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特許7576932試験測定装置及び未知の負荷を推定する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】試験測定装置及び未知の負荷を推定する方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/28 20060101AFI20241025BHJP
【FI】
G01R31/28 P
G01R31/28 M
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020106177
(22)【出願日】2020-06-19
(65)【公開番号】P2021001885
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2023-05-17
(31)【優先権主張番号】62/863,809
(32)【優先日】2019-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/894,633
(32)【優先日】2020-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505436014
【氏名又は名称】ケースレー・インスツルメンツ・エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Keithley Instruments,LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(74)【代理人】
【識別番号】110001209
【氏名又は名称】特許業務法人山口国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・シー・ウィーマン
【審査官】田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/010410(WO,A1)
【文献】特開2013-088146(JP,A)
【文献】特許第5559724(JP,B2)
【文献】特開平05-256899(JP,A)
【文献】特開平05-164821(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0145640(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0001608(US,A1)
【文献】米国特許第05031221(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0257105(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 31/26-31/27、
31/28-31/3193、
H01L 21/64-21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧源電圧を出力するように構成された電圧源と、
接続された被試験デバイスを流れる電流を検出するように構成された電流センサと、
上記電圧源電圧と、上記電流と、接続された未知の上記被試験デバイスの電圧とに基づいて、接続された未知の上記被試験デバイスの負荷の推定値を求めるよう構成された1つ以上のプロセッサと
を具え
1つ以上の上記プロセッサは、上記負荷の現行の推定値、上記電圧源電圧、上記電流、接続された未知の上記被試験デバイスの電圧に基づく正規方程式であって、上記負荷の推定値が実際の値に収束した場合にゼロに等しくなる上記正規方程式の値が正か負かに応じて上記正規方程式の値をゼロに近づける方向に上記負荷の上記現行の推定値を変化させて上記負荷の新しい推定値とする処理を反復して上記負荷の推定値を調整することにより、上記負荷の推定値を求めるよう構成される試験測定装置。
【請求項2】
電圧源電圧を出力するように構成された電圧源と、
接続された被試験デバイスを流れる電流を検出するように構成された電流センサと、
上記電圧源電圧と、上記電流と、接続された未知の上記被試験デバイスの電圧とに基づいて、接続された未知の上記被試験デバイスの負荷の推定値を求めるよう構成された1つ以上のプロセッサと
を具え
1つ以上の上記プロセッサが、
上記負荷に関して任意の初期値を選択し、
上記電圧源電圧と接続された上記被試験デバイスの電圧とを同時に求め、
上記電圧源電圧、接続された上記被試験デバイスの電圧及び上記負荷の任意の上記初期値に基づいて、上記負荷の抵抗の推定値を正と負のいずれの方向に調整するかを判断すると共に、上記負荷の静電容量又はインダクタンスの推定値を正と負のいずれの方向に調整するかを判断し、
上記抵抗及び上記静電容量又はインダクタンスの任意の上記初期値を正か負のいずれかの方向に調整し、調整された値(調整値)が上記負荷の上記推定値を表すようにすることによって、
上記負荷の推定値を反復して求めるよう構成される試験測定装置。
【請求項3】
1つ以上の上記プロセッサが、
上記電圧源の新たな出力電圧と、接続された上記被試験デバイスの電圧とを同時に求め、
上記出力電圧、接続された上記被試験デバイスの電圧及び上記負荷の調整値に基づいて、上記負荷の抵抗の推定値を正と負のいずれの方向に調整するかを判断すると共に、上記負荷の静電容量又はインダクタンスの推定値を正と負のいずれの方向に調整するかを判断し、
上記抵抗及び上記静電容量又はインダクタンスの上記推定値を正か負のいずれかの方向に調整し、調整された推定値が上記負荷のより良い推定値を表すようにすることによって、
上記負荷の推定値を反復して求めるよう更に構成される請求項の試験測定装置。
【請求項4】
試験測定装置に結合された未知の負荷を推定する方法であって、
上記試験測定装置に未知の上記負荷を与える被試験デバイスと電流センサとの間の回路ノードで電圧を取得する処理と、
上記電流センサに強制される出力電圧を求める処理と、
上記電流センサを使用して上記被試験デバイスに流れる電流を求める処理と、
