IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 本田技研工業株式会社の特許一覧

特許7576915制御システム、制御方法、車両、およびプログラム
<>
  • 特許-制御システム、制御方法、車両、およびプログラム 図1
  • 特許-制御システム、制御方法、車両、およびプログラム 図2
  • 特許-制御システム、制御方法、車両、およびプログラム 図3
  • 特許-制御システム、制御方法、車両、およびプログラム 図4
  • 特許-制御システム、制御方法、車両、およびプログラム 図5
  • 特許-制御システム、制御方法、車両、およびプログラム 図6
  • 特許-制御システム、制御方法、車両、およびプログラム 図7
  • 特許-制御システム、制御方法、車両、およびプログラム 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】制御システム、制御方法、車両、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/00 20060101AFI20241025BHJP
   B60W 40/02 20060101ALI20241025BHJP
   B60W 40/04 20060101ALI20241025BHJP
   B60W 40/06 20120101ALI20241025BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20241025BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20241025BHJP
【FI】
B60W30/00
B60W40/02
B60W40/04
B60W40/06
B60W60/00
G08G1/16 C
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020006984
(22)【出願日】2020-01-20
(65)【公開番号】P2021112995
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-11-28
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小森 賢二
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 聖
【審査官】戸田 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/059973(WO,A1)
【文献】特開2016-162299(JP,A)
【文献】特開2007-71860(JP,A)
【文献】特開2012-254741(JP,A)
【文献】特開2015-26312(JP,A)
【文献】特表2014-515527(JP,A)
【文献】国際公開第2016/063383(WO,A1)
【文献】特開2018-106266(JP,A)
【文献】特開2017-100608(JP,A)
【文献】特開2019-069659(JP,A)
【文献】特開2005-163936(JP,A)
【文献】国際公開第2016/052507(WO,A1)
【文献】特開2018-124871(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00
B60W 40/02
B60W 40/04
B60W 40/06
B60W 60/00
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の制御システムであって、
前記車両の周辺の道路構造物および交通参加者の少なくともいずれかに関する外界情報を検知する第一の検知手段と、
前記車両の位置を検知する第二の検知手段と、
前記第一の検知手段が検知可能な範囲に関する検知範囲情報を含む地図情報を前記第二の検知手段が検知した前記位置に基づいて取得し、取得した前記地図情報に含まれる、前記位置において前記第一の検知手段が検知可能な範囲に関する検知範囲情報を特定する特定手段と、
特定した前記検知範囲情報から、前記第一の検知手段が検知可能な距離が第一の距離の場合に、前記第一の距離より大きな第二の距離の場合より走行リスクが高くなるように計算した前記走行リスクを計算し、
検知した前記外界情報から、前記車両の周辺の前記道路構造物および前記交通参加者の少なくともいずれかと前記車両との距離が第三の距離の場合に、前記第三の距離より大きな第四の距離の場合より走行リスクが高くなるように走行リスクを補正し、
補正した前記走行リスクが第一の閾値以上である場合は前記車両を停車して搭乗者に運転の権限委譲を行い、前記第一の閾値未満かつ前記第一の閾値より小さい第二の閾値より大きい場合は搭乗者に所定の期限内での運転権限の委譲を依頼し、前記第二の閾値以下である場合は自動運転レベル3で走行するように前記車両の自動運転レベルを制御する、
制御手段と、
を備えることを特徴とする制御システム。
【請求項2】
前記検知範囲情報は、前記第一の検知手段が検知可能な距離に応じた情報を含むことを特徴とする請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記第一の検知手段は、カメラ、ミリ波レーダ、センチ波レーダ、およびLIDARの少なくとも1つのセンサを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の制御システム。
【請求項4】
前記地図情報は、前記少なくとも1つのセンサの種類に対応する検知範囲情報を含み、前記特定手段は、前記少なくとも1つのセンサの種類に基づいて前記検知範囲情報を特定することを特徴とする請求項3に記載の制御システム。
【請求項5】
前記地図情報は、複数のセンサの種類に対応する検知範囲情報を含むことを特徴とする請求項4に記載の制御システム。
【請求項6】
前記地図情報は、前記車両の位置および前記車両の走行方向に対応する検知範囲情報を含むことを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の制御システム。
【請求項7】
前記外界情報は道路構造物に関する情報を含むことを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の制御システム。
【請求項8】
前記外界情報は、前記交通参加者に関する情報を含み、前記交通参加者とは対向車、並走車、自転車、歩行者、および駐車車両の少なくとも何れかを含むことを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載の制御システム。
