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特許7576845二酸化塩素発生装置および二酸化塩素発生方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】二酸化塩素発生装置および二酸化塩素発生方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 11/02 20060101AFI20241025BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20241025BHJP
【FI】
C01B11/02 F
A61L9/01 F
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021529983
(86)(22)【出願日】2020-06-24
(86)【国際出願番号】 JP2020024845
(87)【国際公開番号】W WO2021002262
(87)【国際公開日】2021-01-07
【審査請求日】2023-04-17
(31)【優先権主張番号】P 2019123712
(32)【優先日】2019-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391003392
【氏名又は名称】大幸薬品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】熊代 善一
(72)【発明者】
【氏名】坂口 奈津実
(72)【発明者】
【氏名】辻本 翔平
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-064849(JP,A)
【文献】国際公開第2012/128022(WO,A1)
【文献】特開2016-088797(JP,A)
【文献】国際公開第2007/127330(WO,A2)
【文献】国際公開第2011/038399(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 11/00 - 11/24
A61L 9/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内の溶媒中において、亜塩素酸塩と、分子内に強酸基および弱塩基を有する双極性分子と、を反応させて二酸化塩素ガスを発生させ
前記双極性分子は前記強酸基としてスルホ基を有する二酸化塩素発生装置。
【請求項2】
ガスを放出可能なガス放出部を有する容器本体を備え、
前記容器本体の内部に、亜塩素酸塩水溶液を収容する亜塩素酸塩収容部、および、前記双極性分子を収容する双極性分子収容部を備え、
外力を加えることにより前記亜塩素酸塩水溶液および前記双極性分子が接触するように構成してあり、当該接触により発生する二酸化塩素ガスが前記ガス放出部を介して前記容器本体の外部に放出される請求項1に記載の二酸化塩素発生装置。
【請求項3】
前記亜塩素酸塩収容部は、易破壊性の容器で構成してあり、
前記外力を加えて前記容器本体を変形させることにより内部に収納した前記亜塩素酸塩収容部を破壊し、当該亜塩素酸塩収容部の破壊により前記亜塩素酸塩水溶液および前記双極性分子が接触する請求項2に記載の二酸化塩素発生装置。
【請求項4】
前記双極性分子は、粉体状、固体状および液体状の何れかである請求項1~3の何れか一項に記載の二酸化塩素発生装置。
【請求項5】
前記双極性分子が3-モルホリノプロパンスルホン酸(MOPS),2-モルホリノエタンスルホン酸(MES),ピペラジン-1,4-ビス(2-エタンスルホン酸)(PIPES),N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-2-エタンスルホン酸(HEPES)およびN-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-2-アミノエタンスルホン酸(TES)の群から選択される何れか一つである請求項1~の何れか一項に記載の二酸化塩素発生装置。
【請求項6】
前記亜塩素酸塩が亜塩素酸ナトリウムまたは亜塩素酸カリウムであり、前記双極性分子がMOPSである請求項1~の何れか一項に記載の二酸化塩素発生装置。
【請求項7】
前記亜塩素酸塩の濃度が15~23.5重量%であり、前記双極性分子の濃度が23~38重量%である請求項に記載の二酸化塩素発生装置。
【請求項8】
二酸化塩素ガスを発生させる反応を促進する加速剤を添加してある請求項1~の何れか一項に記載の二酸化塩素発生装置。
【請求項9】
容器内の溶媒中において、亜塩素酸塩と、分子内に強酸基および弱塩基を有する双極性分子と、を反応させて二酸化塩素ガスを発生させ
前記双極性分子は前記強酸基としてスルホ基を有する二酸化塩素発生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内の溶媒中において、二酸化塩素ガスを発生させる二酸化塩素発生装置および二酸化塩素発生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、亜塩素酸塩の溶液と酸性物質を反応させて二酸化塩素ガスを発生させる器具や装置が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6196939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
二酸化塩素ガス(ClO)はその構造内にラジカルを有することから強い酸化力を有するため、漂白剤、除菌剤、消臭剤として幅広く使用されている。二酸化塩素ガスを利用して微生物の殺菌や滅菌を行う方法は、低濃度領域において同等の濃度の塩素、次亜塩素酸、過酸化水素、ホルムアルデヒドなどを用いた方法と比較した場合、毒性が少なく安全に実施することができるうえ、強い刺激臭がないため不快感を伴わないという利点がある。
【0005】
また、二酸化塩素ガスは単位重量当たりの殺菌力が高く、胞子、かび、バクテリア、ウイルス等に優れた滅菌および殺菌効果を示すことに加え、トリハロメタンのような発がん性物質を副生成物として生成しない等の利点もある。
【0006】
一方、二酸化塩素ガスは不安定であり、長期間にわたって一定濃度で保管することが困難である。そのため、二酸化塩素ガスを使用する方法としては、その場で亜塩素酸塩と酸を混合し反応させる方法が主流である(特許文献1)。
【0007】
亜塩素酸塩の溶液と多くの種類の酸との反応においては、通常、数時間~数日単位に亘って目的に供するための所望量の二酸化塩素ガスが得られる。しかし、例えば数分単位という短い時間内に所望量の二酸化塩素ガスを得ようとする反応では、塩酸等の強酸を使用する必要がある。
【0008】
また、二酸化塩素ガスの高速発生方法としては、反応物質の濃度を上昇させ、反応の総液量を減少させることで反応開始直後の二酸化塩素ガスの発生量を増大させることが可能である。しかしこのような方法では、反応開始直後から二酸化塩素ガスが高濃度に放出され、二酸化塩素発生装置の周囲環境における二酸化塩素ガスの濃度が局地的に高くなるため、使用者の安全性をどのように担保するかが問題であった。