上記回路ノードの上記電圧、上記電流及び上記出力電圧に基づいて、上記負荷の推定値を求める処理と
を具え
上記負荷の推定値を求める処理は、上記負荷の現行の推定値、上記回路ノードの上記電圧、上記電流、上記出力電圧に基づく正規方程式であって、上記負荷の推定値が実際の値に収束した場合にゼロに等しくなる上記正規方程式の値が正か負かに応じて上記正規方程式の値をゼロに近づける方向に上記負荷の上記現行の推定値を変化させて上記負荷の新しい推定値とする処理を反復して上記負荷の推定値を調整することにより上記負荷の推定値を求める未知の負荷を推定する方法。
【請求項5】
試験測定装置に結合された未知の負荷を推定する方法であって、
上記試験測定装置に未知の上記負荷を与える被試験デバイスと電流センサとの間の回路ノードで電圧を取得する処理と、
上記電流センサに強制される出力電圧を求める処理と、
上記電流センサを使用して上記被試験デバイスに流れる電流を求める処理と、
上記回路ノードの上記電圧、上記電流及び上記出力電圧に基づいて、上記負荷の推定値を求める処理と
抵抗及び静電容量を有するか、又は、抵抗及びインダクタンスを有する上記負荷の新たな推定値を反復して求める処理と
を具え
上記負荷の上記新たな推定値を反復して求める処理が、
抵抗と静電容量又はインダクタンスについての任意の初期値を選択する処理と、
上記出力電圧と上記回路ノードの上記電圧を同時に求める処理と、
上記出力電圧、上記回路ノードの上記電圧並びに上記抵抗及び上記静電容量又はインダクタンスの任意の初期値に基づいて、上記抵抗の推定値を正と負のいずれの方向に調整するかを判断すると共に、上記静電容量又はインダクタンスの推定値を正と負のいずれの方向に調整するかを判断する処理と、
任意の上記初期値を正か負のいずれかの方向に調整することによって、上記抵抗及び上記静電容量又はインダクタンスについての新しい推定値を生成する処理と
を有する未知の負荷を推定する方法。
【請求項6】
上記被試験デバイスの上記抵抗及び上記静電容量又はインダクタンスの推定値を求める処理が、
新たな出力電圧と上記回路ノードの上記電圧を同時に求める処理と、
上記出力電圧、上記回路ノードの上記電圧、並びに上記抵抗及び上記静電容量又はインダクタンスの新しい推定値に基づいて、上記抵抗の推定値を正と負のいずれの方向に調整するかを判断すると共に、上記静電容量又はインダクタンスの推定値を正と負のいずれの方向に調整するかを判断する処理と、
上記抵抗及び上記静電容量又はインダクタンスについての新しい推定値を正か負のいずれかの方向に調整する処理と
を有する請求項の未知の負荷を推定する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験及び測定に関連するシステム及び方法、特に、結合される負荷を推定するソース・メジャー・ユニット(SMU)に関する。
【背景技術】
【0002】
SMUに存在する問題点は、SMU内の電流を測定する回路が、被試験デバイス(DUT)に印可する電圧と干渉したり、DUTへの電圧印可を遅延させたりすることである。同様に、DUTに電流を供給しようとしたときに、DUTが供給する電流と干渉したり、電圧供給を遅延させることがある。
【0003】
多くの場合、DUTは、SMUのユーザによって供給され、SMUにとっては未知なものあるため、SMUにとって最適な信号応答を予め計画し、作成することは困難である。DUTは、電気的特性値が夫々様々に異なるものがある抵抗、ダイオード、トランジスタ、コンデンサなどの様々なデバイスであり得るし、これらの中には、特性値が時間で変化したり、特性値のレベルが変化するものもある。このように、汎用SMUの場合、最終的にSMUに接続されるデバイスは、通常、非常に多種多様であり、測定結果を予め想定できないことが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-200203号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】「ソースメータ/ソース・メジャー・ユニット(SMU) 製品カタログ」、SMUの使用方法を紹介、テクトロニクス/ケースレー、文書番号:KIZ-60344-1、2017年6月発行、[online]、[2020年6月2日検索]、インターネット<https://jp.tek.com/source_meter_catalog_kiz-60344-1>
【文献】「ケースレーのソース・メジャー・ユニット」の紹介サイト、テクトロニクス/ケースレー、[online]、[2020年6月2日検索]、インターネット<https://jp.tek.com/keithley-source-measure-units>
【文献】「Source measure unit」の記事、Wikipedia(英語版)、[オンライン]、[2020年5月30日検索]、インターネット<https://en.wikipedia.org/wiki/Source_measure_unit>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のSMUの中には、最大負荷容量を指定するなど、被試験デバイスについて、いくつかの仮定を立て、次いで、様々な形式の補正回路を使用して、仮定したパラメータ内にある負荷については、多くの場合で安定したループ応答を形成できるようにしたものもある。しかし、補正回路自体は、SMUに好ましくない動作を引き起こすことがある。
【0007】
本発明の実施形態は、これら及び他の従来技術の欠陥に取り組むものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、SMUのような試験測定装置に関する。試験測定装置には、電圧源電圧を出力するように構成された電圧源と、接続された被試験デバイスを流れる電流を検出するように構成された電流センサと、1つ以上のプロセッサとがある。1つ以上のプロセッサは、電圧源電圧と、電流と、接続された未知の被試験デバイスの電圧とに基づいて、接続された未知の被試験デバイスの負荷の推定値を求めるよう構成される。また、1つ以上のプロセッサは、負荷の推定値を反復して求めるようにしても良い。負荷の推定値としては、例えば、抵抗と静電容量の推定値、又は、抵抗とインダクタンスの推定値がある。
