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特許7576960気象予測装置及び気象予測モデル学習装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】気象予測装置及び気象予測モデル学習装置
(51)【国際特許分類】
   G01W 1/10 20060101AFI20241025BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20241025BHJP
【FI】
G01W1/10 D
G06N20/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020186837
(22)【出願日】2020-11-09
(65)【公開番号】P2022076416
(43)【公開日】2022-05-19
【審査請求日】2023-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】畔上 泰彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 英之
(72)【発明者】
【氏名】藤原 邦彦
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-159725(JP,A)
【文献】特開2003-021687(JP,A)
【文献】特開平09-049884(JP,A)
【文献】国際公開第2015/182142(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0192128(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01W 1/10
G06N 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
観測地点において観測された第1観測気象データと、所定の地点に設置された気象観測装置により観測された第2観測気象データとを取得する取得部と、
前記観測地点を含む予め定められた範囲内の地域において、気象に関する数値流体力学解析を実行することにより、前記地域内の気象に関する数値流体力学解析の計算結果を生成し、前記計算結果から得られる気象データである計算気象データを得る計算部と、
所定時刻の気象データから前記所定時刻よりも後の時刻の気象データを予測するための予め学習された学習済みモデルに対して、前記取得部により取得された前記第1観測気象データ及び前記第2観測気象データと、前記計算部により得られた前記計算気象データとを入力することにより、前記地域内の気象データを予測する予測部と、
を含む気象予測装置。
【請求項2】
前記気象に関する数値流体力学解析の計算対象となる地域内には、少なくとも1つ以上の建物が存在している、
請求項1に記載の気象予測装置。
【請求項3】
観測地点において観測された学習用の第1観測気象データと、所定の地点に設置された気象観測装置により観測された学習用の第2観測気象データと、前記観測地点を含む予め定められた範囲内の地域内の気象に関する数値流体力学解析の計算結果から得られる気象データである学習用の計算気象データと、学習用の前記地域内の気象データとが対応付けられた学習用データに基づいて、所定時刻の気象データから前記所定時刻よりも後の時刻の気象データを予測するためのモデルを学習させることにより、前記所定時刻の気象データから前記所定時刻よりも後の時刻の気象データを予測するための学習済みモデルを生成する学習部
を含む気象予測モデル学習装置。
【請求項4】
前記気象に関する数値流体力学解析の計算対象となる地域内には、少なくとも1つ以上の建物が存在している、
請求項3に記載の気象予測モデル学習装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気象予測装置及び気象予測モデル学習装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、気象データを予測する技術が知られている。例えば、観測所以外の場所に所在するユーザの気象データを、観測所の気象データからニューラルネットワークを用いて推定する技術が知られている(例えば、特許文献1の段落[0010])。
【0003】
また、周囲の複数地点の気圧値と該局地点での気圧値とから東西及び南北方向での気圧の偏微分係数を求める技術が知られている(例えば、特許文献2の[請求項2])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平6-331756号公報
【文献】特開平9-49884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ある地点における、風速、風向、気温、湿度、降水量、日射量、及び気圧等の気象データは、その地点の周辺の建物及び地形等の周辺環境の影響を受ける場合がある。このため、ある地点における気象データを予測する際には、その地点の周辺環境を考慮する必要がある。また、ある地点の気象データを予測したいというよりも、ある地点を含む地域内の気象データを予測したい、という場合もある。