【0009】
さらには、仮に二酸化塩素発生装置内に高濃度の二酸化塩素ガスが残留すれば、その二酸化塩素発生装置の回収をどのようにするかも問題となる。そのため、二酸化塩素ガスを反応開始から所定のラグタイムをもって発生させ、所定時間後において二酸化塩素発生装置内から二酸化塩素ガスが発生しなくなる方法があれば望ましい。
【0010】
例えば人がいる環境下で、部屋・室内またはその他の同様の空間を二酸化塩素ガスで除菌しようとする場合、作業者が二酸化塩素発生装置を当該空間に設置してから空間の外に待避するまでの間は、二酸化塩素発生装置から二酸化塩素ガスが発生していない、或いは、二酸化塩素ガスが殆ど発生していない状態とするのが望ましい。
【0011】
また、二酸化塩素発生装置から二酸化塩素ガスが発生して所定時間経過後に当該二酸化塩素発生装置を前記空間から回収する際においても、二酸化塩素発生装置から二酸化塩素ガスが発生していない、或いは、二酸化塩素ガスが殆ど発生していない状態となっているのが望ましい。
【0012】
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、二酸化塩素ガスの発生源を安全に取扱いできるようにし、所望のタイミングで一過性に二酸化塩素ガスを大量に発生させることができる二酸化塩素発生装置および二酸化塩素発生方法を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するための本発明に係る二酸化塩素発生装置の第一特徴構成は、容器内の溶媒中において、亜塩素酸塩と、分子内に強酸基および弱塩基を有する双極性分子と、を反応させて二酸化塩素ガスを発生させ、前記双極性分子は前記強酸基としてスルホ基を有する点にある。
【0014】
本構成によれば、二酸化塩素発生装置を、亜塩素酸塩および双極性分子を容器に封入することで構成できるため、作業性および量産性に優れたものとすることができる。
【0015】
また、本構成によれば、容器内の溶媒中において亜塩素酸塩と双極性分子とが接触すると、亜塩素酸塩と双極性分子における強酸基とによって反応が起きて二酸化塩素が生成する。反応当初において溶媒中で反応が起きているときには、二酸化塩素は溶媒中に溶解しているため二酸化塩素ガスとなって溶媒の外に殆ど発生しない状態となっている。二酸化塩素の溶媒中濃度が飽和に達し、二酸化塩素の圧力が高まって溶媒の温度が上昇すれば、二酸化塩素ガスが溶媒中から溶媒外に発生(出現)するようになる。このとき、二酸化塩素ガスは急激に溶媒中から発生するように(突沸するように)溶媒の外部に発生する。そのため、二酸化塩素ガスが溶媒の外部に急激に発生するまでは、二酸化塩素ガスは殆ど発生していないように見える。
【0016】
このように亜塩素酸塩と双極性分子とを混合した直後から、二酸化塩素ガスが溶媒外に急激に発生するまでは、ある一定の(所定の)時間が経過していることとなる。従って、見かけ上は、亜塩素酸塩と双極性分子とを混合した直後から所定の時間が経過した後に時間差で二酸化塩素ガスが急激に発生したように見える。二酸化塩素ガスが急激かつ大量に溶媒外に発生する事象は一過性であり、短時間で終息する。
【0017】
従って、本構成では、作業者が二酸化塩素発生装置を空間に設置してから空間の外に待避するまでの間は、二酸化塩素発生装置から二酸化塩素ガスが発生していない、或いは、二酸化塩素ガスが殆ど発生していない状態とすることができる。そのため、作業者が二酸化塩素発生装置を空間に設置し亜塩素酸塩と双極性分子とを接触させた直後から、作業者が空間の外に安全に待避するまでの十分な時間を確実に確保することができる。
【0018】
また、二酸化塩素発生装置から二酸化塩素ガスが発生して所定時間経過後に当該二酸化塩素発生装置を前記空間から回収する際においても、二酸化塩素発生装置から二酸化塩素ガスが発生していない、或いは、二酸化塩素ガスが殆ど発生していない状態とすることができる。そのため、作業者が二酸化塩素発生装置を回収する際には、反応の大部分が終息した後となっているため、安全に二酸化塩素発生装置を回収することができる。
【0019】
二酸化塩素発生装置からの二酸化塩素ガスの放出に伴って、燻蒸室内の二酸化塩素ガスの濃度が高まり、当該燻蒸室内にて被処理物への二酸化塩素処理(細菌・真菌の殺菌処理、ウイルス不活化処理、害虫駆除処理など)を所定時間実施することが可能となる。このときの二酸化塩素ガスの発生は大量で、かつ一過性であるため、短時間で大量の二酸化塩素ガスが発生したのち、暫くすると発生する二酸化塩素ガスの量は激減する。そのため、燻蒸室内の空間の燻蒸処理時間(人の待避時間)を短くすることができ、換気後、人が直ぐに燻蒸室内に立ち入ることができる。
また、本構成によれば、例えば緩衝剤として使用される公知の化合物を使用することができるため、本発明を容易に実施することができる。
【0020】
本発明に係る二酸化塩素発生装置の第二特徴構成は、ガスを放出可能なガス放出部を有する容器本体を備え、前記容器本体の内部に、亜塩素酸塩水溶液を収容する亜塩素酸塩収容部、および、前記双極性分子を収容する双極性分子収容部を備え、外力を加えることにより前記亜塩素酸塩水溶液および前記双極性分子が接触するように構成してあり、当該接触により発生する二酸化塩素ガスが前記ガス放出部を介して前記容器本体の外部に放出される点にある。
【0021】
本構成のように亜塩素酸塩収容部および双極性分子収容部を備えることで、容器本体の内部に、亜塩素酸塩水溶液および双極性分子を非接触状態で収納することができる。
【0022】
また、「外力を加えることにより亜塩素酸塩水溶液および双極性分子が接触するように構成」するには以下のように構成すればよい。即ち、二酸化塩素発生装置に外力を加えて容器本体の全体或いは一部を変形させるなどして、内部に収容した亜塩素酸塩収容部および双極性分子収容部の少なくとも何れか一方に当該外力を伝達し、亜塩素酸塩収容部および双極性分子収容部の少なくとも何れか一方を破壊する、等を行う。このようにすれば、亜塩素酸塩水溶液を亜塩素酸塩収容部から放出する、あるいは、双極性分子を双極性分子収容部から放出することができる。例えば亜塩素酸塩収容部に当該外力を伝達して当該亜塩素酸塩収容部を破壊する等すれば、亜塩素酸塩水溶液が亜塩素酸塩収容部から容器本体の内部に放出され、容器本体の内部の領域に収容してある双極性分子と接触させることができる。これによって亜塩素酸塩水溶液および双極性分子が接触するように構成することができる。
【0023】
当該接触により発生する二酸化塩素ガスは、ガス放出部を介して容器本体の外部に放出することができる。
【0024】
本発明に係る二酸化塩素発生装置の第三特徴構成は、前記亜塩素酸塩収容部は、易破壊性の容器で構成してあり、前記外力を加えて前記容器本体を変形させることにより内部に収納した前記亜塩素酸塩収容部を破壊し、当該亜塩素酸塩収容部の破壊により前記亜塩素酸塩水溶液および前記双極性分子が接触する点にある。
【0025】
