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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】リアクトル
(51)【国際特許分類】
   H01F 37/00 20060101AFI20241025BHJP
   H01F 27/32 20060101ALI20241025BHJP
【FI】
H01F37/00 E
H01F37/00 C
H01F27/32 140
H01F27/32 150
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020146203
(22)【出願日】2020-08-31
(65)【公開番号】P2022041153
(43)【公開日】2022-03-11
【審査請求日】2023-07-10
(73)【特許権者】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】植草 易央
【審査官】井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-135334(JP,A)
【文献】特開2017-098476(JP,A)
【文献】特開2014-082267(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 37/00
H01F 27/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻軸に沿って導電線が巻回されて成るコイルと、
前記コイルが装着される脚部を有し、磁性体材料を含んで成るコアと、
前記コイルと前記コアとの絶縁部材であり、前記コイルの両端面にそれぞれ対面する両対向面を有する樹脂カバーと、
を備え、
前記コイルは、当該コイルの両端から引き出される引出線を有し、
前記コイルの端面は、前記導電線の巻軸を境界として、前記引出線が引き出された引出側端部と、前記引出線が設けられておらず、前記引出側端部より出っ張りの少ない非引出側端部とを有し、
前記両端面の前記非引出側端面間の前記巻軸に沿った距離は、前記樹脂カバーの前記両対向面間の距離より短く、
前記両端面の前記非引出側端面は、前記巻軸を境界として前記コイルの対角に位置し、
前記樹脂カバーの前記両対向面は、各々が前記非引出側端部と対向する領域に、前記対向面と前記非引出側端部との間を埋めるように当該非引出側端部に向けて突出する突起部を有し、
前記脚部の軸方向中心位置と前記コイルの軸方向中心位置が合い、且つ前記コイルの前記巻軸と直交させた姿勢を前記コイルがとる状態では、前記コイルの前記非引出側端部と前記突起部との間に隙間を有し、前記コイルが所定範囲回転し得ると共に、前記コイルが所定範囲回転すると、前記突起部に前記非引出側端部が接触して前記コイルの回転を規制すること、
を特徴とするリアクトル。
【請求項2】
前記コイルは、前記導電線の巻軸に沿った全長よりも長い、前記巻軸と直交する全幅を有すること、
を特徴とする請求項1記載のリアクトル。
【請求項3】
前記突起部の突出長は、前記対向面間の距離から、前記導電線の巻き軸に沿った前記コイルの全長を差し引いた長さよりも短いこと、
を特徴とする請求項1又は2記載のリアクトル。
【請求項4】
前記突起部は、前記コイルの接触では歪まない剛体であること、
を特徴とする請求項1乃至の何れかに記載のリアクトル。
【請求項5】
前記突起部は、前記脚部に沿って突出すると共に、前記脚部と直交する方向に延長されていること、
を特徴とする請求項1乃至の何れかに記載のリアクトル。
【請求項6】
前記突起部は、前記非引出側端部の傾斜に合わせて、前記脚部と直交する方向に沿って突出高さが直線的に変わるように傾斜していること、
を特徴とする請求項記載のリアクトル。
【請求項7】
前記突起部は、前記非引出側端部に露出する前記導電線の中心位置に対面していること、
を特徴とする請求項1乃至の何れかに記載のリアクトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コアとコイルとを有するリアクトルに関する。
【背景技術】
【0002】
