(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】口部材を備えた流体充填式袋状容器
(51)【国際特許分類】
B65D 30/16 20060101AFI20241025BHJP
B65D 33/38 20060101ALI20241025BHJP
B65D 83/00 20060101ALI20241025BHJP
【FI】
B65D30/16 J
B65D30/16 A
B65D33/38
B65D83/00 K
(21)【出願番号】P 2020073072
(22)【出願日】2020-04-15
【審査請求日】2023-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000208455
【氏名又は名称】大和製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083998
【氏名又は名称】渡邉 丈夫
(74)【代理人】
【識別番号】100096644
【氏名又は名称】中本 菊彦
(72)【発明者】
【氏名】小原 秀智
(72)【発明者】
【氏名】川幡 剛士
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 進
(72)【発明者】
【氏名】濤崎 由佳
【審査官】長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-095267(JP,A)
【文献】特開2018-144856(JP,A)
【文献】特開2010-280397(JP,A)
【文献】特表2016-531057(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 30/16
B65D 33/38
B65D 83/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2枚のフィルムを貼り合わせたシート材が袋状に折りたたまれるとともに前記シート材の互いに重ね合わせた周辺部が接合されて閉じた胴部が形成さ
れるとともに、前記胴部における側面部の前記シート材を構成している前記2枚のフィルムの間に、前記2枚のフィルムが線状に接合された接合部によって区画されかつ流体が充填されて膨張した複数のセルが形成され、前記シート材より剛性が高い口部材が、前記胴部の上端部における前記周辺部に、前記胴部の内部に連通しかつ前記シート材に挟み込まれて取り付けられている、口部材を備えた流体充填式袋状容
器であって、
前記口部材は、前記シート材に挟まれて前記胴部に固定される基部を有し、
前記基部は、前記シート材の前記周辺部が接合される部分より下側の部分である裾部を有し、
前記基部を挟み付けている前記シート材のそれぞれには、前記胴部の幅方向で前記口部材の幅の範囲内に位置す
る複数のセルが設けられ、
前記複数のセルは、前記基部に接合されている前記周辺部を上端側の前記接合部とするとともに、該接合部から前記裾部に沿って下側に延びており、かつ
前記裾部は、該裾部に沿って下側に延びている複数の前記セルが密着して複数の前記セルによって挟み付けられている
ことを特徴とする口部材を備えた流体充填式袋状容器。
【請求項2】
請求項1に記載の口部材を備えた流体充填式袋状容
器であって、
前記口部材は、押し下げられることにより内容物を吐出するノズルヘッドを備えたポンプディスペンサを有している
ことを特徴とする口部材を備えた流体充填式袋状容器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の流体充填式袋状容器であって、
前記裾部を挟み付けている複数の前記セルは、前記胴部の底部に向けて延びている直線状の細長い形状をなしていることを特徴とする口部材を備えた流体充填式袋状容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、空気などの流体を充填して膨らませたセルを側面部や底面部に設けて姿勢を保持する強度を持たせた流体充填式袋状容器に関し、特に注ぎ口となるスパウトなどの口部材を備えた容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の容器は、薄い合成樹脂シートを立体形状に組み立てて構成されるから、合成樹脂の使用量を少なくして地球環境の負荷を減らす可能性が大きく、日用品などの容器として多用されることが期待される。この容器の側面部や底面部を構成しているセルの形状や数、あるいは流体の充填圧力などによって容器の全体としての剛性あるいは強度を高くすることができるので、単なる包装用袋を超えて内容物の定量取り出しなどの機能を備えた容器としての用途が求められている。
