IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オルガノ株式会社の特許一覧

特許7576959情報処理装置、情報処理システム、情報処理方法およびプログラム
<>
  • 特許-情報処理装置、情報処理システム、情報処理方法およびプログラム 図1
  • 特許-情報処理装置、情報処理システム、情報処理方法およびプログラム 図2
  • 特許-情報処理装置、情報処理システム、情報処理方法およびプログラム 図3
  • 特許-情報処理装置、情報処理システム、情報処理方法およびプログラム 図4
  • 特許-情報処理装置、情報処理システム、情報処理方法およびプログラム 図5
  • 特許-情報処理装置、情報処理システム、情報処理方法およびプログラム 図6
  • 特許-情報処理装置、情報処理システム、情報処理方法およびプログラム 図7
  • 特許-情報処理装置、情報処理システム、情報処理方法およびプログラム 図8
  • 特許-情報処理装置、情報処理システム、情報処理方法およびプログラム 図9
  • 特許-情報処理装置、情報処理システム、情報処理方法およびプログラム 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理システム、情報処理方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20241025BHJP
   G01N 30/00 20060101ALI20241025BHJP
   C02F 1/42 20230101ALI20241025BHJP
   B01J 47/02 20170101ALI20241025BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20241025BHJP
【FI】
G06T7/00 350B
G01N30/00 J
C02F1/42 B
B01J47/02
G06N20/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020183558
(22)【出願日】2020-11-02
(65)【公開番号】P2022073524
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】木田 卓
(72)【発明者】
【氏名】橋本 浩一郎
【審査官】吉田 千裕
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2022/080416(WO,A1)
【文献】特開平04-083538(JP,A)
【文献】国際公開第2019/059310(WO,A1)
【文献】特開2011-212608(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00
G01N 30/00
C02F 1/42
B01J 47/02
G06N 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水が流入され、処理水として流出させる容器に充填された充填物を撮像した画像を示す画像データを取得する画像データ取得部と、
前記画像データ取得部が取得した画像データを、機械学習を行った学習済みモデルに入力することで、該画像データに含まれる前記充填物の状態を算出する算出部と、
前記算出部が行った算出の結果を出力する出力部とを有し、
前記算出部は、前記学習済みモデルを用いて、前記画像データに含まれる前記充填物のうち、劣化の度合いが基準を超えている充填物を特定し、前記学習済みモデルを用いて、前記特定した前記劣化の度合いが基準を超えている充填物の数の割合に基づいて前記充填物の劣化の変化を予測し、該予測した変化に基づいて該充填物の交換時期を算出し、
前記出力部は、前記算出部が算出した交換時期を出力する情報処理装置。
【請求項2】
請求項に記載の情報処理装置において、
前記出力部は、前記算出部が算出した割合があらかじめ設定された閾値を超えた場合、所定の通知を行う情報処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の情報処理装置において、
前記算出部は、前記学習済みモデルを用いて、前記容器の入口と出口とのそれぞれの前記水の圧力の互いの差圧と、前記算出した割合とに基づいて前記充填物の劣化の変化を予測する情報処理装置。
