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  • 特許-メタリック調加飾フィルム 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】メタリック調加飾フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20241025BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20241025BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20241025BHJP
   B05D 5/06 20060101ALI20241025BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20241025BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B32B27/20 A
B32B27/40
B05D5/06 101A
B05D7/24 302T
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020175320
(22)【出願日】2020-10-19
(65)【公開番号】P2022066786
(43)【公開日】2022-05-02
【審査請求日】2023-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】加瀬 丘雅
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 章悟
(72)【発明者】
【氏名】林田 真生
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-183136(JP,A)
【文献】特開2000-176365(JP,A)
【文献】特開2015-131390(JP,A)
【文献】特開2002-301789(JP,A)
【文献】特開2004-299220(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B05D 1/00- 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムフレークと、アクリルウレタン樹脂と、を含むメタリック層が2層以上積層されてなり、
前記アルミニウムフレークの含有量が、各メタリック層を構成する固形分100質量%に対して、1~30質量%であり、前記アクリルウレタン樹脂の含有量が、各メタリック層を構成する固形分100質量%に対して、70~99質量%であり、
各メタリック層の厚みが、10μm以上であり、
前記アクリルウレタン樹脂は、ウレタンプレポリマーと(メタ)アクリル酸アルキルエステルとを反応させて得られる重合体、またはその重合体を架橋剤で架橋させてなる架橋体である、メタリック調加飾フィルム。
【請求項2】
前記アルミニウムフレークの平均二次粒子径が、30~1000μmである、請求項1に記載のメタリック調加飾フィルム。
【請求項3】
前記アルミニウムフレークの平均粒子径が5~50μmである、請求項1または2に記載のメタリック調加飾フィルム。
【請求項4】
前記メタリック層が2層であり、一方のメタリック層のアルミニウムフレーク非凝集部が存在する箇所の厚み方向において、他方のメタリック層のアルミニウムフレーク凝集部が存在する、請求項1~3のいずれか1項に記載のメタリック調加飾フィルム。
【請求項5】
前記ウレタンプレポリマーが、メルカプト基含有ウレタンプレポリマーおよび/またはエチレン性不飽和二重結合基を両末端に有するウレタンプレポリマーである、請求項1~4のいずれか1項に記載のメタリック調加飾フィルム。
【請求項6】
アルミニウムフレークおよびアクリルウレタン樹脂を溶媒に分散した分散液を調製し、キャスティングフィルム上に当該分散液を塗布することを含む、請求項1~に記載のメタリック調加飾フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタリック調加飾フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車体や部品などの立体被着体の表面加飾は、付加価値を高め高級感を付与する目的から、近年注目されているが、複数の機能を有する塗膜を積層しているため、このような方法は作業工程の工数と時間を要し、コストアップとなる。
【0003】
このため、作業工程が少なく、低コストで表面を加飾できる方法として、塗装の代わりに粘着層を有する加飾フィルムを被着体に貼付することが行われている。このような加飾フィルムは、通常、美観性・加飾性を発揮したり各種情報を提示したりするための基材と、基材を被着面と接着させるための粘着剤層とが積層されてなる構成を有する。
【0004】
自動車のような高価格の製品は、高級感が求められるため、外観をメタリック調とする場合がある。このようなメタリック調加飾フィルムに用いられる顔料として、鱗片状のメタリック顔料、例えば、アルミニウムフレークが汎用される。例えば特許文献1では、透明ポリウレタンフィルム層、アルミフレークを含有する着色印刷層、粘着剤層がこの順に積層されてなるフィルム複合体を用いる技術が開示されている。このような構成とすることで、深み感のある高級塗装物の上に貼着しても周囲の高級塗装物と違和感を生じない深み感のある色調を持たせることができるとある。
【0005】
ところで、自動車の車体や部品のような立体被着体にメタリック調加飾フィルムを貼付する場合、通常、真空成形、圧空成形または真空・圧空成形などの方法により、立体被着体にメタリック調加飾フィルムを直接接着する方法が採られる。この際、立体被着体の3次元形状に合うように、メタリック調加飾フィルムが延伸される。このため、メタリック調加飾フィルムが引っ張られた状態であっても、その外観、とくにメタリック調が変化しないことが要求される。このような要求に対して、例えば、特許文献2では、比較的大粒子径のりん片状金属粉に特定の大きさの球状粒子を特定の使用比で併用する水性メタリック塗料を加飾層形成用のベース塗料とすることにより、粒子感が高く、延伸によっても金属調の外観が損なわれることのない、付着性や耐水性に優れた加飾フィルムが得られるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-231232号公報
