(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】インソール
(51)【国際特許分類】
A43B 17/00 20060101AFI20241025BHJP
【FI】
A43B17/00 E
(21)【出願番号】P 2024078636
(22)【出願日】2024-05-14
【審査請求日】2024-06-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507234438
【氏名又は名称】広島県公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100179648
【氏名又は名称】田中 咲江
(74)【代理人】
【識別番号】100222885
【氏名又は名称】早川 康
(74)【代理人】
【識別番号】100140338
【氏名又は名称】竹内 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100227695
【氏名又は名称】有川 智章
(74)【代理人】
【識別番号】100170896
【氏名又は名称】寺薗 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100219313
【氏名又は名称】米口 麻子
(74)【代理人】
【識別番号】100161610
【氏名又は名称】藤野 香子
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 正哉
【審査官】村山 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-213597(JP,A)
【文献】特開2003-153701(JP,A)
【文献】特開平9-103306(JP,A)
【文献】特開2014-132940(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インソールであって、
対象者の足底に配置され、前記足底に対面する面に第1の種類の面ファスナーを含むフットベッドと、前記第1の種類の面ファスナーに繰り返し貼着可能な第2の種類の面ファスナーを下面に、前記第1の種類の面ファスナーを上面に含む略板状の突起と、を含
み、前記突起は、第1及び第2の突起を含み、前記第1及び第2の突起は、前記フットベッドに貼着された前記第1の突起の上面と前記第2の突起の下面とが貼着されて前記フットベッド上に形成される各部位の凸部の形状を調整可能なように、幅が略10mm~21.25mmを有し、厚みが略1.3mm~5.2mmを有する、インソール。
【請求項2】
前記
第1及び第2の突起は、幅及び厚みの異なる複数の突起を含む、請求項
1に記載のインソール。
【請求項3】
前記
第1及び第2の突起の硬度は、略20~50度を有する、請求項1に記載のインソール。
【請求項4】
前記フットベッドは、前記足底に対面する面及び該面の反対側の面に前記第1の種類の面ファスナーを含む、請求項1に記載のインソール。
【請求項5】
前記
第1及び第2の突起は、略円盤状である、請求項1~
4のいずれか一項に記載のインソール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インソール、特に足底に対して感覚刺激を行うインソールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヒトの足部は立位や歩行において唯一地面と接する部位であり、緩衝や荷重分散などの力学的機能を持つ運動器としての役割と接地面情報を中枢に伝達する役割を持つ感覚器としての機能を備えている。現在流通しているインソールや整形外科靴などは、衝撃緩衝や荷重分散、アライメント補正など、主に足部の力学的機能を補償するものが多い(非特許文献1、2を参照)。一方、足底感覚入力を促すインソールにより静的姿勢制御能が向上することが知られており、足部の運動器・感覚器としての役割を支援するインソールの役割が報告されている(非特許文献3を参照)。
【0003】
