(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】食品及び栄養補助食品としてのスクロースイソメラーゼ
(51)【国際特許分類】
A23L 33/10 20160101AFI20241025BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20241025BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20241025BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241025BHJP
A61K 38/52 20060101ALI20241025BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20241025BHJP
C12N 9/90 20060101ALN20241025BHJP
C12N 15/61 20060101ALN20241025BHJP
【FI】
A23L33/10
A61P3/10 ZNA
A61P3/04
A61P43/00 111
A61K38/52
A23L2/00 F
A23L2/52
C12N9/90
C12N15/61
(21)【出願番号】P 2021506641
(86)(22)【出願日】2019-08-21
(86)【国際出願番号】 EP2019072310
(87)【国際公開番号】W WO2020038966
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2022-08-22
(32)【優先日】2018-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】DSM IP ASSETS B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】ブルーインズ, マイク, ヨハンナ
(72)【発明者】
【氏名】デッカー, ペトルス, ジャコバス, テオドルス
(72)【発明者】
【氏名】ノーイジェンズ, イェルーン, アードリアーニュス, ヨハネス
【審査官】高山 敏充
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/071429(WO,A1)
【文献】特開平09-009958(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103501636(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0010717(KR,A)
【文献】FEBS Letters,2009年,Vol. 583,pp.1964-1968
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトを含む動物が、食品、飲料又は飼料と共に経口摂取することによって、前記動物の腸管内において前記食品、飲料又は飼料のグリセミック指数を低下させる用の、スクロースイソメラーゼを含む栄養補
助組成物であって、
前記食品、飲料又は飼料が、スクロースを含み、
前記スクロースイソメラーゼが、配列番号1
、3、4又は6に対して少なくとも90
%の配列同一性を有する、
栄養補助組成物。
【請求項2】
ヒトに適している、請求項1に記載の
栄養補助組成物。
【請求項3】
コンパニオン動物に適している、請求項1に記載の
栄養補助組成物。
【請求項4】
前記スクロースイソメラーゼが、配列番号4に対して少なくとも90
%の配列同一性を有する、請求項1に記載の
栄養補助組成物。
【請求項5】
ヒトを含む動物が、食品、飲料又は飼料と共に経口摂取することによって、前記動物の腸管内において前記食品
、飲料又は飼料のグリセミック指数を低下させ
る用の、スクロースイソメラーゼを含む医薬組成物であって、
前記食品、飲料又は飼料が、スクロースを含み、
前記スクロースイソメラーゼが、配列番号1
、3、4又は6に対して少なくとも90
%の配列同一性を有する、医薬組成物。
【請求項6】
スクロース及びスクロースイソメラーゼを含む
、経口摂取用の乾燥
組成物であって、
前記スクロースイソメラーゼが、配列番号1
、3、4又は6に対して少なくとも90
%の配列同一性を有
し、
前記乾燥組成物がヒトを含む動物に摂取された後、前記動物の腸管内において前記乾燥組成物のグリセミック指数が低下する、乾燥
組成物。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、ヒト及び動物の両方のための栄養補助食品としてのスクロースイソメラーゼの使用に関する。スクロースイソメラーゼは、それが消費された後に食品中のスクロースの量を酵素的に低減し得、したがって食品のグリセミック指数を低下させ得る。スクロースイソメラーゼサプリメントは、血糖を低下させ、消費される食品及び/飲料のグリセミック指数を低下させ、且つ体重を管理するか又は減らすのに特に有益である。
【0002】
[発明の背景]
高い血中グルコースは、世界的な疾病負担の原因において非常に高い順位に位置し、肥満症及び2型糖尿病を引き起こし、且つそれらをもたらし得る。糖又はデンプンのような急速に吸収される炭水化物を含有する食品及び飲料は、血中グルコースの急速な上昇を引き起こし、次いでインスリン放出のスパイクが起こり、血中グルコースが急速に減少する。かかる炭水化物を欠く食品及び飲料は、インスリン放出の急速なスパイクなしに、血中グルコースのゆっくりとした低い上昇を与える。血中グルコースにおけるこの反応は、食品のグリセミック指数(GI)として表され、グルコース含有参照又は白パンの摂取に対する反応(100に設定される)に対して表される。多くの食品に関して、GIが決定されている。ゆっくりと消化、吸収及び代謝される、炭水化物食品をベースとする食事(即ち低GI食)は、高GI食よりも優れたインスリン感受性を付与することが分かっている。低GI食は、高GI食と比較して、2型糖尿病及び循環器疾患のリスクの低減と関連する。満腹、体重維持及び食事に関連する疾患の予防における高GI食と比較した低GIの役割が示唆されている。グリセミック負荷(GL)は、食品中の利用可能な炭水化物のグラム数に食品のGIを掛け、次いで100で割ることによって計算される。
