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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】護岸ブロック及び護岸構造
(51)【国際特許分類】
   E02B 3/14 20060101AFI20241025BHJP
   E02D 17/20 20060101ALI20241025BHJP
【FI】
E02B3/14 301
E02D17/20 103E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024117923
(22)【出願日】2024-07-23
【審査請求日】2024-08-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】598108364
【氏名又は名称】キッコウ・ジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】吉村 隆顕
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-150159(JP,A)
【文献】特開2000-054344(JP,A)
【文献】特開昭51-000740(JP,A)
【文献】国際公開第2016/208887(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/14
E02D 17/20
E02D 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射状に配される棒状でかつコンクリート製の3本の枝部と、
それぞれの前記枝部の梢端に固設され、かつ前記枝部の軸心方向に対して直交する方向に配され、かつ棒状でコンクリート製の脚部と、を備え、
前記脚部の軸心は、全ての同じ方向に配され、
3本の前記枝部のうちの1本の、前記脚部の軸心方向における軸心位置は、前記枝部の太さD1分だけ他の2本の前記枝部の軸心位置と異なっていることを特徴とする護岸ブロック。
【請求項2】
それぞれの前記枝部の、前記脚部の軸心方向における軸心位置は、前記枝部の太さD1分ずつ異なっていることを特徴とする請求項1に記載の護岸ブロック。
【請求項3】
前記枝部及び前記脚部は全て角柱状であり、
前記脚部の端部寄りで、かつ前記脚部の太さがD1からD2(ただし、D1<D2)に変わる位置に段差状の引っ掛け部を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の護岸ブロック。
【請求項4】
3本の前記枝部の基部は、前記脚部の軸心方向と平行に配される棒状でコンクリート製の幹部を介して一体に連結されていること特徴とする請求項1又は請求項2に記載の護岸ブロック。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載される護岸ブロックにおける前記枝部と前記脚部の連結部に、他の前記護岸ブロックにおける前記枝部と前記脚部の連結部を掛止することで、複数の前記護岸ブロックを連係させた躯体構造を備えることを特徴とする護岸構造。
【請求項6】
前記躯体構造を構成する個々の前記護岸ブロックの隙間を埋める土砂、砕石又は廃コンクリート、あるいはこれらから選択される2種類以上の組み合わせである埋設材を備えることを特徴とする請求項5に記載の護岸構造。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、護岸ブロック同士の連係が容易で、かつ川床、海底、法面、海岸及び川岸等を強固に保護することができる護岸ブロック及びそれを用いた護岸構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、切土や盛土によって人工的に造られた傾斜面である法面は、降雨によって土砂崩れを引き起こす危険性がある。
また、川床、海底、海岸又は川岸に設置される従来公知の波消ブロックは、すなわち中央の基部から三次元の4方向に均等に突起が突出した従来公知の波消ブロックは、その突起間に他の波消ブロックの突起を配置するなどして、波消ブロック同士を極力連係させながら設置しているものの、波消ブロック同士の連係が強固であるとは言い難い。
このような波消ブロックは、コンクリート製で比重がさほど大きくないため、津波が襲来した際、容易に押し流されてしまうという課題があった。
さらに、コンクリート成形体である従来公知の法面形成ブロックや波消ブロックを、法面、海岸あるいは川岸に敷き詰めた場合、法面、海岸あるいは川岸が人工物で覆われるため、自然の景観が損なわれてしまうという課題もあった。
【0003】
本発明の出願人は上記課題に対処するため、法面形成ブロックと自然石を組み合わせることでより強固に、川床、海底、法面、海岸及び川岸等を保護しながら、その外観が周囲の景観に馴染む法面構造等に関する技術を長年にわたり研究し、数多く出願してきた。
その中で、本発明と関連すると考えられる先願としては、以下に示す特許文献1及び特許文献2が挙げられる。
【0004】
特許文献1には「ブロックとその金型とそのブロックを用いた施工方法」という名称で、法面及び護岸の形成に用いるブロックとその金型とそのブロックを用いた施工方法に関する発明が開示されている。
特許文献1に開示される発明であるブロックは、柱状の本体部と、この本体部の一の端部において垂直方向に突設された第1の突起、第2の突起及び第3の突起と、上記本体部の一の端部よりも大径に形成された他の端部において垂直方向に突設され上記第1乃至第3の突起よりも高さの高い第4の突起、第5の突起及び第6の突起とを有するブロックであって、上記第1乃至第3の突起及び上記第4乃至第6の突起はそれぞれ一の端部及び他の端部において周方向に等配され、第1の突起と第4の突起、第2の突起と第5の突起、第3の突起と第6の突起は、それぞれ本体部の周方向同位置に設けられ、第1の突起は第2の突起と第3の突起と、第4の突起は第5の突起と第6の突起とそれぞれ本体部の軸方向にずらして突設されることを特徴とする。