【0006】
しかし、上記特許文献1~2に開示されている技術は、観測された気象データを用いてある地点の未来の気象データを予測するものであり、その地点の周辺環境については考慮されていない。また、上記特許文献1~2に開示されている技術は、ある地点の気象データを予測する技術であり、ある地域内の気象データを予測する技術ではない。
【0007】
本発明は上記事実を考慮して、ある地域内の気象データを予測する際に、当該地域内の環境を考慮して気象データを予測することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る第1の態様は、観測地点において観測された第1観測気象データと、所定の地点に設置された気象観測装置により観測された第2観測気象データとを取得する取得部と、前記観測地点を含む予め定められた範囲内の地域において、気象に関する数値流体力学解析を実行することにより、前記地域内の気象に関する数値流体力学解析の計算結果を生成し、前記計算結果から得られる気象データである計算気象データを得る計算部と、所定時刻の気象データから前記所定時刻よりも後の時刻の気象データを予測するための予め学習された学習済みモデルに対して、前記取得部により取得された前記第1観測気象データ及び前記第2観測気象データと、前記計算部により得られた前記計算気象データとを入力することにより、前記地域内の気象データを予測する予測部と、を含む気象予測装置である。
【0009】
また、本発明に係る第2の態様は、観測地点において観測された学習用の第1観測気象データと、所定の地点に設置された気象観測装置により観測された学習用の第2観測気象データと、前記観測地点を含む予め定められた範囲内の地域内の気象に関する数値流体力学解析の計算結果から得られる気象データである学習用の計算気象データと、学習用の前記地域内の気象データとが対応付けられた学習用データに基づいて、所定時刻の気象データから前記所定時刻よりも後の時刻の気象データを予測するためのモデルを学習させることにより、前記所定時刻の気象データから前記所定時刻よりも後の時刻の気象データを予測するための学習済みモデルを生成する学習部を含む気象予測モデル学習装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ある地域内の気象データを予測する際に、当該地域内の環境を考慮して気象データを予測することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る気象予測システムを示すブロック図である。
図2】実施形態の概要を説明するための図である。
図3】実施形態の学習用データを説明するための図である。
図4】第1実施形態のモデルを説明するための図である。
図5】CFDシミュレーションを実行する際の地域内の仮想的な建物及び地形のモデルの図である。
図6】気象データの補正を説明するための図である。
図7】実施形態に係る気象予測システムの学習処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
図8】実施形態に係る気象予測システムの気象予測処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
図9】第2実施形態のモデルを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0013】
[第1実施形態]
【0014】
<本実施形態の気象予測システムの構成>
【0015】
図1は、第1実施形態に係る気象予測システム10の構成の一例を示すブロック図である。気象予測システム10は、機能的には、図1に示されるように、入力部12と、気象予測装置14と、表示部16とを含んだ構成で表すことができる。
【0016】
入力部12は、ユーザから入力されたデータ等を受け付ける。入力部12は、例えば、マウス、及びキーボード等によって実現される。
【0017】
気象予測装置14は、CPU(Central Processing Unit)、各処理ルーチンを実現するためのプログラム等を記憶したROM(Read Only Memory)、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)、記憶手段としてのメモリ、及びネットワークインタフェース等を含んだコンピュータにより実現される。
【0018】
気象予測装置14は、機能的には、図1に示すように、学習用データ記憶部20と、学習部22と、学習済みモデル記憶部24と、取得部26と、計算部28と、予測部30とを備えている。
【0019】
