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  • 特許-潤滑剤量調整装置および方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】潤滑剤量調整装置および方法
(51)【国際特許分類】
   B05C 11/10 20060101AFI20241025BHJP
   B05C 1/06 20060101ALI20241025BHJP
【FI】
B05C11/10
B05C1/06
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020133009
(22)【出願日】2020-08-05
(65)【公開番号】P2022029628
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2023-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000222934
【氏名又は名称】東洋電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596092023
【氏名又は名称】株式会社アルテック京都
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【弁理士】
【氏名又は名称】別役 重尚
(74)【代理人】
【識別番号】100118278
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 聡
(72)【発明者】
【氏名】八野井 聡
(72)【発明者】
【氏名】清水 直明
(72)【発明者】
【氏名】猪鼻 孝史
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 雅之
【審査官】河村 勝也
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-077819(JP,U)
【文献】実開平06-079029(JP,U)
【文献】特開2012-179580(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 11/10
B05C 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑剤が塗布された線材が通過するように且つ前記線材を挟み込むように配置された一対の吸油性の部材により、前記線材から潤滑剤を拭き取る拭き取り部と、
前記拭き取り部に対して空気を吹き付けることで前記拭き取り部に強制的に空気を通し、これにより前記拭き取り部内の潤滑剤を減少させる空気通過部と、を有し、
前記拭き取り部に対して空気の流れの下流側に壁部が配置され、
前記壁部に接触した潤滑剤が回収される、潤滑剤量調整装置。
【請求項2】
前記線材の通過方向における前記拭き取り部より上流側に配置され、前記線材に潤滑剤を塗布する塗布部と、
前記壁部により回収された潤滑剤を貯める収容部と、を有し、
前記塗布部は、塗布に用いる潤滑剤を前記収容部から取得する、請求項に記載の潤滑剤量調整装置。
【請求項3】
前記線材の通過方向における前記拭き取り部より上流側に配置され、前記線材に潤滑剤を塗布する塗布部を有し、
前記塗布部と前記拭き取り部とは別体である、請求項1に記載の潤滑剤量調整装置。
【請求項4】
前記空気通過部は、前記拭き取り部における前記線材が通過する位置に集中的に空気を通すように配置される、請求項1に記載の潤滑剤量調整装置。
【請求項5】
前記空気通過部により前記拭き取り部に通す空気の量を調節する調節部を有する、請求項1に記載の潤滑剤量調整装置。
【請求項6】
潤滑剤が塗布された線材が通過するように且つ前記線材を挟み込むように配置された一対の吸油性の部材により、前記線材から潤滑剤を拭き取る拭き取り部と、
前記拭き取り部に強制的に空気を通すことで前記拭き取り部内の潤滑剤を減少させる空気通過部と、
前記線材の通過方向における前記拭き取り部より上流側に配置され、前記線材に潤滑剤を塗布する塗布部と、を有し、
前記一対の吸油性の部材は、前記塗布部と前記拭き取り部とに亘って配置され、
前記塗布部と前記拭き取り部とは一体に構成される、潤滑剤量調整装置。
【請求項7】
潤滑剤が塗布された線材が通過するように且つ前記線材を挟み込むように配置された一対の吸油性の部材により前記線材から潤滑剤を拭き取る拭き取り部に対して空気を吹き付けることで前記拭き取り部に強制的に空気を通し、これにより前記拭き取り部内の潤滑剤を減少させ