【請求項4】
請求項1からのいずれか1項に記載の情報処理装置において、
前記充填物は、イオン交換樹脂である情報処理装置。
【請求項5】
カメラと、情報処理装置とを有し、
前記カメラは、
水が流入され、処理水として流出させる容器に充填された充填物の画像を撮像する撮像部と、
前記撮像部が撮像した画像を示す画像データを前記情報処理装置へ送信する送信部とを有し、
前記情報処理装置は、
前記送信部から送信されてきた前記画像データを取得する画像データ取得部と、
前記画像データ取得部が取得した画像データを、機械学習を行った学習済みモデルに入力することで、該画像データに含まれる前記充填物の状態を算出する算出部と、
前記算出部が行った算出の結果を出力する出力部とを有し、
前記算出部は、前記学習済みモデルを用いて、前記画像データに含まれる前記充填物のうち、劣化の度合いが基準を超えている充填物を特定し、前記学習済みモデルを用いて、前記特定した前記劣化の度合いが基準を超えている充填物の数の割合に基づいて前記充填物の劣化の変化を予測し、該予測した変化に基づいて該充填物の交換時期を算出し、
前記出力部は、前記算出部が算出した交換時期を出力する情報処理システム。
【請求項6】
請求項に記載の情報処理システムにおいて、
前記容器は、窓部を有し、
前記カメラは、前記窓部を通して前記容器に充填された前記充填物の画像を撮像する情報処理システム。
【請求項7】
水が流入され、処理水として流出させる容器に充填された充填物を撮像した画像を示す画像データ取得する処理と、
前記取得した画像データを、機械学習を行った学習済みモデルに入力することで、該画像データに含まれる前記充填物の状態を算出する処理と、
前記学習済みモデルを用いて、前記画像データに含まれる前記充填物のうち、劣化の度合いが基準を超えている充填物を特定する処理と、
前記学習済みモデルを用いて、前記特定した前記劣化の度合いが基準を超えている充填物の数の割合に基づいて前記充填物の劣化の変化を予測する処理と、
前記予測した変化に基づいて前記充填物の交換時期を算出する処理と、
前記算出した交換時期を出力する処理とを行う情報処理方法。
【請求項8】
コンピュータに、
水が流入され、処理水として流出させる容器に充填された充填物を撮像した画像を示す画像データ取得する手順と、
前記取得した画像データを、機械学習を行った学習済みモデルに入力することで、該画像データに含まれる前記充填物の状態を算出する手順と、
前記学習済みモデルを用いて、前記画像データに含まれる前記充填物のうち、劣化の度合いが基準を超えている充填物を特定する手順と、
前記学習済みモデルを用いて、前記特定した前記劣化の度合いが基準を超えている充填物の数の割合に基づいて前記充填物の劣化の変化を予測する手順と、
前記予測した変化に基づいて前記充填物の交換時期を算出する手順と、
前記算出した交換時期を出力する手順とを実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理システム、情報処理方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
イオン交換樹脂は、工業用水や地下水等の水に含まれるイオンを除去し、水中の溶解塩類を低減するための脱塩手段として広く用いられている。このようなイオン交換樹脂は、使用とともに物理的劣化が生じ、生じた物理的劣化により所定の性能を満たさなくなった場合、交換が必要となる。
【0003】
一般的には、イオン交換樹脂の物理的劣化を判定するには、イオン交換樹脂が充填されているイオン交換装置(樹脂塔や槽を含む容器)の運用を一旦停止させ、停止したイオン交換装置からイオン交換樹脂を分離採取し、分離採取したイオン交換樹脂を、顕微鏡などを用いて観察し、物理的劣化の度合いを判定している。また、イオン交換装置から分離採取したイオン交換樹脂に所定の液体を接触させ、接触させた後の液体の成分を分析することで劣化度合いを評価する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-228134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような技術においては、イオン交換樹脂の物理的劣化を判定するには、運用中のイオン交換装置を停止させなければならない。また、イオン交換樹脂の物理的劣化についての判定結果を得るまでに時間を要してしまう。そのため、樹脂塔等の容器に充填された充填物の状態を容易に認識することができないという問題点がある。