【0009】
1つ以上のプロセッサは、抵抗の正規方程式の結果が正か負か否かに基づいて抵抗の推定値を反復調整し、また、静電容量又はインダクタンスの正規方程式の結果が正か負かに基づいて静電容量又はインダクタンスの推定値を反復調整するように構成されても良い。更に、抵抗の正規方程式の結果が正の場合、抵抗の推定値が正方向に調整され、静電容量又はインダクタンスの正規方程式の結果が正の場合、静電容量又はインダクタンスの推定値が正方向に調整されても良い。
【0010】
本発明を別の観点から考えると、試験測定装置に結合された未知の負荷を推定する方法であって、試験測定装置に未知の負荷を与える被試験デバイスと電流センサとの間の回路ノードで電圧を取得する処理と、電流センサに強制される出力電圧を求める処理と、電流センサを使用して被試験デバイスに流れる電流を求める処理と、回路ノードの電圧、電流及び出力電圧に基づいて、負荷の推定値を求める処理とを具えている。負荷は、抵抗及び静電容量を有するか、又は、抵抗とインダクタンスを有するものであって良く、負荷の新たな推定値を反復して求めるようにしても良い。被試験デバイスの負荷の新たな推定値を求める処理は、抵抗と静電容量又はインダクタンスについての任意の初期値を選択する処理と、出力電圧と回路ノードの電圧を同時に求める処理と、出力電圧、回路ノードの電圧並びに抵抗及び静電容量又はインダクタンスの任意の初期値に基づいて、抵抗の推定値を正と負のいずれの方向に調整するかを判断すると共に、静電容量又はインダクタンスの推定値を正と負のいずれの方向に調整するかを判断する処理と、任意の初期値を正か負のいずれかの方向に調整することによって、抵抗及び静電容量又はインダクタンスについての新しい推定値を生成する処理とを有していても良い。
【0011】
本発明の実施形態の態様、特徴及び効果は、次の図面を参照した実施形態の説明から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、補償回路を有する従来の試験測定装置の回路例である。
図2図2は、本発明のいくつかの実施形態による負荷を推定するための試験測定装置の回路図の例である。
図3図3は、本発明のいくつかの実施形態による試験測定装置に装着された負荷を推定するための処理の例を示すフローチャートである。
図4図4は、本発明のいくつかの実施形態による負荷を推定するための試験測定装置の回路図の別の例である。
図5図5は、本発明の実施形態によるSMUによる負荷の推定値を調整していった場合の応答の例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
伝統的に、SMUを設計する際には、最大容量性又は誘導性負荷を指定するというように、負荷(即ち、取り付けるDUT)の特定のパラメータについて仮定を立てる。図1は、これらの仮定を用いて設計された従来のSMU回路の例を示し、これは、ループ応答を形成するのに利用される補償回路を含んでおり、ループ応答は、仮定したパラメータの範囲内であれば、装着される多様な形式の負荷(つまり、DUT)の多くについて、安定している。
【0014】
図1に示す実施形態には、電圧源(V1)100があり、これは、演算増幅器(U1)102に入力される。また、演算増幅器(U1)102は、DUT114の両端間電圧である電圧104(Vmで示す)も受ける。電流検出抵抗器106(Rm)は、DUT114を流れる電流を測定するために使用される。演算増幅器102は、Voで示す電圧108を出力する。補償回路は、コンデンサ(Cc)110及びコンデンサ(Cmin)112で表される
【0015】
しかし、補正回路は、SMUに好ましくない挙動を引き起こすことがある。例えば、コンデンサ112は、接続された低容量のDUTが低電流の場合に、セトリングが遅くなる原因となり得る。コンデンサ110は、電流測定に関して帯域幅を制限することがあり、また、電流のオーバーシュートを引き起こすことがあるので、これを補償するために、コンデンサ112の使用が必要となる。更に、コンデンサ110及び112の両方の容量値は、DUT114に適用される様々な負荷電圧レンジに比較して、検出抵抗器106の両端間電圧が変化するのに合わせて、適切な比率を維持するように変化しなければならない。もしコンデンサ110及び112の容量値が変化しない場合、電圧及び電流レンジの特定の組み合わせに対して、試験測定装置の性能が低下する。
【0016】
DUT114の実際の負荷を考慮に入れて、SMUを手動で調整するのを可能にする方法がいくつか開発されている。これらの方法では、フォワード積分回路の利得帯域幅と、フィードバック補償ポール・ゼロのペアとを手動で調整できるし、調整が必要である。これには、DUT114の特性を評価/測定するのに、かなりの時間を費やす必要があり、その後は、異なるDUT毎に設定も変更するか、わずかに異なるDUTには最適でない設定でも許容する必要がある。
【0017】
SMU性能を最大化する他の方法としては、試験刺激信号を生成し、DUT114に試験刺激信号を送ってDUT114の応答を測定し、DUT114のモデルを制作するものがある。しかし、DUT114が、そのような試験信号を受けるように設計されていない場合、これらの試験刺激信号がDUT114を損傷させる可能性がある。また、選択した試験刺激信号が、測定中に試験すべき全範囲と同じ範囲で、DUT114を正確に刺激しないことがあり、これは、作成されるモデルの精度を低下させることになる。
【0018】
本発明の実施形態は、以下で詳しく説明するように、ユーザ指定の試験信号を採用し、試験測定装置に取り付けられたDUTの負荷を推定するためにユーザ試験シーケンスが実行されているときに、バックグラウンドで実行できる。即ち、本発明の実施形態は、試験測定装置が接続されたDUTの特性を検出し、接続されたDUTを駆動する試験測定装置の挙動を変更することを可能にする。図2は、本発明の実施形態によるこのようなシステムの回路図の例を示す。