【0005】
特許文献2には「河床形成用ブロックおよびそれを用いた河床の構造およびその形成方法」という名称で、河川の河床に形成される人工河床に関し、水流による河床の洗掘を防止するための河床形成用ブロックおよびそれを用いた河床の構造およびその形成方法に関する発明が開示されている。
特許文献2に開示される発明である河床形成用ブロックは、河床において河水の流れに作用するように配置される河床形成用ブロックであって、棒状で、かつ、直線状又は湾曲又は屈曲した流導部と、この流導部に固設される少なくとも1つの軸部と、この軸部の上記流導部が設けられていない側の端部近傍において周方向に突設される少なくとも1つの脚部とを有することを特徴とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第3585483号公報
【文献】特開2008-255576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1及び特許文献2に開示される枝部が放射状に配されるブロックを用いる場合で、かつ複数の上記ブロックを互いに連係させるには、一のブロックの枝部と、他のブロックの枝部を交差させてこれらを掛止する必要があった。
また、上記ブロックを複数連係して一体化した構造物に外力が作用するなどして、互いに交差した枝部が離間してしまった場合は、ブロック同士の連係が維持されなくなり、形成された法面等が損傷又は破損するおそれがあった。
さらに、特許文献1及び特許文献2に開示されるブロックを用いる場合は、ブロック同士を連係させるにあたり、高度な技術を有する職人がブロックを1つずつ組み上げる必要があり、施工に人手と手間がかかるという課題もあった。
【0008】
本発明はかかる従来の事情に対処してなされたものでありその目的は、護岸ブロック同士を連係して一体化することが容易で、かつ護岸ブロック同士を連係して一体化した構造物の強度が高く、しかも様々な立体形状を有する躯体構造を形成することができる護岸ブロック及びそれを用いた護岸構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための第1の発明である護岸ブロックは、放射状に配される棒状でかつコンクリート製の3本の枝部と、それぞれの枝部の梢端に固設され、かつ枝部の軸心方向に対して直交する方向に配され、かつ棒状でコンクリート製の脚部と、を備え、脚部の軸心は、全ての同じ方向に配され、3本の枝部のうちの1本の、脚部の軸心方向における軸心位置は、枝部の太さD1分だけ他の2本の枝部の軸心位置と異なっていることを特徴とする。
上記構成の第1の発明において、脚部は設置面上において、放射状に配された3本の枝部が一体化した構造物を支えるという作用を有する。
また、第1の発明において、枝部と脚部の連結体は、一の護岸ブロックに他の護岸ブロックを掛止するためのフック状の掛止構造として作用する。
そして、第1の発明では、全ての枝部の梢端側が上述のような掛止構造を有することで、一の護岸ブロックに他の護岸ブロックを掛止することが容易になる。
加えて、一の護岸ブロックに他の護岸ブロックを掛止した際、この掛止部分を外れ難くすることができる。
さらに、第1の発明において、3本の枝部のうちの1本の、脚部の軸心方向における軸心位置が、枝部の太さD1分だけ他の2本の枝部の軸心位置と異なっていることで、複数の護岸ブロックを連係する際、隣り合う護岸ブロックの枝部が干渉するのを抑制するという作用を有する。
この結果、複数の護岸ブロックを連係して形成した構造物(躯体構造)の安定性が高まる。
【0010】
第2の発明は、上述の第1の発明であって、それぞれの枝部の、脚部の軸心方向における軸心位置は、枝部の太さD1分ずつ異なっていることを特徴とする。
第2の発明では、それぞれの枝部の配置が上記のように特定されることで、複数の護岸ブロックを互いに掛止して連係する際、第1の発明である護岸ブロックを用いる場合に比べて、隣り合う護岸ブロックの枝部が干渉するのをより効果的に抑制するという作用を有する。
よって、第2の発明によれば、複数の護岸ブロックを連係して躯体構造を形成する際、第1の発明である護岸ブロックを用いる場合よりも、より高い密度で護岸ブロックを配置することができる。
このため、第2の発明によれば、複数の護岸ブロックを連係して形成した躯体構造の強度及び安定性を一層高めることができる。
【0011】
第3の発明は、上述の第1又は第2の発明であって、枝部及び脚部は全て角柱状であり、脚部の端部寄りで、かつ脚部の太さがD1からD2(ただし、D1<D2)に変わる位置に段差状の引っ掛け部を有することを特徴とする。
上記構成の第3の発明では、枝部及び脚部が全て角柱状であり、かつそれぞれの脚部の端部寄りに段差状の引っ掛け部を有することで、一の護岸ブロックの脚部の周側面に形成される引っ掛け部を、他の護岸ブロックの枝部又は脚部の周側面に形成される角部に、あるいは他の護岸ブロックの脚部の周側面に形成される引っ掛け部に、掛止することができる。
よって、第3の発明によれば、一の護岸ブロックに他の護岸ブロックを掛止可能な護岸ブロックの配置の数を増やすことができる。
この結果、複数の護岸ブロックを連係することで形成される躯体構造の立体形状のバリエーションを増やすことができる。
【0012】
第4の発明は、上述の第1又は第2の発明であって、3本の枝部の基部は、脚部の軸心方向と平行に配される棒状でコンクリート製の幹部を介して一体に連結されていることを特徴とする。