【0003】
スクロースは、食事中に豊富であり、食事におけるすべての炭水化物の約35~40%を占める。グリセミック負荷を低下させることを望む人々に対する課題は、好まれる多くの甘い食品及び飲料が多量のスクロースを含有することである。例えば、一部のキャンディーバーは、最大で30グラムのスクロースを含有し(50重量%);コーラ1缶(330cc)は、39グラムのスクロースを含有し;チョコレートミルクは、450cc中に58グラムのスクロースを含有し;アイスクリームは、28重量%のスクロースを含有する場合が多い。しかしながら、これらの食品中の糖含有量の低減は、甘味、口あたり及び甘味特性に負の影響を及ぼすことが多い。かかる製品におけるスクロースを低GIの他の糖(例えば、タガトース、アルロース又はパラチノース)、糖アルコール(例えば、ソルビトール、マンニトール又はキシリトール)又は高甘味度甘味料(例えば、アスパルテーム、スクラロース又はステビア)で置き換えると、甘味が少ない最終生成物が生じるか、又は食品若しくは飲料の口触り特性及び/若しくは風味に負の影響を及ぼし、それによって製品の甘味特性が低減される。したがって、かかるスクロース代替物は、食品で頻繁には使用されておらず、その使用は、主に加糖飲料に集中している。
【0004】
イソマルツロースは、商品名パラチノース(商標)でベネオ社(Beneo)から食品産業に市販されており、糖代替物として食品で使用されている。パラチノース(商標)は、小腸で完全に利用可能であるが、4~5倍遅く加水分解され、血糖応答が低くなり、且つインスリンレベルが低くなる。スクロースをパラチノース(商標)で置き換えることにより、インスリンピークが低くなり、運動での脂肪燃焼が増加することが示されている。体重維持、その非う蝕性、スポーツにおける持久運動能力の向上、妊娠糖尿病の予防、認知機能の持続及び高齢者の代謝プロファイルの改善のために、べネオ社によってパラチノース(商標)が市販されている(Beneo-institute,2017 http://www.beneo.com/Expertise/BENEO-Institute/News Papers/BENEO paper palatinose US 2Q17Q8v1 web US Letter 1.pdf)。
【0005】
トレハルロース(特許文献において「Vitalose」とも呼ばれる)に関して、腸管スクラーゼによってもゆっくりと消化されるため、同様な利点が考えられるが、入手可能な臨床データが少ない。血中グルコースレベル及びインスリン反応は、同様であるか、又はイソマルツロースよりもわずかに穏やかでさえある(欧州特許第2418971B1号明細書に報告されている)。
【0006】
小腸内のスクラーゼ/アミラーゼの活性に対するこれらの糖の抑制効果が文献(Kashimura&al,2008 J.Agric.Food Chem.56:5892-5898)に示唆されているが、この確固たる証拠は、依然としてない。かかる抑制効果は、スクロース及びデンプンの転化を遅くし、それによってグリセミック負荷がさらに低減され得る。したがって、イソマルツロース及び/又はトレハルロースの消費は、デンプン含有食品と合わせた場合、腸内のスクラーゼ/アミラーゼ活性を抑制することにより、グリセミック負荷の低減に対してさらなる利点を有し得る。
【0007】
食品及び飲料におけるイソマルツロース又はトレハルロースのいずれかの使用に伴う1つの問題は、これらの糖の甘味がグラム基準当たりのスクロースの甘味よりもかなり少ないことである。したがって、スクロースをこれらのスクロース異性体で置き換えるには、食品又は飲料の組成の劇的な変化が必要であろう。少ない甘味は、例えば、最終製品の風味に影響を及ぼし得る追加の人工甘味料を添加することによって補わなければならない。また、イソマルツロースは、スクロースと比べて比較的高価であり、したがって食品又は飲料製品にそれを添加しない経済的な理由があり得る。
【0008】
したがって、摂取後に高血糖応答を引き起こさない甘味の甘い食品及び飲料が社会で必要とされている。意識が高い消費者は、スクロース含有食品/飲料を摂取した後の高グリセミック指数及び血糖上昇の予防を望み得る。さらに、胃内での高グリセミック指数炭水化物の低グリセミック指数炭水化物への転化は、1型及び2型糖尿病の人々における血糖コントロールに臨床的に有意な利点を有する。グリセミック指数低下栄養療法は、2型糖尿病の人々の糖化ヘモグロビン(A1C)を1.0~2.0%低減し得、糖尿病ケアの他の成分と共に使用された場合、臨床的及び代謝的結果をさらに改善し得る。
【0009】
[発明の詳細な説明]
本発明者らは、意外にも、栄養補助食品として又は医療用食事の一部若しくは医療用補助食品として酵素、スクロースイソメラーゼを使用すると、酵素と共に消費された場合に甘い食品及び/又は飲料のスクロース含有量が低くなることを見出した。したがって、栄養補助食品として又は乾燥食品若しくは飲料の一部(プレミックス等)として使用されるスクロースイソメラーゼは、消費前に食品又は飲料の組成及び特性に影響を及ぼすことなく、腸管内のかかる食品のグリセミック指数を低下させるであろう。結果として、栄養補助食品としてのスクロースイソメラーゼは、食習慣を変えることなく、2型糖尿病及び心血管疾患のリスクを低下させるために使用され得る。また、グリセミック負荷を低下させることにより、栄養補助食品としてのスクロースイソメラーゼは、体重維持のためのプログラムに適合し得、糖分の多い食事に関連する疾患を予防し得る。栄養補助食品としてのスクロースイソメラーゼは、糖の取り込みを遅らせることにより、スポーツ栄養にも有用であり得る。スクロースイソメラーゼは、食事代替品の炭水化物含有量を乱すことなく、低炭水化物食が推奨又は処方される糖尿病性又は前糖尿病性患者のための即時混合可能な代替品にも含まれ得る。
【0010】
