IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ライオン株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】合成樹脂製容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/02 20060101AFI20241025BHJP
   B65D 1/42 20060101ALI20241025BHJP
【FI】
B65D1/02 221
B65D1/42
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020204191
(22)【出願日】2020-12-09
(65)【公開番号】P2022091380
(43)【公開日】2022-06-21
【審査請求日】2023-10-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】村山 瞬
(72)【発明者】
【氏名】荻島 敦子
(72)【発明者】
【氏名】中村 泰士
(72)【発明者】
【氏名】西山 美香子
【審査官】長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-112361(JP,A)
【文献】特開2017-019530(JP,A)
【文献】特開2005-075409(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0206837(US,A1)
【文献】特開2017-105546(JP,A)
【文献】特開2018-083650(JP,A)
【文献】特開2002-326617(JP,A)
【文献】特開2015-030486(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/02
B65D 1/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体の胴部の少なくとも一部の横断面形状を略楕円形状とした合成樹脂製容器であって、
前記胴部の外表面には、複数の凹状のリブが交差して設けられ
前記容器本体は、前記容器本体の一端部であって内容物が注出される口部と、前記容器本体の他端部であって接地面を有する底部と、前記容器本体の軸方向と直交する径方向の外方に広がりながら前記口部から下方に延びる肩部と、前記肩部から下方に延びて前記底部に連なる前記胴部と、を有し、
前記リブは、前記軸方向に沿って一端から他端まで直線状に延在する一のリブと、前記径方向に沿って一端から他端まで直線状に延在する他のリブと、が十字状に交差し、かつ前記一のリブが前記他のリブよりも長く形成され、
前記胴部には、前記口部側に位置する上端と前記底部側に位置する下端と、を有し、前記軸方向の断面視において、前記上端と前記下端の間の中心に向かって徐々に前記胴部の内側に窪む凹部が、前記一のリブと重なるように形成され、
前記一のリブは、前記リブが交差した交点から最も離れた前記口部側の最先端及び前記交点から最も離れた前記底部側の最先端が、前記凹部の外周端と重なるように前記凹部の外表面に沿って形成され、
前記容器本体の内部に減圧が生じたときに前記胴部の最初に変形が開始される減圧変形開始点及び前記交点は、前記交点が前記減圧変形開始点から10mm以内の範囲に配置された状態で前記リブ上に位置する、合成樹脂製容器。
【請求項2】
前記リブの前記交点は、前記減圧変形開始点と同位置に重なるように配置される、請求項1に記載の合成樹脂製容器。
【請求項3】
前記リブは、短手方向の最大幅が0.5mm~6mm、最大深さが0.5mm~3mm、長手方向である全長が15mm~120mmである、請求項1または2に記載の合成樹脂製容器。
【請求項4】
前記リブは、前記交点から一端部に向かうに連れて徐々に幅が狭くなり、かつ深さが徐々に浅くなる先細形状である、請求項1~のいずれか1項に記載の合成樹脂製容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂製容器は、日用品や食品などを収容する用途で大量に使用され、多くの場合は使い捨てされる。そのため、省資源化やコスト削減の観点から、容器を薄肉化することが要望されている。
【0003】
また、使用者のユーザビリティや商品価値を高めるデザイン性の観点から、容器の胴部は、横断面形状を略楕円形状にすることが好ましい。胴部を略楕円形状とすることで、容器は、使用者が手指で把持し易くなると共に、同容量の他形状の容器と比べて正面の表示面積をより多く確保できるため商品価値を高めることができる。