【文献】特開2014-019064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者の検討によれば、立体被着体にアルミニウムフレークを含むメタリック調加飾フィルムを貼付する際にメタリック調加飾フィルムを引っ張ると、アルミフレークとアルミフレークの間隔が広がることにより、メタリック調の外観が変化しやすくなることが判明した。
【0008】
そこで、本発明の目的は、延伸した場合であっても、メタリック調の外観の変化が少ない、アルミニウムフレークを含むメタリック調加飾フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、アルミニウムフレークと、アクリルウレタン樹脂と、を含むメタリック層が2層以上積層されてなる、メタリック調加飾フィルムである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、アルミニウムフレークを含むフィルムを延伸した場合であっても、メタリック調の外観の変化が少ない、メタリック調加飾フィルムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A】メタリック調加飾フィルムの一実施形態を示す断面模式図である。
図1B】メタリック調加飾フィルムの他の実施形態を示す断面模式図である。
図2】延伸前後のメタリック調加飾フィルムを示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の第一実施形態は、アルミニウムフレークと、アクリルウレタン樹脂と、を含むメタリック層が2層以上積層されてなる、メタリック調加飾フィルムである。
【0013】
第一実施形態のメタリック調加飾フィルムによれば、延伸した場合であっても、メタリック調の外観の変化が少ない。
【0014】
本実施形態のメタリック調加飾フィルムがかような効果を奏するメカニズムは以下のように推定される。なお、下記メカニズムによって本発明の技術的範囲は何ら制限されない。
【0015】
本発明者は、アクリルウレタン樹脂にアルミニウムフレークを組み合わせることで、フリップフロップ性の高いメタリック調加飾フィルムが得られることを知見した。フリップフロップ性とは、見る角度によって色が変化する性質をいい、フリップフロップ性が高いことで、高級感といった意匠性を高めることができる。アクリルウレタン樹脂は、アクリル部とウレタン部とが非相溶性であり、アルミニウムフレークの親和性が、アクリル部とウレタン部とで異なるため、アルミニウムフレークが比較的凝集しやすく、また、種々の方向に配向しやすい。アクリルウレタン樹脂内でアルミニウムフレークが凝集するとともに、アルミニウムフレークが種々の方向に配向することで、角度依存性が生じ、フリップフロップ性の高い外観を呈するものと考えられる。
【0016】
しかしながら、アクリルウレタン樹脂を用いたメタリック層を有する構成としたときに、車体や部品にメタリック調加飾フィルムが貼付される際にメタリック調加飾フィルムが引っ張られることによって、フィルムの延伸が多い部分について、メタリック調の外観が変化しやすくなる、すなわち、メタリック調加飾フィルムのフリップフロップ性が低下するという問題が生じた。本発明者らは、アルミニウムフレークが凝集することで、アルミニウムフレークが存在しない部分がシート面内に存在しているところ、メタリック調加飾フィルムを延伸することで、アルミニウムフレークが存在しない場所がさらに広がることで、厚み方向にアルミフレークが存在しない箇所が増加し、フリップフロップ性が低下するものと考えた。このような知見の元、メタリック層を2層以上とすることで、厚み方向にアルミニウムフレークが存在しない場所が少なくなり、フリップフロップ性の低下が抑制され、外観の変化が少なくなることを見出し、本発明を完成させた。
【0017】
以下、本実施形態について詳細に説明する。
【0018】
なお、本明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等は、室温(20~25℃)/相対湿度45~55%の条件で測定する。本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレートまたはメタクリレート」を指し、「(メタ)アクリル酸」は、「アクリル酸またはメタクリル酸」を指す。
【0019】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書において、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。また、同一の部材には同一の符号を付す場合がある。
【0020】
図1Aは、メタリック調加飾フィルムの一実施形態を示す断面模式図である。図1のメタリック調加飾フィルム10は、第1のメタリック層20および第2のメタリック層30から構成される。このような実施形態のメタリック調加飾フィルム10は、後述の真空成形等の方法により、容易に被着体に貼着することができる。図1Bは、メタリック調加飾フィルムの一実施形態を示す断面模式図である。図1Bのメタリック調加飾フィルム10’は、第1のメタリック層20、第2のメタリック層30、粘着剤層40、および剥離ライナー50がこの順に積層されてなる。剥離ライナー50は、粘着剤層を保護するための部材であり、粘着剤層に隣接して配置される。
【0021】
本発明の他の好適な実施形態は、メタリック層が2層であり、一方のメタリック層のアルミフレーク非凝集部が存在する箇所の厚み方向において、他方のメタリック層のアルミフレーク凝集部が存在する。このような形態であることで、延伸した場合であっても、外観の変化が少なく、また、フリップフロップ性が低下しにくい。