しかし、これら運動器・感覚器としての役割をサポートする目的で作成されたフットウェアでは、対象者が「無意識」かつ「他動的」に動作を制御「される」状態にある。一方、身体機能の回復や動作能力改善を目指すリハビリテーション領域や運動学習過程においては、特定の運動や動作を「随意的」かつ「能動的」に制御「する」過程が必要であり、対象者が環境や課題に対していかに適応的な身体機能を作り出し動作するかという点が重要である。
【0004】
これらの観点から、特定の運動や動作を「随意的」かつ「能動的」に制御「する」ことによって、対象者に、能動的な運動や動作を惹起するフットウェアとして足底感覚入力を行うための突起が設置してある知覚入力型インソール(Perceptual Stimulus Insole)が提案されている(非特許文献4を参照)。
【0005】
一方、特許文献1には、インソール本体の裏面に足底のツボをプリントして表示し、足底のツボに対応するゾーンにツボ押圧用パッチのツボ押圧材を自由に選択し配置できる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【文献】長谷川正哉,“靴の基本.理学療法士のための足と靴のみかた”,第1版,坂口 顕(編),文光堂,東京,2013,p.81-95
【文献】坂本雅昭,桜井進一,“理学療法における足底挿板活用の意義と課題”,理学療法,2011,28:419-427
【文献】小原謙一,吉岡史晃,“靴インソールによる足底刺激部位の違いが足圧中心動揺に与える影響”,理学療法科学,2013,28:801-804
【文献】長谷川正哉,島谷康司,後藤拓也,他,“知覚入力型インソールを用いた後足部への感覚入力と選択的注意が歩容に与える影響”,靴の医学,2014,28:30-34
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来のインソールによる足底刺激方法では、個人ごとに異なる足部形状や二点識別覚及び足底感覚閾値が配慮されていないため、能動的な運動や動作を惹起するための個々の対象者の足部形状や感覚特性に合わせた刺激部位や刺激強度の調整が困難であるとの課題があった。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、能動的な運動や動作を惹起するための個々の対象者の足部形状や感覚特性に合わせた刺激部位や刺激強度の調整が容易なインソールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、インソールを対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0011】
第1の発明では、前記対象者の足底に配置され、前記足底に対面する面に第1の種類の面ファスナーを含むフットベッドと、前記第1の種類の面ファスナーに繰り返し貼着可能な第2の種類の面ファスナーを下面に、前記第1の種類の面ファスナーを上面に含む略板状の突起と、を含む。
【0012】
すなわち、第1の発明では、一の突起の上面の面ファスナーは、他の突起の下面の面ファスナーと貼着可能なため、フットベッドに貼着された一の突起の上に他の突起を積層化することにより、フットベッド上の突起により形成される凸形状及びサイズを自在に変えることができるので、個々の対象者の足部形状や感覚特性に合わせた刺激部位や刺激強度の調整が容易なインソールを簡単な構造でかつ安価に提供することができる。
【0013】
また、突起及びフットベッドは、面ファスナーを介して貼着されるため、対象者の荷重により強固に圧着されるので、突起の位置ずれを発生し難い。
【0014】
第2の発明では、第1の発明において、前記突起の幅は、略10mm~21.25mmを有し、前記突起の厚みは、略1.3mm~5.2mmを有する。
【0015】
突起の幅の下限は10mmであるため、面ファスナー間に突起幅の二乗の貼着面積に比例する十分な貼着力が生じるので、摩擦やインソールの曲りによる突起のずれを発生することがない。
【0016】
また、突起の幅の上限は21.25mmであるため、1対の突起は、成人男女の最小幅を有する足底部位である踵52.5mmにおいて二点識別距離の10mmだけ離間させて配置され得るので、全ての成人男女の足底に二点識別覚を満たすように配置することができる。
【0017】