【0004】
ところで、薄肉化された容器は、急激な温度変化、経年劣化に伴う液体内容物の減容などにより、容器内部が減圧して変形が生じることがある。特に、横断面形状が略楕円形状の胴部を有する薄肉な容器の場合、その断面曲率構造により減圧時に正面部から変形し易い。減圧変形が生じた場合、容器は、部分的な凹みが生じて外観上の見栄えが悪くなり、商品価値の低下が懸念される。
【0005】
このような問題に対し、従来から、胴部に減圧吸収パネルや線状のリブを外周面に配置して容器の断面形状を調節することにより、減圧変形を目立ち難くする対策が講じられてきた。下記特許文献1には、薄肉化に伴う容器の強度を向上させるため、容器の側面に凸部および凹部を交互に形成し、複数の凸部の表面同士をラベルで固着すると共に、隣り合う凸部同士とラベルとの間に空間を形成した樹脂製容器について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平11-348960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に開示される技術では、ラベルとリブを組み合わせることにより、薄肉化した容器の強度を上げることはできるが、減圧時における変形に対する効果が十分とは言えず、改善の余地がある。
【0008】
また、特許文献1の容器は、リブに加えてラベルの張力を利用することにより容器の強度を上げているため、ラベルの装着が必須となる。そのため、ラベルを装着させずに加飾画像を容器本体に直接印刷するような形態の容器には適用できなかった。
【0009】
本発明の少なくとも一実施形態は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、具体的には、胴部の少なくとも一部の横断面形状を略楕円形状とした容器において減圧変形による凹みを目立ち難くすることができる合成樹脂製容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本実施形態に係る容器は、容器本体の胴部の少なくとも一部の横断面形状を略楕円形状とした合成樹脂製容器であって、前記胴部の外表面には、複数の凹状のリブが交差して設けられ、前記容器本体は、前記容器本体の一端部であって内容物が注出される口部と、前記容器本体の他端部であって接地面を有する底部と、前記容器本体の軸方向と直交する径方向の外方に広がりながら前記口部から下方に延びる肩部と、前記肩部から下方に延びて前記底部に連なる前記胴部と、を有し、前記リブは、前記軸方向に沿って一端から他端まで直線状に延在する一のリブと、前記径方向に沿って一端から他端まで直線状に延在する他のリブと、が十字状に交差し、かつ前記一のリブが前記他のリブよりも長く形成され、前記胴部には、前記口部側に位置する上端と前記底部側に位置する下端と、を有し、前記軸方向の断面視において、前記上端と前記下端の間の中心に向かって徐々に前記胴部の内側に窪む凹部が、前記一のリブと重なるように形成され、前記一のリブは、前記リブが交差した交点から最も離れた前記口部側の最先端及び前記交点から最も離れた前記底部側の最先端が、前記凹部の外周端と重なるように前記凹部の外表面に沿って形成され、前記容器本体の内部に減圧が生じたときに前記胴部の最初に変形が開始される減圧変形開始点及び前記交点は、前記交点が前記減圧変形開始点から10mm以内の範囲に配置された状態で前記リブ上に位置する
【発明の効果】
【0011】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、胴部の少なくとも一部の横断面形状を略楕円形状とした合成樹脂製容器において、減圧変形による凹みを目立ち難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係る合成樹脂製容器を正面側から見た概略構成図である。
図2A図1に示すX-X線で容器本体を切断した概略部分断面図である。
図2B図1に示すY-Y線で容器本体を切断した概略部分断面図である。
図3】評価試験1でシミュレーションしたサンプルS1-1~S1-4の合成樹脂製容器の正面図である。
図4A】評価試験1においてサンプルS1-1の合成樹脂製容器を5ml、10ml、15ml減容させたときの減圧変形状態を表したコンター図である。
図4B】評価試験1においてサンプルS1-2の合成樹脂製容器を5ml、10ml、15ml減容させたときの減圧変形状態を表したコンター図である。
図4C】評価試験1においてサンプルS1-3の合成樹脂製容器を5ml、10ml、15ml減容させたときの減圧変形状態を表したコンター図である。
