IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本シグマックス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-熱交換装置およびウェア 図1
  • 特許-熱交換装置およびウェア 図2
  • 特許-熱交換装置およびウェア 図3
  • 特許-熱交換装置およびウェア 図4
  • 特許-熱交換装置およびウェア 図5
  • 特許-熱交換装置およびウェア 図6
  • 特許-熱交換装置およびウェア 図7
  • 特許-熱交換装置およびウェア 図8
  • 特許-熱交換装置およびウェア 図9
  • 特許-熱交換装置およびウェア 図10
  • 特許-熱交換装置およびウェア 図11
  • 特許-熱交換装置およびウェア 図12
  • 特許-熱交換装置およびウェア 図13
  • 特許-熱交換装置およびウェア 図14
  • 特許-熱交換装置およびウェア 図15
  • 特許-熱交換装置およびウェア 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】熱交換装置およびウェア
(51)【国際特許分類】
   A61F 7/10 20060101AFI20241025BHJP
【FI】
A61F7/10 321
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022101525
(22)【出願日】2022-06-24
(65)【公開番号】P2023004963
(43)【公開日】2023-01-17
【審査請求日】2024-04-24
(31)【優先権主張番号】P 2021105353
(32)【優先日】2021-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000228866
【氏名又は名称】日本シグマックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002273
【氏名又は名称】弁理士法人インターブレイン
(72)【発明者】
【氏名】木川 卓也
(72)【発明者】
【氏名】天明 優太
(72)【発明者】
【氏名】内藤 和哉
【審査官】小野田 達志
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-076613(JP,U)
【文献】特開2017-180858(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を循環させる液体循環通路と、
ウェア又は装具に装着可能であり、前記液体循環通路の一部が可撓性を有するチューブとして配設される熱交換パッドと、
前記液体循環通路を流れる液体との間で熱交換を行う熱交換ユニットと、
前記液体循環通路に配置されたポンプと、
前記液体循環通路に接続された液体注入機構と、
を備え、
前記液体注入機構は、
前記液体循環通路への液体の注入時に外部から液体を導入する注入口と、
前記液体循環通路への液体の注入時に外部へ空気を排出する排出口と、
前記液体循環通路への液体注入後の排出口からの液体の排出を防止する逆止弁と、
を含み、
前記逆止弁の開弁圧力が、前記ポンプの吐出圧力と外部からの変動圧力とを合わせた値よりも大きく設定され、
前記液体循環通路に流体を貯留するためのタンクを有しないことを特徴とする熱交換装置。
【請求項2】
前記液体注入機構は、
前記液体循環通路への液体注入後の注入口への液体の逆流を防止する第1逆止弁と、
前記逆止弁としての第2逆止弁と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の熱交換装置。
【請求項3】
前記第2逆止弁の開弁圧力が、前記第1逆止弁の開弁圧力よりも大きくなるように設定されていることを特徴とする請求項2に記載の熱交換装置。
【請求項4】
前記第1逆止弁と前記第2逆止弁との間に設けられ、前記液体循環通路における流体の逆流を防止する第3逆止弁をさらに備え、
前記第3逆止弁の開弁圧力が、前記第2逆止弁の開弁圧力よりも小さくなるように設定されていることを特徴とする請求項3に記載の熱交換装置。
【請求項5】
前記熱交換ユニットは、熱交換素子としてペルチェ素子を含むことを特徴とする請求項1に記載の熱交換装置。
【請求項6】
前記ポンプが、前記液体の注入時には前記液体注入機構の駆動部として外部から液体をくみ上げて前記液体循環通路に注入する一方、前記液体の循環時には前記液体循環通路における液体の流れを生成することを特徴とする請求項1に記載の熱交換装置。
【請求項7】
対象者の特定部位に装着される装着部と、
前記装着部において熱交換を行う熱交換装置と、
を備え、
前記熱交換装置は、
液体を循環させる液体循環通路と、
前記装着部に取り付けられ、前記液体循環通路の一部が可撓性を有するチューブとして配設される熱交換パッドと、
前記液体循環通路を流れる液体との間で熱交換を行う熱交換ユニットと、
前記液体循環通路に配置されたポンプと、
前記液体循環通路に接続された液体注入機構と、
を含み、
前記液体注入機構は、
前記液体循環通路への液体の注入時に外部から液体を導入する注入口と、
前記液体循環通路への液体の注入時に外部へ空気を排出する排出口と、
前記液体循環通路への液体注入後の排出口からの液体の排出を防止する逆止弁と、
を含み、
前記逆止弁の開弁圧力が、前記ポンプの吐出圧力と外部からの変動圧力とを合わせた値よりも大きく設定され、