【0003】
剛性あるいは強度が殆どない包装用袋に定量取り出しなどの機能を付与した技術の例が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載された包装袋は、熱可塑性樹脂からなるシートを袋状に折るとともに、周辺部を接合して袋とし、その袋の上端縁部分には、口具をシートで挟み付けるとともにそれらを一体に接合して構成されている。その口具には、ポンプディスペンサが取り付けられ、内容物を吸い上げるチューブがポンプディスペンサのいわゆる本体部分から包装袋の底面近くまで延び、そのチューブの下端部に、包装袋の底面シートに接触する当接体が取り付けられている。特許文献1に記載された包装袋は、袋自体には上下方向の荷重を支える剛性あるいは強度がないので、ポンプディスペンサを押し下げ操作する場合の荷重をチューブおよび当接体で受けるように構成されている。
【0004】
また、上下方向の荷重もしくは操作力が袋自体に掛からないように構成した例が,特許文献2に記載されている。特許文献2に記載された包装袋は、ポンプディスペンサが取り付けられているスパウトをスタンドに係合させて、包装袋をスタンドで吊り下げるように構成されている。したがって、ポンプディスペンサを押し下げる荷重をスタンドで受け、包装袋自体には内容物の取り出しに伴う上下方向の荷重が掛からない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-6137号公報
【文献】特開2015-42553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1や特許文献2に記載されている包装袋は、合成樹脂シートを立体に組み立てたものであるから、その点では、合成樹脂材料の使用量の削減に資することができる。しかしながら、特許文献1に記載された構成では、押出操作によって所定量を吐出させる機能は、ポンプディスペンサのチューブを特殊な構造とし、あるいはその強度を高くすることによって達成され、したがって包装袋に新たな構成を付加する必要がある。そのため、その付加的構成のための材料が増大し、また使用しなくなった場合の廃棄物が増大するなど、包装袋を合成樹脂シート製とすることによるエコ・フレンドリーの目的が減殺もしくは没却される可能性がある。
【0007】
このような事情は特許文献2に記載されている包装袋についても同様であり、押出操作によって所定量を吐出させる機能は前述したスタンドを用いることにより達成されるのであって、スタンドという付加的構成が必須である。したがって、特許文献2に記載された構成であっても、特許文献1に記載されている構成と同様に、材料が増大したり、廃棄物が増大したりするので、エコ・フレンドリーの目的が減殺もしくは没却される可能性がある。
【0008】
シート材を素材とした容器や構造物の剛性あるいは強度を保持させる技術として、壁面部分を空気で膨らませる技術が知られている。その空気によって膨らんでいる密閉室あるいはセルは、内部の空気圧やシート材が圧力を受けて張力を持っていることにより、圧縮や曲げに対する剛性あるいは強度を持つ。しかしながら、その密閉室あるいはセルが大きいと、容器や構造物の内部に対する張り出し量が大きくなって、容器や構造物の内容積が減じられてしまうので、ある程度細かく分けて複数の密閉室あるいはセルを設けることになる。これら密閉室あるいはセルを区画している部分は、空気圧やシート材の張力が作用していない箇所になり、外力が作用した場合にその区画している箇所で曲げや座屈が生じ、あるいはそのような変形の起点になる可能性がある。このように空気などの流体圧を利用した袋状容器であっても、座屈や曲げなどに対する剛性あるいは強度を向上させるためには未だ新たな技術を開発する余地があった。
【0009】