【0022】
図2は、上記実施形態の延伸前後のメタリック調加飾フィルムを示す断面模式図である。図2において、60は自動車の車体や部品等の被着体を、70はアルミフレークを、80は第2のメタリック層のアルミフレーク非凝集部を表す。図2では、第2のメタリック層のアルミフレーク非凝集部80が存在する箇所の厚み方向において、第1のメタリック層のアルミフレーク凝集部(凝集体)が存在する。このような非凝集部、凝集部は、SEMなどの観察手段を用いて確認することができる。なお、図2においては、第2のメタリック層のアルミフレーク非凝集部80が存在する箇所の厚み方向において、第1のメタリック層のアルミフレーク凝集部(凝集体)が存在する形態を示したが、第1のメタリック層のアルミフレーク非凝集部が存在する箇所の厚み方向において、第2のメタリック層のアルミフレーク凝集部(凝集体)が存在する形態であってもよい。
【0023】
以下、各構成部材について説明する。
【0024】
[メタリック層]
メタリック層は、アルミニウムフレークと、アクリルウレタン樹脂と、を含む。
【0025】
メタリック層は、2層以上形成されるが、フィルムの薄膜化の観点から2~4層であることが好ましく、2~3層であることがより好ましく、2層であることがさらに好ましい。
【0026】
各メタリック層のアルミニウムフレークおよびアクリルウレタン樹脂の含有量、各成分種などは同じであってもよいし、異なるものであってもよい。
【0027】
メタリック層は着色されていてもよく、着色顔料を含んでいてもよい。着色顔料を配合する場合、メタリック層中、30質量%以下であることが好ましい。
【0028】
各メタリック層の厚さは、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、20μm以上であることがさらにより好ましい。各メタリック層の厚さが上記下限以上であることで、層内でアルミニウムフレークが種々の方向に配向しやすく、フリップフロップ性が高まる。各メタリック層の厚さは、薄膜化の観点から、100μm以下であることが好ましく、80μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることがさらにより好ましい。複数のメタリック層の厚さは、同一であっても、異なるものであってもよい。
【0029】
メタリック層には、必要に応じて、任意成分を適宜含んでいてもよい。
【0030】
(アクリルウレタン樹脂)
アクリルウレタン樹脂は、ウレタンプレポリマーと(メタ)アクリル酸アルキルエステルとを反応させて得られる重合体、またはその重合体を架橋剤で架橋させてなる架橋体である。また、アクリルウレタン樹脂は熱可塑性であることが好ましい。
【0031】
アクリルウレタン樹脂の分子量は、特に制限されるものではないが、重量平均分子量(Mw)が50,000~1,000,000であることが好ましく、500,000~1,000,000であることがより好ましい。当該重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算の値である。
【0032】
アクリルウレタン樹脂は、溶剤可溶性であることが好ましい。アクリルウレタン樹脂が溶剤可溶性であることで、後述の溶媒キャスト法によって製膜をすることができるので好ましい。ここで、溶剤可溶性とは、室温(25℃)でトルエン100質量部に対して5質量部以上溶解することを指す。
【0033】
アクリルウレタン樹脂の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、特開平9-25324号に記載されたメルカプト基含有ウレタンプレポリマーと(メタ)アクリル酸アルキルエステルを少なくとも含むビニル化合物を反応させる方法や、特開平10-1524号等に記載されたエチレン性不飽和二重結合基を両末端に有するウレタンプレポリマーと(メタ)アクリル酸アルキルエステルを少なくとも含むビニル系化合物を反応させる方法により得られるものである。
【0034】
特開平9-25324号に記載された方法で使用されるメルカプト基含有ウレタンプレポリマーは、有機ジイソシアネートと1分子中に1個以上のメルカプト基と1個以上の水酸基を有する化合物及び1分子中に2個以上の活性水素基を有する化合物とを反応させることによって得られる。
【0035】
有機ジイソシアネートとしては、特に制限はなく、公知の芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート等を挙げることができる。
【0036】
1分子中に2個以上の活性水素基を有する化合物とは、水酸基、イミノ基、アミノ基などのイソシアネート基と反応しうる活性水素基を分子内に2個以上有するポリオール、ポリアミン、アミノアルコール等であるが、ポリオールのうち長鎖ポリオール単独あるいはこれと短鎖ポリオールとの併用が、得られる共重合体の物性を調節しやすいので好ましい。
【0037】
長鎖ポリオールとしては、特に制限はないが、官能基数の低いジオール類(高分子量ジオール化合物)が適している。高分子量ジオール化合物の例としては、ポリエーテルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリエステルジオール、ポリエステルアミドジオール、ポリエーテル・エステルジオール等を挙げることができる。
【0038】
ポリエーテルジオールとしては、ポリオキシエチレングリコール(以下PEGと略記)、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロック共重合ジオール、ポリオキシエチレンオキシテトラメチレンブロック共重合ジオール;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、4,4’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-ジフェニルプロパンなどの低分子グリコールのエチレンオキシド付加物;数平均分子量2,000以下のPEGと、ジカルボン酸[炭素数4~10の脂肪族ジカルボン酸(例えばコハク酸、アジピン酸、セバシン酸など)、炭素数8~15の芳香族ジカルボン酸(例えばテレフタル酸、イソフタル酸など)など]の1種以上とを反応させて得られる縮合ポリエーテルエステルジオール;およびこれらの2種以上混合物が挙げられる。
