(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】昇温条件算出装置、染色システム、昇温条件算出方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
D06B 3/36 20060101AFI20241025BHJP
D06P 5/20 20060101ALI20241025BHJP
G06N 20/00 20190101ALI20241025BHJP
【FI】
D06B3/36
D06P5/20 A
G06N20/00
(21)【出願番号】P 2020150522
(22)【出願日】2020-09-08
【審査請求日】2023-08-18
(31)【優先権主張番号】P 2019165897
(32)【優先日】2019-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000107907
【氏名又は名称】セーレン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100148149
【氏名又は名称】渡邉 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100111464
【氏名又は名称】齋藤 悦子
(74)【代理人】
【識別番号】100173462
【氏名又は名称】宮本 一浩
(74)【代理人】
【識別番号】100202957
【氏名又は名称】金森 毅
(72)【発明者】
【氏名】加藤 佳一郎
【審査官】山下 航永
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-249797(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108038256(CN,A)
【文献】特開平05-098557(JP,A)
【文献】特開2010-242232(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06B 1/00 - 23/30
D06C 3/00 - 29/00
D06G 1/00 - 5/00
D06H 1/00 - 7/24
D06J 1/00 - 1/12
D06P 1/00 - 7/00
G06N 3/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
染色された物体の種類を示す物体情報と、染色に用いられた染料の種類及び濃度を示す染料情報と、
染色を行った染色機の種類を示す染色機情報と、前記物体が染色されたときの染液の染色温度の単位時間当りの昇温条件を示す昇温条件情報
とを含む学習情報を用いた機械学習によって生成された学習済モデルに基づいて、新たに染色される物体の種類と、新たな染色に用いられる染料の種類及び濃度と
、新たな染色を行う染色機の種類とから新たに染色されるときの染液の染色温度の単位時間当りの昇温条件を算出する昇温条件算出部と、
前記昇温条件算出部によって算出された前記昇温条件を
新たな染色を行う染色機に出力する昇温条件出力部と、
を備える昇温条件算出装置。
【請求項2】
前記学習情報には、前記物体の染色に用いられた助剤の種類及び濃度を示す助剤情報が更に含まれ、
前記昇温条件算出部は、前記学習済モデルに基づいて、新たに染色される物体の種類と、新たな染色に用いられる染料の種類及び濃度と
、新たな染色を行う染色機の種類と、新たな染色に用いられる助剤の種類及び濃度とから新たに染色されるときの昇温条件を算出する、
請求項
1に記載の昇温条件算出装置。
【請求項3】
前記学習情報には、前記物体の染色時に機能性付与の為に用いられた機能性薬剤の種類及び濃度を示す機能性薬剤情報が更に含まれ、
前記昇温条件算出部は、前記学習済モデルに基づいて、新たに染色される物体の種類と、新たな染色に用いられる染料の種類及び濃度と
、新たな染色を行う染色機の種類と、新たな染色時に機能性付与の為に用いられる機能性薬剤の種類及び濃度とから新たに染色されるときの昇温条件を算出する、
請求項
1に記載の昇温条件算出装置。
【請求項4】
前記学習情報には、前記物体の染色時に機能性付与の為に用いられた機能性薬剤の種類及び濃度を示す機能性薬剤情報が更に含まれ、
前記昇温条件算出部は、前記学習済モデルに基づいて、新たに染色される物体の種類と、新たな染色に用いられる染料の種類及び濃度と、新たな染色を行う染色機の種類と、新たな染色に用いられる助剤の種類及び濃度と、新たな染色時に機能性付与の為に用いられる機能性薬剤の種類及び濃度とから新たに染色されるときの昇温条件を算出する、
請求項2に記載の昇温条件算出装置。
【請求項5】
前記学習情報を用いた機械学習によって前記学習済モデルを生成する学習済モデル生成部を更に備える、
請求項1乃至4の何れか1項に記載の昇温条件算出装置。
【請求項6】
染色された物体の種類を示す物体情報と、染色に用いられた染料の種類及び濃度を示す染料情報と、
染色を行った染色機の種類を示す染色機情報と、前記物体が染色されたときの染液の染色温度の単位時間当りの昇温条件を示す昇温条件情報
とを含む学習情報を記憶する学習情報記憶部と、
前記学習情報記憶部が記憶している前記学習情報を用いた機械学習によって学習済モデルを生成する学習済モデル生成部と、
前記学習済モデル生成部によって生成された前記学習済モデルに基づいて、新たに染色される物体の種類と、新たな染色に用いられる染料の種類及び濃度と
、新たな染色を行う染色機の種類とから新たに染色されるときの染液の染色温度の単位時間当りの昇温条件を算出する昇温条件算出部と、
前記昇温条件算出部によって算出された前記昇温条件を出力する昇温条件出力部と、
前記昇温条件出力部によって出力された前記昇温条件に基づく染色温度で新たな染色を行う染色機と、
を備える染色システム。
【請求項7】
染色された物体の種類を示す物体情報と、染色に用いられた染料の種類及び濃度を示す染料情報と、
染色を行った染色機の種類を示す染色機情報と、前記物体が染色されたときの染液の染色温度の単位時間当りの昇温条件を示す昇温条件情報とを含む学習情報を用いた機械学習によって生成された学習済モデルに基づいて、新たに染色される物体の種類と、新たな染色に用いられる染料の種類及び濃度と
、新たな染色を行う染色機の種類とから新たに染色されるときの染液の染色温度の単位時間当りの昇温条件を算出する昇温条件算出ステップと、
前記昇温条件算出ステップで算出した前記昇温条件を
新たな染色を行う染色機に出力する昇温条件出力ステップと、
を含む昇温条件算出方法。
【請求項8】
コンピュータを、
染色された物体の種類を示す物体情報と、染色に用いられた染料の種類及び濃度を示す染料情報と、
染色を行った染色機の種類を示す染色機情報と、前記物体が染色されたときの染液の染色温度の単位時間当りの昇温条件を示す昇温条件情報とを含む学習情報を用いた機械学習によって生成された学習済モデルに基づいて、新たに染色される物体の種類と、新たな染色に用いられる染料の種類及び濃度と
、新たな染色を行う染色機の種類とから新たに染色されるときの染液の染色温度の単位時間当りの昇温条件を算出する昇温条件算出部、