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであって、流体が充填される複数のセルによって座屈や曲げに対する剛性あるいは強度を持たせた袋状容器において、口部材を設けたことに伴う部分的な形状もしくは構造の変化箇所による剛性もしくは強度の低下を回避もしくは抑制し、あるいは向上させることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、上記の目的を達成するために、少なくとも2枚のフィルムを貼り合わせたシート材が袋状に折りたたまれるとともに前記シート材の互いに重ね合わせた周辺部が接合されて閉じた胴部が形成されるとともに、前記胴部における側面部の前記シート材を構成している前記2枚のフィルムの間に、前記2枚のフィルムが線状に接合された接合部によって区画されかつ流体が充填されて膨張した複数のセルが形成され、前記シート材より剛性が高い口部材が、前記胴部の上端部における前記周辺部に、前記胴部の内部に連通しかつ前記シート材に挟み込まれて取り付けられている、口部材を備えた流体充填式袋状容器であって、前記口部材は、前記シート材に挟まれて前記胴部に固定される基部を有し、
前記基部は、前記シート材の前記周辺部が接合される部分より下側の部分である裾部を有し、前記基部を挟み付けている前記シート材のそれぞれには、前記胴部の幅方向で前記口部材の幅の範囲内に位置する複数のセルが設けられ、前記複数のセルは、前記基部に接合されている前記周辺部を上端側の前記接合部とするとともに、該接合部から前記裾部に沿って下側に延びており、かつ前記裾部は、該裾部に沿って下側に延びている複数の前記セルが密着して複数の前記セルによって挟み付けられていることを特徴としている。
【0011】
この発明においては、前記口部材は、押し下げられることにより内容物を吐出するノズルヘッドを備えたポンプディスペンサを有していてよい。
この発明においては、前記裾部を挟み付けている複数の前記セルは、前記胴部の底部に向けて延びている直線状の細長い形状をなしていてよい。
【発明の効果】
【0012】
この発明における流体充填式袋状容器は、胴部を構成しているシート材に、流体を充填して膨張させた複数のセルが形成されている。そのセルは、シート材を構成している2枚のフィルムを線状に接合した接合部によって区画された部分である。また、シート材の上端部は、口部材を挟み付けて口部材に接合されている。そして、セルは、胴部を構成している側面部のうち口部材の幅の範囲内にも設けられており、当該口部材の下側に延びて設けられているセルは、シート材が口部材を挟み付けて接合させている箇所から下側に延びて設けられており、さらに口部材の下端部は、セルの上端部よりも胴部の内部にまで延びて位置している。すなわち、口部材とセルとはそれぞれの一部が重なり合っている。そのため、シート材と口部材とが接合されている部分とセルとの境界部分で座屈変形が生じようとすると、口部材のうちその境界部分より下側に延びている部分が、流体が充填されて膨張しているセルから反力を受けて胴部に対する曲げ変形が阻止あるいは抑制される。特に、流体が充填されて膨張しているセルが口部材の下端側の部分を挟み付けていれば、セルと口部材とが、より強く一体化されているので、セルと口部材との境界部分、言い換えればセルが途切れている部分での曲げあるいは座屈が抑制され、その結果、容器全体としての座屈強度もしくは曲げに対する剛性が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】この発明の実施形態に係る流体充填式袋状容器の一例を模式的に示す正面図である。
【
図2】ポンプディスペンサを取り外した容器を模式的に示す斜視図である。
【
図3】各フィルムの一部を破断して示す部分拡大斜視図である。
【
図4】この発明の実施形態におけるスパウトの一例の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明の実施形態を図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、この発明を具体化した場合の一例に過ぎないのであって、この発明を限定するものではない。
【0015】
図1は、この発明の実施形態に係る流体充填式袋状容器(以下、単に容器と記す。)1の一例を模式的に示す図である。