【0006】
本発明の目的は、容器に充填された充填物の状態を容易に認識することができる情報処理装置、情報処理システム、情報処理方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の情報処理装置は、
水が流入され、処理水として流出させる容器に充填された充填物を撮像した画像を示す画像データを取得する画像データ取得部と、
前記画像データ取得部が取得した画像データを、機械学習を行った学習済みモデルに入力することで、該画像データに含まれる前記充填物の状態を算出する算出部と、
前記算出部が行った算出の結果を出力する出力部とを有する。
【0008】
また、本発明の情報処理システムは、
カメラと、情報処理装置とを有し、
前記カメラは、
容器に充填された充填物の画像を撮像する撮像部と、
前記撮像部が撮像した画像を示す画像データを前記情報処理装置へ送信する送信部とを有し、
前記情報処理装置は、
前記送信部から送信されてきた前記画像データを取得する画像データ取得部と、
前記画像データ取得部が取得した画像データを、機械学習を行った学習済みモデルに入力することで、該画像データに含まれる前記充填物の状態を算出する算出部と、
前記算出部が行った算出の結果を出力する出力部とを有する。
【0009】
また、本発明の情報処理方法は、
容器に充填された充填物を撮像した画像を示す画像データ取得する処理と、
前記取得した画像データを、機械学習を行った学習済みモデルに入力することで、該画像データに含まれる前記充填物の状態を算出する処理と、
前記算出の結果を出力する処理とを行う。
【0010】
また、本発明のプログラムは、
コンピュータに、
容器に充填された充填物を撮像した画像を示す画像データ取得する手順と、
前記取得した画像データを、機械学習を行った学習済みモデルに入力することで、該画像データに含まれる前記充填物の状態を算出する手順と、
前記算出の結果を出力する手順とを実行させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明においては、容器に充填された充填物の状態を容易に認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の情報処理システムの第1の実施の形態を示す図である。
図2図1に示したカメラの内部構成の一例を示す図である。
図3図1に示した情報処理装置の内部構成の一例を示す図である。
図4図3に示した学習済みモデルにて学習された使用日数の経過に対する球形率の変化の一例を示す図である。
図5図1に示した情報処理装置における情報処理方法の一例を説明するためのフローチャートである。
図6図1に示した情報処理装置における情報処理方法の他の例を説明するためのフローチャートである。
図7】本発明の情報処理システムの第2の実施の形態を示す図である。
図8図7に示した情報処理装置の内部構成の一例を示す図である。
図9図7に示した情報処理装置における情報処理方法の一例を説明するためのフローチャートである。
図10】本発明の情報処理システムの第3の実施の形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
【0014】
図1は、本発明の情報処理システムの第1の実施の形態を示す図である。本形態における情報処理システムは図1に示すように、カメラ100と、情報処理装置200とを有する。容器300は、水が流入され、処理された水を処理水として流出させる。容器300には、例えば、イオン交換樹脂が充填されたイオン交換樹脂塔や槽が含まれる。また、容器300のサイズは特に限定せず、小型のものであっても良いし、大型のものであっても良い。容器300の形状や素材は、特に限定しないが、例えば、全面がアクリル板で組み上げられた樹脂カラムでも良い。また、容器300には、カメラ100が外部から内部の充填物を撮像できるように、窓部310-1,310-2が設けられている。図1に示した例では、窓部310-1,311-2が2つ設けられているが、その数は限定しない。窓部310-1,311-2は、容器300の窓部310-1,311-2以外の部分よりも内部の充填物を外部から鮮明に捉えることができるような構造を持つ。例えば、窓部310-1,311-2は、容器300に開けられた孔部であっても良いし、透明な部材から構成されるものであっても良い。