【請求項9】
前記外界情報は、前記車両の周辺が雨天、曇天、霧、降雪、および黄砂の少なくともいずれかであること、強風による浮遊物を検出したこと、前記車両に配置されたカメラの正面方向または前記車両の進行方向の前方に光源があること、並びに光量が不足していることの少なくとも何れかを含む自然環境に関する情報を含むことを特徴とする請求項1から8の何れか1項に記載の制御システム。
【請求項10】
前記制御手段は、補正した前記走行リスクが走行リスクの所定の範囲を満たす最高の車速を前記車両の目標速度としてさらに設定することを特徴とする請求項1から9の何れか1項に記載の制御システム。
【請求項11】
前記制御手段は、前記第一の検知手段が前記交通参加者を検出した場合に、前記第一の検知手段が前記交通参加者を検出しない場合と比較して前記走行リスクがより高くなるように計算することを特徴とする請求項8に記載の制御システム。
【請求項12】
車両の周辺の道路構造物および交通参加者の少なくともいずれかに関する外界情報を検知する第一の検知部と、前記車両の位置を検知する第二の検知部とを備える前記車両の制御システムの制御方法であって、
前記第一の検知部が検知可能な範囲に関する検知範囲情報を含む地図情報を前記第二の検知部が検知した前記位置に基づいて取得し、取得した前記地図情報に含まれる、前記位置において前記第一の検知部が検知可能な範囲に関する検知範囲情報を特定する特定工程と、
特定した前記検知範囲情報から、前記第一の検知部が検知可能な距離が第一の距離の場合に、前記第一の距離より大きな第二の距離の場合より走行リスクが高くなるように計算した前記走行リスクを計算し、
検知した前記外界情報から、前記車両の周辺の前記道路構造物および前記交通参加者の少なくともいずれかと前記車両との距離が第三の距離の場合に、前記第三の距離より大きな第四の距離の場合より走行リスクが高くなるように走行リスクを補正し、
補正した前記走行リスクが第一の閾値以上である場合は前記車両を停車して搭乗者に運転の権限委譲を行い、前記第一の閾値未満かつ前記第一の閾値より小さい第二の閾値より大きい場合は搭乗者に所定の期限内での運転権限の委譲を依頼し、前記第二の閾値以下である場合は自動運転レベル3で走行するように前記車両の自動運転レベルを制御する、
制御工程と、
を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項13】
車両であって、
前記車両の周辺の道路構造物および交通参加者の少なくともいずれかに関する外界情報を検知する第一の検知手段と、
前記車両の位置を検知する第二の検知手段と、
前記第一の検知手段が検知可能な範囲に関する検知範囲情報を含む地図情報を前記第二の検知手段が検知した前記位置に基づいて取得し、取得した前記地図情報に含まれる、前記位置において前記第一の検知手段によって検知可能な範囲に関する検知範囲情報を特定する特定手段と、
特定した前記検知範囲情報から、前記第一の検知手段が検知可能な距離が第一の距離の場合に、前記第一の距離より大きな第二の距離の場合より走行リスクが高くなるように計算した前記走行リスクを計算し、
検知した前記外界情報から、前記車両の周辺の前記道路構造物および前記交通参加者の少なくともいずれかと前記車両との距離が第三の距離の場合に、前記第三の距離より大きな第四の距離の場合より走行リスクが高くなるように走行リスクを補正し、
補正した前記走行リスクが第一の閾値以上である場合は前記車両を停車して搭乗者に運転の権限委譲を行い、前記第一の閾値未満かつ前記第一の閾値より小さい第二の閾値より大きい場合は搭乗者に所定の期限内での運転権限の委譲を依頼し、前記第二の閾値以下である場合は自動運転レベル3で走行するように前記車両の自動運転レベルを制御する
制御手段と、
を備えることを特徴とする車両。
【請求項14】
車両の周辺の道路構造物および交通参加者の少なくともいずれかに関する外界情報を検知する第一の検知部と、前記車両の位置を検知する第二の検知部とを備える前記車両の制御システムに備えられたコンピュータに、
前記第一の検知部が検知可能な範囲に関する検知範囲情報を含む地図情報を前記第二の検知部が検知した前記位置に基づいて取得し、取得した前記地図情報に含まれる、前記位置において前記第一の検知部が検知可能な範囲に関する検知範囲情報を特定する特定ステップと、
特定した前記検知範囲情報から、前記第一の検知部が検知可能な距離が第一の距離の場合に、前記第一の距離より大きな第二の距離の場合より走行リスクが高くなるように計算した前記走行リスクを計算し、
検知した前記外界情報から、前記車両の周辺の前記道路構造物および前記交通参加者の少なくともいずれかと前記車両との距離が第三の距離の場合に、前記第三の距離より大きな第四の距離の場合より走行リスクが高くなるように走行リスクを補正し、
補正した前記走行リスクが第一の閾値以上である場合は前記車両を停車して搭乗者に運転の権限委譲を行い、前記第一の閾値未満かつ前記第一の閾値より小さい第二の閾値より大きい場合は搭乗者に所定の期限内での運転権限の委譲を依頼し、前記第二の閾値以下である場合は自動運転レベル3で走行するように前記車両の自動運転レベルを制御する
制御ステップと、
を実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動運転車の制御システム、制御方法、車両、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、カメラなどの検出部が検出した見通しに関する情報から走行リスクを判定し、走行制御を行う自動運転車の技術が提案されている。例えば特許文献1では、走行経路における死角の有無を判断し、走行経路における目標位置および目標姿勢を設定する走行技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-186724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば自動運転車が、狭路で自動運転車の近くに位置する歩行者や対向車などの交通参加者を検出したり、気象条件によってセンサの検出性能が低下した結果、過度に走行経路の走行リスクを高く見積もる場合がある。このような場合、誤って高く見積もった走行リスクで走行することとなるため、自動運転車が走行経路を適切に走行できない場合があった。
【0005】