本構成によれば、二酸化塩素発生装置に外力を加えて容器本体の全体或いは一部を凹ませて変形させるなどして、内部に収容した易破壊性の亜塩素酸塩収容部に外力を伝達すれば、亜塩素酸塩収容部を容易に破壊することができる。当該亜塩素酸塩収容部の破壊により、亜塩素酸塩収容部の内部から亜塩素酸塩水溶液を容器本体の内部に流出させることができる。容器本体の内部の領域には双極性分子が収納されているため、流出した亜塩素酸塩水溶液を当該双極性分子と接触させることができ、これにより二酸化塩素ガスを発生させることができる。
【0026】
本発明に係る二酸化塩素発生装置の第四特徴構成は、前記双極性分子を、粉体状、固体状および液体状の何れかとした点にある。
【0027】
本構成によれば、双極性分子を、粉体状、固体状および液体状の何れの態様においても亜塩素酸塩と反応させて二酸化塩素ガスを発生させることができる。
【0030】
本発明に係る二酸化塩素発生装置の第五特徴構成は、前記双極性分子を3-モルホリノプロパンスルホン酸(MOPS),2-モルホリノエタンスルホン酸(MES),ピペラジン-1,4-ビス(2-エタンスルホン酸)(PIPES),N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-2-エタンスルホン酸(HEPES)およびN-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-2-アミノエタンスルホン酸(TES)の群から選択される何れか一つとした点にある。
【0031】
本構成のように双極性分子をMOPS,MES,PIPES,HEPESおよびTESの何れかとすれば、入手の容易な双極性分子とすることができるため、本発明に係る二酸化塩素発生装置を容易に実施することができる。
【0032】
本発明に係る二酸化塩素発生装置の第六特徴構成は、前記亜塩素酸塩を亜塩素酸ナトリウムまたは亜塩素酸カリウムとし、前記双極性分子をMOPSとした点にある。
【0033】
MOPSは緩衝剤などとして汎用されている。従って、亜塩素酸塩としての亜塩素酸ナトリウムまたは亜塩素酸カリウム、および、双極性分子としてのMOPSは何れも入手が容易であるため、本発明に係る二酸化塩素発生装置を容易に実施することができる。
【0034】
本発明に係る二酸化塩素発生装置の第七特徴構成は、前記亜塩素酸塩の濃度を15~23.5重量%とし、前記双極性分子の濃度を23~38重量%とした点にある。
【0035】
後述の実施例2に記載したように、亜塩素酸塩の濃度を15~23.5重量%とし、前記双極性分子の濃度を23~38重量%とすれば、両者を混合してから4分17秒~5分28秒後に二酸化塩素ガスが発生すると認められている。従って、本構成によれば、亜塩素酸塩と双極性分子とを混合した直後から、二酸化塩素ガスが溶媒外に急激に発生するまでの所定の時間を数分(4~5分)程度とすることができる。
【0036】
本発明に係る二酸化塩素発生装置の第八特徴構成は、二酸化塩素ガスを発生させる反応を促進する加速剤を添加した点にある。
【0037】
本構成によれば、加速剤を添加することで、亜塩素酸塩と双極性分子とを混合した直後から、二酸化塩素ガスが溶媒外に急激に発生するまでの所定の時間を短縮することができる。また、加速剤を添加することで、亜塩素酸塩および双極性分子の少なくとも何れか一方の量を減らして二酸化塩素発生装置を実施することができる。例えば双極性分子の量を減らして二酸化塩素発生装置を実施すれば、二酸化塩素発生装置の製造コストを削減することができる。
【0038】
本発明に係る二酸化塩素発生方法の特徴構成は、容器内の溶媒中において、亜塩素酸塩と、分子内に強酸基および弱塩基を有する双極性分子と、を反応させて二酸化塩素ガスを発生させ、前記双極性分子は前記強酸基としてスルホ基を有する点にある。
【0039】
本構成によれば、亜塩素酸塩と双極性分子とを混合した直後から、二酸化塩素ガスが溶媒外に急激に発生するまでは、ある一定の(所定の)時間が経過しているため、見かけ上は、亜塩素酸塩と双極性分子とを混合した直後から所定の時間が経過した後に時間差で二酸化塩素ガスが急激に発生したように見える二酸化塩素発生方法とすることができる。
【0040】
従って、本構成の二酸化塩素発生方法では、作業者が亜塩素酸塩と双極性分子とを混合した直後から空間の外に待避するまでの間は、二酸化塩素ガスが発生していない、或いは、二酸化塩素ガスが殆ど発生していない状態とすることができる。そのため、作業者が亜塩素酸塩と双極性分子とを接触させた直後から、作業者が空間の外に安全に待避するまでの十分な時間を確実に確保することができる。
【0041】
また、二酸化塩素発生装置から二酸化塩素ガスが発生して所定時間経過後に当該二酸化塩素発生装置を前記空間から回収する際においても、二酸化塩素ガスが発生していない、或いは、二酸化塩素ガスが殆ど発生していない状態とすることができる。そのため、作業者が二酸化塩素発生装置を回収する際には、反応の大部分が終息した後となっているため、安全に二酸化塩素発生装置を回収することができる。
【0042】
本構成の二酸化塩素発生方法による二酸化塩素ガスの放出に伴って、燻蒸室内の二酸化塩素ガスの濃度が高まり、当該燻蒸室内にて被処理物への二酸化塩素処理(細菌・真菌の殺菌処理、ウイルス不活化処理、害虫駆除処理など)を所定時間実施することが可能となる。このときの二酸化塩素ガスの発生は大量で、かつ一過性であるため、短時間で大量の二酸化塩素ガスが発生したのち、暫くすると発生する二酸化塩素ガスの量は激減する。そのため、燻蒸室内の空間の燻蒸処理時間(人の待避時間)を短くすることができ、換気後、人が直ぐに燻蒸室内に立ち入ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】実施形態の二酸化塩素発生装置を示す概略図である。
図2】実施形態の双極性分子の構造式を示した図である。
図3】別実施形態の二酸化塩素発生装置を示す概略図である。
図4】別実施形態の二酸化塩素発生装置を示す概略図である。
図5】実施例2において、亜塩素酸ナトリウム水溶液の濃度を種々変更し、粉末のMOPSの添加量を種々変更した場合について、二酸化塩素ガスが発生するまでの時間を測定した結果を示した図である。
図6】実施例3において使用した粉末あるいは水溶液のMOPSの濃度を示した図である。
図7】実施例3において二酸化塩素ガスが発生するまでの時間を測定した結果を示したグラフである。
図8】実施例4(容器本体の容量変更)において二酸化塩素ガスが発生するまでの時間を測定した結果を示した図である。
図9】実施例4(液量変更)において二酸化塩素ガスが発生するまでの時間を測定した結果を示した図である。
図10】実施例5において二酸化塩素ガスが発生するまでの時間を測定した結果を示した図である。
図11】実施例5においてモル比(MOPS/亜塩素酸ナトリウム)および二酸化塩素ガスが発生するまでの時間に関する関数を示したグラフである。
図12】実施例6において温度を種々変更したときに二酸化塩素ガスが発生するまでの時間を測定した結果を示した図である。