容器300に充填される充填物は特に限定しないが、例えば、イオン交換樹脂や活性炭、合成吸着剤、ゼオライトなどで良い。容器300の入口と出口とのそれぞれには、容器300に設けられた流路内の水の圧力を測定する圧力計400-1,400-2それぞれが設けられている。圧力計400-1,400-2は、容器300に流入する前の水の圧力と、容器300から流出された後の水の圧力との差圧を算出できるものであれば良い。圧力計400-1,400-2における測定方式は特に限定せず、デジタル方式を用いる場合は、圧力計400-1,400-2は、測定したデジタル値をPLC(Programmable Logic Controller)のような制御装置へ送信しても良いし、機械学習の処理を実施する演算装置へ送信しても良い。本形態においては、圧力計400-1,400-2は、測定した値を情報処理装置200へ送信する。
【0015】
カメラ100は、容器300内に充填された充填物の画像を窓部310-1,310-2を通して撮像する。カメラ100が設置される位置は、例えば、振動が少ない位置やカメラ100が充填物を安定して捉えることができる位置のような安定した撮像ができる位置が望ましい。なお、カメラ100が充填物をより鮮明に撮像できるように、充填物に対して光を当てる光源が設けられていても良い。光源の種類は限定しないが、白色LED(Light Emitting Diode)を用いたものであっても良い。また、光源として赤外光源を用いても良く、その場合には、カメラ100は赤外対応のものを用いることが望ましい。赤外対応のカメラ100を用いることによって、可視光カメラでは捉えられない物理的劣化を撮像することができ、さらに多くの特徴量が得られるというメリットがある。
【0016】
図2は、図1に示したカメラ100の内部構成の一例を示す図である。図1に示したカメラ100は図2に示すように、撮像部110と、送信部120とを有する。なお、図2には、図1に示したカメラ100が有する構成要素のうち、本形態に関わる主要な構成要素のみを示した。
【0017】
撮像部110は、容器300に充填された充填物の画像を撮像する。撮像部110は、静止画を撮像するものであっても良いし、動画を撮像するものであっても良い。撮像部110が撮像する画像は特に限定せず、カラー画像でもグレースケール画像でも良く、充填物の物理的劣化を捉えられれば良い。
【0018】
送信部120は、撮像部110が撮像した画像を示す画像データを情報処理装置200へ送信する。送信部120からの画像の送信には、有線を用いるものであっても良いし、無線を用いるものであっても良い。送信部120が画像の送信に用いる通信規格は、特に限定しない。
【0019】
情報処理装置200は、カメラ100から送信されてきた画像を用いて、所定の処理を行う。情報処理装置200は、特に限定せず、カメラ100から送信されてきた画像に対して、後述する機械学習を行うことができる装置であればよく、パソコンやマイコンであっても良い。情報処理装置200が、グラフィックス・プロセッシング・ユニット(GPU)を具備する場合、高速演算が可能となる。図3は、図1に示した情報処理装置200の内部構成の一例を示す図である。図1に示した情報処理装置200は図2に示すように、学習済みモデル210と、画像データ取得部220と、算出部230と、出力部240とを有する。なお、図3には、図1に示した情報処理装置200が有する構成要素のうち、本形態に関わる主要な構成要素のみを示す。
【0020】
画像データ取得部220は、信号の受信機能を有する。画像データ取得部220は、受信機能を用いて、カメラ100から送信されてきた画像データを取得する。
【0021】
算出部230は、画像データ取得部220が取得した画像データを、機械学習をあらかじめ行った学習済みモデル210に入力することで、その画像データに含まれる充填物の状態を算出する。学習済みモデル210は、学習フェーズにおいて、機械学習を用いて、充填物のひび割れや欠けといった物理的劣化を学習済みのモデルである。使用する機械学習のアルゴリズムは特に限定せず、物体を1つ1つ検出可能なアルゴリズムであれば良い。使用する機械学習のアルゴリズムとして、例えば、Mask R-CNNといったインスタンスセグメテーションのアルゴリズムや、YOLOといった物体検出のアルゴリズムが挙げられる。