また、突起の厚みの下限は、突起の幅が下限の10mmの際、立位荷重時の二点識別及び知覚ができる最小値1.3mmとされているため、突起の幅が10mmを超える場合に、荷重面積が大きくなり単位面積当たりの刺激圧が減じたとしても突起の厚みの単位で複数の突起を積層化できるので、細かい刺激圧の調整が容易である。
【0018】
また、突起の厚みの上限は5.2mmであるため、靴の着脱時に引っかかりにより突起の位置ずれを発生することがないので、突起を安定して配置することができる。
【0019】
第3の発明では、第2の発明において、前記突起は、幅及び厚みの異なる複数の突起を含む。
【0020】
突起は、幅及び厚みの異なる複数の突起を含むため、フットベッド上の突起の組み合わせにより形成される凸形状及びサイズの種類が増大して自由度が大きくなるので、個々の対象者の足部形状や感覚特性に合わせた刺激部位や刺激強度の調整が容易になる。
【0021】
第4の発明では、第1の発明において、前記突起の硬度は、略20~50度を有する。
【0022】
突起の硬度は、略20~50度であるため、突起が軟らかすぎて対象者の足底に所望の刺激圧を与えられない、又は突起が硬すぎて対象者の足底を傷つけるといった如き不便を生じない。
【0023】
第5の発明では、第1の発明において、前記フットベッドは、前記足底に対面する面及び該面の反対側の面に前記第1の種類の面ファスナーを含む。
【0024】
フットベッドは、足底に対面する面及び該面の反対側の面に第1の種類の面ファスナーを含むため、フットベッドの使用による損傷や劣化等により一面の面ファスナーの貼着力が減じても、面をひっくり返すことによって他面の第1の種類の面ファスナーを使用することができるので、フットベッドの耐久性の高いインソールを提供することができる。
【0025】
第6の発明では、第1~5の発明において、前記突起は、略円盤状である。
【0026】
突起は、略円盤状であるため、面ファスナーの貼着面積が矩形に比し大きくなるため貼着力が増大するので配置が安定するとともに、角形の形状における隅が足底に引っかかることにより足底を傷つける若しくは配置した突起の位置ずれを発生させるといった不便が生じない。また、突起の平面中心と周縁部との距離が突起の配向に関わらず略一定となるため、複数の突起間の距離は、突起の配向に関わらず略一定となり、フットベッド上に配置された複数の突起間の間隔の制御が容易となるので、刺激部位や刺激強度の調整が容易である。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、能動的な運動や動作を惹起するための個々の対象者の足部形状や感覚特性に合わせた刺激部位や刺激強度の調整が容易なインソールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るインソール(右足用)の上面図を示す。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る突起の構成の一例を示す。
図2(A)は突起の上面図、
図2(B)はその下面図、
図2(C)はその側面図を示す。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係るフットベッド(右足用)の構成を示す。
図3(A)はフットベッドの上面図、
図3(B)はその下面図、
図3(C)はその側面図を示す。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態に係るインソール(右足用)の使用方法を説明するための図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態に係るインソールの使用の一例を示す。
図5(A)はインソールの上面図、
図5(B)はその側面図を示す。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態に係るインソールの使用の他の例を示す。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態に係る突起の構成の他の例を示す。
図7(A)は突起の上面図、
図7(B)はその下面図、
図7(C)はその側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0030】