図4D】評価試験1においてサンプルS1-4の合成樹脂製容器を5ml、10ml、15ml減容させたときの減圧変形状態を表したコンター図である。
図5】評価試験1において第1の投影面積と減容量との関係を示すグラフである。
図6】評価試験1において第1の投影面積に対する第2の投影面積の割合と減容量との関係を示すグラフである。
図7】評価試験2でシミュレーションしたサンプルS2-1~サンプルS2-3の合成樹脂製容器の正面図である。
図8】評価試験2において第1の投影面積と減容量との関係を示すグラフである。
図9】評価試験2において第1の投影面積に対する第2の投影面積の割合と減容量との関係を示すグラフである。
図10】評価試験3でシミュレーションしたサンプルS3-1~サンプルS3-4の合成樹脂製容器の正面図である。
図11】評価試験3において第1の投影面積と減容量との関係を示すグラフである。
図12】評価試験3において第1の投影面積に対する第2の投影面積の割合と減容量との関係を示すグラフである。
図13A】評価試験3でシミュレーションしたサンプルS3-1の合成樹脂製容器を20ml減容させたときの減圧変形状態を表したコンター図および概略斜視図である。
図13B】評価試験3でシミュレーションしたサンプルS3-2の合成樹脂製容器を20ml減容させたときの減圧変形状態を表したコンター図および概略斜視図である。
図13C】評価試験3でシミュレーションしたサンプルS3-3の合成樹脂製容器を20ml減容させたときの減圧変形状態を表したコンター図および概略斜視図である。
図13D】評価試験3でシミュレーションしたサンプルS3-4の合成樹脂製容器を20ml減容させたときの減圧変形状態を表したコンター図および概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ここで示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するために例示するものであって、本発明を限定するものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者などにより考え得る実施可能な他の形態、実施例および運用技術などは全て本発明の範囲、要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0014】
さらに、本明細書に添付する図面は、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺、縦横
の寸法比、形状などについて、実物から変更し模式的に表現される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0015】
本実施形態では、ボトル形状を有する合成樹脂製容器1(以下、単に「容器1」と称する)の中心軸Lに沿った方向(鉛直方向)を「軸方向」とも称し、容器1の中心軸Lを回転軸として周回する方向を「周方向」とも称し、容器1の中心軸Lに直交する方向(すなわち、中心軸Lから外周方向に放射する方向)を「径方向」とも称する。また、本実施形態では、容器1の口部3から底部6へ向かう軸方向を「下方」とも称し、容器1の底部6から口部3へ向かう軸方向を「上方」とも称する。また、本実施形態では、容器1の中心軸Lに沿った平面で容器1を切断した断面を「縦断面」とも称し、容器1の中心軸Lに直交する平面(水平面)で容器1を切断した断面を「横断面」とも称する。
【0016】
なお、以下の説明において、「第1」、「第2」のような序数詞を付して説明する場合は、特に言及しない限り、便宜上用いるものであって何らかの順序を規定するものではない。
【0017】
図1は、本実施形態に係る容器1の外形を模式的に示す図である。容器1は、内容物が収容可能なボトル形状を有する。内容物としては、例えば口腔内用製剤(液体歯磨き剤、洗口液など)、洗眼剤、台所用洗剤、液体衣料洗剤、柔軟剤などの液体が挙げられる。
【0018】
容器1は、図1に示すように、容器本体2の一端部であり内容物が注出される口部3と、容器1の他端部であり接地面を有する底部6と、径方向外方に広がりながら口部3から下方へ延びる肩部4と、肩部4から下方に延びて底部6に連なる胴部5とを備える。容器1は、底部6が接地し、直立姿勢を保って自立するように形成される。容器1は、自立した状態で、口部3、肩部4、胴部5および底部6の形態が保持されるように形成される。
【0019】
