定された設定温度に基づいて前記バーナを燃焼させて所定の出湯制御を実行する制御手段と、を有し、
停電から復帰して電源が投入される復電時には、前記制御手段が
、停電直前に記憶された設定で前記出湯制御を実行可能な運転ON状態となる給湯器であって、
前記制御手段は、
復電により電源が投入されると、前記設定温度を予め設定した高温閾値と比較し、前記設定温度が前記高温閾値を超えている場合、前記設定温度を前記高温閾値以下となる所定の制限温度に変更し、前記制限温度に基づいて前記出湯制御を実行することを特徴とする給湯器。
【請求項2】
前記制御手段には、運転状態のON/OFFを切り替え可能な操作手段が接続可能となっており、
前記制御手段は、
復電により電源が投入されると、前記操作手段の接続の有無を確認し、前記操作手段が接続されている場合にのみ前記設定温度を予め設定した高温閾値と比較することを特徴とする請求項1に記載の給湯器。
【請求項3】
前記設定温度が前記制限温度に変更された後、前記操作手段により前記設定温度が新たに設定されると、前記制御手段は、前記制限温度をキャンセルして前記新たな設定温度に基づいて前記出湯制御を実行することを特徴とする請求項1又は2に記載の給湯器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱交換器を通過する水をバーナの燃焼排気で加熱して出湯する給湯器に関する。
【背景技術】
【0002】
給湯器は、制御手段となるコントローラが器具内の通水を検出するとバーナを燃焼させ、熱交換器を通過する水をバーナの燃焼排気で加熱して出湯する。コントローラには、外部のリモコンが接続されて、リモコンに設けた操作部で運転のON/OFFや出湯温度の設定といった各種操作が可能となっている(例えば特許文献1参照)。コントローラは、操作部で設定された設定温度に基づいてバーナを燃焼させて出湯制御を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような給湯器では、出湯中(バーナの燃焼中)に停電が発生し、停電から復帰した際にコントローラが運転ON状態で復帰するものがある。この場合、器具内の通水が継続されていると、そのままコントローラが出湯制御を実行することになる。よって、停電から復帰すると、水から湯に変わることになる。このとき停電直前の設定温度が60℃等の高温であったりすると、ユーザが停電からの復帰を認識せず水を使用していた場合、いきなり高温の湯が出てユーザを驚かせてしまうことになる。
【0005】
そこで、本開示は、停電からの復帰の際にユーザの認識なくいきなり高温の湯が出ることがない給湯器を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示は、バーナと、熱交換器と、前記熱交換器に接続される給水管と、前記熱交換器に接続される出湯管と、出湯温度を設定可能な操作手段と、前記操作手段により設定された設定温度に基づいて前記バーナを燃焼させて所定の出湯制御を実行する制御手段と、を有し、停電から復帰して電源が投入される復電時には、前記制御手段が、停電直前に記憶された設定で前記出湯制御を実行可能な運転ON状態となる給湯器であって、
前記制御手段は、復電により電源が投入されると、前記設定温度を予め設定した高温閾値と比較し、前記設定温度が前記高温閾値を超えている場合、前記設定温度を前記高温閾値以下となる所定の制限温度に変更し、前記制限温度に基づいて前記出湯制御を実行することを特徴とする。
本開示の別の態様は、上記構成において、前記制御手段には、運転状態のON/OFFを切り替え可能な操作手段が接続可能となっており、
前記制御手段は、復電により電源が投入されると、前記操作手段の接続の有無を確認し、前記操作手段が接続されている場合にのみ前記設定温度を予め設定した高温閾値と比較することを特徴とする。
本開示の別の態様は、上記構成において、前記設定温度が前記制限温度に変更された後、前記操作手段により前記設定温度が新たに設定されると、前記制御手段は、前記制限温度をキャンセルして前記新たな設定温度に基づいて前記出湯制御を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、復電により電源が投入された際に設定温度が高温閾値を超えている場合、制御手段は、設定温度を制限温度に変更して出湯制御を実行するので、停電直前の設定温度が60℃等の高温であっても、停電からの復帰時に高温の湯が出ることがなくなる。よって、停電からの復帰の際にユーザの認識なくいきなり高温の湯が出てユーザを驚かせることがない。
本開示の別の態様によれば、上記効果に加えて、制御手段は、復電により電源が投入されると、操作手段の接続の有無を確認し、操作手段が接続されている場合にのみ設定温度を予め設定した高温閾値と比較するようにしているので、停電からの復帰時に高温の湯が出湯されるおそれがある場合にのみ出湯温度が制限温度に変更される。
本開示の別の態様によれば、上記効果に加えて、設定温度が制限温度に変更された後、操作手段により設定温度が新たに設定されると、制御手段は、制限温度をキャンセルして新たな設定温度に基づいて出湯制御を実行するので、ユーザが意識しなくても通常使用に復帰できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】電源投入後の出湯制御のフローチャートである。