本発明の目的は、走行経路の走行リスクを適切に評価して走行する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、車両の制御システムは、前記車両の周辺の道路構造物および交通環境の少なくともいずれかに関する外界情報を検知する第一の検知手段と、前記車両の位置を検知する第二の検知手段と、前記第一の検知手段が検知可能な範囲に関する検知範囲情報を含む地図情報を取得し、取得した前記地図情報に含まれる、前記位置において前記第一の検知手段が検知可能な範囲に関する検知範囲情報を特定する特定手段と、特定した前記検知範囲情報から、前記第一の検知手段が検知可能な距離が第一の距離の場合に、前記第一の距離より大きな第二の距離の場合より走行リスクが高くなるように計算した前記走行リスクを計算し、検知した前記外界情報から、前記車両の周辺の前記道路構造物および前記交通参加者の少なくともいずれかと前記車両との距離が第三の距離の場合に、前記第三の距離より大きな第四の距離の場合より走行リスクが高くなるように走行リスクを補正し、補正した前記走行リスクが第一の閾値以上である場合は前記車両を停車して搭乗者に運転の権限委譲を行い、前記第一の閾値未満かつ前記第一の閾値より小さい第二の閾値より大きい場合は搭乗者に所定の期限内での運転権限の委譲を依頼し、前記第二の閾値以下である場合は自動運転レベル3で走行するように前記車両の自動運転レベルを制御する制御手段と、を備える。
【0007】
また、本発明によれば、制御方法は、車両の周辺の道路構造物および交通環境の少なくともいずれかに関する外界情報を検知する第一の検知部と、前記車両の位置を検知する第二の検知部とを備える前記車両の制御システムの制御方法であって、前記第一の検知部が検知可能な範囲に関する検知範囲情報を含む地図情報を前記第二の検知部が検知した前記位置に基づいて取得し、取得した前記地図情報に含まれる、前記位置において前記第一の検知部が検知可能な範囲に関する検知範囲情報を特定する特定工程と、特定した前記検知範囲情報から、前記第一の検知部が検知可能な距離が第一の距離の場合に、前記第一の距離より大きな第二の距離の場合より走行リスクが高くなるように計算した前記走行リスクを計算し、検知した前記外界情報から、前記車両の周辺の前記道路構造物および前記交通参加者の少なくともいずれかと前記車両との距離が第三の距離の場合に、前記第三の距離より大きな第四の距離の場合より走行リスクが高くなるように走行リスクを補正し、補正した前記走行リスクが第一の閾値以上である場合は前記車両を停車して搭乗者に運転の権限委譲を行い、前記第一の閾値未満かつ前記第一の閾値より小さい第二の閾値より大きい場合は搭乗者に所定の期限内での運転権限の委譲を依頼し、前記第二の閾値以下である場合は自動運転レベル3で走行するように前記車両の自動運転レベルを制御する制御工程と、を含む。
【0008】
また、本発明によれば、車両は、前記車両の周辺の道路構造物および交通環境の少なくともいずれかに関する外界情報を検知する第一の検知手段と、前記車両の位置を検知する第二の検知手段と、前記第一の検知手段が検知可能な範囲に関する検知範囲情報を含む地図情報を前記第二の検知手段が検知した前記位置に基づいて取得し、取得した前記地図情報に含まれる、前記位置において前記第一の検知手段が検知可能な範囲に関する検知範囲情報を特定する特定手段と、特定した前記検知範囲情報から、前記第一の検知手段が検知可能な距離が第一の距離の場合に、前記第一の距離より大きな第二の距離の場合より走行リスクが高くなるように計算した前記走行リスクを計算し、検知した前記外界情報から、前記車両の周辺の前記道路構造物および前記交通参加者の少なくともいずれかと前記車両との距離が第三の距離の場合に、前記第三の距離より大きな第四の距離の場合より走行リスクが高くなるように走行リスクを補正し、補正した前記走行リスクが第一の閾値以上である場合は前記車両を停車して搭乗者に運転の権限委譲を行い、前記第一の閾値未満かつ前記第一の閾値より小さい第二の閾値より大きい場合は搭乗者に所定の期限内での運転権限の委譲を依頼し、前記第二の閾値以下である場合は自動運転レベル3で走行するように前記車両の自動運転レベルを制御する制御手段と、を備える。
【0009】
また、本発明によれば、プログラムは、車両の周辺の道路構造物および交通環境の少なくともいずれかに関する外界情報を検知する第一の検知部と、前記車両の位置を検知する第二の検知部とを備える前記車両の制御システムに備えられたコンピュータに、前記第一の検知部が検知可能な範囲に関する検知範囲情報を含む地図情報を前記第二の検知部が検知した前記位置に基づいて取得し、取得した前記地図情報に含まれる、前記位置において前記第一の検知部が検知可能な範囲に関する検知範囲情報を特定する特定ステップと、特定した前記検知範囲情報から、前記第一の検知部が検知可能な距離が第一の距離の場合に、前記第一の距離より大きな第二の距離の場合より走行リスクが高くなるように計算した前記走行リスクを計算し、検知した前記外界情報から、前記車両の周辺の前記道路構造物および前記交通参加者の少なくともいずれかと前記車両との距離が第三の距離の場合に、前記第三の距離より大きな第四の距離の場合より走行リスクが高くなるように走行リスクを補正し、補正した前記走行リスクが第一の閾値以上である場合は前記車両を停車して搭乗者に運転の権限委譲を行い、前記第一の閾値未満かつ前記第一の閾値より小さい第二の閾値より大きい場合は搭乗者に所定の期限内での運転権限の委譲を依頼し、前記第二の閾値以下である場合は自動運転レベル3で走行するように前記車両の自動運転レベルを制御する制御ステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、走行経路の走行リスクを適切に評価して走行する技術を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係る車両のハードウェアブロック図。
図2】本実施形態に係る車両のソフトウェアブロック図。
図3】本実施形態に係る車両の検知範囲の一例を示す図。
図4】本実施形態に係る車両が実行する処理の一例を示す処理シーケンス図。
図5】本実施形態に係る車両によって実行される、走行リスクを計算する処理の一例を示す図。
図6】本実施形態に係る走行リスクに影響を与える項目の一例を示す図。
図7】本実施形態に係る走行リスク、速度、および運転モードの関係を示すグラフ。
図8】本実施形態に係る車両の検知範囲の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴は任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0013】
<第1実施形態>
(ハードウェア構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る車両用制御装置のブロック図であり、車両1を制御する。図1において、車両1はその概略が平面図と側面図とで示されている。車両1は一例としてセダンタイプの四輪の乗用車である。