(インソール)
本発明の実施形態に係るインソール1の構成を
図1に示す。インソール1は、様々な靴に用いられ得る。具体的には、インソール1は、例えば、ビジネスシューズ、カジュアルシューズ、医療用シューズ、運動用シューズ、パンプス、スニーカー、サンダル、ブーツ等の様々な靴や履物に用いられてよい。インソール1は、クッション性を有してもよく、靴底の上面を形成する。つまり、インソール1は、対象者の足底に接し、インソール1の下面側には靴の中底及び表底が位置する。インソール1は、インソール1が用いられた靴の一部として流通してもよいし、インソール1単独で流通してもよい。
【0031】
なお、左足用のインソールは、右足用のインソールが鏡映されたものであることを除き、右足用のインソールと同じなので、以後では、右足用のインソールについての説明を記載し、左足用のインソールについての説明を省略する。
【0032】
図1~3に示すように、右足用のインソール1は、繰り返し貼着可能な面ファスナーを上面及び下面に有する略板状の突起2と、対象者の足底に配置され、突起2と繰り返し貼着可能な面ファスナーを上面に有するシート状のフットベッド3と、を含む。ここで、突起2、フットベッド3における足底に対面する面を上面、上面の反対側の面を下面と記載する。
【0033】
(突起)
図2に示すように、突起2は、略板状をなす面ファスナー2aのメス面が含まれる上面の反対側の下面と、略板状をなす第2の種類の面ファスナー2bのオス面が含まれる下面の反対側の上面と、を接合したものである。つまり、突起2は、第1の種類の面ファスナー2aのメス面を上面に含み、第2の種類の面ファスナー2bのオス面を下面に含む。突起2の上面の面ファスナー2aは、他の突起2の下面の面ファスナー2bと、突起2の下面の面ファスナー2bは、他の突起2の上面の面ファスナー2a及び後述するフットベッド3の面ファスナー3aと繰り返し貼着可能なものであれば、任意のものでよい。面ファスナーは、例えば、メス面がループ状面、オス面がフック状面である。
【0034】
面ファスナー2aの素材は、例えばナイロン100%を含むが、これに限定されない。また、面ファスナー2bの素材は、例えばポリエステル・ポリエチレンを含むが、これに限定されない。
【0035】
突起2の形状は、上面の面ファスナー2a及び下面の面ファスナー2bを介して他の突起2の下面の面ファスナー2b及び/又は後述するフットベッド3の上面の面ファスナー3aに繰り返し貼着できる形状であれば任意であるが、略板状が好ましい。略板状は、平坦なものに限定されず、例えば、波状や湾曲状や凸凹状であってもよい。特に、突起2は、略円盤状が好ましく、このとき、上面及び下面の面ファスナー2a、2bの貼着面積が矩形に比し大きくなるため貼着力が増大するので配置が安定するとともに、角形状の突起における隅が足底に引っかかることにより足底を傷つける若しくは配置した突起2の位置ずれを生じさせるといった不便が生じない。また、
図2に示すように、突起2の平面中心Cと周縁部Eとの距離が突起2の配向に関わらず略一定となるため、複数の突起2間の距離は、突起2の配向に関わらず略一定となり、フットベッド3上に配置された複数の突起2間の間隔の制御が容易となるので、刺激部位や刺激強度の調整が容易である。
【0036】
突起2の幅Wの下限は、上面の面ファスナー2a及び下面の面ファスナー2bの製造可能な最小幅であってよいが、特に10mmが好ましい。このとき、貼着する面ファスナー間に突起幅の二乗の貼着面積に比例する十分な貼着力が生じるので、摩擦やインソール1の曲りによる突起2のずれを発生することがない。
【0037】
突起2の幅Wの上限は、後述するフットベッド3上に配置された突起2が上面視においてフットベッド3の側方から突出しないように、フットベッド3の縦幅LF及び横幅WFを超えないことが好ましく、以下に説明するように、特に21.25mmが好ましい。
【0038】
成人男女において、最小幅を有する足底部位は踵であり、成人男女の踵の最小幅は、女性の52.5mmであることが知られている(表1を参照)。
【0039】