図1に示す容器1は1枚のシート材2をその長手方向での中央部分で二つ折りし、面接触させた周辺部を互いに溶着(接合)して袋状に形成した容器である。二つ折りする中央部分はある程度の広さのある底面部3となっており、容器1において底面部3とは反対側の部分はシート材2の周辺部を溶着(接合)した上縁部4となっている。容器1の高さ方向で底面部3と上縁部4との間の部分が胴部5となっている。容器1の幅方向で上縁部4の中央部に、口部材6が取り付けられている。口部材6は、シート材2より剛性の高い合成樹脂製の部品であって、図示しないキャップで封止される注ぎ口となったり、後述するポンプディスペンサを取り付ける部分である。この口部材6は、従来知られているスパウトであってよく、以下、口部材6をスパウト6と記す。
【0016】
スパウト6は容器1の内部に内容物を注入し、また充填された内容物の取り出し口となるものである。そのため、スパウト6の中央部に容器1の内部と外部とを連通する貫通孔が形成されており、その貫通孔を介して容器1の内部に内容物を注入し、また容器1の内部から取り出すようになっている。ここに示す例では、スパウト6にポンプディスペンサ7が取り付けられている。そのポンプディスペンサ7は内容物を加圧して吐出させるものであり、従来知られている構造のものであってよい。詳細は図示しないが、ノズルヘッド7aのポンピングに連動してピストンを往復動させてシリンダ内の内容物をノズルから吐出させるとともに、容器1の内部に充填されている内容物を吸い上げ管を介してシリンダ内に吸い上げるように構成されている。なお、
図2には、ポンプディスペンサ7を取り外した状態の容器1を模式的に示してある。
【0017】
ここで、シート材2について説明すると、シート材2は、
図3に示すように、内面フィルム2aと、外面フィルム2bとからなる二層構造になっている。内面フィルム2aは150μm程度の厚さのフィルムであって、外面フィルム2bに対して例えば熱接着(溶着)される接着層2a-1と、気体の透過を抑制するように構成されたバリヤ層2a-2と、容器1の最も内側に配置されて内容物に触れる内層2a-3とを積層した積層フィルムによって構成されている。接着層2a-1はヒートシール性を有する樹脂フィルムによって構成されることが好ましく、接着層2a-1としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂などの樹脂フィルムを用いることができ、それらの樹脂フィルムのうち、特に、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(以下、LLDPEと記す。)製のフィルムを用いることが好ましい。
【0018】
バリヤ層2a-2は例えば酸素や水蒸気、香気物質などの透過を抑制するものであって、特に酸素ガスの透過率が他のガスより小さい酸素バリヤ性を有する樹脂フィルムあるいは塗膜によって構成されている。なお、バリヤ層2a-2を塗膜によって構成する場合には、酸素や水蒸気を透過しにくい合成樹脂材料を主体とする塗料を接着層2a-1あるいは内層2a-3に塗布し、その後、乾燥して形成する。バリヤ層2a-2を構成する樹脂フィルムおよび合成樹脂材料としては、例えば、エチレン・ビニルアルコール共重合体が挙げられる。内層2a-3としては、接着層2a-1と同様に、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂などのヒートシール性を有する樹脂フィルムを用いることが好ましく、特に、LLDPE製のフィルムを用いることが好ましい。
【0019】
外面フィルム2bは60μm程度の厚さのフィルムであって、ベースとなる基材層2b-1と、容器1の最も外側に配置される外層2b-2とを積層した積層フィルムによって構成されている。基材層2b-1は内面フィルム2aに対して例えば熱接着されるものであり、ヒートシール性を有する樹脂フィルムによって構成されている。基材層2b-1としては、接着層2a-1と同様に、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂などの樹脂フィルムを用いることができ、特に、LLDPE製のフィルムを用いることが好ましい。LLDPE製のフィルムを使用すれば、他のフィルムを使用した場合に比較して、基材層2b-1と接着層2a-1との熱接着を容易に行うことができるとともに、基材層2b-1と接着層2a-1との間の接着強度を向上することができる。外層2b-2としては、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂などの樹脂フィルムを用いることが好ましく、特に、ナイロン(登録商標)樹脂製のフィルムを用いることが好ましい。