【
図3】電源投入後の出湯制御の変更例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、給湯器の一例を示す概略図である。この給湯器1は、循環ポンプ27を有する戻り管26を備えた即時給湯機能付きで、循環用の外部配管30を接続することで即時給湯が可能な給湯システムSを構築している。
まず給湯器1において、筐体2内には、燃焼室3が設置されている。燃焼室3には、下方から、3つのバーナユニット4,4・・、熱交換器5、排気フード6が設けられている。筐体2の底面には、外部のガス配管が接続されるガス接続口7と、外部の給水配管が接続される給水接続口8と、外部の給湯配管が接続される給湯接続口9及び戻り接続口10とが設けられている。
バーナユニット4,4・・は、互いに本数が異なる複数のバーナからなる。ガス接続口7には、元電磁弁12及び比例制御弁13を備えたガス管11が接続されている。ガス管11は、3つの分岐管14,14・・に分岐し、各分岐管14に、バーナユニット4が、開閉弁15を介して接続されている。燃焼室3の下部には、バーナユニット4へ燃焼用空気を供給するためのファン16が設けられている。
【0010】
熱交換器5は、厚み方向に所定間隔をおいて並設された複数のフィンを蛇行状に貫通する伝熱管を備えたフィンチューブ式である。伝熱管の入側端部には、給水接続口8と接続される給水管18が接続されている。伝熱管の出側端部には、給湯接続口9と接続される出湯管19が接続されている。給水管18と出湯管19との間には、熱交換器5をバイパスするバイパス管20が接続されている。
また、給水管18におけるバイパス管20の接続部より上流側には、水側開閉弁21と、入水温を検出するサーミスタ等の入水温センサ22と、水量を検出する水量センサ23とが設けられている。さらに、出湯管19におけるバイパス管20の接続部より上流側には、熱交換器5からの出口温度を検出するサーミスタ等の出口温センサ24が設けられ、当該接続部より下流側には、出湯温度を検出するサーミスタ等の出湯温センサ25が設けられている。
【0011】
そして、戻り接続口10と、水量センサ23より上流側の給水管18との間には、循環ポンプ27と、その吐出側に位置する逆止弁28とを備えた戻り管26が接続されている。
外部配管30は、給湯接続口9と戻り接続口10との間に接続されて、複数の給湯栓31,31・・を備えている。給湯栓31の1つは、浴槽32への給湯用(以下、他の給湯栓31と区別する際は「給湯栓31A」と表記する。)となっている。
これにより、出湯管19から出湯される湯水が、外部配管30を通って戻り管26に戻り、給水管18を介して熱交換器5に至り、再び出湯管19から出湯される循環経路が形成される。
35は、給湯器1及び給湯システムSの運転制御を行うコントローラである。コントローラ35には、リモコン36が接続されている。リモコン36には、運転スイッチ、湯張りスイッチ、設定温度の変更ボタンといった操作部及び運転状態の表示部が設けられている。この操作部及び表示部は、コントローラ35にも設けられる場合がある。
【0012】
以上の如く構成された給湯システムSにおいては、コントローラ35又はリモコン36に設けた運転スイッチをON操作すると、コントローラ35は、循環ポンプ27を運転させて水側開閉弁21を開き、循環経路内で湯水を循環させる。これと同時に元電磁弁12及び開閉弁15を開弁させてバーナユニット4へ燃料ガスを供給させると共に、ファン16を駆動させて点火制御を行い、バーナユニット4を燃焼させる。そして、コントローラ35は、出湯温センサ25の検出温度が、コントローラ35又はリモコン36で設定された設定温度となるように比例制御弁13の開度及びファン16の回転数を制御して保温運転を行う。よって、給湯栓31の何れかを開栓すると、設定温度での即時給湯が可能となる。
一方、コントローラ35又はリモコン36に設けた湯はりスイッチを押し操作して給湯栓31Aを開栓すると、水量センサ23によって器具内の通水を検出したコントローラ35は、バーナユニット4を燃焼させて、水量センサ23で検出した水量が設定湯量となるまで設定温度の湯を浴槽32へ給湯する自動湯はり制御が可能となっている。
【0013】
そして、給湯システムSの運転中に停電が発生すると、給湯システムSの運転は停止してバーナユニット4の燃焼は停止する。停電からの復帰時には、コントローラ35は、運転状態ON(保温運転ON)で復帰して、停電直前に記憶された設定で出湯制御するようになっている。
しかし、停電直前の設定温度(以下「直前設定温度」という。)が高温(例えば60℃)であると、停電からの復帰を認識していないユーザは、水の使用中にいきなり高温の湯が出て驚くことになる。
そこで、コントローラ35は、停電からの復帰時には、直前設定温度を確認し、直前設定温度が予め設定されていた高温閾値を超えていた場合には、直前設定温度を予め設定した高温閾値以下の制限温度に変更して出湯させるようにしている。以下、この停電復帰後の出湯制御を
図2のフローチャートに基づいて説明する。
【0014】
