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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】基板保持装置および基板保持方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20241025BHJP
【FI】
H01L21/68 P
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019090387
(22)【出願日】2019-05-13
(65)【公開番号】P2019208020
(43)【公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-04-22
(31)【優先権主張番号】2021006
(32)【優先日】2018-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591004412
【氏名又は名称】ズス・マイクロテック・リソグラフィ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Suss MicroTec Lithography GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・グルント
(72)【発明者】
【氏名】ライナー・タルグス
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-157867(JP,A)
【文献】特開平10-086086(JP,A)
【文献】特開2016-209981(JP,A)
【文献】特開平7-161800(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(101)用保持装置(100)、特に、チャックであって、
前記保持装置(100)は、
上側(105)を有する本体(103)と、
キャリア要素(107)と、を備え、
前記キャリア要素(107)は、突出ローディング位置と後退クランプ位置との間で調節できるように、垂直方向に移動可能であるように前記本体(103)の凹部(109)内に配置され、前記キャリア要素(107)は、前記基板(101)を配置するための支持面(111)を備え、前記支持面(111)は、前記本体(103)よりも小さい直径を有し、
前記保持装置(100)は、
前記キャリア要素(107)をローディング位置に持ち上げる持ち上げ要素と、
前記保持装置(100)を回転させるための回転装置と、を備え、
前記キャリア要素(107)は、前記本体(103)と前記キャリア要素(107)との間に密閉キャビティ(113)が設けられるように前記凹部(109)をシールし、当該キャビティには、前記持ち上げ要素の影響を打ち消す負圧を加えることができ、
前記キャリア要素(107)の前記支持面(111)が前記本体(103)の前記上側(105)と実質的に同一平面上に配置される前記キャリア要素(107)のクランプ位置を画定するスペーサ(117a,117b)が設けられ、
前記持ち上げ要素は、前記キャリア要素(107)を前記基板(101)全体と共に前記ローディング位置に持ち上げ可能に構成されている、
保持装置(100)。
【請求項2】
前記本体(103)は、シール手段(119)、特に、封止リップを有し、前記キャリア要素(107)を間隔を空けて取り囲み、前記本体(103)の前記上側(105)と前記基板(101)との間を密閉することができる請求項1に記載の保持装置(100)。
【請求項3】
前記キャリア要素(107)には、前記本体(103)の前記凹部(109)の側壁に対してシールするシール(125)が設けられている請求項1または2に記載の保持装置(100)。
【請求項4】
前記キャリア要素(107)は、前記支持面(111)上に支持された前記基板(101)を固定するための固定手段(123a,123b)を備える請求項1ないし3のうちいずれか1項に記載の保持装置(100)。
【請求項5】
前記キャビティ(113)と前記固定手段(123a,123b)は流体的に接続されている請求項4に記載の保持装置(100)。
【請求項6】
前記保持装置(100)は、圧力接続部を備え、これにより、前記キャビティ(113)内の圧力を制御することができる請求項1ないし5のうちいずれか1項に記載の保持装置(100)。
【請求項7】
前記持ち上げ要素は、クランプ要素(115a、115b)、特に、前記キャリア要素(107)を上昇させるために前記キャリア要素(107)に力を加えるように構成された圧縮ばねを備える請求項1ないし6のうちいずれか1項に記載の保持装置(100)。
【請求項8】
前記回転装置は、前記本体(103)および/または前記キャリア要素(107)を回転させるためのものである請求項1ないし7のうちいずれか1項に記載の保持装置(100)。