上記構成の第4の発明では、3本の枝部の基部を、幹部を介して一体に連結することで、枝部同士の連結部分の強度が高まる。これにより、第4の発明である護岸ブロック自体の強度が高まる。
この結果、第4の発明である護岸ブロックを用いて形成した躯体構造自体の強度が高まる。
【0013】
第5の発明である護岸構造は、第1又は第2の発明である護岸ブロックにおける枝部と脚部の連結部に、他の護岸ブロックにおける枝部と脚部の連結部を掛止することで、複数の護岸ブロックを連係させた躯体構造を備えることを特徴とする。
上記構成の第5の発明では、一の護岸ブロックにおける枝部と脚部の連結部(=掛止構造)に、他の護岸ブロックにおける枝部と脚部の連結部(=掛止構造)を掛止することで、複数の護岸ブロックを鎖状に又は網目状につないで一体化した、あるいは複数の護岸ブロックを三次元方向にランダムにつないで一体化した、躯体構造を形成することができる。
そして、このような躯体構造により川床、海底、法面、海岸又は川岸等の表面を被覆して保護することができる。
あるいは、このような躯体構造を用いて川床、海底、法面、海岸又は川岸等を形成することで、河水や海水等の水力や、風、雨又は雪等による浸食に強い川床、海底、法面、海岸又は川岸等を形成することができる。
【0014】
第6の発明は、上述の第5の発明であって、躯体構造を構成する個々の護岸ブロックの隙間を埋める土砂、砕石又は廃コンクリート、あるいはこれらから選択される2種類以上の組み合わせである埋設材を備えることを特徴とする。
上記構成の第6の発明では、護岸構造を躯体構造と埋設材により形成することで護岸構造自体の強度が高まる。
つまり、第6の発明では、護岸構造を形成した後、時間の経過とともに埋設材が徐々に締め固まっていき、これにより埋設材と躯体構造が一体化してより強固な護岸構造を形成することができる。
よって、第6の発明によれば、躯体構造のみを用いて護岸構造を形成する場合に比べて、より強度と安定性が優れた護岸構造を形成することができる。
また、第6の発明では、埋設材中に躯体構造を埋めることで、護岸構造の外側から人工物である躯体構造(護岸ブロック)が見え難くなる。
このため、川床、海底、法面、海岸又は川岸等に第6の発明である護岸構造を設けた際、その外観を自然の景観に近づけることができる。
【発明の効果】
【0015】
上述のような第1の発明を用いて、第5の発明を構成する躯体構造を形成した際、個々の護岸ブロックが分離し難い躯体構造を形成することができる。
つまり、第1の発明である護岸ブロックを用いることで、護岸ブロック同士の連係力が極めて高い第5の発明である躯体構造を形成できる。
よって、第1の発明を用いて第5の発明である護岸構造を形成した場合で、かつ地震や津波の発生に伴って大きな外力が護岸構造に作用した場合、躯体構造が損傷又は破損するリスクを低減できる。
この結果、第1の発明及びそれを用いた第5の発明によれば、川床、海底、法面、海岸又は川岸等の強度を高めることができる。あるいは、強度が優れた川床、海底、法面、海岸又は川岸等を形成することができる。
【0016】
第2の発明によれば、第1の発明である護岸ブロックを用いる場合に比べて、より高い密度で護岸ブロックが配置された躯体構造を形成することができる。
この結果、第2の発明によれば、第1の発明である護岸ブロックを用いる場合に比べて、より強度と安定性が優れた躯体構造を形成することができる。
よって、第2の発明及びそれを用いた第5の発明によれば、地震や津波の発生に伴って大きな外力が護岸構造に作用した際、躯体構造が損傷又は破損するリスクをより確実に低減することができる。
この結果、第2の発明及びそれを用いた第5の発明によれば、強度がより優れた川床、海底、法面、海岸又は川岸等を形成することができる。
【0017】
第3の発明によれば、先の第2の発明を用いる場合に比べて、複数の護岸ブロックを互いに掛止して形成した躯体構造の立体形状のバリエーションを増やすことができるので、施工対象の地形にフィットした躯体構造を形成したり、任意の形態を有する躯体構造を形成したりすることが容易になる。
よって、第3の発明によれば、護岸ブロックの利便性を向上させることができる。
【0018】
第4の発明によれば、3本の枝部の基部を直に連結して一体化する場合に比べて、枝部の連結部分の強度がより優れた護岸ブロックを提供できる。
この結果、第4の発明を用いて躯体構造を形成し、それを用いて護岸構造を形成した際に、護岸構造自体の強度を高めることができる。
【0019】
第6の発明によれば、護岸構造を躯体構造のみを用いて護岸構造を形成する場合に比べて、より強度と耐久性に優れ、かつ自然の景観に馴染む護岸構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施例1に係る護岸ブロック1Aの斜視図である。
図2図1中の符号Pで示す方向から見た矢視図である。
図3】実施例1に係る護岸ブロック1Aの斜視図である。
図4】実施例1に係る躯体構造5Aの部分斜視図である。
図5】実施例1に係る躯体構造5Bの部分斜視図である。
図6】実施例1に係る躯体構造5Cの部分斜視図である。
図7】実施例1に係る躯体構造5Dの部分斜視図である。
図8】実施例1に係る護岸構造7A及び護岸構造7Bの断面図である。
図9】実施例1に係る護岸構造7Cの断面図である。
図10】実施例1に係る護岸構造7Dの断面図である。
図11】実施例1に係る護岸構造7Eの断面図である。
図12】実施例2に係る護岸ブロック1Bの斜視図である。
図13図12中の符号Qで示す方向から見た矢視図である。
図14】実施例2に係る護岸ブロック1Bの斜視図である。
図15】実施例2に係る躯体構造5Eの部分斜視図である。
図16】実施例2に係る躯体構造5Fの部分斜視図である。
図17】実施例2に係る躯体構造5Gの部分斜視図である。
図18】実施例2に係る護岸構造7Fの断面図である。