リアクトルはコイルとコアとを有する。コイルとコアとの電気的絶縁を図るべく、通常はコアを樹脂部材で被覆し、巻回されたコイルが樹脂部材の上からコアに装着される。このリアクトルは、電気エネルギーを磁気エネルギーに変換して蓄積及び放出する受動素子である。
【0003】
このようなリアクトルは、多種多様の用途に使用されている。代表的なリアクトルとして、昇圧リアクトル、直列リアクトル、並列リアクトル、限流リアクトル、始動リアクトル、分路リアクトル、中性点リアクトル及び消弧リアクトル等が挙げられる。
【0004】
昇圧リアクトルは、ハイブリッド自動車や電気自動車の駆動システム等の車載用の昇圧回路に組み込まれる。直列リアクトルは、電動機回路に直列に接続し短絡時の電流を制限する。並列リアクトルは、並列回路間の電流分担を安定させる。限流リアクトルは、短絡時の電流を制限しこれに接続される。始動リアクトルは、機械を保護する電動機回路に直列に接続して始動電流を制限する。分路リアクトルは、送電線路に並列接続されて進相無効電力の補償や異常電圧を抑制する。中性点リアクトルは、中性点と大地間に接続して電力系統の地絡事故時に流れる地絡電流を制限するために使用する。消弧リアクトルは、三相電力系統の1線地絡時に発生するアークを自動的に消滅させる。
【0005】
リアクトルを電気回路に接続するために、コイル端部からは引出線が引き出されている。引出線は各種の箇所と固定関係を持つ。例えば、引出線は、バスバーや端子等の電気導通箇所に溶接や締結等によって固定される。また、引出線は、これら電気導通箇所と接続するための位置決め箇所に固定される。
【0006】
位置決め箇所は、例えば引出線を挿入する孔である。この挿入孔は、例えばリアクトルが実装される基板に開口している。挿入孔に引出線を挿入することで引出線が位置決めされ、半田付け等によって引出線を電気回路上の端子と電気的に接続する。位置決め箇所としては、挿入孔の他にもステー等の固定具等が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第6479235号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
引出線を導出させているコイルにガタツキが発生しており、コイルの向きが不安定になることがある。コイルの向きが不安定になると、引出線の向きも変動してしまうため、引出線を固定する作業が煩雑になることがある。
【0009】
例えば、矩形断面形状の引出線に対しては、同形で若干大きい矩形断面形状の挿入孔が決められた向きで基板に形成されている。引出線を挿入孔に挿入する際に、コイルがリアクトルに対して傾いた姿勢に変動してしまうと、引出線と挿入孔の向きが合わなくなる。そのため、引出線を挿入孔に挿通させることで位置決めする作業では、コイルの姿勢を正しながら引出線を挿入孔に通す煩雑な作業が必要になる。このような作業は、リアクトルを組み付ける作業効率を低下させる。
【0010】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、コイルのガタツキを抑えたリアクトルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記のような課題を解決するため、本発明のリアクトルは、導電線が巻回されて成るコイルと、前記コイルが装着される脚部を有し、磁性体材料を含んで成るコアと、前記コイルの両端面に対面する両対向面と、を備え、前記コイルは、当該コイルの両端から引き出される引出線を有し、前記コイルの端面は、前記導電線の巻軸を境界として、前記引出線が引き出された引出側端部と、前記引出線が設けられておらず、前記引出側端部より出っ張りの少ない非引出側端部とを有し、前記両対向面は、各々が前記非引出側端部と対向する領域に、当該非引出側端部に向けて突出する突起部を有すること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、コイルのガタツキを抑制でき、引出線を固定する際に引出線の位置や向きが安定する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】リアクトルのコア及びコイルを示す斜視図である。
図2】樹脂カバーを取り付けたリアクトルの斜視図である。
図3】リアクトルの平面図である。
図4】リアクトルの突起部の拡大図である。
図5】突起部の位置をコイルの巻軸に沿って切断したリアクトルの断面図である。