前記昇温条件算出部によって算出された前記昇温条件を
新たな染色を行う染色機に出力する昇温条件出力部、
として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇温条件算出装置、染色システム、昇温条件算出方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
染色温度を制御して物体を染色する染色機が知られている。
【0003】
このような染色機の一例として、特許文献1には、演算制御部が染色方法の種類毎に予め記憶されている染色温度の制御に関する情報から特定種類の染色方法に応じた情報を取得して、取得した情報に基づいて染色機本体を制御して織物を特定種類の染色方法で染色する自動染色機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、自動染色機に記憶されている染色温度の制御に関する情報がどのように決定されたか開示がないが、従来このような情報は、自動染色機の使用者である染色加工業者によって決定されている。染色加工業者は、上述した織物を含む染色対象となる全ての物体について、新たな種類の物体を染色する度に適切な染色温度の制御に関する情報を決定する必要があり、例えば、短時間で染色温度を昇温することが原因で発生する色ムラを低減するために、染色する物体毎に染色の試験を行って最適な染色温度に達するまでの昇温時間を推定したり、予め決定された設計基準に基づいて推定した昇温時間を補正したりする必要がある。このため、染色加工業者の作業負荷が大きいという問題がある。
【0006】
本発明は、上述のような事情に鑑みてなされたものであり、染色機の使用者の作業負荷を低減できるようにすることを目的とする。また、本発明は、染色温度の単位時間当りの昇温条件として新たに染色された物体の評価を高くするために最適な条件を算出できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る昇温条件算出装置は、昇温条件算出部、昇温条件出力部を備える。昇温条件算出部は、染色された物体の種類を示す物体情報と、染色に用いられた染料の種類及び濃度を示す染料情報と、染色を行った染色機の種類を示す染色機情報と、物体が染色されたときの染液の染色温度の単位時間当りの昇温条件を示す昇温条件情報とを含む学習情報を用いた機械学習によって生成された学習済モデルに基づいて、新たに染色される物体の種類と、新たな染色に用いられる染料の種類及び濃度と、新たな染色を行う染色機の種類とから新たに染色されるときの染液の染色温度の単位時間当りの昇温条件を算出する。昇温条件出力部は、昇温条件算出部によって算出された昇温条件を新たな染色を行う染色機に出力する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、物体情報と染料情報と昇温条件情報と染色機情報とを含む学習情報を用いた機械学習によって生成された学習済モデルに基づいて、新たに染色される物体の種類と新たな染色に用いられる染料の種類及び濃度と新たな染色を行う染色機の種類とから新たに染色されるときの染液の染色温度の単位時間当りの昇温条件を算出して染色機に出力する。したがって、染色機の使用者は、新たな染色が行われる度に物体情報と染料情報と染色機情報とを取得すれば昇温条件算出装置を用いて昇温条件を算出して染色機に出力できる。この結果、本発明に係る昇温条件算出装置を用いない染色機の使用者よりも作業負荷を低減できる。また、新たに染色されるときの染液の染色温度の単位時間当りの昇温条件の算出に適した学習情報を用いた機械学習によって学習済モデルが生成されれば、算出された昇温条件に基づく染色温度の染液で新たに染色された物体の評価を高くすることができる。この結果、染色温度の単位時間当りの昇温条件として新たに染色された物体の評価を高くするために最適な条件を算出できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態に係る染色システムの説明図
【
図2】本実施の形態に係る染色システムの機能構成を示すブロック図
【
図3】本実施の形態に係る昇温条件算出装置のハードウェア構成を示すブロック図
【
図5】本実施の形態に係る昇温する染色温度の一例を示す図
【
図6】本実施の形態に係る学習済モデル生成処理を示すフローチャート
【
図7】本実施の形態に係る昇温条件算出処理を示すフローチャート
【
図8】本実施の形態に係る学習情報生成処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明を実施するための形態に係る昇温条件算出装置、染色システム、昇温条件算出方法及びプログラムについて図面を参照して詳細に説明する。なお、図中同一又は相当する部分には同じ符号を付す。
【0011】
本発明の実施の形態に係る昇温条件算出装置、昇温条件算出方法及びプログラムは、新たに物体が染色されるときの染液の染色温度の単位時間当りの昇温条件を算出するものである。また、本発明の実施の形態に係る染色システムは、昇温条件算出装置によって新たに物体が染色されるときの染液の染色温度の単位時間当りの昇温条件を算出し、染色機によって算出された昇温条件で物体を染色するものである。
【0012】
図1は、本実施の形態に係る染色システムの説明図である。
図1に示すように、本実施の形態に係る染色システム1は、物体を染色する染色機2、昇温条件を算出するための機械学習に用いられる学習情報を記憶する学習情報記憶装置3を備える。また、染色システム1は、学習情報を用いた機械学習によって昇温条件を算出するための学習済モデル(推論モデル)を生成する学習済モデル生成装置4、学習済モデルに基づいて昇温条件を算出する昇温条件算出装置5を備える。染色システム1では、染色機2と学習情報記憶装置3と学習済モデル生成装置4と昇温条件算出装置5とがネットワークを介して互いに接続されている。
【0013】
染色システム1では、学習済モデル生成装置4は、学習情報記憶装置3に記憶されている学習情報を用いた機械学習によって学習済モデルを生成する。また、昇温条件算出装置5は、学習済モデル生成装置4によって生成された学習済モデルに基づいて新たに物体を染色するときの昇温条件を算出して染色機2に出力する。そして、染色機2は、昇温条件算出装置5から出力された昇温条件で物体を新たに染色する。
【0014】
図2は、本実施の形態に係る染色システムの機能構成を示すブロック図である。
図2に示すように、染色機2は、昇温条件を設定する昇温条件設定部201を備える。
【0015】
学習情報記憶装置3は、例えば、データベース管理ソフトウェアが搭載されたコンピュータ、所謂データベースサーバである。
図2に示すように、学習情報記憶装置3は、学習情報を記憶する学習情報記憶部301を備える。
【0016】
図4は、本実施の形態に係る学習情報の一例を示す図である。