【0020】
上記の内面フィルム2aと外面フィルム2bとはその全面で貼り合わされている訳ではなく、周辺部とそれより内側の所定の部分とを接合することにより貼り合わされている。各フィルム2a,2bを接合している接合部8によって区画された多数の流体充填室であるセル9が設けられている。なお、ここに示す例では、接合部8は線状に形成されている。また、各セル9は、空気などの流体が所定の圧力(例えば0.25MPa)で充填されて膨張することにより、すなわち各フィルム2a,2bが張った状態になることにより、容器1に曲げ強度や座屈強度を付与するものである。
【0021】
この発明に係る容器1は、セル9によって胴部5や底面部3の剛性を高くしてあればよく、
図1に示す容器1は、ポンプディスペンサ7によって内容物を吐出させる際の荷重に耐え得るように、すなわち座屈強度が高くなるように構成されている。具体的には、上記の接合部8とセル9とは、シート材2の長手方向に直線状に延びて形成されている。そのため、容器1の胴部5においては、胴部5のほぼ全体に、容器1の高さ方向に直線状に延びて形成される。底面部3においては、容器1の厚さ方向に、直線状に延びて形成される。また、
図1や
図2に示すように、セル9はその幅もしくは太さが上端Euから下端Ebに亘って一定になっている。これらのセル9の上端Euは上縁部4の境界部分に位置し、また容器1の幅方向の全長に亘って同じ高さに設定されている。下端Ebは底面部3と胴部5との境界部分に一致する箇所に位置している。したがって、セル9は容器1の高さ方向に、接合部8が横切らずに直線状に延びている細長い流体充填室と言うことができる。なお、胴部5における各セル9は、連通部10によって連通されている。その連通部10は、各フィルム2a,2bを接合する際に、セル9の間の部分の一部で接着もしくは溶着が生じない処理を施すことにより形成された空気通路である。
【0022】
つぎに底面部3について説明すると、底面部3はシート材2の長手方向での中央の線を挟んだ両側の所定の幅の部分であり、容器1の幅方向で上記の底面部3の中央部分にセル9が形成されている。その底面部3はセル9に流体を充填していない状態では、容器1の内部に向けて凸となるように折り畳まれている。すなわち、シート材2の長手方向での中央の線が容器1の内部に向けて凸となるように底面部3が折り曲げられ、また、底面部3と胴部5との境界の線が容器1の外側に向けて凸となるように底面部3が折り曲げられる。つまり、逆「V」字状に底面部3が折り畳まれる。
図1には上記のようにして折り畳まれた状態の底面部3を示している。容器1の幅方向で折り畳まれた状態の底面部3の両側部分では、互いに向かい合っているシート材2の内面フィルム2a同士が斜め線状に溶着されている。その斜めに接合した部分を
図1に実線で示してある。また、容器1の幅方向で底面部3の両側の周辺部同士が容器1の高さ方向に延びた線状に溶着される。これは、襠を形成するためであり、また、容器1の内部に内容物を充填した場合に、内容物によって容器1の下部つまり胴部5における底面部3側の部分が押し広げられる可能性があるので、これを避けるためである。つまり、容器1の内部に内容物を充填した場合における底面部3の面積を所定の面積に維持するためである。
【0023】
各セル9に空気などの流体を供給する供給口11が設けられている。供給口11はいずれかのセル9に連通するようにシート材2に開けた孔であり、胴部5(特にその側面部)を形成するように互いに対向させたシート材2のいずれか一方に、当該一方のシート材2を形成しているフィルム2a,2bの間に開口するように形成されている。また、この供給口11は
図1に示す例では、ポンプディスペンサ7の下側に相当する位置から横方向(容器1の幅方向)に外れた位置であって、かつ容器1の上部に形成されている。より詳しくは、供給口11は外面フィルム2bに形成された孔である。その供給口11に、
図1に示す例では、当該供給口11の下側に位置する1本のセル9が繋がっている。なお、そのセル9は流体を充填した後に溶着などによって密閉されて供給口11に対して遮断される。
【0024】
さらに、スパウト6について説明する。
図4はこの発明の実施形態におけるスパウト6の一例を示す正面図であり、