図6】突起部の位置をコイルの巻軸と直交する方向に沿って切断したリアクトルの断面図である。
図7】リアクトルを基板に実装する一過程を示す模式図である。
図8】突起部の変形例を示すリアクトルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態に係るリアクトルについて図面を参照しつつ説明する。図1は、リアクトル1のコア2及びコイル3を示す斜視図である。このリアクトル1はコア2及びコイル3を備えている。コイル3は、エナメル被覆された銅線等の導電線による筒状の巻回体である。コア2は、コイル3が装着されており、コイル3が電流の導通により発生させた磁束を通す閉磁気回路となる。即ち、リアクトル1は、電気エネルギーを磁気エネルギーに変換して蓄積及び放出する電磁気部品である。
【0015】
このコア2は、フェライトコア、積層鋼板、圧粉磁心又はメタルコンポジット等の磁性体である。メタルコンポジットコアは、磁性粉末と樹脂とが混練され成型されて成るコアである。コア2は、一対のE型コアブロック21で構成されている。コア2において、一対のE型コアブロック21が脚同士で突き合わせている。一対のE型コアブロック21は、周囲をテープ25で巻いて固定されている。一対のE型コアブロック21の接合端面を接着剤で接着してもよいし、テープ25と接着剤を併用してもよい。
【0016】
このコア2は、円柱状の中脚部22を中央に有し、中脚部22の両脇に2つの壁状の外脚部23を有している。中脚部22と2つの外脚部23は、平行に延び、両端部が連結部24によって連結されている。これにより、コア2は中脚部22を共通とする2つの環形状が連なった概略θ形状となっている。コイル3は、コア2の中脚部22に嵌め込むように装着されている。
【0017】
コイル3は、巻軸31Aに沿って1ターンごとに巻位置をずらしながら螺旋状に導電線を巻回することで形成されている。このコイル3は、螺旋状のエッジワイズコイルである。螺旋状のエッジワイズコイルは、平角状の導電線の巻回体であり、導電線の幅広面がコイルの巻軸31Aとの直交方向に拡がるように、導電線が巻回されて成る。そのため、巻回数が少ない場合、コイル3の巻軸31Aに沿った全長L3よりも、コイル3の巻軸31Aと直交する全幅W3が長くなっている。
【0018】
コイル3の巻き始めと巻き終わりに位置する端面、即ち巻軸31Aと直交して拡がる面からは、引出線32が引き出されている。引出線32は、コイル3から引き出された導電線である。両引出線32は、コイル3の巻き始めと巻き終わりから屈曲せずに接線を引くように、巻軸31Aと直交する同一方向に延びてコイル3を脱し、そのまま屈曲せずに真っ直ぐに引き出される。引出線32が電気回路に電気的に接続されることにより、コイル3に電流が導通可能となる。
【0019】
図2は、樹脂カバー4を取り付けたリアクトル1の斜視図である。図2に示すように、リアクトル1は更に樹脂カバー4を備えている。樹脂カバー4の材質は、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ウレタン樹脂、BMC(Bulk Molding Compound)、PPS(Polyphenylene Sulfide)、PBT(Polybutylene Terephthalate)、又はこれらの複合であり、熱伝導性のフィラーが混入されていてもよい。
【0020】
この樹脂カバー4は、コア2とコイル3との絶縁部材であり、またリアクトル1を設置するための締結孔41を備える取付具である。樹脂カバー4は、コア2の中脚部22を全周に亘って被覆し、コア2の外脚部23のうち、コイル3の周面と対面する内側壁面を被覆する。また、この樹脂カバー4は、コア2の連結部24のうち、コイル3の端部と対面する内側壁面を覆い、コイル3の端面と直接対面する対向面42を備えている。更に、この樹脂カバー4は、コア2の連結部24のうち、対向面42によって被覆された内側壁面に繋がり、引出線32が引き出された方向に位置する面を覆っており、この面を覆う領域に締結孔41が設けられている。
【0021】
樹脂カバー4の対向面42には突起部5が設けられている。突起部5は、樹脂カバー4と共に成型され、樹脂カバー4から繋ぎ目無く一体に延びる樹脂製である。従って、突起部5は、向き変動しようとするコイル3の接触によっては撓まない剛体である。この突起部5は、コイル3の変動余地を少なくし、コイル3の姿勢を安定させることで、引出線32の位置や向きを安定させる。
