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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】装飾繊維シート
(51)【国際特許分類】
   D06Q 1/10 20060101AFI20241025BHJP
   B32B 27/02 20060101ALI20241025BHJP
   G01J 3/46 20060101ALI20241025BHJP
【FI】
D06Q1/10
B32B27/02
G01J3/46 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020140057
(22)【出願日】2020-08-21
(65)【公開番号】P2021055245
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-05-30
(31)【優先権主張番号】P 2019174927
(32)【優先日】2019-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229542
【氏名又は名称】日本バイリーン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大西 洋
【審査官】大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-101186(JP,A)
【文献】特開2014-214395(JP,A)
【文献】国際公開第2015/166808(WO,A1)
【文献】特開2016-148044(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04D1/00-11/00、D06Q1/00-1/14、
C09D11/00-13/00、
B32B1/00-43/00、
G01J3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル原着繊維から構成され、加熱加圧したニードルパンチ不織布の一方の主面が、アクリル系樹脂を含有している繊維接着用バインダ樹脂により接着されており、前記ニードルパンチ不織布の一方の主面にプリントを有し、前記繊維接着用バインダ樹脂は少なくとも前記プリントを有する主面に存在しており、
前記プリントにTEMPO酸化セルロースナノファイバーを含み、
前記TEMPO酸化セルロースナノファイバーの平均繊維長が50nm以上300nm以下である装飾繊維シートであり、
以下の[色差ばらつき測定方法]により測定試料50枚以上の色差ΔEを算出し、測定試料全体の枚数に対する、色差ΔEが0.2未満である測定試料の枚数の割合が50%以上である、装飾繊維シート。
[色差ばらつき測定方法]
(1)装飾繊維シートを、5cm×15cmの長方形に測定試料を50枚以上切り取る。
(2)分光光度計を用いて、(1)の測定試料のプリントを有する主面の明度L及び色度a,b(CIE1976L色空間)を、反射測定径2.5cmの測定範囲で重ならないように測定試料1枚あたり3点測定する。
(3)(2)で測定した、測定試料1枚における3点の明度の個別平均値L 及び色度の個別平均値a ,b を(1)の測定試料1枚ごとに求める。
(4)(3)で得られたすべての測定試料の明度の個別平均値L 及び色度の個別平均値a ,b の平均値を取り、測定試料全体の明度の全体平均値L 及び色度の全体平均値a ,b を求める。
(5)以下の式により、(4)で得られた明度の全体平均値L 及び色度の全体平均値a ,b に対する(1)の測定試料の色差ΔEを(1)の測定試料1枚ごとに算出する。
【請求項2】
上述の[色差ばらつき測定方法]により測定試料の色差ΔEを算出し、測定試料全体の枚数に対する、色差ΔEが0.5未満である測定試料の枚数の割合が90%以上である、請求項1に記載の装飾繊維シート。
【請求項3】
プリントに含まれるセルロースナノファイバーの質量比率が、プリント質量の0.5~5.0mass%である、請求項に記載の装飾繊維シート。
【請求項4】
セルロースナノファイバーの平均繊維径が8nm以下である、請求項1又は3に記載の装飾繊維シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装飾繊維シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、天井材などの自動車内装材の表皮材として、例えば、特開2012-179985号公報(特許文献1)に開示されている自動車用装飾繊維シートのような、繊維シートの表面にプリントを備える装飾繊維シートが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-179985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、本願出願人が繊維シートの表面にプリントを備える装飾繊維シートを製造したところ、装飾繊維シートの外観品位が劣ることがあった。
【0005】
本願出願人は装飾繊維シートの外観品位が劣る原因について検討するため、装飾繊維シートの表面を観察した。その結果、装飾繊維シートの表面のプリントがにじみプリントの線が太くなる箇所があったり、装飾繊維シートの表面のプリントが欠ける箇所があったりすることが装飾繊維シートの外観品位が劣る原因になることを見出した。
【0006】
本発明はこのような状況下でなされたものであり、外観品位に優れる装飾繊維シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係る発明は、「繊維シートの一方の主面にプリントを有する装飾繊維シートであり、以下の[色差ばらつき測定方法]により測定試料50枚以上の色差ΔEを算出し、測定試料全体の枚数に対する、色差ΔEが0.2未満である測定試料の枚数の割合が50%以上である、装飾繊維シート。[色差ばらつき測定方法](1)装飾繊維シートを、5cm×15cmの長方形に測定試料を50枚以上切り取る。(2)分光光度計を用いて、(1)の測定試料のプリントを有する主面の明度L及び色度a,b(CIE1976L色空間)を、反射測定径2.5cmの測定範囲で重ならないように測定試料1枚あたり3点測定する。(3)(2)で測定した、測定試料1枚における3点の明度の個別平均値L 及び色度の個別平均値a ,b を(1)の測定試料1枚ごとに求める。(4)(3)で得られたすべての測定試料の明度の個別平均値L 及び色度の個別平均値a ,b の平均値を取り、測定試料全体の明度の全体平均値L 及び色度の全体平均値a ,b を求める。(5)以下の式により、(4)で得られた明度の全体平均値L 及び色度の全体平均値a ,b に対する(1)の測定試料の色差ΔEを(1)の測定試料1枚ごとに算出する。