算出部230は、画像データ取得部220が取得した画像データを、機械学習をあらかじめ行った学習済みモデル210に入力することで、画像データに含まれる充填物の数(A)をカウントする。このとき、算出部230は、学習済みモデル210から得られた、画像データに含まれる正常な(物理的劣化していない)充填物を特定する。また、算出部230は、学習済みモデル210から得られた、画像データに含まれる物理的劣化している充填物を特定する。そして、算出部230は、特定した正常な(物理的劣化していない)充填物の数(B)と物理的劣化している充填物の数(C)とをカウントし、それらを加算した値(B+C)を画像データに含まれる充填物の数(A)としてカウントしても良い。続いて算出部230は、画像データに含まれる充填物の総数に対する正常な(物理的劣化していない)充填物の数の割合を算出する。この算出には、以下の(式1)を用いても良い。
((A-C)/A)×100[%] … (式1)
ここで、算出された割合を球形率と定義する。算出部230は、球形率に基づいて、充填物の交換時期を算出する。ここで、学習済みモデル210には、劣化の度合いがあらかじめ設定された基準を超えている充填物を、物理的劣化をしている充填物とあらかじめ学習させておく。また、学習済みモデル210には、球形率に基づいた充填物の劣化の変化の予測値と、その予測値に応じた交換時期とをあらかじめ学習させておく。学習済みモデル210は、算出部230が、球形率に対して、回帰分析といった統計処理やリカレントネットワークといった機械学習を用いて、数か月後の球形率を予測し、予測した予測値に基づいて、充填物の交換時期の予測できるものであっても良い。学習済みモデル210には、画像データに含まれる充填物の個数と物理的劣化している充填物の個数とをカウントし、カウントした充填物の個数に対する物理的劣化している充填物の個数の割合を学習させておくものであっても良い。また、学習済みモデル210に、圧力計400-1から送信されてきた圧力値と圧力計400-2から送信されてきた圧力値との差分(差圧)と、球形率とに基づいて、充填物の劣化の変化を予測した結果を学習させておくものであっても良い。その場合、算出部230は、画像データ取得部220が取得した画像データと、圧力計400-1から送信されてきた圧力値と、圧力計400-2から送信されてきた圧力値とを、機械学習をあらかじめ行った学習済みモデル210に入力することで、その画像データに含まれる充填物の交換時期を算出する。
【0022】
出力部240は、算出部230が行った算出の結果を出力する。このとき、出力部240は、算出部230が算出した割合があらかじめ設定された閾値(例えば、90%)を下回った場合、所定の通知を行う。出力部240は、算出部230が充填物の交換時期を算出した場合、算出された交換時期を示す情報を出力する。なお、出力部240における情報の出力形式は、例えば、情報の音声出力、表示、印刷、他の装置への送信であっても良く、外部から当該情報が認識できる形式であれば良い。また、出力部240における情報の出力、警告として、警告灯の点灯や、アラーム音の出力、振動等であっても良い。
【0023】
図4は、図3に示した学習済みモデル210にて学習された使用日数の経過に対する球形率の変化の一例を示す図である。図4に示すように、図3に示した学習済みモデル210には、充填物の使用日数が経過するにつれて球形率がどのように変化していくかが学習されている。また、球形率の変化にはあらかじめ閾値が設定されており、変化する球形率がその閾値を下回るときの経過日数に基づいて、交換時期が算出される。
【0024】
以下に、図1に示した情報処理装置200における情報処理方法について説明する。以下の説明においては、イオン交換樹脂塔である容器300に充填されている充填物がイオン交換樹脂である場合を例に挙げて説明する。図5は、図1に示した情報処理装置200における情報処理方法の一例を説明するためのフローチャートである。ここでは、学習済みモデル210が、機械学習の学習フェーズにおいて、イオン交換樹脂を撮像した画像データからイオン交換樹脂のひび割れや欠けといった劣化の度合いがあらかじめ設定された基準を超えているイオン交換樹脂が、物理的劣化をしているイオン交換樹脂であることを学習済みである。
【0025】