【0014】
図1の制御装置は、制御ユニット2を含む。制御ユニット2は車内ネットワークにより通信可能に接続された複数のECU20~29を含む。各ECUは、CPUに代表されるプロセッサ、半導体メモリ等の記憶デバイス、外部デバイスとのインタフェース等を含む。記憶デバイスにはプロセッサが実行するプログラムやプロセッサが処理に使用するデータ等が格納される。各ECUはプロセッサ、記憶デバイスおよびインタフェース等を複数備えているコンピュータなどであってもよい。
【0015】
以下、各ECU20~29が担当する機能等について説明する。なお、ECUの数や、担当する機能については適宜設計可能であり、本実施形態よりも細分化したり、あるいは、統合することが可能である。
【0016】
ECU20は、車両1の自動運転に関わる制御を実行する。自動運転においては、車両1の操舵と、加減速の少なくともいずれか一方を自動制御する。後述する制御例では、操舵と加減速の双方を自動制御する。
【0017】
ECU21は、電動パワーステアリング装置3を制御する。電動パワーステアリング装置3は、ステアリングホイール31に対する運転者の運転操作(操舵操作)に応じて前輪を操舵する機構を含む。また、電動パワーステアリング装置3は操舵操作をアシストしたり、あるいは、前輪を自動操舵するための駆動力を発揮するモータや、操舵角を検知するセンサ等を含む。車両1の運転状態が自動運転の場合、ECU21は、ECU20からの指示に対応して電動パワーステアリング装置3を自動制御し、車両1の進行方向を制御する。
【0018】
ECU22および23は、車両の周囲状況を検知する検知ユニット41~43の制御および検知結果の情報処理を行う。検知ユニット41は、車両1の前方を撮影するカメラであり(以下、フロントカメラ41と表記する場合がある。)、本実施形態の場合、車両1のルーフ前部でフロントウィンドウの車室内側に取り付けられる。フロントカメラ41が撮影した画像の解析により、物標の輪郭抽出や、道路上の車線の区画線(白線等)を抽出可能である。
【0019】
検知ユニット42は、Light Detection and Ranging(LIDAR:ライダ)であり(以下、ライダ42と表記する場合がある)、車両1の周囲の物標を検知したり、物標との距離を測距する。本実施形態の場合、ライダ42は5つ設けられており、車両1の前部の各隅部に1つずつ、後部中央に1つ、後部各側方に1つずつ設けられている。検知ユニット43は、ミリ波レーダであり(以下、レーダ43と表記する場合がある)、車両1の周囲の物標を検知したり、物標との距離を測距する。本実施形態の場合、レーダ43は5つ設けられており、車両1の前部中央に1つ、前部各隅部に1つずつ、後部各隅部に一つずつ設けられている。
【0020】
ECU22は、一方のフロントカメラ41と、各ライダ42の制御および検知結果の情報処理を行う。ECU23は、他方のフロントカメラ41と、各レーダ43の制御および検知結果の情報処理を行う。車両の周囲状況を検知する装置を二組備えたことで、検知結果の信頼性を向上でき、また、カメラ、ライダ、レーダといった種類の異なる検知ユニットを備えたことで、車両の周辺環境の解析を多面的に行うことができる。また、ECU23は、サイドカメラ44およびリアカメラ45の制御及び検知結果の情報処理を行う。
【0021】
ECU24は、ジャイロセンサ5、GPSセンサ24b、通信装置24cの制御および検知結果あるいは通信結果の情報処理を行う。ジャイロセンサ5は車両1の回転運動を検知する。ジャイロセンサ5の検知結果や、車輪速等により車両1の進路を判定することができる。GPSセンサ24bは、車両1の現在位置を検知する。通信装置24cは、地図情報や交通情報を提供するサーバと無線通信を行い、これらの情報を取得する。ECU24は、記憶デバイスに構築された地図情報のデータベース24aにアクセス可能であり、ECU24は現在地から目的地へのルート探索等を行う。
【0022】
ECU25は、車車間通信用の通信装置25aを備える。通信装置25aは、周辺の他車両と無線通信を行い、車両間での情報交換を行う。
【0023】
ECU26は、パワープラント6を制御する。パワープラント6は車両1の駆動輪を回転させる駆動力を出力する機構であり、例えば、エンジンと変速機とを含む。ECU26は、例えば、アクセルペダル7Aに設けた操作検知センサ7aにより検知した運転者の運転操作(アクセル操作あるいは加速操作)に対応してエンジンの出力を制御したり、車速センサ7cが検知した車速等の情報に基づいて変速機の変速段を切り替える。車両1の運転状態が自動運転の場合、ECU26は、ECU20からの指示に対応してパワープラント6を自動制御し、車両1の加減速を制御する。
【0024】
ECU27は、方向指示器8(ウィンカ)を含む灯火器(ヘッドライト、テールライト等)を制御する。図1の例の場合、方向指示器8は車両1の前部、ドアミラーおよび後部に設けられている。
【0025】
ECU28は、入出力装置9の制御を行う。入出力装置9は運転者に対する情報の出力と、運転者からの情報の入力の受け付けを行う。音声出力装置91は運転者に対して音声により情報を報知する。表示装置92は運転者に対して画像の表示により情報を報知する。表示装置92は例えば運転席正面に配置され、インストルメントパネル等を構成する。なお、ここでは、音声と表示を例示したが振動や光により情報を報知してもよい。また、音声、表示、振動または光のうちの複数を組み合わせて情報を報知してもよい。更に、報知すべき情報のレベル(例えば緊急度)に応じて、組み合わせを異ならせたり、報知態様を異ならせてもよい。
【0026】
入力装置93は運転者が操作可能な位置に配置され、車両1に対する指示を行うスイッチ群であるが、音声入力装置も含まれてもよい。
【0027】
ECU29は、ブレーキ装置10やパーキングブレーキ(不図示)を制御する。ブレーキ装置10は例えばディスクブレーキ装置であり、車両1の各車輪に設けられ、車輪の回転に抵抗を加えることで車両1を減速あるいは停止させる。ECU29は、例えば、ブレーキペダル7Bに設けた操作検知センサ7bにより検知した運転者の運転操作(ブレーキ操作)に対応してブレーキ装置10の作動を制御する。車両1の運転状態が自動運転の場合、ECU29は、ECU20からの指示に対応してブレーキ装置10を自動制御し、車両1の減速および停止を制御する。ブレーキ装置10やパーキングブレーキは車両1の停止状態を維持するために作動することもできる。また、パワープラント6の変速機がパーキングロック機構を備える場合、これを車両1の停止状態を維持するために作動することもできる。