したがって、本発明の一実施形態は、スクロースを含む食品又は飲料を消費する、ヒトを含む動物におけるインスリンレベルを低減する方法であって、食品若しくは飲料の消費前に又は食品若しくは飲料の消費に応じて、有効量のスクロースイソメラーゼ栄養補助剤、栄養補助食品又は薬剤を動物又はヒトに投与することを含む方法である。本発明の他の実施形態は、ヒトを含む動物によって消費されるスクロースを含む食品又は飲料のグリセミック指数を低下させる方法であって、栄養補助剤、栄養補助食品又は薬剤の形態でスクロースイソメラーゼを動物又はヒトに投与することを含む方法である。本発明の他の実施形態は、食品又は飲料のグリセミック指数を低下させる、栄養補助食品、乾燥及び/又は粉末食品若しくは飲料又は薬剤を製造するためのスクロースイソメラーゼの使用である。本発明の他の実施形態は、食品又は飲料のグリセミック指数を低下させる、栄養補助食品としてのスクロースイソメラーゼである。
【0011】
新たな研究から、アスリートの持久力の持続に重要であるのは、いわゆる「クイック炭水化物」の消費にあるのではなく、血中グルコースの形態でエネルギーの急増を提供する代わりに、血糖のバランスをとる「スロー炭水化物」にあり得ることが示唆されている。本発明の目的では、「持久的エクササイズ」とは、呼吸及び心拍数を増加させる、ウォーキング、ジョギング、スイミング又はバイク乗りなどのエクササイズを意味する。したがって、本発明の他の実施形態は、持久的エクササイズを実施するアスリートの能力を高めるために、長時間にわたって糖の吸収を遅くするか又は持続する方法であって、持久的エクササイズ中、スクロースを含有する食品又は飲料も消費する、持久的エクササイズを行う人に有効量のスクロースイソメラーゼを投与することを含む方法である。本発明の他の実施形態は、アスリートの持久力の持続を高める方法であって、スクロースを含有する食品又は飲料も消費する、運動競技の持久的活動に参加する人に有効量のスクロースイソメラーゼを投与することを含む方法である。本発明の他の実施形態は、持久的エクササイズを行う人の能力を高めるためのスクロースイソメラーゼの使用である。
【0012】
本発明の他の実施形態は、エネルギー放出を持続させ、且つスクロース含有食事後に血中グルコース上昇及びいわゆる食後の「眠気」を最小限にするために、糖の吸収を持続させ、且つ/又は遅くする方法であって、スクロースを含有する食品も消費する健康な又は(前)糖尿病の人に有効量のスクロースイソメラーゼを投与することを含む方法である。これは、人が食事(昼食など)を摂り、摂取した後に数時間にわたり、機敏さを維持することを望み、且つ嗜眠状態の時間を避けることを望む状況において特に有益である。
【0013】
本発明の他の実施形態は、体重を減らすか又は体重減少を維持することなど、動物を補助する方法であって、有効量のスクロースイソメラーゼを動物又はヒトに投与することを含む方法である。
【0014】
一実施形態において、スクロースイソメラーゼは、ヒトの栄養法に用いられる。
【0015】
他の実施形態において、スクロースイソメラーゼを使用して、スクロースを消費し得る動物、好ましくはコンパニオン動物(ペットとして通常飼われる、ネコ、イヌ、ウマ及び家畜ブタ)に利益を与える。コンパニオン動物は、多くの場合、肥満の傾向があり、その悪影響を受ける傾向がある。本発明のスクロースイソメラーゼは、高価且つ不便なインスリン注射に依存することなく、コンパニオン動物における糖尿病、体重増加及び関連する代謝異常を対処する方法を付与する。
【0016】
スクロースイソメラーゼは、スクロース含有食品又は飲料を摂取する前に少なくとも1日1回摂取することが好ましい。スクロースイソメラーゼは、スクロース含有食品又は飲料を摂取する直前(即ち摂取する1時間未満前、より好ましくは摂取する30分未満前)に摂取されることが特に好ましい。スクロース含有食品又は飲料を摂取する直前又は摂取中にスクロース含有食品又は飲料が摂取されることが特に好ましい。他の実施形態において、スクロースイソメラーゼは、食事を食べて2時間以内に摂取される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施例1に詳述される、糖を分離するために使用されるHPLCの測定値である。
【0018】
スクロースイソメラーゼは、スクロースからのイソマルツロースの工業的製造で使用される。本発明者らの認識では、サプリメントとしてのスクロースイソメラーゼの使用の記述はされておらず、スクロースイソメラーゼは、錠剤又は他の適切な製剤の製造に関与するプロセス及びヒトの消化プロセスの両方に耐えることができ、そのため、胃及び/又は消化管内で依然として活性なままである。スクロースイソメラーゼは、当技術分野で公知であるが、その活性は、実験用緩衝剤のコンテクストで確認されているのみである。
【0019】
スクロースイソメラーゼは、スクロース(2-O-α-D-グルコピラノシル-D-フルクトース)をより低糖質の糖イソマルツロース(6-O-α-D-グルコピラノシル-D-フルクトース)及び/又はトレハルロース(1-O-α-D-グルコピラノシル-D-フルクトース)(Mu&al(2014)Appl Microbiol Biotechnol 98:6569-6582)に転化する。
【0020】
実施例4~6に示すように、異なるメカニズムを介しているが、スクロースに対して作用する他の酵素、グリコシルトランスフェラーゼは、ヒト消化器系を模倣した条件にかけられた場合に不活性であることが判明した。したがって、スクロースを基質として使用する酵素は、栄養補助食品として使用するのに適していないことが予想可能である。
【0021】
本発明のスクロースイソメラーゼは、摂取された糖に対して作用するのに有効な量が利用可能であるように十分に適切に配合及び消化プロセスに耐えるために十分に強いことを条件として、いずれの供給源にも由来し得る。スクロースイソメラーゼの少なくとも5つの当技術分野で認識されるクラスがある(Goulter et al 2012 Enz and Microb Technol 50:57-64を参照されたい):
グループI:セラチア・プリムシカ(Serratia plymuthica)及びプロタミノバクター・ラブラム(Protaminobacter rubrum)を含む;
グループII:エルヴィニア・ラポンティキ(Erwinia rhapontici)を含む;
グループIII;エンテロバクター(Enterobacter)属、ラウルテラ・プランティコラ(Roaultella planticola)及びクレブシエラ・シンガポレンシス(Klebsiella singaporensis)を含む;