【0039】
ポリカーボネートジオールとしては、例えばポリヘキサメチレンカーボネートジオールが挙げられる。
【0040】
ポリエステルジオールとしては、低分子ジオールおよび/または数平均分子量1,000以下のポリエーテルジオールと前述のジカルボン酸の1種以上とを反応させて得られる縮合ポリエステルジオールや、炭素数4~12のラクトンの開環重合により得られるポリラクトンジオールなどが挙げられる。上記低分子ジオールとして上記ポリエーテルジオールの項で例示した低分子グリコールなどが挙げられる。上記数平均分子量1,000以下のポリエーテルジオールとしてはポリオキシプロピレングリコール、PTMGなどが挙げられる。上記ラクトンとしては、例えばε-カプロラクトン、γ-バレロラクトンなどが挙げられる。該ポリエステルジオールの具体例としては、ポリエチレンアジペートジオール、ポリブチレンアジペートジオール、ポリネオペンチレンアジペートジオール、ポリ(3-メチル-1,5-ペンチレンアジペート)ジオール、ポリヘキサメチレンアジペートジオール、ポリカプロラクトンジオールおよびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0041】
長鎖ポリオールの重量平均分子量は、500~200,000であることが好ましい。当該重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算の値である。
【0042】
長鎖ポリオールは、合成品、市販品のいずれを使用してもよい。市販品としては、東ソー株式会社製ニッポラン(登録商標)981、980R、982R、976、965、963、964、968等が挙げられる。
【0043】
長鎖ポリオールは、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0044】
短鎖ポリオールとしては、特に制限はなく、長鎖ポリオールの原料としてなるジオール、トリオール類を用いることができる。
【0045】
ポリアミンとしては、特に制限はなく、公知の芳香族ジアミン、脂環式ジアミン、ポリエーテルポリアミン等を挙げることができる。
【0046】
1分子中に1個以上のメルカプト基と1個以上の水酸基を有する化合物としては、1分子中に1個以上のメルカプト基と1個の水酸基を有する化合物、あるいはメルカプトカルボン酸と多価アルコールとからなるエステルを挙げることができる。
【0047】
以上説明したメルカプト基含有ウレタンプレポリマーのうち、特に、脂肪族ジイソシアネートとポリカーボネートポリオールとから得られたメルカプト基含有ウレタンプレポリマーが、耐候性の点から好ましい。
【0048】
脂肪族ジイソシアネートの具体例としては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等を、ポリカーボネートポリオールの具体例としては、1,4-ブチレングリコール、1,5-ペンタングリコール、ヘキサングリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等とジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネートなどのカーボネート類との反応から得られるもの等を例示することができる。
【0049】
特開平10-1524号等に記載された方法で使用されるエチレン性不飽和二重結合基を両末端に有するウレタンプレポリマーは、まず、NCO末端を有し分子量1万~10万の範囲にある直鎖型ウレタンセグメントを作り、次に両末端のNCOにこれと反応し得る水酸基一個を含む(メタ)アクリル酸アルキルエステルの理論量を付加させることにより得られる。
【0050】
ウレタンセグメントを作るには常法に従い、すなわち、長鎖ポリオール、短鎖ポリオール、場合に応じ鎖延長剤を併用し、これらに生成する共重合体の分子量に応じ、理論量の有機ジイソシアネートを加えて反応することによって得られ、この反応は有機溶剤中で行なわれる。
【0051】
ここで使用する長鎖ポリオール、および短鎖ポリオールとしては、メルカプト基含有ウレタンプレポリマーの製造に使用し得るものとして例示したものと同じものを例示することができる。すなわち、ポリエステルジオール、ポリエステルアミドジオール、ポリエーテルジオール、ポリエーテル・エステルジオール、ポリカーボネートジオール等が挙げられる。これらのうち、ポリカーボネートジオールを用いることが好ましい。
【0052】
また、鎖延長剤としては、公知の単分子ジアミン、芳香族ジアミン、ポリエーテルポリアミン等を例示することができる。
【0053】
両末端のNCOにこれと反応し得る水酸基一個を含む(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレートなどが挙げられる。
【0054】
反応で用いられる有機溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤等を例示することができる。また、反応を促進するために、触媒として、ジブチル錫ジラウレート等の金属触媒やトリエチルアミン等の三級アミン触媒等を用いることもできる。
【0055】
一方、メルカプト基含有ウレタンプレポリマーやエチレン性不飽和二重結合基を両末端に有するウレタンプレポリマー(以下、これらを併せて「ウレタンプレポリマー」と記す。)と反応させる(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、特に制約はなく、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-又はiso-ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、必要に応じて、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の長鎖アルキルアクリレート類、長鎖アルキルメタクリレート類や、スチレン、クロロスチレン、メチルスチレン等のビニル系化合物も併用することができる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0056】