」である。
【0008】
本発明の請求項2に係る発明は、「上述の[色差ばらつき測定方法]により測定試料の色差ΔEを算出し、測定試料全体の枚数に対する、色差ΔEが0.5未満である測定試料の枚数の割合が90%以上である、請求項1に記載の装飾繊維シート。」である。
【0009】
本発明の請求項3に係る発明は、「一方の主面が繊維接着用バインダ樹脂により接着されている、請求項1または2に記載の装飾繊維シート。」である。
【0010】
本発明の請求項4に係る発明は、「プリントにセルロースナノファイバーが含まれている、請求項1~3のいずれか1項に記載の装飾繊維シート。」である。
【0011】
本発明の請求項5に係る発明は、「プリントに含まれるセルロースナノファイバーの質量比率が、プリント質量の0.5~5.0mass%である、請求項4に記載の装飾繊維シート」である。
【0012】
本発明の請求項6に係る発明は、「セルロースナノファイバーの平均繊維径が8nm以下である、請求項4又は5に記載の装飾繊維シート。」である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1に係る装飾繊維シートは、装飾繊維シートにおけるプリント量のばらつきが少ないことによって、装飾繊維シートの色のばらつきが少なく、外観品位に優れる装飾繊維シートである。
【0014】
本発明の請求項2に係る装飾繊維シートは、装飾繊維シートにおいて大きく色差がばらついている点が非常に少ないことによって、装飾繊維シートの色のばらつきが少なく、外観品位に優れる装飾繊維シートである。
【0015】
本発明の請求項3に係る装飾繊維シートは、装飾繊維シートの一方の主面が繊維接着用バインダ樹脂により接着されていることにより、装飾繊維シートが平滑である傾向にあることから、装飾繊維シートにおけるプリントが明瞭であり、外観品位に優れる装飾繊維シートである。
【0016】
本発明の請求項4に係る装飾繊維シートは、プリントにセルロースナノファイバーが含まれていることによって、装飾繊維シートに含まれるプリントの色のばらつきが少なく、外観品位に優れる装飾繊維シートが提供できる。この理由は完全に明らかになっていないが、セルロースナノファイバーの繊維径の細さにより効果的にプリント液の構成成分が均一に分散されやすく、結果として装飾繊維シートにおけるプリント量のばらつきが少なくなるためと考えられる。
【0017】
本発明の請求項5に係る装飾繊維シートは、プリントに含まれるセルロースナノファイバーの質量比率が、プリント質量の0.5~5.0mass%であることによって、装飾繊維シートに含まれるプリントの色のばらつきが少なく、外観品位に優れる装飾繊維シートが提供できる。この理由は完全に明らかになっていないが、プリントに含まれるセルロースナノファイバーの質量比率が0.5mass%以上であることで、プリント液の構成成分が均一に分散されやすく、しかも、プリントに含まれるセルロースナノファイバーの質量比率が5.0mass%以下であることにより、セルロースナノファイバーが凝集しにくく、加えて、セルロースナノファイバーがプリント液に含まれていることで、プリント時の応力に対して均一な挙動を示しやすくなる。結果として装飾繊維シートにおけるプリント液の塗布量のばらつきが少なく、装飾繊維シートにおけるプリント量のばらつきが少なくなるためと考えられる。
【0018】
本発明の請求項6に係る装飾繊維シートは、プリントに含まれるセルロースナノファイバーの平均繊維径が8nm以下であることによって、装飾繊維シートに含まれるプリントの色のばらつきが少なく、外観品位に優れる装飾繊維シートが提供できる。この理由は完全に明らかになっていないが、セルロースナノファイバーの繊維径の細さにより効果的にプリント液の構成成分が均一に分散されやすく、結果として装飾繊維シートにおけるプリント量のばらつきが少なくなるためと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施例1、比較例1の装飾繊維シートの一方の主面における、プリントPのみを施した後の配置態様を示す平面図である。
図2】実施例2及び3、比較例2の装飾繊維シートの一方の主面における、プリントPのみを施した後の配置態様を示す平面図である。
図3】実施例2及び3、比較例2の装飾繊維シートの一方の主面における、プリントP及びプリントPを施した後の配置態様を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明では、例えば以下の構成など、各種構成を適宜選択できる。
【0021】
本発明の装飾繊維シートは、繊維シートの一方の主面にプリントを有し、後述にて詳細に説明する色差ばらつき測定方法により測定試料50枚以上の色差ΔEを算出し、測定試料全体の枚数に対する、色差ΔEが0.2未満である測定試料の枚数の割合が50%以上である。なお、本発明における「主面」とは、最も広い面積を有する面のことをいう。
【0022】
本発明の装飾繊維シートを構成可能な繊維シートは、例えば不織布や織物、編物が挙げられるが、繊維シートが不織布で構成されていると、柔軟であり、ソフトな風合いと外観品位に優れる装飾繊維シートを提供でき好ましい。
【0023】
前記繊維シートの構成繊維を構成する樹脂は、例えば、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、炭化水素の一部をシアノ基またはフッ素或いは塩素といったハロゲンで置換した構造のポリオレフィン系樹脂など)、スチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエーテル系樹脂(例えば、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル、芳香族ポリエーテルケトンなど)、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、全芳香族ポリエステル樹脂など)、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド系樹脂(例えば、芳香族ポリアミド樹脂、芳香族ポリエーテルアミド樹脂、ナイロン樹脂など)、ニトリル基を有する樹脂(例えば、ポリアクリロニトリルなど)、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリスルホン系樹脂(例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなど)、フッ素系樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなど)、セルロース系樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、アクリル系樹脂(例えば、アクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルなどを共重合したポリアクリロニトリル系樹脂、アクリロニトリルと塩化ビニルまたは塩化ビニリデンを共重合したモダアクリル系樹脂など)など、公知の有機樹脂を用いて構成できる。