【請求項9】
基板(101)用保持装置(100)、特に、チャックであって、
前記保持装置(100)は、
上側(105)を有する本体(103)と、
キャリア要素(107)と、を備え、
前記キャリア要素(107)は、突出ローディング位置と後退クランプ位置との間で調節できるように、垂直方向に移動可能であるように前記本体(103)の凹部(109)内に配置され、前記キャリア要素(107)は、前記基板(101)を配置するための支持面(111)を備え、前記支持面(111)は、前記本体(103)よりも小さい直径を有し、
前記保持装置(100)は、
前記キャリア要素(107)をローディング位置に持ち上げる持ち上げ要素を備え、
前記キャリア要素(107)は、前記本体(103)と前記キャリア要素(107)との間に密閉キャビティ(113)が設けられるように前記凹部(109)をシールし、当該キャビティには、前記持ち上げ要素の影響を打ち消す負圧を加えることができ、
前記キャリア要素(107)の前記支持面(111)が前記本体(103)の前記上側(105)と実質的に同一平面上に配置される前記キャリア要素(107)のクランプ位置を画定するスペーサ(117a,117b)が設けられ、
前記スペーサ(117a,117b)は、前記持ち上げ要素に対して横に並べて配置され、前記キャリア要素(107)によって完全に覆われている、
保持装置(100)。
【請求項10】
前記請求項1ないし9のうちいずれか1項に記載の保持装置(100)を備える微細構造デバイス用製造装置(300)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、微細構造デバイス用の製造装置における、基板を保持し固定する分野に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハなどの基板は、微細構造デバイス用の特別な製造装置、例えば、コーティング装置(コータ)で処理される。特に、これらの装置に基板を保持するために、基板ホルダ、いわゆるチャックがしばしば使用される。多くの場合、それらは、例えば、基板を均一にコーティングするために、基板を高い回転速度で回転させるスピナーチャックである。基板は、例えば、真空吸引によってチャック上に固定される。
【0003】
このようにして、処理された基板は大部分が平らで平面的である。しかしながら、それらは理想的な平面形状から逸脱して弓形になることもある。湾曲したウエハは、例えば、反ったウエハとして定義される。反りのためにチャックの上側と基板の下側との間に真空を全くまたは不十分にしか達成することができないので、真空吸引によって湾曲した基板をスピナーチャックに固定することは困難である。
【0004】
湾曲した基板の固定を改善するために、チャックの支持面上に柔らかい封止リップを配置することが知られている。基板は、基板とチャックとの間に真空を確立することができるように封止リップの周囲に支持されている。
【0005】
しかしながら、この場合、吸引プロセス中に基板が水平に案内されないことは不利である。空気が排出されているとき、基板は保持面内で横方向に滑動または浮遊し、最終的にチャック上に平面的に支持されるまで垂直方向に移動する。これは、チャックに対する基板のセンタリングに悪影響を及ぼし、それは、プロセスの次の過程で、振動または不均一、すなわち、周辺に沿って変動する、エッジビード除去(EBR)などの望ましくない効果をもたらす可能性がある。
【0006】
封止リップの汚れおよび老化の結果としてさらなる不都合が生じる。封止リップは粒子を発生させ、それらの表面および摩擦特性を経時的に変化させる可能性がある。これは、例えば、封止リップの交換、保管位置の修正または封止リップの清掃から生じる、特に、維持費の増加をもたらし得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、基板、特に湾曲した基板を効率的かつ確実に保持し固定することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、独立請求項の特徴により達成される。有利な発展は、従属請求項、説明および図面の主題である。
【0009】
第1の態様によれば、本発明は、基板用保持装置、特に、チャックに関する。基板保持装置は、上側を有する本体と、キャリア要素と、を備え、キャリア要素は、突出ローディング位置と後退クランプ位置との間で調節できるように、垂直方向に移動可能であるように本体の凹部内に配置され、キャリア要素は、基板を配置するための支持面を備え、支持面は、本体よりも小さい直径を有し、保持装置は、キャリア要素をローディング位置に持ち上げる持ち上げ要素と、を備え、キャリア要素は、本体とキャリア要素との間に密閉キャビティが設けられるように凹部をシールし、このキャビティには、持ち上げ要素の影響を打ち消す負圧がかかる可能性がある。これは、吸引が容易に適用され得ない基板、特に、反ったウエハ(湾曲したウエハ)が確実に保持され、最初は小さい真空表面のために垂直方向に案内されるという利点を提供する。