グループIV:パントエア・ディスペルサ(Pantoea dispersa)を含む;及び
グループV:シュードモナス・メソアシドフィラ(Pseudomonas mesoacidophila)及び根粒菌(Rhizobium)属を含む。
【0022】
好ましいスクロースイソメラーゼの例としては、
ユニプロット:D0VX20として同定される酵素を含むプロタミノバクター・ラブラム(Protaminobacter rubrum)、
ユニプロット:Q6XNK6として同定される酵素を含むパントエア・ディスペルサ(Pantoea dispersa)、
ユニプロット:Q6XKX6として同定される酵素を含むラウルテラ・プランティコラ(Roaultella planticola)、
ユニプロット:Q2PS28として同定される酵素を含むシュードモナス・メソアシドフィラ(Pseudomonas mesoacidophila)、
ユニプロット:B5ABD8として同定される酵素を含むエンテロバクター(Enterobacter);及び
ユニプロット:S5YEW8として同定される酵素を含むペクトバクテリウム・カロトボラム(Pectobacterium carotovorum)
において見出されるイソメラーゼが挙げられる。
【0023】
存在する場合、そのシグナルペプチドは、メチオニン(M)で置換され、この結果、配列番号1~6にそれぞれ示されるタンパク質配列が生じた。
【0024】
好ましいスクロースイソメラーゼとしては、Sis4、Sis10、Sis12、Sis14及びSis15として実施例において同定されるイソメラーゼが挙げられる。特に好ましいスクロースイソメラーゼは、Sis4である。
【0025】
本明細書に記載の本発明は、食品及び飲料配合物におけるイソマルツロース、トレハルロース又は他のいずれかの低グリセミックの糖代替物の使用の以前の問題を回避する。栄養成分としてスクロースイソメラーゼを供給することにより、食料又は飲料配合物は、変更される必要がなく、且つイソマルツロース及び/又はトレハルロースのみが胃又は上部腸管内で消化中に形成される。
【0026】
本発明に関連する好ましいスクロース含有食料/飲料は、甘い食品、例えば、
・デザート - アイスクリーム、プリン、カスタード、ヨーグルト、
・製菓 - スイーツ、チョコレート、
・焼き菓子 - クッキー、ペストリー、パイ、ドーナツ、朝食用シリアル、
・飲料 - ソフトドリンク、エネルギードリンク、フルーツジュース、風味付けされたミルク、
・果物及び野菜 - トウモロコシ、トロピカルフルーツ、デート、バナナ、ビートの根、かぼちゃ、
・塗り物 - ジャム、マーマレード、チョコレートスプレッド、ピーナツバター、
・コンパニオン動物のための食品:ご褒美又はよく噛む必要のあるおやつの形態の食品
を含む。
【0027】
[製剤]
本発明による食事性及び医薬組成物は、特に経口投与の従来のいずれかの形態、例えば食事若しくは飼料のための添加剤/サプリメント、食事若しくは飼料プレミックス、強化食品若しくは飼料、錠剤、丸剤、顆粒、糖衣丸、カプセル並びに粉末及びタブレットなどの発泡性製剤などの固体状態又は例えば飲料、ペースト及び油性懸濁液としての液剤、乳剤若しくは懸濁液などの液体状態で体に投与するのに適したいずれかの生薬形態をとり得る。ペーストは、ハード又はソフトシェルカプセルに封入され得、それにより、カプセルは、例えば、魚、ブタ、家禽又はウシゼラチン、植物タンパク質又はリグニンスルホネートのマトリックスを特徴とする。食事性及び医薬組成物は、放出制御又は遅延放出製剤の形態をとり得る。本発明の組成物は、鼻腔への適用など、局所的に投与されない。
【0028】
本発明による食事性組成物は、保護親水コロイド(ガム、タンパク質、加工デンプン、結合剤、皮膜形成剤、封入剤/材料、壁/シェル材料、マトリックス化合物、コーティング、乳化剤、表面活性剤、可溶化剤(オイル、脂肪、ワックス、レシチン等)、吸着剤、担体、充填剤、共化合物、分散剤、湿潤剤、加工助剤(溶媒)、流動剤、矯味剤、増量剤、ゲル化剤、ゲル形成剤、酸化防止剤及び抗菌剤をさらに含有し得る。
【0029】
さらに、本発明による組成物は、従来の薬剤添加剤及び補助剤、賦形剤又は希釈剤、限定されないが、水、いずれかの起源に由来するゼラチン、植物性ガム、リグニンスルホネート、タルク、糖、デンプン、アラビアゴム、植物油、ポリアルキレングリコール、着香剤、保存剤、安定剤、乳化剤、緩衝剤、滑沢剤、着色剤、湿潤剤、充填剤等をさらに含有し得る。
【0030】
[投与量]
栄養補助食品としての酵素の投与量は、摂取スクロース100g当たり0.1~500mgの純粋なスクロースイソメラーゼタンパク質、好ましくは摂取スクロース100g当たで0.5~100mg、2~50mg、10~25mgのスクロースイソメラーゼタンパク質である。当然のことながら、投与量は、1日当たり又は食事若しくは飲料当たりでどの程度のスクロースが摂取されたかに応じて異なる。例えば、人が、西洋諸国で一般的な量である1日に添加スクロース75グラムを消費した場合、1日の酵素の好ましい量は、7.5~20mgの純粋なスクロースイソメラーゼタンパク質であろう。例えば、人が、100g/Lのスクロースを含有する飲料300mlを飲んだ場合、酵素の好ましい量は、飲料と合わされる3~7.5mgの純粋なスクロースイソメラーゼタンパク質となるであろう。
【0031】
スクロースイソメラーゼを有する一般的な組成物は、二酸化ケイ素、(微結晶)セルロース(例えば、Avicel PH102)、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ポリビニルピロリドン(例えば、クロスポビドン)及び/又はマルトデキストリンを含有し得る。300mgの錠剤1つ当たりで、かかる組成物は、例えば、60mgの乾燥酵素配合物(例えば、.5~20mgの純粋なスクロースイソメラーゼ7+最大で60mgのマルトデキストリンを含有する)、15mgのクロスポビドン、2.5mgのステアリン酸マグネシウム及び222.5mgのAvicel PH102を含有し得る。
【0032】