前記液体循環通路に流体を貯留するためのタンクを有しないことを特徴とするウェア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体温調整に好適な熱交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化による気温上昇に伴い、夏季の屋外での作業や空調設備のない屋内での作業が一層厳しいものとなっている。熱源が近い現場での作業は季節を問わず厳しい。このような酷暑現場での労働力確保のために熱中症対策が急務の課題となっている。
【0003】
そこで近年、冷却された流体を作業者の身体近傍に流通させて体温調整を可能とする冷却ウェアの開発が進められている(例えば特許文献1参照)。具体的には、作業着の表面に広くいきわたるように冷却水の搬送路を設け、低温に保たれた冷却水を循環させる体温調整システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-196571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の体温調整システムは、冷却水の温度を一定に保つための温度調整装置として圧縮機や凝縮器等を含む冷凍サイクルが設けられ、かなり大掛かりなものとなっている。さらに冷却水の搬送路に水を溜めおくタンクが設けられるため、作業者が身に着ける装置の重量が嵩む。特にこの重量が作業者の大きな負担になっている。このような問題は、高温環境下における冷却のみならず、低温環境下での保温など、体温調整可能な熱交換装置であれば同様に生じ得る。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、体温調整に利用可能な熱交換装置の簡素化および軽量化を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様の熱交換装置は、液体を循環させる液体循環通路と、液体循環通路の一部が配設される熱交換パッドと、液体循環通路を流れる液体との間で熱交換を行う熱交換ユニットと、液体循環通路に配置されたポンプと、液体循環通路に接続された液体注入機構と、を備える。液体注入機構は、液体循環通路への液体の注入時に外部から液体を導入する注入口と、液体循環通路への液体の注入時に外部へ空気を排出する排出口と、を含む。この熱交換装置は、液体循環通路に流体を貯留するためのタンクを有しない。
【0008】
本発明の別の態様の熱交換装置は、液体を循環させる液体循環通路と、液体循環通路の一部が配設される吸熱パッドと、液体循環通路を流れる液体を冷却する冷却ユニットと、液体循環通路に配置されたポンプと、を備える。この熱交換装置は、液体循環通路に流体を貯留するためのタンクを有していない。冷却ユニットは、冷却素子としてペルチェ素子を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、体温調整に利用可能な熱交換装置の簡素化および軽量化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】熱交換装置が適用される装具を表す図である。
図2】対象者への装具の適用例を表す図である。
図3】熱交換装置の構成を表す図である。
図4】熱交換パッドおよびその周辺を表す部分拡大図である。
図5】熱交換装置における液体循環通路を表す模式図である。
図6】熱交換ユニットの構成を表す模式図である。
図7】ポンプの構成および動作を表す模式図である。
図8】液体注入機構の構成を表す模式図である。
図9】変形例に係る装具の構成を表す部分拡大図である。
図10】対象者への装具の適用例を表す図である。
図11】装具の熱交換領域における断熱構造を示す図である。
図12】他の変形例に係るウェアの構成を表す図である。
図13】ポケットの取付構造を表す図である。
図14】熱交換パッドの構成を表す図である。
図15】液体循環通路における冷却水の充填方法を表す図である。
図16】冷却水の充填時および循環時における各部の機能を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明においては便宜上、図示の状態を基準に各構造の位置関係を表現することがある。また、以下の実施形態およびその変形例について、ほぼ同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0012】
本実施形態の熱交換装置はウェア又は装具(以下「装具等」ともいう)に装着され、対象者である人の体温調整に供される。この熱交換装置は、高温環境下における冷却のみならず、低温環境下での保温も可能であるが、以下では高温環境下で冷却装置として機能する場合を例に説明する。
【0013】
(装具の構成)
図1は、熱交換装置が適用される装具を表す図である。
装具100は、メッシュ構造を有する生地からなり、対象者の上半身に装着される。装具100は、対象者の背中に直接又はインナーウェア(シャツ等)を介して装着される背当部102(「装着部」に対応)を有する。背当部102の内側面103に熱交換装置1の熱交換パッド10が取り付けられる。熱交換パッド10は、冷却水の供給により低温に保たれる(詳細後述)。
【0014】
なお、熱交換パッド10は、本実施形態ではボタンや面ファスナー等の固定手段により装具100に着脱可能に取り付けられるが、装具100に縫い付けられて固定されてもよい。装具100は、熱交換パッド10(あるいは熱交換装置1全体)を含む冷却装具として構成されてもよい。
【0015】
背当部102の左右上端から一対のストラップ部104が延出している。背当部102の左右下端からも一対のストラップ部106が延出している。ストラップ部104の内面には面ファスナーのループ面108が設けられ、ストラップ部106の外面には面ファスナーのフック面110が設けられている。また、背当部102の中央上部には切れ目112が設けられており、熱交換パッド10の液体注入機構16(後述)を背当部102の外側面114に露出できるようにされている。