前記拭き取り部に対して空気の流れの下流側に壁部が配置され、前記壁部に接触した潤滑剤が回収される、潤滑剤量調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑剤量調整装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
銅線などの線材は、例えば、モータのステータ等に巻き付けられる。ステータ等のように限られたスペースに線材を巻き付ける際には、隣接する線材との接触により被膜が損傷して絶縁不良となるピンホールが発生することがある。これを防止するために、従来、線材に潤滑剤を塗布しながら巻線が行われる。しかし、線材に塗布された潤滑剤が過剰であると好ましくない。例えば、潤滑剤塗布の後段の装置(巻線機など)へ潤滑剤が過剰に付着し、装置が取り扱いにくくなったり異物が付着したりするおそれがある。また、潤滑剤の層が厚過ぎることで、巻線終了後にステータ全体にワニス含浸をする工程でワニス処理が適切になされないおそれがある。一方、潤滑剤が不足すると上記したピンホールが生じやすくなる。従って、適量の潤滑剤を線材に塗布することが求められる。
【0003】
特許文献1は、潤滑剤が塗布された線材を、積層されたフェルトに貫通させ、重しでフェルト体を圧縮することにより、線材から過剰な潤滑剤を絞り取っている。特許文献2は、潤滑剤を線材に塗布した後、圧縮空気により線材から過剰な潤滑剤を飛ばしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開平5-77819号公報
【文献】実公平6-14828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、線材から拭き取った潤滑剤がフェルト体の内部で飽和状態に近くなると潤滑剤を十分に除去できなくなるおそれがある。また、フェルト体を圧縮するために重しを用いることから、絞り装置部では線材に重しによる負荷が少なからず常時かかる。
【0006】
また、特許文献2では、圧縮空気を供給するための大掛かりな装置を必要とする。さらに、線材を空気噴出装置の穴に通す作業が必要であると共に、潤滑剤を均一に飛散させるためには穴中心に線材を正確に位置決めする必要がある。従って、装置の設置や取り外しの作業性が低いという問題がある。
【0007】
本発明は、設置または取り外しの作業性を向上させると共に、簡単な構成で線材への潤滑剤の塗布量を適量にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明の潤滑剤量調整装置は、潤滑剤が塗布された線材が通過するように且つ前記線材を挟み込むように配置された一対の吸油性の部材により、前記線材から潤滑剤を拭き取る拭き取り部と、前記拭き取り部に対して空気を吹き付けることで前記拭き取り部に強制的に空気を通し、これにより前記拭き取り部内の潤滑剤を減少させる空気通過部と、を有し、前記拭き取り部に対して空気の流れの下流側に壁部が配置され、前記壁部に接触した潤滑剤が回収される
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、設置または取り外しの作業性を向上させると共に、簡単な構成で線材への潤滑剤の塗布量を適量にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】潤滑剤量調整装置を含む巻線システムの全体構成を示す模式図である。
図2】拭き取り部の上部をF1方向の上流側から見た模式図である。
図3】第2の実施の形態における巻線システムの全体構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0012】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る潤滑剤量調整装置を含む巻線システムの全体構成を示す模式図である。この巻線システムは、テンション装置200と、潤滑剤量調整装置100と、巻線機300とを有する。巻線機300は、銅線などの線材37を、例えばモータのステータ等に巻き付ける装置である。テンション装置200は、巻線機300との間で線材37に一定のテンションを掛けた状態を維持しつつ線材37を送り出す。線材37は図1の矢印で示すF1方向に走行・通過する。潤滑剤量調整装置100は、線材37の通過方向におけるテンション装置200と巻線機300との間に配置される。テンション装置200および巻線機300の各構成は問わず、公知の構成であってもよい。
【0013】