図13】実施例7において双極性分子の種類を種々変更したときに二酸化塩素ガスが発生するまでの時間を測定した結果を示した図である。
図14】実施例8において加速剤としてヨウ化カリウムを添加した場合において、二酸化塩素ガスが発生するまでの時間を測定した結果を示した図である。
図15】実施例9において加速剤としてゲル化剤(吸水性樹脂)を添加した場合において、二酸化塩素ガスが発生するまでの時間を測定した結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
本発明の二酸化塩素発生装置は、容器内の溶媒中において、亜塩素酸塩と、分子内に強酸基および弱塩基を有する双極性分子と、を反応させて二酸化塩素ガスを発生させる。また、本発明の二酸化塩素発生方法は、容器内の溶媒中において、亜塩素酸塩と、分子内に強酸基および弱塩基を有する双極性分子と、を反応させて二酸化塩素ガスを発生させる。
【0045】
亜塩素酸塩と双極性分子との反応は、容器内の溶媒中において行われるように構成してある。当該溶媒は水溶液とするのがよい。このとき、亜塩素酸塩および双極性分子のうち少なくとも何れか一方を水溶液の状態として両者を容器内で混合して反応させるとよい。本実施形態では、亜塩素酸塩を亜塩素酸塩水溶液とした場合について説明する。この場合、双極性分子は、粉体状、固体状および液体状の何れかを使用すればよい。本実施形態では、粉体状の双極性分子を使用する場合について説明する。
【0046】
本明細書における「双極性分子」とは、1分子内に酸と塩基を有する分子のことをいう。本発明で使用する双極性分子内における酸は強酸基であり、当該双極性分子内における塩基は弱塩基とするのがよい。本態様における双極性分子は、水に溶解することにより弱酸性を示す。当該強酸基はスルホ基などが挙げられるが、これに限定されるものではない。また、当該弱塩基は、アミノ基、炭酸基、炭酸水素基、過炭酸基およびフェノール性水酸基、モルホリン、ピペラジン等の複素環式アミンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、双極性分子内に含まれる弱塩基の数は1~3個とすることができる。また、強酸基および弱塩基の結合状態は、例えば炭素数1~6のアルキル鎖で結合する態様とすることができる。
【0047】
図1には、一端に開口を有する容器1内の溶媒(亜塩素酸塩水溶液A)中に双極性分子Bを添加し、両者を容器1内で混合して反応させて二酸化塩素ガスを発生させる二酸化塩素発生装置Xを示す。本実施形態の容器1は、亜塩素酸塩水溶液Aを収容可能な容器(亜塩素酸塩収容部12)とすればよい。双極性分子Bは容器1の外部の容器(双極性分子収容部13)などに収容しておき、二酸化塩素発生装置Xの使用時に双極性分子Bを容器1内に添加するようにすればよい。容器1の開口はガスを放出可能なガス放出部11となる。
【0048】
容器1(亜塩素酸塩収容部12)の材質について、二酸化塩素ガスの発生は容器の材質に影響されないためどのような材質であってもよいが、耐熱性や耐薬品性を有する材質であれば特に限定されるものではない。ガラス類、ステンレス等の金属類、耐熱性・耐薬品性に優れるポリプロピレン、ポリエチレン、トライタン(登録商標、Eastman社製)等の樹脂類が特に好ましい。
【0049】
双極性分子Bを収容する容器(双極性分子収容部13)は、アルミニウム等の金属類、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレンまたはそれらの複合体から構成されるフィルムを有する袋状体でもよく、蓋付きの瓶、或いは樹脂製の容器でもよい。また、双極性分子Bを収容する容器内に窒素等の不活性ガスを充填してもよく、当該容器内を脱気してもよい。
【0050】
ガス放出部11は開放系であってもよいが、通気性を有する構造を有する蓋体や、通気性を有する非透水部材を設けることができる。これら部材は、双極性分子Bを容器1内に添加した後に容器1の開口に取り付けるとよい。当該非透水部材は、例えばガス・空気・湿気は透過させるが、液体は通さない透湿防水性シート(あるいは通気防水シート)を使用することができる。当該透湿防水性シートは、微多孔質フィルム(非常に小さな孔を多数有する素材のフィルム)を単独で使用してもよいし、あるいは複数枚重ねて貼り合せた素材や、無孔質であってもガスや空気、湿気(水蒸気)の移動を可能とした素材、高密度織物に強力な撥水処理を施したコーティングタイプの素材などを使用してもよい。上市されているものとしては、例えばゴアテックス(登録商標)やエクセポール(登録商標:三菱樹脂社製:微多孔質ポリオレフィン系フィルムと各種不織布などを組み合わせた、通気性・透湿性・防水性に優れた素材)、エントラントE(登録商標、東レ社製)などが挙げられる。なお、非透水部材は、容器1に取り付けやすくするため、ヒートシール性(熱溶着性)を備えていることが望ましい。
【0051】
また、上述した非透水部材に代えて通気性を有する難透水部材を使用してもよい。当該難透水部材は、例えばガス・空気・湿気は透過させるが、液体は殆ど通さないシートである。難透水部材は、例えば公知の不織布が使用可能である。特に疎水性不織布を用いると、水を弾く作用を有するため、非透水部材とほぼ同等の性能を期待することができる。
【0052】
(亜塩素酸塩)
本実施形態で使用される亜塩素酸塩としては、例えば、亜塩素酸アルカリ金属塩や亜塩素酸アルカリ土類金属塩が挙げられる。亜塩素酸アルカリ金属塩としては、例えば亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウム、亜塩素酸リチウムが挙げられ、亜塩素酸アルカリ土類金属塩としては、亜塩素酸カルシウム、亜塩素酸マグネシウム、亜塩素酸バリウムが挙げられる。なかでも、入手が容易という点から、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウムが好ましく、亜塩素酸ナトリウムが最も好ましい。これら亜塩素酸塩は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用しても構わない。
【0053】
亜塩素酸塩水溶液における亜塩素酸塩の割合は、0.1~30重量%であることが好ましい。0.1重量%未満の場合は、二酸化塩素ガスの発生において亜塩素酸塩が不足するという問題が生じる可能性があり、30重量%を超える場合は、亜塩素酸塩が飽和して結晶が析出しやすいという問題が生じる可能性がある。安全性や安定性、二酸化塩素ガスの発生効率などを鑑みた場合、さらに好ましい範囲は、15~23.5重量%である。
【0054】
(双極性分子)
本実施形態で使用される双極性分子Bとしては、1分子内に強酸基および弱塩基を有する分子であればよい。当該双極性分子Bは、好ましくは、3-モルホリノプロパンスルホン酸(MOPS:溶解度1g/mL),2-モルホリノエタンスルホン酸(MES:溶解度0.1g/mL),ピペラジン-1,4-ビス(2-エタンスルホン酸)(PIPES:溶解度0.001g/mL),N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-2-エタンスルホン酸(HEPES:溶解度0.5g/mL)およびN-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-2-アミノエタンスルホン酸(TES:溶解度0.6g/mL)の群から選択される何れか一つとするのがよい。これら双極性分子Bの構造式を図2に示した。