【0016】
熱交換装置1にはこのほか、冷却水の温度を低温に保つための熱交換ユニット12、冷却水の循環を促進するためのポンプ14、熱交換ユニット12およびポンプ14に電力を供給するバッテリ13等も含まれる。
【0017】
図2は、対象者への装具100の適用例を表す図である。
装具100を対象者Mへ装着する際には、背当部102を背中に当てつつ、左右のストラップ部104,106を手前に引き出し、それぞれ面ファスナーにより上下方向に接続する。このとき、熱交換パッド10は、背当部102の内側(つまり背中との対向面)に位置する。
【0018】
熱交換ユニット12およびバッテリ13は、対象者Mが装着するベルトなどに取り付けるための取付部を有するが、その詳細については説明を省略する。
【0019】
(熱交換装置の構成)
図3は、熱交換装置1の構成を表す図である。
熱交換装置1は、熱交換パッド10、熱交換ユニット12、ポンプ14および液体注入機構16を備える。熱交換パッド10は、装具100を介して人体との熱交換を行う体温調整部として機能する。熱交換パッド10の内側面の全体にわたり、通水路20が設けられている。通水路20は、複数のチューブを連結して構成される(詳細後述)。
【0020】
熱交換ユニット12は、冷却水の温度を低温に保つための熱交換部として機能し、接続チューブ22,24を介して熱交換パッド10と接続される。通水路20を構成するチューブおよび接続チューブ22,24は、冷却水を循環させるための「液体循環通路」(後述)を構成する。
【0021】
熱交換ユニット12には、冷却後の水を導出する導出ポート26と、熱交換パッド10から戻ってくる水を導入する導入ポート28が設けられている。接続チューブ22は、その一端が導出ポート26に接続され、他端が通水路20の一端に接続されている。接続チューブ24は、その一端が導入ポート28に接続され、他端が通水路20の他端に接続されている。熱交換ユニット12において熱交換機能を発揮する機能部の構成については、後に詳述する。
【0022】
図4は、熱交換パッド10およびその周辺を表す部分拡大図であり、熱交換パッド10の内側面105の側からみた状態を示す。
熱交換パッド10は、平面視長方形状のシート状の部材であり、横幅方向の中心線Lに対して対称な形状を有する。熱交換パッド10の内側面105には、横幅方向の一端側から第1チューブ30、第2チューブ32および第3チューブ34が並設され、これらのチューブが通水路20を構成している。各チューブは、可撓性を有する樹脂製のチューブであり、熱交換パッド10の内側面105に貼着されている。
【0023】
熱交換パッド10の外周縁に沿って、チューブを接続するための複数の接続ポートが設けられている。すなわち、熱交換パッド10の下端縁に沿ってポート36~42が配設されている。ポート36,42は、熱交換パッド10の横幅方向両端部にそれぞれ位置し、ポート38,40は横幅方向中央寄りに位置する。熱交換パッド10の上端縁に沿ってポート44,46が配設されている。ポート44,46は、熱交換パッド10の横幅方向中央寄りに位置する。
【0024】
第1チューブ30は、上下に複数の折り返し部をもちつつ幅方向に延在する蛇行形状を有し、一端がポート36に接続され、他端がポート38に接続される。接続チューブ22がポート36を介して第1チューブ30と接続される。第2チューブ32は、一端がポート40に接続され、他端がポート44に接続される。第3チューブ34は、上下に複数の折り返し部をもちつつ幅方向に延在する蛇行形状を有し、一端がポート42に接続され、他端がポート46に接続される。接続チューブ24がポート42に接続される。
【0025】
ポンプ14からは導入管50および導出管52が延出しており、導入管50がポート38に接続され、導出管52がポート40に接続される。すなわち、第1チューブ30が導入管50を介してポンプ14の入口に接続され、ポンプ14の出口が導出管52を介して第2チューブ32に接続される。導入管50および導出管52は、本実施形態では可撓性を有する樹脂製のチューブからなるが、金属製の配管としてもよい。
【0026】
液体注入機構16は、H状の通水管54と、通水管54に設けられた複数の逆止弁を備える。通水管54は、本実施形態では可撓性を有する樹脂製のチューブからなるが、金属製の配管としてもよい。通水管54は、互いに平行に延びる注水管56および排水管58と、注水管56と排水管58とを接続する接続管60を含む。接続管60は、注水管56および排水管58の各中間部に垂直に接続されている。
【0027】
注水管56の一端は注入口62となっており、他端がポート46に接続される。一方、排水管58の一端は排出口64となっており、他端がポート44に接続される。第2チューブ32は、通水管54を介して第3チューブ34と接続する。
【0028】
注水管56における注入口62の近傍に逆止弁70(「第1逆止弁」として機能する)が設けられている。排水管58における排出口64の近傍には逆止弁72(「第2逆止弁」として機能する)が設けられている。接続管60の中間部には逆止弁74(「第3逆止弁」として機能する)が設けられている。各逆止弁の作動の詳細については後述する。
【0029】
熱交換パッド10には、通水路20の蛇行形状により横幅方向に隣接する各通路部の間に大小のスリット76が設けられており、ある程度の通気性が確保されている。通水路20を構成する複数のチューブは、背当部102の内側面105から突出しており、それらのチューブが装具100の表面に当接することとなる。
【0030】
図5は、熱交換装置1における液体循環通路を表す模式図である。