【0022】
この突起部5の作用について更に詳細に説明する。図3は、リアクトル1の平面図であり、引出線32の延び先から見た図である。まず、図3に示すように、コイル3の端面は、巻軸31Aを境界として、引出線32が引き出された側の半身に属する引出側端部33と、引出線32が設けられていない側の半身に属し、引出側端部33より出っ張りの少ない非引出側端部34とに分けられる。また、コイル3の巻き始めと巻き終わりの端部から同じ方向に引出線32が引き出される。従って、引出側端部33同士は対角に位置し、非引出側端部34同士は対角に位置する。換言すれば、巻軸31Aを基準に分かれる両半身とも、引出側端部33と非引出側端部34を1つずつ有する。
【0023】
一方、リアクトル1は、コイル3の全長L3と同長若しくは組み立て性の観点から若干長い全長の中脚部22を有する。また、リアクトル1は、コイル3の全長L3と同長若しくは組み立て性の観点から若干長い距離を隔てるように、樹脂カバー4の対向面42を設けてある。そうすると、樹脂カバー4の対向面42と非引出側端部34との間には、引出線32が無い分だけ隙間が空き、この隙間がコイル3の対角に位置してしまう。
【0024】
そのため、コイル3は、巻軸31Aを基準に、樹脂カバー4の対向面42と非引出側端部34を埋めるように、巻軸31Aの向きを変えるように回転可能となる。特に、このリアクトル1は、コイル3の巻軸31Aに沿った全長L3よりも、コイル3の巻軸31Aと直交する全幅W3が長くなっている。全幅W3が全長L3よりも長いコイル3では、コイル3の内周面と中脚部22とが接触して回転できなくなるまでに、コイル3が大きく回転することになり、コイル3のガタツキの原因となる。
【0025】
そこで、突起部5は、樹脂カバー4の対向面42と非引出側端部34を埋めるように、対向面42のうちの非引出側端部34と対向する領域に設けられ、非引出側端部34に向かって突出している。この突起部5は、コイル3が対向面42と非引出側端部34を埋めるように回転しようとしても、コイル3が僅かに回転しただけで非引出側端部34と接触し、コイル3の大きな回転を抑制する。即ち、コイル3のガタツキを抑制する。
【0026】
尚、この突起部5は、非引出側端部34に近い端部が丸みを帯びており、非引出側端部34を形成する導電線に接触しても、導電線のエナメルを剥がしてしまう等のように、導電線を傷つけ難いようになっている。
【0027】
図4は、リアクトル1の突起部5の拡大図である。図4に示すように、突起部5の巻軸31Aに沿った突出長L5は、対向面42間の距離L42から、コイル3の一方端面の引出側端部33から反対側端面の非引出側端部34との距離であるコイル3の全長L3を差し引いた長さよりも短い。そのため、コイル3が正しい位置及び正しい向きにあるとき、突出部5と非引出側端部34との間に隙間部51がある。中脚部22の軸方向中心位置とコイル3の巻軸31A方向中心位置とが一致する場合、コイル3は正しく位置する。また、コイル3の幅方向を中脚部22と直交させた姿勢をコイル3がとるとき、コイル3は正しく向いている。
【0028】
この隙間部51は所謂遊びである。この隙間部51の範囲ではコイル3の向きを変動可能にすることで、コイル3、引出線32、又は引出線32と固定関係を持つ部材に生じる寸法誤差を吸収し、引出線32と当該引出線32と固定関係を持たせる部材とが合わせ易くなる。但し、隙間部51を設けず、即ち突出部5と非引出側端部34とが遊びなく接触しているようにしてもよい。隙間部51が無い場合、コイル3の弾性の範囲内で寸法誤差を調整してもよい。
【0029】
図5は、突起部5の位置をコイル3の巻軸31Aに沿って切断したリアクトル1の断面図である。また、図6は、突起部5の位置をコイル3の巻軸31Aと直交する方向に沿って切断したリアクトル1の断面図である。図5及び図6に示すように、突起部5は対向面42に沿って細長く延びている。
【0030】
この突起部5は、非引出側端部34の中央を臨むように延在する。即ち、突起部5は、非引出側端部34に半周に亘って環状扇形状で露出する導電線の90度位置において、巻軸31Aから離れる方向に拡がる幅の中央を通る。また、突起部5は、巻軸31Aからこの幅の中心の点に向かう仮想線分と直交するように延びている。突起部5は、非引出側端部34内に収まるように延在する。