【0019】
図2は、DUT200に接続された本発明の実施形態によるSMUの簡略化された例を示す。可変電圧源202は、演算増幅器204の非反転入力端子に電圧V1を供給する。電流センサである電流検出抵抗器(Rm)206によって提供されるフィードバック・ループは、演算増幅器204の他方の反転入力端子も電圧V1の値に強制する。図2は、電流センサ206を検出抵抗器として示している。しかし、電流センサ206は、ホール効果センサ、対数素子等のような電流を測定できる任意のデバイスであっても良い。なお、フィードバック・ループは、DUT200を流れる電流の電流源でもあることに注意されたい。その結果、電流センサ206の両端間の電圧降下は、DUT200を通る電流に比例する。
【0020】
図示しないものの、いくつかの実施形態では、演算増幅器204は省略され、電圧源からの電圧V1は、電流センサ206が直接受けても良い。
【0021】
制御測定ユニット208には、1つ以上のプロセッサ209があり、可変電圧源202に所望の値V1を出力するように指示できる。また、制御測定ユニット208には、電圧Vm210とDUTを流れる電流の値を測定する機能があり、更に、測定した値をデジタル化する機能があっても良い。当業者であれば理解できるように、図2に示す回路図は、簡略化された回路図であり、試験測定装置は、表示部212、メモリ214及びユーザ入力部216などの追加のコンポーネントがあっても良い。また、メモリ214は、制御測定ユニット208内の1つ以上のプロセッサが実行する命令を記憶し、1つ以上のプロセッサは、こうした命令に示される、例えば、任意の方法、操作、関連するステップを実行する。プロトコルをオーサリングやデバッグする命令を記憶していても良く、このとき、既知のアナログ信号に対してプロトコルの定義の結果を視覚的に表示しても良い。当業者には理解されるように、メモリ214は、プロセッサ・キャッシュ、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、ソリッド・ステート・メモリ、ハード・ディスク・ドライブその他のメモリ形式のような1つ以上のメモリであっても良い。
【0022】
ユーザ入力部216は、制御測定ユニット208に結合される。ユーザ入力部216は、表示部212上でのグラフィカル・ユーザ・インタフェース(GUI)とユーザがインタラクティブに利用できる、キーボード、マウス、トラックボール、タッチスクリーン、その他の任意の操作手段であっても良い。表示部212は、波形、測定値その他のデータをユーザに表示するデジタル・スクリーン、陰極線管ベースのディスプレイ、その他のモニタであっても良い。また、当業者であればわかるように、1つ以上のアナログ・デジタル・コンバータなど、追加のコンポーネントがあっても良い。
【0023】
この例の試験測定システムにおいて、DUT200は、内部的にコンデンサ220と並列な抵抗218として表される。しかしながら、当業者であればわかるように、実際の取り付けられたDUTは、異なる多数の電気部品を有していても良い。しかしながら、この例の試験測定システムでは、DUT200の負荷を推定するのに、図2に示すように、コンデンサ220と並列な抵抗218としてDUT200をモデル化している。
【0024】
並列な抵抗218とコンデンサ220で表されているDUT200の仮定は、DUTとして扱うであろう最も典型的なDUTの小さな信号の線形化したものを表す。SMUと装着したDUT200のこの簡略化されたモデルを使用して、ダイナミクスの数式(1)を求めることができ、これは、2つの未知の成分RL及びCLがある1つの等式を与える。このとき、RLは、抵抗218の抵抗値であり、CLは、コンデンサ220の静電容量である。
【0025】
(Vo-Vm)/Rm=CL*(dVm/dt)+(Vm/RL) (1)
【0026】
電圧Vo222は、演算増幅器204によって電流センサ206に対して強制される電圧を表す。上述したように、電圧Vm210は、電流センサ206とDUT200の間の回路ノードにおける電圧を表し、一方、抵抗218の抵抗値RLと、コンデンサ220の静電容量CLは、通常、未知である。
【0027】
当業者であればわかるように、数式(1)を用いて、エラー関数を求めることができる。次いで、このエラー関数は、RLと、CLの推定値の、これらの真の値からのずれを最小にする最小自乗推定値を明らかにするのに利用できる。
【0028】
最小二乗法を適用すると、RL及びCLの推定値が実際の値に収束する場合にゼロに等しい2つの正規方程式(normal equation)が得られる。これら2つの正規方程式は、次のとおりである。
【0029】
【数2】
(2)
【0030】
【数3】
(3)
【0031】
理論的には、不連続で既知の2つのサンプル時点におけるRm、Vm及びVoがわかれば、RL及びCLの一意の値を計算できる。しかし、実際の動作では、推定を悪化させるノイズやその他の障害の存在に加えて、時間のかかるステップ毎の多数のループ処理又は再帰処理を避けたいという要求もあって、本発明の実施形態は、ユーザの試験シーケンスが実行されている間に、バックグラウンドで推定される真の値に向かって徐々に進む。
【0032】
算出又は決定をサンプル・ポイント毎に1回実行し、そして、各サンプル・ポイントに1回のループ処理を連続的に又は繰り返して行って、RL及びCLの推定値を生成すると、これは、結果的に、実際の値に向かって収束する。
【0033】
図3は、負荷であるDUT200に関する事前の知識なしに、接続されたDUT200(負荷)を推定する本発明の実施形態によるための処理の例のフローチャートを示す。
【0034】
最初に、工程300では、RL及びCLに関する任意の初期値が選択される。理想的には、これらの値は期待値に近い値であるべきなので、いくつかの実施形態では、最初の任意の初期値は、試験測定装置のユーザ入力部216を使用してユーザによって選択されても良い。しかし、ユーザが選択しない場合には、制御測定ユニット208が、試験測定装置の出力端子にデバイスが何も接続されていない状態に近くなるように、RLに大きな値を選択し、CLに小さな値を選択する。この任意の初期値は、1回だけ使用され、RL及びCLの値は、図示した方法の各ループ処理でアップデートされる。