また、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、活性水素基を含有する2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、アミノエチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレートのカプロラクトン付加体、などの活性水素基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いることができる。
【0057】
ウレタンプレポリマーと(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの反応は、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)のようなアゾ化合物あるいはベンゾイルパーオキサイドのような過酸化物などを開始剤として添加し、通常の有機溶剤中でラジカル重合を行う。
【0058】
メルカプト基含有ウレタンプレポリマーの場合は末端又は側鎖のメルカプト基で、また、エチレン性不飽和二重結合基を両末端に有するウレタンプレポリマーの場合は、両端不飽和二重結合で容易にラジカルを発生し、これを起点として(メタ)アクリル酸アルキルエステルの連鎖重合反応が行われ、アクリルウレタン樹脂を生成する。
【0059】
有機溶剤は一般的なトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤を例示できるが、それらに限定されるものではない。
【0060】
ウレタンプレポリマーと(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの量比は、特に限定されるものではないが、質量比でウレタンプレポリマー:(メタ)アクリル酸アルキルエステル=35:65~65:35の範囲である必要があり、特に、40:60~60:40の範囲が好ましい。
【0061】
ウレタンプレポリマーと(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの反応に用いられる開始剤量は(メタ)アクリル酸アルキルエステル100質量部に対し、0.5~10質量部が好ましい。
【0062】
また、重合体を形成する際、上記のウレタンプレポリマー、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの他に、これらと共重合可能な単量体(以下、「他の単量体」とも称する)を使用してもよい。他の単量体の例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸などのカルボキシル基含有単量体;スチレン、置換スチレンなどの芳香族ビニル化合物;酢酸ビニルなどのビニルエステル類;アクリルアミド、メタアクリルアミド、N-ビニルピロリドン、N,N-ジメチルアクリルアミドなどのアミド基含有単量体;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリロイルモルホリンなどのアミノ基含有単量体などが挙げられる。これらの単量体に含まれる反応性基も、後述の架橋剤と架橋して、架橋構造を形成しうる。他の単量体の使用量は、使用される全単量体の合計使用量に対して、5質量%以下であることが好ましい(下限:0質量%)。
【0063】
アクリルウレタン樹脂は市販品を用いてもよい。市販品としては、亜細亜工業社製のエクセロール910等が挙げられる。
【0064】
また、アクリルウレタン樹脂は、上記のようにして得られた重合体を架橋剤で架橋させてなる架橋体であってもよい。
【0065】
架橋剤としては、重合体に導入される反応性基の種類に応じて、公知の架橋剤を適宜使用でき、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート系架橋剤などが挙げられる。
【0066】
イソシアネート系架橋剤としては、上記ジイソシアネート化合物、上記ジイソシアネート化合物とトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体、上記ジイソシアネート化合物のビウレット体やイソシアヌレート体などのイソシアネート誘導体が挙げられる。
【0067】
また、エポキシ系架橋剤としてはポリグリシジルアミン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、アルコール型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0068】
金属キレート系架橋剤としては、アルミニウム、チタン、ニッケル、クロム、鉄、亜鉛、コバルト、マンガン、ジルコニウム等の金属のアセチルアセトネート錯体等が挙げられる。
【0069】
架橋剤は、1種単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0070】
アクリルウレタン樹脂の含有量は、各メタリック層を構成する固形分100質量%に対して、好ましくは、70~99質量%であり、より好ましくは80~95質量%である。
【0071】
(アルミニウムフレーク)
アルミニウムフレークは、粒子の形状が鱗片状のアルミニウム粒子である。
【0072】
アルミニウムフレークの平均粒子径は、メタリックの観点から、5~50μmであることが好ましく、15~30μmであることがより好ましい。アルミニウムフレークは鱗片状であるため、その平均粒子径は、粒子の大きな面をなす側の平均粒子径を意味するものとし、粒子100個をSEMなどの観察手段を用いて観察し、個々の粒子径を測定したのち、その合計を個数で除して「平均粒子径」として採用するものとする。