熱交換装置1には、冷却水を循環させる液体循環通路120が形成される。この液体循環通路120は、熱交換ユニット12の内部通路122、接続チューブ22、第1チューブ30、導入管50、ポンプ14の内部通路124、導出管52、第2チューブ32,液体注入機構16の通水管54、第3チューブ34および接続チューブ24を連通させる通路である。冷却水の循環はポンプ14の駆動により促進され、冷却水の温度は熱交換ユニット12における熱交換により低温に維持される。
【0031】
図6は、熱交換ユニット12の構成を表す模式図である。
熱交換ユニット12は、熱交換器80、ペルチェ素子82、放熱フィン84、ファン86および制御部88を有する。熱交換器80は、上述した内部通路122を形成する配管90を含む。
【0032】
ペルチェ素子82は、板状の半導体熱電素子であり、通電により一方の面(吸熱面81)に吸熱効果を生じ、他方の面(発熱面83)に発熱効果を生じる。本実施形態では、熱交換ユニット12を冷却ユニットとして機能させるため、その吸熱面81が熱交換器80に当接し、発熱面83が放熱フィン84に当接する。放熱フィン84は、ヒートシンクとして機能する。
【0033】
制御部88がペルチェ素子82への通電制御を行うことで、ペルチェ素子82が熱交換器80を流れる冷却水の熱を奪い、その冷却水の温度を設定温度に保つ。このときペルチェ素子82にて発生した熱は、放熱フィン84を介して外気に放出される。制御部88は、ファン86を駆動して放熱フィン84からの放熱を促進する。本実施形態では、配管90および放熱フィン84の材質として、熱伝導性に優れかつ軽量であるアルミニウム合金を採用しているが、銅その他の材質を採用することもできる。
【0034】
図7は、ポンプ14の構成および動作を表す模式図である。図7(A)は14の吸引状態を示し、図7(B)はポンプ14の吐出状態を示す。
ポンプ14は、いわゆるダイアフラムポンプであり、上述の内部通路124が形成されたボディ91と、ボディ91の開口端を封止するように取り付けられたダイアフラム92と、ダイアフラム92を駆動する駆動部94を含む。
【0035】
ボディ91は、ダイアフラム92が接続される本体部130と、導入管50が接続される吸入管部132と、導出管52が接続される吐出管部134を有する。本体部130の内方に作動室136が形成されている。
【0036】
吸入管部132の内方には弁室138が形成され、逆止弁140が配設されている。弁室138は、縮管部139を介して作動室136と連通する。逆止弁140は、弁室138に配置された弁体142と、導入管50の開口端に設けられた弁座144を含む。弁室138における縮管部139のやや上流側には、弁体142の開弁方向への変位を規制する係止部146が設けられている。
【0037】
一方、吐出管部134の内方には弁室148が形成され、逆止弁150が配設されている。弁室148は、縮管部149を介して作動室136と連通する。逆止弁150は、弁室148に配置された弁体152と、縮管部149の開口端に設けられた弁座154を含む。弁室148における導出管52の開口端のやや上流側には、弁体152の開弁方向への変位を規制する係止部156が設けられている。
【0038】
駆動部94は、ダイアフラム92の中央部が固定された作動ロッド160と、作動ロッド160をダイアフラム92の軸線方向に駆動する図示しないアクチュエータを含む。アクチュエータは例えばソレノイドであってもよいし、モータであってもよい。
【0039】
図7(A)に示すように、ポンプ14の吸引作動時には、ダイアフラム92が作動室136を拡大するように駆動される。そのとき生じる負圧により逆止弁150が閉弁状態となる一方、逆止弁140が全開状態となって冷却水が作動室136に引き込まれる。このとき、図示のように弁体142が係止部146に係止されることにより、導入管50からの冷却水の流入が許容される(図中太線矢印参照)。
【0040】
一方、図7(B)に示すように、ポンプ14の吐出作動時には、ダイアフラム92が作動室136を縮小するように駆動される。そのとき生じる圧力により逆止弁140が閉弁状態となる一方、逆止弁150が全開状態となり、作動室136の冷却水が導出管52へ吐出される。このとき、図示のように弁体152が係止部156に係止されることにより、導出管52への冷却水の流出が許容される(図中太線矢印参照)。
【0041】
このようなポンプ14の吸引作動および吐出作動が繰り返されることにより、液体循環通路120における冷却水の循環が促進される。また、ポンプ14としてダイアフラムポンプを採用することで、その作動状態にかかわらず作動室136の容積をある程度確保できる。このため、後述する冷却水の注入時に、ポンプ14がその注入に対する抵抗となり難い。
【0042】
図8は、液体注入機構16の構成を表す模式図である。
液体注入機構16には上述のように、逆止弁70(第1逆止弁)、逆止弁72(第2逆止弁)および逆止弁74(第3逆止弁)が設けられている。逆止弁70および逆止弁72は、熱交換装置1の使用に先立って液体循環通路120に冷却水を充填させる際に一時的に開弁する。
【0043】
すなわち、熱交換装置1の軽量化を図るため、液体循環通路120には冷却水を貯留するためのタンクが設けられていない。このため、熱交換装置1を使用する際には、予め液体循環通路120に冷却水を充填しなければならない。本実施形態では、注入口62が注入器(図示略)のシリンダを着脱可能な形状を有する。その注入器により外部から液体循環通路120へ流体(本実施形態では水)を注入する。この注入は手動ポンプによるものでもよいし、電動ポンプによるものでもよい。
【0044】
逆止弁70は、流体の注入圧力が第1設定圧力以上となれば開弁し、第1設定圧力未満となれば閉弁する。逆止弁70は、注入口62の近傍に形成された第1弁座と、第1弁座に下流側から着脱して弁部を開閉する第1弁体と、第1弁体を閉弁方向に付勢する第1スプリングを有する。第1スプリングの荷重により第1設定圧力が調整されている。逆止弁70の開弁により液体循環通路120への流体の注入が可能となる。逆止弁70の閉弁により、外部から液体循環通路120への空気の流入を防止できる。