【0035】
工程302では、電圧Vo222と電圧Vm210について、同時に値を取得する。実施形態によっては、制御測定ユニット208が、電圧Vo222の出力値を把握できるので、別途、測定しなくても良い場合がある。電圧Vm210は、DUT200の両端間電圧を測定するように設計されたアナログ・デジタル・コンバータ(ADC、図示せず)を使って測定しても良い。工程302では、順次サンプリングすると不正確又は悪い結果をもたらすので、電圧Vo222と電圧Vm210の値は、時間的に一致しているのが好ましい。
【0036】
工程304では、dVm/dtを計算する。これは、数式4を用いて行うことができ、このとき、ΔTは、電圧Vm210のサンプルとサンプルの間の時間的間隔に等しい。
【0037】
dVm/dt=(Vm[n]-Vm[n-1])*1/ΔT (4)
【0038】
工程306では、上述した2つの正規方程式(2)及び(3)の値が、dVm/dtの算出値、RL及びCLの最新の値、並びに、電流センサ206の既知の抵抗値Rmを用いて求められる。実施形態によっては、Rmの値は、電流レンジ及び使用されている特定の試験測定装置に依存する公称値又は校正された値のいずれかである。しかしながら、その値は各実施形態において既知である。電流センサ206が抵抗器ではない場合には、抵抗値Rmを用いた電流測定値である(Vo-Vm)/Rmの代わりに、測定された電流の値が、正規方程式に代数学的に代入される。
【0039】
制御測定ユニット208は、正規方程式(2)及び(3)夫々の結果が正か負かに基づいて、その次の工程を決定する。工程308では、制御測定ユニット208が、静電容量の正規方程式(2)の結果が正か負かを判断する。静電容量の正規方程式(2)の結果が負の場合、工程310において、CLの現行の値を、負方向に所定量だけ変化させる。一方、静電容量の正規方程式(2)の結果が正の場合、工程312において、CLの現行の値を、正方向に所定量だけ変化させる。
【0040】
例えば、正規方程式(2)が+10,000に等しい場合、CLの現行値を正方向に所定量(例えば、101ピコ・ファラッド(pF)から102pFへ)変化させる。一方、正規方程式(2)が負の場合、CLの現行値を負方向に所定量(例えば、101pFから100pFへ)変化させる。
【0041】
同様に、工程314において、制御測定ユニット208は、抵抗の正規方程式(3)の結果が正か負かを判断する。抵抗の正規方程式(3)の結果が負の場合、工程316において、RLの現行値を、負方向に所定量だけ変化させる。一方、抵抗の正規方程式(3)の結果が正の場合、工程318において、RLの現行値を、正方向に所定量だけ変化させる。
【0042】
使用する変化量の大きさは、装着されるDUT200(即ち、負荷)の特性をどれだけ速く求める必要があるのかと、ノイズやモデル化されていない妨害に起因するエラーとの間で、バランスを考えて決めれば良い。いくつかの実施形態では、変化量の大きさは、パラメータであるCL及びRLの現行の推定値に応じたものとしても良い。例えば、RLの値が大きい場合、大きめの変化量を用いても良い。もしRLの値が小さくなったら、変化量を小さくしても良い。これにより、広いダイナミック・レンジ全体に渡って相対的に同程度の精度で、高速に収束させることが可能になる。他の実施形態では、パラメータCL及びRLと関係のない所定変化量を利用しても良い。この所定変化量は、制御測定ユニット208によって自動的に設定されても良いし、ユーザ入力部216においてユーザによって設定されても良い。
【0043】
L及びRLの値が調整されたら、制御測定ユニット208は、工程302に戻り、CL及びRLの新しい値を用いて処理を進める。出力端子222に十分な励起信号が存在する場合、CL及びRLの推定値は、負荷で表される小信号の抵抗及び静電容量である実際の値に向かって収束し始める必要がある。パラメータCL及びRLの両方の推定値(又は仮定値)が実際の値から遠く離れている場合、一方の推定値が正しい値に近づくまで、他方の推定値は収束しないことになろう。処理を続けることによって、両方の推定値が収束することになる。
【0044】
いくつかの実施形態では、CL及びRLの推定値について、上限及び下限を設定しても良い。例えば、CL及びRLの値が更に変化しても、システムに大きな変化をもたらさない値が存在することがある。また、これらの値の影響を受ける時間定数が、システムの変動よりも非常に遅いか、又はサンプリング期間よりも非常に速く、夫々の値の更なる変化が、実際上、「一定である」か又は「瞬時」のどちらかとなる上限及び下限がある。CL及びRLの推定値を上下限のレンジ内に制限することで、負荷の特性が変化したときにも、応答を確実に速くするのに有効で、また、数学的特性に関連する問題(例えば、量子化誤差やゼロによる割り算など)を回避するのにも役立つ。
【0045】
上限と下限は、ユーザが設定しても良い。例えば、もしユーザが、静電容量や抵抗値が特定のレンジ内にあるデバイスのみを試験するとわかっているのなら、この情報に基づいて、ユーザが上限と下限を設定しても良い。別の実施形態では、制御測定ユニット208が、例えば、サンプル・レートなど、他の要因に基づいて、上限と下限を設定しても良い。
【0046】
入力信号Vo及びVm、そして、その結果得られるdVm/dtの絶対振幅又は相対振幅は、試験することができ、また、この振幅は、信号が比較的安定(又はセトリング)している場合、RLの上述の所定変化量を調整するのに利用でき、更に、信号が変化している(slewing or moving)場合、CLの上述の所定変化量を調整するのに利用できる。実際的なことを言えば、出力信号が完全にセトリングしたら、DUT中に存在する静電容量を求めるのが困難か又は不可能になる。システム中のある程度のレベルのノイズは、これを示すために役立つかもしれないが、システムがセトリングしたら、推定した静電容量値がゼロにならないようにする、特定のしきい値レベルの動きが必要となる。同様に、DUTの抵抗値を正確に推定するためには、特定のしきい値レベルの出力バイアス電圧が必要となる。これらの試験は、DUTに対する十分な励起信号がない場合に、負荷の推定値が安定したままで、発散し始めないようにするのを確実にするのに役立つ。