容器1の構成材料は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などの熱可塑性樹脂を用いることができる。容器1は、例えば射出成形やブロー成形によって加熱した樹脂材料を成形して製造される。
【0020】
容器1の口部3は、容器1の胴部5より高い剛性を有するように形成される。口部3の上端部には、内容物の注出口として機能する開口部31が設けられる。口部3の開口部31よりも下方の外周面には、キャップ10が装着される被装着部32が設けられる。
【0021】
被装着部32は、例えばキャップ10がねじ込み式で装着可能となるように、螺旋状のねじ山又はねじ溝によって構成される。或いは、被装着部32は、キャップ10が打栓式で装着可能となるように、周方向に延びる突条によって構成されてもよい。
【0022】
胴部5は、少なくとも一部に略楕円形状の横断面形状を有する。胴部5を少なくとも一部の横断面形状を略楕円形状とすることで、容器1は、使用者のユーザビリティやデザイン性に優れたものとなる。胴部5には、デザイン性(意匠性や視認性)を高めるために図示しないラベル(シュリンクラベルやシールラベルなど)が装着される。或いは、胴部5の外表面には、ラベルの代わりに加飾画像(ロゴや商品説明など)が直接印刷されてもよい。
【0023】
容器1の胴部5は、内容物の蒸発による減容や周辺温度の変化によって減圧変形し得る。そのため、容器1は、胴部5の外周面に、減圧変形による急激な凹みなどの過度な変形を抑制するための変形抑制部50を備えている。
【0024】
本実施形態に係る容器1の変形抑制部50は、胴部5の外周面に沿って所定方向に延び
る複数本のリブ51を交差させた交差リブで構成される。ここで、「交差」とは、一のリブ51と他のリブ51が互いに横切るように通過した状態(例えば十字状またはX状に交わった状態)を意味する。よって、一のリブ51の一端部と他のリブ51とが交わってはいるが、一のリブ51が他のリブ51を通過していない状態(例えばT字に交わった状態)は、「交差」しているとは言えず除外される。
【0025】
リブ51は、交差させた状態で胴部5に設けられることにより、減圧変形時の変形応力がリブ51を伝って胴部5の外表面に広く分散させることができる。胴部5は、リブ51による変形抑制効果によって局所的な急激な凹みが抑制され、減圧変形したとしても外観上の変形が目立ち難くなる。
【0026】
ところで、リブ51の形状は、減圧変形による外見上の変形を目立ち難くすることを目的とした場合、凹状に限定されず、凸状としても同様の効果が得られる。しかし、胴部5の外表面(特に正面、背面)は、商品ラベル(シュリンクラベル、シールラベルなど)が装着されたり、加飾画像(商品ロゴなど)が直接印刷されたりする領域であるため、リブ51を凸状とすると、商品ラベルの装着や加飾画像の印刷に支障をきたす虞がある。したがって、リブ51の形状は、凹状とするのが好ましい。
【0027】
リブ51は、少なくとも他のリブ51と胴部5の外表面上で交差していればよい。しかし、減圧変形時の変形応力を胴部5の外表面に広く効果的に分散させるためには、リブ51の交差角度αは、鋭角よりも直角に近い方が好ましく、85°以上95°以下の範囲で設定するのがより好ましい。これにより、容器1は、リブ51によって変形応力が効果的に分散され、局所的な急激な凹みが抑制されて外観上の変形が目立ち難くなる。
【0028】
リブ51は、交点Pから離れる方向に向かうに連れて徐々に幅が狭くなるように形成される。つまり、リブ51の幅は、交点Pの位置が最も幅広となる。また、リブ51の凹形状は、図2Aおよび図2Bに示すように、一のリブ51と他のリブ51との交点Pの位置が最も深くなり、交点Pから離れる方向に向かうに連れて徐々に深さが浅くなる。リブ51は、交点Pから一端部に向かうに連れて徐々に幅が狭くなり、かつ深さが徐々に浅くなる先細形状となっており、リブ51の最先端は胴部5の外表面と面一状態につながる。
【0029】
容器を樹脂成型する場合、例えば胴部に形成したリブの先端部を容器内方へ極度に凹んだ段差形状(容器内方に直角に凹んだ形状)にすると、成形時にその段差部分へ樹脂が均等に行き渡らず薄肉になることがある。薄肉部分は強度が低くなるため、容器1は、減圧変形などが生じた際にその薄肉部分から割れが生じやすくなる可能性がある。これに対し、本実施形態に係る容器1は、リブ51の交点Pから一端部に向かうに連れて徐々に幅が狭くなり、かつ深さが徐々に浅くなる先細形状としているため、リブ51による薄肉化が防止されて割れのリスクを排除することができる。
【0030】