一方、成人男女の踵における二点識別距離は、約10mmであることが知られている(Two-Point Discrimination in Feet with Ankle Sprains,JAPMA 113 (4):e1-e52;doi:http://doi.org/10.7547/22-195.を参照)ため、数1により、突起2の幅Wが21.25mm以下であれば、1対の突起2は、二点識別距離の10mmだけ離間させて踵に配置され得るので、全ての成人男女の足底部位に配置することができる。つまり、全ての成人男女の足底に二点識別覚を満たすように1対の突起2を配置することができる。
【0040】
突起2の厚みHの下限は、上面の面ファスナー2a及び下面の面ファスナー2bの製造可能な最小厚さの和であってよいが、突起2の幅Wが上述した下限の10mmの場合に立位荷重時の二点識別及び知覚ができる最小値である、1.3mmが特に好ましい。また、突起2の幅Wが10mmを超える場合に、上面及び下面の荷重面積が大きくなるため単位面積当たりの刺激圧が減じたとしても、突起2の厚みHである1.3mmの単位で複数の突起2を積層化できるので、細かい刺激圧の調整が容易である。
【0041】
突起2の厚みHの上限は、限定されないが、特に5.2mmが好ましい。靴の着脱時に引っかかりにより突起2の位置ずれを発生することがないので、突起2を安定して配置することができる。
【0042】
つまり、突起2の幅Wは、略10mm~21.25mm、突起2の厚みHは、略1.3mm~5.2mmが好ましい。
【0043】
また、突起2の硬度は、足底に与える刺激を大とする場合には硬度が大きいこと(硬質)が好ましく、刺激を小とする場合には硬度が小さいこと(軟質)が好ましいが、特にJAで略20~50度とすることが好ましい。このとき、突起2は、軟らかすぎて対象者の足底に所望の刺激圧を与えられない、又は硬すぎて対象者の足底を傷つけるといった如き不便を生じない。なお、本明細書では、硬度は、JIS K6301に準拠した方法で測定される。また、これらの素材の硬度は、これに限らず、適宜定められ得る。
【0044】
なお、インソール1に含まれる突起2の形状、径、厚さ及び硬度は、1種類に限定されず、2種類以上あってもよい。突起2の形状、径、厚さ及び硬度を2種類以上とすることにより、種々の形状等を有する突起2の組み合わせにより形成される凸形状及びサイズの種類が増大して自由度が大きくなるので、個々の対象者の足部形状や感覚特性に合わせた刺激部位や刺激強度の調整をより細かく行うことができる。
【0045】
(フットベッド)
図3は、右足用のフットベッド3を示す。フットベッド3は、シート状の第1の種類の面ファスナー3aのメス面が含まれる上面の反対側の下面と、シート状の芯材3bの上面とを接合したものである。つまり、フットベッド3は、対象者の足底に配置され、足底に対面する面に第1の種類の面ファスナー3aのメス面を含む。フットベッド3の上面の面ファスナー3aは、突起2の下面の面ファスナー2bと繰り返し貼着可能なものであれば、任意のものでよい。
【0046】
フットベッド3は、対象者の足底に接して全荷重を支えるため、耐久性を有し、対象者の足底に不快感を与えない素材が好ましい。面ファスナー3aの素材は、例えばナイロン100%を含むが、これに限定されない。また、芯材3bの素材は、耐久性、クッション性、快適性、通気性、衛生度等により、例えばポリエステル70%、合成樹脂25%、化学補助剤5%を含んでよいが、これに限定されない。
【0047】
また、フットベッド3は、一枚のシートとして形成され、対象者がインソール1を使用するときに、個々の対象者の靴形状や足部形状、感覚特性に合わせてカットされてよい。こうすることで金型作成と抜きの工程を省くことができる。
【0048】
(使用方法)
本実施形態に係るインソール1の使用方法について、
図4~6を参照して、説明する。
【0049】
図4は、直径21.25mm、厚さ1.3mmを有する突起21と、直径10mm、厚さ1.3mmを有する突起22と、右足用のフットベッド3と、を含むインソール1を示す。
【0050】
フットベッド3は、足のつま先側と踵側とに延びる長軸Lと、長軸に交差するつま先側の足趾軸Tと、踵側の短軸Sとにより、荷重部位31~36に分けられる。
【0051】