【0031】
このような突起部5は、非引出側端部34と線状に押圧する。従って、突起部5による非引出側端部34への押圧力が分散し、突起部5はコイル3を傷つけない。また、非引出側端部34の中央と押圧部分が一致する。従って、非引出側端部34の内周側を押圧する場合と比べて、コイル3のガタツキを効率良く抑えることができる。尚、非引出側端部34の外周側に向き合うように突起部5を設置する場合と比べると、外脚部23を被覆する樹脂カバー4との距離を採ることができ、樹脂カバー4を精度良く成型できる。
【0032】
図7は、このような突起部5を有するリアクトル1を、電気回路が形成された基板100に実装する一過程を示す模式図である。基板100には、挿入孔110が貫設されている。挿入孔110は、引出線32を挿通させる孔である。挿入孔110は、リアクトル1の設置箇所に合わせて貫設されている。また、挿入孔110は、コイル3が正しく向いているときに、引出線32が挿入可能な向きで拡がる。この挿入孔110に引出線32を挿入し、半田付けすることにより、リアクトル1は電気回路と電気的に接続される。
【0033】
突起部5が対向面42と非引出側端部34との間の隙間を埋めるように突出しているので、挿入孔110に引出線32を挿入する際にコイル3の向きが大きく変動しない。そのため、引出線32を挿入孔110に挿通させることができないほどに、引出線32と挿入孔110の向きが変わることが抑制される。
【0034】
一方、寸法誤差により引出線32と挿入孔110の向きが厳密に一致していない場合がある。但し、このリアクトル1には、突起部5と非引出側端部34との間に隙間部51が設けられている。そのため、コイル3は、非引出側端部34が突起部5に当たるまで、隙間部51の範囲内で向きを変化させることができる。そこで、作業者は、この隙間部51の範囲内で、引出線32の向きを変えて挿入孔110の向きに合わせることができる。
【0035】
以上のように、このリアクトル1は、導電線が巻回されて成るコイル3、このコイル3が装着される中脚部22を有し、磁性体材料を含んで成るコア2、及びコイル3の両端面に対面する両対向面42を備えている。コイル3は、当該コイル3の両端から引き出される引出線32を有する。コイル3の端面は、導電線の巻軸31Aを境界として、引出線32が引き出された引出側端部33と、引出線32が設けられておらず、引出側端部33より出っ張りの少ない非引出側端部34とを有する。
【0036】
そして、このリアクトル1では、両対向面42は、各々が非引出側端部34と対向する領域に、当該非引出側端部34に向けて突出する突起部5を有するようにした。これにより、コイル3が向きを変える余地を突起部5が埋めることになり、コイル3のガタツキを抑制でき、引出線32を固定する際に引出線32の位置や向きが安定する。従って、リアクトルを組み付ける作業効率に優れる。
【0037】
尚、本実施形態のリアクトル1は、コイル3を1個備えているが、外脚部23にもコイル3が装着されるようにし、2個以上のコイル3を備えるようにしてもよい。また、中脚部22の本数も、中脚部22及び外脚部23の形状についても特に限定されることなく、突起部5を配置することで、コイル3のガタツキを抑制できる。即ち、各コイル3について、対向面42と非引出側端部34との間にコイル3の回転余地となるような隙間がある場合、各々に突起部5を設けるようにすればよい。
【0038】
また、基板100の挿入穴110に引出線32を挿入することが予定されているリアクトル1に限らず、引出線32の不安定さを解消することで作業効率が向上できる各種のリアクトル1において突起部5を備える構成を採用できる。例えば、各々が引出線32を有する2個のコイル3を備えるリアクトル1において、両コイル3の引出線32を溶接等で接続する場合、即ち、一方の引出線32にとって他方の引出線32が固定関係を有する部材となる場合、突起部5の存在により引出線32の向き変動が抑制されていれば、両引出線32を合わせる作業を短縮できる。
【0039】
また、例えば、各々が引出線32を有する2個のコイル3を備えるリアクトル1において、両コイル3の引出線32をバスバーに取り付ける場合、即ち、引出線32にとってバスバーが固定関係を有する部材となる場合、突起部5の存在により引出線32の向き変動が抑制されていれば、バスバーに2線の引出線32を固定する作業を短縮できる。