【0028】
(ソフトウェア構成)
次に、図2を参照し、本実施形態に係る車両1が備える制御システムのソフトウェア構成を説明する。図2の制御システム200は、図1に示すECU20~29のうちの少なくとも何れかによって実現される。制御システム200は、地図情報取得部201、検知範囲判定部202、外界情報取得部203、車両情報取得部204、リスク計算部205、車速判定部206、及び自動運転モード制御部207を含む。
【0029】
地図情報取得部201は、地図情報データベース24aから地図情報を取得する。一例では、地図情報取得部201は、通信装置24cを介してネットワーク上の他の装置(不図示)から地図情報を取得してもよい。本実施形態において、地図情報は、位置情報に対応付けられた路幅、勾配、および曲率などの走行経路に関する情報と、その位置における車両によって検知可能な範囲に対応する検知範囲情報を含むものとする。例えば、検知範囲情報とは、外界情報取得部203の検知範囲に関する情報および道路構造令で定められる視距に関する情報の少なくとも何れかを含んでもよい。この場合、検知範囲情報は、道路の走行方向に対応付けられた視距に関する情報であってもよい。本実施形態では、検知範囲情報は、外界情報取得部203が、走行中の位置においてどの程度先の路面を検出できるかを示す距離に関する情報であるものとして説明を行う。一例では、検知範囲情報は、外界情報取得部203が検出できる路面の角度であって、走行中の位置において所定の距離だけ離れた路面の角度であってもよい。なお、車両1がナビゲーションシステムに従って走行する場合、地図情報取得部201は走行予定経路周辺の地図情報を取得してもよい。
【0030】
一例では、検知範囲情報は、外界情報取得部203の種類ごとの検知範囲であってもよい。その場合、地図情報は例えば、それぞれが位置情報に対応付けられた、カメラによって検出可能な路面の距離に関する情報と、ミリ波レーダによって検出可能な路面の距離に関する情報とを含んでもよい。なお、検知範囲情報は、位置に加え、車両1の種類、車両1の走行している方向、外界情報取得部203が設置されている高さ、および車高の少なくとも何れかと関連付けられてもよい。
【0031】
検知範囲判定部202は、地図情報取得部201が取得した地図情報に含まれる検知範囲情報から、GPSセンサ24bから取得した位置情報に対応する検知範囲情報を判定することで、その位置における車両1の検知範囲を取得する。すなわち、検知範囲判定部202は、地図情報に検知範囲情報がそのまま入っている場合には、その検知範囲情報を抜き出してもよい。これによって、車両1は高速に検知範囲情報を取得することができる。また、地図情報が外界情報取得部203の種類ごとに異なる複数の検知範囲情報を含む場合、検知範囲情報取得部202は、位置情報と車両1が有する外界情報取得部203の種類に基づいて、検知範囲情報を抜き出してもよい。また、検知範囲判定部202は、地図情報に路幅、勾配、曲率などの情報が含まれる場合には、これらの情報に基づいて検知範囲を計算することで検知範囲情報を取得してもよい。地図情報に基づいて検知範囲情報を特定することで、外界情報取得部203で検出できない、今後走行予定の検知範囲情報を取得することができる。これによって、交差点を右折予定または左折予定の車両1は、右折後または左折後の検知範囲情報を特定することができ、右折または左折の後に検知範囲が小さくなることが予想されるため、右折または左折の前に走行速度を下げるなどの制御を行うことができる。別の例では、検知範囲判定部202は、地図情報に検知範囲情報がそのまま入っている場合、その検知範囲情報を抜き出して、外界情報取得部203から取得した外界情報に基づいて補正を行ってもよい。また、地図情報が検知範囲情報を含み、検知範囲情報が、車両1の位置に加え、外界情報取得部203の種類に関連付けられる情報である場合には、検知範囲判定部202は、車両1が備える外界情報取得部203の種類に応じて、検知範囲情報を取得することができる。また、地図情報が検知範囲情報を含み、検知範囲情報が、車両1の位置に加え、車両1の走行方向に関連付けられる情報である場合には、検知範囲判定部202は、車両1の走行方向に応じて、検知範囲情報を取得することができる。
【0032】
外界情報取得部203は、カメラ、LIDAR、ミリ波レーダ、およびセンチ波レーダの少なくとも何れかを含むセンサである。本実施形態において、外界情報とは、フロントカメラが撮像した画像に公知の画像解析技術を適用することによって検出したオブジェクトに関する情報であるものとして説明を行う。一例では、外界情報取得部203は、電信柱、カーブミラー、側溝、街路樹、およびガードレールを含む道路構造物、ならびに、対向車、並走車、駐車車両、自転車、および歩行者を含む交通参加者、の少なくとも何れかを検出することができる。また、一例では、外界情報取得部203は、道路構造物、交通参加者に加え、天候情報や気温を検出してもよい。また、外界情報は、カメラ、LIDAR、ミリ波レーダ、およびセンチ波レーダの少なくとも何れかを含むセンサから得たデータまたはその組み合わせであればよく、例えばオブジェクトの位置、明度、および深度のうちの少なくとも何れかに関する情報をさらに含んでもよい。
【0033】
車両情報取得部204は、車両1の自動運転モードや、車速などの車両の状態に関する車両情報を取得する。一例では、車両情報は、例えば米国運輸省(NHTSA)が定める自動運転モードのいずれで車両1が走行しているかを示す情報を含む。また、車両情報は、車両1のAnti-Lock Brake System(ABS)、横滑り装置、ブレーキ、ウィンカ、ワイパー、およびヘッドライトの少なくとも何れかが作動しているか否かを示す情報を含んでもよい。また、車両情報は、車両が駐車動作および車線変更の少なくとも何れかを行っていることを示す情報を含んでもよい。
【0034】
リスク計算部205は、検知範囲判定部202で判定した検知範囲に少なくとも基づいて走行に係る走行リスクを計算する。走行リスクの計算については図5を参照して後述する。
【0035】
車速判定部206は、リスク計算部205で計算した走行リスクに基づいて、車両1の走行速度を判定する。自動運転モード制御部207は、リスク計算部205で計算した走行リスクに基づいて車両1の自動運転モードの遷移を指示する。車速決定部206および自動運転モード制御部207の詳細については図4および図7を参照して後述する。
【0036】
次に、図3を参照して本実施形態に係る車両1の検知範囲の一例について説明を行う。図3(A)および図3(B)は、道路301を車両1が走行する状況を示す上方図である。
【0037】