【0045】
逆止弁72は、流体圧力が第2設定圧力以上となれば開弁し、第2設定圧力未満となれば閉弁する。逆止弁72は、排出口64の近傍に形成された第2弁座と、第2弁座に下流側から着脱して弁部を開閉する第2弁体と、第2弁体を閉弁方向に付勢する第2スプリングを有する。第2スプリングの荷重により第2設定圧力が調整されている。流体の注入時に逆止弁70が開弁することにより、液体循環通路120内の空気を押し出すように排出できる。それにより、液体循環通路120を流体で満たすことができる。逆止弁70,72の閉弁により流体を液体循環通路120に封じ込めることができる。
【0046】
逆止弁74は、接続管60の中間部に形成された第3弁座と、第3弁座に下流側から着脱して弁部を開閉する第3弁体を有する。逆止弁74は、第3弁体を閉弁方向に付勢するスプリングを有しておらず、流体が液体循環通路120を順方向に流れる限り開弁状態を保つ。逆止弁74を配設したことにより、流体の循環に方向性をもたせ、液体循環通路120に流体を充填させることができる。
【0047】
ここで、逆止弁70の開弁圧力(つまり第1設定圧力)は、ポンプ14の吸引圧力(絶対値)よりも大きくなるように設定されている。このため、ポンプ14が作動するごとに逆止弁70が開弁して空気を吸引するなどを防止できる。
【0048】
逆止弁72の開弁圧力(つまり第2設定圧力)は、ポンプ14の吐出圧力と外部からの変動圧力とを合わせた値よりも大きくなるように設定されている。ここでいう「外部からの変動圧力」は、対象者が装具100を装着したときに熱交換パッド10に加わる押圧力などを含み、実験等により予め適切な値が設定される。ポンプ14の吐出圧力と吸引圧力の大きさ(絶対値)はほぼ等しい。第2設定圧力は第1設定圧力よりも大きい。
【0049】
逆止弁74の開弁圧力は、本実施形態では実質的にゼロとされ、ポンプ14の入口と出口の圧力差を抑え、揚程への影響を緩和している。なお、変形例においては、逆止弁74に荷重のごく小さなスプリングを設け、微小な開弁圧力(つまり第3設定圧力)を設定してもよい。ただし、第3設定圧力は第2設定圧力よりも小さくなるようにする。
【0050】
以上のように各逆止弁の開弁圧力を設定することにより、液体循環通路120への流体の充填時や使用中における液体の漏れや空気の流入を防止できる。なお、各逆止弁を構成する部品には錆び難く、対候性の高い材質が用いられている。
【0051】
以上に説明したように、本実施形態によれば、液体注入機構16を設け、液体循環通路120に予め冷却水を充填可能とすることで、熱交換装置1をいわゆるタンクレスにて構成できる。このため、熱交換装置1の簡素化および軽量化を実現でき、装具等への装着が容易となる。装具等を装着する対象者への負担も軽減できる。
【0052】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はその特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
【0053】
[変形例]
図9は、変形例に係る装具200の構成を表す部分拡大図である。
装具200は、接続チューブ22,24の長さを調整するためのチューブ引き回し構造と、外気による熱交換パッド10の温度変化を抑制するための断熱構造を有する。
【0054】
図9(A)に示すように、装具200の背当部202(「装着部」に対応)は、熱交換パッド10が配置される熱交換領域210が厚手の生地からなり、その外部領域212が薄手の生地からなる。熱交換領域210に断熱構造が形成される(詳細後述)。外部領域212は、メッシュ構造を有する。
【0055】
熱交換領域210の外側面214には、接続チューブ22,24を引っ掛けるようにして固定可能な複数の固定部220が設けられている。固定部220は、左右に一対ずつ上下方向に3段設けられた面ファスナー220a~220cからなる。熱交換パッド10の下端につながった接続チューブ22,24は、背当部202の外側面214に引き回され、面ファスナー220a~220cのいずれかに固定されることで、上下方向に延びる長さが調整される。
【0056】
図9(A)には、接続チューブ22,24が中段の面ファスナー220bに固定された状態が示されている。図9(B)には、接続チューブ22,24が下段の面ファスナー220cに固定された状態が示されている。各接続チューブは、上方の面ファスナーに固定されるほど短くなり、下方の面ファスナーに固定されるほど長くなる。なお、各チューブは面ファスナーに固定しなくてもよく、その場合に最も長くなる。
【0057】
背当部202の上部中央には、液体注入機構16を収容する収容部230が設けられている。収容部230は、ポケットの態様をなし、液体注入機構16を外部に露出させないように覆うカバーとしても機能する。収容部230の上下方向中央部に切れ目232が設けられており、必要に応じて液体注入機構16の上部(注入口62、排出口64)を外部に露出させることができる(図9(B)参照)。
【0058】
図10は、対象者Mへの装具200の適用例を表す図である。
装具200を対象者Mへ装着する際には、上述したチューブ引き回し構造により接続チューブ22,24の長さを適度に調整した後、背当部202を背中に当てつつ、左右のストラップ部104,106を接続する。本変形例では、このようなチューブ引き回し構造を設けることで、対象者の身長にかかわらず装具200を使用できる。すなわち、装具200をフリーサイズとして提供できる。
【0059】
図11は、装具200の熱交換領域210における断熱構造を示す図である。