まず、S1で停電から復帰して電源が投入されると、コントローラ35は、S2で、直前設定温度が、高温閾値(例えば45℃)以下であるか否かを判別する。ここでYES、すなわち直前設定温度が高温閾値以下であれば、S3で直前設定温度に基づく出湯制御を実行する。
一方、S2でNO、すなわち直前設定温度が高温閾値を超えていれば、コントローラ35は、S4で、直前設定温度にかかわらず設定温度を制限温度(例えば45℃)に変更し、S3で制限温度に基づく出湯制御を実行する。
そして、出湯制御中に、S5で、ユーザにより設定温度が変更されたことを確認すると、コントローラ35は、変更された設定温度に基づく出湯制御を実行する。よって、S4で変更された制限温度は解除される。
【0015】
このように、上記形態の給湯器1及び給湯システムSでは、コントローラ35(制御手段)は、電源が投入されると、設定温度を予め設定した高温閾値と比較し、設定温度が高温閾値を超えている場合、設定温度を高温閾値以下となる所定の制限温度に変更し、制限温度に基づいて出湯制御を実行する。
この構成によれば、直前設定温度が60℃等の高温であっても、停電からの復帰時に高温の湯が出ることがなくなる。よって、停電からの復帰の際にユーザの認識なくいきなり高温の湯が出てユーザを驚かせることがない。
特にここでは、設定温度が制限温度に変更された後、コントローラ35又はリモコン36(操作手段)により設定温度が新たに設定されると、コントローラ35は、制限温度をキャンセルして新たな設定温度に基づいて出湯制御を実行するので、ユーザが意識しなくても通常使用に復帰できる。
【0016】
なお、上記形態では、電源投入後は直ちにコントローラ35が直前設定温度を高温閾値と比較する処理を行っているが、その前に、運転スイッチを有するリモコン36の接続の有無を確認し、リモコン36が接続されていなければ、コントローラ35が直前設定温度を高温閾値と比較することなく通常の出湯制御を行うようにしてもよい。
図3にそのフローチャートを示す。
S11で停電から復帰して電源が投入されると、コントローラ35は、S12でリモコン36の接続の有無を判別する。ここでリモコン36の接続が確認されなければ、S14で通常の出湯制御を実行する。リモコン36が接続されていない場合、設定温度が高温になっていることがないため、高温の湯がいきなり出湯されるおそれがないからである。
よって、S12でリモコン36の接続が確認されれば、
図2と同様に、S13で、直前設定温度が高温閾値を超えているか否かが判別される。ここで直前設定温度が高温閾値以下であれば、S14で直前設定温度に基づく出湯制御が実行される。直前設定温度が高温閾値を超えていれば、S15で出湯温度が制限温度に変更され、S14で制限温度に基づく出湯制御が実行される。
そして、出湯制御中にS16でユーザによる設定温度の変更が確認されると、コントローラ35は、S17で、変更された設定温度に基づく出湯制御を実行する。
【0017】
この構成においても、直前設定温度が60℃等の高温であっても、停電からの復帰時に高温の湯が出ることがなくなる。よって、停電からの復帰の際にユーザの認識なくいきなり高温の湯が出てユーザを驚かせることがない。
特にここでは、コントローラ35は、電源が投入されると、リモコン36(操作手段)の接続の有無を確認し、リモコン36が接続されている場合にのみ設定温度を予め設定した高温閾値と比較するようにしているので、停電からの復帰時に高温の湯が出湯されるおそれがある場合にのみ出湯温度が制限温度に変更される。
【0018】
上記形態では、高温閾値と制限温度とを同じ温度としているが、異なる温度としてもよい。高温閾値は45℃に限らない。例えば、日常的に使用される給湯温度(38℃~42℃)内で適宜設定して差し支えない。
また、上記形態では、筐体内に戻り管及び循環ポンプを設けて外部配管と接続しているが、戻り管をなくして、給水管に接続される水道管に外部配管を接続して循環経路を形成し、外部配管に循環ポンプと逆止弁とを設けてもよい。この場合、循環ポンプは水道管に設けてもよいし、水量センサの上流側で給水管に設けてもよい。
但し、外部配管を備えず即時給湯機能がない(循環ポンプを備えない)給湯器であっても本発明は適用可能である。この給湯器での運転ON状態とは、制御手段が器具内の通水を検出するとバーナを燃焼させる出湯制御が可能となっていると共に、リモコン等の操作部での湯張りや追い炊き、設定温度の変更といった各種操作を受け付けて実行可能な状態をいう。
その他、給湯器の構成は上記形態に限らず、バーナユニットの数の増減は可能であるし、副熱交換器を備えた潜熱回収型等であっても、本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0019】
1・・給湯器、2・・筐体、3・・燃焼室、4・・バーナユニット、5・・熱交換器、6・・排気フード、7・・ガス接続口、8・・給水接続口、9・・給湯接続口、10・・戻り接続口、11・・ガス管、16・・ファン、18・・給水管、19・・出湯管、21・・水側開閉弁、22・・入水温センサ、23・・水量センサ、24・・出口温センサ、25・・出湯温センサ、26・・戻り管、27・・循環ポンプ、30・・外部配管、31(31A)・・給湯栓、32・・浴槽、35・・コントローラ、36・・リモコン、S・・給湯システム。