図19】実施例3に係る護岸ブロック1Cの斜視図である。
図20図19中の符号Rで示す方向から見た矢視図である。
図21】実施例3に係る躯体構造5Hの部分斜視図である。
図22】実施例3に係る躯体構造5H’の部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態に係る護岸ブロック及びそれを用いた護岸構造について図1乃至図22を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の好ましい実施例の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【実施例1】
【0022】
本発明の実施例1に係る護岸ブロックついて図1乃至図11を参照しながら説明する。
(実施例1の基本構成について)
実施例1に係る護岸ブロックの構造について説明する。
図1に示すように、実施例1に係る護岸ブロック1Aは、六角柱状でコンクリート製の幹部4の周側面上に、同じく六角柱状でコンクリート製の3本の枝部21~22が放射状にかつ等角度毎(120°毎)に突設されるとともに、それぞれの枝部21~22の梢端2bに、各枝部21~22の軸心方向に対して直交する方向に配され、かつ六角柱状でコンクリート製の脚部3が一体に固設されたものである。
さらに、実施例1に係る護岸ブロック1Aは、図2に示すように、3本の枝部21~22のうちの1本(枝部21)の、幹部4の軸心方向における連結位置が、枝部21~22の太さD1分だけ他の枝部22の連結位置と異なっている。
つまり、3本中2本の枝部22は、脚部3の軸心方向中心位置に枝部22の梢端2bが接続される一方、残りの1本の枝部21は、脚部3の軸心方向中心位置から太さD1分だけずれた位置に枝部21の梢端2bが接続されている。
また、実施例1に係る護岸ブロック1Aにおける3本の脚部3の軸心方向長さは所望の長さに揃っている。
このため、護岸ブロック1Aを、3本の脚部3の軸心方向を鉛直方向に配しながら水平な設置面100上に載置した際、枝部21~22の軸心は全て水平又は略水平になる。
【0023】
上述のような構造を有する実施例1に係る護岸ブロック1Aは、換言すると、枝部21の梢端2b寄りに外形がT字状の掛止構造81を、また枝部22の梢端2b寄りに外形がT字状の掛止構造82を、それぞれ備えているといえる。
つまり、掛止構造81は、枝部21と脚部3の連結体であり、掛止構造82は、枝部22と脚部3の連結体である。
なお、後段に示す図では、掛止構造81及び掛止構造82の符号を必ずしも記入していない。
【0024】
また、実施例1に係る護岸ブロック1Aは、図1及び図2に示す状態の上下を反転させて使用することができる。つまり、図1及び図2に示す状態において、3本の脚部3の鉛直上方側に配される端面で護岸ブロック1Aの荷重を支えるように設置することができる。
あるいは、図3に示すように、護岸ブロック1Aは、隣り合う2本の脚部3の側面を設置面100に接触させながら設置面100上に設置して使用してもよい。つまり、2本の脚部3の側面で護岸ブロック1Aの荷重を支えるように設置して使用することもできる。
【0025】
(実施例1の躯体構造について)
複数の護岸ブロック1Aを互いに掛止して形成した躯体構造について図4乃至図7を参照しながら説明する。
実施例1に係る躯体構造5Aは、図4に示すように、設置面100上に3本の脚部3を起立状に配しながら設置した一の護岸ブロック1Aの枝部22に、同様に配置した他の護岸ブロック1Aの枝部21と脚部3からなる掛止構造81を掛止することを繰り返して、複数の護岸ブロック1Aを連係して一体化したものである。
【0026】
図4では、躯体構造5Aを構成する複数の護岸ブロック1Aを直線状に配置した場合を示しているが、一の護岸ブロック1Aの枝部22の周側面上における、他の護岸ブロック1Aの掛止構造81の掛止位置を適宜変えることで、護岸ブロック1A同士の配置を適宜調整することができる。つまり、複数の護岸ブロック1Aを連係して形成される躯体構造5Aの外形を、曲がった状態や屈曲した状態にすることができる(図示せず)。
【0027】
さらに、図4に示す躯体構造5Aでは、一の護岸ブロック1Aにおいて他の護岸ブロック1Aの掛止構造81が掛止されていない枝部22に、別の護岸ブロック1Aの掛止構造81を掛止することもできる。
この場合、設置面100上に、複数の護岸ブロック1Aを網目状に連係して一体化した躯体構造5A(図示せず)を形成することができる。
【0028】
また、図4に示す躯体構造5Aでは、一の護岸ブロック1Aの枝部22に、他の護岸ブロック1Aの掛止構造81を掛止する場合を例に挙げて説明しているが、掛止構造81の掛止対象を枝部22に限定する必要はない。
具体的には、図5に示す実施例1に係る躯体構造5Bは、一の護岸ブロック1Aの枝部22に他の護岸ブロック1Aの掛止構造82を掛止したり、一の護岸ブロック1Aの枝部21に他の護岸ブロック1Aの掛止構造81を掛止したり、あるいは一の護岸ブロック1Aの枝部21に他の護岸ブロック1Aの掛止構造82したりして、複数の護岸ブロック1Aを連係して一体化したものである。
この場合、先の図4に示す躯体構造5A等のように、全ての護岸ブロック1Aの脚部3の端面が設置面100に接触した状態にはならないが、躯体構造5Bの機能に遜色はない。
さらに、図5に示す躯体構造5Bでは、その鉛直上方側から護岸ブロック1Aを重ねるよう順次追加していくことで、鉛直方向における厚みがより大きい躯体構造5B(図示せず)を形成することができる。
なお、このような手法は特に川床や海底に躯体構造5Bを形成するのに適している。
【0029】
また、先の図3に示すように、2本の脚部3の側面で護岸ブロック1Aの荷重を支えるようにして設置面100上に設置した護岸ブロック1Aを用いて躯体構造を形成することもできる。