【0010】
キャリア要素の支持面のサイズが小さいということは、ローディング位置において、湾曲したウエハを最初にキャリア要素上に固定するために十分なシールを達成することができることを意味する。その後、基板を本体の上側に対してクランプ位置で引っ張ることができ、最後にしっかりとクランプすることができる。
【0011】
本体の上側は、基板に対するクランプ面に対応することができ、その上で基板はクランプ位置にしっかりとクランプされる。
【0012】
この場合、垂直運動とは、本体の横軸と同軸の運動をいう。特に、これは、キャリア要素の支持面に対して垂直な動きを意味する。
【0013】
キャリア要素の直径は、例えば、基板の直径および/または本体の直径の半分、3分の1または4分の1未満である。特に、大きく湾曲した基板の場合、ローディング位置で十分な真空吸引力を発生させるために、キャリア要素の直径ができるだけ小さいことが有利である。
【0014】
キャリア要素は、ピストンのように凹部内で移動可能であるように配置することができる。
【0015】
凹部は、特に、本体の中心軸に沿った、本体のくぼみであり得る。凹部は円形の直径を有することができる。凹部の直径は、キャリア要素の直径に対応し得るか、またはそれよりも最小に大きくあり得る。
【0016】
キャビティは、凹部の底部とキャリア要素との間に残る空間であり得る。キャビティのサイズは、キャリア要素の位置によって定義することができ、キャリア要素の動きと共に変化することがあり得る。
【0017】
基板はウエハとすることができる。基板はディスク形状であり得る。基板は、直径2、3、4、5、6、8、12または18インチのほぼ円形の周囲を有することができる。さらに、基板は、大体平坦であり得、そして50~4000μmの厚さを有し得る。基板は、直線状の縁部(平坦)を有することができ、および/または少なくとも1つのノッチを有することができる。さらに、基板は角張っていてもよく、特に、正方形または長方形であってもよい。
【0018】
基板は、半導体材料、例えば、シリコン(Si)またはガリウム砒素(GaAs)、ガラス、例えば、石英ガラス、合成材料またはセラミックから形成することができる。基板は、単結晶、多結晶または非晶質材料から形成することができる。さらに、基板は、多数の関連材料を含むことができる。
【0019】
基板は、電気回路、例えば、トランジスタ、発光ダイオードまたは光検出器、これらの回路を接続する導電性トラック、または光学デバイス、ならびにMEMSまたはMOEMS構造を含むことができる。さらに、基板は、コーティング、例えば、構造化クロム層、予備架橋もしくは硬化ボンド接着剤または分離層を有することができる。
【0020】
一実施形態によれば、キャリア要素の支持面が本体の上面と実質的に同一平面上に配置される、キャリア要素のクランプ位置を画定するスペーサが設けられる。これは、支持面と本体の上側とが基板のための共通の支持体を形成し、その上で基板がクランプ位置にクランプされることができるように、キャリア要素の位置がクランプ位置に固定され得るという利点を提供する。
【0021】
好ましくは、降下後のキャリア要素の支持面と本体の上側との間の高さ偏差は、変形または反りによる基板の高さ変動よりも小さい。特に、好ましくは、高さ偏差は基板厚さよりも小さい。
【0022】
一実施形態によれば、本体は、間隔を空けてキャリア要素を囲み、本体の上側と基板との間をシールすることができるシール手段、特に、封止リップを備える。これにより、クランプ位置において基板を特に効率的な方法で吸引してクランプすることができるという利点が得られる。シール手段を用いて、基板の下に真空を発生させることができ、それは基板に均一な力を加えてそれをクランプし得る。
【0023】
一実施形態によれば、キャリア要素には、本体の凹部の側壁に対してシールするシールが設けられる。これは、キャビティの気密性および凹部内でのキャリア要素の摩擦のない動きを確実にすることができるという利点を提供する。
【0024】
一実施形態によれば、キャリア要素は、支持面上に支持された基板、特に、吸引開口部を固定するための固定手段を備える。これにより、基板を支持面にしっかりと固定することができるという利点が得られる。
【0025】
一実施形態によれば、本体は、下降した基板を上側に固定するためのさらなる固定手段を有する。さらなる固定手段は、さらなる吸引開口部を含み得る。
【0026】
一実施形態によれば、キャビティと固定手段とは流体的に接続されている。これは、保持装置の特に簡単な構成および制御を可能にするという利点を提供する。例えば、基板の固定およびキャリア要素の降下を制御するためには、個別の圧力供給で十分である。
【0027】
一実施形態によれば、保持装置は圧力接続部を有し、それによってキャビティ内の圧力を制御することができる。これは、圧力の印加によって、例えば、外部圧力供給を介して、キャリア要素の機能の制御を可能にするという利点を提供する。