【0073】
また、アルミニウムフレークの平均二次粒子径は、30~1000μmであることが好ましく、100~500μmであることがより好ましい。アルミニウムフレークの平均二次粒子径がかような範囲にあることで、粒子が粒状となり、アルミフレークが一定数以上凝集体で存在する。ゆえに、外観のフリップフロップ性が高まる。アルミニウムフレークの平均二次粒子径は、SEMなどを用いた断面写真から、粒子凝集体を10個選択し、各凝集体の最大径を測定し、その平均を算出して得られた値とする。
【0074】
さらに、アルミニウムフレークの平均二次粒子径/平均粒子径が、3以上であることが好ましく、10~50であることが好ましい。アルミニウムフレークの平均二次粒子径/平均粒子径がかような範囲にあることで、外観上、粒感が得られ、外観のフリップフロップ性が高まる。
【0075】
アルミニウムフレークの含有量は、各メタリック層を構成する固形分100質量%に対して、好ましくは1~30質量%であり、より好ましくは1~20質量%である。アルミニウムフレークが上記範囲内にあることで、適度なメタリックが得られるとともに、アルミニウムフレークの過度な凝集を抑制することができる。
【0076】
アルミニウムフレークとしては、粉砕助剤としてステアリン酸を用いたリーフィング型、粉砕助剤としてオレイン酸を用いたノンリーフィング型、アクリル系樹脂等をコートした樹脂コート型等が挙げられる。
【0077】
アルミニウムフレークは通常、有機溶剤等に分散してアルミニウムペーストとして使用される。このようなアルミニウムペーストは、市販品を用いてもよく、市販品としては、旭化成社製 旭化成アルミペースト(商品名)の樹脂コートグレードとしてCRグレード、HRグレード、PV-Hグレード、東洋アルミ社製リーフィングアルペースト(登録商標)、ノンリーフィングアルペースト(登録商標)、光輝性アルペースト(登録商標)、樹脂コートアルペースト(登録商標)などが挙げられる。
【0078】
[粘着剤層]
メタリック調加飾フィルムは粘着剤層を含んでいてもよい。粘着剤層を含むことで、被着体にメタリック調加飾フィルムを容易に貼付することができる。
【0079】
粘着剤層を構成する粘着剤としては、特に制限はなく、メタリック調加飾フィルムなどの粘着剤層に慣用されているものの中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。例えばアクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤及びポリエステル系粘着剤などを用いることができる。上記粘着剤は1種単独で用いても2種以上併用してもよい。
【0080】
アクリル系粘着剤を構成するアクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを単量体主成分とし、必要に応じて(メタ)アクリル酸アルキルエステルに共重合可能な単量体(共重合性単量体)を用いることにより形成される。
【0081】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0082】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルに共重合可能な単量体(共重合性単量体)として、架橋性官能基を有する単量体を用いることが好ましく、具体的には、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルなどの水酸基含有単量体;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などのカルボキシル基含有単量体;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリロイルモルホリンなどのアミノ基含有単量体などを挙げることができる。
【0083】
その他の共重合性単量体としては、酢酸ビニル、スチレンなどを挙げることができる。
【0084】
アクリル系ポリマーの重量平均分子量は特に限定されるものではないが、10万~100万であることが好ましい。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算の値である。
【0085】
粘着剤は、アクリル系ポリマーの他、架橋剤を含むことが好ましい。架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート系架橋剤などが挙げられる。架橋剤の添加量は、アクリル系ポリマー100質量部に対して、0.001~10質量部であることが好ましく、0.01~0.5質量部であることがより好ましい。
【0086】
粘着剤層には、必要に応じ、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、タッキファイヤー、レベリング剤、消泡剤等を適宜添加することができる。
【0087】
粘着剤層の厚みは、特に限定されないが、粘着性および薄膜化の観点から、10~50μmの範囲が好ましい。
【0088】
[剥離ライナー]
メタリック調加飾フィルムは剥離ライナーを含んでいてもよい。剥離ライナーは、被着体にメタリック調加飾フィルムを貼付する前に使用され、粘着剤層を保護し、使用前の粘着性の低下を防止する機能を有する部材である。
【0089】
剥離ライナーとしては、特に限定されるものではないが、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンフィルムなどのプラスチックフィルム;上質紙、グラシン紙、クラフト紙、クレーコート紙などの紙が挙げられる。
【0090】
剥離ライナーの厚みは、通常10~400μm程度である。また、剥離ライナーの表面には、粘着剤層からの剥離性を向上させるためのシリコーンなどから構成される剥離剤からなる層が設けられてもよい。かような層が設けられる場合の当該層の厚みは、通常0.01~5μm程度である。
【0091】
[透明樹脂層]
メタリック調加飾フィルムは、メタリック層の粘着剤層面と相対する側の面に透明樹脂層を有していてもよい。透明樹脂層を有することで、メタリック層が外部の傷などから保護される。