具体的には、図6に示す実施例1に係る躯体構造5Cは、一の護岸ブロック1Aにおいて設置面100側に配される枝部22に、他の護岸ブロック1Aの設置面100側に配される掛止構造81を掛止することを繰り返して、複数の護岸ブロック1Aを連係して一体化したものである。
なお、図6に示す躯体構造5Cは、換言すると、先の図4に示す躯体構造5Aにおける紙面正面側に配される面を、設置面100上に載置したものであるといえる。
【0030】
さらに、設置面100上に脚部3を起立状に配した護岸ブロック1A(図1及び図2を参照)と、2本の脚部3の側面で護岸ブロック1Aの荷重を支えるようにして設置面100上に設置した護岸ブロック1A(図3を参照)を組み合わせて実施例1に係る躯体構造を形成することもできる。
具体的には、図7に示す実施例1に係る躯体構造5Dは、先の図4に示す躯体構造5Aを構成する任意の護岸ブロック1Aの所望の脚部3に、2本の脚部3の側面で護岸ブロック1Aの荷重を支えるように設置面100上に設置した護岸ブロック1A(図3を参照)の掛止構造81又は掛止構造82掛止することで、これらを連係して一体化したものである。
この場合、より複雑な立体構造を有する躯体構造5Dを形成することができる。
【0031】
なお、図4乃至図7に示す躯体構造5A~5Dはいずれも、躯体構造の一部を抜粋して示しているに過ぎず、実際にはさらに多くの護岸ブロック1Aが連係されて一体化されている。なお、後段に図示する他の躯体構造においても同様である。
【0032】
さらに、既存の川床、海底、法面、海岸及び川岸等の表面を、実施例1に係る躯体構造(例えば躯体構造5A~5D等)のみで被覆して保護して、護岸構造として用いることができる。
あるいは、実施例1に係る躯体構造(例えば躯体構造5A~5D等)を用いて川床、海底、法面、海岸及び川岸等を新たに形成したものを、護岸構造として使用することもできる。
【0033】
(実施例1の護岸ブロック1Aによる作用効果について)
実施例1に係る護岸ブロック1Aは、護岸ブロック1Aを構成する全ての枝部21~22が、その梢端2b寄りに掛止構造81又は掛止構造82を備えている。
このため、一の護岸ブロック1Aに他の護岸ブロック1Aを掛止してこれらを連係して一体化することが極めて容易である。
その一方で、複数の護岸ブロック1Aを連係して躯体構造(例えば躯体構造5A~躯体構造5D等)を一旦形成した後は、そこから任意の護岸ブロック1Aを離間させることが難しい。
つまり、一端形成された実施例1に係る躯体構造から護岸ブロック1Aを分離することが容易でないので、形成した後に分解し難い躯体構造を形成することができる。
【0034】
また、実施例1に係る躯体構造では、一の護岸ブロック1Aにおける他の護岸ブロック1Aの掛止位置が固定されないことで、躯体構造自体が柔軟性を有する。
よって、実施例1に係る躯体構造では、この躯体構造に外力が作用した際、この外力を、掛止構造81又は掛止構造82の掛止位置が僅かずつずれることで緩和することができる。
この結果、実施例1に係る護岸ブロック1Aを用いることで、大きな外力が作用した際に、損傷又は破損し難い躯体構造を形成することができる。
つまり、実施例1に係る躯体構造を用いて護岸構造を形成した場合で、かつ地震や津波の発生に伴って大きな外力が護岸構造に作用した際に、この護岸構造が破損又は損傷するリスクを低減することができる。
この結果、実施例1に躯体構造を用いることで、川床、海底、法面、海岸又は川岸等の強度が高まる。
【0035】
(実施例1の護岸ブロックの変形例について)
<枝部の連結構造について>
先の図1乃至図3に示す実施例1に係る護岸ブロック1Aでは、幹部4を介して3本の枝部21~22を放射状にかつ一体に連結する場合を示しているが、幹部4を用いることなく3本の枝部21~22を直接連結して一体化してもよい。
他方、実施例1に係る護岸ブロック1Aにおいて、3本の枝部21~22を、幹部4を介して一体に連結した場合は、護岸ブロック1Aの強度が高まる。つまり、実施例1に係る躯体構造の強度が高まる。
よって、護岸ブロック1Aが幹部4を備える場合は、より強度が優れた実施例1に係る護岸構造を提供できる。
【0036】
<枝部及び脚部の形状について>
先の図1乃至図3には、実施例1に係る護岸ブロック1Aの枝部21~22及び脚部3の外形が六角柱状である場合を例に挙げて説明しているが、これらは必ずしも六角柱状である必要はなく、円柱や四角柱あるいは他の多角柱等のような太さが一様又は略一様な棒状であればよい。
いずれの場合も、枝部21~22及び脚部3の外形が六角柱状である場合と同様の作用効果を奏する。
【0037】
<掛止構造の形状について>
実施例1に係る護岸ブロック1Aでは、枝部21又は枝部22の梢端2bに、外形がT字状の掛止構造81又は掛止構造82を形成する場合を例に挙げて説明しているが、掛止構造81又は掛止構造82の外形は図示しないL字状でもよい。
この場合は、掛止構造81又は掛止構造82の外形がT字状である場合に比べて、護岸ブロック1A同士を連係可能な護岸ブロック1Aの配置数が減ってしまい、そのせいで、複数の護岸ブロック1Aを用いて形成可能な躯体構造の立体形状のバリエーションの数が減るものの、例えば図4に示す躯体構造5Aや、図6に示す躯体構造5Cを形成する場合は何ら遜色がない。
【0038】
<実施例1に係る躯体構造と埋設材を用いた護岸構造について>
実施例1に係る躯体構造(例えば躯体構造5A~5D等)のみを用いて護岸構造を形成してもよいが、実施例1に係る躯体構造と埋設材を用いて護岸構造を形成してもよい。
ここで、図8乃至図11を参照しながら、実施例1に係る躯体構造を用いて形成した護岸構造の他の例について説明する。
【0039】