潤滑剤量調整装置100について説明する。潤滑剤量調整装置100は、線材37に潤滑剤36を塗布すると共に、線材37から過剰な潤滑剤36を拭き取ることで、結果として適量の潤滑剤36をムラ無く均一に線材37に塗布する装置である。潤滑剤36は、例えば液状パラフィンであるが、潤滑剤の種類は問わない。
【0014】
潤滑剤量調整装置100は、塗布部10、拭き取り部20、収容部31および空気通過部30を有する。収容部31は潤滑剤36を貯めるトレイや箱である。塗布部10は、線材37に潤滑剤36を塗布する。拭き取り部20は、線材37から潤滑剤36を拭き取る。空気通過部30は、拭き取り部20に強制的に空気を通すことで拭き取り部20内の潤滑剤36を減少させる。
【0015】
塗布部10および拭き取り部20は収容部31上に設置され、拭き取り部20はF1方向における塗布部10の下流側に配置される。塗布部10は塗布用フェルト11を有する。塗布用フェルト11は、一対の吸油性の部材としてフェルト11a、11bを含む。フェルト11aとフェルト11bとは、線材37が通過するように且つ、F1方向に略垂直な方向から線材37を挟み込むように配置される。
【0016】
フェルト11aは、その下端部が収容部31内の潤滑剤36に浸されるように設置される。収容部31内の潤滑剤36がフェルト11aの下端部から吸い上げられ、塗布用フェルト11が常に適量の潤滑剤36で満たされるようになっている。すなわち、塗布部10は、塗布に用いる潤滑剤36を収容部31から取得する。フェルト11aとフェルト11bとの間を線材37が通過することで、線材37には十分な潤滑剤36が塗布される。
【0017】
なお、収容部31内の潤滑剤36に浸されるように設置されるのは、フェルト11bの下端部であってもよいし、フェルト11a、11bの双方の下端部であってもよい。あるいは、吸い上げ用フェルトを介在させてもよい。すなわち、吸い上げ用フェルトの上端部がフェルト11aとフェルト11bとの間に挟まれると共に、吸い上げ用フェルトの下端部が収容部31内の潤滑剤36に浸されるように設置されてもよい。この構成の場合、収容部31内の潤滑剤36が吸い上げ用フェルトを通じて吸い上げられ、塗布用フェルト11に行き渡る。
【0018】
拭き取り部20は、拭き取り用フェルト21および壁部22を有する。拭き取り用フェルト21は、一対の吸油性の部材としてフェルト21a、21bを含む。フェルト21aとフェルト21bとは、線材37が通過するように且つ、F1方向に略垂直な方向から線材37を挟み込むように配置される。壁部22は、アルミニウム等で構成される板状部材である。壁部22は、フェルト21bの面のうちフェルト21aとは反対側の面に接着等により配置される。
【0019】
空気通過部30は、吹き出し部34、エアダクト32、調節部33を有する。吹き出し部34は、拭き取り部20のフェルト21aに対して接触または近接するよう配置される。拭き取り用フェルト21は、吹き出し部34の吹き出し口と壁部22とにより挟まれた形態となる。エアダクト32には、不図示のエアポンプから空気が供給され、その空気は調節部33を介してエアダクト32内を矢印で示すF2方向に流れる。調節部33は、ユーザ操作に応じて、エアダクト32内を流れる空気量を調節する。
【0020】
なお、塗布部10および拭き取り部20は不図示のハウジングで覆われてもよい。また、塗布用フェルト11、拭き取り用フェルト21、空気通過部30はそれぞれ、潤滑剤量調整装置100における不図示の固定部分に固定されてもよい。
【0021】
エアダクト32を流れた空気は、吹き出し部34から拭き取り用フェルト21に対して吹き付けられる。吹き付けられた空気は、拭き取り用フェルト21内を通って外部に排出される。吹き付けられた空気と共に拭き取り用フェルト21内の潤滑剤36も外部に吹き飛ばされる。すなわち、空気通過部30は、拭き取り用フェルト21に強制的に空気を通すことで拭き取り用フェルト21内の潤滑剤36を減少させる。
【0022】
ここで、吹き出し部34の吹き出し口は、線材37の通過方向に長く、線材37の通過方向に沿った形をしている。すなわち、吹き出し部34は、線材37が通過する位置に集中的に空気を吹き付けることができるような位置、向きに配置されている。これにより、少なくとも線材37部分は乾燥状態を維持することができ、線材37に付いている潤滑剤36を効率よく取り除くことができる。
【0023】
図2は、拭き取り部20の一部をF1方向の上流側から見た模式図である。図1では図示を省略したが、拭き取り部20は挟持部50を含む。拭き取り用フェルト21は、挟持部50によりF1方向に略垂直な方向で且つ拭き取り用フェルト21の厚み方向から挟み込まれる。挟持部50は、固定部51と、固定部51に対して回動自在(開閉自在)な回動部53と、を有する。すなわち、固定部51は第1壁部51bと第2壁部51aと有する。第2壁部51aに対して、ヒンジ部52を介して回動部53が回動可能に取り付けられている。フェルト21aは、回動部53に固着されている。フェルト21bは壁部22を介して第1壁部51bに固着されている。