図2に、本実施形態の概要を説明するための図を示す。図2に示されるように、第1実施形態の気象予測装置14は、ある地域内の気象データを予測する際に、当該地域内の観測地点において気象観測装置I1にて観測された気象データ(以下、単に「第1観測気象データ」と称する。)と、所定の地点に設置された気象観測装置I2により観測された気象データ(以下、単に「第2観測気象データ」と称する。)と、当該地域内の気象に関する数値流体力学解析の計算結果から得られる気象データ(以下、単に「計算気象データ」と称する。)とを用いて、当該地域A内の気象データを予測する。なお、気象データには、例えば、風速、風向、気温、湿度、降水量、日射量、及び気圧等のデータが含まれる。また、第2観測気象データは、例えば、いわゆるアメダス等の予測システムのために全国各地に設置された気象観測装置によって観測されたデータである。
【0020】
ある地域内の気象データを予測する際には、その地域内の建物及び地形等の環境を考慮する必要がある。例えば、その地域が街区である場合には、ビル等の存在を考慮する必要がある。
【0021】
そこで、本実施形態の気象予測装置14は、地域内の観測地点において観測された第1観測気象データ及び所定の地点に設置された気象観測装置により観測された第2観測気象データに加え、地域内の気象に関する数値流体力学解析の計算結果から得られる計算気象データを用いて、当該地域内の気象データを予測する。地域内の気象に関する数値流体力学解析の計算結果を利用することにより、地域内の建物及び地形等の環境が考慮され、地域内の気象データを精度良く予測することが可能となる。
【0022】
地域内の気象データの予測情報は、当該地域内における建物計画の際に利用することが可能となる。建物計画の際には、建物周辺のビル風評価、風揺れによる居住性評価、及び自然換気評価等をする必要がある。このとき、それら評価に気象データが必要となる。
【0023】
本実施形態の気象予測装置14によって計画対象の建物が位置する地域内の気象データの予測情報が得られれば、当該地域内の気象データの予測情報は、その建物のビル風評価、居住性評価、及び自然換気評価等に利用可能となる。
【0024】
なお、本実施形態の気象予測装置14は、第1観測気象データ、第2観測気象データ、及び計算対象データから地域内の気象データを予測する際に、機械学習によって予め生成された学習済みモデルを用いる。学習済みモデルには、予め収集された実績に相当する学習用データが反映されるため、地域内の気象データを精度良く予測することができる。
【0025】
以下、具体的に説明する。
【0026】
学習用データ記憶部20には、複数の学習用データが格納される。本実施形態の学習用データは、学習用の第1観測気象データと、学習用の第2観測気象データと、学習用の計算気象データと、学習用の当該地域内の気象データとが対応付けられたデータである。学習用データは、例えば、過去の実績に基づくデータである。
【0027】
図3に、本実施形態の学習用データを説明するための図を示す。図3に示されるように、学習用データは、学習用の第1観測気象データと、学習用の第2観測気象データと、学習用の計算気象データと、学習用の当該地域内の気象データとが対応付けられて格納される。
【0028】
図3に示される実績ID「00001」の学習用データは、学習用のある地域内において、学習用の第1観測気象データが「A1,・・・」、学習用の第2観測気象データが「D1,・・・」、及び学習用の計算気象データが「F1,・・・」であった場合に、学習用の当該地域内の気象データが「Z1,・・・」であったことが示されている。なお、各気象データには、例えば、風速、風向、気温、湿度、降水量、日射量、及び気圧等のデータが含まれる。
【0029】
学習部22は、学習用データ記憶部20に格納されている複数の学習用データに基づいて、所定時刻の気象データから所定時刻よりも後の時刻の気象データを予測するためのモデルを学習させることにより、所定時刻の気象データから所定時刻よりも後の時刻の気象データを予測するための学習済みモデルを生成する。
【0030】
図4に、第1実施形態のモデルを説明するための図を示す。図4に示されるように、第1実施形態のモデルは、ニューラルネットワークである。このため、学習部22によって学習済みのニューラルネットワークM1が生成される。第1観測気象データと第2観測気象データと計算気象データとが、学習済みのニューラルネットワークM1へ入力されると予測対象の地域内の気象データが出力される。
【0031】
このため、学習部22は、学習用データ記憶部20に格納されている複数の学習用データに基づいて、既知の教師あり機械学習によってニューラルネットワークを学習させ、学習済みのニューラルネットワークを生成する。なお、教師あり機械学習の手法はどのようなものであっても良い。
【0032】
そして、学習部22は、生成した学習済みモデルを学習済みモデル記憶部24へ格納する。
【0033】
学習済みモデル記憶部24には、学習部22によって生成された学習済みモデルが格納される。
【0034】
取得部26は、予測対象のデータを取得する。具体的には、取得部26は、ある観測地点において観測された第1観測気象データと、所定の地点に設置された気象観測装置により観測された第2観測気象データとを取得する。
【0035】