熱交換領域210においては、装具200の生地が断熱層240を有し、厚みが大きくなっている。この断熱層240は、厚みのあるメッシュ生地242と、貼り合わせ生地244とを、両者間に空気層Sを形成しつつ貼り合わせて構成される。
【0060】
メッシュ生地242は、例えばダブルラッセル構造を有するものでよい。貼り合わせ生地244は、例えばウレタン発泡体を芯材とし、起毛を有するものでよい。貼り合わせ生地244の外側面が外気に晒される。メッシュ生地242の内方に熱交換パッド10が位置し、通水路20を構成するチューブが、対象者Mの肌面Mbに直接又はインナーウェアを介して当接する。メッシュ生地242そのものも空気層を有するため、空気層Sとともに断熱効果を発揮する。このような構成により、外気温による冷却水の温度上昇を抑制できる。
【0061】
なお、本変形例では、固定部220を面ファスナーにて構成したが、ボタンその他の固定手段を採用してもよい。接続チューブに粘着性の生地を貼り付けてもよい。また、装具200の外観を考慮し、面ファスナーを外側から覆うカバーを別途設けてもよい。
【0062】
本変形例の断熱構造については、上記実施形態にも適用できることは言うまでもない。また、断熱構造は上記のものに限らず、外気から熱交換パッド10への熱伝達を抑制する構造であれば採用できる。
【0063】
図12は、他の変形例に係るウェア300の構成を表す図である。図12(A)は正面図であり、図12(B)は背面図である。
本変形例では、ウェア300が熱交換装置301を一体に備える。熱交換装置301は、熱交換パッド310および熱交換ユニット312を含み、ウェア300に着脱可能に取り付けられる。ウェア300は、本変形例ではベストの形態を有するが、シャツ、作業着、ジャケット、コートその他の形態を有してもよい。
【0064】
ウェア300は、全体的に薄手の生地からなり、左右対称な構造を有する。ウェア300の脇身頃302には通気性の良いメッシュ構造の生地が採用されている。ウェア300の前身頃304にはジップファスナー314が設けられているが、ボタンその他の開閉構造を採用してもよい。ウェア300の裏面には、後身頃306の上半部から前身頃304の上半部にかけて熱交換パッド310が装着される。ウェア300の後身頃306の下半部にポケット316が取り付けられ、熱交換ユニット312を収容する。なお、後身頃306の上半部と前身頃304の上半部は「装着部」に対応する。
【0065】
熱交換パッド310の内面の全体にわたり通水路320が設けられている。通水路320は、複数のチューブを連結して構成される。熱交換ユニット312は、上記実施形態の熱交換ユニット12とほぼ同様の構成を有するが、さらにポンプ318および内蔵型のバッテリを含む。熱交換パッド310と熱交換ユニット312とは、接続チューブ322,324を介して接続される。
【0066】
図13は、ポケット316の取付構造を表す図である。
ポケット316は、袋状の本体317を有し、熱交換ユニット312の収容部として機能する。本体317の表面中央には挿通孔326が設けられ、熱交換ユニット312のファン86を露出させることができる。ポケット316の裏面には面ファスナーのフック面が設けられている(図示略)。
【0067】
一方、ウェア300の後身頃306の下半部中央には、所定幅で切り欠かれた開放部328が設けられる。後身頃306における開放部328の周囲には、面ファスナーのループ面が設けられている。このため、熱交換ユニット312を収容した状態のポケット316を後身頃306に対して容易に着脱できる。ポケット316を後身頃306に装着した際、開放部328はポケット316により覆われることとなる(図12(B)参照)。
【0068】
図14は、熱交換パッド310の構成を表す図である。図14(A)は熱交換パッド310の構成を示し、図14(B)は通水路320の構成を示す。
図14(A)に示すように、熱交換パッド310は、左右対称に配置される左パッド330Fおよび右パッド330Rを有する。これらを特に区別しない場合には、「パッド330」を総称する。各パッド330は、対象者の背中側に当てられる背部当接領域332、肩部に対応する肩部当接領域334、および胸部に対応する胸部当接領域336を有する。これらの領域のうち、背部当接領域332が最も広い面積を有する。
【0069】
左パッド330Fの裏面に左側チューブ340Fが張り巡らされ、右パッド330Rの裏面に右側チューブ340Rが張り巡らされている。これらを特に区別しない場合には、「チューブ340」を総称する。各チューブ340は、パッド330の下端内側部に基端を有し、背部当接領域332を蛇行しながら肩部当接領域334を経て胸部当接領域336まで延びる。そして、胸部当接領域336の先端部で折り返し、肩部当接領域334を経て背部当接領域332の上端部に延びる。各チューブ340は、パッド330の上端内側部に先端を有する。左側チューブ340Fの先端と右側チューブ340Rの先端とは、接続チューブ342を介して接続される。
【0070】
図14(B)に示すように、左側チューブ340Fは、基端に接続チューブ322と接続する接続部344を有し、先端に接続チューブ342と接続する接続部346を有する。右側チューブ340Rは、基端に接続チューブ324と接続する接続部344を有し、先端に接続チューブ342と接続する接続部346を有する。各チューブ340は、蛇行部に複数の折り返し部348を有する。
【0071】
各折り返し部348は、平面視において比較的大きな面積を有し、その領域において通水路320の通路断面を安定に形成するための複数の支柱350を有する。チューブ340における肩部対応領域には、胸部対応領域への往路と復路とをバイパスする複数のバイパス通路バイパ通路352が設けられており、チューブ340における流路の詰まりに対応できるようにされている。