図8に示す実施例1に係る護岸構造7Aは、設置面100である地表面又は川床又は海底に、複数の護岸ブロック1Aを連係して形成した鎖状又は網目状の躯体構造5Aを設置し、この後、躯体構造5Aを埋設材6で埋めたものである。
なお、埋設材6としては、例えば土砂、砕石又は廃コンクリート、あるいはこれらから選択される2種類以上の組み合わせ等を用いることができる。
さらに、図8に示すように、設置面100上に護岸構造7Aを複数層積層したものを護岸構造(実施例1に係る護岸構造7B)としてもよい。
【0040】
また、図9に示す実施例1に係る護岸構造7Cは、設置面100である地表面又は川床又は海底に、複数の護岸ブロック1Aを互いに連係しながら敷設しつつ、必要に応じて、その鉛直上方側にも護岸ブロック1Aをランダムに積み重ねつつ互いに連係して一体化して躯体構造5Bを形成し、この後、躯体構造5Bを埋設材6で埋めたものである。
なお、図9に示す護岸構造7Dでは、躯体構造5Bに代えて、図7に示す躯体構造5Dを用いてもよい。
【0041】
また、図10に示す実施例1に係る護岸構造7Dは、設置面100である地表面又は川床又は海底に、複数の護岸ブロック1Aを連係して形成した鎖状の躯体構造5Cで縁状部又は周縁部を形成した後、この縁状部の背後に、又は周縁部の内側に、埋設材6を配置したものである。
さらに、護岸構造7Dは、縁状部又は周縁部を構成する躯体構造5Cを、埋設材6中に一部又は全部を埋めたものでもよい。なお、図10では、縁状部又は周縁部を構成する躯体構造5Cの全部を埋設材6中に埋めた状態を示している。
【0042】
加えて、図11に示す実施例1に係る護岸構造7Eは、設置面100である地表面又は川床又は海底に、複数の護岸ブロック1Aを連係して形成した鎖状の躯体構造5Cで縁状部又は周縁部を形成するとともに、この縁状部の背後、又は周縁部の内側に、複数の護岸ブロック1Aを水平方向に連係して形成した鎖状又は網目状の躯体構造5Aを配置し、この後、躯体構造5C及び躯体構造5Aを埋設材6で埋めたものである。
なお、護岸構造7Eにおける躯体構造5Aに代えて、躯体構造5Bを用いてもよい。
【0043】
上述のような実施例1に係る護岸構造(例えば護岸構造7A~7E等)では、時間の経過とともに埋設材6が徐々に締め固まっていき、これにともない埋設材6と実施例1に係る躯体構造とが徐々に一体化していき、最終的に強固な護岸構造を形成することができる。
しかも、実施例1に係る護岸構造(例えば護岸構造7A~7E等)は、その外観があたかも埋設材6のみにより形成されているかのように見える。
つまり、実施例1に係る護岸構造では、人工物である護岸ブロック1Aが護岸構造の表面に全く又はほとんど露出しない。
したがって、実施例1に係る護岸構造によれば、周囲の景観に馴染みやすい護岸構造を形成することができる。
【実施例2】
【0044】
本発明の実施例2に係る護岸ブロックについて図12乃至図18を参照しながら説明する。
(実施例2の基本構成について)
実施例2では、前述した実施例1に係る護岸ブロック1Aと共通する構成については同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成について以下に説明する。
図12乃至図14に示すように、実施例2に係る護岸ブロック1Bを構成する全ての枝部21~22及び全ての脚部3は角柱状(例えば六角柱状)である。
さらに、実施例2に係る護岸ブロック1Bの脚部3の両端部分は、その他の領域に比べて外側に張り出す形状になっている。すなわち、脚部3の端部3a寄りの位置には、脚部3の太さがD1からD2(ただし、D1<D2)に変わる段差状の引っ掛け部3bが設けられている。
【0045】
引っ掛け部3bを備えた実施例2に係る護岸ブロック1Bによれば、複数の実施例2に係る護岸ブロック1Bを連係して躯体構造を形成する際、一の護岸ブロック1Aのそれぞれの枝部21~22の周側面に形成される角部2c、又は脚部3の周側面に形成される角部3cに、他の護岸ブロック1Aの脚部3の端部3a寄りに形成される引っ掛け部3bを掛止することで、複数の護岸ブロック1Bを連係して一体化することができる。
つまり、実施例2に係る護岸ブロック1Bは、全ての枝部21~22の梢端2b寄りに、掛止構造81又は掛止構造82を備え、なおかつ全ての脚部3の軸心方向端部のそれぞれに、別の掛止構造である引っ掛け部3bを備えている。
【0046】
(実施例2の躯体構造について)
実施例2に係る護岸ブロック1Bを用いることで、図15乃至図18に示すような実施例2に係る躯体構造を形成することができる。
図15に示す実施例2に係る躯体構造5Eは、先の図5に示す躯体構造5Aと、先の図6に示す躯体構造5Cを連係して一体化したものである。
つまり、躯体構造5Eは、躯体構造5Aを構成する護岸ブロック1Bの枝部22の周側面に形成される角部2cに、躯体構造5Cを構成する護岸ブロック1Bの脚部3に形成される引っ掛け部3bを掛止することで、これらを一体化したものである。
このように、実施例2に係る護岸ブロック1Bを用いることで、掛止構造81や掛止構造82を用いることなく複数の護岸ブロック1Bを連係させることができる。
ただし、脚部3に形成される引っ掛け部3bを用いる場合の連係力は、掛止構造81や掛止構造82を用いて護岸ブロック1B同士を連係する場合の連係力よりも弱い。
なお、躯体構造5Eにおける躯体構造5Aに代えて躯体構造5Bを用いることもできる(図示せず)。
【0047】
また、図16に示す躯体構造5Fは、一の護岸ブロック1Bの枝部21又は枝部22に、他の護岸ブロック1Bの掛止構造81又は掛止構造82を掛止することで複数の護岸ブロック1Bを連係して一体化しつつ、さらに一の護岸ブロック1Bの枝部21又は枝部22の周側面に形成される角部2cに、他の護岸ブロック1Bの脚部3に形成される引っ掛け部3bを掛止して複数の護岸ブロック1Bを連係して一体化したものである。