図4に示すように、学習情報は、染色された物体の種類を示す情報を含む物体情報と、染色に用いられた染料の種類及び濃度を示す情報を含む染料情報とを含む。また、学習情報は、染色に用いられた助剤の種類及び濃度を示す情報を含む助剤情報と、機能性付与の為に用いられた機能性薬剤の種類及び濃度を示す情報を含む機能性薬剤情報と、染色機2の種類を示す情報を含む染色機情報とを含む。さらに、学習情報は、物体が染色されたときの昇温条件を示す昇温条件情報と、昇温条件に基づく染色温度の染液で染色された物体の評価を示す評価情報とを含む。すなわち、学習情報は、物体情報、染料情報、助剤情報、機能性薬剤情報、染色機情報、昇温条件情報、評価情報を含む情報であり、これらの情報が1回の染色毎に分類されている。よって、学習情報記憶部301は、これまで行われた全ての染色について1回の染色毎に学習情報が記憶されている。
【0017】
例えば、
図4の第1行の学習情報は、染色された物体の「種類」が「生地A」であり、染色に用いられた染料の「種類」及び「濃度」が「染料A」及び「濃度A1」であり、染色に用いられた助剤の「種類」及び「濃度」が「助剤A」及び「濃度A2」である。また、
図4の第1行の学習情報は、機能性付与の為に用いられた機能性薬剤の「種類」及び「濃度」が「機能性薬剤A」及び「濃度A3」であり、染色機2の「種類」が「染色機A」であり、「生地A」が染色されたときの「染料A」の染液の染色温度の単位時間当りの「昇温条件」が「TA1a,TA1b,…,TA1k」であり、昇温条件「TA1a,TA1b,…,TA1k」に基づく染色温度の「染料A」の染液で染色された「生地A」の評価が「○」である。
【0018】
図5は、本実施の形態に係る昇温する染色温度の一例を示す図である。なお、本実施の形態では、昇温条件は、予め定められた染色温度に達するまでの昇温時間によって特定される。例えば、昇温条件は、20℃から130℃までの染色温度を10℃毎に区切った各区間における10℃上昇するまでの昇温時間で特定される。ここで、例えば、
図5に示すように、グラフの縦軸を温度T[℃]とし横軸を時間t[min]とした場合、染色温度T[℃]は、当該グラフ上に描かれる線によって特定される時間t[min]の関数T=f(t)である。
図5に示す関数T=f(t)は、染色開始時に20℃であり、20℃から5分間温度が一定上昇して70℃となり、70℃から5分間温度が一定上昇して90℃となることを示している。また、関数T=f(t)は、90℃から10分間温度が一定上昇して110℃となり、110℃から10分間温度が一定上昇して120℃となることを示している。また、関数T=f(t)は、120℃から5分間温度が一定上昇して130℃となり、130℃から10分間温度が変化せずに染色終了となることを示している。
【0019】
よって、20℃から10℃上昇して30℃に達するまでの昇温時間、30℃から10℃上昇して40℃に達するまでの昇温時間、40℃から10℃上昇して50℃に達するまでの昇温時間はそれぞれ60秒となる。また、50℃から10℃上昇して60℃に達するまでの昇温時間、60℃から10℃上昇して70℃に達するまでの昇温時間もそれぞれ60秒となる。また、70℃から10℃上昇して80℃に達するまでの昇温時間、80℃から10℃上昇して90℃に達するまでの昇温時間はそれぞれ150秒となる。また、90℃から10℃上昇して100℃に達するまでの昇温時間、100℃から10℃上昇して110℃に達するまでの昇温時間はそれぞれ300秒となる。そして、110℃から10℃上昇して120℃に達するまでの昇温時間は600秒、120℃から10℃上昇して130℃に達するまでの昇温時間は300秒となる。
【0020】
このため、昇温条件は、例えば、60[秒],60[秒],60[秒],60[秒],60[秒],150[秒],150[秒],300[秒],300[秒],600[秒],300[秒]によって特定可能である。よって、仮に
図5に示す染色温度が
図4の第1行の学習情報に含まれる昇温条件情報が示す昇温条件に基づく染色温度である場合、TA1a=60[秒],TA1b=60[秒],TA1c=60[秒],TA1d=60[秒],TA1e=60[秒],TA1f=150[秒],TA1g=150[秒],TA1h=300[秒],TA1i=300[秒],TA1j=600[秒],TA1k=300[秒]となる。
【0021】
なお、本実施の形態では、染色温度の関数の一例として、縦軸を温度T[℃]とし横軸を時間t[min]とするグラフ上において複数の直線が連結された折れ線で示される関数T=f(t)を例示したが、これに限定されない。例えば、染色温度の関数は、上述したグラフ上において曲線で示される関数であってもよく、直線と曲線とが連結された線で示される関数であってもよい。
【0022】
学習済モデル生成装置4は、例えば、GPU(Graphics Processing Unit)が搭載されたコンピュータ、所謂GPUマシンである。なお、学習済モデル生成装置4は、GPUマシンに限定されず、学習情報を用いた機械学習によって昇温条件を算出するための学習済モデルを生成するための演算が可能なその他の計算機であってもよい。例えば、学習済モデル生成装置4は、CPU(Central Processing Unit)が搭載されたパーソナルコンピュータ、スーパーコンピュータ、ワークステーション等であってもよい。
【0023】
図2に示すように、学習済モデル生成装置4は、学習済モデルを生成する学習済モデル生成部401、生成した学習済モデルを記憶する学習済モデル記憶部402を備える。なお、生成した学習済モデルは、染色された物体の種類と、染色に用いられた染料の種類及び濃度と、染色に用いられた助剤の種類及び濃度と、機能性付与の為に用いられた機能性薬剤の種類及び濃度と、染色機2の種類と、物体が染色されたときの昇温条件と、染色された物体の評価との関係性を示す数理モデルである。具体的には、生成した学習済モデルは、新たな染色における物体の種類、染料の種類及び濃度、助剤の種類及び濃度、機能性薬剤の種類及び濃度、染色機2の種類の組合せから新たに染色される物体の評価が高い(例えば、色ムラが発生していない)と予測される昇温条件を算出するためのアルゴリズムである。
【0024】
学習済モデル生成部401は、学習情報記憶部301に記憶されているこれまで行われた染色についての染色毎の学習情報を全て取得し、取得した全ての学習情報を用いた機械学習によって学習済モデルを生成する。なお、学習済モデル生成部401は、学習情報記憶部301に記憶されている学習情報を全て取得したが、これに限定されない。例えば、学習済モデル生成部401は、学習情報記憶部301に記憶されている全ての学習情報のうちの一部の学習情報を取得し、取得した一部の学習情報を用いた機械学習によって学習済モデルを生成してもよい。具体的には、学習済モデル生成部401は、学習情報記憶部301に記憶されている所定期間(例えば、過去1年間、半年間、3ヶ月間、1ヶ月間、2週間、1週間等)に行われた全ての染色についての染色毎の学習情報を取得し、取得した学習情報を用いた機械学習によって学習済モデルを生成してもよい。
【0025】