計算部28は、第1観測気象データの観測地点を含む予め定められた範囲内の地域において、気象に関する数値流体力学解析(CFD : Computational fluid dynamics)(以下、単に「CFDシミュレーション」と称する。)を実行する。具体的には、計算部28は、第1観測気象データ及び第2観測気象データが表す風速、気温、湿度、日射量、降雨、及び気圧等を入力データとして、CFDシミュレーションを実行する。また、計算部28への入力データは、第1観測気象データ及び第2観測気象データを用いるほかに、任意に設定しても良い。
【0036】
なお、地域内のCFDシミュレーションを実行する際には、その地域内の建物及び地形等がモデリングされている。具体的には、例えば、建物の材質等が予め設定されており、その条件下において地域内のCFDシミュレーションが実行される。
【0037】
図5に、CFDシミュレーションを実行する際の、地域内の仮想的な建物及び地形のモデルを示す。図5に示されるように、地域内の仮想的な建物及び地形のモデルVには、例えば、建物B及び樹木t等も含まれる。地域内の仮想的な建物及び地形のモデルVは、コンピュータ内で実現され、この仮想的な建物及び地形のモデルVに応じてCFDシミュレーションが実行される。
【0038】
計算部28は、CFDシミュレーションを実行することにより、当該地域内の気象に関する数値流体力学解析の計算結果を生成する。そして、計算部28は、当該計算結果から得られる気象データである計算気象データを得る。なお、数値流体力学解析の手法はどのような手法であっても良い。
【0039】
予測部30は、学習済みモデル記憶部24に格納された学習済みモデルに対して、取得部26により取得された第1観測気象データ及び第2観測気象データと、計算部28により得られた計算気象データとを入力することにより、地域内の気象データを予測する。具体的には、例えば、予測部30は、地域内の複数の地点の気象データを予測する。または、予測部30は、地域内のある1地点の気象データを予測するようにしてもよい。なお、学習済みモデルに入力されるデータは所定時刻の気象データであり、学習済みモデルから出力されるデータは所定時刻よりも後の時刻の気象データである。
【0040】
このように、第1実施形態の気象予測装置14は、地域内の気象データを予測する際に、地域内のCFDシミュレーションから得られる計算気象データを予測に用いる。これにより、予測対象の地域内の建物及び地形等が考慮され、予測対象の地域内の気象データを精度良く予測することができる。
【0041】
次に、予測部30は、学習済みモデルから出力された地域内の気象データを統計的に補正する。例えば、図6に示されるように、予測部30は、学習済みモデルから出力された地域内の気象データP1に対して所定の値を加算することにより、地域内の気象データP1を補正する。学習済みモデルから出力された地域内の気象データは、実測値とずれている場合もある。そのため、予測部30は、学習済みモデルから出力された地域内の気象データP1を統計的に補正することにより、補正済みの地域内の気象データP2を生成する。なお、具体的な補正方法はどのようなものであってもよい。
【0042】
表示部16は、気象予測装置14から出力された情報を表示する。表示部16は、例えば、ディスプレイ等によって実現される。表示部16は、予測部30によって得られた予測結果を表示する。ユーザは、表示部16に表示された予測結果を確認し、例えば、建物計画に利用する。
【0043】
<気象予測システムの作用>
【0044】
次に、図を参照して、第1実施形態の気象予測システム10の作用を説明する。気象予測システム10の気象予測装置14は、入力部12により学習用データを受け付けると、学習用データ記憶部20に格納する。そして、気象予測システム10の気象予測装置14は、学習処理開始の指示信号を受け付けると、図7に示す学習処理ルーチンを実行する。
【0045】
<学習処理ルーチン>
【0046】
ステップS100において、学習部22は、学習用データ記憶部20に格納されている複数の学習用データを取得する。
【0047】
ステップS102において、学習部22は、上記ステップS100で取得された複数の学習用データに基づいて、モデルの一例であるニューラルネットワークを学習させることにより、気象データを予測するための学習済みのニューラルネットワークを生成する。
【0048】
ステップS104において、学習部22は、上記ステップS102で生成された学習済みモデルを学習済みモデル記憶部24に格納して、学習処理ルーチンを終了する。
【0049】
次に、気象予測システム10の気象予測装置14は、入力部12から入力された、予測対象の地域内の観測地点の第1観測気象データと第2観測気象データとを受け付けると、図8に示す気象予測処理ルーチンを実行する。
【0050】
<気象予測処理ルーチン>
【0051】
ステップS200において、取得部26は、入力部12から入力された第1観測気象データを取得する。
【0052】
ステップS202において、取得部26は、入力部12から入力された第2観測気象データを取得する。
【0053】