さらに、組成物は、乾燥食品、ソフトドリンク粉末又は食事代替粉末であり得る。かかる乾燥組成物は、通常、水分活性(Aw)<0.5を有する。一般的なスポーツエネルギードリンク粉末は、粉末100g当たり最大で90gの炭水化物を含有し得、その75gは、糖(主にスクロース及びグルコース)である。さらに、粉末は、一部のクエン酸、着香及び着色以外に100g当たり2.15gの無機塩(主に塩化カリウム、クエン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、塩化ナトリウム及びクエン酸マグネシウム)を含有する。好ましくは、スクロースイソメラーゼは、かかる粉末100g当たり7.5~20mgの純粋な乾燥酵素において添加される。
【0033】
[酵素]
[相同性]
本開示の目的のために、2つのアミノ酸配列又は2つの核酸配列の配列相同性又は配列同一性のパーセンテージを決定するため、配列は最適な比較のためにアラインされることが本明細書において定義される。2つの配列間のアライメントを最適化するために、比較される2つの配列のいずれかにおいてギャップが導入され得る。かかるアライメントは、比較される配列の完全長にわたって実施することができる。代わりに、アライメントは、より短い長さ、例えば約20、約50、約100以上の核酸/ベース又はアミノ酸にわたって実施され得る。配列同一性は、報告されるアライン領域にわたる2つの配列間の同一マッチのパーセンテージである。
【0034】
2つの配列間の配列の比較及び配列同一性のパーセンテージの決定は、数学的アルゴリズムを用いて達成することができる。いくつかの異なるコンピュータープログラムが2つの配列のアライン及び2つの配列間の同一性の決定に利用可能であるという事実は、当業者であれば認識するであろう(Kruskal,J.B.(1983)An overview of sequence comparison In D.Sankoff and J.B.Kruskal,(ed.),Time warps,string edits and macromolecules:the theory and practice of sequence comparison,pp.1-44 Addison Wesley)。2つのアミノ酸配列間又は2つのヌクレオチド配列間の配列同一性%は、2つの配列のアライメントのためのニードルマン-ブンシュアルゴリズムを用いて決定され得る(Needleman,S.B.and Wunsch,C.D.(1970)J.Mol.Biol.48,443-453)。アミノ酸配列とヌクレオチド配列のいずれもアルゴリズムによってアラインすることができる。ニードルマン-ブンシュアルゴリズムは、コンピュータープログラムNEEDLEで実行されている。本開示の目的のために、EMBOSSパッケージからのNEEDLEプログラムが使用された(version 2.8.0以上,EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite(2000)Rice,P.LongdenJ.and Bleasby.A.Trends in Genetics16,(6)pp276-277,http://emboss.bioinformatics.nl/)。タンパク質配列には、EBLOSUM62が置換行列に使用される。ヌクレオチド配列に関して、EDNAFULLが使用される。使用される任意のパラメーターは、ギャップオープンペナルティ10及びギャップ伸長ペナルティ0.5である。これらの異なるすべてのパラメーターがわずかに異なる結果を生じるが、2つの配列の同一性総パーセンテージは、異なるアルゴリズムを使用した場合に有意に変化しないことが当業者に理解されるであろう。
【0035】
上述のNEEDLEプログラムによるアライメント後、問い合わせ配列と開示の配列との配列同一性のパーセンテージが以下の通りに計算される。アライメントにおける相当する位置の数は、アライメントにおけるギャップの総数を引いた後にアライメントの全長で割られる、両方の配列における同一アミノ酸又は同一ヌクレオチドを示す。本明細書で定義される同一性は、NOBRIEFオプションを使用してNEEDLEから得られ、且つ「最長同一性」としてプログラムのアウトプットでレベルされる。
【0036】
本開示の核酸及びタンパク質配列は、公共データベースに対して検索を行うために、例えば他のファミリーメンバー又は関連配列を同定するために、「問い合わせ配列」としてさらに使用することができる。かかる検索は、Altschul,et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403-10.のBLASTN及びBLASTXプログラム(version 2.0)を使用して行うことができる。BLASTヌクレオチド検索をBLASTNプログラム(スコア=100、ワード長=12)で実施し、開示の核酸分子と相同なクレオチド配列を得ることができる。BLASTタンパク質検索をBLASTXプログラム(スコア=50、ワード長=3)で実施し、開示のタンパク質分子と相同なアミノ酸配列を得ることができる。比較のためのギャップ入りアライメントを得るために、Altschul et al.,(1997)Nucleic Acids Res.25(17):3389-3402に記載のようにギャップ入りBLASTが利用され得る。BLAST及びギャップBLASTプログラムを用いた場合、それぞれのプログラム(例えば、BLASTX及びBLASTN)のデフォルトパラメーターが使用され得る。http://www.ncbi.nlm.nih.gov/のNational Center for Biotechnology Informationのホームページを参照されたい。
【0037】