ここで、学習済モデル生成部401が行う機械学習の手法は、例えば、再帰型ニューラルネットワーク(RNN:Recurrent Neural Network)であり、学習モデルの形式は、例えば、LSTM(Long Short-Term Memory)、DeepRNN等の再帰型ニューラルネットワークの一般的なモデルの形式である。なお、学習済モデル生成部401が行う機械学習の手法は、再帰型ニューラルネットワークに限定されず、畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolution Neural Network)、確率的ニューラルネットワーク(PNN: Probabilistic Neural Network)等のその他のニューラルネットワーク、強化学習、相関ルール学習等のその他の手法であってもよい。
【0026】
昇温条件算出装置5は、例えば、染色機2の使用者が個人で使用するデスクトップPC(パーソナルコンピュータ)、ノートPC、タブレットPC等のコンピュータ、所謂クライアントマシンである。昇温条件算出装置5は、染色機2の使用者が複数人存在するときには人数分の台数のクライアントマシンであり、例えば、
図1に示すように、染色機2の使用者がn人であればn台のクライアントマシン5A1、5A2、…、5Anが設けられる。以下、n台のクライアントマシン5A1、5A2、…、5Anについては、それぞれを単に昇温条件算出装置5と記載する。なお、クライアントマシンの台数は使用者と同数でなくてもよく、例えば、n≠mが成立するときに、n人の使用者に対してm台のクライアントマシン5A1、5A2、…、5Amが設けられてもよい。
【0027】
図2に示すように、昇温条件算出装置5は、昇温条件を算出する昇温条件算出部501、昇温条件を染色機2に出力する昇温条件出力部502、新たな学習情報を生成する学習情報生成部503、新たな学習情報を学習情報記憶装置3に出力する学習情報出力部504を備える。
【0028】
昇温条件算出部501は、新たな染色における物体情報、染料情報、助剤情報、機能性薬剤情報、染色機情報を取得したときに、学習済モデル生成装置4の学習済モデル記憶部402に記憶されている学習済モデルを取得する。そして、昇温条件算出部501は、取得した学習済モデルに基づいて、上述した情報から特定した新たな染色における物体の種類、染料の種類及び濃度、機能性薬剤の種類及び濃度、助剤の種類及び濃度、染色機2の種類の組合せから新たに染色される物体の評価が高いと予測される昇温条件を算出する。
【0029】
例えば、新たな染色における上述した組合せが機械学習した学習情報に含まれる組合せであれば、昇温条件算出部501は、取得した学習済モデルにより、この組合せで尚且つ評価情報の評価が「○」の学習情報に含まれる昇温条件情報の昇温条件と同一の昇温条件を算出する。ここで、取得した新たな染色における物体情報、染料情報、助剤情報、機能性薬剤情報、染色機情報が
図4の第1行の学習情報に含まれる物体情報、染料情報、助剤情報、機能性薬剤情報、染色機情報と同一であるとする。この場合、
図4の第1行の学習情報に含まれる評価情報の評価が「○」であるため、昇温条件算出部501は、取得した学習済モデルにより、
図4の第1行の学習情報に含まれる昇温条件情報の昇温条件「TA1a,TA1b,…,TA1k」を新たな染色における昇温条件として算出する。
【0030】
また、例えば、新たな染色における上述した組合せが機械学習した学習情報に含まれない新たな組合せであれば、昇温条件算出部501は、取得した学習済モデルにより、この組合せと近似する組合せの学習情報、例えば、一部が共通する組合せの学習情報に基づいて、評価情報の評価が「○」の学習情報に含まれる昇温条件情報の昇温条件と同一又は近似する昇温条件を算出する。ここで、取得した新たな染色における物体情報、助剤情報、機能性薬剤情報、染色機情報が
図4の第1行及び第9行の学習情報に含まれる物体情報、助剤情報、機能性薬剤情報、染色機情報と同一であるとする。一方、取得した新たな染色における染料情報が
図4の第1行及び第9行の染料情報と異なり、染色に用いられた染料の「種類」及び「濃度」が「染料C」及び「濃度C1」であるとする。
【0031】
この場合、
図4の第1行の学習情報に含まれる評価情報の評価が「○」である一方、
図4の第9行の学習情報に含まれる評価情報の評価が「×」である。このため、昇温条件算出部501は、取得した学習済モデルにより、
図4の第1行の学習情報に含まれる昇温条件情報の昇温条件「TA1a,TA1b,…,TA1k」と同一又は近似する昇温条件を新たな染色における昇温条件として算出する。
【0032】
昇温条件出力部502は、昇温条件算出部501が算出した昇温条件を示す情報を新たな染色における昇温条件情報として出力する。
【0033】
なお、昇温条件設定部201は、昇温条件出力部502が出力した昇温条件を設定する。例えば、昇温条件出力部502から上述した昇温条件「TA1」が出力された場合、昇温条件設定部201は、「TA1a,TA1b,…,TA1k」を設定する。このとき、染色機2は、染色開始時から
図5に示す昇温条件となるように染色温度を調節する。なお、染色機2の使用者は、設定された昇温条件に基づく染色温度の染液で物体が染色されると、目視によって染色された物体を評価し、例えば、色ムラが発生していなければ「○」、色ムラが発生していれば「×」の評価を与えて上述した評価情報を生成する。また、染色機2の使用者は、生成した評価情報を昇温条件算出装置5に入力する。
【0034】
学習情報生成部503は、染色終了後に使用者によって生成された新たな染色における評価情報を取得したときに、新たな染色における取得済の物体情報、染料情報、助剤情報、機能性薬剤情報、染色機情報、昇温条件情報と、新たに取得した評価情報とを含む学習情報を生成する。
【0035】
学習情報出力部504は、生成された新たな染色における学習情報を学習情報記憶装置3に出力して学習情報記憶部301に記憶させる。なお、このとき、学習情報記憶装置3は、学習情報出力部504が出力した学習情報が学習情報記憶部301に既に記憶されている学習情報と同一であれば重複した学習情報であると判定して学習情報記憶部301に記憶しなくてもよい。
【0036】
なお、学習済モデル生成装置4は、学習情報記憶装置3の学習情報記憶部301から不定期に学習情報を取得しており、学習情報記憶部301に新たな学習情報が記憶されると、使用者の要求により学習済モデル生成部401が新たな学習済モデルを生成して学習済モデル記憶部402に記憶している。なお、頻繁に学習が行われ、学習済モデルが更新されると昇温条件を算出する精度が低下する虞もあり、学習済モデルの適用には慎重を期す必要がある。このため、本実施の形態のように、学習済モデル生成装置4は、学習情報記憶装置3の学習情報記憶部301から不定期に学習情報を取得することが好ましいが、これに限定されず、定期的に学習情報を取得してもよい。また、本実施の形態のように、学習済モデル生成装置4は、使用者の要求により新たな学習済モデルを生成、記憶することが好ましいが、これに限定されず、学習情報記憶装置3が新たな学習情報を記憶したときに自動的に新たな学習済モデルを生成、記憶してもよい。この場合、学習済モデル生成装置4は、学習情報記憶装置3から新たな学習情報を記憶した旨の情報を取得する等して学習情報記憶装置3が新たな学習情報を記憶したか否かを判定する必要がある。