【0092】
透明樹脂層を構成する材料は、車体や部品の三次元形状に追従できる程度で延伸可能であることが好ましい。具体的な材料として特に制限はないが、例えば、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルなどが挙げられる。これらのうち、延伸性(立体形状追従性)、耐候性を考慮すると、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂が好ましい。ここで、上記材料は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。また、透明樹脂層は、単独の樹脂層から構成されてもよいし、異なる種類の樹脂層が積層されてなるものであってもよい。
【0093】
透明樹脂層の厚みは、特に制限されないが、延伸性(立体形状追従性)、破断強度、耐擦過性などを考慮すると、5~200μmであることが好ましく、10~150μmであることがより好ましい。
【0094】
透明樹脂層はメタリック層を保護する機能を発揮しうるものであることから、透明樹脂層は高い透明性を有するものであることが視認性の確保の観点からは必要である。具体的には、透明樹脂層のJIS K7361:1997に準拠して測定される全光線透過率は、好ましくは70%以上であり、より好ましくは80%以上である。
【0095】
透明樹脂層の汚染を防ぐために、透明樹脂層の上にフッ素樹脂層を積層することができる。フッ素樹脂層を積層する方法は、透明樹脂層の上にフッ素樹脂を含む塗料を塗布する方法、透明樹脂層とフッ素樹脂層を溶融共押出する方法、透明樹脂層の上に接着剤層を介してフッ素樹脂フィルムを貼り合せる方法等が挙げられる。
【0096】
フッ素樹脂としては、ポリフッ化ビニリデン、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルコキシエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン等が挙げられる。
【0097】
[その他の層]
第一実施形態のメタリック調加飾フィルムは、上記粘着剤層および剥離ライナーの代わりにABS樹脂等の熱融着性のフィルムを積層させてもよい。これにより、熱融着によって、被着体にメタリック調加飾フィルムを貼付させることができる。
【0098】
[製造方法]
第一実施形態のメタリック調加飾フィルムの製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法を適宜改良して用いることができる。中でも、第一実施形態のメタリック調加飾フィルムの製造方法として、溶媒キャスト法を用いることが好ましい。すなわち、本発明の他の実施形態は、アルミニウムフレークおよびアクリルウレタン樹脂を溶媒に分散した分散液を調製し、キャスティングフィルム上に当該分散液を塗布することを含む、第一実施形態のメタリック調加飾フィルムの製造方法である。具体的には、アルミニウムフレーク、アクリルウレタン樹脂、およびその他の任意成分を溶媒に分散した分散液(以下、メタリック層形成用分散液とも称する)を調製し、この分散液をキャスティングフィルム(工程フィルムとも称される)上に、所定の乾燥厚さになるように塗工することを含む、製造方法が好ましい。
【0099】
このような製造方法によれば、キャスティングフィルム上に、複数のメタリック層、粘着剤層等が順次積層される。そして、特にメタリック層上に他のメタリック層を形成する際には、キャスティングフィルムを介してメタリック層を固定した状態で、他のメタリック層を積層することになる。一方、キャスティングフィルムを用いずに、溶媒キャスト法以外の方法でメタリック層を形成する場合、通常メタリック層の延伸工程が入る。延伸工程によりフィルムが延伸されると、上述のようにアルミフレークが存在しない場所が増加するため、フリップフロップ性の低下が起きやすくなる。ゆえに、溶媒キャスト法によれば、メタリック調加飾フィルムの外観に悪影響を及ぼさないという点で、好ましい。
【0100】
メタリック層形成用分散液を製造する際の混合順序は特に限定されず、アルミニウムフレーク、アクリルウレタン樹脂、およびその他の任意成分を溶媒に一括に添加して混合する方法;アクリルウレタン樹脂を溶媒に添加後に、アルミニウムフレーク、およびその他の任意成分を添加・混合する方法などが挙げられるが、アルミニウムフレークの分散性の観点から、アクリルウレタン樹脂を溶媒に添加後に、アルミニウムフレーク、およびその他の任意成分を添加・混合する方法が好ましい。
【0101】
溶媒キャスト法において用いられる溶媒としては、例えば、ミネラルスピリット、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;クロルベンゼン、トリクロルベンゼン、パークロルエチレン、トリクロルエチレンなどのハロゲン化炭化水素;メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブタノールなどのアルコール類;n-プロパノン、2-ブタノン;などのケトン類;酢酸エチル、酢酸プロピル;などのエステル類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコール類およびそのエーテル;N,N-ジメチルホルムアミドなどが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。これらの溶媒は1種単独で用いても2種以上併用してもよい。
【0102】
溶媒キャスト法における溶媒の使用量は、樹脂100質量部に対して、通常100~400質量部、好ましくは150~350質量部である。
【0103】
キャスティングフィルムは、メタリック調加飾フィルムの完成後には剥離されるものである。キャスティングフィルムの材質は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン等の基材に、アルキド樹脂、シリコーン等の剥離層が積層されたものが例示される。キャスティングフィルムの厚さは、3~200μm、好ましくは、16~100μmである。フィルム表面はより平滑性が高いほど、好ましい。