図5は
図4に示すスパウト6の斜視図である。スパウト6は、
図4および
図5に示すように、外周面に雄ネジが形成された円筒状の首部12と、その首部12より下側の部分であってシート材2に少なくとも一部が接合される基部13とを有している。首部12には、上述したポンプディスペンサ7が取り付け、あるいは、首部12に図示しないキャップを取り付けて容器1を密閉してもよい。
【0025】
基部13の少なくとも一部はシート材2に挟まれて溶着(接合)される。具体的には、内面フィルム2aを向かい合わせるように、シート材2の長手方向での中央部分でシート材2を二つ折りにし、こうして重ね合わせたシート材2の周辺部同士の間に基部13の上側の部分が配置される。そして、上記のようにして重ね合わせたシート材2の周辺部つまり上縁部4と基部13の上側の部分とが
図1に示すように、溶着(接合)される。
【0026】
図6はこの発明の実施形態に係る容器の一例の断面図である。
図6に示すように、上記のようにして上縁部4に基部13の上側の部分を溶着すると、セル9の上端Euや上縁部4の境界部分のうち、ポンプディスペンサ7の幅の範囲内に位置するセル9の上端Euや上縁部4の境界部分は、基部13の下側の部分である裾部14の下端部よりも上側に位置する。具体的には、
図6に示す例では、高さ方向で基部13の中間部分に位置する。そのため、基部13の裾部14はその周囲を複数のセル9の上端Eu側の部分によって取り囲まれ、胴部5の厚さ方向で基部13の裾部14とセル9の上端Eu側の部分とは互いに隣接する。また、裾部14とセル9の上端Eu側の部分とは溶着(接合)していずに、裾部14は空気などの流体が充填されて膨張したセル9によって挟み付けられている。
【0027】
さらに、基部13はシート材2との接合面積を確保するとともにそれらの間に隙間が生じることを避けるために、その外形形状は
図5に示すように、容器1の幅方向あるいは左右両方向に流線形状に延び出た形状になっている。その基部13の外周面に、シート材2と基部13との密着性を向上させる複数の溝部15が形成されている。その溝部15は、ここに示す例では、スパウト6の軸線方向に一定の間隔で外周面の円周方向つまり容器1の幅方向に延びて形成されている。
【0028】
裾部14は基部13の上側の部分とほぼ同じ外形を成しており、上述した溝部15が形成されていない以外は基部13の上側の部分とほぼ同様に構成されている。そのため、裾部14は、前記基部13の上側の部分の延長部分と言うことができる。
図7はスパウト6の底面図であり、
図7に示すように、裾部14はほぼ平行四辺形あるいはほぼ菱形を成しており、シート材2の上縁部4に沿う方向つまり容器1の幅方向における各角部が鋭角に構成されており、残りの角部つまり容器1の厚さ方向における各角部は角が丸められて滑らかに湾曲した形状を成している。
【0029】
スパウト6の中央部分には、首部12と基部13とを貫通する貫通孔16が形成されている。その貫通孔16は内容物が流動する部分、あるいは、ポンプディスペンサ7の少なくとも一部が配置される部分であり、貫通孔16を介して容器1の内部に内容物が注入され、また内容物が取り出される。また、首部12と基部13との間に、高さ方向に一定の間隔をあけて一対のフランジ部17が形成されている。
図8はスパウト6の上面図であり、
図8に示すように、第1フランジ部17aは高さ方向で第2フランジ部17bの上側に位置しており、各フランジ部17a,17bは共に、角が丸められたほぼ八角形を成している。また、第2フランジ部17bは第1フランジ部17aよりも容器1の幅方向に延びて形成されており、つまり、第1フランジ部17aよりも扁平な形状を成している。それらのフランジ部17a,17bはスパウト6の搬送工程や内容物を充填するときに使用されるものであり、一対のフランジ部17a,17b同士の間の角筒状あるいは円筒状の部分を掴んでスパウト6を搬送し、また、スパウト6を掴んだ状態で、当該スパウト6が取り付けられた容器1の内部に内容物を充填するようになっている。
【0030】