図3(A)において、車両1は外界情報取得部203によって最大で範囲303の内側の外界情報を取得できるものとする。点線矢印302は、車両1が走行予定の経路を示す。外界情報取得部203が検知できる走行経路は、矢印304に示す距離までである。このため、検知範囲判定部202は矢印304の長さを検知範囲として判定する。一例では、検知範囲判定部202は、車両1から矢印304に指し示された点までの走行予定経路(矢印302)の長さを検知範囲として判定してもよい。車両1は、地図情報取得部201で取得した道路301に関する情報から、検知範囲を判定する。
【0038】
なお、一例では、検知範囲判定部202は、検知可能な距離が、複数のレベルの何れであるかを判定してもよい。例えば、検知範囲情報は、30m以上の距離を検知可能であれば30、20m以上30m未満の距離を検知可能であれば20、10m以上20m未満の距離を検知可能であれば10、10m未満の距離を検知可能であれば5と設定されてもよい。これによって、走行経路の所定の範囲は所定の検知範囲に該当する、という検知範囲情報を地図情報に含めることができ、地図情報のデータ量を減らすことができる。
【0039】
次に、図3(B)において、車両1は図3(A)と同様に、外界情報取得部203によって最大範囲303の認識ができ、点線矢印302に沿った経路で走行するが、道路301上に交通参加者305が位置するものとする。ここで、交通参加者305は、検出範囲内にいるため外界情報取得部203によって検出される。この場合、外界情報取得部203によって認識できる走行経路の長さは矢印306または矢印306に指し示された点までの走行予定経路(矢印302)の長さであるものとして判定すると、実際の走行リスクと乖離し、経路に適した車速または自動運転モードで走行できなくなる場合がある。そこで、本実施形態に係る車両1は、地図情報から検知範囲判定部202が判定した検知範囲情報をベースとして、外界情報取得部203によって検出された外界情報を加味して走行リスクを判定することで、経路に適した車速または自動運転モードで走行することができる。
【0040】
図4に、本実施形態に係る制御システム200が実行する処理の一例を示す。図4の処理は、車両1の走行中の所定のタイミングで実行される。まず、S401で、地図情報取得部201は地図情報を取得する。地図情報は、GPSセンサ24bで取得した現在地の位置情報に基づいて取得される。一例では、地図情報は車両1の走行方向にさらに基づいて取得されてもよい。
【0041】
続いて、制御システム200は処理をS402に進め、外界情報取得部203を介して外界情報を取得する。続いて、S403において、制御システム200はS401で取得した地図情報とS402で取得した外界情報に基づいて走行リスクを計算する。
【0042】
ここで、図5(A)を参照してS403の詳細を説明する。まずS501で、検知範囲判定部202は、S401で取得した地図情報に基づいて検知範囲を判定する。上述したように、地図情報に含まれる検知範囲に関する情報を取得してもよいし、地図情報に含まれる曲率、勾配、路幅などの情報に基づいて検知範囲を計算してもよい。
【0043】
続いて、S502で、リスク計算部205は、検知範囲と車両1の走行速度に基づいてベースリスクを計算する。例えば、走行速度VSP、検知範囲VDIとした場合、ベースリスクPRPを、
PRP=K(VSP/VDI)
として計算することができる。ここで、Kとは基準チューニングゲインであり、車両1のブレーキ性能、加速能力、およびステアリング性能などに基づいてあらかじめ設定されうる。
【0044】
続いて、制御システム200は処理をS503に進め、外界情報取得部203で検出した道路構造物に関する情報に基づいてリスクを計算する。続いて、S504で、制御システム200は外界情報取得部203で検出した交通参加者などの交通環境に基づいてリスクを計算する。続いて、S505で、制御システム200は外界情報取得部203で検出した自然環境に基づいてリスクを計算する。自然環境とは、雨天、曇天、霧、降雪、黄砂、強風による浮遊物を検出し、例えばフロントカメラなどの、少なくとも1つのセンサの検出性能の低下が予想されること、路面が凍結していること、および夜間であること、の少なくとも何れかを含む。また、自然環境は、フロントカメラ41、サイドカメラ44、およびリアカメラ45の少なくともいずれかのカメラの正面方向に光源が存在する、すなわち逆光であることを含む。この場合も、カメラによって取得した画像または動画に白飛び、フレアやゴーストが発生し、検出性能の低下が予想される。
【0045】
なお、外界情報を取得する際、車両情報取得部204で取得した情報を用いてもよい。例えば、車両情報取得部204でワイパーが作動していることを示す情報を取得すれば、雨または雪が降っていることを検出することができる。
【0046】
続いて、制御システム200は、S506において、道路構造リスク、交通環境リスク、および自然環境リスクに基づいて、ベースリスクを補正して走行リスクを計算する。例えば、道路構造リスクの加重平均をL、交通環境リスクの加重平均をT、自然環境リスクの加重平均をNとして、
PRP=(K+C)(VSP/VDI)
C=cbrt(L×T×N)
であってもよい。cbrt()は、立方根を求める関数である。なお、S502の処理は省略されてもよい。すなわち、S501で取得した検知範囲VDI、S503~S505で取得した道路構造リスクL、交通環境リスクT、自然環境リスクNを用いて、S506において走行リスクの計算を行ってもよい。
【0047】
ここで、図6を参照して、道路構造、交通環境、および自然環境ごとに設定されるリスク値の一例を説明する。図6の表はリスク計算部205または外界情報取得部203によって保持されうる。
【0048】
図6に示すように、道路構造、交通環境、および自然環境の各項目は、あらかじめ設定された値を有する。ここから、例えば外界情報取得部203が対向車を検出した場合には、対向車を考慮して交通環境リスクの加重平均を計算する。なお、外界情報取得部203が、車両1のワイパーが動作中であるか否かを判定する場合、ワイパーの動作速度がINTである場合には0.5、Hiである場合には2.0であるものとして計算してもよい。すなわち、同じ項目であっても、複数の値を有してもよく、外界情報取得部203で取得した交通参加者の位置などによって異なる値が用いられてもよい。別の例では、車両1と対向車との距離に応じて、対向車のリスク値を、3(5m未満の距離)、2(5m以上15m未満の距離)、1(15m以上離れている)などに設定されてもよい。
【0049】