本明細書で使用される「バリアント」、「誘導体」、「変異体」又は「相同体」という用語は、区別なく使用することができる。それらは、ポリペプチド又は核酸のいずれかを意味し得る。バリアントは、参照配列に対して1つ又は複数の位置において置換、挿入、欠失、切り詰め、塩基転換及び/又は逆位を含む。バリアントは、例えば、部位飽和変異生成、スキャニング変異生成、挿入突然変異、ランダム変異生成、部位特異的突然変異誘発及び定方向進化並びに種々の他の組換えアプローチによって作製することができる。バリアントポリペプチドは、少数のアミノ酸残基によって参照ポリペプチドと異なり得、参照配列との一次アミノ酸配列の相同性/同一性のそのレベルによって定義され得る。好ましくは、バリアントポリペプチドは、参照ポリペプチドと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する。同一性パーセントを決定する方法は、当技術分野で公知であり、本明細書に記述されている。一般に、バリアントは、参照ポリペプチドの固有の性質を保持するが、一部の特定の態様では変化した特性を有する。例えば、バリアントは、修飾された最適pH値、修飾された基質結合能力、酵素的分解又は他の分解に対する修飾された耐性、向上した活性又は減少した活性、修飾された温度安定性又は酸化安定性を有し得るが、その固有の機能性を保持する。バリアントは、参照ポリペプチドの特徴を変える化学修飾を有するポリペプチドをさらに含む。
【0038】
核酸に関して、その用語は、参照核酸及び指定の程度の相同性/同一性を有するか、又はストリンジェントな条件下において参照核酸若しくはその補体とハイブリダイズする、バリアントポリペプチドをコードする核酸を意味する。好ましくは、バリアント核酸は、参照核酸と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%の核酸配列同一性を有する。同一性パーセントを決定する方法は、当技術分野で公知であり、本明細書に記述されている。
【0039】
本発明は、以下の実施例によってさらに説明される。
【0040】
[実施例]
[実施例1]
スクロースイソメラーゼとしてアノテートされた6つのタンパク質がユニプロットデータベースから選択された。配列は、プロタミノバクター・ラブラム(Protaminobacter rubrum)(ユニプロット:D0VX20)、パントエア・ディスペルサ(Pantoea dispersa)(ユニプロット:Q6XNK6)、ラウルテラ・プランティコラ(Roaultella planticola)(ユニプロット:Q6XKX6)、シュードモナス・メソアシドフィラ(Pseudomonas mesoacidophila)(ユニプロット:Q2PS28)、エンテロバクター(ユニプロット:B5ABD8)及びペクトバクテリウム・カロトボラム(Pectobacterium carotovorum)(ユニプロット:S5YEW8)に由来する。推定シグナルペプチドは、グラム陰性のためのSignalP4.1予測ソフトウェアによって予測された(Petersen,Nature Methods,8:785-786,2011)。存在する場合、これらのシグナルペプチドは、メチオニン(M)で置き換えられ、この結果、配列番号1~6に示すタンパク質配列が得られた。
【0041】
国際公開第2017050652(A1)号パンフレットに記載のように、大腸菌(E.coli)においてタンパク質配列(配列番号1~6)を発現させた。推定スクロースイソメラーゼをコードする合成DNA配列は、DNA2.0のアルゴリズム(GeneGPS(登録商標)技術)に従って大腸菌(E.coli)での発現に対してコドン最適化された。クローニングの目的のために、Ndel部位を含有するDNA配列を5’末端に導入し、終止コドン及びAsclを含有するDNA配列を3’末端に導入した。5’Ndel及び3’Ascl制限部位を介して、推定スクロースイソメラーゼをコードする合成DANを、アラビノース誘導性プロモーターPBADと、制御因子araC(Guzman(1995)J.Bact.177:4121-4130)と、カナマイシン耐性遺伝子Km(R)と、pBR322由来の複製開始点ori327(Watson(1988)Gene.70:399-403)とを含有するアラビノース誘導性大腸菌(E.coli)発現ベクターにクローニングした。ampC及びaraBにおけるさらなる欠失を有する大腸菌(E.coli)宿主RV308(laclq-、su-、ΔlacX74、gal ISII::OP308,strA,http://www.ebi.ac.uk/ena/data/view/ERP005879)を、化学的コンピテントセル(Z-コンピテントセル,Mix and Go!大腸菌(E.coli)形質転換キット(Zymo Research,Irvine CA,USA)で作製)を使用して形質転換した。配列番号1~6由来のいくつかのクローンを配列検証し、ネオマイシン(O/N)100μg/mlを含有する2×PY中で培養した。前培養物(1/100体積)を使用して、MagicMediaTM大腸菌(E.coli)発現培地(Thermo Fisher Scientific Inc)及び100μg/mlネオマイシン中の発酵を接種し(24穴MTP、体積3ml、通気性シール、RPM550、相対湿度80%)、30℃で4時間増殖させた後、培養物を0.02%アラビノース(最終濃度)で誘導し、インキュベーションを30℃で48時間続けた。高速遠心によって細胞ペレットを単離し、さらに使用するまで凍結した。凍結細胞ペレットを再懸濁し、1.2ml溶解バッファー(トリスHCl 50mM、DNasel 0.1mg/ml、リゾチーム2mg/ml、MgSO425μM)と共に37℃で1時間インキュベートすることにより、無細胞抽出物(CFE)を作製した。遠心分離によって壊死組織片を除去し、さらなる特徴付けまでCFEを-20℃で保管した。
【0042】
[グルカンスクラーゼ]
この研究で使用されるグルカンスクラーゼは、製品供給業者から入手した(ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)グルカンスクラーゼに関して、シグマ・アルドリッチ社(Sigma Aldrich);ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)グルカンスクラーゼに関して、NZYTech社)。
【0043】
この研究で使用されるすべての酵素を表1に示す。
【0044】
【0045】
[配列番号1~6:]
[配列番号1]
【化1】
[配列番号2]
【化2】
[配列番号3]
【化3】
[配列番号4]
【化4】
[配列番号5]
【化5】
[配列番号6]
【化6】
【0046】
[酵素定量化]