【0024】
なお、これらの有機樹脂は、直鎖状ポリマーまたは分岐状ポリマーのいずれからなるものでも構わず、また有機樹脂がブロック共重合体やランダム共重合体でも構わず、また有機樹脂の立体構造や結晶性の有無がいかなるものでも、特に限定されるものではない。更には、多成分の有機樹脂を混ぜ合わせたものでも良い。
【0025】
なお、装飾繊維シートに難燃性が求められる場合には、繊維シートの構成繊維に難燃性の有機樹脂を含んでいるのが好ましい。このような難燃性の有機樹脂として、例えば、モダアクリル樹脂、ビニリデン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ノボロイド樹脂、ポリクラール樹脂、リン化合物を共重合したポリエステル樹脂、ハロゲン含有モノマーを共重合したアクリル樹脂、アラミド樹脂、ハロゲン系やリン系又は金属化合物系の難燃剤を練り込んだ樹脂などが挙げられる。
【0026】
前記構成繊維は、例えば、溶融紡糸法、乾式紡糸法、湿式紡糸法、直接紡糸法(メルトブロー法、スパンボンド法、静電紡糸法など)、複合繊維から一種類以上の樹脂成分を除去することで繊維径が細い繊維を抽出する方法、繊維を叩解して分割された繊維を得る方法など公知の方法により得ることができる。
【0027】
前記構成繊維は、一種類の有機樹脂から構成されてなるものでも、複数種類の有機樹脂から構成されてなるものでも構わない。複数種類の有機樹脂から構成されてなる繊維として、一般的に複合繊維と称される、例えば、芯鞘型、海島型、サイドバイサイド型、オレンジ型、バイメタル型などの態様であることができる。また、前記構成繊維は、横断面形状が略円形の繊維や楕円形の繊維以外にも異形断面繊維を含んでいてもよい。なお、異形断面繊維として、中空形状、三角形形状などの多角形形状、Y字形状などのアルファベット文字型形状、不定形形状、多葉形状、アスタリスク形状などの記号型形状、あるいはこれらの形状が複数結合した形状などの繊維断面を有する繊維であってもよい。前記構成繊維に熱融着性繊維を含んでいる場合には、繊維同士を熱融着していることによって装飾繊維シートの強度と形態安定性が優れ、更に、毛羽立ちや繊維の飛散が少なく、外観品位に優れる装飾繊維シートであるため好ましい。このような熱融着性繊維は、全融着型の熱融着性繊維であっても良いし、上述した複合繊維のような一部融着型の熱融着性繊維であっても良い。熱融着性繊維の熱融着性を発揮する成分の種類は適宜選択するが、例えば、低融点ポリオレフィン系樹脂や低融点ポリエステル系樹脂などを使用できる。
【0028】
前記繊維シートが捲縮性繊維を含んでいる場合には、伸縮性が増して金型への追従性に優れ、外観品位に優れる装飾繊維シートとなり好ましい。このような捲縮性繊維として、例えば、潜在捲縮性繊維の捲縮を発現した捲縮性繊維などを使用できる。
【0029】
前記繊維シートの構成繊維の繊度は特に限定するものではないが、毛玉が発生しにくく、外観品位に優れる装飾繊維シートであるように、0.01dtex以上であることができ、1dtex以上であることができ、2dtex以上であることができる。他方、均質な地合いであることで外観品位に優れる装飾繊維シートであるように、3dtex以下であることができる。なお、「繊度」は、JIS L 1015(2010)、8.5.1に規定されているA法に則って測定した値をいう。
【0030】
また、前記繊維シートの構成繊維の平均繊維長も特に限定するものではないが、均質な地合いであることで外観品位に優れる装飾繊維シートであるように、20mm以上であることができ、30mm以上であることができ、35mm以上であることができる。他方、平均繊維長が110mmを超えると、繊維シートの調製時に繊維塊が形成され地合が均質とならない傾向があり、外観品位に優れる装飾繊維シートを提供できなくなる恐れがあることから、110mm以下であることができる。なお、「平均繊維長」は、JIS L 1015(2010)、8.4.1に規定されているC法に則って測定した値をいう。
【0031】
本発明の装飾繊維シートは、例えば、上述のような繊維から構成することができるが、装飾繊維シートの一方の主面が繊維接着用バインダ樹脂により接着されていると、装飾繊維シートが平滑である傾向があることから、装飾繊維シートにおけるプリントが明瞭となり、外観品位に優れることから好ましい。
【0032】
前記装飾繊維シートにおいて使用可能な繊維接着用バインダ樹脂の種類は適宜選択するが、例えば、ポリオレフィン(変性ポリオレフィンなど)、エチレンビニルアルコール共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体などのエチレン-アクリレート共重合体、各種ゴムおよびその誘導体[スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、ウレタンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)など]、セルロース誘導体[カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなど]、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVdF-HFP)、アクリル系樹脂などを使用できる。特に、繊維接着用バインダ樹脂にアクリル系樹脂を含有していると、金型を用いたヒートプレス等の熱成型時に適度に軟化するため、金型への追従性に優れ、外観品位に優れる成型体を形成できるため好ましい。
【0033】