【0028】
一実施形態によれば、持ち上げ要素は、キャリア要素を持ち上げるためにキャリア要素に力を加えるように設計されたクランプ要素、特に、圧縮ばねを備える。
【0029】
持ち上げ要素はキャリア要素に力を発生させ、それはキャビティ内の負圧によって発生する引っ張り力に対抗する。持ち上げ要素、特に、クランプ要素は、本体とキャリア要素との間に、特に、本体の凹部内に配置することができる。
【0030】
さらに、保持装置は、停止部を含むことができ、持ち上げ要素は、キャリア要素を停止部に対して押し付けるように設計されている。停止部は、例えば、キャリア要素のローディング位置を規定し、キャリア要素が凹部から滑り落ちるのを防止する。
【0031】
一実施形態によれば、保持装置は、保持装置、特に、本体およびキャリア要素を回転させるための回転装置を備える。これは、保持装置によって特にしっかりと保持されている基板を、コーティングの塗布などのさらなる処理ステップのために回転させることができるという利点を提供する。
【0032】
第2の態様によれば、本発明は、先の請求項のうちのいずれか1項に記載の保持装置を備える微細構造デバイスの製造装置に関する。これは、吸引力を容易に加えることができない基板、特に、反ったウエハ(湾曲したウエハ)を製造装置内で効率的かつ確実に保持し処理することができるという利点を提供する。
【0033】
製造装置は、コータ、ラッカ、デベロッパ、スピンドライヤ、マスクアライナ、プロジェクションスキャナ、レーザーステッパ、ウエハボンダ、フォトマスクシステム、クリーニングシステムまたはインプリントシステムであり得る。
【0034】
第3の態様によれば、本発明は、本体とキャリア要素とを備える保持装置において基板を保持する方法に関し、この方法は、キャリア要素をローディング位置まで持ち上げ、キャリア要素は、基板よりも小さい直径を有するステップと、基板をキャリア要素の支持面上に配置するステップと、基板を支持面上に固定し、キャリア要素の支持面が本体の上面と実質的に同一平面上に配置されるクランプ位置にキャリア要素を降下させるステップと、を含む。これは、吸引が容易に適用され得ない基板、特に、反ったウエハ(湾曲したウエハ)が確実に保持され、最初は小さい真空表面のために垂直方向に案内されるという利点を提供する。
【0035】
キャリア要素の直径は、例えば、基板の直径および/または本体の直径の半分、3分の1または4分の1未満である。特に、大きく反った基板の場合、ローディング位置で十分な真空吸引力を発生させるために、キャリア要素の直径ができるだけ小さいことが有利である。
【0036】
ウエハサイズと比較して小さい直径は、ローディング位置においてウエハに吸引力を加えるために、最初はより小さくそしてシールするのがより容易な真空表面をもたらす。特に、反ったウエハの場合、吸引は、より小さな真空表面によって単純化される。続いて、基板は、本体の上面に対して引っ張られ、最後に、クランプ位置でその表面全体にわたってしっかりとクランプされ得る。
【0037】
一実施形態によれば、基板を支持面に固定するために第1の負圧が保持装置のキャビティに加えられ、キャリア要素をクランプ位置に降下させるために第2の負圧がキャビティに加えられる。ここで、第2の負圧は、第1の負圧よりも低い圧力である。これは、保持装置の制御、特に、基板の固定およびキャリア要素の移動が単一の圧力接続によって達成され得るという利点を提供する。負圧の変化によって、最初に基板を予備的に固定することができ、次に、キャリア要素を調整することができ、その後、基板を最終的に固定することができる。
【0038】
一実施形態によれば、キャリア要素の支持面上への基板の配置は、特に、支持面上の吸引開口部の封止によってキャビティ内の圧力を低下させる。キャリア要素のクランプ位置への降下は、圧力低下によって引き起こされおよび/または補助される。これにより、特に、キャリア要素を降下させるために圧力の手動変更がもはや必要とされないので、保持装置の特に簡単な制御を可能にするという利点が得られる。
【0039】
例えば、基板を支持面に固定するために、最初に第1の負圧が保持装置のキャビティに加えられ、次に、例えば、基板による支持面上の吸引開口部の被覆によって、基板がキャリア要素の上に置かれた後に、第2の負圧がキャビティに加えられる。
【0040】
一実施形態によれば、キャリア要素は、基板をクランプ位置で本体の上面に対して付勢し、基板にかかる力は、基板の起こり得る反りが低減されるような大きさである。これは、反った基板を保持装置によって滑らかにすることができるという利点を提供する。結果として、基板の更なる処理、例えば、コーティングの塗布は、単純化されるかまたは許容されることさえあり得る。さらに、平滑化された基板は、特に、チャックの回転中に、より安定した方法で保持され得る。
【0041】
反った基板は、いわゆる反ったウエハとすることができる。反りは、基板の厚さが薄いため、および/または基板内の内部応力のために発生する可能性がある。