ステップS204において、計算部28は、上記ステップS200で取得された第1観測気象データと上記ステップS202で取得された第2観測気象データとに基づいて、第1観測気象データの観測地点を含む地域内においてCFDシミュレーションを実行する。そして、計算部28は、CFDシミュレーションの計算結果から計算気象データを得る。
【0054】
ステップS206において、予測部30は、学習済みモデル記憶部24に格納された学習済みモデルである学習済みのニューラルネットワークを読み出す。
【0055】
ステップS208において、予測部30は、上記ステップS206で読み出された学習済みのニューラルネットワークに対して、上記ステップS200で取得された第1観測気象データ及び上記ステップS202で取得された第2観測気象データと、上記ステップS204で得られた計算気象データとを入力することにより、地域内の気象データを予測する。
【0056】
ステップS210において、予測部30は、上記ステップS208で得られた地域内の気象データを統計的に補正する。
【0057】
ステップS212において、予測部30は、上記ステップS210で得られた補正済みの地域内の気象データを結果として出力する。
【0058】
表示部16には、気象予測装置14から出力された情報が表示される。ユーザは、表示部16に表示された情報を確認し、例えば、建物計画に利用する。
【0059】
以上詳細に説明したように、第1実施形態の気象予測装置は、観測地点において観測された第1観測気象データと、所定の地点に設置された気象観測装置により観測された第2観測気象データとを取得する。そして、気象予測装置は、観測地点を含む予め定められた範囲内の地域において、気象に関するCFDシミュレーションを実行することにより、地域内の気象に関するCFDシミュレーションの計算結果を生成し、計算結果から得られる気象データである計算気象データを得る。気象予測装置は、所定時刻の気象データから所定時刻よりも後の時刻の気象データを予測するための予め学習された学習済みモデルに対して、取得された第1観測気象データ及び第2観測気象データと、計算気象データとを入力することにより、地域内の気象データを予測する。これにより、ある地域内の気象データを予測する際に、当該地域内の環境を考慮して気象データを予測することができる。
【0060】
より具体的には、第1実施形態の気象予測装置は、地域内の気象に関するCFDシミュレーションを実行し、その結果から得られる気象データである計算気象データを用いることにより、地域内の環境を考慮して気象データを予測することができる。
【0061】
また、複雑な物理モデルを用いずに学習済みモデルを用いることにより、計算コスト及び計算時間を低減させることができる。
【0062】
また、第1実施形態の気象予測装置は、学習済みモデルへ入力する対象の気象データを様々に変更することができる。例えば、第2観測気象データの一例であるアメダスデータの気温が5度上がり、かつ湿度が20%低下するという気象データを学習済みモデルへ入力すれば、その条件下におけるある地域内の気象データを予測することができる。すなわち、将来起こり得る気象条件下における地域内の気象データを予測することができる。また、過去の気象データを学習済みモデルへ入力することにより過去の気象も再現することができる。なお、過去の気象を再現する際には、過去のある所定時刻の気象データから当該所定時刻よりも後の時刻の気象データが予測され、過去の気象が再現される。
【0063】
また、従来技術(例えば、上記特許文献1)では、予測対象の地点とは異なる地点にてある時刻に観測された気象データに基づき予測が行われる。このため、予測対象の地点における気象データの予測の時刻は、異なる地点にて気象データが観測された時刻に限定される。これに対し、第1実施形態の気象予測装置は、既存の観測地点において得られたデータ等から、予測対象の地域内の未来(例えば、10分後~数時間後程度)の気象データを予測することができる。
【0064】
また、CFDシミュレーションによって得られる計算気象データを利用することにより、ある地点の気象データだけではなく、ある地点を含む地域内の気象データも精度良く予測することができる。
【0065】
また、建設現場の作業所が設置された地点のピンポイントの天気予報が可能となり、強風及び強雨が予測された場合には事前の対策を即時に行うことが可能となる。これにより、建設現場における災害発生を低減させることができる。
【0066】
また、予測された気象データのうちの鉛直方向の風速を元に建物の耐風設計をすることが可能となる。これにより、合理的な設計が可能となりコストを低減させることができる。
【0067】
また、計画対象の建物の居住性の評価及びビル風予測に関しては、従来では既存の観測地点にて観測された気象データを元に評価及び予測が行われていた。これに対し、本実施形態の気象予測装置を用いれば、ある地点を含む地域内の気象データを精度良く予測することが可能となり、建物の安全性をより向上させることができる。
【0068】
また、自然換気予測に関しても、従来では既存の観測地点にて観測された気象データを元に評価及び予測が行われていた。これに対し、本実施形態の気象予測装置を用いれば、ある地点を含む地域内の気象データを精度良く予測することが可能となり、建築計画に際して無駄のないエネルギー管理が可能となる。