リブ51の交点Pは、胴部5の減圧変形開始点Qから近傍の所定範囲内に配置されるのが好ましい。「減圧変形開始点Q」とは、容器内部に減圧が生じた際に、胴部5において最初に変形が開始される箇所を示している。図1には、リブ51の交点P(図中の黒塗り丸)と、減圧変形開始点Q(図中のバツ印)とが同位置に設定されている。
【0031】
交点Pは、減圧変形開始点Qから離れた位置(例えば20mm)に設定された場合、減圧変形開始点Qの変形応力がリブ51を介して分散され難くなり、変形抑制効果が薄れてしまうことがある。そのため、交点Pは、減圧変形開始点Qの近傍に配置するのが好ましく、より具体的には減圧変形開始点Qから半径10mm以内の範囲に配置するのが好ましい。交点Pを前記範囲内に設定することにより、減圧変形時の変形応力は、リブ51に沿って効果的に分散される。よって、容器1は、減圧変形したとしても、外観上の変形が目
立ち難くなる。
【0032】
なお、胴部5の減圧変形開始点Qの位置は、汎用の有限要素法解析ソフトウェア(一例として、Livermore Software Technology Corporation社製のLS-DYNA)を用いて変形挙動をシミュレーションして確認することができる。リブ51の交点Pは、シミュレーションで確認した減圧変形開始点Qの位置に基づいて配置すればよい。
【0033】
リブ51の本数は、複数であれば特に限定されない。また、リブ51の交点Pは、1つに限らず、複数あってもよい、つまり、一のリブ51に対して複数本のリブ51が異なる箇所で交差していてもよい。
【0034】
また、リブ51のサイズ(幅寸法、深さなど)や形状は、統一されていてもよいし、統一されていなくてもよい。図1に示す形態例では、軸方向に延びるリブ51の方が、径方向に延びるリブ51よりも長いが、同寸法としてもよいし、径方向に延びるリブ51の方を長くしてもよい。
【0035】
ここで、容器1の具体的な寸法値について例示する。容器1は、内容物を注出する際に、使用者の手指で胴部5を把持して使用する容器であり、内容量は400ml~1200ml程度である。容器1の軸方向に沿う高さは、120mm~300mmである。容器1の胴部5の直径は、55mm~100mmである。容器1の胴部5の長軸方向の径寸法は、60mm~100mmである。容器1の胴部5の短軸方向の径寸法は、55mm~100mmである。容器1の胴部5の肉厚は、0.3mm~3mmである。
【0036】
また、リブ51の最大幅は、0.5mm~6mmである。リブ51の最大深さは、0.5mm~3mmである。リブ51の長さは、15mm~120mmである。
【0037】
[作用効果]
以上説明したように、本実施形態に係る容器1は、胴部5の少なくとも一部の横断面形状を略楕円形状とした合成樹脂製の容器であって、胴部5の外表面には、複数の凹状のリブ51が交差して設けられている。
【0038】
このような構成により、容器1は、交差したリブ51によって、減圧変形に伴う変形応力を胴部5の外表面に広く分散させることができる。そのため、容器1は、急激な温度変化や経年劣化に伴う液体内容物の減容などによって減圧変形したとしても、局所的な急激な凹みが抑制されて外観上の凹みが目立ち難くなり、商品価値を保つことができる。
【0039】
また、本実施形態に係る容器1において、リブ51が交差した交点Pは、胴部5の減圧変形開始点Qの近傍が好ましく、より好ましくは、減圧変形開始点Qから半径10mm以内の範囲に配置してもよい。
【0040】
このような構成により、容器1は、減圧変形時の変形応力を胴部5の外表面に広く効果的に分散させることができるため、局所的な急激な凹みが抑制されて外観上の変形が目立ち難くなる。特に、交点Pを減圧変形開始点Qから半径10mm以内に配置すれば、その効果が顕著に表れるため好適である。
【0041】
また、本実施形態に係る容器1において、胴部5に設けられたリブ51のうちの一のリブ51と他のリブとの交差角度αは、85°以上95°以下とするのが好ましい。
【0042】
リブ51の交差角度αを85°以上95°以下の範囲で設定することにより、容器1は
、減圧変形時の変形応力を胴部5の外表面に広く分散させることができ、局所的な急激な凹みが抑制されて外観上の変形が目立ち難くなる。
【0043】
また、本実施形態に係る容器1において、リブ51は、短手方向の最大幅が0.5mm~6mm、最大深さが0.5mm~3mm、長手方向である全長が15mm~120mmの範囲で設定されるのが好ましい。
【0044】
このような構成により、リブ51は、製造対象となり得る容量(例えば500ml~1200ml)の容器1において、減圧変形時の変形応力を胴部5の外表面に広く効果的に分散させることができる。そのため、容器1は、胴部5の局所的な急激な凹みが抑制されて外観上の変形が目立ち難くなる。