前記装飾繊維シートに含まれる繊維接着用バインダ樹脂量は適宜選択するが、繊維接着用バインダ樹脂量が多いほどより装飾繊維シートの主面が平滑である傾向があり、その結果外観品位に優れる装飾繊維シートとなり好ましいことから、繊維シートに含まれる繊維接着用バインダ樹脂量は、2g/m以上であるのが好ましい。一方、繊維接着用バインダ樹脂量が過剰に多い場合には、装飾繊維シートの柔軟性が劣ることで、装飾繊維シートを成型加工する際に金型への追従性に劣る恐れがあることから、繊維接着用バインダ樹脂量は、20g/m以下であるのが好ましく、10g/m以下であるのが好ましい。
【0034】
また、前記繊維接着用バインダ樹脂は装飾繊維シートの一方の主面のみに有していても、両方の主面に有していてもよい。繊維接着用バインダ樹脂を有する装飾繊維シートの主面は平滑である傾向があることから、繊維接着用バインダ樹脂は少なくともプリントを有する主面に存在するのが好ましい。
【0035】
更に、前記繊維接着用バインダ樹脂には上述した樹脂以外にも、例えば、難燃剤、香料、顔料(無機顔料および/または有機系顔料)、抗菌剤、抗黴剤、光触媒粒子、乳化剤、分散剤、増粘剤、消泡剤、セルロース由来の材料などの添加剤を含有していてもよい。
繊維シートの、例えば厚さや目付などの諸構成は、特に限定されるべきものではなく適宜選択するが、例えば繊維シートの厚さは、0.5~4.0mmであることができ、0.7~3.0mmであることができ、1.0~2.0mmであることができる。また、繊維シートの目付は、目付が低すぎると成型時に破れる恐れがあり、一方目付が高すぎると成型性が劣ることから、80~400g/mであることができ、100~300g/mであることができ、120~250g/mであることができる。
【0036】
なお、本発明において厚さとは、測定対象物の主面と垂直をなす方向へ20g/cmの圧縮荷重をかけた時の、測定対象物における該垂直方向の長さをいい、目付とは測定対象物の主面1mあたりの質量をいう。
【0037】
本発明の装飾繊維シートは、装飾繊維シートの一方の主面にプリントを有する。プリントに含むことができる樹脂には繊維接着用バインダ樹脂として使用可能であるとして上述した樹脂を採用できる。
【0038】
また、前記プリントは上述の樹脂以外にセルロース由来の材料を含んでいると、装飾繊維シートに含まれるプリントの色のばらつきが少なく、外観品位に優れる装飾繊維シートが提供できることから好ましい。この理由は完全に明らかになっていないが、セルロース由来の材料によってプリント間の構成成分が均一になりやすいためと考えられる。なお、ここでいう「セルロース由来の材料」とは、セルロース又はその誘導体を主成分とする材料のことをいう。これらの中でも、繊維径が小さく分散性に優れることから、セルロース由来の材料はセルロースナノファイバーであるのがより好ましく、繊維径が均一であり、より分散性に優れることからセルロースナノファイバーの中でもTEMPO酸化セルロースナノファイバーが更に好ましい。
【0039】
前記セルロース由来の材料がセルロースナノファイバーである場合、平均繊維径が細ければ細いほど、分散性に優れ、他材料との相溶性が向上することから、平均繊維径は100nm以下が好ましく、10nm以下がより好ましく、8nm以下が更に好ましく、5nm以下が更に好ましい。平均繊維径の下限は、1nm以上が現実的である。セルロースナノファイバーの平均繊維長は、特に限定するものではないが、50nm以上が好ましく、100nm以上がより好ましく、200nm以上が更に好ましい。平均繊維長が長すぎるとセルロースナノファイバ―同士が絡み合い、プリントに十分に分散しないおそれがあることから、上限としては300nmが現実的である。なお、前記平均繊維径及び平均繊維長はセルロースナノファイバーを電子顕微鏡で観察し、得られた画像からランダムに50個のセルロースナノファイバーを選択し、加算平均することで算出できる。
【0040】
前記プリントに含まれるセルロースナノファイバーの質量比率は、プリント質量の0.5~5.0mass%であるのが、より装飾繊維シートに含まれるプリントの色のばらつきが小さく、外観品位に優れ、かつ耐摩耗性に優れる装飾繊維シートが提供できることから好ましい。外観品位に優れる理由は完全に明らかになっていないが、セルロースナノファイバーの質量比率がプリント質量の0.5mass%以上であることで、プリント液の構成成分が均一に分散されやすく、しかも、セルロースナノファイバーの質量比率がプリント質量の5.0mass%以下であることにより、セルロースナノファイバーが凝集しにくく、結果として装飾繊維シートにおけるプリント液の塗布量のばらつきが少なく、装飾繊維シートにおけるプリント量のばらつきが少なくなるためと考えられる。耐摩耗性に優れる理由も完全に明らかになっていないが、セルロースナノファイバーによりプリントの構成成分が均一に分散されやすく、しかもプリントの構成成分を保持できるためと考えられる。前記プリントに含まれるセルロースナノファイバーの質量比率は、0.7~3.5mass%であるのがより好ましく、1.0~2.5mass%であるのが更に好ましい。
【0041】
さらに、プリントは上述の樹脂や上述のセルロース由来の材料以外にも、繊維接着用バインダ樹脂に含有していてもよいとして上述した添加剤を含有していてもよい。
【0042】
装飾繊維シートの主面におけるプリントの態様は適宜選択でき、該主面全面を覆うように存在している態様、あるいは、線状やドット状あるいは不定形状などの柄により該主面の一部を覆い存在している態様であることができる。
【0043】
前記プリントは一種類であっても良いし、複数種類であってもよい。また、プリントに含まれる上述の添加剤の種類はプリントごとに異なるものであってよい。
【0044】
なお、前記プリントは装飾繊維シートにおける少なくとも一方の主面に存在するのであれば、装飾繊維シートのもう一方の主面にプリントが存在していても良い。
【0045】
また、プリントは装飾繊維シートを構成する繊維シート内部に浸透しておらず、装飾繊維シートの表面のみに存在する態様であっても、プリントが装飾繊維シートを構成する繊維シート内部に浸透している態様であってもよいが、プリントが装飾繊維シートを構成する繊維シート内部に浸透している態様であると、表面摩擦により磨滅されてもプリント柄が残り、意匠性を維持できるため好ましい。
【0046】
前記プリントの質量は適宜選択するが、意匠性に優れた装飾繊維シートであるように、1g/m以上であることができ、1.5g/m以上であることができ、2g/m以上であることができる。プリントの質量が多過ぎると成型加工の際に装飾繊維シートの成型加工性が悪くなる恐れがあることから、プリントの質量は20g/m以下であることができ、15g/m以下であることができる。
【0047】