まず、カメラ100から送信されてきた画像データを画像データ取得部220が取得すると(ステップS1)、算出部230が、画像データ取得部220が取得した画像データを学習済みモデル210へ入力する(ステップS2)。算出部230は、学習済みモデル210から出力されるイオン交換樹脂の状態を取得することで、画像データに含まれるイオン交換樹脂の総数を算出する(ステップS3)。ここでは、算出部230は、学習済みモデル210から物理的劣化しているイオン交換樹脂を特定し、物理的劣化していない正常なイオン交換樹脂の数と物理的劣化していると特定されたイオン交換樹脂の数とを加算した数をイオン交換樹脂の総数として算出する。続いて、算出部230は、画像データに含まれるイオン交換樹脂の総数に対する物理的劣化していない正常なイオン交換樹脂の数の割合となる球形率を算出する(ステップS4)。この球形率の算出には、上述した(式1)を用いても良い。算出部230は、球形率を算出すると、算出した球形率があらかじめ設定されている閾値を下回っているかどうかを判定する(ステップS5)。球形率が所定の閾値を下回っている場合、出力部240は、所定の通知を出力する(ステップS6)。
【0026】
なお、学習済みモデル210が機械学習の学習フェーズにおいて、画像データに含まれるイオン交換樹脂のうち物理的劣化をしていない正常なイオン交換樹脂の割合である球形率を学習済みであっても良い。その場合、算出部230は、学習済みモデル210から球形率を取得し、出力部240は所定の通知を出力する条件として、算出部230が学習済みモデル210から取得した球形率を用いる。
【0027】
図6は、図1に示した情報処理装置200における情報処理方法の他の例を説明するためのフローチャートである。ここでは、学習済みモデル210が、機械学習の学習フェーズにおいて、イオン交換樹脂を撮像した画像データからイオン交換樹脂のひび割れや欠けといった劣化の度合いがあらかじめ設定された基準を超えているイオン交換樹脂が、物理的劣化をしているイオン交換樹脂であることを学習済みである。さらに、学習済みモデル210が、画像データに含まれるイオン交換樹脂のうち物理的劣化をしていない正常なイオン交換樹脂の割合である球形率を算出し、算出した球形率に基づいて、イオン交換樹脂の劣化の変化の予測値を算出し、算出した予測値に基づいて交換時期を学習済みである。
【0028】
まず、カメラ100から送信された画像データを画像データ取得部220が取得すると(ステップS11)、算出部230が、画像データ取得部220が取得した画像データを学習済みモデル210へ入力する(ステップS12)。算出部230は、学習済みモデル210から出力されるイオン交換樹脂(充填物)の交換時期を取得することで算出する(ステップS13)。すると、出力部240は、算出部230が算出した交換時期を出力する(ステップS14)。
【0029】
このように、樹脂塔に充填された充填物を樹脂塔に設けられた窓部を通してカメラを用いて撮像し、カメラが撮像した画像データを取得して、取得した画像データに基づいて充填物の状態をあらかじめ機械学習した学習済みモデルに入力することで、充填物の状態を取得し、取得した状態に応じて所定の通知を行う。これにより、樹脂塔に充填された充填物の状態を容易に認識することができる。また、撮像した充填物の画像データに基づいて、交換時期を出力することで、その充填物の交換時期を容易に認識することができる。
(第2の実施の形態)
【0030】
図7は、本発明の情報処理システムの第2の実施の形態を示す図である。本形態における情報処理システムは図7に示すように、情報処理装置201と、モニタ501とを有する。容器300、容器300に設けられた窓部310-1,310-2および圧力計400-1,400-2は、第1の実施の形態におけるものと同じものである。情報処理装置201が設置される位置は、例えば、振動が少ない位置や情報処理装置201が充填物を安定して捉えることができる位置のような安定した撮像ができる位置が望ましい。なお、情報処理装置201が充填物をより鮮明に撮像できるように、充填物に対して光を当てる光源が設けられていても良い。光源については、第1の実施の形態で説明したものと同じもので良い。
【0031】
情報処理装置201は、第1の実施の形態におけるカメラ100が具備する機能と、情報処理装置200が具備する機能とを有する。図8は、図7に示した情報処理装置201の内部構成の一例を示す図である。図7に示した情報処理装置201は図8に示すように、撮像部251と、学習済みモデル210と、画像データ取得部220と、算出部230と、出力部240とを有する。なお、図8には、図7に示した情報処理装置201が有する構成要素のうち、本形態に関わる主要な構成要素のみを示す。学習済みモデル210、画像データ取得部220、算出部230および出力部240それぞれは、第1の実施の形態におけるものと同じものである。