【0045】
また、本実施形態に係る容器1において、リブ51は、交点Pから一端部に向かうに連れて徐々に幅が狭くなり、かつ深さが徐々に浅くなる先細形状とするのが好ましい。
【0046】
このような構成により、容器1は、リブ51を形成したことによる意図しない薄肉化が防止され、薄肉部分からの割れのリスクが排除される。
【実施例
【0047】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されるものではない。
【0048】
評価試験1~3は、いずれも有限要素法解析ソフトウェア(Livermore Software Technology Corporation社製のLS-DYNA)を用いて減圧に伴う変形挙動をシミュレーションした。
【0049】
各試験では、減圧変形が生じたときの胴部外表面における変形範囲の面積に基づき、胴部の外表面に生じた減圧変形による凹みが目立ち難いか否かによる評価を行った。なお、「変形範囲の面積」とは、胴部における変形範囲の表面積ではなく、容器の胴部正面の外表面が減圧変形に伴って容器内方へ凹んで変形した変形範囲の軸方向の投影面積を意味する。これは、リブの数によって表面積が増減するという因子を排除し、減圧変形による凹みの目立ち難さを正確に判断するためである。よって、以下に示す各評価試験において、変形範囲の面積が広い容器は、変形範囲の面積が狭い容器と比べて局所的に急激な凹みがなく、外観上、凹みが目立ち難くい容器と判定することができる。
【0050】
[評価試験1]
〈試験概要〉
評価試験1は、変形抑制部として機能する交差リブの有用性を確認するための試験である。評価試験1は、リブの有無やリブの形状が異なる4種類の容器(サンプルS1-1~サンプルS1-4)について、減圧変形時の胴部外表面の変形挙動を減容量ごとにシミュレーションした。
【0051】
図3には、シミュレーションしたサンプルS1-1~サンプルS1-4の容器の形態について示されている。図中最も左側にあるサンプルS1-1の容器は、胴部の外表面に、交差した2本のリブが設けられた形態である。サンプルS1-1の右側にあるサンプルS1-2の容器は、胴部の外表面に、リブが設けられていない形態である。サンプルS1-2の右側にあるサンプルS1-3の容器は、胴部の外表面に、複数本設けたリブがいずれも交差していない形態である。図中最も右側にあるサンプルS1-4の容器は、胴部の外表面に、周方向に沿って上下方向にジグザグに連続する1本のリブが設けられた形態である。
【0052】
図4A図4Dは、サンプルS1-1~サンプルS1-4の容器の減容量が5ml、10mlおよび15mlのときの減圧変形に伴う凹みをコンター(等値線)で段階的に表したコンター図である。図4A図4Dにおいて、減圧変形時の変形度合いは、基準面となる変形前の胴部の外表面からの凹み量(凹み深度)で表し、凹みの深浅については点ハッチングの密度を変えて表現した。図4A図4Dにおいて、凹み量は、約0.30mm刻みの9階調(0mm~2.80mmの各範囲)で表現し、凹みが深くなるにつれて点の分布を密とし、凹みが浅い程、点の分布を疎とした。
【0053】
〈結果〉
図5は、サンプルS1-1~サンプルS1-4の容器において、減圧変形時に凹みが生じた領域全体の投影面積である「第1の投影面積」と、減容量との関係が示されたグラフである。図5のグラフにおいて、「第1の投影面積」は、凹み量が0.31mm以上変形した領域の投影面積(単位:mm)である。図6は、第1の投影面積に対する、一定以上の大きな変形が生じた領域の投影面積(第2の投影面積)の割合と、減容量との関係が示されたグラフである。図6のグラフにおいて、「第2の投影面積」は、視認可能な程度の変形が生じた領域の投影面積であって、凹み量が2.48mm以上の範囲の投影面積(単位:mm)である。
【0054】
なお、図5図6において、黒塗り四角のプロットはサンプルS1-1の容器を表し、白抜き丸のプロットはサンプルS1-2の容器を表し、黒塗り丸のプロットはサンプルS1-3の容器を表し、白抜き四角のプロットはサンプルS1-4の容器を表す。
【0055】
図5に示すように、サンプルS1-1~サンプルS1-4の容器は、いずれも減容量が増加するにつれて第1の投影面積が増加した。そのうち、サンプルS1-1の容器については、減容量の全領域(5ml~15ml)に亘って減圧変形面積が最大であった。図6に示すように、サンプルS1-1~サンプルS1-4の容器は、いずれも減容量の増加につれて第1の投影面積に対する第2の投影面積の割合が増加した。そのうち、サンプルS1-1の容器は、第1の投影面積に対する第2の投影面積の割合が減容量の全領域に亘って低く、減容量が10mlを超えたあたりからサンプルS1-2~サンプルS1-4の容器の前記割合との差が顕著となり最も低くなった。