【0069】
また、熱負荷計算に関しても、従来では既存の観測地点にて観測された気象データを元に評価及び予測が行われていた。これに対し、本実施形態の気象予測装置を用いれば、ある地点を含む地域内の気象データを精度良く予測することが可能となり、合理的な設備設計が可能となる。これにより、建築設備のコストを低減させることができる。
【0070】
また、第1実施形態の気象予測装置を用いれば、多数の観測地点を設ける必要がなくなるためコストを削減することができる。
【0071】
[第2実施形態]
【0072】
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態においては、学習済みモデルが決定木モデルである点が第1実施形態と異なる。なお、第2実施形態に係る気象予測システムの構成は、第1実施形態と同様の構成となるため、同一符号を付して説明を省略する。
【0073】
図9に、第2実施形態のモデルの一例を示す。図9に示されるように、第2実施形態のモデルは決定木モデルである。本実施形態の決定木モデルは気象データ毎に生成される。図9の例では、風速予測用の決定木モデルM2-1、気温予測用の決定木モデルM2-2、及び降水量予測用の決定木モデルM2-3が示されている。
【0074】
例えば、風速予測用の決定木モデルM2-1に各気象データ及び予測対象の時刻情報が入力されると、「日射量600W/m以上?」という節点にて判定がなされ、日射量600W/m以上であれば左側の節点へ移行する。一方、日射量600W/m未満であれば右側の節点へ移行する。そして、最終的には例えば「風速〇〇m/s」といった予測値が風速予測用の決定木モデルM2-1から出力される。なお、その他の気象データを予測するための決定木モデルも後述する学習部22において生成される。
【0075】
第2実施形態の気象予測装置14の学習部22は、第1実施形態と同様に、複数の学習用データに基づいて、既知の決定木モデル用の教師あり機械学習アルゴリズムを用いて、決定木モデルを学習させ、学習済みの決定木モデルM2-1,M2-2,M2-3等を生成する。そして、学習部22は、学習済みの決定木モデルM2-1,M2-2,M2-3等を学習済みモデル記憶部24へ格納する。
【0076】
第2実施形態の気象予測装置14の予測部30は、第1実施形態と同様に、学習済みの決定木モデルM2-1,M2-2,M2-3等に対して、第1観測気象データと第2観測気象データと計算気象データとを入力することにより、地域内の気象データを予測する。なお、風速予測用の決定木モデルM2-1からは風速の予測値が出力され、気温予測用の決定木モデルM2-2からは気温の予測値が出力され、降水量予測用の決定木モデルM2-3からは降水量の予測値が出力される。
【0077】
なお、学習済みの決定木モデルM2-1,M2-2,M2-3等からは、節点に位置する特徴量の分割が予測にどれくらい寄与しているのかを表す重要度を得ることができる。なお、特徴量とは、例えば「日射量600W/m以上?」の分割における「日射量」に相当する。重要度は、例えば、既知のジニ不純度等から算出される。
【0078】
ユーザは、特徴量の重要度を確認し、どの特徴量が気象データの予測に寄与しているのかを確認し、例えば、建築計画等に役立てる。
【0079】
なお、第2実施形態に係る気象予測システムの他の構成及び作用については、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0080】
以上詳細に説明したように、第2実施形態の気象予測システムの気象予測装置は、学習済みモデルとして決定木モデルを利用して地域内の気象データを予測する。ある地域内の気象データを予測する際に、当該地域内の環境を考慮して気象データを予測することができる。また、気象データを予測する際の特徴量の重要度を得ることができる。
【0081】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0082】
例えば、上記各実施形態では、学習済みモデルの一例として、ニューラルネットワーク又は決定木モデルを用いる場合を例に説明したがこれに限定されるものではない。機械学習によって得られるモデルであれば、どのようなモデルであっても良い。
【0083】
また、上記では本発明に係るプログラムが記憶部(図示省略)に予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、本発明に係るプログラムは、CD-ROM、DVD-ROM及びマイクロSDカード等の記録媒体に記録されている形態で提供することも可能である。
【符号の説明】
【0084】
10 気象予測システム
12 入力部
14 気象予測装置
16 表示部
20 学習用データ記憶部
22 学習部
24 学習済みモデル記憶部
26 取得部
28 計算部
30 予測部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9