【0047】
上述のように、本発明の実施形態は、DUT200の特性を事前に知っている必要がなく、装着されるDUT200の線形で小信号のモデルを表す推定値を作成できる。更に、DUT200の特性を求めるのに、特性を測定するための何らかの信号を印可する必要はない。むしろ、ユーザが指定する試験信号のみを、DUT200に対する刺激信号として使用し、このとき、ユーザ指定の試験信号は、ユーザが設定したDUT200を損傷しないレンジ内にあることを保証しているので、これにより、DUT200への損傷を防ぐことができる。
【0048】
本発明の実施形態は、ユーザの試験シーケンスが実行されているときに、バックグラウンドで実行されても良いし、又は、装着されるDUT200の試験及び測定を行う前に、校正として行われても良い。これにより、装着されるDUT200毎に性能を最適化でき、逆に、多数のデバイスに渡って、単一の「典型的な」特性測定信号を印可したり、補償するための特性を適用する必要はない。試験測定装置によって負荷の特性が判明したら、この負荷の特性を使用して、負荷を駆動する試験測定装置の性能と挙動を改善できる。
【0049】
しかし、本発明の実施形態は、並列な抵抗及びコンデンサによって表されるDUTに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、DUTは、直列な抵抗及びコンデンサによって表されても良い。他の実施形態では、直列な抵抗及び誘導子(inductor)、又は、並列な抵抗及び誘導子によって表される誘導性DUTであっても良い。なお、誘導子の典型的な例は、コイルであるが、本発明の実施形態における誘導子は、物理的に明確な「コイル」の形態をしたものに限定されず、何らかの形態(例えば、デバイス内の配線など)でインダクタンス又はインダクタンス成分を有するものも含まれる。
【0050】
図4は、抵抗404と直列の誘導子402を有するDUT400をモデル化した回路を示す。図4の構成要素の多くは、図2に示して上述したものと同じである。このため、これらのコンポーネントには、同じ参照番号を付与し、図4に関して更に詳しく説明はしない。また、図2と同様に、演算増幅器204は、実施形態によっては除去しても良く、更に、電流センサ206は、図4では、電流検出抵抗器として描かれているが、電流を測定できる任意のデバイスであっても良い。
【0051】
電流センサ206によって検出される電流は、IRMである。図4では、Vmは、次のように示される。このとき、LLは、誘導子402のインダクタンスである。また、RLは、抵抗404の抵抗値である。
【0052】
m=LL*(dIRM/dt)+IRM*RL (5)
【0053】
数式5を使い、上記の数式1と同じプロセスを適用すると、直列な誘導子及び抵抗のDUTに関する正規方程式は、次の通りである。
【0054】
【数6】
(6)
【0055】
【数7】
(7)
【0056】
以下の数式(8)は、抵抗による電流センサ206の場合の数式(5)、(6)又は(7)のいずれでも使用できる。
【0057】
RM=(Vo-Vm)/Rm (8)
【0058】
上述した実施形態と同様に、正規方程式(6)及び(7)が正か負かによって、図3で説明したように、誘導子の推定値と抵抗の推定値を変化させる所定量の方向が変化する。即ち、負荷が、並列又は直列のコンデンサ及び抵抗としてモデル化されているか、若しくは、並列又は直列の誘導子及び抵抗としてモデル化されているか、いずれにしても、制御測定ユニット208は、負荷に関する任意の初期値を選択し、次いで、電流センサ206と測定された電圧に基づいて、制御測定ユニット208は、正規方程式が正又は負であるかに基づいて、実際の負荷の値に向けて、負荷の推定値を徐々に(所定量毎に)変化させることができる。
【0059】
図5は、本発明の実施形態を用いることで可能になる性能向上の例を示す。図5は、DUTの初期のパルス・ステップ信号には、発振やオーバーシュートがあるが、容量性及び抵抗性負荷の推定値が、実際の値に向かって収束していくにつれて、発振やオーバーシュートが減少又は除去されることを示している。
【0060】
プロット500は、試験測定装置の設定された出力電圧(Vset)502と、実際の出力電圧(Vout)505とを時間軸上で示したものである(水平軸が時間軸)。図示するように、初期のパルスには、実際の出力電圧505にオーバーシュートと振動があるが、時間経過と共に、プロット520の推定静電容量522が実際の静電容量525に近づくと共に、プロット530の抵抗の推定値532が実際の抵抗値535に近づくと、実際の出力電圧505が設定電圧502に近づき、オーバーシュートと振動が非常に小さくなる。
【0061】
プロット510に示すように、試験測定装置による電流出力でも同じことが起こる。実際の出力電流512における振動とオーバーシュートは、時間経過と共に推定負荷値が実際の負荷値に向かって収束するにつれて、電流の上限514と下限516の間でセトリングする(落ち着く)。
【0062】