次に、上述した構成の容器1の作用・効果について説明する。供給口11から空気などの流体を注入し、その後、供給口11に直接連通しているセル9を供給口11から遮断するように、上記のセル9の所定箇所を線状に溶着する。胴部5および底面部3に形成されている各セル9は連通部10によって繋がっているので、各セル9は内部に充填された流体の圧力によって膨張し、張った状態になる。したがって、各セル9は当該セル9を折り曲げたり、座屈させたりする外力に対して反発する力が大きくなる。言い換えれば、胴部5の折り曲げや座屈に対抗する応力が大きくなる。また、各セル9を区画して形成しているフィルム2a,2bもしくはシート材2に、各セル9の形状を維持するように張力が生じる。
【0031】
この状態で、例えば、ポンプディスペンサ7のノズルヘッド7aをポンピングする(繰り返し押し下げる)と、ノズルヘッド7aを押し下げる力は容器1を座屈させる荷重として容器1に作用する。容器1を構成しているシート材2とスパウト6とが接合されている前述した上縁部4の境界部分、すなわちシート材2とスパウト6との接合部とセル9の上端Euとの境界部分は、その接合部が平面構造であるのに対してセル9が立体構造になっていて、形状もしくは構造が急変する部分である。そのため、この境界部分に応力が集中したり、あるいは座屈変形もしくは曲げ変形の起点になりやすい。この部分でスパウト6が胴部5に対して折れ曲がろうとすると、スパウト6における下端側の部分、すなわち前述した裾部14が、その裾部14を挟み付けているセル9を押すことになる。言い換えれば、セル9がスパウト6の傾きを阻止する方向の反力を生じる。これは、セル9とスパウト6、あるいはセル9が形成されている胴部5とスパウト6とを一体化させた構造に近似している。そのため上述した応力が集中しやすく、あるいは座屈や曲げの変形の起点となりやすい上記の境界部分が、セル9によって補強されていることになる。その結果、スパウト6の下端側の部分がセル9の間に延びている上述した構造では、スパウト6を押し下げる荷重に対する座屈強度あるいは曲げ剛性が高くなっている。
【0032】
したがって、この発明によれば、容器1を折り曲げあるいは座屈させる荷重が作用して容器1が曲げ変形や座屈変形したり、そのために充分にノズルヘッド7aを押し下げることができないなどの不都合が回避もしくは抑制される。また、容器1の座屈強度や曲げ強度などを向上させる付加手段を容器1に設けていないため、部品点数や材料コスト、製造コストなどが特には増大することがなく、安価な容器1とすることができる。言い換えれば、シート材2という少量の素材で、ポンプ操作に耐え得る高強度の容器1を得ることができ、地球環境の保全や資源保護に資することのできる容器1を得ることができる。
【0033】
なお、上述した実施形態では、上縁部4の幅(容器1の高さ方向での寸法)を、シート材2同士を接合する幅とシート材2をスパウト6に接合する幅とで同じにし、その幅の範囲より下側にスパウト6の裾部14を突出させ、その結果、スパウト6の一部とセル9とが重なり合ってセル9がスパウト6を挟み付けるように構成したが、この発明では、これとは異なる構成を採用してもよい。例えば、シート材2がスパウト6を挟み付けてスパウト6に接合する部分の幅を、シート材2の上端部分の互いに接合される部分の幅(前述した上縁部4の幅)より小さくし、かつセル9の上端Euをスパウト6の下端より上側まで延ばすことにより、セル9とスパウト6とを部分的に重なり合わせるとともに、セル9によってスパウト6の下側の部分を挟み付ける構成としてもよい。
【0034】
また、この発明におけるセル9は、前述した互いに平行な線状以外に、マトリックス状に形成されていてもよく、あるいは、上端側から下端側に向けて幅が直線的に変化する形状であってもよい。要は、充填された流体の圧力で膨張し、かつその圧力に基づく張力が生じて、胴部5における座屈強度や曲げ強度などを向上するように構成されていればよい。さらに、セル9は、少なくとも、スパウト6やポンプディスペンサ7の下側に相当する位置、つまりそれらの幅の範囲内に配置されていればよく、それ以外の箇所には、セル9とは異なる形状のセル(流体充填室)が設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 容器
2 シート材
2a 内面フィルム
2b 外面フィルム
2a-1 接着層
2a-2 バリヤ層
2a-3 内層
2b-1 基材層
2b-2 外層
3 底面部
4 上縁部
5 胴部
6 スパウト
7 ポンプディスペンサ
7a ノズルヘッド
8 接合部
9 セル
10 連通部
11 供給口
12 首部
13 基部
14 裾部
15 溝部
16 貫通孔
Eb 下端
Eu 上端