この場合、図16に示すように、躯体構造5Fの立体形状を、平坦でない設置面100’に沿った形状にすることができる。
【0048】
なお、図15に示す躯体構造5Eや、図16に示す躯体構造5Fは、それのみを護岸構造として使用できるだけでなく、躯体構造5Eや躯体構造5Fと埋設材と組み合わせて、つまり躯体構造5Eや躯体構造5Fを埋設材6で埋めたものを護岸構造として用いることができる(図示せず)。
【0049】
また、図17に示す実施例2に係る躯体構造5Gは、先の図6に示す躯体構造5Cを、鉛直方向に複数段連係して一体化したものである。
図17に示す躯体構造5Gは、実施例2に係る護岸ブロック1Bを用いて以下に示す手順により形成することができる。
まず、図17及び図18に示すように、設置面100である地表面又は川床又は海底に、複数の護岸ブロック1Bを用いて先の図6に示す躯体構造5Cを形成する(ステップS1)。
次に、設置面100上に形成した躯体構造5Cの背面側に、つまり図18中に示す躯体構造5Cの設置位置を基準とした紙面左側に埋設材6を盛って、躯体構造5Cにおいて鉛直方向最上位置に配される脚部3の側面の鉛直下方側に新たに設置面101を形成する(ステップS2、図17及び図18を参照)。
この後、設置面101上に新たに複数の護岸ブロック1Bを用いて、先の図6に示す躯体構造5Cを形成する(ステップS3)。
さらにこの後、設置面101上に新たに形成した躯体構造5Cの背面側に埋設材6を盛る(ステップS4)。
なお、設置面100上に躯体構造5Cを2段以上連係させた躯体構造5Gを形成する場合は、上述のステップS1~S3を行った後、ステップS2~S4をこの順序で所望回数だけ繰り返せばよい。その際、ステップS4では、新たな載置面(設置面101に対応する載置面)が形成される。
【0050】
また、上述のステップS3を行う際、設置面100上に載置された護岸ブロック1Bにおいて、鉛直方向最上位置に配される脚部3に形成される引っ掛け部3bに、設置面101上に設置される護岸ブロック1Bにおいて、設置面101に接触しながら配される脚部3に形成される引っ掛け部3bを掛止しながら、設置面101上に護岸ブロック1Bを配置すればよい。
つまり、設置面100上に設置された護岸ブロック1Bにおいて、鉛直方向最上位置に配される脚部3の端部3a側の幅D2有する部分を、設置面101上で隣り合って配される2つの護岸ブロック1Bにおいて、設置面101に接触しながら配される脚部3の端部3a側の幅D2有する部分で挟みながら、設置面101上に護岸ブロック1Bを直線状に配置すればよい(図18を参照)。
【0051】
なお、躯体構造5Gは、図17に示すように、各段を構成する躯体構造5Cを裸出させたまま護岸構造7Eとして使用してもよい。あるいは、図18に示すように、各段を構成する躯体構造5Gを全て埋設材6中に埋めた状態で護岸構造7Eとして使用してもよい。
【実施例3】
【0052】
本発明の実施例3に係る護岸ブロックについて図19乃至図22を参照しながら説明する。
(実施例3の基本構成について)
実施例3では、前述した実施例1に係る護岸ブロック1Aと共通する構成については同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成について以下に説明する。
実施例3に係る護岸ブロック1Cは、図19及び図20に示すように、軸方向長さを1.5倍にした幹部4の周側面に、2本ある枝部22のうちの1本を枝部23として、残りの1本の枝部22の連結位置を基準にして枝部21~23の太さD1分だけ枝部21が配されない側にずらして取設したものである。
つまり、実施例3に係る護岸ブロック1Cの枝部21~23は、幹部4の軸心方向における連結位置が、枝部21~23の太さD1分ずつ異なっている。
より具体的には、設置面100上に実施例3に係る護岸ブロック1Cの脚部3を起立させて載置した状態を側面から見た際(図20を参照)、設置面100から最も離れている枝部21と、次に離れている枝部22と、設置面100に最も近接している枝部23、のそれぞれの軸心位置は、枝部21~23の太さD1ずつ離れている。
また、実施例3に係る護岸ブロック1Cにおける3本の脚部3の軸心方向長さは、所望の長さに揃っている。
このため、水平な設置面100上に実施例3に係る護岸ブロック1Cの脚部3を起立させて載置した際、3本の枝部21~23は全て水平又は略水平になる。
【0053】
上述のような構造を有する実施例3に係る護岸ブロック1Cは、枝部21の梢端2bに外形がT字状の掛止構造81を、枝部22の梢端2bに外形がT字状の掛止構造82を、枝部23の梢端2bに外形がT字状の掛止構造83を、それぞれ備えている。
【0054】
また、実施例3に係る護岸ブロック1Cは、特に図示しないが、隣り合う2本の脚部3の側面を設置面100に接触させながら設置面100上に設置して使用してもよい。
つまり、2本の脚部3の側面で護岸ブロック1Cの荷重を支えるように設置して使用することもできる。
【0055】
(実施例3の躯体構造について)
実施例3に係る護岸ブロック1Cを用いる場合も、実施例1に係る躯体構造と同じ躯体構造(例えば躯体構造5A~5D等)を形成することができる。
さらに、実施例3に係る護岸ブロック1Cを用いる場合は、図21及び図22に示すような躯体構造を形成することができる。
図21図22に示す実施例3に係る躯体構造5H、5H’は、一の護岸ブロック1Cの枝部23に、他の護岸ブロック1Cの掛止構造81又は掛止構造82を掛止することで、あるいは一の護岸ブロック1Cの枝部22に他の護岸ブロック1Cの掛止構造81を掛止することで、これらを連係して一体化したものである。
なお、図21及び図22では、それぞれの護岸ブロック1Cを見分け易くするために、グレーのハッチングや斜線を付して隣り合う護岸ブロック1Cを区別している。
【0056】