本発明の装飾繊維シートは、以下の[色差ばらつき測定方法]により測定試料50枚以上の色差ΔEを算出し、測定試料全体の枚数に対する、色差ΔEが0.2未満である測定試料の枚数の割合が50%以上である。色差ΔEにより、測定試料の色の平均に対する測定試料1枚の色の違いを数値で表すことができることから、装飾繊維シートの色のばらつきがどの程度であるか確認することができる。
[色差ばらつき測定方法]
(1)装飾繊維シートを、5cm×15cmの長方形に測定試料を50枚以上切り取る。
(2)分光光度計を用いて、(1)の測定試料のプリントを有する主面の明度L及び色度a,b(CIE1976L色空間)を、反射測定径2.5cmの測定範囲で重ならないように測定試料1枚あたり3点測定する。
(3)(2)で測定した、測定試料1枚における3点の明度の個別平均値L 及び色度の個別平均値a ,b を(1)の測定試料1枚ごとに求める。
(4)(3)で得られたすべての測定試料の明度の個別平均値L 及び色度の個別平均値a ,b の平均値を取り、測定試料全体の明度の全体平均値L 及び色度の全体平均値a ,b を求める。
(5)以下の式により、(4)で得られた明度の全体平均値L 及び色度の全体平均値a ,b に対する(1)の測定試料の色差ΔEを(1)の測定試料1枚ごとに算出する。
【0048】
測定試料全体の枚数に対する、上述の色差ばらつき測定方法により算出される色差ΔEが0.2未満である測定試料の枚数の割合が大きければ大きいほど、より外観品位に優れる装飾繊維シートになることから、測定試料全体の枚数に対する、色差ΔEが0.2未満である測定試料の枚数の割合は55%以上が好ましく、60%以上がより好ましく、65%以上が更に好ましい。このような装飾繊維シートは、例えば、後述する製造方法により製造できる。
【0049】
また、測定試料全体の枚数に対する、上述の色差ばらつき測定方法により算出される色差ΔEが0.1未満である測定試料の枚数が50%以上であると、装飾繊維シートにおけるプリント塗工量のばらつきがより少ないことによって装飾繊維シートの色のばらつきがより少なく、外観品位に優れることから好ましい。
【0050】
更に、測定試料全体の枚数に対する、上述の色差ばらつき測定方法により算出される色差ΔEが0.5未満である測定試料の枚数の割合が90%以上であると、装飾繊維シートにおいて大きく色差がばらついている点が非常に少ないことによって、装飾繊維シートに含まれるプリントの色のばらつきが少なく、外観品位に優れることから好ましい。
【0051】
なお、色差ΔEを算出する測定試料の枚数は50枚以上であれば良いが、測定試料の枚数が多ければ多いほど、より正確に装飾繊維シートの色のばらつきが評価できることから、測定試料の枚数は75枚以上がより好ましく、100枚以上が更に好ましい。
【0052】
装飾繊維シートの、例えば厚さや目付などの諸構成は、特に限定されるべきものではなく適宜選択するが、例えば装飾繊維シートの厚さは、0.6~4.5mmであることができ、0.8~3.0mmであることができ、1.3~1.8mmであることができる。また、装飾繊維シートの目付は、83~440g/mであることができ、120~340g/mであることができ、180~220g/mであることができる。
【0053】
本発明の装飾繊維シートは、プリントが存在する主面とは異なる主面側に、更に別の多孔体、フィルム、発泡体などの構成部材を備えていてもよい。
【0054】
次に、本発明の装飾繊維シートの製造方法について、例示し説明する。
【0055】
まず、上述した繊維を用いて、織物、編物、不織布などの繊維シートを調製する。繊維シートの調製方法については特に限定するものではないが、繊維シートが織物や編物である場合、上述の繊維を織るあるいは編むことで調製出来る。繊維シートが不織布である場合、例えば、上述の繊維をカード装置やエアレイ装置などに供することで繊維を絡み合わせる乾式法、繊維を溶媒に分散させシート状に抄き繊維を絡み合わせる湿式法、直接紡糸法などによって調製出来るが、装飾繊維シートを成型加工した際の成型加工性に優れるように、ある程度の嵩がある繊維シートである方が好ましいため、カード装置やエアレイ装置などに供することで繊維を絡み合わせる乾式法を採用するのが好ましい。
【0056】
上述のように形成した繊維シートは取り扱いやすいように、水流又はニードルにより絡合するのが好ましい。特に、厚さを損なわず、結果として装飾繊維シートを成型加工した際の成型加工性を損なわないように、ニードルにより絡合するのが好ましい。好適であるニードル絡合条件は特に限定するものではないが、針密度300~1000本/cmで絡合するのが好ましく、300~600本/cmで絡合するのがより好ましい。
【0057】
なお、必要に応じて、繊維シートを形成した後熱圧着してもよい。なお、この「熱圧着」とは、繊維が溶融又は可塑化変形して接着した状態であることを意味するのではなく、熱と圧力によって繊維間空隙が小さくなり、繊維同士が高密度に密着した状態であることを意味する。繊維シートを熱圧着することによって、微視的に、若干収縮し、表面が平滑となることから、プリントを施す際に鮮明なプリントが形成でき、また、摩擦で繊維が引っかかりにくくなることから耐摩耗性に優れ、好ましい。
【0058】
また、必要に応じて、繊維シートを構成する熱融着性繊維の一部あるいは全てを加熱処理によって溶融させて、構成繊維同士を融着させてもよい。その際の加熱処理の方法は適宜選択できるが、例えば、ロールにより繊維シートを加熱または加熱加圧する方法、オーブンドライヤー、遠赤外線ヒーター、乾熱乾燥機、熱風乾燥機などの加熱機へ繊維シートを供し加熱する方法、無圧下で赤外線を照射して繊維シートに含まれている有機樹脂を加熱する方法などを用いることができる。
【0059】
更に、必要に応じて、プレス処理などの、繊維シート表面を平滑とするための加圧処理工程へ供してもよい。
【0060】
更に、繊維接着用バインダ樹脂液を、含浸、コーティング、又はスプレー等の方法によって付与した後、乾燥させることにより、繊維シートの構成繊維を繊維接着用バインダ樹脂によって接着させることが好ましい。
【0061】