【0042】
一実施形態によれば、基板と上面との間に作用する負圧によって、基板を本体の上面に対して引っ張る。これは、クランプ位置にある基板を上側に確実にしっかりと固定することができるという利点を提供する。
【0043】
一実施形態によれば、方法は、特に、キャリア要素を降下させた後に基板を回転させるステップをさらに含む。これは、このようにして、特に、確実に保持されている基板をさらなる処理ステップのために回転させることができるという利点を提供する。
【0044】
添付の図面を参照しながら、さらなる例示的な実施形態をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】基板の保持装置の概略図を示す。
図2a】基板の配置中における保持装置の概略図を示す。
図2b】基板の配置中における保持装置の概略図を示す。
図2c】基板の配置中における保持装置の概略図を示す。
図2d】基板の配置中における保持装置の概略図を示す。
図3】保持装置を有する微細構造デバイスの製造装置の概略図を示す。
図4】保持装置内で基板を保持するための方法のフロー図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1は、一実施形態に係る基板101用の保持装置100の概略図を示す。
【0047】
保持装置100は、上側105を有する本体103と、本体103の凹部109内に配置され、突出したローディング位置と後退したクランプ位置との間で調整可能であるように上下に移動可能なように配置されたキャリア要素107とを備える。キャリア要素107は、基板101を配置するための支持面111を備え、支持面111は、本体103よりも小さい直径を有する。さらに、保持装置100は、キャリア要素107をローディング位置まで持ち上げる持ち上げ要素を備える。
【0048】
キャリア要素107は、本体103とキャリア要素107との間に密封キャビティ113が設けられるように凹部109をシールし、このキャビティには、持ち上げ要素の影響を相殺する負圧を加えることができる。
【0049】
本体103の上側105は、基板101のクランプ面に対応することができ、この面上で基板101はクランプ位置にしっかりとクランプされる。
【0050】
キャリア要素107は、ピストンのように調節可能であるような方法で、凹部109内に受容され得る。密封キャビティに負圧を加えることによって、キャリア要素107をローディング位置からクランプ位置に移動させることができる。
【0051】
キャビティは、凹部109の底部とキャリア要素101との間に残る空間である。したがって、キャビティのサイズは、キャリア要素101の位置によって変えることができ、それに依存する。
【0052】
代替の実施形態では、キャビティ113はまた、本体103内のさらなる孔または流体線によって形成することができる。
【0053】
図示の実施形態では、持ち上げ要素は、本体103の凹部109内に配置され、キャリア要素に押圧力を及ぼす圧縮ばねの形態の2つのクランプ要素115a、115bによって形成されている。
【0054】
図1に示す実施形態では、シール手段119が本体の表面に配置されている。シール手段119は、クランプ位置にある本体103の支持面111および/または上側105への基板101の真空吸着を向上させることができる。特に、シール手段119は、基板101と保持装置100との間の広い表面にわたって真空を確立することを可能にする。
【0055】
基板101はウエハとすることができる。基板101は円板状であり得る。基板101は、直径が2、3、4、5、6、8、12または18インチのほぼ円形の周囲を有することができる。さらに、基板101は、ほぼ平坦であり得、50~4000μmの厚さを有し得る。基板101は、真っ直ぐな縁部(平坦)を有することができ、および/または少なくとも1つのノッチを有することができる。さらに、基板101は角張っていてもよく、特に、正方形または長方形であり得る。
【0056】
基板101は、半導体材料、例えば、シリコン(Si)またはガリウム砒素(GaAs)、ガラス、例えば、石英ガラス、合成材料またはセラミックから形成することができる。基板は、単結晶、多結晶または非晶質材料から形成することができる。さらに、基板101は、多数の関連材料を含むことができる。
【0057】
基板101は、電気回路、例えばトランジスタ、発光ダイオードまたは光検出器、これらの回路を接続する導電性トラック、または光学デバイス、ならびにMEMSまたはMOEMS構造を備えることができる。さらに、基板101は、コーティング、例えば、構造化クロム層、予備架橋もしくは硬化ボンド接着剤または分離層を有することができる。
【0058】
さらに、保持装置100は、本体103の凹部109の側壁をシールするシール125を備える。シール125は、Oリングまたは封止リップとすることができる。
【0059】