【0024】
作業者が回動部53を開くとフェルト21bが露出する。作業者は、フェルト21bに対して適切な位置に線材37をセットしてから回動部53を閉じる。すると、フェルト21aとフェルト21bとの間に線材37が挟まれた状態となる。これにより、拭き取り用フェルト21は、F1方向に略垂直で且つ拭き取り用フェルト21の厚み方向において、第1壁部51bと回動部53とによって挟み込まれる。なお、回動部53の自重による第1壁部51b側への付勢力が少し発生するが、線材37がフェルト21a、21bによって囲まれれば十分である。従って、特別な付勢機能や締結機能を設けて回動部53を付勢する必要はない。
【0025】
このように簡単な装着操作によって、線材37を安定した位置で保持することができるので、拭き取り部20の設置・取り外しが容易である。なお、挟持部50は、テンションをかけた線材37が配置された後に設置することもできる。従って、線材37が配置された状態で、挟持部50の設置・取り外しが可能である。なお、塗布部10においても、挟み込みの構成に関し、挟持部50と同様の構成を採用してもよい。
【0026】
フェルト21a、21bの間を線材37が通過する過程で、線材37から余剰の潤滑剤36が拭き取られる(はぎ取られる)。空気の吹き付けをしない構成の場合は、拭き取り作用により、拭き取り用フェルト21に含まれる潤滑剤36が増加していくので、線材37から余剰の潤滑剤36を十分に拭き取ることができなくなる。しかし、本実施の形態では、空気を通過させることでフェルト21内の潤滑剤36を減少させているので、フェルト21内に含まれる潤滑剤36の量を常に適量に維持することができる。従って、適切な拭き取り効果を維持できるので、拭き取り後の線材37上の潤滑剤36の量を均一で適量にすることができる。
【0027】
また、上記特許文献1のように重しを用いることなく、空気噴射によりフェルト21の乾燥状態が維持される。従って、フェルト21は線材37へ必要最低限接触していればよく、線材37に対して不要なテンション・負荷をかける必要がない。この点でも、構成の複雑化が回避される。また、負荷がかからないので、細いものから太いものまで様々な太さの線材37に適用することができる。
【0028】
ところで、壁部22は、吹き出し部34から吹き付けられる空気の流れの下流側に位置する。従って、吹き付けられた空気は壁部22に衝突し、その際、壁部22に潤滑剤36が接触(付着)する。壁部22に付着した潤滑剤36は重力によって下降し、収容部31に回収される。回収された潤滑剤36は、塗布部10で塗布に用いる潤滑剤36として再利用される。
【0029】
本実施の形態によれば、フェルト21aとフェルト21bとは線材37を挟み込むように配置されるので、拭き取り部20の設置および取り外しが容易である。この効果は塗布部10についても得られる。また、塗布部10で潤滑剤36が塗布された線材37から潤滑剤36を拭き取る拭き取り部20に空気通過部30が強制的に空気を通すことで拭き取り部20内の潤滑剤36を減少させる。これにより、線材37に適量の潤滑剤36が残る。よって、塗布部10および拭き取り部20の設置または取り外しの作業性を向上させると共に、簡単な構成で線材37への潤滑剤の塗布量を適量にすることができる。
【0030】
特に、拭き取り用フェルト21は、挟持部50によりF1方向に略垂直な方向で且つ拭き取り用フェルト21の厚み方向から挟み込まれる。また、線材37をセットしたり取り外したりする際に行う回動部53の動作は簡単な開閉動作である。従って、線材37を安定した位置で保持することができ、しかも拭き取り部20の設置・取り外し作業が一層容易となる。塗布部10についても同様の構成を採用することで、塗布部10の設置・取り外し作業が容易となる。
【0031】
また、調節部33を操作することにより、空気通過部30により拭き取り部20に通す空気の量を調節可能である。これにより、拭き取り部20での拭き取り量を調節可能にして、潤滑剤36の塗布量をより適量にすることができる。
【0032】
なお、塗布用フェルト11、拭き取り用フェルト21が線材37を挟み込む方向は、図1の例では線材37に対して側方であったが、これに限定されない。例えば、線材37を上下または斜め方向から挟む構成であってもよい。しかも、塗布用フェルト11と拭き取り用フェルト21とで、線材37を挟み込む方向が一致する必要はない。