本発明の態様は、特別に作成されたハードウェア、ファームウェア、デジタル・シグナル・プロセッサ又はプログラムされた命令に従って動作するプロセッサを含む特別にプログラムされた汎用コンピュータ上で動作できる。本願における「コントローラ」又は「プロセッサ」という用語は、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、ASIC及び専用ハードウェア・コントローラ等を意図する。本発明の態様は、1つ又は複数のコンピュータ(モニタリング・モジュールを含む)その他のデバイスによって実行される、1つ又は複数のプログラム・モジュールなどのコンピュータ利用可能なデータ及びコンピュータ実行可能な命令で実現できる。概して、プログラム・モジュールとしては、ルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造などを含み、これらは、コンピュータその他のデバイス内のプロセッサによって実行されると、特定のタスクを実行するか、又は、特定の抽象データ形式を実現する。コンピュータ実行可能命令は、ハードディスク、光ディスク、リムーバブル記憶媒体、ソリッド・ステート・メモリ、RAMなどのコンピュータ可読記憶媒体に記憶しても良い。当業者には理解されるように、プログラム・モジュールの機能は、様々な実施例において必要に応じて組み合わせられるか又は分散されても良い。更に、こうした機能は、集積回路、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)などのようなファームウェア又はハードウェア同等物において全体又は一部を具体化できる。特定のデータ構造を使用して、本発明の1つ以上の態様をより効果的に実施することができ、そのようなデータ構造は、本願に記載されたコンピュータ実行可能命令及びコンピュータ使用可能データの範囲内と考えられる。
【0063】
開示された態様は、場合によっては、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア又はこれらの任意の組み合わせで実現されても良い。開示された態様は、1つ以上のプロセッサによって読み取られ、実行され得る1つ又は複数のコンピュータ可読媒体によって運搬されるか又は記憶される命令として実現されても良い。そのような命令は、コンピュータ・プログラム・プロダクトと呼ぶことができる。本願で説明するコンピュータ可読媒体は、コンピューティング装置によってアクセス可能な任意の媒体を意味する。限定するものではないが、一例としては、コンピュータ可読媒体は、コンピュータ記憶媒体及び通信媒体を含むことができる。
【0064】
コンピュータ記憶媒体とは、コンピュータ読み取り可能な情報を記憶するために使用することができる任意の媒体を意味する。限定するものではないが、例としては、コンピュータ記憶媒体としては、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、電気消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EEPROM)、フラッシュメモリやその他のメモリ技術、コンパクト・ディスク読み出し専用メモリ(CD-ROM)、DVD(Digital Video Disc)やその他の光ディスク記憶装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置やその他の磁気記憶装置、及び任意の技術で実装された任意の他の揮発性又は不揮発性の取り外し可能又は取り外し不能の媒体を含んでいても良い。
【0065】
通信媒体とは、コンピュータ可読情報の通信に利用できる任意の媒体を意味する。限定するものではないが、例としては、通信媒体には、電気、光、無線周波数(RF)、赤外線、音又はその他の形式の信号の通信に適した同軸ケーブル、光ファイバ・ケーブル、空気又は任意の他の媒体を含むことができる。
【0066】
実施例
以下では、本願で開示される技術の理解に有益な実施例が提示される。この技術の実施形態は、以下で記述する実施例の1つ以上及び任意の組み合わせを含んでいても良い。
【0067】
実施例1は、試験測定装置であって、
電圧源電圧を出力するように構成された電圧源と、
接続された被試験デバイスを流れる電流を検出するように構成された電流センサと、
上記電圧源電圧と、上記電流と、接続された未知の上記被試験デバイスの電圧とに基づいて、接続された未知の上記被試験デバイスの負荷の推定値を求めるよう構成された1つ以上のプロセッサと
を具えている。
【0068】
実施例2は、実施例1の試験測定装置であって、このとき、1つ以上の上記プロセッサが、上記負荷の上記推定値を反復して求めるように更に構成されている。
【0069】
実施例3は、実施例2の試験測定装置であって、このとき、上記負荷の上記推定値としては、抵抗と静電容量の推定値、又は、抵抗とインダクタンスの推定値がある。
【0070】
実施例4は、実施例3の試験測定装置であって、1つ以上のプロセッサは、抵抗の正規方程式の結果が正か負か否かに基づいて抵抗の推定値を反復して調整し、静電容量又はインダクタンスの正規方程式の結果が正か負かに基づいて静電容量又はインダクタンスの推定値を反復して調整するように更に構成される。
【0071】
実施例5は、実施例4の試験測定装置であって、このとき、抵抗の正規方程式の結果が正の場合、抵抗の推定値が正方向に調整され、静電容量又はインダクタンスの正規方程式の結果が正の場合、静電容量又はインダクタンスの推定値が正方向に調整される。
【0072】
実施例6は、実施例5の試験測定装置であって、このとき、抵抗の推定値の調整量は、抵抗の現行の推定値に基づいており、静電容量又はインダクタンスの推定値の調整量は、静電容量又はインダクタンスの現行の推定値に基づく。
【0073】
実施例7は、実施例5の試験測定装置であって、このとき、抵抗の推定値の調整量が所定の増分値であり、静電容量又はインダクタンスの推定値の調整量が所定の増分値である。
【0074】
実施例8は、実施例2から7のいずれかの試験測定装置であって、1つ以上のプロセッサが、
上記負荷に関して任意の初期値を選択し、
上記電圧源電圧と接続された上記被試験デバイスの電圧とを同時に求め、
上記電圧源電圧、接続された上記被試験デバイスの電圧及び上記負荷の任意の初期値に基づいて、上記負荷の抵抗の推定値を正と負のいずれの方向に調整するかを判断すると共に、上記負荷の静電容量又はインダクタンスの推定値を正と負のいずれの方向に調整するかを判断し、
上記抵抗及び上記静電容量又はインダクタンスの任意の上記初期値を正か負のいずれかの方向に調整し、この調整値が上記負荷の上記推定値を表すようにすることによって、
上記負荷の推定値を反復して求めるよう更に構成される。
【0075】
実施例9は、実施例8の試験測定装置であって、1つ以上のプロセッサが、
上記電圧源の新たな出力電圧と、接続された上記被試験デバイスの電圧とを同時に求め、