【0037】
図3は、本実施の形態に係る昇温条件算出装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図3に示すように、昇温条件算出装置5は、制御プログラム59に従って処理を実行する制御部51を備える。制御部51は、CPU(Central Processing Unit)、GPU等の演算装置を備える。制御部51は、制御プログラム59に従って、昇温条件算出装置5の昇温条件算出部501、昇温条件出力部502、学習情報生成部503、学習情報出力部504として機能する。
【0038】
また、昇温条件算出装置5は、制御プログラム59をロードし、制御部51の作業領域として用いられる主記憶部52を備える。主記憶部52は、RAM(Random-Access Memory)を備える。
【0039】
また、昇温条件算出装置5は、制御プログラム59を予め記憶する外部記憶部53を備える。外部記憶部53は、制御部51の指示に従って、このプログラムが記憶するデータを制御部51に供給し、制御部51から供給されたデータを記憶する。外部記憶部53は、フラッシュメモリ、ハードディスク、DVD(Digital Versatile Disc)-RAM、DVD-RW(ReWritable)等の不揮発性メモリを備える。
【0040】
また、昇温条件算出装置5は、ユーザに操作される操作部54を備える。操作部54を介して、入力された情報が制御部51に供給される。操作部54は、キーボード、マウス等の情報入力部品を備える。
【0041】
また、昇温条件算出装置5は、操作部54を介して入力された情報及び制御部51が出力した情報を表示する表示部55を備える。表示部55は、LCD(Liquid Crystal Display)、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等の情報表示装置を備える。
【0042】
また、昇温条件算出装置5は、情報を送受信する送受信部56を備える。送受信部56は、ネットワークに接続する網終端装置、無線通信装置等の情報通信部品を備える。
【0043】
また、昇温条件算出装置5では、主記憶部52、外部記憶部53、操作部54、表示部55及び送受信部56はいずれも内部バス50を介して制御部51に接続されている。
【0044】
なお、図示は省略するが、学習情報記憶装置3及び学習済モデル生成装置4についても昇温条件算出装置5と同様に、主記憶部52、外部記憶部53、操作部54、表示部55及び送受信部56を備え、これらは内部バス50を介して制御部51に接続されている。学習情報記憶装置3において、外部記憶部53は学習情報記憶部301として機能する。また、学習済モデル生成装置4において、制御部51は制御プログラム59に従って学習済モデル生成部401として機能するとともに、外部記憶部53は学習済モデル記憶部402として機能する。
【0045】
図6は、本実施の形態に係る学習済モデル生成処理を示すフローチャートである。
図6に示すフローチャートを用いて学習済モデル生成装置4が学習済モデルを生成する動作について説明する。学習済モデル生成部401は、昇温条件算出装置5によって学習情報記憶装置3の学習情報記憶部301に新たな学習情報が記憶されると、使用者の要求により学習済モデル生成処理の実行を開始する。先ず、
図6に示すように、学習済モデル生成部401は、学習情報記憶部301に記憶されている全ての学習情報を取得する(ステップS101)。学習情報取得後、学習済モデル生成部401は、取得した全ての学習情報を用いた機械学習によって学習済モデルを生成し(ステップS102)、生成した学習済モデルを学習済モデル記憶部402に記憶させ(ステップS103)、処理を終了する。なお、本実施の形態では、学習済モデル生成部401は、学習情報記憶部301に記憶されている全ての学習情報を取得し、取得した全ての学習情報を用いた機械学習によって学習済モデルを生成したが、これに限定されない。例えば、学習済モデル生成部401は、上述したように、学習情報記憶部301に記憶されている全ての学習情報のうちの一部の学習情報を取得し、取得した一部の学習情報を用いた機械学習によって学習済モデルを生成してもよい。
【0046】
図7は、本実施の形態に係る昇温条件算出処理を示すフローチャートである。
図7に示すフローチャートを用いて昇温条件算出装置5が新たな染色における昇温条件を算出する動作について説明する。昇温条件算出部501は、染色機2の使用者によって生成された新たな染色についての物体情報、染料情報、助剤情報、機能性薬剤情報、染色機情報が昇温条件算出装置5に入力されると、昇温条件算出処理の実行を開始する。先ず、
図7に示すように、昇温条件算出部501は、使用者によって入力された新たな染色についての物体情報、染料情報、助剤情報、機能性薬剤情報、染色機情報を取得する(ステップS201)。このとき、昇温条件算出部501は、取得したこれらの情報から新たな染色における物体の種類、染料の種類及び濃度、助剤の種類及び濃度、機能性薬剤情報の種類及び濃度、染色機2の種類を特定する。
【0047】
また、昇温条件算出部501は、学習済モデル生成装置4の学習済モデル記憶部402に記憶されている学習済モデルを取得する(ステップS202)。また、昇温条件算出部501は、取得した学習済モデルに基づいて、特定した物体の種類、染料の種類及び濃度、助剤の種類及び濃度、機能性薬剤情報の種類及び濃度、染色機2の種類から新たに染色される物体の評価が高いと予測される染液の染色温度の単位時間当りの昇温条件を算出する(ステップS203)。そして、昇温条件出力部502は、昇温条件算出部501が算出した昇温条件を染色機2に出力し(ステップS204)、処理を終了する。
【0048】
図8は、本実施の形態に係る学習情報生成処理を示すフローチャートである。
図8に示すフローチャートを用いて昇温条件算出装置5が新たな学習情報を生成する動作について説明する。学習情報生成部503は、昇温条件出力部502が昇温条件を染色機2に出力すると、学習情報生成処理の実行を開始する。先ず、
図8に示すように、学習情報生成部503は、染色機2の使用者によって生成された新たな染色についての評価情報が昇温条件算出装置5に入力されたか否かを判定する(ステップS301)。
【0049】
学習情報生成部503は、評価情報が入力されていない場合(ステップS301;NO)、評価情報が入力されるまでステップS301の処理を繰り返す。また、学習情報生成部503は、評価情報が入力された場合(ステップS301;YES)、新たな染色における取得済の物体情報、染料情報、助剤情報、機能性薬剤情報、染色機情報、昇温条件情報と、新たに取得した評価情報とを含む学習情報を生成する(ステップS302)。そして、学習情報出力部504は、生成した新たな学習情報を学習情報記憶装置3に出力して学習情報記憶部301に記憶させ(ステップS303)、処理を終了する。
【0050】