SDS-PAGEに続いてクマシー染色を用いて、試料に存在する酵素を可視化した。個々の酵素を定量化するために、正確な分子量のバンドに焦点を合わせた。バンドの染色強度は、ImageQuantソフトウェアによって定量化された。選択されたバンドのタンパク質染色強度を、同じゲル上に流れるウシ血清アルブミン(BSA)の既知量と比較し、元の酵素ストック溶液に戻って計算した。
【0047】
[糖の同定及び定量化]
CarboPac PA20カラムを備えたDionex HPLC(HPAEC BioLC system,Dionex5000)を使用して、酵素と共にスクロース含有溶液をインキュベートした後の糖プロファイルを分析した。インキュベート後、試料を希釈し、濾過し、表2に記載のプログラムを使用して糖成分を分離した。
【0048】
【0049】
メルクミリポア社(Merck Millipore)から入手したスクロース、グルコース、フルクトース、イソマルツロース、リュクロース、トレハルロース及びイソマルトース(2~75mg/mlの範囲)の純粋な溶液をスパイクすることにより、HPLCのピークを割り当て、定量化した。この技術を用いた様々な糖の分離の例を
図1に示す。糖濃度について検出された積分ピーク面積及びピーク面積に対する濃度の直線適合のプロットから、それぞれの糖に対するレスポンスファクターを計算した。それぞれの試料に存在する糖の絶対量の計算にレスポンスファクターを使用した。試料中で測定されたそれぞれの糖の絶対量を、試料中で検出されたすべての糖の総量で割り、100を掛けることによって相対糖濃度(%)を計算した。
【0050】
[グリセミック指数の計算]
これらの実験におけるグリセミック指数(GI)を計算し、様々な糖のGIを仮定した;スクロース:65;フルクトース:15;グルコース:100;イソマルツロース:32;トレハルロース:32。Wolever(European Journal of Clinical Nutrition(2013)67,1229-1233)は、カナダの規定に準拠して、GI>70が高いとみなされ、GI<55が低いと述べている。製品におけるそれぞれの糖の含有率%を100で割り、そのGI値を掛けた。すべての数を累計して、様々な処理製品のGIを計算した。
【0051】
[実施例2]
[異なるpHでのスクロースイソメラーゼの活性]
異なるpHでのスクロースに対する異なるスクロースイソメラーゼの活性を試験するために、本発明者らは、10%希釈(0.07~0.21mgタンパク質/ml)において、異なる酵素と共に20%スクロース/250mMリン酸ナトリウム緩衝液をインキュベートした。溶液のpHを4.5及び6.0のいずれかに設定し、インキュベーションを37℃で6時間行い、その後、99℃で5分間加熱することによって反応を停止させた。Dionex HPLC法を用いて、異なる糖へのスクロースの転化を定量化した。それぞれの酵素の2~4通りの異なる試料を使用した実験から得られた、インキュベーション後の試料で検出されたすべての糖の総量に対する平均パーセンテージとして、以下の表3に結果を示す。
【0052】
【0053】
表3から、試験されたすべての酵素がpH6.0及びpH4.5においてほぼ完全にスクロースを転化できることが明らかになっている。生成物の形成は、酵素にいくらか依存するが、すべてのスクロースイソメラーゼ酵素を用いて、最も顕著な生成物は、イソマルツロース及びトレハルロースであり、大部分の条件下において糖全体の60~100%の量となる。
【0054】
[実施例3]
[異なるpHでのグルカンスクラーゼの活性]
異なるpHでのスクロースに対する異なるグルカンスクラーゼの活性を試験するために、本発明者らは、10%希釈において、異なる酵素と共に20%スクロース/250mMリン酸ナトリウム緩衝液をインキュベートした。溶液のpHを4.5及び6.0のいずれかに設定し、インキュベーションを37℃で6時間行い、その後、99℃で5分間加熱することによって反応を停止させた。Dionex HPLC法を用いて、糖の組成を定量化した。それぞれの酵素を使用した実験から得られた、転化後の糖全体に対するパーセンテージとして、以下の表4に結果を示す。グルカンは、異なる形態で存在し得るため、これらの実験で使用されるHPLC法を用いて定量化することは難しい。したがって、酵素が添加されないブランクのフルクトース及びグルコース含有量に対して補正した後、グルカンの総形成は、フルクトース及びグルコースの増加の違いから計算された。したがって、示される数値は、単に形成されたグルカンの総量の大まかな推定量である。
【0055】
【0056】
表4から、グルカンスクラーゼの一部(70B及び70C)は、pH6.0及びpH4.5の両方でほぼすべてのスクロースを転化することができるが、他は、ごくわずかな活性のみを示すことが明らかとなった。生成物の形成は、いくらか酵素に依存し、これらの条件下において、グルカンの収率は、最大でおよそ30~40%である。これらの酵素によって形成される他の糖は、主にリュクロースであり、一部は、イソマルツロースである。
【0057】
[実施例4]
[コーラ中のスクロースイソメラーゼの活性]
スクロースイソメラーゼ及びグルカンスクラーゼの活性をコーラ(コカ・コーラ(Coca-Cola)(登録商標);地元のスーパーマーケットで入手)中で試験した。この実験では、酵素を再びこのマトリックス中で10%希釈において添加し、37℃で130分間インキュベートし、その後、90℃で5分間加熱することによって反応を停止させた。約100g/Lの糖総量がコーラ中で測定される。コーラは、非常に酸性(pH2.6)であるため、スクロースの一部は、特に加熱工程中にグルコース及びフルクトースに転化され、測定されるスクロースの総量は、おそらく低く、コーラ中に存在するフルクトース及びグルコースの量は、高い。再びDionex HPLC法を用いて、様々な糖へのスクロースの転化を定量化した。インキュベーション後に試料中で検出されるすべての糖の総量に対する平均パーセンテージとして、結果を以下に示す。以下の表5に示すように、糖全体の40~50%は、Sis14及びSis15スクロースイソメラーゼを用いて低グリセミック糖のイソマルツロース及びトレハルロースに転化され、グリセミック指数が低くなる。実施例2の緩衝剤実験で既に見られたように、Sis14は、イソマルツロースに対して優先を有すると思われるが、Sis15は、トレハルロース形成に対する優先を有する。Sis2は、コーラにおいて全く活性を示さなかったが、Sis10、Sis12及びSis4は、8~15%の転化率を示した。