【0033】
なお、塗布部10として吸い上げ式を例示したが、塗布部10の構成は例示したものに限定されず、ローラ方式、滴下方式等、公知の構成でもよい。また、線材37を挟み込むように配置されるのは、拭き取り用フェルト21にだけ適用してもよい。その場合でも、拭き取り部20は容易に着脱可能である。
【0034】
なお、空気通過部30による空気の吹き付け方向は、線材37に略垂直な側方としたが、これに限定されない。例えば、上方から吹き付けることで、拭き取り部20を通過する空気が下方へ抜けるようにしてもよい。壁部22の設置位置も、空気の吹き付け方向の下流にする等、適宜設計してもよい。
【0035】
なお、拭き取り部20に空気を通せばよいので、空気通過部30により空気を吹き付けることに限らず、拭き取り部20から空気を吸引するように構成してもよい。その場合、例えば、吸引した空気から遠心分離等により潤滑剤36を回収してもよい。
【0036】
なお、吸油性の部材としてフェルトを例示したが、これに限定されない。
【0037】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態では、塗布部10と拭き取り部20とは別体に構成され、それぞれが別々にフェルトを備える構成であった。これに対し、本発明の第2の実施の形態では、塗布部と拭き取り部とが一体に構成される。
【0038】
図3は、本実施の形態に係る潤滑剤量調整装置を含む巻線システムの全体構成を示す模式図である。図3において、第1の実施の形態のものと同じ構成要素には同じ符号が付してある。
【0039】
潤滑剤量調整装置100(図1)に対応する潤滑剤量調整装置100Aは、一体フェルト41を備える。一体フェルト41は、一対の吸油性の部材としてフェルト41a、41bを含む。一体フェルト41のうち、線材37に潤滑剤36を塗布する領域が塗布部10Aである。一体フェルト41のうち、線材37から潤滑剤36を拭き取る領域が拭き取り部20Aである。拭き取り部20Aは、F1方向における塗布部10Aの下流の領域である。塗布部10A、拭き取り部20Aが、それぞれ、塗布部10、拭き取り部20(図1)に対応する。一体フェルト41は塗布部10Aと拭き取り部20Aと亘って配置される。従って、塗布部10Aと拭き取り部20Aとは一体に構成される。
【0040】
フェルト41aのうち塗布部10Aに属する部分の下端部が収容部31内の潤滑剤36に浸されるように設置される。収容部31内の潤滑剤36が、潤滑剤36に浸されたフェルト41aの下端部から吸い上げられ、拭き取り部20Aが適量の潤滑剤36で満たされる。
【0041】
なお、収容部31内の潤滑剤36に浸されるように設置されるのは、フェルト41bのうち塗布部10Aに属する部分の下端部であってもよいし、フェルト41a、41bの双方の下端部であってもよい。あるいは、第1の実施の形態と同様に、吸い上げ用フェルトの上端部がフェルト41aとフェルト41bとの間に挟まれると共に、吸い上げ用フェルトの下端部が収容部31内の潤滑剤36に浸されるように設置されてもよい。
【0042】
空気通過部30は、拭き取り部20Aに強制的に空気を通すことで拭き取り部20A内の潤滑剤36を減少させる。従って、潤滑剤36の塗布および拭き取りに関し、塗布部10Aおよび拭き取り部20Aは、塗布部10および拭き取り部20(図1)と同様の役割を果たす。
【0043】
本実施の形態によれば、塗布部10および拭き取り部20の設置または取り外しの作業性を向上させると共に、簡単な構成で線材37への潤滑剤の塗布量を適量にすることに関し、第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0044】
また、第1の実施の形態と共通する構成に関しては、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。なお、第1の実施の形態で言及した各種の変形例は、適用可能な限り本実施の形態にも適用してもよい。
【0045】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。上述の実施形態の一部を適宜組み合わせてもよい。
【0046】
例えば、潤滑剤量調整装置100は、塗布部10または塗布部10Aを有さない構成であっても本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0047】
10、10A 塗布部
20、20A 拭き取り部
21 拭き取り用フェルト
21a、21b、41a、41b フェルト
30 空気通過部
36 潤滑剤
37 線材
41 一体フェルト
図1
図2
図3