以上説明したように、本実施の形態に係る染色システム1によれば、昇温条件算出部501は、取得した学習済モデルに基づいて、新たに染色される物体の種類と新たな染色に用いられる染料の種類及び濃度とから新たに染色されるときの染液の染色温度の単位時間当りの昇温条件を算出する。また、昇温条件出力部502は、算出された昇温条件を染色機2に出力する。ここで、学習済モデル生成部401は、少なくとも物体情報と染料情報と昇温条件情報と評価情報とを含む学習情報を用いて学習済モデルを生成している。すなわち、学習済モデルを生成するための機械学習に用いられる学習情報は、これまで行われた全ての染色について1回の染色毎の物体の種類、染料の種類及び濃度、染液の染色温度の単位時間当りの昇温条件、染色された物体の評価を含む情報である。よって、新たに染色される物体の種類と新たな染色に用いられる染料の種類及び濃度との組合せと同一又は近似する組合せが機械学習した学習情報に含まれていれば、昇温条件算出部501は、取得した学習済モデルにより、これらの組合せが含まれ且つ染色された物体の評価が高かった学習情報に含まれる昇温条件と同一又は近似する昇温条件を算出することができる。
【0051】
このようにすることで、染色機2の使用者は、新たな染色が行われる度に物体情報及び染料情報を取得すれば昇温条件算出装置5を用いて昇温条件を算出して染色機2に出力できる。この結果、本発明に係る昇温条件算出装置5を用いない染色機2の使用者よりも作業負荷を低減できる。また、このようにすることで、新たに染色されるときの染液の昇温条件の算出に適した学習情報を用いた機械学習によって学習済モデルが生成されれば、算出された昇温条件に基づく染色温度の染液で新たに染色された物体の評価を高くすることができる。この結果、染色温度の単位時間当りの昇温条件として新たに染色された物体の評価を高くするために最適な条件を算出できる。
【0052】
ここで、従来の染色機には、登録済の複数の昇温条件のうちから一の昇温条件を選択して設定することが可能であるものが知られている。このような染色機では、各昇温条件を記憶する記憶部の記憶領域の大きさにより、昇温条件の登録数に制限があるため、使用頻度の低い昇温条件については登録しないようにする必要があった。例えば、新たな染色において新種の物体を染色する場合、又は、新たな配合の染料を用いる場合、市場の需要が少なく、以降も繰り返し染色が行われる可能性が低いことがある。この場合、ラボでの評価、設計基準書を用いた補正等によって新たな染色に適した昇温条件が算出されたとしても、算出後に使用頻度の低い昇温条件であることが判明すると、算出された昇温条件を登録しないだけでなく、登録済の既存の昇温条件を選択して染色することもある。このため、染色機の使用者は、新たな染色において実際には適用されなかったり、染色機に登録されなかったりする可能性がある昇温条件を新たな染色が行われる度に算出したり、決定したりすることになり、冗長な作業負荷が大きいという問題がある。
【0053】
これに対して、本実施の形態に係る染色システム1では、染色機の使用者は、上述したように新たな染色が行われる度に昇温条件算出装置を用いて昇温条件を算出して染色機に出力できる。このため、染色機2における昇温条件の登録数の制限、算出された昇温条件の以降の使用頻度等に関わらず、新たな染色が行われる度に適切な昇温条件を自動的に算出して染色機2に自動的に設定できる。この結果、本発明に係る昇温条件算出装置5を用いない染色機2の使用者よりも作業負荷を低減できる。
【0054】
また、本実施の形態に係る染色システム1によれば、学習済モデル生成部401は、染色機情報を含む学習情報を用いて学習済モデルを生成している。すなわち、学習済モデルを生成するための機械学習に用いられる学習情報は、これまで行われた全ての染色について1回の染色毎の染色機2の種類を更に含む情報である。よって、新たに染色される物体の種類と新たな染色に用いられる染料の種類及び濃度と染色機2の種類との組合せと同一又は近似する組合せが機械学習した学習情報に含まれていれば、昇温条件算出部501は、取得した学習済モデルにより、これらの組合せが含まれ且つ染色された物体の評価が高かった学習情報に含まれる昇温条件と同一又は近似する昇温条件を算出することができる。
【0055】
このようにすることで、染色機2の使用者は、新たな染色が行われる度に物体情報、染料情報、染色機情報を取得すれば昇温条件算出装置5を用いて昇温条件を算出して染色機2に出力できる。また、このようにすることで、染色機情報が含まれない学習情報を用いて生成された学習済モデルに基づいて昇温条件が算出される昇温条件算出装置よりも算出された昇温条件に基づく染色温度の染液で新たに染色された物体の評価を高くし易くすることができる。
【0056】
なお、本実施の形態のように、新たに染色された物体の評価を高くし易くするために、染色機情報を含む学習情報を用いて学習済モデルを生成することが好ましいが、学習情報に物体情報及び染料情報が含まれている限りにおいて、染色機情報を含む学習情報を用いて学習済モデルを生成しなくてもよい。
【0057】
また、本実施の形態に係る染色システム1によれば、学習済モデル生成部401は、助剤情報を含む学習情報を用いて学習済モデルを生成している。すなわち、学習済モデルを生成するための機械学習に用いられる学習情報は、これまで行われた全ての染色について1回の染色毎の助剤の種類及び濃度を更に含む情報である。よって、新たに染色される物体の種類と新たな染色に用いられる染料の種類及び濃度と助剤の種類及び濃度との組合せと同一又は近似する組合せが機械学習した学習情報に含まれていれば、昇温条件算出部501は、取得した学習済モデルにより、これらの組合せが含まれ且つ染色された物体の評価が高かった学習情報に含まれる昇温条件と同一又は近似する昇温条件を算出することができる。
【0058】
このようにすることで、染色機2の使用者は、新たな染色が行われる度に物体情報、染料情報、助剤情報を取得すれば昇温条件算出装置5を用いて昇温条件を算出して染色機2に出力できる。また、このようにすることで、助剤情報が含まれない学習情報を用いて生成された学習済モデルに基づいて昇温条件が算出される昇温条件算出装置よりも算出された昇温条件に基づく染色温度の染液に助剤を用いて新たに染色された物体の評価を高くし易くすることができる。
【0059】
なお、本実施の形態のように、新たに染色された物体の評価を高くし易くするために、助剤情報を含む学習情報を用いて学習済モデルを生成することが好ましいが、学習情報に物体情報及び染料情報が含まれている限りにおいて、助剤情報を含む学習情報を用いて学習済モデルを生成しなくてもよい。
【0060】
ここで、染色された物体に難燃性を持たせる為に、難燃剤を染液に混合して一浴で染色加工したところ、染料の染着速度等に影響があることが発明者による試験によって確認された。また、染色時に機能性付与の為に用いられる機能性薬剤については、難燃性を持たせる為に用いられる難燃剤に限定されず、例えば、抗菌性を持たせる為に用いられる抗菌剤、吸水性を持たせる為に用いられる吸水剤等も考えられる。よって、機能性薬剤についても助剤と同様に、昇温条件を算出するためには、その種類や濃度について考慮する必要がある。
【0061】