さらに、キャリア要素107は、その下側に、例えば、ピンの形態のスペーサ117a、117bを有する。
【0060】
スペーサ117a、117bを使用して、凹部109内へのキャリア要素107の下降深さを画定し、クランプ位置にあるキャリア要素107の支持面111が、本体103の上側105と実質的に同一平面に配置されることを保証する。さらに、スペーサ117a、117bは、キャリア要素107が凹部内に完全に下降するのを防止することができ、したがってキャビティ113の最小サイズを保証する。
【0061】
図1に示す実施形態では、キャリア要素107は、支持面上に支持された基板を固定するための固定手段123a、123bも有する。固定手段123a、123bは吸引開口であり得る。さらに、固定手段123a、123bは真空孔または真空溝を備えることができる。
【0062】
本体103は、キャビティ113に圧力を加えるための流体チャネル121を備える。
【0063】
流体チャネル121は、本体部113の孔、特に、中央孔であってよく、これは凹部109または凹部109によって形成されたキャビティ113内にある。
【0064】
一実施形態によれば、保持装置100は、図1には示されていない、圧力接続部を有し、それによって、キャビティ113内の圧力を制御することができる。流体チャネル121は、キャビティ113を圧力接続部に流体的に接続することができる。負圧がキャビティ113に加えられると、キャビティは、結果的に固定手段123a、123bにも当接し、それによって、前記固定手段は、基板101に吸引力を加えることができる。
【0065】
さらに、保持装置100は、停止部を含むことができ、それに対してキャリア要素107は、ローディング位置に押し付けられる。したがって、停止部を使用して、ローディング位置にあるキャリア要素107の位置を画定することができる。停止部は、キャリア要素107が凹部109から滑り落ちるのを防止するためにそのまま使用することができる。
【0066】
図2a~図2dは、さらなる実施形態に係る基板101の配置中における保持装置100の概略図を示す。
【0067】
図2a~図2dにおける保持装置100のキャリア要素107は、4つの吸引開口部201a、201b、201c、201dを備える。吸引開口部201a、201b、201c、201dは、基板101を支持面111に固定するための固定手段を構成している。
【0068】
吸引開口部201a、201b、201c、201dは、流体チャネル203を介してキャビティ113に流体的に接続されている。
【0069】
図2a~図2dの保持装置100は、図示されていない、回転装置を備えることができる。具体的には、保持装置100は、スピナーチャックであり、一方では、基板101に吸引力を加えるために、チャック100に対して、またはキャビティ103に対してモータの中空のシャフト内に真空が維持される。他方では、キャリア要素107の位置を調整する。
【0070】
図2aは、基板101を配置する前のローディング位置にある保持装置100を示す。
【0071】
垂直方向に移動可能なキャリア要素107は、圧縮ばね115a~bによって持ち上げられ、図示されていない、停止部に押し付けられている。
【0072】
第1の負圧P1がキャビティ113に印加され、それにより、キャビティ113内に低真空を生じさせる。結果として生じる力は、圧縮ばね115a~bを圧縮するには小さすぎるので、キャリア要素107は、停止部に当接し続け、本体103の上側105を越えて突出する。
【0073】
さらに、吸引開口部201a、201b、201c、201dのキャビティ113への流体接続により、空気をキャビティ113内に引き込むことができ、さらにキャビティ113内に過度に強い真空が生じるのを防ぐことができる。
【0074】
図2bは、キャリア要素107の支持面111上に配置されている基板101を示す。
【0075】
支持面111上の吸引開口部201a、201b、201c、201dを介して基板101を吸引し、基板101を固定する。同時に、基板101は、吸引開口部201a、201b、201c、201dを覆っている。
【0076】
吸引開口部201a、201b、201c、201dを覆うことは、例えば、周囲領域からの空気がキャビティ113内に入るのを防ぐ。これにより、キャビティ113内にさらなる圧力低下が生じ、その結果、第2の負圧P2が存在する。ここで、P2<P1である。
【0077】
代替の実施形態では、第2の負圧P2は、基板101が配置された後に、例えば、チャック100への圧力接続によって手動で調整することもできる。
【0078】
図2cは、基板101を配置した後にキャリア要素107をクランプ位置まで降下させているところを示している。
【0079】
キャリア要素107は、キャビティ113内の圧力低下によって降下させられる。キャビティ113内の負圧P2によってキャリア要素107に及ぼされる引っ張り力は、キャリア要素107にクランプ要素115a、115bによって及ぼされる押し付け力を上回る。結果として、クランプ要素115a、115bは圧縮される。