最後に、繊維シートの一方の主面にプリント液を塗布して、繊維シートの一方の主面にプリントを有する装飾繊維シートを製造する。このプリント液に上述のセルロース由来の材料を含んでいると、プリントの色のばらつきが少なくなり、外観品位に優れる装飾繊維シートが提供できることから好ましい。プリント液の塗布方法は、特に限定するものではないが、例えば筒状シルクスクリーンのように、全面に貫通孔の開いたシリンダを用意し、このシリンダの貫通孔を通して、筒状シルクスクリーン内部からプリント液を繊維シートの一方の主面に押し出して塗布し、塗布したプリント液から分散媒/溶媒を除去する方法を採用できる。なお、プリント液を塗布する際に、繊維シート内部までプリント液を染み込ませると、耐摩耗性に優れた装飾繊維シートが得やすいことから好ましい。分散媒/溶媒の除去方法としては適宜調整するが、例えば、プリント液を塗布した繊維シートをドライヤーで加熱し乾燥させることで分散媒/溶媒を除去することができる。
【0062】
プリント液の粘度については、プリント方法やシリンダの孔径などにより適宜調整できるものであり、液に掛かる応力が増すことによりプリント液の粘度が低下するため一概にいうことはできないが、プリント液の粘度が高すぎると、プリント液がシリンダの貫通孔に詰まることによる柄欠けや、プリント液の塗布ムラによる柄欠け、スクリーンが離れる際にプリント液が繊維シートから離れることによる柄欠けが発生しやすい傾向があり、プリント液の粘度が低すぎると、スクリーンからの液漏れが発生しやすい傾向があることから、プリント液の粘度はE型粘度計でせん断速度3600cm-1のときに50~100cpであるのが好ましい。
【0063】
プリント液にセルロースナノファイバーが含まれている場合、セルロースナノファイバーをプリント液に含むことにより、装飾繊維シートに含まれる色のばらつきが小さく、外観品位に優れ、かつ耐摩耗性に優れる装飾繊維シートが提供できる一方、セルロースナノファイバーがプリント液に多く含まれすぎているとプリント液の粘度が高くなりすぎること、及びプリント液に含まれるセルロースナノファイバーが凝集することにより、プリント液がシリンダの貫通孔に詰まることによる柄欠けや、プリント液の塗布ムラによる柄欠け、スクリーンが離れる際にプリント液が繊維シートから離れることによる柄欠けが発生しやすい傾向があることから、プリント液に含まれるセルロースナノファイバーの濃度は、0.01~0.45wt%が好ましく、0.05~0.40wt%がより好ましく、0.10~0.30wt%が更に好ましい。
【0064】
また、用途や使用態様に合わせて形状を打ち抜くなどして加工するなどの、各種二次工
程へ供してもよい。
【実施例
【0065】
(加熱加圧ニードルパンチ不織布の調製)
ポリエステル原着繊維(繊度:2.2dtex、繊維長:38mm、明度L:81.0、色度a:-2.0、色度b:-2.0、色:青系色)を100%用いて、カード機により開繊して繊維ウエブを形成した後、片面から針密度400本/cmでニードルパンチ処理を行い、ニードルパンチ不織布を製造した。次いで、このニードルパンチ不織布を温度170℃に設定されたロールと接触するように、加熱ロールと非加熱ロールとからなる一対のロール間(スリット:0.6mm)へニードルパンチ不織布を通過させて、加熱加圧ニードルパンチ不織布(目付:180g/m、厚さ:1.5mm)を形成した。
【0066】
(繊維接着用バインダ樹脂液の調製)
次の配合の繊維接着用バインダ樹脂液を調製した。
アクリル樹脂系バインダ・・・6重量部
界面活性剤・・・0.2重量部
水・・・93.8重量部
【0067】
(バインダ接着不織布の調製)
次いで、加熱加圧ニードルパンチ不織布のニードルパンチ処理を施した面とは反対の面から、上述の繊維接着用バインダ樹脂液を泡立てた状態で塗布した。そして、温度160℃のキャンドライヤーで乾燥することで、バインダ接着不織布(目付:185g/m、厚さ:1.5mm)を調製した。
【0068】
(プリント液Aの調製)
次の配合のプリント液Aを調製した。
アクリル樹脂系バインダ・・・21重量部
アクリル系増粘剤・・・1重量部
シリコーン系消泡剤・・・1重量部
黒顔料・・・1重量部
25%アンモニア水・・・1重量部
1%TEMPO酸化セルロースナノファイバー(平均繊維径:4nm、平均繊維長:200nm、品名:セレンピアTC-01A(日本製紙(株)製))水溶液・・・10重量部
水・・・65重量部
プリント液Aの粘度は、94cp(E型粘度計、せん断速度3600cm-1)であり、プリント液Aに含まれるセルロースナノファイバーの濃度は、0.1wt%であった。
【0069】
(プリント液Bの調製)
次の配合のプリント液Bを調製した。
アクリル樹脂系バインダ・・・21重量部
アクリル系増粘剤・・・1重量部
シリコーン系消泡剤・・・1重量部
黒顔料・・・1重量部
25%アンモニア水・・・1重量部
水・・・75重量部
プリント液Bの粘度は、110cp(E型粘度計、せん断速度3600cm-1)であった。
【0070】
(プリント液Cの調製)
次の配合のプリント液Cを調製した。
アクリル樹脂系バインダ・・・14重量部
アクリル系増粘剤・・・1重量部
シリコーン系消泡剤・・・1重量部
白顔料・・・1重量部
25%アンモニア水・・・1重量部
1%TEMPO酸化セルロースナノファイバー(平均繊維径:4nm、平均繊維長:200nm、品名:セレンピアTC-01A(日本製紙(株)製))水溶液・・・10重量部
水・・・72重量部
プリント液Cの粘度は、85cp(E型粘度計、せん断速度3600cm-1)であり、プリント液Cに含まれるセルロースナノファイバーの濃度は、0.1wt%であった。
【0071】
(プリント液Dの調製)
次の配合のプリント液Dを調製した。
アクリル樹脂系バインダ・・・14重量部
アクリル系増粘剤・・・1重量部
シリコーン系消泡剤・・・1重量部
白顔料・・・1重量部
25%アンモニア水・・・1重量部
水・・・82重量部
プリント液Dの粘度は、98cp(E型粘度計、せん断速度3600cm-1)であった。
【0072】
(プリント液Eの調製)
次の配合のプリント液Eを調製した。
アクリル樹脂系バインダ・・・21重量部
アクリル系増粘剤・・・1重量部
シリコーン系消泡剤・・・1重量部
黒顔料・・・1重量部
25%アンモニア水・・・1重量部
1%TEMPO酸化セルロースナノファイバー(平均繊維径:4nm、平均繊維長:200nm、品名:セレンピアTC-01A(日本製紙(株)製))水溶液・・・20重量部
水・・・55重量部
プリント液Eの粘度は、98cp(E型粘度計、せん断速度3600cm-1)であり、プリント液Eに含まれるセルロースナノファイバーの濃度は、0.2wt%であった。
【0073】
(プリント液Fの調製)
次の配合のプリント液Fを調製した。
アクリル樹脂系バインダ・・・21重量部
アクリル系増粘剤・・・1重量部
シリコーン系消泡剤・・・1重量部
黒顔料・・・1重量部
25%アンモニア水・・・1重量部
1%TEMPO酸化セルロースナノファイバー(平均繊維径:4nm、平均繊維長:200nm、品名:セレンピアTC-01A(日本製紙(株)製))水溶液・・・30重量部