これに対して、本実施の形態に係る染色システム1によれば、学習済モデル生成部401は、機能性薬剤情報を含む学習情報を用いて学習済モデルを生成している。すなわち、学習済モデルを生成するための機械学習に用いられる学習情報は、これまで行われた全ての染色について1回の染色毎の機能性薬剤の種類及び濃度を更に含む情報である。よって、新たに染色される物体の種類と新たな染色に用いられる染料の種類及び濃度と機能性薬剤の種類及び濃度との組合せと同一又は近似する組合せが機械学習した学習情報に含まれていれば、昇温条件算出部501は、取得した学習済モデルにより、これらの組合せが含まれ且つ染色された物体の評価が高かった学習情報に含まれる昇温条件と同一又は近似する昇温条件を算出することができる。
【0062】
このようにすることで、染色機2の使用者は、新たな染色が行われる度に物体情報、染料情報、機能性薬剤情報を取得すれば昇温条件算出装置5を用いて昇温条件を算出して染色機2に出力できる。また、このようにすることで、機能性薬剤情報が含まれない学習情報を用いて生成された学習済モデルに基づいて昇温条件が算出される昇温条件算出装置よりも算出された昇温条件に基づく染色温度の染液に機能性薬剤情報を用いて新たに染色された物体の評価を高くし易くすることができる。
【0063】
なお、本実施の形態のように、新たに染色された物体の評価を高くし易くするために、機能性薬剤情報を含む学習情報を用いて学習済モデルを生成することが好ましいが、学習情報に物体情報及び染料情報が含まれている限りにおいて、機能性薬剤情報を含む学習情報を用いて学習済モデルを生成しなくてもよい。
【0064】
また、本実施の形態に係る染色システム1によれば、学習情報生成部503は、染色機2の使用者によって新たな染色についての評価情報が入力されると、新たな染色における学習情報を生成する。そして、学習情報出力部504は、生成した新たな学習情報を学習情報記憶装置3に出力して学習情報記憶部301に記憶させる。
【0065】
このようにすることで、算出された昇温条件で新たな染色を行ったときの染色された物体の評価を含む新たな学習情報を生成し、機械学習に用いる新たな学習情報としてフィードバックすることができる。また、このようにすることで、学習済モデル生成部401は、フィードバックされた新たな学習情報を更に用いた機械学習によって学習済モデルを更新することができる。この結果、フィードバックされた新たな学習情報を更に用いた機械学習によって学習済モデルを更新しない学習済モデル生成装置よりも染色された物体の評価が高くなる適切な昇温条件を算出し易くすることができる。
【0066】
また、本実施の形態に係る染色システム1によれば、学習済モデル生成部401は、学習情報記憶部301に記憶されている学習情報を用いた機械学習によって学習済モデルを生成する。
【0067】
このようにすることで、学習済モデル生成装置4において、染色された物体の種類と、染色に用いられた染料の種類及び濃度と、染色に用いられた助剤の種類及び濃度と、機能性付与の為に用いられた機能性薬剤の種類及び濃度と、染色機2の種類と、物体が染色されたときの昇温条件と、染色された物体の評価との関係性を学習できる。また、このようにすることで、学習情報記憶装置3において、これまで行われた全ての染色についての1回の染色毎の学習情報を記憶できる。
【0068】
なお、本実施の形態では、学習済モデル生成装置4が学習済モデル生成部401及び学習済モデル記憶部402を備えているが、これに限定されず、例えば、昇温条件算出装置5が学習済モデル生成部401及び学習済モデル記憶部402を備えていてもよい。この場合、昇温条件算出装置5が学習情報記憶部301に記憶されている学習情報を用いた機械学習によって学習済モデルを生成するための演算処理能力を備えている必要がある。このため、例えば、昇温条件算出装置5をクライアントマシン5A1、5A2、…、5Anに替えて上述したGPUマシン、パーソナルコンピュータ、スーパーコンピュータ、ワークステーション等としてもよい。
【0069】
なお、本実施の形態では、学習情報記憶装置3が学習情報記憶部301を備えているが、これに限定されず、例えば、学習済モデル生成装置4が学習情報記憶部301を備えていてもよい。すなわち、学習済モデル生成装置4が学習情報記憶装置3と一体となったデータベースサーバであってもよい。また、例えば、昇温条件算出装置5が学習情報記憶部301を備えていてもよい。すなわち、染色機2の使用者が使用する昇温条件算出装置5が学習情報記憶装置3のデータベースの機能を備えていてもよい。これらの場合、学習済モデル生成装置4又は昇温条件算出装置5がこれまで行われた全ての染色についての1回の染色毎の学習情報を記憶可能な記憶領域を有する大容量の記憶装置を備えている必要がある。
【0070】
なお、本実施の形態では、染色システム1は、染色機2と学習情報記憶装置3と学習済モデル生成装置4と昇温条件算出装置5とを備えているが、これに限定されず、例えば、染色システム1は、染色機2と昇温条件算出装置5とを備え、昇温条件算出装置5が学習情報記憶部301と学習済モデル生成部401と学習済モデル記憶部402とを更に備えていてもよい。
【0071】
なお、本実施の形態では、物体情報が示す物体の種類として
図4に示す「生地A」、「生地B」、…、「物体N」を例示したが、物体の種類については生地に限定されず、例えば、ばら毛、糸、綿、編物、織物等のその他の被染物であってもよい。
【0072】
なお、本実施の形態では、物体情報は、物体の種類を含む情報としたが、例えば、物体の幅、長さ、厚さ、単位面積当りの重さである所謂目付、材料となる糸の種類と混合した割合と太さ等を更に含む情報であってもよい。
【0073】
なお、本実施の形態では、染料情報は、染料の種類及び濃度を含む情報としたが、例えば、染料の材料の種類及び混合した割合等を更に含む情報であってもよい。また、助剤情報は、助剤の種類及び濃度を含む情報としたが、例えば、助剤の材料の種類及び混合した割合等を更に含む情報であってもよい。また、機能性薬剤情報は、機能性薬剤の種類及び濃度を含む情報としたが、例えば、機能性薬剤の材料の種類及び混合した割合等を更に含む情報であってもよい。
【0074】
なお、本実施の形態のように、染色された物体の評価が高くなる適切な昇温条件を算出し易くするために、助剤情報は助剤の濃度を含む情報であることが好ましいが、助剤情報は助剤の濃度を含まない情報であってもよい。すなわち、学習済モデルを生成するための機械学習に用いられる学習情報は、これまで行われた全ての染色について1回の染色毎の物体の種類、染料の種類及び濃度、助剤の種類、染液の染色温度の単位時間当りの昇温条件、染色された物体の評価を含む情報であってもよい。この場合、新たに染色される物体の種類と新たな染色に用いられる染料の種類及び濃度と助剤の種類との組合せと同一又は近似する組合せが機械学習した学習情報に含まれていれば、昇温条件算出部501は、取得した学習済モデルにより、これらの組合せが含まれ且つ染色された物体の評価が高かった学習情報に含まれる昇温条件と同一又は近似する昇温条件を算出することができる。
【0075】