【0072】
接続チューブ322の接続部344とは反対側端部には、熱交換ユニット312と接続するためのカップリング356が設けられている。カップリング356は、注入口62としても機能する。接続チューブ324の接続部344とは反対側端部には、熱交換ユニット312と接続するためのカップリング358が設けられている。接続チューブ324の中途には分岐路360が設けられ、その分岐路360に逆止弁72および排出口64が設けられる。接続チューブ322が「第1配管」として機能し、接続チューブ324が「第2配管」として機能する。カップリング356が「第1カップリング」として機能し、カップリング358が「第2カップリング」として機能する。
【0073】
図15は、液体循環通路120における冷却水の充填方法を表す図である。
上述した左側チューブ340F、右側チューブ340Rおよび接続チューブ342が通水路320を形成する。図中の矢印は、液体循環通路120に冷却水を充填する際の水の流れを示す。
【0074】
冷却水の充填作業に際し、給水源370と排水受け372が用意される。これらは水を貯留可能なビーカーやバケツなどの容器でよい。給水源370には十分な量の冷却水が溜められている。排水受け372は空の容器でよい。そして、熱交換ユニット312の入口を構成するカップリング380に給水チューブ374の一端であるカップリング376を接続し、熱交換ユニット312の出口を構成するカップリング382に接続チューブ322のカップリング356を接続する。給水チューブ374は、給水工程に際して別途用意され、その他端は給水源370の冷却水内に配置される。接続チューブ324の排出口64の下方に排水受け372を配置する。
【0075】
この状態で熱交換ユニット312のポンプ318を駆動する。それにより、給水源370から冷却水が組み上げられ、接続チューブ322を介して左側チューブ340Fに導入される。この冷却水は、左側チューブ340Fを満たした後、接続チューブ342を介して右側チューブ340Rに導入される。このとき、通水路320内の空気が排出口64から押し出される。冷却水は右側チューブ340Rを満たした後、排出口64から排水受け372に漏れ出る。ただし、逆止弁72が機能するため、冷却水の漏れ量は最小限に抑えられる。このようにして通水路320に冷却水が充填された後、ポンプ318の駆動を停止する。
【0076】
その後、給水チューブ374をカップリング380から取り外し、カップリング358をカップリング380に接続する。それにより、液体循環通路120に冷却水が満たされた状態となる。各カップリングは、相手方のカップリングとの接続が外されると流路を閉じる逆止弁の機能を有するため、このような取り付け、取り外しの際の冷却水の漏れが抑制され、その充填状態を維持できる。また、排出口64についても上述のように、逆止弁72の機能により冷却水の漏れが防止される。
【0077】
図16は、冷却水の充填時および循環時における各部の機能を模式的に表す図である。図16(A)は充填時の状態を示し、図16(B)は循環時の状態を示す。
図16(A)に示すように、冷却水の充填時においては、ポンプ318の駆動部94が駆動されることで、ダイアフラムポンプの逆止弁140と逆止弁150とが交互に開弁して冷却水をくみ上げる。この冷却水が通水路320に供給される。このとき、カップリング358が非接続状態であるため、ポンプ318の吐出圧力により逆止弁72が開弁し、排出口64から空気が排出される。排出口64から冷却水が排出され始めると、通水路320が充填状態であることが分かるため、ポンプ318を停止させる。それにより、ポンプ318の吐出圧力がなくなるため、逆止弁72が閉じる。
【0078】
図16(B)に示すように、この状態でカップリング358をカップリング380に接続することにより、液体循環通路120が形成される。熱交換ユニット312および通水路320の双方に冷却水が充填されているため、液体循環通路120の全体として冷却水が満たされた状態となる。そして、ポンプ318を駆動することにより、液体循環通路120において冷却水を循環させることができる。このとき、ポンプ318の吐出圧力は冷却水の循環のために消費されるため、逆止弁72には開弁圧を超えた圧力は作用せず、その閉弁状態を維持する。
【0079】
本変形例によれば、ポンプ318が冷却水の充填時にも機能するため、作業性が向上する。また、上記実施形態における逆止弁70,74の機能をポンプ318の機能により代替できる。さらに、ウェア300に着脱可能なポケット316に熱交換ユニット312を収容するため、対象者の背丈や腰位置を考慮した熱交換ユニット312の取り付けが必要なくなる。このため、図10に示したようなチューブ引き回し構造も不要となる。
【0080】
なお、本変形例では図15等に示したように、接続チューブ324に分岐路360を設け、その先端に排出口64を設ける構成を示した。他の変形例においては、分岐路360をなくし、カップリング358を排出口64として機能させてもよい。例えば、冷却水の充填時に給水チューブ374のような構造の排出チューブを別途用意し、カップリング358に接続して冷却水を排出できるようにしてもよい。その排出チューブに逆止弁72を設けてもよい。すなわち、カップリング358は、排出口64と連通する接続チューブ324に設けられていればよい。
【0081】
上記実施形態では、熱交換装置1を高温環境下で機能する冷却装置として構成した例を示した。すなわち、熱交換パッド10が「吸熱パッド」として機能し、熱交換ユニット12が「冷却ユニット」として機能する構成を例示した。
【0082】