水・・・45重量部
プリント液Fの粘度は、102cp(E型粘度計、せん断速度3600cm-1)であり、プリント液Fに含まれるセルロースナノファイバーの濃度は、0.3wt%であった。
【0074】
(プリント液Gの調製)
次の配合のプリント液Gを調製した。
アクリル樹脂系バインダ・・・21重量部
アクリル系増粘剤・・・1重量部
シリコーン系消泡剤・・・1重量部
黒顔料・・・1重量部
25%アンモニア水・・・1重量部
1%TEMPO酸化セルロースナノファイバー(平均繊維径:4nm、平均繊維長:200nm、品名:セレンピアTC-01A(日本製紙(株)製))水溶液・・・5重量部
水・・・70重量部
プリント液Gの粘度は、102cp(E型粘度計、せん断速度3600cm-1)であり、プリント液Gに含まれるセルロースナノファイバーの濃度は、0.05wt%であった。
【0075】
(プリント液Hの調製)
次の配合のプリント液Hを調製した。
アクリル樹脂系バインダ・・・12.5重量部
アクリル系増粘剤・・・1重量部
シリコーン系消泡剤・・・1重量部
黒顔料・・・1重量部
25%アンモニア水・・・1重量部
1%TEMPO酸化セルロースナノファイバー(平均繊維径:4nm、平均繊維長:200nm、品名:セレンピアTC-01A(日本製紙(株)製))水溶液・・・10重量部
水・・・73.5重量部
プリント液Hの粘度は、80cp(E型粘度計、せん断速度3600cm-1)であり、プリント液Hに含まれるセルロースナノファイバーの濃度は、0.1wt%であった。
【0076】
(プリント液Iの調製)
次の配合のプリント液Iを調製した。
アクリル樹脂系バインダ・・・7.3重量部
アクリル系増粘剤・・・1重量部
シリコーン系消泡剤・・・1重量部
白顔料・・・1重量部
25%アンモニア水・・・1重量部
1%TEMPO酸化セルロースナノファイバー(平均繊維径:4nm、平均繊維長:200nm、品名:セレンピアTC-01A(日本製紙(株)製))水溶液・・・10重量部
水・・・78.7量部
プリント液Iの粘度は、95cp(E型粘度計、せん断速度3600cm-1)であり、プリント液Iに含まれるセルロースナノファイバーの濃度は、0.1wt%であった。
【0077】
(プリント液Jの調製)
次の配合のプリント液Jを調製した。
アクリル樹脂系バインダ・・・21重量部
アクリル系増粘剤・・・1重量部
シリコーン系消泡剤・・・1重量部
黒顔料・・・1重量部
25%アンモニア水・・・1重量部
カルボキシメチル化セルロースナノファイバー粉末(平均繊維径:20nm、繊維が網状構造を取る連続繊維、日本製紙(株)製)・・・0.1重量部
水・・・74.9重量部
プリント液Jの粘度は、110cp(E型粘度計、せん断速度3600cm-1)であった。プリント液Jに含まれるセルロースナノファイバーの濃度は、0.1wt%であった。
【0078】
(実施例1)
次いで、上述のバインダ接着不織布の繊維接着用バインダ樹脂液を施した面に対して、プリント液Aを用いて、シリンダで「く」の字状に複数プリントした。その後、温度160℃のドライヤーで乾燥し、図1に示すように、「く」の字状のプリントPを有する装飾繊維シート(目付:195g/m、厚さ:1.5mm、プリントPの質量:10g/m、プリント中に含まれるTEMPO酸化セルロースナノファイバーの質量比率:1.0mass%)を製造した。装飾繊維シートのプリントを有する主面を観察したところ、1cmあたり83箇所の「く」の字状のプリントが見られた。また、装飾繊維シートの断面を観察したところ、プリントPは装飾繊維シートを構成するバインダ接着不織布内部まで浸透していた。
【0079】
(実施例2)
上述のバインダ接着不織布の繊維接着用バインダ樹脂液を施した面に対して、プリント液Aを用いて、シリンダで「く」の字状に複数プリントした。前記プリントが乾かないうちに再度、プリント液Cを用いて、図2に示すように、シリンダで右斜め上方向に向かって直線を複数プリントした(線幅0.24mm、線間隔0.56mm、角度:45°)。その後、温度160℃のドライヤーで乾燥し、図3に示すように、「く」の字状のプリントPと右斜め上方向に向かう直線のプリントPを有する装飾繊維シート(目付:200g/m、厚さ:1.5mm、プリントPの質量:10g/m、プリントPの質量:5g/m、プリントP中に含まれるTEMPO酸化セルロースナノファイバーの質量比率:1.0mass%、プリントP中に含まれるTEMPO酸化セルロースナノファイバーの質量比率:2.0mass%)を製造した。また、装飾繊維シートの断面を観察したところ、プリントP及びPは装飾繊維シートを構成するバインダ接着不織布内部まで浸透していた。
【0080】
(実施例3)
プリント液Cの代わりにプリント液Dを用いたことを除いては、実施例2と同様にして、装飾繊維シート(目付:200g/m、厚さ:1.5mm、プリントPの質量:10g/m、プリントPの質量:5g/m、プリントP中に含まれるTEMPO酸化セルロースナノファイバーの質量比率:1.0mass%)を製造した。また、装飾繊維シートの断面を観察したところ、プリントP及びPは装飾繊維シートを構成するバインダ接着不織布内部まで浸透していた。
【0081】
(実施例4)
プリント液Aの代わりにプリント液Eを用いたことを除いては、実施例3と同様にして、装飾繊維シート(目付:200g/m、厚さ:1.5mm、プリントPの質量:10g/m、プリントPの質量:5g/m、プリントP中に含まれるTEMPO酸化セルロースナノファイバーの質量比率:2.0mass%)を製造した。また、装飾繊維シートの断面を観察したところ、プリントP及びPは装飾繊維シートを構成するバインダ接着不織布内部まで浸透していた。
【0082】
(実施例5)
プリント液Aの代わりにプリント液Fを用いたことを除いては、実施例3と同様にして、装飾繊維シート(目付:200g/m、厚さ:1.5mm、プリントPの質量:10g/m、プリントPの質量:5g/m、プリントP中に含まれるTEMPO酸化セルロースナノファイバーの質量比率:3.0mass%)を製造した。また、装飾繊維シートの断面を観察したところ、プリントP及びPは装飾繊維シートを構成するバインダ接着不織布内部まで浸透していた。
【0083】
(実施例6)
プリント液Aの代わりにプリント液Gを用いたことを除いては、実施例3と同様にして、装飾繊維シート(目付:200g/m、厚さ:1.5mm、プリントPの質量:10g/m、プリントPの質量:5g/m、プリントP中に含まれるTEMPO酸化セルロースナノファイバーの質量比率:0.5mass%)を製造した。また、装飾繊維シートの断面を観察したところ、プリントP及びPは装飾繊維シートを構成するバインダ接着不織布内部まで浸透していた。