次に、S403の別の例を、図5(B)を参照して説明する。まずS551で、検知範囲判定部202は、S501と同様の方法によって検知範囲を判定する。続いて、S552~S554において、S503~S505で説明した道路構造、交通環境、および自然環境に関して、検知範囲を補正するためのパラメータを取得する。検知範囲を補正するためのパラメータは、図6と同様にあらかじめ設定されてもよい。
【0050】
続いて、制御システム200は、道路構造パラメータ、交通環境パラメータ、および自然環境パラメータに基づいて、検知範囲を補正する。例えば、道路構造パラメータの加重平均をL'、交通環境パラメータの加重平均をT'、自然環境パラメータの加重平均をN'として、補正後の検知範囲VDI'を、
VDI'=VDI-C'
C'=cbrt(L'×T'×N')
として求めることができる。そして、S556において、補正した検知範囲に基づいて、
PRP=K(VSP/VDI')
として走行リスクを計算することができる。
【0051】
図4の説明に戻る。S404で、制御システム200は、S403で計算した走行リスクが第1の閾値より小さいか否かを判定する。走行リスクが第1の閾値以上である場合(S404でNo)、制御システム200は処理をS409に進める。走行リスクが第1の閾値より小さい場合(S404でYes)、制御システム200は処理をS405に進め、目標車速を決定する。S405の目標車速の決定は、例えば、許容可能な、最高車速、最大加速度、最大減速度、走行リスクの範囲を満たす車速であって、最高の車速を目標車速として設定してもよい。続いて、制御システム200は処理をS406に進め、S403で計算した走行リスクが第2の閾値より大きいか否かを判定する。走行リスクが第2の閾値以下である場合(S406でNo)、制御システム200は自動運転モードをADモードに設定して目標車速での走行を続け(S411)、処理を終了する。走行リスクが第2の閾値より大きい場合(S406でYes)、制御システム200は自動運転モードをTOR(Take Over Request、権限委譲依頼)モードに設定する。一例では、S407で、制御システム200は搭乗者に運転を依頼する通知を行ってもよい。
【0052】
続いて、制御システム200は処理をS408に進め、一定時間TORモードであったか否かを判定する。車両1が一定時間TORモードであると制御システム200が判定すると(S408でYes)、処理をS409に進め、車両1を停車し、続くS410で搭乗者に運転の権限移譲を行い、処理を終了する。なお、S409およびS410の処理は、車両1が自動運転レベル3のADモードでない場合には省略されてもよい。
【0053】
次に、図7を参照して、走行速度と走行リスクの値(PRP)との関係を説明する。
【0054】
図7のグラフでは、速度がV1未満の領域A1、速度がV2以上の領域A2を含む。また、図7のグラフは速度がV1以上V2未満かつ走行リスク値がR1未満の領域A3、速度がV1以上V2未満かつ走行リスク値がR1以上R2未満の領域A4、速度がV1以上V2未満かつ走行リスク値がR2以上の領域A5を含む。
【0055】
領域A1およびA5は、権限委譲領域(TD:Traditional Demand)であり、走行速度が遅すぎるまたは走行リスクが高すぎるため、自動運転を行わず、搭乗者に運転権限を即座に委譲するための処理を行う領域である。TD領域にある場合、制御システム200は、運転をすぐに手動で行うよう搭乗者に要求する。領域A2は、手動運転のみを許容する領域である。領域A3は、走行リスクが十分に低いため、自動運転レベル3での走行が可能な領域である。領域A4は、走行リスクが高いが、即座に手動運転に切り替える必要はないため、TOR(Take Over Request)モードに移行し、権限委譲の依頼を行う領域である。TORモードでは、制御システム200は、領域A1およびA5と比べて長い期限内に、手動運転を開始するよう搭乗者に依頼する。
【0056】
以上説明したように、本実施形態に係る制御システムは、地図情報取得部を介して取得した地図情報と、外界情報検出部を介して検出した外界情報とに基づいて、走行状態の制御を行う。これによって、走行経路の走行リスクを適切に評価して走行する技術を提供することが可能となる。
【0057】
<その他の実施形態>
本実施形態では、曲り角などによって検知範囲が狭まる際の走行リスクを判定する例を用いて説明を行った。一例では、道路301に起伏がある場合であっても同様に、検知範囲が狭まりうる。そのため、起伏によって狭まった検知範囲に基づいて走行リスクを判定してもよい。例えば、図8に示すように、上り坂とそれに続く下り坂を車両1が走行する場合は、狭路ではない場合であっても、車両1は地点801までしか見通すことができない。このため、検知範囲を車両1から地点801までの距離として判定し、走行リスクを判定することができる。
【0058】
本実施形態では、検知範囲は、外界情報取得部203が検出可能な距離であるものとして説明を行った。一例では、検知範囲は、外界情報取得部203は、検出可能な角度に関する情報であってもよい。例えば、検知範囲は、外界情報取得部203の車両1の前方の所定の距離における最大の検知範囲の角度に対する、当該所定の距離における検出可能な角度の割合であってもよい。
【0059】
<実施形態のまとめ>
1.上記実施形態の車両(例えば車両1)の制御システム(例えば制御システム200)は、前記車両の周辺の外界に関する外界情報であって、前記車両の駆動状態を制御するために用いられる前記外界情報を検知するための検知手段(例えば外界情報取得部203)と、前記車両の位置情報に基づいて前記車両が走行する経路周辺の地図情報を取得し、前記地図情報に対応する検知範囲情報のうち、前記検知手段に対応する検知範囲情報を特定する特定手段(例えば地図情報取得部201、検知範囲判定部202)と、前記検知範囲情報と前記外界情報とに基づいて、前記車両の駆動状態を制御する制御手段(例えば車速判定部206、自動運転モード制御部207)と、を備える。
【0060】
これによって、検知手段が検知可能な範囲に対応する地図情報に基づいて、走行経路の走行リスクを適切に評価して走行する技術を提供することが可能となる。
【0061】
2.上記実施形態の制御システムにおいて、前記検知範囲情報は、前記検知手段が検知可能な距離に応じた情報を含む。
【0062】
これによって、検知手段が検知可能な距離に対応する地図情報に基づいて、基づいて、走行経路の走行リスクを適切に評価して走行する技術を提供することが可能となる。
【0063】
3.上記実施形態の制御システムにおいて、前記検知手段は、カメラ、ミリ波レーダ、センチ波レーダ、およびLIDARの少なくとも1つのセンサ(例えば検知手段41~43)を含む。
【0064】
これによって、走行経路の走行リスクを適切に評価して走行する技術を提供することが可能となる。