【0080】
支持面111が本体103の上面105とほぼ同一平面上に配置されるように、キャリア要素107は、凹部109内に下降し、基板101は、支持面111だけでなく、その上側105にもある状態になる。結果として、キャリア要素107の最大下降深さは、スペーサ117a、117bによって決定される。
【0081】
支持面111および上側105は、クランプ位置において、基板101のための共通のクランプ面を形成する。図2a~図2dに示される実施形態では、本体103の直径は基板の直径に対応しているので、基板は、その完全な裏側が上側105および支持面111上に支持されている。
【0082】
あるいは、本体103は、基板よりも大きい直径を有することも、図1に示すように、基板101よりも小さい直径を有することもできる。したがって、保持装置100は、特に、小さいまたは特に大きい基板101にも使用することができる。
【0083】
図2dは、キャリア要素107が降下させられた後に処理されている基板101を示す。
【0084】
処理中、基板101は、例えば、本体103とキャリア要素107を回転させる、図示しない、回転装置によって回転させられる。
【0085】
このために、本体103は、保持装置100の剛性保持要素内に回転可能に取り付けることができる。特に、保持装置100はスピンチャックとして設計されている。
【0086】
図2a~図2dに示される吸引開口部201a、201b、201c、201dに加えて、本体103は、下側基板101を上側105に固定またはクランプするためのさらなる固定手段を有することができる。さらなる固定手段は、さらなる吸引開口部を備えることができる。
【0087】
さらに、図2dは、塗布装置205を示し、それによって流体を回転する基板に塗布することができる。流体は、例えば、ラッカ、特に、フォトレジスト、コーティング液、洗浄液または溶媒である。
【0088】
代替の実施形態では、図2a~図2dに示されている封止手段119、例えば、封止リップを省略することができる。クランプ位置では、基板101は本体103の上側105と直接接触する。これにより、これにより、封止リップを定期的に交換する必要がなくなり、封止リップを清掃する必要がなくなるため、メンテナンス費用が削減されるという利点が得られる。さらに、基板101が封止リップ上に堆積されているときに基板101が浮遊する可能性が回避される。
【0089】
さらに、可動キャリア要素100は、既知のチャックで使用されているように、基板101をエンドエフェクタに移送するためのリフトピンに置き換えることができる。基板を保持装置100上に載置するため、またはその後基板を保持装置100からピックアップするために、キャリア要素107は、基板を持ち上げることができ、これは追加のリフトピンが不要であることを意味する。
【0090】
代替の実施形態では、本体103は、例えば、本体の上側105に配置されている流体用のさらなる塗布開口部および/またはノズルを備える。
【0091】
上側105上のこれらのさらなる塗布開口部によって、図2bに示されるように、保持装置100がローディング位置に配置され、基板101がキャリア要素107上に支持されている場合、流体を基板101の裏側に塗布することができる。
【0092】
流体は、キャリア要素107によって覆われていない基板101の裏側の表面に塗布することができる。これにより、基板101を保持装置100から持ち上げて回転させることなく、基板裏面のコーティングまたは洗浄または溶剤処理が可能になるという利点が得られる。
【0093】
図3は、一実施形態に係る保持装置100を備える微細構造デバイス用の製造装置300を示す。
【0094】
製造装置300は、コータ、ラッカ、デベロッパ、スピンドライヤ、マスクアライナ、プロジェクションスキャナ、レーザーステッパ、ウエハボンダ、フォトマスクシステム、クリーニングシステムまたはインプリントシステムであり得る。
【0095】
保持装置100は、図1および/または図2a~図2dに示す保持装置100に対応することができる。保持装置100は、製造装置300の圧力供給部に接続することができる。
【0096】
さらに、図3は、エンドエフェクタ303を備えるロボットアーム301を示し、その上に基板101が支持されている。このロボットアーム301によって、基板101を保持装置100上に配置することができ、キャリア要素は、基板101の配置中に持ち上げられる。
【0097】
図4は、一実施形態に係る保持装置100内で基板101を保持するための方法400のフロー図を示す。
【0098】
基板101は、ガラスまたは半導体基板とすることができる。さらに、基板101は、ウエハまたはマスクとすることができる。基板101は、図1図2a~図2d、および/または図3に示す基板101に対応することができる。
【0099】