【0084】
(実施例7)
上述のバインダ接着不織布の繊維接着用バインダ樹脂液を施した面に対して、プリント液Hを用いて、シリンダで「く」の字状に複数プリントした。前記プリントが乾かないうちに再度、プリント液Iを用いて、図2に示すように、シリンダで右斜め上方向に向かって直線を複数プリントした(線幅0.24mm、線間隔0.56mm、角度:45°)。その後、温度160℃のドライヤーで乾燥し、図3に示すように、「く」の字状のプリントPと右斜め上方向に向かう直線のプリントPを有する装飾繊維シート(目付:200g/m、厚さ:1.5mm、プリントPの質量:6g/m、プリントPの質量:3g/m、プリントP中に含まれるTEMPO酸化セルロースナノファイバーの質量比率:1.7mass%、プリントP中に含まれるTEMPO酸化セルロースナノファイバーの質量比率:3.3mass%)を製造した。また、装飾繊維シートの断面を観察したところ、プリントP及びPは装飾繊維シートを構成するバインダ接着不織布内部まで浸透していた。
【0085】
(比較例1)
プリント液Aの代わりにプリント液Bを用いたことを除いては、実施例1と同様にして、装飾繊維シート(目付:195g/m、厚さ:1.5mm、プリントPの質量:10g/m)を製造した。また、装飾繊維シートの断面を観察したところ、プリントPは装飾繊維シートを構成するバインダ接着不織布内部まで浸透していた。
【0086】
(比較例2)
プリント液Aの代わりにプリント液Bを用いたことを除いては、実施例3と同様にして、装飾繊維シート(目付:200g/m2、厚さ:1.5mm、プリントPの質量:10g/m、プリントPの質量:5g/m)を製造した。また、装飾繊維シートの断面を観察したところ、プリントP及びPは装飾繊維シートを構成するバインダ接着不織布内部まで浸透していた。
【0087】
(比較例3)
プリント液Aの代わりにプリント液Jを用いたことを除いては、実施例3と同様にして、装飾繊維シート(目付:200g/m、厚さ:1.5mm、プリントPの質量:10g/m、プリントPの質量:5g/m、プリントP中に含まれるカルボキシメチル化セルロースナノファイバーの質量比率:1.0mass%)を製造した。また、装飾繊維シートの断面を観察したところ、プリントP及びPは装飾繊維シートを構成するバインダ接着不織布内部まで浸透していた。
【0088】
(参考例1)
繊維シートの一方の主面にプリントを有しない、上述のバインダ接着不織布(目付:185g/m、厚さ:1.5mm)を用意した。
【0089】
また、先述の[色差ばらつき測定方法]へ供することで、実施例1、比較例1及び参考例1の装飾繊維シートを切り取った測定試料の色差ΔEを測定した。なお、色差ばらつき測定方法へ供した測定試料は、まず長手方向125cm×短手方向60cmの長方形の、実施例1、比較例1及び参考例1の装飾繊維シートを用意し、前記装飾繊維シートの短手方向に15cmの長さで前記装飾繊維シートを4枚に切り取って、その後切り取ったそれぞれの装飾繊維シートを長手方向に5cmの長さで25列に分け切り取ることで100枚の5cm×15cmの長方形の測定試料を用意した。また、分光光度計として、積分球分光光度計(エックスライト(株)製、Color i5)を用いて測定した。
【0090】
実施例1、比較例1及び参考例1の、100枚の測定試料のΔEの測定結果をΔEの値ごとにまとめ、以下の表1に実施例、表2に比較例及び参考例を示す。
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【0093】
さらに、以下の官能検査へ供することで、実施例及び比較例の装飾繊維シートの外観品位を評価した。評価結果を以下の表3に示す。また、以下の耐摩耗性測定へ供することで、実施例及び比較例の耐摩耗性を評価した。評価結果を以下の表4に示す。
【0094】
[官能検査]
実施例及び比較例の装飾繊維シートのプリントを備える主面を目視した際に、プリントの色のばらつきを感じるか否かといった外観品位について、10人のパネラー(A~J)が3段階評価(1:感じる~3:感じない)で評価し、評価の算術平均値を求めた。
【0095】
【表3】
【0096】
[耐摩耗性測定]
実施例及び比較例の装飾繊維シートのプリントを備える主面に、テーバー式ロータリーアブレッサにより、摩耗輪CS-10に2.45Nの荷重をかけて摩耗輪と前記主面と接触させ、60rpmの速度で50回、100回、200回磨耗輪を回転させたのち、前記主面の表面状態を調べ、以下の評価基準に基づいて評価した。
5:摩耗輪の回転輪を回転させる前と比較し、表面に全く変化がないもの。
4:表面に部分的に毛羽が確認できるもの。
3:表面全体で毛羽が確認できるが、毛羽の長さが1mm以下と短いもの。
2:表面全体で毛羽が確認でき、毛羽の長さが1mmを超え長く、表面に部分的に毛羽が絡み合い毛玉が確認できるもの。
1:表面全体で毛羽が確認でき、毛羽の長さが1mmを超え長く、表面全体で毛羽が絡み合い毛玉が確認できるもの。
【0097】
【表4】
【0098】
実施例1及び比較例1と、参考例1の色差ばらつき測定方法の結果から、装飾繊維シートの繊維シートでなく装飾繊維シートのプリントによって色差のばらつきが発生することがわかった。また、実施例と比較例の色差ばらつき測定方法の結果から、TEMPO酸化セルロースナノファイバーを含むプリントを用いることにより、色差ばらつきが小さい装飾繊維シートが実現できることがわかった。さらに、官能検査の結果から、本発明の装飾繊維シートは、色差ばらつき測定方法により測定試料100枚の色差ΔEを算出し、色差ΔEが0.2未満である測定試料の枚数が全体の測定試料の枚数の50%以上であるため、外観品位に優れる装飾繊維シートが実現できることがわかった。さらに、プリントPとプリントPを有し、プリントPのみセルロースナノファイバーを1.0mass%以上含む実施例3~5と、プリントPとプリントPを有し、セルロースナノファイバーを含まない比較例2の耐摩耗性測定の結果から、繊維径の細いセルロースナノファイバーを1.0mass%以上含むプリントは、耐摩耗性に優れることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の装飾繊維シートは、各種内装材の表面材、特に、天井、ドアーサイド、ピラーガーニッシュ、リヤパッケージなどの車両用内装材の表面材として使用できる。
【符号の説明】
【0100】
プリント
プリント
図1
図2
図3