荷重部位31により、足の背屈、内反、内転を促す、踵外側からの接地を教示し得る。荷重部位32により、足の背屈、外反、外転を促す、踵内側からの接地を教示し得る。荷重部位33により、足の底屈、内反、内転を促す、歩行中の外側への荷重を誘導し得る。荷重部位34により、足の底屈、外反、外転を促す、歩行中の内側への荷重を誘導し得る。荷重部位35により、足の底屈、4及び5指の底屈、内転を促す、4及び5指でのけり出し、足趾の運動を促し得る。荷重部位36により、足の底屈、1及び2指の底屈、外転を促す、1及び2指でのけり出し、足趾の運動を促し得る。
【0052】
対象者は、対応する能動的な運動や動作を惹起するため、フットベッド3の荷重部位31~36に所望の刺激圧が生じるように、突起21、22を貼着させる。例えば、
図5に示すように、対象者は、自らの足部形状、感覚特性、及び刺激部位、刺激強度に合わせて、荷重部位31~36に配置される突起2の直径及び/又は積層数、ならびに間隔を調整することができる。つまり、対象者は、インソール1上の突起2により形成される凸形状及びサイズを自在に変えることができるので、自らの足部形状や感覚特性に合わせた刺激部位や刺激強度の調整を容易に行うことができる。
【0053】
図6は、スポーツ現場や臨床場面において行われる、「踵から着く」、「親指の付け根で蹴る」など足部の荷重位置に注意を向けさせる指導において、インソール1を用いた簡便な動作指導方法による結果を示す。
【0054】
図6(A)は、インソール1(左足用)において、指導者が、対象者のCOP(Center Of foot Pressure)軌跡による動作指導のために、対象者の足部形状、感覚特性に合わせた突起2をフットベッド3の荷重部位32、33、36に配置した例を示す。
図6(B)、(C)のカーブCOPは、指導者の意図したCOP軌跡である。
【0055】
図6(B)のカーブCOP1は、指導者の言語指導による対象者の課題理解結果、
図6(C)のカーブCOP2は、指導者がインソール1を用いて指導した時の対象者の課題理解結果をそれぞれ示す。
図6(B)、(C)を参照すると、指導者の意図したCOPとの一致度に関して、インソール1を用いて指導した時の対象者の理解したCOP2はCOP1に比べて高い。
【0056】
つまり、インソール1によれば、能動的な運動や動作を惹起するための個々の対象者の足部形状や感覚特性に合わせた刺激部位や刺激強度の調整を容易に行うことができる。
【0057】
(まとめ)
このように、本発明の実施形態によると、一の突起2の上面の面ファスナー2aは、他の突起2の下面の面ファスナー2bと貼着可能なため、フットベッド3に貼着された一の突起2の上に他の突起2を積層化することにより、フットベッド3上の突起2により形成される凸形状及びサイズを自在に変えることができるので、個々の対象者の足部形状や感覚特性に合わせた刺激部位や刺激強度の調整が容易なインソール1を簡単な構造でかつ安価に提供することができる。
【0058】
また、突起2及びフットベッド3は、面ファスナーを介して貼着されるため、対象者の荷重により強固に圧着されるので、突起2の位置ずれを発生し難い。
【0059】
また、突起2の幅Wの下限は10mmであるため、面ファスナー2a、2b、及び3a間に突起幅の二乗の貼着面積に比例する十分な貼着力が生じるので、摩擦やインソール1の曲りによる突起2のずれを発生することがない。
【0060】
また、突起2の幅Wの上限は21.25mmであるため、1対の突起2は、成人男女の最小幅を有する足底部位である踵52.5mmにおいて二点識別距離の10mmだけ離間させて配置され得るので、全ての成人男女の足底に二点識別覚を満たすように配置することができる。
【0061】
また、突起2の厚みHの下限は、突起2の幅Wが下限の10mmの際、立位荷重時の二点識別及び知覚ができる最小値1.3mmとされているため、突起の幅Wが10mmを超える場合に、荷重面積が大きくなり単位面積当たりの刺激圧が減じたとしても突起2の厚みHである1.3mmの単位で複数の突起2を積層化できるので、細かい刺激圧の調整が容易である。
【0062】
また、突起2の厚みHの上限は5.2mmであるため、靴の着脱時に引っかかりにより突起2の位置ずれを発生することがないので、突起2を安定して配置することができる。
【0063】