【0055】
双極性分子Bの濃度は、反応時における溶媒中の濃度を15重量%以上とすることが好ましい。安定的に二酸化塩素ガスを発生させるためには、反応時における溶媒中の濃度を20~40重量%とすればよく、安全性や安定性、二酸化塩素ガスの発生効率などを鑑みた場合、さらに好ましい範囲は、23~38重量%である。
【0056】
双極性分子Bは、多孔性物質に含有させる態様としてもよい。多孔性物質は、例えば多孔質材料あるいは焼成骨材を使用することができるが、これらに限られるものではない。
多孔質材料としては、例えば多孔質シリカ、セピオライト、モンモリロナイト、ケイソウ土、タルク、ゼオライト、活性白土、モレキュラーシーブ、活性アルミナ等が挙げられる。なかでも、入手容易で多孔性に優れていて(多孔空間が広く)、酸性物質あるいは亜塩素酸塩を含ませやすいという点で多孔質シリカを使用することが好ましい。これら多孔質シリカなどの比表面積としては特に限定はない。焼成骨材としては、例えば動物(哺乳類、魚類、鳥類含む)の骨、貝殻及びサンゴを焼成して破砕片状、粒子状あるいは粉状にしたものを用いることができる。
【0057】
本発明の二酸化塩素発生装置Xによれば、容器1内の溶媒中において亜塩素酸塩と双極性分子とが接触すると、亜塩素酸塩と双極性分子における強酸基とによって反応が起きて二酸化塩素が生成する。反応当初において溶媒中で反応が起きているときには、二酸化塩素は溶媒中に溶解しているため二酸化塩素ガスとなって溶媒の外に殆ど発生しない状態となっている。このとき、反応中の溶媒(水溶液)は徐々に黄変するが、やがて二酸化塩素の溶媒中濃度が飽和に達し、二酸化塩素の圧力が高まって溶媒の温度が上昇すれば、二酸化塩素ガスが溶媒中から溶媒外に発生(出現)するようになる。このとき、二酸化塩素ガスは急激に溶媒中から発生するように(突沸するように)溶媒の外部に発生する。そのため、二酸化塩素ガスが溶媒の外部に急激に発生するまでは、二酸化塩素ガスは殆ど発生していないように見える。
【0058】
このように亜塩素酸塩と双極性分子とを混合した直後から、二酸化塩素ガスが溶媒外に急激に発生するまでは、所定の時間が経過していることとなる。従って、見かけ上は、亜塩素酸塩と双極性分子とを混合した直後から所定の時間が経過した後に時間差で二酸化塩素ガスが急激に発生したように見える。二酸化塩素ガスが急激かつ大量に溶媒外に発生する事象は一過性であり、短時間で終息する。
【0059】
従って、本構成では、作業者が二酸化塩素発生装置Xを空間に設置してから空間の外に待避するまでの間は、二酸化塩素発生装置Xから二酸化塩素ガスが発生していない(二酸化塩素発生装置Xのガス放出部11から二酸化塩素ガスが放出されない)、或いは、二酸化塩素ガスが殆ど発生していない(二酸化塩素発生装置Xのガス放出部11から二酸化塩素ガスが殆ど放出されない)状態とすることができる。そのため、作業者が二酸化塩素発生装置を空間に設置し亜塩素酸塩と双極性分子とを接触させた直後から、作業者が空間の外に安全に待避するまでの十分な時間を確実に確保することができる。
【0060】
また、二酸化塩素発生装置Xから二酸化塩素ガスが発生して所定時間経過後に当該二酸化塩素発生装置Xを前記空間から回収する際においても、二酸化塩素発生装置から二酸化塩素ガスが発生していない(二酸化塩素発生装置Xのガス放出部11から二酸化塩素ガスが放出されない)、或いは、二酸化塩素ガスが殆ど発生していない(二酸化塩素発生装置Xのガス放出部11から二酸化塩素ガスが殆ど放出されない)状態とすることができる。そのため、作業者が二酸化塩素発生装置Xを回収する際には、反応の大部分が終息した後となっているため、安全に二酸化塩素発生装置Xを回収することができる。
【0061】
本実施形態における二酸化塩素発生装置Xにおいては、二酸化塩素ガスを発生させる反応を促進する加速剤(図外)を添加してもよい。当該加速剤は、例えば双極性分子Bを収容する容器(双極性分子収容部13)に収容し、例えばヨウ化物や、吸水性のゲル化剤を使用すればよいが、このような態様に限定されるものではない。
【0062】
前記ヨウ化物はヨウ化カリウムを使用する場合について説明するが、これに限定されるものではない。また、前記ゲル化剤は吸水性樹脂を使用すればよいが、これに限定されるものではない。
【0063】
当該吸水性樹脂は、例えば合成ポリマー系吸水性樹脂(例えば架橋ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール系高吸水性樹脂、架橋ポリアクリル酸塩、ポリアクリロニトリル系重合体ケン化物、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート架橋体などのアクリル系高吸水性樹脂、架橋ポリエチレンオキシド系高吸水性樹脂など)、デンプン系吸水性樹脂(例えばデンプン-アクリロニトリルグラフト共重合体、デンプン-アクリル酸グラフト共重合体、デンプン-スチレンスルホン酸グラフト共重合体、デンプン-ビニルスルホン酸グラフト共重合体などのグラフト化デンプン系高吸水性樹脂など)、セルロース系吸水性樹脂(例えばセルロース-アクリロニトリルグラフト共重合体、セルロース-スチレンスルホン酸グラフト共重合体、架橋カルボキシメチルセルロースなどのセルロース系高吸水性樹脂、紙や布をリン酸エステル化したもの、布をカルボキシメチル化したものなど)などを使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0064】
市販されている吸水性樹脂としては、例えば、デンプン/ポリアクリル酸系樹脂[サンウエット(三洋化成社製、粉末)]、架橋ポリアクリル酸系樹脂[アクアリック(日本触媒社製、粉末)、アラソーブ(荒川化学社製、粉末)、ワンダーゲル(花王社製、粉末)、アクアキープ(住友精化社製、粉末)、ダイアウエット(三菱油化社製、粉末)]、イソブチレン/マレイン酸系樹脂[KIゲル(クラレ社製、粉末)]、及び、ポバール/ポリアクリル酸塩系樹脂[スミカゲル(住友化学社製、粉末)]などを使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0065】
本発明の二酸化塩素発生装置Xを用いる場所としては特に限定はなく、例えば一般家庭(リビングや玄関、お手洗いや台所など)に、また工業用(工場用)として、あるいは病院や診療所・介護施設などの医療現場、学校や駅舎・公衆トイレなどの公共施設などにと、あらゆる場面で使用することができる。また、人が居住し得る室内空間といった比較的広い空間だけでなく、冷蔵庫や下駄箱、車内(車、バス、電車)などの狭い空間においても使用することが可能である。このように、本発明の発生装置は適用可能な空間の広さは特に制限されるものではない。
【0066】