【0104】
分散液の粘度は、アルミニウムの分散性が制御しやすく、フリップフロップ調にしやすくなるように適宜設定すればよい。
【0105】
分散液をキャスティングフィルム上に流延する塗布装置としては、特に限定されるものではないが、例えば、コンマコーター、リップコーター、ダイコーター、ドクターブレードコーター、バーコーター、ロールコーター等のコーターが挙げられる。次いで、加熱により溶媒を除去して膜を形成する。加熱条件は溶媒が除去される条件であれば特に限定されないが、通常80~180℃程度に加熱・乾燥する。
【0106】
このようにして形成されたキャスティングフィルム、メタリック層の積層体のメタリック層上に、同様にして二層目以降のメタリック層を積層して、メタリック層積層体を得ることができる。
【0107】
また、粘着剤層の形成方法は特に限定されず、好適には、剥離ライナーに粘着剤組成物を塗布し、粘着剤層を剥離ライナー上に形成する。粘着剤組成物の塗布方法は特に限定されず、例えばロールコーター、ナイフコーター、エアーナイフコーター、バーコーター、ブレードコーター、スロットダイコーター、リップコーター、グラビアコーターなどの公知の塗布装置を用いて塗布することができる。粘着剤組成物の塗布厚としては、乾燥後で、通常10~100μm、好ましくは20~60μmである。粘着剤を塗布後、乾燥処理を行うことによって、粘着剤層が形成される。この際の乾燥条件としては特に限定されず、通常60~150℃にて10~60秒の条件で行われる。
【0108】
このようにして得られた粘着剤層、剥離ライナーの積層体の粘着剤層面に、上記メタリック層積層体の表層のメタリック層を添着し、キャスティングフィルムを除去することで、メタリック調加飾フィルムを得ることができる。
【実施例
【0109】
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いる場合があるが、特に断りがない限り、「質量部」あるいは「質量%」を表す。また、特記しない限り、各操作は、室温(25℃)で行われる。
【0110】
[実施例1]
1.メタリック層の作製
アクリルウレタン樹脂液(エクセロール910、亜細亜工業社製、トルエン溶液)に樹脂コート型アルミフレークペースト(HR-9901、平均粒子径20μm、旭化成社製)をアクリルウレタン樹脂固形分100質量部にアルミフレークペースト固形分6質量部を混合して、メタリック層形成用分散液を得た。
【0111】
キャスティングフィルム(PET;50μm)上にナイフコーター法によってメタリック層形成用分散液を塗布し、120℃にて2分間乾燥処理を行った。これにより、キャスティングフィルムの表面に乾燥膜厚30μmの第1のメタリック層を形成した。
【0112】
次いで、形成された第1のメタリック層上にメタリック層形成用分散液を塗布し、120℃にて2分間乾燥処理を行った。これにより、第1のメタリック層上に乾燥膜厚30μmの第2のメタリック層を形成した。
【0113】
2.粘着剤層の形成
還流器および攪拌機を備えたフラスコに、アクリル酸ブチル95質量部、アクリル酸5質量部、過酸化物系開始剤およびトルエン(溶剤)を混合し、窒素置換を行いながら加温し、重合を行って、アクリル系ポリマーを得た(重量平均分子量Mw=500,000)。
【0114】
上記アクリル系ポリマー固形分100質量部、およびエポキシ系架橋剤(商品名:TETRAD-X、三菱ガス化学社製)0.01質量部を混合して粘着剤組成物を得た。
【0115】
粘着剤組成物を剥離ライナー(厚さ170μm)にナイフコーターを用いて乾燥後膜厚が20μmとなるように塗工し、乾燥して粘着剤層を剥離ライナー上に形成した。
【0116】
上記積層体の第2のメタリック層面に上記粘着剤層を転写し、キャスティングフィルムを剥離してメタリック調のメタリック調加飾フィルムを得た。
【0117】
なお、実施例1のメタリック調加飾フィルムにおける平均二次粒子径は、300μmであった。
【0118】
[比較例1]
第2のメタリック層を形成しなかったこと以外は実施例1と同様にしてメタリック調加飾フィルムを得た。
【0119】
なお、比較例1のメタリック調加飾フィルムにおける平均二次粒子径は、300μmであった。
【0120】
[比較例2]
比較例1において、第1のメタリック層の乾燥膜厚を60μmとしたこと以外は、比較例1と同様にしてメタリック調加飾フィルムを得た。
【0121】
[比較例3]
比較例1において、メタリック層形成用分散液のアルミフレークペースト含有量をアクリルウレタン樹脂固形分100質量部に対してアルミフレークペースト固形分12質量部としたこと以外は、比較例1と同様にしてメタリック調加飾フィルムを得た。
【0122】
[評価方法]
メタリック調加飾フィルム延伸前後のL表色系におけるL値、a値、b値を測定し、ΔE値を求めた。
【0123】
詳細には、メタリック調加飾フィルムから剥離ライナーを除去し、黒色塗装板にメタリック調加飾フィルムを貼付した。分光色彩計(日本電色工業社製SE6000)を使用して、L値、a値、b値を測定した。
【0124】
延伸したメタリック調加飾フィルムについても同様にしてL値、a値、b値を求めた。なお、メタリック調加飾フィルムの延伸は、延伸面積比で200%となるように行った。
【0125】
上記延伸前後のL値、a値、b値からΔE値を求めた。
【0126】
実施例1のメタリック調加飾フィルムのΔE=0.37、比較例1のメタリック調加飾フィルムのΔE=3.01、比較例2のメタリック調加飾フィルムのΔE=2.10、比較例3のメタリック調加飾フィルムのΔE=1.85であった。
【0127】
以上の結果より、本発明のメタリック調加飾フィルムは、延伸した場合であっても、外観の変化が少ないことがわかった。
【符号の説明】
【0128】
10、10’ メタリック調加飾フィルム、
20 第1のメタリック層、
30 第2のメタリック層、
40 粘着剤層、
50 剥離ライナー、
60 被着体、
70 アルミフレーク、
80 第2のメタリック層のアルミフレーク非凝集部。
図1A
図1B
図2