突起2は、幅W及び厚みHの異なる複数の突起21、22を含むため、フットベッド3上の突起2により形成される凸形状及びサイズの種類が増大して自由度が大きくなるので、個々の対象者の足部形状や感覚特性に合わせた刺激部位や刺激強度の調整が容易になる。
【0064】
また、突起2の硬度は、略20~50度であるため、突起2が軟らかすぎて対象者の足底に所望の刺激圧を与えられない、又は突起2が硬すぎて対象者の足底を傷つけるといった如き不便を生じない。
【0065】
また、突起2は、略円盤状であるため、面ファスナー2a、2bの貼着面積が矩形に比し大きくなるため貼着力が増大するので配置が安定するとともに、角形の形状における隅が足底に引っかかることにより足底を傷つける若しくは配置した突起の位置ずれを発生させるといった不便が生じない。また、突起2の平面中心Cと周縁部Eとの距離が突起2の配向に関わらず略一定となるため、複数の突起2間の距離は、突起2の配向に関わらず略一定となり、フットベッド3上に配置された複数の突起2間の間隔の制御が容易となるので、刺激部位や刺激強度の調整が容易である。
【0066】
なお、インソール1において、第1の種類の面ファスナー2a、3aはメス面を含み、第2の種類の面ファスナー2bはオス面を含むものとしたが、第1の種類の面ファスナー2a、3aがオス面を含み、第2の種類の面ファスナー2bがメス面を含むものであっても、同様の効果を得ることができる。
【0067】
また、インソール1において、突起2は、
図7に示すように、上面の面ファスナー2aと下面の面ファスナー2bとの間に中間層2cを含んでよい。この中間層2cにより、突起2の厚みH及び硬度を容易に変更することができる。中間層2cの素材は、耐久性、クッション性、快適性、通気性、衛生度等により、例えばポリオレフィン樹脂又はウレタン樹脂を含むが、これに限定されず、布、フェルト、ゴム、コルク等であってもよい。
図7の符号は、
図2と同様である。
【0068】
また、フットベッド3は、下面の芯材3bの代わりに、又は芯材3bに加えてその下面にさらに第1の種類の面ファスナーを含んでよい。フットベッド3は、上面及び下面に第1の種類の面ファスナーを含むため、フットベッド3の使用による損傷や劣化等により上面の面ファスナー3aの貼着力が減じても、上面及び下面をひっくり返すことによって下面の第1の種類の面ファスナーを使用することができるので、フットベッド3の耐久性の高いインソール1を提供することができる。
【0069】
また、フットベッド3は、足底の大きさ、形状等に合わせて一枚のシートからあらかじめカットされたものが含まれていてよい。このとき、フットベッド3の面ファスナー3a上に、足底の長軸L、足趾軸T、短軸Sを表す目印が印刷され又は設けられていてよい。対象者は、フットベッド3の所望の位置に、目印に基づいて容易に突起2を貼着させることができる。
【0070】
また、フットベッド3は、面ファスナー3aを靴の中底側に向けて配置され、フットベッド3の下面に突起2が貼着されてもよい。突起2は、フットベッド3の面ファスナー3a及び芯材3bを介して対象者の足底に接するため、突起2による刺激がフットベッド3により緩衝されるので、対象者の感覚特性に合わせた刺激強度の調整を容易に行うことができる。さらに、フットベッド3の下面に複数の突起2を組み合わせて貼着することにより、種々の凸形状及びサイズのパーツを形成できるため、インソール1は、従来のインソールのようにアーチサポートやメタタルザルパッド等として使用することができる。
【0071】
本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
【符号の説明】
【0072】
1 インソール
2 突起
2a 面ファスナー(メス面)
2b 面ファスナー(オス面)
3 フットベッド
3a 面ファスナー(メス面)
3b 芯材
【要約】
【課題】
能動的な運動や動作を惹起するための個々の対象者の足部形状や感覚特性に合わせた刺激部位や刺激強度の調整が容易なインソールを提供する。
【解決手段】
インソール1は、対象者の足底に配置され、足底に対面する面に第1の種類の面ファスナー3aを含むフットベッド3と、第1の種類の面ファスナー3aに繰り返し貼着可能な第2の種類の面ファスナー2bを下面に、第1の種類の面ファスナー2aを上面に含む略板状の突起2と、を含む。
【選択図】
図1