〔別実施形態1〕
別実施形態の二酸化塩素発生装置Xとして、図3に示したように、容器本体10の内部に、亜塩素酸塩水溶液Aおよび双極性分子Bが非接触状態で収納される場合について説明する。
【0067】
当該二酸化塩素発生装置Xは、ガスを放出可能なガス放出部11を有する容器本体10を備え、容器本体10の内部に、亜塩素酸塩水溶液Aを収容する亜塩素酸塩収容部12、および、双極性分子Bを収容する双極性分子収容部13を備え、外力を加えることにより亜塩素酸塩水溶液Aおよび双極性分子Bが接触するように構成してある。当該接触により発生する二酸化塩素ガスは、ガス放出部11を介して容器本体10の外部に放出される。
【0068】
本構成のように亜塩素酸塩収容部12および双極性分子収容部13を備えることで、容器本体10の内部に、亜塩素酸塩水溶液Aおよび双極性分子Bを非接触状態で収納することができる。後述するように、本実施形態の双極性分子収容部13は、双極性分子Bを収容可能な容器本体10の内部の領域とした場合(双極性分子Bのみを収容する容器を設けない態様)について説明する。
【0069】
また、「外力を加えることにより亜塩素酸塩水溶液Aおよび双極性分子Bが接触するように構成」するには以下のように構成すればよい。即ち、二酸化塩素発生装置Xに外力を加えて容器本体10の全体或いは一部を変形させるなどして、内部に収容した亜塩素酸塩収容部12および双極性分子収容部13の少なくとも何れか一方に当該外力を伝達し、亜塩素酸塩収容部12および双極性分子収容部13の少なくとも何れか一方を破壊する、等を行う。このようにすれば、亜塩素酸塩水溶液Aを亜塩素酸塩収容部12から放出する、あるいは、双極性分子Bを双極性分子収容部13から放出することができる。
【0070】
本実施形態では、亜塩素酸塩収容部12に当該外力を伝達して当該亜塩素酸塩収容部12を破壊する等すれば、亜塩素酸塩水溶液Aが亜塩素酸塩収容部12から容器本体10の内部に放出され、容器本体10の内部の領域に収容してある双極性分子Bと接触させることができる。
【0071】
このような態様に限らず、双極性分子Bを収容する容器を設け、亜塩素酸塩水溶液Aを収容する容器を設けない態様としてもよい。このような態様であれば、双極性分子収容部13に当該外力を伝達して当該双極性分子収容部13を破壊する等すれば、双極性分子Bが双極性分子収容部13から容器本体10の内部に放出され、容器本体10の内部の領域に収容してある亜塩素酸塩水溶液Aと接触させることができる。さらに亜塩素酸塩水溶液Aを収容する容器を設け、双極性分子Bを収容する容器を設ける態様としてもよい。このような態様であれば、亜塩素酸塩収容部12および双極性分子収容部13の両者に当該外力を伝達し、亜塩素酸塩収容部12および双極性分子収容部13を破壊する等すれば、亜塩素酸塩水溶液Aが亜塩素酸塩収容部12から容器本体10の内部に放出され、かつ、双極性分子Bが双極性分子収容部13から容器本体10の内部に放出される。これらによって亜塩素酸塩水溶液Aおよび双極性分子Bを容器本体10の内部において接触させることができる。
【0072】
このようにして「外力を加えることにより亜塩素酸塩水溶液Aおよび双極性分子Bが接触するように構成」することができる。容器本体10の具体的な態様については後述する。
【0073】
当該接触により発生する二酸化塩素ガスは、ガス放出部11を介して容器本体10の外部に放出することができる。
【0074】
「外力を加えることにより亜塩素酸塩水溶液Aおよび双極性分子Bが接触する」ように構成するには、上記のように亜塩素酸塩収容部12および双極性分子収容部13の少なくとも何れか一方を破壊する態様に限定されるものではない。その他の態様として、例えば、二酸化塩素発生装置X(容器本体10)を傾ける(外力を加える)などして亜塩素酸塩水溶液Aを亜塩素酸塩収容部12から放出(オーバーフロー)させ、或いは、双極性分子Bを双極性分子収容部13から放出(オーバーフロー)させた後、容器本体10の内部において亜塩素酸塩水溶液Aおよび双極性分子Bが接触するように構成してもよい。
【0075】
本実施形態では、亜塩素酸塩収容部12を易破壊性の容器で構成してあり、前記外力を加えて容器本体10を変形させることにより内部に収納した亜塩素酸塩収容部12を破壊し、当該亜塩素酸塩収容部12の破壊により亜塩素酸塩水溶液Aおよび双極性分子Bが接触する場合について説明する。
【0076】
本構成では、二酸化塩素発生装置Xに外力を加えて容器本体10の全体或いは一部を凹ませて変形させるなどして、内部に収容した易破壊性の亜塩素酸塩収容部12に外力を伝達すれば、亜塩素酸塩収容部12を容易に破壊することができる。当該亜塩素酸塩収容部12の破壊により、亜塩素酸塩収容部12の内部から亜塩素酸塩水溶液Aを容器本体10の内部に流出させることができる。容器本体10の内部の領域には双極性分子Bが収納されているため、流出した亜塩素酸塩水溶液Aを当該双極性分子Bと接触させることができ、これにより二酸化塩素ガスを発生させることができる。
【0077】
(容器本体)
本発明の二酸化塩素発生装置Xにおける容器本体10は、内部に、亜塩素酸塩収容部12を収容できる空間および双極性分子収容部13を収容できる空間を有する態様であればよい。また、容器本体10は、外から力を加えることにより容器本体10の全体或いは一部を変形可能に構成することができる。容器本体10を変形させない場合は、例えば内部に収容した亜塩素酸塩収容部12に外力を伝達できる部材などを介して亜塩素酸塩収容部12を破壊できるように構成し、当該亜塩素酸塩収容部12の破壊により、亜塩素酸塩水溶液Aおよび双極性分子Bが接触するように構成してもよい。
【0078】
外から力を加えることにより変形可能な態様を呈する容器本体10の素材としては、例えば可撓性素材が例示される。ここでいう可撓性とは、外から力を加えると容易に、例えば容器本体10の全体が円弧状に湾曲する、或いは、容器本体10の一部が凹むなどして変形させることができ、かつ加えた力を解除すると元の形状に戻り易い性質を有するものをいう。可撓性を持つ樹脂素材は、例えばポリエチレンやポリプロピレン、シリコンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0079】
容器本体10の形状としては、管状(試験管状)・スティック状・袋状・箱状・などが例示されるが、これに限られるものではない。例えば容器本体10を袋状に構成した場合、当該袋状の容器本体10の内部に亜塩素酸塩収容部12を収容しておく。外力を加える際には当該亜塩素酸塩収容部12が破壊される程度に袋状の容器本体10を押圧して変形させるとよい。
【0080】
本実施形態の容器本体10は、容器本体10の一端に形成された開口部をガス放出部11とし、他端に底板部14を形成して密封することにより有底筒状に形成したものを例示する。
【0081】
ガス放出部11には、上述したように通気性を有する蓋体や非透水部材を設けてもよいし、非透水部材に代えて通気性を有する難透水部材を使用してもよい。
【0082】
(亜塩素酸塩収容部)