【0058】
【0059】
[実施例5]
[模擬胃の条件でのチョコレートミルクにおけるスクロースイソメラーゼの活性]
スクロースイソメラーゼ及びグルカンスクラーゼの活性をチョコレートミルクにおいて試験した。脱脂チョコレートミルク(Friesland Campina)は、中性pH(pH6.4)を有し、約100g/Lのスクロースを含有する。この実験において、37℃に設定された水浴中で20rpmにおいて攪拌下でチョコレートミルク100mlをインキュベートし、HClの添加によってpHを徐々に下げた。ブタの胃粘膜粉末からのペプシン>250u/mg固形分(シグマ社(Sigma);P7000)を最終濃度0.02mg/mlで添加し、スクロースイソメラーゼを実験の開始時に0.1%(v/v)で添加した。0.5時間インキュベートした後、HClを添加することにより、pHを4.0で設定し、1時間後にpH3.0に設定し、1.5時間後にpH2.0に設定した。インキュベーションして5~10分後(t=0)、1時間後(t=1)及び2時間後(t=2)に試料1mlを採取し、加熱によって(99℃で5分間)酵素活性を即座に不活性化した。上述のHPLC法を用いて、試料を分析し、異なる糖を定量化し、試料中で検出されたすべての糖の総量に対するパーセンテージで表し、以下の表6に示す。再び、コーラの実験でも確認されるように、試料は、低pHで加熱することにより、グルコース及びフルクトースへのスクロースの(化学的)転化を示した(特にt=2試料において優勢)。
【0060】
【0061】
表6から、特にSis4が、模擬胃条件下においてチョコレートミルク中のスクロース全体の最大で75%をイソマルツロース及びトレハルロースのような低グリセミック糖に転化できることが明らかとなった。Sis10は、スクロースの約40%を特にイソマルツロースに転化することができるが、Sis15は、主にトレハルロースを全体の約30%生成し、Sis12は、両方のスクロース異性体を全体の約20%生成する。Sis2及びSis14は、この実験で効果を示さなかった。胃消化を模倣する条件において酵素投与量がかなり低い場合でも、これらの酵素の大部分は、チョコレートミルクなどの通常の食品のグリセミック指数を低下させることができる。
【0062】
グルカンスクラーゼのいずれも、この実験でチョコレートミルクにおける有意な活性を示さなかった。
【0063】
[実施例6]
[模擬胃条件でのアイスクリームにおけるスクロースイソメラーゼの活性]
スクロースイソメラーゼ及びグルカンスクラーゼの活性をアイスクリームで試験した。アイスクリーム(Albert Heijn Roomijs vanilla)は、中性pH(pH6.5)を有し、約230g/kgのスクロースを含有した。酵素投与量、ペプシン添加、pH設定、サンプリング時間及び量及びHPLCでの糖分析を含む、実施例4に記載のように正確に実験を行った。再び、異なる糖を定量化し、試料中で検出された糖の総量に対するパーセンテージで表した。糖分析の結果を以下の表7に示す。
【0064】
【0065】
表7から、Sis4が、模擬胃条件下においてアイスクリーム中のスクロース全体の最大で25~35%をイソマルツロース及びトレハルロースのような低グリセミック糖に転化できることが明らかとなった。Sis10は、スクロースの約15%を特にイソマルツロースに転化することができ、Sis12及びSis15も一部のスクロース異性体を生成する。再び、Sis2及びSis14は、これらの条件下において活性を示さなかった。胃消化を模倣する条件において酵素投与量がかなり低い場合でも、これらの酵素の大部分は、アイスクリームなどの通常の食品のグリセミック指数を低下させることができる。
【0066】
グルカンスクラーゼのいずれも、この実験でアイスクリームにおける有意な活性を示さなかった。
さらなる実施形態は以下のとおりである。
[実施形態1]
スクロースイソメラーゼを含む栄養補助剤、薬剤又は栄養補助食品組成物。
[実施形態2]
ヒトに適している、実施形態1に記載の組成物。
[実施形態3]
コンパニオン動物に適している、実施形態1に記載の組成物。
[実施形態4]
配列番号1~6の配列のいずれか1つに対して少なくとも60%の同一性、好ましくは90%、95%、98%、99%、100%の同一性を有するスクロースイソメラーゼを含む、実施形態1に記載の組成物。
[実施形態5]
配列番号4に対して少なくとも60%の同一性、好ましくは90%、95%、98%、99%、100%の同一性を有するスクロースイソメラーゼを含む、実施形態4に記載の組成物。
[実施形態6]
スクロースを摂取するヒトを含む動物における血中グルコースレベルの上昇を低下させる方法であって、実施形態1に記載の栄養補助剤、薬剤又は栄養補助食品を、それを必要とするヒトを含む前記動物に投与することを含む方法。
[実施形態7]
ヒト又はコンパニオン動物によって消費される食品又は飼料のグリセミック指数を低下させる方法であって、実施形態1に記載のスクロースイソメラーゼを含む栄養補助剤、薬剤又は栄養補助食品を前記ヒト又はコンパニオン動物に投与することを含む方法。
[実施形態8]
ヒト又はコンパニオン動物において体重を減らすか又は体重減少を維持する方法であって、実施形態1に記載のスクロースイソメラーゼを含む栄養補助剤、薬剤又は栄養補助食品を前記ヒト又はコンパニオン動物に投与することを含む方法。
[実施形態9]
a)血糖レベルの上昇を低下させること;
b)持久的エクササイズを実施する動物の増加した持久力;
c)体重の減少又は減少した体重の維持;
d)摂取食品又は飼料のグリセミック指数を低下させること;及び
e)持続的なエネルギー放出並びに/又はスクロース含有食事後の急速な血糖上昇及びいわゆる食後の「眠気」の予防若しくは最小化
からなる群から選択される、ヒトを含む動物における状態を達成するための、スクロースイソメラーゼを含む栄養補助剤、薬剤又は栄養補助食品の使用。
[実施形態10]
スクロースイソメラーゼを含む乾燥食品又は飲料混合物。
【配列表】