【0065】
4.上記実施形態の制御システムにおいて、前記地図情報は、前記少なくとも1つのセンサの種類に対応する検知範囲情報を含み、前記特定手段は、前記少なくとも1つのセンサの種類に基づいて前記検知範囲情報を特定する。
【0066】
これによって、検知手段の種類に対応する検知範囲に関する情報を含む地図情報に基づいて、走行経路の走行リスクを適切に評価して走行する技術を提供することが可能となる。
【0067】
5.上記実施形態の制御システムにおいて、前記地図情報は、複数のセンサの種類に対応する検知範囲情報を含む。
【0068】
これによって、車両ごとに検知手段に含まれるセンサの種類が異なった場合であっても、車両ごとに走行経路の走行リスクを適切に評価して走行する技術を提供することが可能となる。
【0069】
6.上記実施形態の制御システムにおいて、前記制御手段は、前記検知範囲情報から前記車両が走行する経路における走行リスクを計算し、前記外界情報に基づいて前記走行リスクを補正し、補正した前記走行リスクに基づいて前記車両の駆動状態を制御する。
【0070】
これによって、検知手段の検知範囲に対応する地図情報に基づいてベースとなる走行リスクを計算し、それを外界検出手段で検出した情報に基づいて補正することで、より適切に走行リスクを評価することができる。
【0071】
7.上記実施形態の制御システムにおいて、前記制御手段は、前記外界情報に基づいて前記検知範囲情報を補正し、補正した前記検知範囲情報に基づいて走行リスクを計算し、前記走行リスクに基づいて前記車両の駆動状態を制御する。
【0072】
これによって、検知手段の検知範囲に対応する地図情報に基づいてベースとなる検知範囲を計算し、それを外界検出手段で検出した情報に基づいて補正することで、より適切に走行リスクを評価することができる。
【0073】
8.上記実施形態の制御システムにおいて、前記検知手段は、前記車両の移動方向を取得し、前記地図情報は、前記車両の位置および前記移動方向に対応する検知範囲情報を含む。
【0074】
これによって、車両の移動方向に合わせて検知手段の検知範囲を取得することが可能となり、より適切に走行リスクを評価することができる。
【0075】
9.上記実施形態の制御システムにおいて、前記外界情報は道路構造物に関する情報を含む。
【0076】
これによって、地図情報に対応する検知範囲と、道路構造物に関する情報に基づいてより適切に走行リスクを評価することができる。
【0077】
10.上記実施形態の制御システムにおいて、前記外界情報は、対向車、並走車、自転車、歩行者、および駐車車両の少なくとも何れかを含む交通参加者に関する情報を含む。
【0078】
これによって、地図情報に対応する検知範囲と、交通参加者に関する情報に基づいてより適切に走行リスクを評価することができる。
【0079】
11.上記実施形態の制御システムにおいて、前記外界情報は、前記車両の周辺が雨天、曇天、霧、降雪、および黄砂の少なくともいずれかであること、強風による浮遊物を検出したこと、前記車両に配置されたカメラの正面方向または前記車両の進行方向の前方に光源があること、並びに光量が不足していることの少なくとも何れかを含む自然環境に関する情報を含む。
【0080】
これによって、地図情報に対応する検知範囲と、自然環境に関する情報に基づいてより適切に走行リスクを評価することができる。
【0081】
12.上記実施形態の制御システムにおいて、前記地図情報は、天候ごとの検知範囲情報を含み、前記制御手段は、前記検知手段によって検知された前記自然環境に対応する検知範囲情報を特定する。
【0082】
これによって、地図情報に対応する検知範囲と、自然環境に関する情報に基づいてより適切に走行リスクを評価することができる。
【0083】
13.上記実施形態の制御システムにおいて、前記制御手段は、前記車両の目標速度および前記車両の自動運転レベルの少なくとも何れかを制御する。
【0084】
これによって、走行リスクに基づいて経路を適切な目標速度および自動運転モードの少なくとも何れかで走行することができる。
【0085】
14.上記実施形態の制御システムの制御方法は、車両の周辺の外界に関する外界情報であって、前記車両の駆動状態を制御するために用いられる前記外界情報を検知するための検知部を備える前記車両の制御システムの制御方法であって、前記車両の位置情報に基づいて前記車両が走行する経路周辺の地図情報を取得し、前記地図情報に対応する検知範囲情報のうち、前記検知部に対応する検知範囲情報を特定する特定工程と、前記検知範囲情報と前記外界情報とに基づいて前記車両の駆動状態を制御する制御工程と、を含む。
【0086】
これによって、検知部が検知可能な範囲に対応する地図情報に基づいて、走行経路の走行リスクを適切に評価して走行する技術を提供することが可能となる。
【0087】
15.上記実施形態の車両は、前記車両の周辺の外界に関する外界情報であって、前記車両の駆動状態を制御するために用いられる前記外界情報を検知するための検知手段と、前記車両の位置情報に基づいて前記車両が走行する経路周辺の地図情報を取得し、前記地図情報に対応する検知範囲情報のうち、前記検知手段に対応する検知範囲情報を特定する特定手段と、前記検知範囲情報と前記外界情報とに基づいて前記車両の駆動状態を制御する制御手段と、を備える。
【0088】
これによって、検知手段が検知可能な範囲に対応する地図情報に基づいて、走行経路の走行リスクを適切に評価して走行する技術を提供することが可能となる。
【0089】
16.上記実施形態のプログラムは、車両の周辺の外界に関する外界情報であって、前記車両の駆動状態を制御するために用いられる前記外界情報を検知する検知部を備える前記車両の制御システムに備えられたコンピュータに、前記車両の位置情報に基づいて前記車両が走行する経路周辺の地図情報を取得し、前記地図情報に対応する検知範囲情報のうち、前記検知部に対応する検知範囲情報を特定する特定ステップと、前記検知範囲情報と前記外界情報とに基づいて前記車両の駆動状態を制御する制御ステップと、を実行させる。
【0090】
これによって、検知部が検知可能な範囲に対応する地図情報に基づいて、走行経路の走行リスクを適切に評価して走行する技術を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0091】
1:車両、200:制御システム、201:地図情報取得部、202:検知範囲判定部、203:外界情報取得部、204:車両情報取得部、205:リスク計算部、206:車速判定部、207:自動運転モード制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8