【0056】
以上のことから、サンプルS1-1の容器は、胴部の外表面に一方のリブが他方のリブを横切るように通過した十字状リブからなる変形抑制部を備えているため、胴部の減圧変形時の変形応力がリブを伝って胴部5の外表面に広く分散して局所的な急激な凹みが抑制されたものと推定される。容器の減圧変形は、第1の投影面積に対する第2の投影面積の割合が低いほど「広く浅い変形」であることを示している。したがって、サンプルS1-1の容器は、サンプルS1-2~サンプルS1-4の容器と比べても、凹みが目立ち難くなっていると言える。また、評価試験1の結果から、リブは、胴部に交差した状態で設けることで、減圧変形時の変形応力が効果的に分散され、減圧変形時の凹みを目立ち難くなることが証明された。
【0057】
[評価試験2]
〈試験概要〉
評価試験2は、変形抑制部として最適なリブの交差角度を確認するための試験である。評価試験2は、リブの交差角度が異なる3種類の容器(サンプルS2-1~サンプルS2-3)について、減圧変形時の胴部外表面の変形挙動を減容量ごとにシミュレーションした。
【0058】
図7には、シミュレーションしたサンプルS2-1~サンプルS2-3の容器の形態に
ついて示されている。図中左側のサンプルS2-1の容器は、リブの交差角度α1が30°(交差角度α1の補角β1は150°)の2本のリブからなる十字状リブが設けられた形態である。図中真ん中のサンプルS2-2の容器は、リブの交差角度α2が60°(交差角度α2の補角β2は120°)の2本のリブからなるX状リブが設けられた形態である。図中右側の示すサンプルS2-3の容器は、リブの交差角度α3が90°(交差角度α3の補角β3も90°)の2本のリブからなるX状リブが設けられた形態である。
【0059】
〈結果〉
図8は、サンプルS2-1~サンプルS2-3の容器において、第1の投影面積と、減容量との関係が示されたグラフである。図8のグラフにおいて、「第1の投影面積」は、凹み量が0.31mm以上変形した領域の投影面積(単位:mm)である。図9は、第1の投影面積に対する第2の投影面積の割合と、減容量との関係が示されたグラフである。図9のグラフにおいて、「第2の投影面積」は、視認可能な程度の変形が生じた領域の投影面積であって、凹み量が2.48mm以上の範囲の投影面積(単位:mm)である。
【0060】
なお、図8図9において、黒塗り丸のプロットはサンプルS2-1の容器を表し、黒塗り三角のプロットはサンプルS2-2の容器を表し、黒塗り四角のプロットはサンプルS2-3の容器を表す。また、図8および図9において、第1の投影面積および第2の投影面積は、いずれも減圧変形の凹み量に応じたコンターで囲まれた領域と対応する軸方向の投影面積である。
【0061】
図8に示すように、サンプルS2-3の容器は、減容量の全領域(4ml~16ml)に亘って減圧変形面積が最大であった。図9に示すように、サンプルS2-3の容器は、第1の投影面積に対する第2の投影面積の割合が、減容量の全領域に亘って最も低かった。
【0062】
以上のことから、サンプルS2-3の容器は、変形抑制部として機能するリブの交差角度を90°としたため、減圧変形時の変形応力が他の容器よりも胴部の外表面に広く分散され易くなり、局所的な急激な凹みが抑制されたものと推定される。容器の減圧変形は、第1の投影面積に対する第2の投影面積の割合が低いほど「広く浅い変形」であるため、サンプルS2-3の容器は、他の容器と比べて外観上の変形が目立ち難くなっていると言える。また、評価試験2の結果から、リブの交差角度αは、鋭角よりも直角の方が変形応力の分散効果が高まることが証明された。
【0063】
[評価試験3]
〈試験概要〉
評価試験3は、減圧変形開始点Qに対するリブの交点Pの最適な配置位置を確認するための試験である。評価試験3は、減圧変形開始点Qに対する交点Pの配置位置が異なる4種類の容器(サンプルS3-1~サンプルS3-4)について、減圧変形時の胴部外表面の変形挙動を減容量ごとにシミュレーションした。
【0064】
図10には、シミュレーションしたサンプルS3-1~サンプルS3-4の容器の形態について示されている。図中最も左側にあるサンプルS3-1の容器は、リブの交点Pが、減圧変形開始点Qから0mmの距離に設けられた形態である。サンプルS3-1の右側にあるサンプルS3-2の容器は、リブの交点Pが、減圧変形開始点Qから8mmの距離に設けられた形態である。サンプルS3-2の右側にあるサンプルS3-3の容器は、リブの交点Pが、減圧変形開始点Qから10mmの距離に設けられた形態である。図中最も右側にあるサンプルS3-4の容器は、リブの交点Pが、減圧変形開始点Qから20mmの距離に設けられた形態である。