本実施形態の亜塩素酸塩収容部12は、亜塩素酸塩水溶液Aを収容可能な易破壊性の容器である。本実施形態では、亜塩素酸塩水溶液Aを密封可能な容器とした場合について説明する。
【0083】
本明細書における「易破壊性」とは、外側から力を及ぼして容器を変形させる、或いは、曲げる(あるいは曲げようとする)ことにより容易に亀裂が入る、割れる、あるいは破れるなどして容器を破壊できる性質をいうが、搬送中や保存時における揺れや軽い衝撃によって破損するものであってはならない。易破壊性の亜塩素酸塩収容部12としては、例えば樹脂製のフィルムを使用した袋や、ガラスアンプルや厚みが比較的薄いプラスチック容器が挙げられる。易破壊性の亜塩素酸塩収容部12としてプラスチック容器を使用する場合、当該容器に予め脆弱部を人為的に設けておき、外側から力を及ぼして曲げる(あるいは曲げようとする)ことにより、その脆弱部に亀裂が入ったり、割れたり(破損したり)するように構成することもできる。
【0084】
(双極性分子収容部)
本実施形態の双極性分子収容部13は、双極性分子Bを収容可能な容器本体10の内部の領域或いは容器である。本実施形態のように双極性分子収容部13を双極性分子Bが収容できる領域とした場合は、双極性分子Bのみを収容する容器を設けず、容器本体10の内部において、亜塩素酸塩収容部12以外の領域を双極性分子収容部13とすることができる。この場合、容器本体10の内部には、亜塩素酸塩収容部12と、粉体状、固体状および液体状の何れかの双極性分子Bと、が収容してある状態となる。
【0085】
また、双極性分子Bを容器に収容する場合は、当該容器は、上述した亜塩素酸塩収容部12と同様に易破壊性の容器とすることが可能である。
【0086】
また、本態様において、双極性分子Bを多孔性物質に含有させる態様としてもよく、加速剤を使用する場合は容器本体10に収容すればよい。多孔性物質および加速剤は、上述した実施形態と同様のものを使用することができる。
【0087】
〔別実施形態2〕
上述した実施形態に限らず、亜塩素酸塩収容部12に固体(粉末)の亜塩素酸塩を収容し、双極性分子収容部13に双極性分子の水溶液を収容した態様とすることが可能である。また、亜塩素酸塩収容部12に亜塩素酸塩水溶液Aを密封し、双極性分子収容部13に双極性分子の水溶液を収容した態様とすることが可能である。
【0088】
〔別実施形態3〕
別実施形態の二酸化塩素発生装置Xとして、図4に示したように、亜塩素酸塩A’および双極性分子Bの両者が固体(粉末)状で供してある状態の容器1に、当該容器1の外部に設けた溶媒供給手段2から溶媒を添加する場合について説明する。当該溶媒供給手段2は、例えば溶媒である水を収容した容器とすることができるが、この態様に限定されるものではない。本態様では、容器1に、亜塩素酸塩A’を収容できる空間である亜塩素酸塩収容部12、および双極性分子Bを収容できる空間である双極性分子収容部13を有する態様であればよい。また、本態様では、二酸化塩素発生装置Xの使用時に水を容器1内に添加するようにすればよい。
【0089】
容器1は、上述した実施形態と同様に構成することができる。また、本態様において、亜塩素酸塩A’を多孔性物質に含有させる態様としてもよく、加速剤を使用する場合は容器1に収容すればよい。多孔性物質および加速剤は、上述した実施形態と同様のものを使用することができる。
【実施例
【0090】
〔実施例1〕
本発明の二酸化塩素発生装置Xとして、容器1に23.5重量%の亜塩素酸ナトリウム水溶液A(1mL)を収容し、双極性分子Bを容器1の外部の容器(双極性分子収容部13)に収容したものを作製した。双極性分子Bは3-モルホリノプロパンスルホン酸(MOPS)(粉体)とした。
【0091】
MOPSを容器1内に添加して亜塩素酸塩水溶液AおよびMOPSを接触させた。亜塩素酸塩水溶液AおよびMOPSを混合した直後から所定の時間(具体的な時間は後述する)が経過した後に発生した二酸化塩素ガスを、ガス放出部11を介して容器1の外部に放出し、燻蒸室内にて被処理物への二酸化塩素処理を所定時間実施した。
【0092】
〔実施例2〕
実施例1で作製した本発明の二酸化塩素発生装置Xにおいて、亜塩素酸ナトリウム水溶液Aの濃度を種々変更(15.0~23.5重量%)し、粉末のMOPSの添加量を種々変更(0.3~0.6g)した場合について、二酸化塩素ガスが発生する(溶媒の外部に急激に発生する)までの時間をそれぞれ測定した。MOPSの添加量は、亜塩素酸ナトリウム水溶液Aに溶解させたときの濃度が23~38重量%となる量である。結果を図5に示した(n=3)。
【0093】
この結果、亜塩素酸ナトリウム水溶液Aの濃度を23.5重量%、MOPSの濃度を23~38%とした場合は、両者を混合してから4分17秒~5分28秒後に二酸化塩素ガスが発生すると認められた。
【0094】
また、亜塩素酸ナトリウム水溶液Aの濃度を18.0~20.0重量%、MOPSの濃度を23~38%とした場合は、両者を混合してから5分23秒~7分46秒後に二酸化塩素ガスが発生すると認められた。
【0095】
さらに、亜塩素酸ナトリウム水溶液Aの濃度を15.0重量%、MOPSの濃度を23~38%とした場合は、両者を混合してから7分5秒~12分10秒後に二酸化塩素ガスが発生すると認められた。
【0096】
以上の結果より、亜塩素酸ナトリウム水溶液Aの濃度を種々変更し、粉末のMOPSの添加量を種々変更すれば、二酸化塩素ガスが発生する(溶媒の外部に急激に発生する)までの時間を調節することができることが判明した。従って、二酸化塩素発生装置Xを使用する空間の広さなどに応じて、亜塩素酸ナトリウム水溶液Aおよび双極性分子Bの濃度を適切な濃度に設定し、二酸化塩素ガスが発生するまでの時間を調節すればよい。
【0097】
〔実施例3〕
実施例1で作製した本発明の二酸化塩素発生装置Xにおいて、亜塩素酸ナトリウム水溶液Aの濃度を23.5重量%とし、粉末あるいは水溶液のMOPSの濃度を種々変更した場合について、二酸化塩素ガスが発生する(溶媒の外部に急激に発生する)までの時間をそれぞれ測定した。MOPSの濃度は、亜塩素酸ナトリウム水溶液Aに溶解させたときの濃度が17.5~30.0重量%となる量である。結果を図6,7に示した(n=3)。
【0098】
この結果、二酸化塩素ガスが発生するまでの時間は、MOPSの態様を粉末とした場合は、MOPSの態様を水溶液とした場合と同等かやや長くなると認められた。
【0099】
〔実施例4〕
実施例1における容器1を管状の試験管およびスクリュー管とし、当該スクリュー管の容積を種々変更(6~30mL)した場合において、二酸化塩素ガスが発生する(溶媒の外部に急激に発生する)までの時間をそれぞれ測定した(n=3)。反応液として、23.5重量%の亜塩素酸ナトリウム水溶液A、および、50重量%のMOPS水溶液をそれぞれ1mLずつ使用した。結果を図8に示した。
【0100】
その結果、6mLのスクリュー管を使用したサンプルが最も早く二酸化塩素ガスが発生し(8分50秒)、20mLのスクリュー管を使用したサンプルが最も遅く二酸化塩素ガスが発生した(9分11秒)。何れの容器においても約9分前後で二酸化塩素ガスが発生した。従って、容器1の容量を変更することで、溶媒の表面積や高さが変更することとなるが、上記の容器の間では、二酸化塩素ガスが発生するまでの時間において顕著な差は認められなかった。