【0032】
撮像部251は、容器300内に充填された充填物の画像を窓部310-1,310-2を通して撮像する。撮像部251は、静止画を撮像するものであっても良いし、動画を撮像するものであっても良い。撮像部251が撮像する画像は特に限定せず、カラー画像でもグレースケール画像でも良く、充填物の物理的劣化を捉えられれば良い。画像データ取得部220は、撮像部251が撮像した画像データを取得し、第1の実施の形態における画像データ取得部220が行う処理と同じ処理を行う。
【0033】
情報処理装置201は、上述した撮像部251が画像を撮像し、撮像した画像に対して、学習済みモデル210を用いて機械学習を行うことができる装置であればよく、パソコンやマイコンであっても良い。情報処理装置201が、グラフィックス・プロセッシング・ユニット(GPU)を具備する場合、高速演算が可能となる。
【0034】
モニタ501は、例えば、スマートフォン等の携帯端末のディスプレイであっても良いし、パソコンのディスプレイ等、一般的な情報を表示できるもので良い。モニタ501は、情報処理装置201と、無線または有線を用いて接続されており、情報処理装置201から送信されてきた情報(例えば、通知画面や警告画面等)を表示する。
【0035】
以下に、図7に示した情報処理装置201における情報処理方法について説明する。以下の説明においては、イオン交換樹脂塔である容器300に充填されている充填物がイオン交換樹脂である場合を例に挙げて説明する。図9は、図7に示した情報処理装置201における情報処理方法の一例を説明するためのフローチャートである。ここでは、学習済みモデル210が、機械学習の学習フェーズにおいて、イオン交換樹脂を撮像した画像データからイオン交換樹脂のひび割れや欠けといった劣化の度合いがあらかじめ設定された基準を超えているイオン交換樹脂が、物理的劣化をしているイオン交換樹脂であることを学習済みである。
【0036】
まず、撮像部251が容器300に充填されているイオン交換樹脂の画像を窓部310-1または窓部310-2を通して撮像する(ステップS21)。すると、画像データ取得部220が、撮像部251が撮像した画像データを取得する(ステップS22)。続いて、算出部230が、画像データ取得部220が取得した画像データを学習済みモデル210へ入力する(ステップS23)。算出部230は、学習済みモデル210から出力されるイオン交換樹脂の状態を取得することで、画像データに含まれるイオン交換樹脂の総数を算出する(ステップS24)。ここでは、算出部230は、学習済みモデル210から物理的劣化しているイオン交換樹脂を特定し、物理的劣化していない正常なイオン交換樹脂の数と物理的劣化していると特定されたイオン交換樹脂の数とを加算した数をイオン交換樹脂の総数として算出する。続いて、算出部230は、画像データに含まれるイオン交換樹脂の総数に対する物理的劣化していない正常なイオン交換樹脂の数の割合となる球形率を算出する(ステップS25)。この球形率の算出には、上述した(式1)を用いても良い。算出部230は、球形率を算出すると、算出した球形率があらかじめ設定されている閾値を下回っているかどうかを判定する(ステップS26)。球形率が所定の閾値を下回っている場合、出力部240は、所定の通知を出力する(ステップS27)。
【0037】
なお、学習済みモデル210が機械学習の学習フェーズにおいて、画像データに含まれるイオン交換樹脂のうち物理的劣化をしているイオン交換樹脂の割合である球形率を学習済みであっても良い。その場合、算出部230は、学習済みモデル210から球形率を取得し、出力部240は所定の通知を出力する条件として、算出部230が学習済みモデル210から取得した球形率を用いる。
【0038】
このように、樹脂塔に充填された充填物を樹脂塔に設けられた窓部を通して撮像し、撮像した画像データを、画像データに基づいて充填物の状態をあらかじめ機械学習した学習済みモデルに入力することで、充填物の状態を取得し、取得した状態に応じて所定の通知を行う。これにより、樹脂塔に充填された充填物の状態を容易に認識することができる。
(第3の実施の形態)
【0039】