【0065】
〈結果〉
図11は、サンプルS3-1~サンプルS3-4の容器において、第1の投影面積と、減容量との関係が示されたグラフである。図11のグラフにおいて、「第1の投影面積」は、凹み量が0.31mm以上変形した領域の投影面積(単位:mm)である。図12は、第1の投影面積に対する第2の投影面積の割合と、減容量との関係が示されたグラフである。図12のグラフにおいて、「第2の投影面積」は、視認可能な程度の変形が生じた領域の投影面積であって、凹み量が2.48mm以上の範囲の投影面積(単位:mm)である。
【0066】
なお、図11図12において、白抜き丸のプロットはサンプルS3-1の容器を表し、黒塗り丸のプロットはサンプルS3-2の容器を表し、白抜き四角のプロットはサンプルS3-3の容器を表し、黒塗り四角のプロットはサンプルS3-4の容器を表す。また、図11および図12において、第1の投影面積および第2の投影面積は、いずれも減圧変形の凹み量に応じたコンターで囲まれた領域と対応する軸方向の投影面積である。
【0067】
図11に示すように、サンプルS3-1の容器は、減容量の全領域(4ml~16ml)に亘って減圧変形面積が最大であった。また、サンプルS3-2の容器とサンプルS3-3の容器を比較すると、減容量が12ml付近で減圧変形面積の大小関係が逆転したものの、概ねサンプルS3-2の容器の方がサンプルS3-3の容器よりも減圧変形面積が大きかった。図12に示すように、サンプルS3-1の容器は、第1の投影面積に対する第2の投影面積の割合が、減容量8mlを超えたあたりから最も低かった。一方で、サンプルS3-4の容器の第1の投影面積に対する第2の投影面積の割合は、減容量が8ml未満では最も低かったが、減容量が8mlを超えたあたりから急激に増加し、減容量が12mlを超えたあたりから最大となった。
【0068】
図13A図13Dには、サンプルS3-1~サンプルS3-4の容器を20ml減容したときの減圧変形に伴う凹みをコンター(等値線)で段階的に表したコンター図および概略斜視図が示されている。図13A図13Dにおいて、減圧変形時の変形度合いは、基準面となる変形前の胴部の外表面からの凹み量(凹み深度)で表し、凹みの深浅については点ハッチングの密度を変えて表現した。図13A図13Dにおいて、凹み量は、約0.67mm刻みの9階調(0mm~6.00mmの各範囲)で表現し、凹みが深くなるにつれて点の分布を密とし、凹みが浅い程、点の分布を疎とした。
【0069】
図13A図13Dに示すように、サンプルS3-1~サンプルS3-3の容器は、リブの交点Pの位置が減圧変形開始点Qからそれぞれ0mm、8mm、10mmの距離に設定されており、いずれの容器の交点Pも最大変形領域(凹み量が5.3mm以上の領域)の内部に存在していることが確認された。一方、サンプルS3-4の容器は、リブの交点Pの位置が減圧変形開始点Qから20mmの距離に設定されており、交点Pが最大変形領域の領域外に存在し、直線状のリブのみが最大変形領域内に存在することが確認された。また、図13A図13Cに示すように、サンプルS3-1~サンプルS3-3の容器は、サンプルS3-4の容器と比較して、リブの歪みが視覚的に目立ち難くなっていることが確認された。
【0070】
以上のことから、サンプルS3-1の容器は、リブの交点Pの位置を減圧変形開始点Qと同位置に設定したため、減圧変形時の変形応力が他の容器よりも胴部の外表面に広く分散され易くなり、局所的な急激な凹みが抑制されたものと推定される。容器の減圧変形は、第1の投影面積に対する第2の投影面積の割合が低いほど「広く浅い変形」であるため、サンプルS3-1の容器は、他の容器と比べて外観上の変形が目立ち難くなっていると言える。また、評価試験3の結果から、図13A図13Dに示すように、リブの交点P
の位置は、減圧変形開始点Qに近い方が変形応力の分散効果が高まり、特に減圧変形開始点Qから近傍の距離となる0mm~10mmの範囲に交点Pを配置することが有用であることが証明された。
【符号の説明】
【0071】
1 容器、
2 容器本体、
3 口部、
4 肩部、
5 胴部、
6 底部、
10 キャップ、
31 開口部、
32 被装着部、
50 変形抑制部、
51 リブ、
L 中心軸、
P リブの交点、
Q 胴部の減圧変形開始点。
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図13D