方法400は、図1および/または図2a~図2dの保持装置100を用いて実行することができ、キャリア要素107をローディング位置まで持ち上げ、キャリア要素107は、基板100よりも小さい直径を有するステップ401と、基板101をキャリア要素107の支持面111上に配置するステップ403と、基板101を支持面111上に固定するステップ405と、キャリア要素107をクランプ位置に降下させるステップ407と、を含む。
【0100】
クランプ位置では、キャリア要素107の支持面111は、本体103の上側105と実質的に同一平面上に配置されている。
【0101】
基板101は、湾曲または変形を有することができ、あるいは非常に柔軟であることができる。湾曲した基板101は、いわゆる反りウエハとすることができる。
【0102】
基板101と比較してキャリア要素107の直径が小さいと、基板101の真下の真空面のサイズが小さいので、大表面チャックよりも特に、湾曲した基板101に容易に吸引力を加えることができる。
【0103】
一実施形態によれば、基板101を支持面111上に固定する405ために、保持装置100のキャビティ113に第1の負圧が加えられ、キャリア要素107をクランプ位置に降下させるために、第2の負圧がキャビティ113に加えられる。第2の負圧は、第1の負圧よりも低い圧力である。
【0104】
キャビティ113への負圧の印加は、引っ張り力を発生させ、これが持ち上げ要素の押圧力を打ち消す。持ち上げ要素は、キャリア要素107に加えられる引っ張り力が第2の負圧の印加中に持ち上げ要素の押圧力を超えるように調整される。結果として、キャリア要素107は、降下させられる。
【0105】
負圧は、外部圧力供給装置を介して保持装置の圧力接続部に加えることができる。
【0106】
代替実施形態では、基板を支持面111に固定する405ために、第1の負圧が保持装置100のキャビティ113に加えられ、例えば、基板101が支持面111上の吸引開口部201a~dを覆うことにより、基板101がキャリア要素107上に配置された後、キャビティ113内に第2の負圧が加えられる。
【0107】
クランプ位置では、基板101と上側105との間に作用する負圧によって、基板101を本体103の上面105に対して追加的に引っ張り及び/又は固定することができる。
【0108】
一実施形態によれば、キャリア要素107は、基板101に加えられる力が基板101の湾曲または変形を低減するほど大きいように、クランプ位置にある湾曲または変形した基板101を本体103の上側105に押し付けることができる。
【0109】
このようにして加えられた力によって、基板を滑らかにするおよび/またはクランプすることができる。
【0110】
さらに、方法400は、特に、キャリア要素107をクランプ位置に降下させるステップ407の後に、基板101を回転させるステップを含むことができる。
【0111】
基板101を降下させた後、基板101をプロセス処理または処理することができ、例えば、回転する基板にコーティングを施すことができる。
【0112】
基板101の降下407は、例えば、予め設定されたプロセスパラメータに応じて、基板101を配置した403後または基板101を配置した直後に所定の時間実行することができる。
【0113】
製造装置300では、保持装置100の動作モードは、例えば、プロセスモジュールによって制御される。
【0114】
湾曲したウエハを基板ハンドラ(ロボット、エンドエフェクタ付きアクスルなど)から保持装置100に移送するとき、プロセスモジュールは、例えば、持ち上げられた“Zチャック”(キャリア要素107)上で基板の受け取りを基板ハンドラに信号で伝え、その後、基板ハンドラの保持真空が解除される。したがって、基板ハンドラから保持装置100への搬送誤差を最小限に抑えることができる。
【0115】
湾曲した基板101を有するキャリア要素107が下降しているとき、基板は、センタリングされ案内される。横方向の滑りや浮きはもはや不可能である。保持装置100の外側領域、例えば、本体105の上側105の封止リップ119は、下降手順中に基板101と接触することができ、その結果、基板の下に大きな表面の真空が確立され、基板101は平面的に二次元的に引っ張られる。
【符号の説明】
【0116】
100 保持装置
101 基板
103 本体
105 上側
107 キャリア要素
109 凹部
111 支持面
113 キャビティ
115a~b クランプ要素
117a~b スペーサ
119 シール手段
121 流体チャネル
123a~b 固定手段
125 シール
201a~d 吸引開口部
203 流体チャネル
205 塗布装置
300 微細構造デバイス用製造装置
301 ロボットアーム
303 エンドエフェクタ
400 基板を保持するための方法
401 キャリア要素を持ち上げる
403 基板を配置する
405 基板を固定する
407 キャリア要素を降下させる
図1
図2a
図2b
図2c
図2d
図3
図4