変形例においては、熱交換装置を低温環境下で機能する保温装置として構成してもよい。液体循環通路120には、流体として温水が循環することとなる。具体的には、図6に示したペルチェ素子82を上下反対向きに配設することで、熱交換器80側を発熱面83とし、放熱フィン84側を吸熱面81とすることができる。それにより、配管90を流れる温水の温度を適度に保つことができる。その熱交換装置を対象者の装具等に取り付けることにより、低温環境下での作業性を向上できる。
【0083】
上記実施形態では、熱交換装置1を対象者の背中に装着させる装具100に適用した例を示したが、装具の形態が上記のものに限られないことは言うまでもない。熱交換パッドの装着対象となる部位も背中に限らず、例えば肩や首筋など適宜設定できる。熱交換パッドをシャツなどの所望部位に着脱できるようにしてもよい。
【0084】
上記実施形態では、液体循環通路120を循環させる流体を水としたが、クーラントその他の液体としてもよい。
【0085】
上記実施形態および変形例では、熱交換素子としてペルチェ素子を例示したが、トムソン効果を発揮する素子その他の素子を採用することもできる。熱交換ユニットとして冷却効果を発揮させる場合には、冷媒を循環させる冷凍サイクルを採用することもできる。保温効果を発揮させる場合には、ヒータを採用してもよい。ただし、熱交換装置の簡素化および軽量化を同時に実現するためには、上記実施形態のような熱交換素子を採用するのが好ましい。
【0086】
上記実施形態の熱交換装置1を適用したウェア又は装具は、以下のように表現できる。
対象者の体温調整が可能なウェア(又は装具)であって、
対象者の特定部位に装着される装着部と、
前記装着部において熱交換を行う熱交換装置と、
を備え、
前記熱交換装置は、
液体を循環させる液体循環通路と、
前記装着部に取り付けられ、前記液体循環通路の一部が配設される熱交換パッドと、
前記液体循環通路を流れる液体との間で熱交換を行う熱交換ユニットと、
前記液体循環通路に配置されたポンプと、
前記液体循環通路に接続された液体注入機構と、
を含み、
前記液体注入機構は、
前記液体循環通路への液体の注入時に外部から液体を導入する注入口と、
前記液体循環通路への液体の注入時に外部へ空気を排出する排出口と、
を含み、
前記液体循環通路に流体を貯留するためのタンクを有しないことを特徴とするウェア(又は装具)。
【0087】
また、以下のようにも表現できる。
対象者の体温調整が可能なウェア(又は装具)であって、
対象者の特定部位に装着される装着部と、
前記装着部において熱交換を行う熱交換装置と、
を備え、
前記熱交換装置は、
液体を循環させる液体循環通路と、
前記装着部に取り付けられ、前記液体循環通路の一部が配設される吸熱パッドと、
前記液体循環通路を流れる液体を冷却する冷却ユニットと、
前記液体循環通路に配置されたポンプと、
を含み、
前記液体循環通路に流体を貯留するためのタンクを有しておらず、
前記冷却ユニットは、冷却素子としてペルチェ素子を含むことを特徴とするウェア(又は装具)。
【0088】
上記変形例を適用したウェア又は装具は、以下のように表現できる。
前記装着部の内側面に前記熱交換パッドを配置し、
前記装着部の外側面に固定部を有し、
前記熱交換パッドにおける前記液体循環通路につながるチューブが、前記装着部の外側面に引き回されてその一部が前記固定部に固定されることにより、前記チューブが前記装着部から延出する長さを調整可能なチューブ引き回し構造を備えることを特徴とするウェア(又は装具)。
【0089】
また、以下のようにも表現できる。
前記装着部は、前記熱交換パッドと当接する熱交換領域において、外気から前記熱交換パッドへの熱伝達を抑制する断熱構造を有することを特徴とするウェア(又は装具)。
前記断熱構造は、メッシュ生地と空気層を含む断熱構造を有するものでもよい
【0090】
なお、本発明は上記実施例や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施例や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施例や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0091】
1 熱交換装置、10 熱交換パッド、12 熱交換ユニット、13 バッテリ、14 ポンプ、16 液体注入機構、20 通水路、22 接続チューブ、24 接続チューブ、26 導出ポート、28 導入ポート、30 第1チューブ、32 第2チューブ、34 第3チューブ、36 ポート、38 ポート、40 ポート、42 ポート、44 ポート、46 ポート、50 導入管、52 導出管、54 通水管、56 注水管、58 排水管、60 接続管、62 注入口、64 排出口、70 逆止弁、72 逆止弁、74 逆止弁、76 スリット、80 熱交換器、81 吸熱面、82 ペルチェ素子、83 発熱面、84 放熱フィン、86 ファン、88 制御部、90 配管、92 ダイアフラム、94 駆動部、100 装具、102 背当部、103 内側面、104 ストラップ部、105 内側面、106 ストラップ部、120 液体循環通路、122 内部通路、124 内部通路、132 吸入管部、134 吐出管部、136 作動室、138 弁室、140 逆止弁、142 弁体、144 弁座、146 係止部、148 弁室、150 逆止弁、152 弁体、154 弁座、156 係止部、160 作動ロッド。200 装具、202 背当部、210 熱交換領域、212 外部領域、214 外側面、220 固定部、220b 面ファスナー、220c 面ファスナー、230 収容部、232 切れ目、240 断熱層、242 メッシュ生地、244 貼り合わせ生地、L 中心線、M 対象者、Mb 肌面、S 空気層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16