先の実施例1に係る護岸ブロック1Aを用いて躯体構造5Aを形成する場合で、かつ躯体構造5Aを構成する全ての護岸ブロック1Aの脚部3の端面を設置面100に接触させる必要がある場合は、一の護岸ブロック1Aにおける枝部22に、他の護岸ブロック1Aにおける掛止構造81を掛止する必要がある。
また、実施例1に係る護岸ブロック1Aは、幹部4の軸心方向における取付位置が同じである枝部22を2つ備える一方、この枝部22に掛止可能な掛止構造81は1つのみである。
このため、実施例1に係る躯体構造5Aを構成する全ての護岸ブロック1Aの脚部3の端面を設置面100に接触させる必要がある場合で、かつ隣り合う2つの護岸ブロック1Aを連係する際、これらを連係できる場所は1ケ所のみである。
このため、設置面100上に護岸ブロック1Aを網目状に配置する際、護岸ブロック1Aの密度を一定以上高くすることができなかった。
【0057】
これに対して、実施例3に係る護岸ブロック1Cを用いて躯体構造5Aを形成する場合で、かつ躯体構造5Aを構成する全ての護岸ブロック1Cの脚部3の端面を設置面100に接触させる必要がある場合は、一の護岸ブロック1Cの枝部23に、他の護岸ブロック1Cの掛止構造81又は掛止構造82を掛止できる上、一の護岸ブロック1Cの枝部22に他の護岸ブロック1Cの掛止構造81を掛止することもできる。つまり、2つの隣り合う護岸ブロック1Cを連係する場合、これらを連係できる場所は2ケ所になる(図21及び図22を参照)。
したがって、実施例3に係る護岸ブロック1Cを用いる場合は、設置面100上に護岸ブロック1Cを網目状に配置する際、護岸ブロック1Aを用いる場合に比べて、護岸ブロック1Cをより高い密度で配置することができる。
【0058】
よって、実施例3に係る護岸ブロック1Cを用いる場合は、より強固な躯体構造(例えば図21及び図22に示す躯体構造5H、5H’等)を形成することができる。
この結果、実施例3に係る躯体構造のみを用いて、又は実施例3に係る躯体構造及び埋設材6を用いて、形成する護岸構造の強度を向上させることができる。
【0059】
(実施例3の護岸ブロックの変形例について)
<枝部の連結構造について>
先の図19及び図20に示す実施例3に係る護岸ブロック1Cでは、幹部4を介して3本の枝部21~23を放射状にかつ一体に連結する場合を示しているが、幹部4を用いることなく3本の枝部21~23を直接連結して一体化してもよい。
他方、実施例3に係る護岸ブロック1Cにおいて、3本の枝部21~23を、幹部4を介して一体に連結する場合は、護岸ブロック1Cの強度が高まる。つまり、実施例3に係る躯体構造の強度が高まる。
よって、護岸ブロック1Cが幹部4を備える場合は、より強度が優れた実施例3に係る護岸構造を提供できる。
【0060】
<枝部及び脚部の形状について>
先の図19及び図20では、実施例3に係る護岸ブロック1Cの枝部21~23及び脚部3の外形が六角柱状である場合を例に挙げて説明しているが、これらは必ずしも六角柱状である必要はなく、円柱や四角柱あるいは他の多角柱等のような太さが一様又は略一様な棒状であればよい。
いずれの場合も、枝部21~23及び脚部3の外形が六角柱状である場合と同様の作用効果を奏する。
【0061】
なお、実施例3に係る護岸ブロック1Cが、実施例2に係る護岸ブロック1Bと同様に、脚部3の端部3a寄りに段差状の引っ掛け部3bを有する場合は、護岸ブロック1Cを構成する枝部21~23及び3本の脚部3の外形を角柱状(例えば六角柱等)にする必要がある。
そして、実施例3に係る護岸ブロック1Cが脚部3の端部3a寄りに段差状の引っ掛け部3bを有する場合(図示せず)は、実施例2に係る護岸ブロック1Bを用いる場合と同様に、より複雑な立体形状を有する実施例3に係る躯体構造を形成することができる。
【0062】
<掛止構造の形状について>
実施例3に係る護岸ブロック1Cでは、それぞれの枝部21~23の梢端2bに、外形がT字状の掛止構造81又は掛止構造82又は掛止構造83を備える場合を例に挙げて説明しているが、掛止構造81~83の外形は図示しないL字状でもよい。
この場合、掛止構造81~83の外形がT字状である場合に比べて、護岸ブロック1C同士を連係可能な護岸ブロック1Cの配置数が減ってしまい、そのせいで、複数の護岸ブロック1Cを用いて形成可能な躯体構造の立体形状のバリエーションが減るものの、例えば図4に示す躯体構造5Aや、図6に示す躯体構造5Cを形成する場合は何ら遜色がない。
【産業上の利用可能性】
【0063】
以上説明したように本発明は、護岸ブロック同士の連係が容易で、かつ川床、海底、法面、海岸及び川岸等を強固に保護することができる護岸ブロック及びそれを用いた護岸構造であり、治水及び土木に関する技術分野において利用可能である。
【符号の説明】
【0064】
1A~1C…護岸ブロック 21~23…枝部 2a…基部 2b…梢端 2c…角部 3…脚部 3a…端部 3b…引っ掛け部 3c…角部 4…幹部 5A~5H’…躯体構造 6…埋設材 7A~7E…護岸構造 81~83…掛止構造 100、100’、101…設置面
【要約】
【課題】護岸ブロック同士の連係が容易で、かつ川床、海底、法面、海岸及び川岸等を強固に保護することができる護岸ブロックを提供する。
【解決手段】放射状に配される棒状でかつコンクリート製の3本の枝部21~22と、それぞれの枝部21~22の梢端2bに固設され、かつそれぞれの枝部21~22の軸心方向に対して直交する方向に配され、かつ棒状でコンクリート製の脚部3と、を備え、脚部3の軸心は、全ての同じ方向に配され、3本の枝部21~22のうちの1本(枝部21)の、脚部3の軸心方向における軸心位置が、枝部21~22の太さ分だけ他の2本の枝部22の軸心位置と異なっている護岸ブロック1Aによる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22