上記出力電圧、接続された上記被試験デバイスの電圧及び上記負荷の調整値に基づいて、上記負荷の抵抗の推定値を正と負のいずれの方向に調整するかを判断すると共に、上記負荷の静電容量又はインダクタンスの推定値を正と負のいずれの方向に調整するかを判断し、
上記抵抗及び上記静電容量又はインダクタンスの上記推定値を正か負のいずれかの方向に調整し、この調整推定値が上記負荷のより良い推定値を表すようにすることによって、
上記負荷の推定値を反復して求めるよう更に構成される。
【0076】
実施例10は、実施例8の試験測定装置であって、このとき、1つ以上のプロセッサが、抵抗の調整値を上限及び下限に基づいて制限し、また、静電容量又はインダクタンスの調整値を上限及び下限に基づいて制限するように更に構成される。
【0077】
実施例11は、実施例10の試験測定装置であって、このとき、抵抗及び静電容量又はインダクタンスの値の上限及び下限がユーザによって設定される。
【0078】
実施例12は、実施例7から11のいずれかの試験測定装置であって、このとき、任意の上記初期値は、被試験デバイスが取り付けられていない状態を近似するように選択される。
【0079】
実施例13は、試験測定装置に結合された未知の負荷を推定する方法であって、
上記試験測定装置に未知の上記負荷を与える被試験デバイスと電流センサとの間の回路ノードで電圧を取得する処理と、
上記電流センサに強制される出力電圧を求める処理と、
上記電流センサを使用して上記被試験デバイスに流れる電流を求める処理と、
上記回路ノードの上記電圧、上記電流及び上記出力電圧に基づいて、上記負荷の推定値を求める処理と
を具えている。
【0080】
実施例14は、実施例13の方法であって、抵抗及び静電容量を有するか、又は、抵抗とインダクタンスを有する上記負荷の新たな推定値を反復して求める処理を更に具えている。
【0081】
実施例15は、実施例14の方法であって、抵抗及び静電容量を有するか、又は、抵抗とインダクタンスを有する上記被試験デバイスの新たな推定値を求める処理が、
抵抗と静電容量又はインダクタンスについての任意の初期値を選択する処理と、
上記出力電圧と上記回路ノードの上記電圧を同時に求める処理と、
上記出力電圧、上記回路ノードの上記電圧並びに上記抵抗及び上記静電容量又はインダクタンスの任意の初期値に基づいて、上記抵抗の推定値を正と負のいずれの方向に調整するかを判断すると共に、上記静電容量又はインダクタンスの推定値を正と負のいずれの方向に調整するかを判断する処理と、
任意の上記初期値を正か負のいずれかの方向に調整することによって、上記抵抗及び上記静電容量又はインダクタンスについての新しい推定値を生成する処理と
を有している。
【0082】
実施例16は、実施例15の方法であって、このとき、上記被試験デバイスの上記抵抗及び上記静電容量又はインダクタンスの推定値を求める処理が、
新たな出力電圧と上記回路ノードの上記電圧を同時に求める処理と、
上記出力電圧、上記回路ノードの上記電圧、並びに上記抵抗及び上記静電容量又はインダクタンスの新しい推定値に基づいて、上記抵抗の推定値を正と負のいずれの方向に調整するかを判断すると共に、上記静電容量又はインダクタンスの推定値を正と負のいずれの方向に調整するかを判断する処理と、
上記抵抗及び上記静電容量又はインダクタンスについての新しい推定値を正か負のいずれかの方向に調整する処理と
を有している。
【0083】
実施例17は、実施例14から16のいずれかの方法であって、このとき、抵抗の新しい推定値が上限及び下限に基づいて制限され、静電容量又はインダクタンスの新しい推定値が上限及び下限に基づいて制限される。
【0084】
実施例18は、実施例17の方法であって、このとき、抵抗及び静電容量又はインダクタンスの値の上限及び下限が、ユーザによって設定される。
【0085】
実施例19は、実施例14から18のいずれか1つの方法であって、このとき、任意の上記初期値は、被試験デバイスが取り付けられていない状態を近似するように選択される。
【0086】
実施例20は、実施例14から19のいずれかの方法であって、このとき、抵抗及び静電容量又はインダクタンスの推定値を求める処理は、
抵抗の正規方程式の結果が正か負か否かに基づいて抵抗の推定値を調整する処理と、
静電容量又はインダクタンスの正規方程式の結果が正か負か否かに基づいて静電容量又はインダクタンスの推定値を調整する処理と
を有している。
【0087】
開示された主題の上述のバージョンは、記述したか又は当業者には明らかであろう多くの効果を有する。それでも、開示された装置、システム又は方法のすべてのバージョンにおいて、これらの効果又は特徴のすべてが要求されるわけではない。
【0088】
加えて、本願の記述は、特定の特徴に言及している。本明細書における開示には、これらの特定の特徴の全ての可能な組み合わせが含まれると理解すべきである。ある特定の特徴が特定の態様又は実施例の状況において開示される場合、その特徴は、可能である限り、他の態様及び実施例の状況においても利用できる。
【0089】
また、本願において、2つ以上の定義されたステップ又は工程を有する方法に言及する場合、これら定義されたステップ又は工程は、状況的にそれらの可能性を排除しない限り、任意の順序で又は同時に実行しても良い。
【0090】
説明の都合上、本発明の具体的な実施例を図示し、説明してきたが、本発明の要旨と範囲から離れることなく、種々の変更が可能なことが理解できよう。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲を除いて限定されるべきではない。
【符号の説明】
【0091】
200 被試験デバイス(DUT)
202 可変電圧源
204 演算増幅器
206 電流センサ(電流検出抵抗器Rm
208 制御測定ユニット
209 プロセッサ
210 DUTの電圧Vm
212 表示部
214 メモリ
216 ユーザ入力部
218 抵抗
220 コンデンサ
222 演算増幅器の出力端子又は出力電圧
400 被試験デバイス(DUT)
402 誘導子(inductor)
404 抵抗
図1
図2
図3
図4
図5