【0040】
本実施形態のリアクトル1では、コイル3の非引出側端部34と対向する面に突起部5が配置できればよく、突起部5の配置位置は、樹脂カバー4が備える対向面42に限られない。但し、樹脂カバー4によって一体的に突起部5を作出することができ、部品点数を削減することができる。
【0041】
また、リアクトル1は、導電線の巻軸31Aに沿った全長よりも長い、巻軸31Aと直交する全幅を有する外形を有するコイル3を備えるようにした。対向面42と非引出側端部34との間にコイル3の回転余地となるような隙間がある場合に、この外形のコイル3が特にガタツキ易いためである。但し、導電線の巻軸31Aに沿った全長のほうが長いコイル3を有するリアクトル1においても、突起部5によるコイル3のガタツキ抑制効果を得ることができる。特に、導電線の巻軸31Aに沿った全長のほうが長いコイル3の内周径と、中脚部22の外周径の差が大きい場合には、このようなコイル3でも向きが変動し易い。
【0042】
また、コイル3の非引出側端部34と対向面42との間を完全に突起部5で埋め、突起部5を常態的にコイル3の非引出側端部34に接触されば、コイル3のガタツキを無くすことができる。しかし、このリアクトル1では、コイル3の非引出側端部34と突起部5との間に隙間部51を有するようにした。即ち、中脚部22の軸方向中心位置とコイル3の軸方向中心位置が合い、コイル3の幅方向を中脚部22と直交させた姿勢をコイル3がとる状態では、非引出側端部34と突起部5との間に隙間が空くようにした。
【0043】
この隙間部51が生まれるには、突起部5の突出長L5は、対向面42間の距離L42から、導電線の巻軸31Aに沿ったコイル3の全長L3を差し引いた長さよりも短くする。これにより、隙間部51が所謂遊びとなって、隙間部51の範囲で引出線32を動かし、コイル3、引出線32、又は引出線32と固定関係を持つ部材に生じる寸法誤差を吸収し、引出線32と当該引出線32と固定関係を持たせる部材とが合わせ易くなる。
【0044】
また、突起部5は、中脚部22に沿って突出すると共に、中脚部22と直交する方向に延長されているようにした。これにより、非引出側端部34を線状に押圧できるため、押圧力が分散し、コイル3を傷つけることを防止できる。このリアクトル1では、突起部5は直線的に延ばしたが、例えば導電線の巻回に合わせて湾曲してもよいし、連続的に延長される他、断続的に散在させてもよい。
【0045】
尚、突起部5は、中脚部22と直交する方向に沿って同一高さで突出するようにしたが、これに限られない。例えば、図8に示すように、突起部5は、中脚部22と直交する方向に沿って突出高さ直線的に変わるように傾斜している。即ち、突起部5は、コイル3の非引出側端部34と対面する突出端が、中脚部22と直交する方向に沿って直線的に高くなった傾斜部52を備えるようにしてもよい。コイル3は、巻き位置を変えながら螺旋状に巻回されるため、非引出側端部34が巻軸31Aに対して傾斜する。突起部5の傾斜部52は、この非引出側端部34の傾斜角度に合わせて傾斜している。これにより、非引出側端部34が傾斜していても、突起部5は非引出側端部34に線状に接触でき、線状に押圧できる。
【0046】
また、突起部5は、非引出側端部34に露出する導電線の中心位置に対面しているようにした。これにより、非引出側端部34を偏心押圧せずに、非引出側端部34の中心を押すことができ、コイル3の向き変動を効果的に抑制できる。
【0047】
以上、本発明の実施形態は例として提示したものであって、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。そして、実施形態やその変形は本発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0048】
1 リアクトル
2 コア
21 E型コアブロック
22 中脚部
23 外脚部
24 連結部
25 テープ
3 コイル
31A 巻軸
32 引出線
33 引出側端部
34 非引出側端部
4 樹脂カバー
41 締結孔
42 対向面
5 突起部
51 隙間部
52 傾斜部
100 基板
110 挿入孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8