図10は、本発明の情報処理システムの第3の実施の形態を示す図である。本形態における情報処理システムは図10に示すように、電子顕微鏡101と、情報処理装置200とを有する。電子顕微鏡101は、樹脂塔に充填された充填物が樹脂塔から分離採取され、分離採取された充填物の画像を撮像する。電子顕微鏡101は通信機能を具備し、撮像した画像データを情報処理装置200へ送信する。情報処理装置200は、第1の実施の形態におけるものと同じものである。
(学習済みモデルの作成と検証の例)
【0040】
撮像手段であるマイクロスコープにはkeyence社製VHX-6000を用いて、イオン交換樹脂塔から分離採取した数種類のイオン交換樹脂を撮像した。撮像した多数の画像データから、機械学習を用いた学習済みモデルを作成後にその精度を検証することを目的とした、モデル検証用データを作成するために、1部の画像データを抜き出した。また、モデル検証用データ以外の画像データを水増し処理し、水増し処理された画像データをtrain用データセットとvalidation用データセットとの7対3の割合でランダムに分割した。この分割して作成したデータセットに対して、ひび割れや欠けといった物理的劣化しているイオン交換樹脂1つ1つをアノテーションし、学習済みモデルを作成するためのデータセットを作成した。ひび割れや欠けといった物理的劣化を1つ1つ検出するために、機械学習のアルゴリズムとしてMaskRCNN(ライセンスはThe MIT License)を用いて、アノテーション済みのデータセットを用いて学習済みモデルを作成した。作成した学習済みモデルに対してモデル検証用データを推論させると、高い精度でひび割れや欠けといった物理的劣化を1つ1つ検出することができた。その他、充填物を構成する球形(円形)を切り出すものや、割れを検出するものを用いても良い。
【0041】
なお、容器300を冗長構成として、運用系と予備系とを設けたシステムの場合、出力部240からの通知後に、運用する系列を運用系から予備系へ自動的に切り替えるものであっても良い。こうすることで、システムを効率的に運用することができる。
【0042】
以上、各構成要素に各機能(処理)それぞれを分担させて説明したが、この割り当ては上述したものに限定しない。また、構成要素の構成についても、上述した形態はあくまでも例であって、これに限定しない。また、各実施の形態を組み合わせたものであっても良い。また、容器300の設置場所や天候等の環境に応じた複数の学習済みモデルをあらかじめ準備しておき、測定時の環境に応じて、使用する学習済みモデルを切り替えるものであっても良い。
【0043】
上述した情報処理装置200,201が行う処理は、目的に応じてそれぞれ作製された論理回路で行うようにしても良い。また、処理内容を手順として記述したコンピュータプログラム(以下、プログラムと称する)を情報処理装置200,201にて読取可能な記録媒体に記録し、この記録媒体に記録されたプログラムを情報処理装置200,201に読み込ませ、実行するものであっても良い。情報処理装置200,201にて読取可能な記録媒体とは、フロッピー(登録商標)ディスク、光磁気ディスク、DVD(Digital Versatile Disc)、CD(Compact Disc)、Blu-ray(登録商標) Disc、USB(Universal Serial Bus)メモリなどの移設可能な記録媒体の他、情報処理装置200,201に内蔵されたROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等のメモリやHDD(Hard Disc Drive)等を指す。この記録媒体に記録されたプログラムは、情報処理装置200,201に設けられたCPUにて読み込まれ、CPUの制御によって、上述したものと同様の処理が行われる。ここで、CPUは、プログラムが記録された記録媒体から読み込まれたプログラムを実行するコンピュータとして動作するものである。
【符号の説明】
【0044】
100 カメラ
101 電子顕微鏡
110,251 撮像部
120 送信部
200,201 情報処理装置
210 学習済みモデル
220 画像データ取得部
230 算出部
240 出力部
300 容器
310-1,310-2 窓部
400-1,400-2 圧力計
501 モニタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10