なお、本実施の形態のように、染色された物体の評価が高くなる適切な昇温条件を算出し易くするために、機能性薬剤情報は機能性薬剤の濃度を含む情報であることが好ましいが、機能性薬剤情報は機能性薬剤の濃度を含まない情報であってもよい。すなわち、学習済モデルを生成するための機械学習に用いられる学習情報は、これまで行われた全ての染色について1回の染色毎の物体の種類、染料の種類及び濃度、機能性薬剤の種類、染液の染色温度の単位時間当りの昇温条件、染色された物体の評価を含む情報であってもよい。この場合、新たに染色される物体の種類と新たな染色に用いられる染料の種類及び濃度と機能性薬剤の種類との組合せと同一又は近似する組合せが機械学習した学習情報に含まれていれば、昇温条件算出部501は、取得した学習済モデルにより、これらの組合せが含まれ且つ染色された物体の評価が高かった学習情報に含まれる昇温条件と同一又は近似する昇温条件を算出することができる。
【0076】
なお、本実施の形態では、染色機情報は、染色機2の種類を含む情報としたが、例えば、染める物体に対する染料の重量比である所謂浴比、染色機2内を染色される物体が通過する時間である所謂パスタイム、染液が噴射されるノズルの圧力等を更に含む情報であってもよい。
【0077】
なお、本実施の形態では、学習情報は、物体情報、染料情報、助剤情報、機能性薬剤情報、染色機情報、昇温条件情報、評価情報が含まれる情報としたが、例えば、学習情報は、染色された物体を購入する顧客の名称や業種や購入数等を示す顧客情報が更に含まれる情報であってもよい。
【0078】
なお、本実施の形態では、評価情報は、「○」又は「×」の2段階の評価を示す情報としたが、例えば、3段階以上の評価を示す情報であってもよい。例えば、「優」、「良」、「可」、「不可」の4段階の評価を示す情報であってもよい。
【0079】
なお、本実施の形態では、新たな染色が行われた後、染色機2の使用者が目視によって染色された物体を評価し、生成した評価情報を昇温条件算出装置5に入力しているが、これに限定されない。例えば、染色機2又は新たに設けた評価装置によって染色された物体を自動的に評価し、生成した評価情報を昇温条件算出装置5に自動的に入力してもよい。この場合、染色機2又は新たに設けた評価装置が画像解析処理によって染色された物体を自動的に評価する機能を備えている必要がある。例えば、染色機2又は評価装置がカメラと画像判定部とを備え、カメラが染色された物体を撮像し、画像判定部が取得した染色後の物体の画像から特定した各画素の色に基づいて染めムラがあるか否かを判定したり、予め設定された色で染め上がっているか否かを判定したりしてもよい。なお、染色された物体の評価を自動化する場合、染色機2は、「×」の評価を示す評価情報を生成したときには、生成した評価情報を昇温条件算出装置5に出力した後、フィードバックされた新たな学習情報を更に用いた機械学習によって更新された学習済モデルに基づいて新たに算出された昇温条件を取得するまで染色を中断してもよい。また、このとき、染色機2は、昇温条件算出装置5に評価情報を出力するときに新たな昇温条件を出力する要求情報も出力してよい。このようにすることで、染色機2は、新たな昇温条件を再設定して染色を再開する処理についても自動化できる。
【0080】
なお、本実施の形態のように、染色された物体の評価が高くなる適切な昇温条件を算出し易くするために、学習情報は評価情報を含む情報であることが好ましいが、学習情報は物体情報と染料情報と昇温条件情報とを含む情報である限りにおいて評価情報を含まない情報であってもよい。すなわち、学習済モデルを生成するための機械学習に用いられる学習情報は、これまで行われた全ての染色について1回の染色毎の物体の種類、染料の種類及び濃度、染液の染色温度の単位時間当りの昇温条件を含む情報であってもよい。この場合、学習済モデル生成部401が染色された物体の評価が高かった学習情報のみを用いて学習済モデルを生成することで、新たに染色される物体の種類と新たな染色に用いられる染料の種類及び濃度との組合せと同一又は近似する組合せが機械学習した学習情報に含まれていれば、昇温条件算出部501は、取得した学習済モデルにより、これらの組合せが含まれた学習情報に含まれる昇温条件と同一又は近似する昇温条件を算出することができる。
【0081】
なお、制御部51、主記憶部52、外部記憶部53、操作部54、表示部55、送受信部56、内部バス50等を備える昇温条件算出装置5の処理を行う中心となる部分は、専用のシステムによらず、通常のコンピュータシステムを用いて実現可能である。例えば、前記の動作を実行するためのコンピュータプログラムを、昇温条件算出装置5が読み取り可能な記録媒体、例えば、フレキシブルディスク、DVD-ROM(Read-Only Memory)等に格納して配布し、当該コンピュータプログラムをコンピュータにインストールすることにより、上記の処理を実行する昇温条件算出装置5を構成してもよい。また、インターネットなどの通信ネットワーク上のサーバ装置が有する記憶装置に当該コンピュータプログラムを格納しておき、通常のコンピュータシステムがダウンロードなどすることで昇温条件算出装置5を構成してもよい。
【0082】
また、昇温条件算出装置5の機能を、OS(オペレーティングシステム)とアプリケーションプログラムの分担、又はOSとアプリケーションプログラムとの協働により実現する場合などには、アプリケーションプログラム部分のみを記録媒体又は記憶装置に格納してもよい。
【0083】
また、搬送波にコンピュータプログラムを重畳し、通信ネットワークを介して提供することも可能である。例えば、通信ネットワーク上の掲示板(BBS、 Bulletin Board System)に前記コンピュータプログラムを掲示し、ネットワークを介して前記コンピュータプログラムを提供してもよい。そして、このコンピュータプログラムを起動し、OSの制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、前記の処理を実行してもよい。
【0084】
その他、本実施の形態に係る昇温条件算出装置5、染色システム1、昇温条件算出方法及びプログラムの構成は一例であり、本発明が解決しようとする課題を解決可能な限りにおいて任意に変更及び修正が可能である。
【0085】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。つまり、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。
【0086】
本出願は、2019年9月12日に出願された、日本国特許出願特願2019-165897号に基づく。本明細書中に日本国特許出願特願2019-165897号の明細書、特許請求の範囲、図面全体を参照として取り込むものとする。
【符号の説明】
【0087】
1 染色システム、2 染色機、3 学習情報記憶装置、4 学習済モデル生成装置、5 昇温条件算出装置、5A1,5A2,…,5An クライアントマシン、50 内部バス、51 制御部、52 主記憶部、53 外部記憶部、54 操作部、55 表示部、56 送受信部、59 制御プログラム、201 昇温条件設定部、301 学習情報記憶部、401 学習済モデル生成部、402 学習済モデル記憶部、501 昇温条件算出部、502 昇温条件出力部、503 学習情報生成部、504 学習情報出力部。