【0101】
また、50mLのスクリュー管(溶媒の表面積962mm)を使用し、亜塩素酸ナトリウム水溶液Aの液量およびMOPSの液量を種々変更した場合において二酸化塩素ガスが発生する(溶媒の外部に急激に発生する)までの時間をそれぞれ測定した(n=3)。
結果を図9に示した。
【0102】
この結果、溶媒量が増えるに従って(溶媒高さが増えるに従って)二酸化塩素ガスが発生するまでの時間が早くなると認められた。従って、同一の容器では溶媒の量(溶媒高さ)と、二酸化塩素ガスが発生するまでの時間においては相関があると認められた。
【0103】
〔実施例5〕
実施例1で作製した本発明の二酸化塩素発生装置Xにおいて、亜塩素酸ナトリウム水溶液Aの濃度を種々変更(15.0~23.5重量%)し、溶媒量を種々変更(1~40mL)した場合について、二酸化塩素ガスが発生する(溶媒の外部に急激に発生する)までの時間をそれぞれ測定した。溶媒量の変動に合わせて粉末のMOPSの添加量も変更(0.4~1.6g)しているため、反応系内のMOPSの濃度は一定(29重量%)の条件とした。このとき、MOPS/亜塩素酸ナトリウムのモル比は0.74~1.15であった。結果を図10(実施例5-1~5-7)に示した。
【0104】
モル比が0.74の場合、亜塩素酸ナトリウム水溶液Aのスケールを1~5倍に変化させると、二酸化塩素ガスが発生するまでの時間は、4分46秒から6分7秒まで変化した。即ち、反応のスケールが5倍まで大きくなると、二酸化塩素ガスが発生するまでの時間は1.37倍程度となることが判明した。
同様にモル比が0.86,1.15の場合(反応スケールが5倍)、二酸化塩素ガスが発生するまでの時間はそれぞれ1.17倍,1.21倍程度となることが判明した。
また、モル比が0.96の場合、亜塩素酸ナトリウム水溶液Aのスケールを1~40倍に変化させると、二酸化塩素ガスが発生するまでの時間は、6分36秒から9分18秒まで変化した。即ち、反応のスケールが40倍まで大きくなると、二酸化塩素ガスが発生するまでの時間は1.4倍程度となることが判明した。
従って、亜塩素酸ナトリウム水溶液Aのスケールを上げた場合であっても、二酸化塩素ガスが発生するまでの時間は顕著に長くならないことが判明した。
【0105】
また、実施例5-1~5-5において、図11にモル比(0.74~1.15)と二酸化塩素ガスが発生するまでの時間に関する関数のグラフを示した。この結果、モル比と二酸化塩素ガスが発生するまでの時間に関しては、図11に示した式で表せる比例関係があると認められた。従って、二酸化塩素ガスが発生するまでの時間は、MOPS/亜塩素酸ナトリウムのモル比を制御することで、調節が可能であることが示唆された。
【0106】
〔実施例6〕
実施例1で作製した本発明の二酸化塩素発生装置Xにおいて、温度を種々変更(11.0~45.0℃)した場合において、二酸化塩素ガスが発生する(溶媒の外部に急激に発生する)までの時間をそれぞれ測定した(n=3)。亜塩素酸ナトリウム水溶液Aの濃度は2通りに変更(18.0重量%、23.5重量%)した。MOPS(粉末)の添加量は0.3gとした。結果を図12に示した。
【0107】
この結果、亜塩素酸ナトリウム水溶液Aの濃度が上記の何れの場合においても、温度が高くなるに従って、二酸化塩素ガスが発生するまでの時間が短縮されると認められた。
【0108】
〔実施例7〕
実施例1で作製した本発明の二酸化塩素発生装置Xにおいて、粉末の双極性分子Bの種類を種々変更(MES,PIPES,HEPES,TES)した場合について、二酸化塩素ガスが発生する(溶媒の外部に急激に発生する)までの時間をそれぞれ測定した。上記の双極性分子Bの添加量は種々変更(0.2~3.0g)した。亜塩素酸ナトリウム水溶液Aの濃度23.5重量%(2mL)とした。結果を図13に示した。
【0109】
この結果、MESを使用した場合の二酸化塩素ガスが発生するまでの時間は3分50秒から5分29秒であり、PIPESを使用した場合の二酸化塩素ガスが発生するまでの時間は28分37秒から31分50秒であり、HEPESを使用した場合の二酸化塩素ガスが発生するまでの時間は2分8秒から9分1秒であり、TESを使用した場合の二酸化塩素ガスが発生するまでの時間は40分54秒から1時間32分4秒であった。従って、二酸化塩素発生装置Xを使用する空間の広さなどに応じて、双極性分子Bの種類を適宜選択して、二酸化塩素ガスが発生するまでの時間を調節すればよい。
【0110】
〔実施例8〕
実施例1で作製した本発明の二酸化塩素発生装置Xにおいて、加速剤としてヨウ化カリウムを添加した場合において、二酸化塩素ガスが発生する(溶媒の外部に急激に発生する)までの時間を測定した。亜塩素酸ナトリウム水溶液Aの濃度を18.0重量%(1mL)とし、粉末のMOPSの添加量を0.2gとした。ヨウ化カリウムの添加量は種々変更(0.0001~0.0017g)した。結果を図14に示した。
【0111】
この結果、ヨウ化カリウムを添加しなかった場合は、二酸化塩素ガスが発生するまでの時間が12分39秒であったのに対して、ヨウ化カリウムを添加した場合は何れも4分程度であった。そのため、加速剤としてヨウ化カリウムを添加すれば、二酸化塩素ガスが発生するまでの時間を顕著に短縮(3分の1程度)できると認められた。
【0112】
〔実施例9〕
実施例1で作製した本発明の二酸化塩素発生装置Xにおいて、加速剤としてゲル化剤(吸水性樹脂)を添加した場合において、二酸化塩素ガスが発生する(溶媒の外部に急激に発生する)までの時間を測定した。吸水性樹脂は、ポリアクリル酸塩系吸水性樹脂であるアクアリックCA-K4およびアクアリックCA-H2を使用した。これら吸水性樹脂の添加量は種々変更(0.1~0.4g)した。亜塩素酸ナトリウム水溶液Aの濃度は18.0重量%(1mL)とし、粉末のMOPSの添加量は0.2gとした。結果を図15に示した。
【0113】
この結果、吸水性樹脂を添加しなかった場合は、二酸化塩素ガスが発生するまでの時間が12分51秒であった。これに対して、アクアリックCA-K4を添加した場合は、二酸化塩素ガスが発生するまでの時間は4分19秒から10分42秒となり、アクアリックCA-H2を添加した場合は、二酸化塩素ガスが発生するまでの時間は6分38秒から10分14秒となった。そのため、加速剤として吸水性樹脂を添加すれば、二酸化塩素ガスが発生するまでの時間を顕著に短縮できると認められた。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明は、容器内の溶媒中において、二酸化塩素ガスを発生させる二酸化塩素発生装置および二酸化塩素発生方法に利用できる。
【符号の説明】
【0115】
X 二酸化塩素発生装置
A 亜塩素酸塩水溶液
B 双極性分子
1 容器
10 容器本体
11 ガス放出部
12 亜塩素酸塩収容部
13 双極性分子収容部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15